ミストによる消火設備及びその消火方法
【課題】ミストによる消火能力を高める技術を提供する。
【解決手段】
本発明の1つの消火設備は、火炎基部領域14又は火炎基部領域の鉛直上方の領域16に対向して配置されるとともに、火炎基部領域14又は火炎基部領域の鉛直上方の領域16に向けて噴射する複数の第1ミストノズル12a,・・・,12aと、各々の第1ミストノズル12aの噴射角度と交差しない噴射角度を有するとともに、各々の第1ミストノズル12aから噴射されるミストの流速よりも遅いミストを噴射し、且つ各々の第1ミストノズル12aを備えた配管の周囲から各々の第1ミストノズル12aから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断するミストを噴射する複数の第2ミストノズル12b,・・・,12bと、各々の第1ミストノズル12aに消火剤を送給する送給装置96,98と、各々の第2ミストノズル12bに液体を送給する送給装置92,94とを備える。
【解決手段】
本発明の1つの消火設備は、火炎基部領域14又は火炎基部領域の鉛直上方の領域16に対向して配置されるとともに、火炎基部領域14又は火炎基部領域の鉛直上方の領域16に向けて噴射する複数の第1ミストノズル12a,・・・,12aと、各々の第1ミストノズル12aの噴射角度と交差しない噴射角度を有するとともに、各々の第1ミストノズル12aから噴射されるミストの流速よりも遅いミストを噴射し、且つ各々の第1ミストノズル12aを備えた配管の周囲から各々の第1ミストノズル12aから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断するミストを噴射する複数の第2ミストノズル12b,・・・,12bと、各々の第1ミストノズル12aに消火剤を送給する送給装置96,98と、各々の第2ミストノズル12bに液体を送給する送給装置92,94とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミストによる消火設備及びその消火設備による消火方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、消火のためにミストを用いる技術が複数提案されている。例えば、本願出願人が提案したプール火災の消火方法は、燃焼面の上方の複数箇所から火炎基部より上方の火炎中心軸に向かってウォーターミストを放射する方法である(特許文献1)。これにより、ウォーターミストが火炎中で水蒸気になり、その水蒸気により火炎の内部の圧力が高まるため、火炎基部への酸素の流入が抑制され、その結果、消火に寄与することになる。また、本願出願人が別に提案したプール火災の消火方法においても、ウォーターミストによるプール火災の消火方法が提案されている(例えば、特許文献2)。また、特許文献4には、ベンゼン等の貯蔵タンクの上部辺縁にミストノズルが、限定された開放空間であるタンク内に生じる火柱特有の吸引力によって取り込まれる外気の流入を阻止する技術が開示されている(特許文献4)。しかしながら、開放空間におけるミストノズルから噴射されるミストとミストノズルの周囲の空気の関係、又は火炎基部領域又は前記火炎基部領域の鉛直上方の領域に向けて噴射されたミストに対するミストノズルの周囲の空気の影響についての示唆、開示はされていない。
【特許文献1】特開2007−244723号公報
【特許文献2】特開2007−307096号公報
【特許文献3】特開2008−12158号公報
【特許文献4】独国特許発明第912658号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のとおり、火炎による熱の吸収を容易にして蒸発を促進させるために、火炎に対して消火剤の連続的な棒状放射の代わりにそのミストを噴射する方法が消火に対して有効である。しかしながら、一般的なミストノズルを用いた場合、ミストの噴射によって形成される火炎までのミストの流れの中に、ミストノズル又はミストノズルが配置された配管の周辺の一部の空気が取り込まれるという現象が本発明者によって発見された。この空気の取り込みの結果、それらの周辺の空気、とりわけその中の酸素が火炎の中に送り込まれることになるため、ミストによる消火効果を十分に発揮させることが難しい。
【0004】
本発明は、上述の技術課題を解決することにより、ミストによる消火効果の更なる向上に貢献するものである。発明者は、まず、ミストの噴射によって、ミストノズル又は/及びミストノズルが設置された配管の周辺の空気の流れを生じさせていることに着目した。この流れについて詳しく調査した結果、発明者は、この流れがミストの噴射によって形成される火炎までのミストの流れに実質的に合流していることが、これまでのミストによる消火に悪い影響を及ぼしていることを知見した。そこで、発明者は、かかる問題を取り除く消火設備を鋭意研究し、本発明を創出した。
【0005】
本発明の1つの消火設備は、火炎基部領域又はその火炎基部領域の鉛直上方の領域に対向して配置されるとともに、その火炎基部領域又はその火炎基部領域の鉛直上方の領域に向けて噴射する複数の第1ミストノズルと、その各々の第1ミストノズルの噴射角度と交差しない噴射角度を有するとともに、その各々の第1ミストノズルから噴射されるミストの流速よりも遅いミストを噴射し、且つその各々の第1ミストノズルを備えた配管の周囲からその各々の第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断するミストを噴射する複数の第2ミストノズルと、前述の各々の第1ミストノズルに消火剤を送給する送給装置と、前述の各々の第2ミストノズルに液体を送給する送給装置とを備えている。
【0006】
この消火設備は、上述の第1ミストノズルの噴射角度と交差しない噴射角度を有するとともに、その第1ミストノズルから噴射されるミストの流速よりも遅いミストを噴射し、且つ第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断する第2ミストノズルを備えている。すなわち、第2ミストノズルから噴射されるミストは、直接的には第1ミストノズルから噴射されるミストに影響を与えないが、第1ミストノズルを備えた配管の周囲から第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断する。言うなれば、第2ミストノズルは第1ミストノズルを援護する役割を担っている。従って、第2ミストノズルの噴射により、第1ミストノズルからのミストの噴射によって形成される火炎までのミストの流れの中に、第1ミストノズルを備えた配管の周辺の一部の空気が取り込まれてしまうことを防ぐことができる。その結果、火炎の中に送り込まれる空気の量が低減されることによって、特に火炎基部領域が乱されにくくなるため、ミストによる消火効果が十分に高まることになる。また、前述の第2ミストノズルによるミストの噴射により、従来と比較して第1ミストノズルからのミストの流速が落ちることになるため、火炎に突入するミストは従来よりも火炎から熱量を受けやすくなる。その結果、火炎内で蒸気化して消火に寄与する割合が増加すると考えられる。さらに、第2ミストノズルから噴射されたミストは、火炎を取り巻く雰囲気中のミスト量を高めるため、その分だけ不燃空間を広げることができる。この点でも第2ミストノズルは第1ミストノズルを援護することになる。
【0007】
なお、本出願において、ミストノズルから噴射されるミストの「噴射角度」とは、代表的には、図10に示す、ミストノズル18から噴射される消火剤のオリフィス近傍(例えば、オリフィスから10cm離れた場所まで)の飛行範囲の広がり角度θを意味する。
【0008】
また、本発明のもう1つの消火設備は、火炎基部領域又はその火炎基部領域の鉛直上方の領域に対向して配置されるとともに、その火炎基部領域又はその火炎基部領域の鉛直上方の領域に向けて噴射する複数の第1ミストノズルと、その各々の第1ミストノズルから噴射されるミストの流れを実質的に妨げない噴射角度を有するとともに、その各々の第1ミストノズルを備えた配管の周囲からその各々の第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断するミストを噴射する複数の第2ミストノズルと、前述の各々の第1ミストノズルに消火剤を送給する送給装置と、前述の各々の第2ミストノズルに液体を送給する送給装置とを備えている。
【0009】
この消火設備は、上述の第1ミストノズルから噴射されるミストの流れを実質的に妨げない噴射角度を有し、かつ第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断する第2ミストノズルを備えている。すなわち、第2ミストノズルから噴射されるミストは、直接的には第1ミストノズルから噴射されるミストに影響を与えないが、第1ミストノズルを備えた配管の周囲から第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断する。言うなれば、第2ミストノズルは第1ミストノズルを援護する役割を担っている。従って、第2ミストノズルの噴射により、第1ミストノズルからのミストの噴射によって形成される火炎までのミストの流れの中に、第1ミストノズルを備えた配管の周辺の一部の空気が取り込まれてしまうことを防ぐことができる。その結果、火炎の中に送り込まれる空気の量が低減されることによって、特に火炎基部領域が乱されにくくなるため、ミストによる消火効果が十分に高まることになる。また、前述の第2ミストノズルによるミストの噴射により、従来と比較して第1ミストノズルからのミストの流速が落ちることになるため、火炎に突入するミストは従来よりも火炎から熱量を受けやすくなる。その結果、火炎内で蒸気化して消火に寄与する割合が増加すると考えられる。さらに、第2ミストノズルから噴射されたミストは、火炎を取り巻く雰囲気中のミスト量を高めるため、その分だけ不燃空間を広げることができる。この点でも第2ミストノズルは第1ミストノズルを援護することになる。
【0010】
また、本発明の1つの消火方法は、火炎基部領域又はその火炎基部領域の鉛直上方の領域に対向して配置されるとともに、その火炎基部領域又はその火炎基部領域の鉛直上方の領域に向けて噴射する複数の第1ミストノズルに消火剤を送給する工程と、その各々の第1ミストノズルの噴射角度と交差しない噴射角度を有するとともに、前記第1ミストノズルから噴射されるミストの流速よりも遅いミストを噴射する複数の第2ミストノズルに液体を送給する工程と、前述の各々の第1ミストノズルからミストを噴射する工程と、前述の各々の第2ミストノズルからミストを噴射することにより、その各々の第1ミストノズルを備えた配管の周囲からその各々の第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断する工程とを有している。
【0011】
この消火方法によれば、上述の第1ミストノズルの噴射角度と交差しない噴射角度を有するとともに、前記第1ミストノズルから噴射されるミストの流速よりも遅いミストを噴射する複数の第2ミストノズルが、第1ミストノズルを備えた配管の周囲からその第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断する。すなわち、第2ミストノズルから噴射されるミストは、直接的には第1ミストノズルから噴射されるミストに影響を与えないが、第1ミストノズルを備えた配管の周囲から第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断する。いわば、第2ミストノズルは第1ミストノズルを援護する役割を担っている。従って、第2ミストノズルの噴射により、第1ミストノズルからのミストの噴射によって形成される火炎までのミストの流れの中に、第1ミストノズルを備えた配管の周辺の一部の空気が取り込まれてしまうことを防ぐことができる。その結果、火炎の中に送り込まれる空気の量が低減されることによって、特に火炎基部領域が乱されにくくなるため、ミストによる消火効果が十分に高まることになる。また、前述の第2ミストノズルによるミストの噴射により、従来と比較して第1ミストノズルからのミストの流速が落ちることになるため、火炎に突入するミストは従来よりも火炎から熱量を受けやすくなる。その結果、火炎内で蒸気化して消火に寄与する割合が増加すると考えられる。さらに、第2ミストノズルから噴射されたミストは、火炎を取り巻く雰囲気中のミスト量を高めるため、その分不燃空間を広げることができる。この点でも第2ミストノズルは第1ミストノズルを援護することになる。
【0012】
また、本発明のもう1つの消火方法は、火炎基部領域又はその火炎基部領域の鉛直上方の領域に対向して配置されるとともに、その火炎基部領域又はその火炎基部領域の鉛直上方の領域に向けて噴射する複数の第1ミストノズルに消火剤を送給する工程と、その各々の第1ミストノズルから噴射されるミストの流れを実質的に妨げない噴射角度を有する複数の第2ミストノズルに液体を送給する工程と、前述の各々の第1ミストノズルからミストを噴射する工程と、前述の各々の第2ミストノズルからミストを噴射することにより、その各々の第1ミストノズルを備えた配管の周囲からその各々の第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断する工程とを有している。
【0013】
この消火方法によれば、上述の第1ミストノズルから噴射されるミストの流れを実質的に妨げない噴射角度を有する複数の第2ミストノズルが、第1ミストノズルを備えた配管の周囲からその第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断する。すなわち、第2ミストノズルから噴射されるミストは、直接的には第1ミストノズルから噴射されるミストに影響を与えないが、第1ミストノズルを備えた配管の周囲から第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断する。いわば、第2ミストノズルは第1ミストノズルを援護する役割を担っている。従って、第2ミストノズルの噴射により、第1ミストノズルからのミストの噴射によって形成される火炎までのミストの流れの中に、第1ミストノズルを備えた配管の周辺の一部の空気が取り込まれてしまうことを防ぐことができる。その結果、火炎の中に送り込まれる空気の量が低減されることによって、特に火炎基部領域が乱されにくくなるため、ミストによる消火効果が十分に高まることになる。また、前述の第2ミストノズルによるミストの噴射により、従来と比較して第1ミストノズルからのミストの流速が落ちることになるため、火炎に突入するミストは従来よりも火炎から熱量を受けやすくなる。その結果、火炎内で蒸気化して消火に寄与する割合が増加すると考えられる。さらに、第2ミストノズルから噴射されたミストは、火炎を取り巻く雰囲気中のミスト量を高めるため、その分不燃空間を広げることができる。この点でも第2ミストノズルは第1ミストノズルを援護することになる。
【0014】
ところで、本出願において「火炎基部領域」とは、可燃性液体及び/又は可燃物の表面(燃料面)からその鉛直上方300mm以下の柱状空間領域を意味する。但し、「火炎基部領域」は燃料面を含まない。また、本出願において、「噴射方向」とは、水平面とノズルの向きとがなす角度を意味する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の1つの消火設備及び本発明の1つの消火方法によれば、第2ミストノズルの噴射により、第1ミストノズルからのミストの噴射によって形成される火炎までのミストの流れの中に、第1ミストノズルを備えた配管の周辺の一部の空気が取り込まれてしまうことを防ぐことができる。さらに、第2ミストノズルから噴射されたミストは、火炎を取り巻く雰囲気中のミスト量を高めるため、不燃空間を広げることができる。その結果、火炎の中に送り込まれる空気の量が低減されることによって、特に火炎基部領域が乱されにくくなるため、ミストによる消火効果が十分に高まることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
つぎに、本発明の実施形態を、添付する図面に基づいて詳細に述べる。尚、この説明に際し、全図にわたり、特に言及がない限り、共通する部分には共通する参照符号が付されている。また、図中、本実施形態の要素は必ずしもスケール通りに示されていない。また、各図面を見やすくするために、一部の符号が省略されうる。
【0017】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態における消火設備100を示す構成図である。図2は、本実施形態の消火設備100のうち、流路11、配管13、第1ミストノズル12a,・・・,12a、及び第2ミストノズル12b,・・・,12bを拡大した平面図であり、図3は図2のA−A断面図である。
【0018】
図1及び図2に示す本実施形態の消火設備100は、消火剤が、1箇所の消火剤が貯留されたタンク94からポンプ92によって流路11及び配管13を経由して複数の第1ミストノズル12a,・・・,12a及び複数の第2ミストノズル12b,・・・,12bに供給される構成を備えている。第1ミストノズル12a,・・・,12a及び第2ミストノズル12b,・・・,12bは、それぞれが、公知の技術によって配管13に嵌合、螺合、又は接合している。ここで、一体物といえる前述の配管13、第1ミストノズル12a,・・・,12a、及び第2ミストノズル12b,・・・,12bを総称してミスト供給部10と呼ぶ。以下の各実施形態においても、同様の呼称を適用する。
【0019】
また、本実施形態では、火炎基部領域14の下方に形成される燃料面(又は燃焼面)の面積は、0.1m2である。なお、本実施形態では、これらの流路11、配管13、及び第1ミストノズル12a,・・・,12a、及び第2ミストノズル12b,・・・,12bの材質は、SUS304である。また、本実施形態の第1ミストノズル12a,・・・,12a及び第2ミストノズル12b,・・・,12bはいずれも、本願出願人が既に提案している日本国特許出願の特願2007−235227に記載されている小型のミストノズルである。当該ミストノズルは、筐体内の複数の異なる形状を有する薄板の組み合わせを変更することにより、オリフィスから噴射されるミストの噴射角度及び/又は噴射量を異ならせることが出来るノズルである。なお、前述のミストノズルの代わりに、公知のミストノズルが用いられても良い。本実施形態では、設備全体としての軽量化、小型化を図るために、前述のミストノズルが採用されている。
【0020】
また、本実施形態では、図1に示すように、第1ミストノズル12a,・・・,12aは、火炎基部領域14の鉛直上方の領域16に対向する位置に配置されている。他方、複数の第2ミストノズル12b,・・・,12bは、ミストの噴射方向が直接領域16に向かないように配置されるとともに、1つの配管13の中で互いに反対方向にミストを噴射するように配置される。
【0021】
ところで、本実施形態の第1ミストノズル12a,・・・,12aの噴射角度は、90°であり、それらの噴射方向は、燃料面に対して仰角25°である。一方、本実施形態の第2ミストノズル12b,・・・,12bの噴射角度は、75°であり、それらの噴射方向は、図3に示す断面から見れば、第1ミストノズル12a,・・・,12aの噴射角度に対して、時計回りに90°の方向及び反時計回りに90°の方向である。
【0022】
すなわち、第1ミストノズル12a,・・・,12aの噴射角度は、少なくともそれらのミストノズルから噴射されたミストが火炎基部領域14又は火炎基部領域の鉛直上方の領域16に到達するまでの間に、第2ミストノズル12b,・・・,12bの噴射角度と交差しない噴射角度に設定されている。この設定により、第1ミストノズル12a,・・・,12aから噴射されるミストの流れが、第2ミストノズル12b,・・・,12bから噴射されるミストの流れに影響されにくくなる。すなわち、第1ミストノズル12a,・・・,12aからのミストの流れが、火炎基部領域14又は火炎基部領域の鉛直上方の領域16に向かなければ、そのミストが実質的に消火に寄与し得ないため、その流れを邪魔しないように援護することが第2ミストノズル12b,・・・,12bに求められる。なお、仮に、図4に示すように、第1ミストノズル12a,・・・,12aの噴射角度αが第2ミストノズル12b,・・・,12bの噴射角度βと交差する場合は、噴射角度が交差する、換言すれば、噴射範囲が重なる領域Sの方向に第1及び第2ミストノズルから噴射されたミストの多くが流れてしまうことになるため、本来の目的とする方向にミストを向けることが困難になることが確認された。
【0023】
ここで、第1ミストノズル12a,・・・,12aの噴射方向が斜め上方を向いているのは、噴射されるミストの一部が火炎の外縁に沿って上昇することによって、火炎の周囲に存在する空気(酸素を含む)が火炎への侵入を阻害する障壁を形成するからである。その結果、火炎の中に送り込まれる空気の量が低減されることによって、特に火炎基部領域14が乱されにくくなるため、ミストによる消火効果が十分に高まることになる。
【0024】
特に、配管13が、火炎基部領域14の上端から上方に100mm以下の水平面上に配置されている場合は、第1ミストノズル12a,・・・,12aの噴射方向は、火炎基部領域14を乱さないようにするために、水平面に対して仰角0°以上90°未満であることが好ましい。但し、火炎基部領域14内に周囲の空気が流入することを防止するとともに、ミストを十分に火炎基部領域14に供給させるためには、上記角度は水平面に対して10°以上、仰角60°以下であることがさらに好ましい。また、この観点から言えば、最も好ましい範囲は、水平面に対して20°以上、仰角45°以下である。
【0025】
他方、火炎基部領域14の上方の水平面であって、火炎基部領域14の上端から100mmを越えて上方の水平面上に配管13が配置されている場合は、第1ミストノズル12a,・・・,12aの噴射方向が斜め下方を向いていても良い。これは、噴射されるミストが火炎から十分に熱を受けて水蒸気化する一方、火炎基部領域14を大きく乱すことなく消火に寄与することが出来るからである。但し、火炎基部領域14を極力乱さないようにするために、第1ミストノズル12a,・・・,12aは、燃料面を除いて火炎に対してミストを噴射することが好ましい。尚、第2ミストノズル12b,・・・,12bも、そのミストの噴射方向が燃料面に直接向かないことが好ましいが、仮にその方向を向いていたとしても、ミスト自身が燃料面に到達しないような流速で噴射されていれば、消火を阻害することはない。
【0026】
また、消火に際しては、火炎基部領域14を鉛直上方から見たときの、その火炎基部領域14の面積の略全体が噴射されるミストによって覆われていることが好ましい。
【0027】
上述の構成を用いることによって、ミストを用いた消火が可能となる。例えば、油槽に入れられたn−ヘプタンに着火した後、上述のように配置された複数の第1ミストノズル12a,・・・,12aから、圧力0.9MPa、流量0.3L(リットル)/min.の条件で消火剤が噴射された。さらに、噴射方向が鉛直上方及び鉛直下方を向く複数の第2ミストノズル12b,・・・,12bから、圧力0.9MPa、流量0.4L(リットル)/min.の条件で消火剤が噴射された。
【0028】
本実施形態では、第1ミストノズル12a,・・・,12a及び第2ミストノズル12b,・・・,12bは配管13を共通にするため、同じ種類の消火剤が噴射される。なお、本実施形態の消火剤は水である。
【0029】
上述のミストの噴射によって、火炎は約45秒で消火される。このときの消火剤(水)の使用量は、0.83Lであった。尚、各第1ミストノズル12aのオリフィスから10cmの距離におけるミストの平均の流速は、5m/sec.であった。また、各第2ミストノズル12bのオリフィスから10cmの距離におけるミストの平均の流速は、4.5m/sec.であった。すなわち、本実施形態の第2ミストノズル12b,・・・,12bから噴射されるミストの流速は、第1ミストノズル12a,・・・,12aから噴射されるミストの流速に比べて約90%に設定されている。
【0030】
ここで、比較例を示す。配管13が、第2ミストノズル12b,・・・,12bを有しない点以外は上述と同じ構成を備える消火設備を用いた消火実験の結果、火炎は消火がされなかった。また、各ミストノズルのオリフィスから10cmの距離におけるミストの平均の流速は、50m/sec.であった。
【0031】
上述の通り、第2ミストノズル12b,・・・,12bから噴射されるミストにより、第1ミストノズル12a,・・・,12aから噴射されるミストの流速が遅くなっている。これは、第2ミストノズル12b,・・・,12bから噴射されるミストが、第1ミストノズル12a,・・・,12aから火炎に至るまでのミストの流れの中に、配管13の周辺の一部の空気が取り込まれる量を低減させたことが一因と考えられる。さらに、第2ミストノズル12b,・・・,12bから第1ミストノズル12a,・・・,12aのミストよりも流速の遅いミストが噴射されることにより、第2ミストノズル12b,・・・,12bから噴射されたミストは、火炎を取り巻く雰囲気中のミスト量を実質的に高めるため、その分だけ不燃空間が広がっているといえる。従って、その不燃空間の広がりも消火に寄与すると考えられる。
【0032】
このように、火炎に送り込まれるミストの流速を従来と比較して遅くすることにより、ミストが火炎の中を通過する時間、換言すれば、ミストが火炎と接触する時間が長くなるため、そのミストが火炎から受ける熱量も増加する。その結果、より多くのミストが液体から気体へ相変化するため、その際の火炎内部の冷却効果と、そのミストが相変化した水蒸気の体積が膨張することによる火炎内部の酸素濃度の希釈効果が、従来と比較して大幅に向上すると考えられる。なお、従来の対向する配管に配置されたミストノズルであっても、ミストの衝突による火炎内部又はその周辺でのミストの滞留は得られる。しかしながら、本実施形態で採用する第2ミストノズル12b,・・・,12bからのミストの噴射は、単独の配管13に設けられた第1ミストノズル12a,・・・,12aから噴射されるミストの火炎内部又はその周辺における滞留を促進する点は、従来と全く異なる視点に基づくものである。
【0033】
さらに、第2ミストノズル12b,・・・,12bを設けたことにより、火炎を取り巻く周囲を含めた空間全体の中に、高い密度のミストを充満させることが可能となる。従って、第2ミストノズル12b,・・・,12bからのミストは、不燃空間を広げることによる延焼の積極的な防止にも寄与し得る。
【0034】
従って、上述の通り、少量の水での迅速な消火が可能となる。また、本実施形態では水を消火剤として用いたが、一般的に消火が困難とされる上述の実験のようなプール火災であってもウォーターミストによって消火された。これにより、人体への安全性は格段に高まるとともに、環境への負荷が大幅に低減される。
【0035】
尚、本実施形態では、水を消火剤として用いたが、これに限定されない。人体への影響が大きくなると共に環境への負荷は増えるが、消火能力を増大させる他の代替消火剤も適用しうる。例えば、アルカリ性強化液や中性強化液等の公知の消火薬液、界面活性剤、及びエタノール等のアルコール類の群から選ばれた少なくとも一種類を添加剤として含む水は、本実施形態及び以下の各変形例に適用しうる。
【0036】
<第1の実施形態の変形例>
図5は、第1の実施形態の1つのミスト供給部の変形例を示す平面図である。この例では、第1の実施形態の消火設備100のミスト供給部10が、図3に示す2つのミスト供給部20,20に変更されている点以外は、第1の実施形態の消火設備100と同じ構成を備えている。図3に示すように、互いに対向していない2つのミスト供給部20,20は、消火対象となる火炎に対してL字状に配置されている。
【0037】
各ミスト供給部20,20は、図示しない1箇所又は2箇所の消火剤が貯留されたタンクからポンプによって流路21,21及び配管23,23を経由して複数の第1ミストノズル12a,・・・,12a及び複数の第2ミストノズル12b,・・・,12bに供給される構成を備えている。
【0038】
上述のように、ミスト供給部20,20は、複数の第2ミストノズル12b,・・・,12bを備えているため、火炎の中に送り込まれる空気の量が低減される。その結果、特に火炎基部領域が乱されにくくなる。また、火炎に対してL字状に配置されたミスト供給部20,20から噴射されたミスト同士が火炎内部又はその周辺において衝突することによって、単に一列のミスト供給部が配置された場合と比較して、ミストが蒸気化する確率が上がる。従って、本実施形態のミスト供給部20,20の配置により、ミストによる消火効果がさらに高まることになる。
【0039】
<第1の実施形態のその他の変形例>
図6は、第1の実施形態の他のミスト供給部の変形例を示す、第1の実施形態の図3に相当する断面図である。この例では、第1の実施形態の消火設備100のミスト供給部10が、図6に示すミスト供給部30に変更されている点以外は、第1の実施形態の消火設備100と同じ構成を備えている。
【0040】
図6に示すように、第1ミストノズル12a,・・・,12a及び第2ミストノズル12b,・・・,12bは第1の実施形態と同様に1つの配管33に設けられているが、オリフィスが互いに反対の方向を向いている点が第1の実施形態との相違点である。
【0041】
消火対象が第1の実施形態と同じ場合、本実施形態の第1ミストノズル12a,・・・,12a及び第2ミストノズル12b,・・・,12bからのミストの噴射によって、火炎は約3.5秒で消火される。このときの消火剤(水)の使用量は、0.85Lであった。尚、各第1ミストノズル12aのオリフィスから10cmの距離におけるミストの平均の流速は、5m/sec.であった。また、各第2ミストノズル12bのオリフィスから10cmの距離におけるミストの平均の流速は、4.5m/sec.であった。すなわち、本実施形態においても、第2ミストノズル12b,・・・,12bから噴射されるミストの流速は、第1ミストノズル12a,・・・,12aから噴射されるミストの流速に比べて約90%に設定されている。
【0042】
第1の実施形態の比較例及び上述の通り、第2ミストノズル12b,・・・,12bからのミストの噴射方向が、第1ミストノズル12a,・・・,12aからのミストの噴射方向と逆向きであっても、第2ミストノズル12b,・・・,12bから噴射されるミストが第1ミストノズルから噴射されるミストの流速を遅くすることが確認された。従って、本実施形態の第2ミストノズル12b,・・・,12bも消火に寄与しうる。
【0043】
<第2の実施形態>
本実施形態の消火設備200は、第1の実施形態のミスト供給部10が図7に示す2つのミスト供給部40a,40bに変更されているとともに、それぞれのミスト供給部40a,40bが独自の供給源を有している点以外は、第1の実施形態の消火設備100と同じ構成を備えている。従って、重複する説明は省略される。
【0044】
図7は、本実施形態における消火設備200を示す構成図である。図8は、本実施形態の消火設備200のうち、ミスト供給部40a,40bを拡大した平面図であり、図9は図8のB−B断面図である。
【0045】
図7乃至図9に示すように、本実施形態の消火設備200は、2つのミスト供給部40a,40bを備えている。一方のミスト供給部40aは、タンク98から、ポンプ96によって公知のアルカリ性強化液が添加された水が流路41aを経由して供給される。他方、ミスト供給部40bは、タンク94から、ポンプ92によって水が流路41bを経由して供給される。その結果、複数の第1ミストノズル12a,・・・,12aは、火炎基部領域14又は前記火炎基部領域の鉛直上方の領域16に対して公知のアルカリ性強化液が添加された水を噴射するとともに、複数の第2ミストノズル12b,・・・,12bは、水を噴射する。ここで、複数の第2ミストノズル12b,・・・,12bの噴射方向は、第1の実施形態と同様、図9に示す断面から見れば、第1ミストノズル12a,・・・,12aの噴射角度に対して、時計回りに90°の方向及び反時計回りに90°の方向である。また、本実施形態では、第1ミストノズル12a,・・・,12aの噴射方向は、水平面に対して仰角25°である。加えて、本実施形態では、ミスト供給部40a,40bを構成する各部材の材質はSUS304である。
【0046】
本実施形態では、ミスト供給部40bの第2ミストノズル12b,・・・,12bからウォーターミストが噴射される。この第2ミストノズル12b,・・・,12bの噴射角度は、配管43a,43bの周囲の空気がミスト供給部40aの第1ミストノズル12a,・・・,12aから噴射されるミストの流れに可能な限り取り込まれないようにするとともに、第1ミストノズル12a,・・・,12aから噴射されるミストの流れを実質的に妨げないように設定される。
【0047】
ところで、配管43aと配管43bとの距離が離れすぎると、配管43aの周囲の空気がミスト供給部40aの第1ミストノズル12a,・・・,12aから噴射されるミストの流れに取り込まれることになるため、第2ミストノズル12b,・・・,12bの存在意義が薄れてしまう。従って、配管43aと配管43bとの距離は、80mm以下であることが好ましい。
【0048】
また、本実施形態では、2つのミスト供給部40a,40bのそれぞれに対して種類の異なる液体を供給している。すなわち、消火に直接的に寄与する第1ミストノズル12a,・・・,12aには、より消火に効果的な消火剤が供給されている一方、第1ミストノズル12a,・・・,12aを援護するための第2ミストノズル12b,・・・,12bには水が供給されている。例えば、プール火災(ガソリン火災)のような消火しにくい対象物に対しては、前述のように液体の種類を異ならせることにより、効率的な消火を達成しつつ消火に要する費用の削減を図ることが可能となる。
【0049】
上述の構成を用いることによって、ミストを用いた消火が可能となる。例えば、油槽に入れられたn−ヘプタンに着火した後、上述のように配置された複数の第1ミストノズル12a,・・・,12aから、圧力0.9MPa、流量0.3L(リットル)/min.の条件で消火剤が噴射された。さらに、噴射方向が鉛直上方及び鉛直下方を向く複数の第2ミストノズル12b,・・・,12bから、圧力0.9MPa、流量0.4L(リットル)/min.の条件でウォーターミストが噴射された。
【0050】
上述のミストの噴射によって、火炎は約4.5秒で消火される。このとき、第1ミストノズル12a,・・・,12aによる消火剤の使用量は、0.225Lであった。また、各第1ミストノズル12aのオリフィスから10cmの距離におけるミストの平均の流速は、5m/sec.であった。他方、第2ミストノズル12b,・・・,12bによる水の使用量は、0.3Lであった。また、各第2ミストノズル12bのオリフィスから10cmの距離におけるミストの平均の流速は、4.5m/sec.であった。従って、本実施形態でも、第2ミストノズル12b,・・・,12bから噴射されるミストの流速は、第1ミストノズル12a,・・・,12aから噴射されるミストの流速に比べて約90%に設定されている。
【0051】
上述の通り、第1ミストノズル12a,・・・,12aが形成されたミスト供給部40aとは別のミスト供給部40bに設けられた第2ミストノズル12b,・・・,12bから噴射されるミストにより、第1ミストノズル12a,・・・,12aから噴射されるミストの流速が遅くなっている。これは、第2ミストノズル12b,・・・,12bから噴射されるミストが、第1ミストノズル12a,・・・,12aから火炎に至るまでのミストの流れの中に、配管13a,13bの周辺の一部の空気が取り込まれる量を低減させたことが一因と考えられる。さらに、第2ミストノズル12b,・・・,12bから第1ミストノズル12a,・・・,12aのミストよりも流速の遅いミストが噴射されることにより、第2ミストノズル12b,・・・,12bから噴射されたミストは、火炎を取り巻く雰囲気中のミスト量を実質的に高めるため、その分だけ不燃空間が広がっているといえる。従って、その不燃空間の広がりも消火時間の短縮に寄与すると考えられる。
【0052】
なお、消火に際しては、火炎基部領域14を鉛直上方から見たときの、その火炎基部領域の面積、換言すれば、燃料面(又は燃焼面)の面積の略全体が噴射されるミストによって覆われていることが好ましい。
【0053】
尚、本実施形態では、公知のアルカリ性強化液が添加された水を消火剤として用いたが、これに限定されない。消火能力を増大させる他の代替消火剤も適用しうる。例えば、中性強化液等の公知の消火薬液、界面活性剤、及びエタノール等のアルコール類の群から選ばれた少なくとも一種類を添加剤として含む水は、本実施形態及び以下の各変形例に適用しうる。また、本実施形態では、第2ミストノズルからウォーターミストが噴射されているが、これに限定されない。上述の通り、第2ミストノズルは第1ミストノズルの援護的な役割を果たすため、ミスト化される液体であって、消火を阻害しない材料であれば、限定されない。具体的には、消火薬液、界面活性剤、及びアルコールの群から選ばれた少なくとも一種類を添加剤として含む水であれば良い。但し、人体に悪影響を与えない液体(例えば、水やエタノール含有水)が選択されることが非常に好ましい。
【0054】
ところで、上述の各実施形態では、第2ミストノズルから噴射されるミストの流速が、第1ミストノズルから噴射されるミストの流速の約90%に設定されていたが、この数値に限定されない。第2ミストノズルからのミストの流速が、第1ミストノズルからのミストの流速に対して、30%乃至95%の範囲内であれば、第1ミストノズルから噴射されるミストの流れを実質的に阻害しないため、本発明と略同様の効果が奏される。
【0055】
また、上述の第1の実施形態の変形例の一つとして示したL字状のミスト供給部20,20の配置が第2の実施形態に適用されても、実質的に本発明と同様の効果が奏される。以上、述べたとおり、本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、種々の火災に対する消火設備又は消火方法として広く利用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の1つの実施形態における消火設備を示す概略構成図である。
【図2】本発明の1つの実施形態における消火設備の一部の拡大平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】仮想事例の説明図である。
【図5】本発明の他の実施形態における消火設備のミスト供給部の平面図である。
【図6】本発明の他の実施形態における図3に相当する断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態における消火設備を示す概略構成図である。
【図8】本発明の他の実施形態における消火設備の一部の拡大平面図である。
【図9】図8のB−B断面図である。
【図10】ミストの噴出角度を説明する図である。
【符号の説明】
【0058】
10,20,30,40a,40b ミスト供給部
11,21,41a,41b 流路
12a,12b,18 ミストノズル
13,23,33,43a,43b 配管
14 火炎基部領域
16 火炎基部領域の鉛直上方の領域
92,96 ポンプ
94,98 タンク
100,200 消火設備
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミストによる消火設備及びその消火設備による消火方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、消火のためにミストを用いる技術が複数提案されている。例えば、本願出願人が提案したプール火災の消火方法は、燃焼面の上方の複数箇所から火炎基部より上方の火炎中心軸に向かってウォーターミストを放射する方法である(特許文献1)。これにより、ウォーターミストが火炎中で水蒸気になり、その水蒸気により火炎の内部の圧力が高まるため、火炎基部への酸素の流入が抑制され、その結果、消火に寄与することになる。また、本願出願人が別に提案したプール火災の消火方法においても、ウォーターミストによるプール火災の消火方法が提案されている(例えば、特許文献2)。また、特許文献4には、ベンゼン等の貯蔵タンクの上部辺縁にミストノズルが、限定された開放空間であるタンク内に生じる火柱特有の吸引力によって取り込まれる外気の流入を阻止する技術が開示されている(特許文献4)。しかしながら、開放空間におけるミストノズルから噴射されるミストとミストノズルの周囲の空気の関係、又は火炎基部領域又は前記火炎基部領域の鉛直上方の領域に向けて噴射されたミストに対するミストノズルの周囲の空気の影響についての示唆、開示はされていない。
【特許文献1】特開2007−244723号公報
【特許文献2】特開2007−307096号公報
【特許文献3】特開2008−12158号公報
【特許文献4】独国特許発明第912658号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のとおり、火炎による熱の吸収を容易にして蒸発を促進させるために、火炎に対して消火剤の連続的な棒状放射の代わりにそのミストを噴射する方法が消火に対して有効である。しかしながら、一般的なミストノズルを用いた場合、ミストの噴射によって形成される火炎までのミストの流れの中に、ミストノズル又はミストノズルが配置された配管の周辺の一部の空気が取り込まれるという現象が本発明者によって発見された。この空気の取り込みの結果、それらの周辺の空気、とりわけその中の酸素が火炎の中に送り込まれることになるため、ミストによる消火効果を十分に発揮させることが難しい。
【0004】
本発明は、上述の技術課題を解決することにより、ミストによる消火効果の更なる向上に貢献するものである。発明者は、まず、ミストの噴射によって、ミストノズル又は/及びミストノズルが設置された配管の周辺の空気の流れを生じさせていることに着目した。この流れについて詳しく調査した結果、発明者は、この流れがミストの噴射によって形成される火炎までのミストの流れに実質的に合流していることが、これまでのミストによる消火に悪い影響を及ぼしていることを知見した。そこで、発明者は、かかる問題を取り除く消火設備を鋭意研究し、本発明を創出した。
【0005】
本発明の1つの消火設備は、火炎基部領域又はその火炎基部領域の鉛直上方の領域に対向して配置されるとともに、その火炎基部領域又はその火炎基部領域の鉛直上方の領域に向けて噴射する複数の第1ミストノズルと、その各々の第1ミストノズルの噴射角度と交差しない噴射角度を有するとともに、その各々の第1ミストノズルから噴射されるミストの流速よりも遅いミストを噴射し、且つその各々の第1ミストノズルを備えた配管の周囲からその各々の第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断するミストを噴射する複数の第2ミストノズルと、前述の各々の第1ミストノズルに消火剤を送給する送給装置と、前述の各々の第2ミストノズルに液体を送給する送給装置とを備えている。
【0006】
この消火設備は、上述の第1ミストノズルの噴射角度と交差しない噴射角度を有するとともに、その第1ミストノズルから噴射されるミストの流速よりも遅いミストを噴射し、且つ第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断する第2ミストノズルを備えている。すなわち、第2ミストノズルから噴射されるミストは、直接的には第1ミストノズルから噴射されるミストに影響を与えないが、第1ミストノズルを備えた配管の周囲から第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断する。言うなれば、第2ミストノズルは第1ミストノズルを援護する役割を担っている。従って、第2ミストノズルの噴射により、第1ミストノズルからのミストの噴射によって形成される火炎までのミストの流れの中に、第1ミストノズルを備えた配管の周辺の一部の空気が取り込まれてしまうことを防ぐことができる。その結果、火炎の中に送り込まれる空気の量が低減されることによって、特に火炎基部領域が乱されにくくなるため、ミストによる消火効果が十分に高まることになる。また、前述の第2ミストノズルによるミストの噴射により、従来と比較して第1ミストノズルからのミストの流速が落ちることになるため、火炎に突入するミストは従来よりも火炎から熱量を受けやすくなる。その結果、火炎内で蒸気化して消火に寄与する割合が増加すると考えられる。さらに、第2ミストノズルから噴射されたミストは、火炎を取り巻く雰囲気中のミスト量を高めるため、その分だけ不燃空間を広げることができる。この点でも第2ミストノズルは第1ミストノズルを援護することになる。
【0007】
なお、本出願において、ミストノズルから噴射されるミストの「噴射角度」とは、代表的には、図10に示す、ミストノズル18から噴射される消火剤のオリフィス近傍(例えば、オリフィスから10cm離れた場所まで)の飛行範囲の広がり角度θを意味する。
【0008】
また、本発明のもう1つの消火設備は、火炎基部領域又はその火炎基部領域の鉛直上方の領域に対向して配置されるとともに、その火炎基部領域又はその火炎基部領域の鉛直上方の領域に向けて噴射する複数の第1ミストノズルと、その各々の第1ミストノズルから噴射されるミストの流れを実質的に妨げない噴射角度を有するとともに、その各々の第1ミストノズルを備えた配管の周囲からその各々の第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断するミストを噴射する複数の第2ミストノズルと、前述の各々の第1ミストノズルに消火剤を送給する送給装置と、前述の各々の第2ミストノズルに液体を送給する送給装置とを備えている。
【0009】
この消火設備は、上述の第1ミストノズルから噴射されるミストの流れを実質的に妨げない噴射角度を有し、かつ第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断する第2ミストノズルを備えている。すなわち、第2ミストノズルから噴射されるミストは、直接的には第1ミストノズルから噴射されるミストに影響を与えないが、第1ミストノズルを備えた配管の周囲から第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断する。言うなれば、第2ミストノズルは第1ミストノズルを援護する役割を担っている。従って、第2ミストノズルの噴射により、第1ミストノズルからのミストの噴射によって形成される火炎までのミストの流れの中に、第1ミストノズルを備えた配管の周辺の一部の空気が取り込まれてしまうことを防ぐことができる。その結果、火炎の中に送り込まれる空気の量が低減されることによって、特に火炎基部領域が乱されにくくなるため、ミストによる消火効果が十分に高まることになる。また、前述の第2ミストノズルによるミストの噴射により、従来と比較して第1ミストノズルからのミストの流速が落ちることになるため、火炎に突入するミストは従来よりも火炎から熱量を受けやすくなる。その結果、火炎内で蒸気化して消火に寄与する割合が増加すると考えられる。さらに、第2ミストノズルから噴射されたミストは、火炎を取り巻く雰囲気中のミスト量を高めるため、その分だけ不燃空間を広げることができる。この点でも第2ミストノズルは第1ミストノズルを援護することになる。
【0010】
また、本発明の1つの消火方法は、火炎基部領域又はその火炎基部領域の鉛直上方の領域に対向して配置されるとともに、その火炎基部領域又はその火炎基部領域の鉛直上方の領域に向けて噴射する複数の第1ミストノズルに消火剤を送給する工程と、その各々の第1ミストノズルの噴射角度と交差しない噴射角度を有するとともに、前記第1ミストノズルから噴射されるミストの流速よりも遅いミストを噴射する複数の第2ミストノズルに液体を送給する工程と、前述の各々の第1ミストノズルからミストを噴射する工程と、前述の各々の第2ミストノズルからミストを噴射することにより、その各々の第1ミストノズルを備えた配管の周囲からその各々の第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断する工程とを有している。
【0011】
この消火方法によれば、上述の第1ミストノズルの噴射角度と交差しない噴射角度を有するとともに、前記第1ミストノズルから噴射されるミストの流速よりも遅いミストを噴射する複数の第2ミストノズルが、第1ミストノズルを備えた配管の周囲からその第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断する。すなわち、第2ミストノズルから噴射されるミストは、直接的には第1ミストノズルから噴射されるミストに影響を与えないが、第1ミストノズルを備えた配管の周囲から第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断する。いわば、第2ミストノズルは第1ミストノズルを援護する役割を担っている。従って、第2ミストノズルの噴射により、第1ミストノズルからのミストの噴射によって形成される火炎までのミストの流れの中に、第1ミストノズルを備えた配管の周辺の一部の空気が取り込まれてしまうことを防ぐことができる。その結果、火炎の中に送り込まれる空気の量が低減されることによって、特に火炎基部領域が乱されにくくなるため、ミストによる消火効果が十分に高まることになる。また、前述の第2ミストノズルによるミストの噴射により、従来と比較して第1ミストノズルからのミストの流速が落ちることになるため、火炎に突入するミストは従来よりも火炎から熱量を受けやすくなる。その結果、火炎内で蒸気化して消火に寄与する割合が増加すると考えられる。さらに、第2ミストノズルから噴射されたミストは、火炎を取り巻く雰囲気中のミスト量を高めるため、その分不燃空間を広げることができる。この点でも第2ミストノズルは第1ミストノズルを援護することになる。
【0012】
また、本発明のもう1つの消火方法は、火炎基部領域又はその火炎基部領域の鉛直上方の領域に対向して配置されるとともに、その火炎基部領域又はその火炎基部領域の鉛直上方の領域に向けて噴射する複数の第1ミストノズルに消火剤を送給する工程と、その各々の第1ミストノズルから噴射されるミストの流れを実質的に妨げない噴射角度を有する複数の第2ミストノズルに液体を送給する工程と、前述の各々の第1ミストノズルからミストを噴射する工程と、前述の各々の第2ミストノズルからミストを噴射することにより、その各々の第1ミストノズルを備えた配管の周囲からその各々の第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断する工程とを有している。
【0013】
この消火方法によれば、上述の第1ミストノズルから噴射されるミストの流れを実質的に妨げない噴射角度を有する複数の第2ミストノズルが、第1ミストノズルを備えた配管の周囲からその第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断する。すなわち、第2ミストノズルから噴射されるミストは、直接的には第1ミストノズルから噴射されるミストに影響を与えないが、第1ミストノズルを備えた配管の周囲から第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断する。いわば、第2ミストノズルは第1ミストノズルを援護する役割を担っている。従って、第2ミストノズルの噴射により、第1ミストノズルからのミストの噴射によって形成される火炎までのミストの流れの中に、第1ミストノズルを備えた配管の周辺の一部の空気が取り込まれてしまうことを防ぐことができる。その結果、火炎の中に送り込まれる空気の量が低減されることによって、特に火炎基部領域が乱されにくくなるため、ミストによる消火効果が十分に高まることになる。また、前述の第2ミストノズルによるミストの噴射により、従来と比較して第1ミストノズルからのミストの流速が落ちることになるため、火炎に突入するミストは従来よりも火炎から熱量を受けやすくなる。その結果、火炎内で蒸気化して消火に寄与する割合が増加すると考えられる。さらに、第2ミストノズルから噴射されたミストは、火炎を取り巻く雰囲気中のミスト量を高めるため、その分不燃空間を広げることができる。この点でも第2ミストノズルは第1ミストノズルを援護することになる。
【0014】
ところで、本出願において「火炎基部領域」とは、可燃性液体及び/又は可燃物の表面(燃料面)からその鉛直上方300mm以下の柱状空間領域を意味する。但し、「火炎基部領域」は燃料面を含まない。また、本出願において、「噴射方向」とは、水平面とノズルの向きとがなす角度を意味する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の1つの消火設備及び本発明の1つの消火方法によれば、第2ミストノズルの噴射により、第1ミストノズルからのミストの噴射によって形成される火炎までのミストの流れの中に、第1ミストノズルを備えた配管の周辺の一部の空気が取り込まれてしまうことを防ぐことができる。さらに、第2ミストノズルから噴射されたミストは、火炎を取り巻く雰囲気中のミスト量を高めるため、不燃空間を広げることができる。その結果、火炎の中に送り込まれる空気の量が低減されることによって、特に火炎基部領域が乱されにくくなるため、ミストによる消火効果が十分に高まることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
つぎに、本発明の実施形態を、添付する図面に基づいて詳細に述べる。尚、この説明に際し、全図にわたり、特に言及がない限り、共通する部分には共通する参照符号が付されている。また、図中、本実施形態の要素は必ずしもスケール通りに示されていない。また、各図面を見やすくするために、一部の符号が省略されうる。
【0017】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態における消火設備100を示す構成図である。図2は、本実施形態の消火設備100のうち、流路11、配管13、第1ミストノズル12a,・・・,12a、及び第2ミストノズル12b,・・・,12bを拡大した平面図であり、図3は図2のA−A断面図である。
【0018】
図1及び図2に示す本実施形態の消火設備100は、消火剤が、1箇所の消火剤が貯留されたタンク94からポンプ92によって流路11及び配管13を経由して複数の第1ミストノズル12a,・・・,12a及び複数の第2ミストノズル12b,・・・,12bに供給される構成を備えている。第1ミストノズル12a,・・・,12a及び第2ミストノズル12b,・・・,12bは、それぞれが、公知の技術によって配管13に嵌合、螺合、又は接合している。ここで、一体物といえる前述の配管13、第1ミストノズル12a,・・・,12a、及び第2ミストノズル12b,・・・,12bを総称してミスト供給部10と呼ぶ。以下の各実施形態においても、同様の呼称を適用する。
【0019】
また、本実施形態では、火炎基部領域14の下方に形成される燃料面(又は燃焼面)の面積は、0.1m2である。なお、本実施形態では、これらの流路11、配管13、及び第1ミストノズル12a,・・・,12a、及び第2ミストノズル12b,・・・,12bの材質は、SUS304である。また、本実施形態の第1ミストノズル12a,・・・,12a及び第2ミストノズル12b,・・・,12bはいずれも、本願出願人が既に提案している日本国特許出願の特願2007−235227に記載されている小型のミストノズルである。当該ミストノズルは、筐体内の複数の異なる形状を有する薄板の組み合わせを変更することにより、オリフィスから噴射されるミストの噴射角度及び/又は噴射量を異ならせることが出来るノズルである。なお、前述のミストノズルの代わりに、公知のミストノズルが用いられても良い。本実施形態では、設備全体としての軽量化、小型化を図るために、前述のミストノズルが採用されている。
【0020】
また、本実施形態では、図1に示すように、第1ミストノズル12a,・・・,12aは、火炎基部領域14の鉛直上方の領域16に対向する位置に配置されている。他方、複数の第2ミストノズル12b,・・・,12bは、ミストの噴射方向が直接領域16に向かないように配置されるとともに、1つの配管13の中で互いに反対方向にミストを噴射するように配置される。
【0021】
ところで、本実施形態の第1ミストノズル12a,・・・,12aの噴射角度は、90°であり、それらの噴射方向は、燃料面に対して仰角25°である。一方、本実施形態の第2ミストノズル12b,・・・,12bの噴射角度は、75°であり、それらの噴射方向は、図3に示す断面から見れば、第1ミストノズル12a,・・・,12aの噴射角度に対して、時計回りに90°の方向及び反時計回りに90°の方向である。
【0022】
すなわち、第1ミストノズル12a,・・・,12aの噴射角度は、少なくともそれらのミストノズルから噴射されたミストが火炎基部領域14又は火炎基部領域の鉛直上方の領域16に到達するまでの間に、第2ミストノズル12b,・・・,12bの噴射角度と交差しない噴射角度に設定されている。この設定により、第1ミストノズル12a,・・・,12aから噴射されるミストの流れが、第2ミストノズル12b,・・・,12bから噴射されるミストの流れに影響されにくくなる。すなわち、第1ミストノズル12a,・・・,12aからのミストの流れが、火炎基部領域14又は火炎基部領域の鉛直上方の領域16に向かなければ、そのミストが実質的に消火に寄与し得ないため、その流れを邪魔しないように援護することが第2ミストノズル12b,・・・,12bに求められる。なお、仮に、図4に示すように、第1ミストノズル12a,・・・,12aの噴射角度αが第2ミストノズル12b,・・・,12bの噴射角度βと交差する場合は、噴射角度が交差する、換言すれば、噴射範囲が重なる領域Sの方向に第1及び第2ミストノズルから噴射されたミストの多くが流れてしまうことになるため、本来の目的とする方向にミストを向けることが困難になることが確認された。
【0023】
ここで、第1ミストノズル12a,・・・,12aの噴射方向が斜め上方を向いているのは、噴射されるミストの一部が火炎の外縁に沿って上昇することによって、火炎の周囲に存在する空気(酸素を含む)が火炎への侵入を阻害する障壁を形成するからである。その結果、火炎の中に送り込まれる空気の量が低減されることによって、特に火炎基部領域14が乱されにくくなるため、ミストによる消火効果が十分に高まることになる。
【0024】
特に、配管13が、火炎基部領域14の上端から上方に100mm以下の水平面上に配置されている場合は、第1ミストノズル12a,・・・,12aの噴射方向は、火炎基部領域14を乱さないようにするために、水平面に対して仰角0°以上90°未満であることが好ましい。但し、火炎基部領域14内に周囲の空気が流入することを防止するとともに、ミストを十分に火炎基部領域14に供給させるためには、上記角度は水平面に対して10°以上、仰角60°以下であることがさらに好ましい。また、この観点から言えば、最も好ましい範囲は、水平面に対して20°以上、仰角45°以下である。
【0025】
他方、火炎基部領域14の上方の水平面であって、火炎基部領域14の上端から100mmを越えて上方の水平面上に配管13が配置されている場合は、第1ミストノズル12a,・・・,12aの噴射方向が斜め下方を向いていても良い。これは、噴射されるミストが火炎から十分に熱を受けて水蒸気化する一方、火炎基部領域14を大きく乱すことなく消火に寄与することが出来るからである。但し、火炎基部領域14を極力乱さないようにするために、第1ミストノズル12a,・・・,12aは、燃料面を除いて火炎に対してミストを噴射することが好ましい。尚、第2ミストノズル12b,・・・,12bも、そのミストの噴射方向が燃料面に直接向かないことが好ましいが、仮にその方向を向いていたとしても、ミスト自身が燃料面に到達しないような流速で噴射されていれば、消火を阻害することはない。
【0026】
また、消火に際しては、火炎基部領域14を鉛直上方から見たときの、その火炎基部領域14の面積の略全体が噴射されるミストによって覆われていることが好ましい。
【0027】
上述の構成を用いることによって、ミストを用いた消火が可能となる。例えば、油槽に入れられたn−ヘプタンに着火した後、上述のように配置された複数の第1ミストノズル12a,・・・,12aから、圧力0.9MPa、流量0.3L(リットル)/min.の条件で消火剤が噴射された。さらに、噴射方向が鉛直上方及び鉛直下方を向く複数の第2ミストノズル12b,・・・,12bから、圧力0.9MPa、流量0.4L(リットル)/min.の条件で消火剤が噴射された。
【0028】
本実施形態では、第1ミストノズル12a,・・・,12a及び第2ミストノズル12b,・・・,12bは配管13を共通にするため、同じ種類の消火剤が噴射される。なお、本実施形態の消火剤は水である。
【0029】
上述のミストの噴射によって、火炎は約45秒で消火される。このときの消火剤(水)の使用量は、0.83Lであった。尚、各第1ミストノズル12aのオリフィスから10cmの距離におけるミストの平均の流速は、5m/sec.であった。また、各第2ミストノズル12bのオリフィスから10cmの距離におけるミストの平均の流速は、4.5m/sec.であった。すなわち、本実施形態の第2ミストノズル12b,・・・,12bから噴射されるミストの流速は、第1ミストノズル12a,・・・,12aから噴射されるミストの流速に比べて約90%に設定されている。
【0030】
ここで、比較例を示す。配管13が、第2ミストノズル12b,・・・,12bを有しない点以外は上述と同じ構成を備える消火設備を用いた消火実験の結果、火炎は消火がされなかった。また、各ミストノズルのオリフィスから10cmの距離におけるミストの平均の流速は、50m/sec.であった。
【0031】
上述の通り、第2ミストノズル12b,・・・,12bから噴射されるミストにより、第1ミストノズル12a,・・・,12aから噴射されるミストの流速が遅くなっている。これは、第2ミストノズル12b,・・・,12bから噴射されるミストが、第1ミストノズル12a,・・・,12aから火炎に至るまでのミストの流れの中に、配管13の周辺の一部の空気が取り込まれる量を低減させたことが一因と考えられる。さらに、第2ミストノズル12b,・・・,12bから第1ミストノズル12a,・・・,12aのミストよりも流速の遅いミストが噴射されることにより、第2ミストノズル12b,・・・,12bから噴射されたミストは、火炎を取り巻く雰囲気中のミスト量を実質的に高めるため、その分だけ不燃空間が広がっているといえる。従って、その不燃空間の広がりも消火に寄与すると考えられる。
【0032】
このように、火炎に送り込まれるミストの流速を従来と比較して遅くすることにより、ミストが火炎の中を通過する時間、換言すれば、ミストが火炎と接触する時間が長くなるため、そのミストが火炎から受ける熱量も増加する。その結果、より多くのミストが液体から気体へ相変化するため、その際の火炎内部の冷却効果と、そのミストが相変化した水蒸気の体積が膨張することによる火炎内部の酸素濃度の希釈効果が、従来と比較して大幅に向上すると考えられる。なお、従来の対向する配管に配置されたミストノズルであっても、ミストの衝突による火炎内部又はその周辺でのミストの滞留は得られる。しかしながら、本実施形態で採用する第2ミストノズル12b,・・・,12bからのミストの噴射は、単独の配管13に設けられた第1ミストノズル12a,・・・,12aから噴射されるミストの火炎内部又はその周辺における滞留を促進する点は、従来と全く異なる視点に基づくものである。
【0033】
さらに、第2ミストノズル12b,・・・,12bを設けたことにより、火炎を取り巻く周囲を含めた空間全体の中に、高い密度のミストを充満させることが可能となる。従って、第2ミストノズル12b,・・・,12bからのミストは、不燃空間を広げることによる延焼の積極的な防止にも寄与し得る。
【0034】
従って、上述の通り、少量の水での迅速な消火が可能となる。また、本実施形態では水を消火剤として用いたが、一般的に消火が困難とされる上述の実験のようなプール火災であってもウォーターミストによって消火された。これにより、人体への安全性は格段に高まるとともに、環境への負荷が大幅に低減される。
【0035】
尚、本実施形態では、水を消火剤として用いたが、これに限定されない。人体への影響が大きくなると共に環境への負荷は増えるが、消火能力を増大させる他の代替消火剤も適用しうる。例えば、アルカリ性強化液や中性強化液等の公知の消火薬液、界面活性剤、及びエタノール等のアルコール類の群から選ばれた少なくとも一種類を添加剤として含む水は、本実施形態及び以下の各変形例に適用しうる。
【0036】
<第1の実施形態の変形例>
図5は、第1の実施形態の1つのミスト供給部の変形例を示す平面図である。この例では、第1の実施形態の消火設備100のミスト供給部10が、図3に示す2つのミスト供給部20,20に変更されている点以外は、第1の実施形態の消火設備100と同じ構成を備えている。図3に示すように、互いに対向していない2つのミスト供給部20,20は、消火対象となる火炎に対してL字状に配置されている。
【0037】
各ミスト供給部20,20は、図示しない1箇所又は2箇所の消火剤が貯留されたタンクからポンプによって流路21,21及び配管23,23を経由して複数の第1ミストノズル12a,・・・,12a及び複数の第2ミストノズル12b,・・・,12bに供給される構成を備えている。
【0038】
上述のように、ミスト供給部20,20は、複数の第2ミストノズル12b,・・・,12bを備えているため、火炎の中に送り込まれる空気の量が低減される。その結果、特に火炎基部領域が乱されにくくなる。また、火炎に対してL字状に配置されたミスト供給部20,20から噴射されたミスト同士が火炎内部又はその周辺において衝突することによって、単に一列のミスト供給部が配置された場合と比較して、ミストが蒸気化する確率が上がる。従って、本実施形態のミスト供給部20,20の配置により、ミストによる消火効果がさらに高まることになる。
【0039】
<第1の実施形態のその他の変形例>
図6は、第1の実施形態の他のミスト供給部の変形例を示す、第1の実施形態の図3に相当する断面図である。この例では、第1の実施形態の消火設備100のミスト供給部10が、図6に示すミスト供給部30に変更されている点以外は、第1の実施形態の消火設備100と同じ構成を備えている。
【0040】
図6に示すように、第1ミストノズル12a,・・・,12a及び第2ミストノズル12b,・・・,12bは第1の実施形態と同様に1つの配管33に設けられているが、オリフィスが互いに反対の方向を向いている点が第1の実施形態との相違点である。
【0041】
消火対象が第1の実施形態と同じ場合、本実施形態の第1ミストノズル12a,・・・,12a及び第2ミストノズル12b,・・・,12bからのミストの噴射によって、火炎は約3.5秒で消火される。このときの消火剤(水)の使用量は、0.85Lであった。尚、各第1ミストノズル12aのオリフィスから10cmの距離におけるミストの平均の流速は、5m/sec.であった。また、各第2ミストノズル12bのオリフィスから10cmの距離におけるミストの平均の流速は、4.5m/sec.であった。すなわち、本実施形態においても、第2ミストノズル12b,・・・,12bから噴射されるミストの流速は、第1ミストノズル12a,・・・,12aから噴射されるミストの流速に比べて約90%に設定されている。
【0042】
第1の実施形態の比較例及び上述の通り、第2ミストノズル12b,・・・,12bからのミストの噴射方向が、第1ミストノズル12a,・・・,12aからのミストの噴射方向と逆向きであっても、第2ミストノズル12b,・・・,12bから噴射されるミストが第1ミストノズルから噴射されるミストの流速を遅くすることが確認された。従って、本実施形態の第2ミストノズル12b,・・・,12bも消火に寄与しうる。
【0043】
<第2の実施形態>
本実施形態の消火設備200は、第1の実施形態のミスト供給部10が図7に示す2つのミスト供給部40a,40bに変更されているとともに、それぞれのミスト供給部40a,40bが独自の供給源を有している点以外は、第1の実施形態の消火設備100と同じ構成を備えている。従って、重複する説明は省略される。
【0044】
図7は、本実施形態における消火設備200を示す構成図である。図8は、本実施形態の消火設備200のうち、ミスト供給部40a,40bを拡大した平面図であり、図9は図8のB−B断面図である。
【0045】
図7乃至図9に示すように、本実施形態の消火設備200は、2つのミスト供給部40a,40bを備えている。一方のミスト供給部40aは、タンク98から、ポンプ96によって公知のアルカリ性強化液が添加された水が流路41aを経由して供給される。他方、ミスト供給部40bは、タンク94から、ポンプ92によって水が流路41bを経由して供給される。その結果、複数の第1ミストノズル12a,・・・,12aは、火炎基部領域14又は前記火炎基部領域の鉛直上方の領域16に対して公知のアルカリ性強化液が添加された水を噴射するとともに、複数の第2ミストノズル12b,・・・,12bは、水を噴射する。ここで、複数の第2ミストノズル12b,・・・,12bの噴射方向は、第1の実施形態と同様、図9に示す断面から見れば、第1ミストノズル12a,・・・,12aの噴射角度に対して、時計回りに90°の方向及び反時計回りに90°の方向である。また、本実施形態では、第1ミストノズル12a,・・・,12aの噴射方向は、水平面に対して仰角25°である。加えて、本実施形態では、ミスト供給部40a,40bを構成する各部材の材質はSUS304である。
【0046】
本実施形態では、ミスト供給部40bの第2ミストノズル12b,・・・,12bからウォーターミストが噴射される。この第2ミストノズル12b,・・・,12bの噴射角度は、配管43a,43bの周囲の空気がミスト供給部40aの第1ミストノズル12a,・・・,12aから噴射されるミストの流れに可能な限り取り込まれないようにするとともに、第1ミストノズル12a,・・・,12aから噴射されるミストの流れを実質的に妨げないように設定される。
【0047】
ところで、配管43aと配管43bとの距離が離れすぎると、配管43aの周囲の空気がミスト供給部40aの第1ミストノズル12a,・・・,12aから噴射されるミストの流れに取り込まれることになるため、第2ミストノズル12b,・・・,12bの存在意義が薄れてしまう。従って、配管43aと配管43bとの距離は、80mm以下であることが好ましい。
【0048】
また、本実施形態では、2つのミスト供給部40a,40bのそれぞれに対して種類の異なる液体を供給している。すなわち、消火に直接的に寄与する第1ミストノズル12a,・・・,12aには、より消火に効果的な消火剤が供給されている一方、第1ミストノズル12a,・・・,12aを援護するための第2ミストノズル12b,・・・,12bには水が供給されている。例えば、プール火災(ガソリン火災)のような消火しにくい対象物に対しては、前述のように液体の種類を異ならせることにより、効率的な消火を達成しつつ消火に要する費用の削減を図ることが可能となる。
【0049】
上述の構成を用いることによって、ミストを用いた消火が可能となる。例えば、油槽に入れられたn−ヘプタンに着火した後、上述のように配置された複数の第1ミストノズル12a,・・・,12aから、圧力0.9MPa、流量0.3L(リットル)/min.の条件で消火剤が噴射された。さらに、噴射方向が鉛直上方及び鉛直下方を向く複数の第2ミストノズル12b,・・・,12bから、圧力0.9MPa、流量0.4L(リットル)/min.の条件でウォーターミストが噴射された。
【0050】
上述のミストの噴射によって、火炎は約4.5秒で消火される。このとき、第1ミストノズル12a,・・・,12aによる消火剤の使用量は、0.225Lであった。また、各第1ミストノズル12aのオリフィスから10cmの距離におけるミストの平均の流速は、5m/sec.であった。他方、第2ミストノズル12b,・・・,12bによる水の使用量は、0.3Lであった。また、各第2ミストノズル12bのオリフィスから10cmの距離におけるミストの平均の流速は、4.5m/sec.であった。従って、本実施形態でも、第2ミストノズル12b,・・・,12bから噴射されるミストの流速は、第1ミストノズル12a,・・・,12aから噴射されるミストの流速に比べて約90%に設定されている。
【0051】
上述の通り、第1ミストノズル12a,・・・,12aが形成されたミスト供給部40aとは別のミスト供給部40bに設けられた第2ミストノズル12b,・・・,12bから噴射されるミストにより、第1ミストノズル12a,・・・,12aから噴射されるミストの流速が遅くなっている。これは、第2ミストノズル12b,・・・,12bから噴射されるミストが、第1ミストノズル12a,・・・,12aから火炎に至るまでのミストの流れの中に、配管13a,13bの周辺の一部の空気が取り込まれる量を低減させたことが一因と考えられる。さらに、第2ミストノズル12b,・・・,12bから第1ミストノズル12a,・・・,12aのミストよりも流速の遅いミストが噴射されることにより、第2ミストノズル12b,・・・,12bから噴射されたミストは、火炎を取り巻く雰囲気中のミスト量を実質的に高めるため、その分だけ不燃空間が広がっているといえる。従って、その不燃空間の広がりも消火時間の短縮に寄与すると考えられる。
【0052】
なお、消火に際しては、火炎基部領域14を鉛直上方から見たときの、その火炎基部領域の面積、換言すれば、燃料面(又は燃焼面)の面積の略全体が噴射されるミストによって覆われていることが好ましい。
【0053】
尚、本実施形態では、公知のアルカリ性強化液が添加された水を消火剤として用いたが、これに限定されない。消火能力を増大させる他の代替消火剤も適用しうる。例えば、中性強化液等の公知の消火薬液、界面活性剤、及びエタノール等のアルコール類の群から選ばれた少なくとも一種類を添加剤として含む水は、本実施形態及び以下の各変形例に適用しうる。また、本実施形態では、第2ミストノズルからウォーターミストが噴射されているが、これに限定されない。上述の通り、第2ミストノズルは第1ミストノズルの援護的な役割を果たすため、ミスト化される液体であって、消火を阻害しない材料であれば、限定されない。具体的には、消火薬液、界面活性剤、及びアルコールの群から選ばれた少なくとも一種類を添加剤として含む水であれば良い。但し、人体に悪影響を与えない液体(例えば、水やエタノール含有水)が選択されることが非常に好ましい。
【0054】
ところで、上述の各実施形態では、第2ミストノズルから噴射されるミストの流速が、第1ミストノズルから噴射されるミストの流速の約90%に設定されていたが、この数値に限定されない。第2ミストノズルからのミストの流速が、第1ミストノズルからのミストの流速に対して、30%乃至95%の範囲内であれば、第1ミストノズルから噴射されるミストの流れを実質的に阻害しないため、本発明と略同様の効果が奏される。
【0055】
また、上述の第1の実施形態の変形例の一つとして示したL字状のミスト供給部20,20の配置が第2の実施形態に適用されても、実質的に本発明と同様の効果が奏される。以上、述べたとおり、本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、種々の火災に対する消火設備又は消火方法として広く利用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の1つの実施形態における消火設備を示す概略構成図である。
【図2】本発明の1つの実施形態における消火設備の一部の拡大平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】仮想事例の説明図である。
【図5】本発明の他の実施形態における消火設備のミスト供給部の平面図である。
【図6】本発明の他の実施形態における図3に相当する断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態における消火設備を示す概略構成図である。
【図8】本発明の他の実施形態における消火設備の一部の拡大平面図である。
【図9】図8のB−B断面図である。
【図10】ミストの噴出角度を説明する図である。
【符号の説明】
【0058】
10,20,30,40a,40b ミスト供給部
11,21,41a,41b 流路
12a,12b,18 ミストノズル
13,23,33,43a,43b 配管
14 火炎基部領域
16 火炎基部領域の鉛直上方の領域
92,96 ポンプ
94,98 タンク
100,200 消火設備
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炎基部領域又は前記火炎基部領域の鉛直上方の領域に対向して配置されるとともに、前記火炎基部領域又は前記火炎基部領域の鉛直上方の領域に向けて噴射する複数の第1ミストノズルと、
前記各々の第1ミストノズルの噴射角度と交差しない噴射角度を有するとともに、前記各々の第1ミストノズルから噴射されるミストの流速よりも遅いミストを噴射し、且つ前記各々の第1ミストノズルを備えた配管の周囲から前記各々の第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断するミストを噴射する複数の第2ミストノズルと、
前記各々の第1ミストノズルに消火剤を送給する送給装置と、
前記各々の第2ミストノズルに液体を送給する送給装置とを備えた
消火設備。
【請求項2】
火炎基部領域又は前記火炎基部領域の鉛直上方の領域に対向して配置されるとともに、前記火炎基部領域又は前記火炎基部領域の鉛直上方の領域に向けて噴射する複数の第1ミストノズルと、
前記各々の第1ミストノズルから噴射されるミストの流れを実質的に妨げない噴射角度を有するとともに、前記各々の第1ミストノズルを備えた配管の周囲から前記各々の第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断するミストを噴射する複数の第2ミストノズルと、
前記各々の第1ミストノズルに消火剤を送給する送給装置と、
前記各々の第2ミストノズルに液体を送給する送給装置とを備えた
消火設備。
【請求項3】
前記液体が前記消火剤であり、前記各々の第1ミストノズル及び前記各々の第2ミストノズルが1つの配管に配置されている
請求項1又は請求項2に記載の消火設備。
【請求項4】
前記各々の第1ミストノズル及び前記各々の第2ミストノズルが、燃料面を除いてミストを噴射する
請求項1又は請求項2に記載の消火設備。
【請求項5】
前記消火剤及び前記液体が、水、又は消火薬液、界面活性剤、及びアルコールの群から選ばれた少なくとも一種類を添加剤として含む水である
請求項1又は請求項2に記載の消火設備。
【請求項6】
火炎基部領域又は前記火炎基部領域の鉛直上方の領域に対向して配置されるとともに、前記火炎基部領域又は前記火炎基部領域の鉛直上方の領域に向けて噴射する複数の第1ミストノズルに消火剤を送給する工程と、
前記各々の第1ミストノズルの噴射角度と交差しない噴射角度を有するとともに、前記第1ミストノズルから噴射されるミストの流速よりも遅いミストを噴射する複数の第2ミストノズルに液体を送給する工程と、
前記各々の第1ミストノズルからミストを噴射する工程と、
前記各々の第2ミストノズルからミストを噴射することにより、前記各々の第1ミストノズルを備えた配管の周囲から前記各々の第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断する工程とを有する
消火方法。
【請求項7】
火炎基部領域又は前記火炎基部領域の鉛直上方の領域に対向して配置されるとともに、前記火炎基部領域又は前記火炎基部領域の鉛直上方の領域に向けて噴射する複数の第1ミストノズルに消火剤を送給する工程と、
前記各々の第1ミストノズルから噴射されるミストの流れを実質的に妨げない噴射角度を有する複数の第2ミストノズルに液体を送給する工程と、
前記各々の第1ミストノズルからミストを噴射する工程と、
前記各々の第2ミストノズルからミストを噴射することにより、前記各々の第1ミストノズルを備えた配管の周囲から前記各々の第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断する工程とを有する
消火方法。
【請求項8】
前記液体が前記消火剤であり、前記各々の第1ミストノズル及び前記各々の第2ミストノズルが1つの配管に配置されている
請求項6又は請求項7に記載の消火方法。
【請求項9】
前記各々のミストノズルが、燃料面を除いて火炎に対して前記ミストを噴射する
請求項6又は請求項7に記載の消火方法。
【請求項1】
火炎基部領域又は前記火炎基部領域の鉛直上方の領域に対向して配置されるとともに、前記火炎基部領域又は前記火炎基部領域の鉛直上方の領域に向けて噴射する複数の第1ミストノズルと、
前記各々の第1ミストノズルの噴射角度と交差しない噴射角度を有するとともに、前記各々の第1ミストノズルから噴射されるミストの流速よりも遅いミストを噴射し、且つ前記各々の第1ミストノズルを備えた配管の周囲から前記各々の第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断するミストを噴射する複数の第2ミストノズルと、
前記各々の第1ミストノズルに消火剤を送給する送給装置と、
前記各々の第2ミストノズルに液体を送給する送給装置とを備えた
消火設備。
【請求項2】
火炎基部領域又は前記火炎基部領域の鉛直上方の領域に対向して配置されるとともに、前記火炎基部領域又は前記火炎基部領域の鉛直上方の領域に向けて噴射する複数の第1ミストノズルと、
前記各々の第1ミストノズルから噴射されるミストの流れを実質的に妨げない噴射角度を有するとともに、前記各々の第1ミストノズルを備えた配管の周囲から前記各々の第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断するミストを噴射する複数の第2ミストノズルと、
前記各々の第1ミストノズルに消火剤を送給する送給装置と、
前記各々の第2ミストノズルに液体を送給する送給装置とを備えた
消火設備。
【請求項3】
前記液体が前記消火剤であり、前記各々の第1ミストノズル及び前記各々の第2ミストノズルが1つの配管に配置されている
請求項1又は請求項2に記載の消火設備。
【請求項4】
前記各々の第1ミストノズル及び前記各々の第2ミストノズルが、燃料面を除いてミストを噴射する
請求項1又は請求項2に記載の消火設備。
【請求項5】
前記消火剤及び前記液体が、水、又は消火薬液、界面活性剤、及びアルコールの群から選ばれた少なくとも一種類を添加剤として含む水である
請求項1又は請求項2に記載の消火設備。
【請求項6】
火炎基部領域又は前記火炎基部領域の鉛直上方の領域に対向して配置されるとともに、前記火炎基部領域又は前記火炎基部領域の鉛直上方の領域に向けて噴射する複数の第1ミストノズルに消火剤を送給する工程と、
前記各々の第1ミストノズルの噴射角度と交差しない噴射角度を有するとともに、前記第1ミストノズルから噴射されるミストの流速よりも遅いミストを噴射する複数の第2ミストノズルに液体を送給する工程と、
前記各々の第1ミストノズルからミストを噴射する工程と、
前記各々の第2ミストノズルからミストを噴射することにより、前記各々の第1ミストノズルを備えた配管の周囲から前記各々の第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断する工程とを有する
消火方法。
【請求項7】
火炎基部領域又は前記火炎基部領域の鉛直上方の領域に対向して配置されるとともに、前記火炎基部領域又は前記火炎基部領域の鉛直上方の領域に向けて噴射する複数の第1ミストノズルに消火剤を送給する工程と、
前記各々の第1ミストノズルから噴射されるミストの流れを実質的に妨げない噴射角度を有する複数の第2ミストノズルに液体を送給する工程と、
前記各々の第1ミストノズルからミストを噴射する工程と、
前記各々の第2ミストノズルからミストを噴射することにより、前記各々の第1ミストノズルを備えた配管の周囲から前記各々の第1ミストノズルから噴射されるミストへの空気の流通の少なくとも一部を遮断する工程とを有する
消火方法。
【請求項8】
前記液体が前記消火剤であり、前記各々の第1ミストノズル及び前記各々の第2ミストノズルが1つの配管に配置されている
請求項6又は請求項7に記載の消火方法。
【請求項9】
前記各々のミストノズルが、燃料面を除いて火炎に対して前記ミストを噴射する
請求項6又は請求項7に記載の消火方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−12064(P2010−12064A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175330(P2008−175330)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(391008320)株式会社初田製作所 (78)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(391008320)株式会社初田製作所 (78)
【Fターム(参考)】
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