説明

ミスト発生装置

【課題】ハウジングの底壁部に設けられた孔部とこの孔部に挿入するロータの軸状部との位置合わせに誤差が生じているような場合であっても、ロータの回転時においてハウジング内の液体が前記孔部を通過して装置下方に流れ落ちることを適切に抑制し得るミスト発生装置を提供する。
【解決手段】ミスト発生装置MGは、ハウジングHの底壁部11に設けられている孔部16の下方に位置し、かつ貯液部14の液体が隙間16aからその下方に漏出したときにこの液体の少なくとも一部を受けることが可能な液体受け部4を備えており、この液体受け部4の上面部40と軸状部21の下端部とは、互いに接近または接触していることにより、液体受け部4上に受けられた液体をロータの回転時に軸状部21の外周面に沿って上昇させることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水などの液体のミスト化(霧状化、微粒子化)を図ることが可能なミスト発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、ミスト発生装置の具体例として、特許文献1,2に記載されたものを先に提案している。これらの文献に記載されたミスト発生装置は、貯液部を有するハウジングと、このハウジング内に設けられた回転自在なロータとを備えている。前記ロータは、貯液部に貯留された水を上方に汲み上げることが可能な軸状部を有しており、この軸状部によって汲み上げられた水がその後に遠心力によってロータの周囲に高速で飛散する。飛散した水は、ハウジングに設けられている衝突壁部に衝突することによりミスト化されてハウジングの外部に噴出する。
【0003】
前記ミスト発生装置においては、ハウジングの底壁部に孔部を設け、かつこの孔部にロータの軸状部を進入させている。このような構成によれば、ハウジングの外面に付着した水滴が底壁部の外面を伝って孔部の形成箇所まで進行すると、この水は、前記軸状部のポンピング作用によって前記孔部内に吸い込まれてハウジング内に流入する。したがって、ハウジングの底壁部からその下方に流れ落ちる水滴の量を少なくすることができる。前記ミスト発生装置は、たとえば浴室の天井部またはその付近の比較的高い箇所に設置されて、ミストシャワーを浴びるといった用途に利用されるが、ミストシャワーを浴びている際に、ミスト発生装置から入浴者の頭上に多くの水滴が流れ落ちてくることを好適に防止することが可能である。
【0004】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0005】
すなわち、前記ロータの回転時に前記ハウジングの底壁部の孔部からその下方に向けて水が全く漏れないようにするには、ミスト発生装置の製造工程において、軸状部と孔部との位置合わせをかなり正確に行なう必要がある。軸状部と孔部との中心が互いに位置ずれしていると、軸状部の回転時であっても、ハウジング内の水が前記孔部からその下方に漏出する事態を招く虞がある。ところが、ミスト発生装置を実際に組み立てて製造する場合、種々の事情により、軸状部と孔部との位置合わせに比較的大きな誤差を生じてしまう場合があり、このような場合には、前記したようにハウジング内の水が孔部から漏出し、ミスト発生装置の下方に流れ落ちる不具合を生じてしまう。したがって、このような点において改善すべき余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−261609号公報
【特許文献2】特開2008−261610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、ハウジングの底壁部に設けられた孔部とこの孔部に挿入するロータの軸状部との位置合わせに誤差が生じているような場合であっても、ロータの回転時においてハウジング内の液体が前記孔部を通過して装置の下方に流れ落ちることを適切に抑制することが可能なミスト発生装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明により提供されるミスト発生装置は、液体を貯留可能な貯液部を形成する底壁部を有し、かつこの底壁部に孔部が貫通して設けられているハウジングと、前記孔部内に隙間を生じるように前記孔部に挿入された軸状部を有し、かつ回転時には前記貯液部および前記隙間に存在する液体を前記軸状部の外周面に沿って上昇させてから周囲に飛散させてミスト化を図るためのロータと、を具備している、ミスト発生装置であって、前記孔部の下方に位置し、かつ前記貯液部の液体が前記隙間からその下方に漏出したときにこの液体の少なくとも一部を受けることが可能な液体受け部を備えており、この液体受け部の上面部と前記軸状部の下端部とは、互いに接近または接触していることにより、前記液体受け部上に受けられた液体を前記ロータの回転時において前記軸状部の外周面に沿って上昇させることが可能な構成とされていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、ハウジングの底壁部に設けられた孔部と、この孔部に挿入するロータの軸状部との位置合わせに誤差が生じていることなどに起因し、仮に、貯液部の液体が前記孔部からその下方に漏出したとしても、この液体は液体受け部によって受けられる。また、このようにして液体受け部によって受けられた液体は、ロータの軸状部のポンピング作用により軸状部の外周面に沿って上昇し、貯液部に汲み上げられて回収される。したがって、ロータの回転時において、液体受け部からその下方に多くの液体が流れ落ちることもない。その結果、ミスト発生装置の下方に液体が流れ落ちることが適切に抑制される。このようなことにより、本発明のミスト発生装置がたとえばミストシャワー用途に利用される場合、ミストシャワーを浴びている入浴者の頭上に多くの水が滴下するといった不具合を生じないようにすることが、従来技術と比較して、より確実化される。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記ハウジングの底壁部と前記液体受け部との間には、前記液体受け部上に存在する液体の量が所定量を超えたときにこの液体の一部を前記液体受け部の下方に溢れ落とすことが可能な開口部または隙間が設けられており、前記ロータの回転停止時において、前記所定量を超える液体が前記液体受け部上に滞留することが防止される構成とされている。
【0012】
このような構成によれば、ロータの回転停止時において、液体受け部上に所定量を超える多くの液体が滞留したままになることが回避される。したがって、液体受け部の上面部を早期に乾燥させ得るものとし、この部分を衛生的な状態に維持するのに好ましいものとなる。なお、ロータの回転停止時に、何らかの事情に起因してハウジングの外部から内部に液体が進入する事態を生じた場合には、この液体を底壁部の孔部から液体受け部上に向けて排出させることが可能であり、液体受け部上のみならず、ハウジング内に多くの液体が滞留したままになることも適切に防止される。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記液体受け部の上面部は、前記軸状部の下端部よりも大径であり、かつ略水平な平面状である。
【0014】
このような構成によれば、液体受け部上に受けられた液体を、ロータの軸状部の下端部よりも大きな直径の領域に分布させて軸状部の外周面に接触させることが可能となり、ロータの回転時において、前記液体を軸状部の外周面に沿って効率良く上昇させることができる。また、前記構成によれば、たとえば液体受け部の上面部が凹状に窪んでいる場合と比較すると、ロータの回転停止時において前記液体受け部の上面部上に滞留する液体の量をかなり少なくすることが可能であり、液体受け部を早期に乾燥可能なものとして、衛生に優れたものとするのに、より好ましいものとなる。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記液体受け部は、前記底壁部から下向きまたは斜め下向きに突出した少なくとも1つの支持部に支持されている。
【0016】
このような構成によれば、液体受け部がハウジングの底壁部に支持されているために、全体の大型化や、部品点数の増加などを抑制するのに好適である。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記支持部の下端部は、前記液体受け部の上面部に繋がり、かつ前記液体受け部の上面部は、前記支持部の下端部よりも外側方にはみ出したはみ出し部を有しており、前記ハウジングの底壁部の外面に付着した液体が前記支持部の外面を伝って下降したときに、この液体を前記はみ出し部によって受けることが可能とされている。
【0018】
このような構成によれば、ハウジングの底壁部の外面に付着した水滴などの液体のうち、前記支持部の外面を伝って下降する一部の液体は、液体受け部のはみ出し部によって受けられ、ハウジングや液体受け部の下方にそのまま滴下しないようにすることができる。したがって、ミスト発生装置の下方に滴下する液体の量をより減少させる効果が得られる。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記底壁部、前記支持部、および前記液体受け部は、一体的に樹脂成形されており、前記樹脂成形によって前記液体受け部に生じるパーティングラインは、前記液体受け部の略中心部から外縁部に向けて延びており、前記液体受け部には、この液体受け部の周方向に延びたパーティングラインが存在しない構成とされている。
【0020】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。すなわち、ハウジングの底壁部、支持部、および液体受け部を一体的に樹脂成形する際に生じるパーティングラインが、前記構成とは異なり、液体受け部の周方向に延びている場合には、ハウジングの底壁部の外面に付着した液体が支持部を伝って液体受け部上に導かれる際に、前記パーティングラインが障害となって、液体が円滑に液体受け部上に到達し難くなる不具合を生じ易い。これに対し、前記構成によれば、そのような不具合が好適に解消され、底壁部の外面から支持部を伝って液体受け部上に導かれる液体の割合を多くし、支持部から液体受け部の下方に流れ落ちる液体の量を少なくするのに、一層好適となる。
【0021】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るミスト発生装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】(a)は、図1のA部拡大断面図であり、(b)は、(a)のII−II断面図である。
【図3】図1のIII−III断面図である。
【図4】(a)は、図1に示すミスト発生装置のハウジングなどの要部を樹脂成形する工程の一例を示す要部断面図であり、(b)は、(a)のIV−IV断面図である。
【図5】(a)は、ミスト発生装置のハウジングなどの要部を樹脂成形する工程の他の例を示す要部断面図であり、(b)は、(a)のV−V断面図である。
【図6】本発明に係るミスト発生装置に設けられる液体受け部の他の例を示す要部断面図である。
【図7】(a)は、図6に示す部分を樹脂成形する工程の一例を示す要部断面図であり、(b)は、(a)のVII−VII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
図1〜図3は、本発明に係るミスト発生装置の一例を示している。図1によく表われているように、本実施形態のミスト発生装置MGは、ハウジングH、ロータ2、このロータ2の駆動用のモータM、および液体受け部4を具備している。本実施形態については、ミスト化対象の液体として、加熱または非加熱の水(湯水)を用いる場合について説明する。なお、ミスト発生装置MGは、既述した特許文献1,2に記載されたミスト発生装置と比較すると、液体受け部4に関する構成など、一部の構成は相違するが、それ以外の基本的な構成において共通する部分がある。したがって、特許文献1,2と共通する構成については、比較的簡単に説明する
【0025】
ハウジングHは、全体の概略形状が上面開口のカップ状とされたハウジング本体1と、このハウジング本体1上にネジ体90を用いて組み付けられたカバー体19とを具備している。ハウジング本体1およびカバー体19は、ともに合成樹脂製であるが、これに代えて、たとえばアルミダイカストなどの金属製とすることもできる。ハウジング本体1は、底壁部11、この底壁部11の外周縁から上向きに起立した複数の衝突壁部12、および複数のミスト噴出口13を有している。カバー体19上には、適当なスペーサ31を介してモータMが載設されており、このモータMとカバー体19との間には、空気流通用の隙間が形成されている。この隙間を通過してきた外部空気は、カバー体19に設けられた空気流入口32を通過してハウジングH内に流入可能である。この空気流入は、ロータ2が高速回転する際にハウジングH内に空気の乱流が生じることを抑制するのに役立つ。ハウジングH内には、給水管92の一部が引き込まれており、ハウジングH内の下部は、外部から給水管92を介して供給されてきた水を適当量貯留可能な貯液部14として形成されている。
【0026】
ロータ2は、モータMの駆動軸30に支持されてハウジングH内に収容されており、円板状の回転板20と、この回転板20の中央部から下向きに突出した液体汲み上げ用の軸状部21とを有している。軸状部21は、上部寄りほど大径となる円錐状または円錐台状である。この軸状部21を高速で回転させた際には、貯液部14に貯留されている水をこの軸状部21の外周面に沿った膜状として上昇させることが可能であり、このようにして上昇した水は、その後に回転板20の下面の中央寄り領域から外周方向に向けて加速され、回転板20の周囲に飛散する。ハウジングHの底壁部11には、複数のリブ15が起立して設けられている。これらのリブ15は、ロータ2の回転時において、軸状部21の周囲の空気が乱流状態になることを抑制するのに役立つ。
【0027】
複数の衝突壁部12は、ロータ2の回転板20から飛散してくる水を衝突させて微小粒径のミストを発生させるための部位であり、図3に示すように、ロータ2の回転板20の周囲を囲むようにして略等間隔で並んだリブ状である。これら複数の衝突壁部12は、ハウジングHの周壁部10を構成しており、これら複数の衝突壁部12どうしの隙間のうち、ハウジングHの周囲に向けて開口する部分が、ミスト噴出口13である。ハウジングH内において発生したミストは、各ミスト噴出口13からハウジングHの周囲に向けて噴出する。
【0028】
ハウジングHの底壁部11は、その外面の略全体がこの底壁部11の中心寄り部分ほど高さが低くなるように傾斜した形状とされており、この底壁部11の中心部には、孔部16が貫通して設けられている。ロータ2の軸状部21の下部は、孔部16に挿通しており、この孔部16の内周面と軸状部21の外周面との間には、たとえば0.数mm〜3mmほどの隙間16aが形成されている。この隙間16aに存在する水は、後述する例外を除き、軸状部21の外周面に沿って水を上昇させる力によって常時上方に汲み上げられる結果、孔部16の下方には漏れない。このことにより、ロータ2の回転時には、貯液部14に一定量の水を適切に貯留させておくことが可能である。もちろん、ロータ2の回転停止時には、ハウジングH内に存在する水を孔部16から下方に排出させることができる。
【0029】
液体受け部4は、貯液部14の水が孔部16の隙間16aから下方に漏出した際に、この水を受けるための部分であるが、後述するように、ハウジング本体1の外面に付着して底壁部11の外面を伝ってきた一部の液体を受ける機能をも発揮する。図2によく表われているように、この液体受け部4は、底壁部11から下向きまたは斜め下向きに突出した複数(図面では、3つ)の支持部5により支持されて孔部16の直下に設けられている。底壁部11と液体受け部4との間のうち、複数の支持部5以外の箇所は、開口部6または隙間となっており、液体受け部4上に存在する水の量が所定量を超えたときにはこの水の一部が開口部6から液体受け部4の下方に溢れ落ち、液体受け部4上には所定量以上の水が滞留しないようになっている。
【0030】
液体受け部4は、上面部40が略水平な平面状とされた円板状であり、その外径d1は、軸状部21の下端部の外径d2よりも大きくされている。一例を挙げると、軸状部21の外径d2が10mmであるのに対し、液体受け部4の外径d1は、15〜20mmとされている。液体受け部4の上面部40と軸状部21の下端面との隙間の幅s1は、たとえば0.数mm〜4mm程度の小寸法とされており、上面部40と軸状部21の下端面とは互いに接近している。このことにより、軸状部21の回転時には、液体受け部4上に存在する水を軸状部21のポンピング作用により軸状部21の外周面に沿って上昇させることが可能である。ただし、上面部40と軸状部21との隙間の寸法を実質的にゼロとし、それらを接触させた構成とすることもできる。
【0031】
複数の支持部5の下端部は、液体受け部4の上面部40に繋がっているが、この上面部40の外縁部40a寄りの部分は、複数の支持部5の下端部よりも外側方に適当な寸法s2(たとえば、数mm程度)はみ出したはみ出し部41とされている。このはみ出し部41は、後述するように、支持部5の外面50を伝って下降してきた水を確実に受ける役割を果たす。
【0032】
ハウジング本体1、複数の支持部5、および液体受け部4は、一体的に樹脂成形されている。この樹脂成形に際しては、たとえば図4に示すような金型D1〜D4が用いられ、液体受け部4の上面部40に生じる複数のパーティングラインPL1〜PL3が、液体受け部4の中心部Oから外縁部40aに向かう半径方向に延びるように配置されている。より具体的には、金型D1は、ハウジング本体1の上面部分を成形するためのものであり、他の3つの金型D2〜D4は、ハウジング本体1の下面部分、複数の支持部5、および液体受け部4を成形するためのものである。矢印N1〜N4は、金型D1〜D4の抜き方向である。3つの金型D2〜D4は、液体受け部4の半径方向に延びるライン上において互いに接触するように構成されており、それらの接触部分がパーティングラインPL1〜PL3となる。図6および図7を参照して後述する他の実施形態では、パーティングラインPL4が液体受け部4の外縁部40aに沿って延びるように形成され、このパーティングラインPL4は底壁部11から液体受け部4上への水の流れ込みを阻害する要因となる。これに対し、本実施形態においては、そのようなパーティングラインPL4は存在しない。
【0033】
次に、前記したミスト発生装置MGの作用について説明する。
【0034】
ミスト発生装置MGは、たとえば浴室に設置され、ミストシャワーを浴びたり、ミストサウナ浴を行なうのに利用される。この場合、ミスト発生装置MGは、浴室の天井部に直接取り付けたり、あるいは浴室の天井部やその近傍に設置された浴室暖房乾燥機に取り付けるなどして、浴室の上部に設置することとなる。ミストを発生させる場合には、給水管92からハウジングH内に給水を行なうとともに、モータMを駆動させてロータ2を回転させる。このことにより、既述したように、ハウジングH内の貯液部14に貯留された水は、ロータ2の軸状部21により汲み上げられてから回転板20の周囲に飛散し、複数の衝突壁部12に衝突してミスト化される。このようにして発生したミストは、複数のミスト噴出口13からハウジングHの周囲に向けて噴出し、その後に重力によって徐々に下降していく。したがって、浴室内におけるミスト発生装置MGの下方の広い空間領域に多くのミストを効率良く供給することができる。
【0035】
ミスト発生時には、ミストがハウジングHの外面に接触して水滴化を生じ、ハウジングHの外面に多くの水が付着する場合がある。ハウジングHの底壁部11に付着した水の一部は、底壁部11の傾斜に沿って下方に向けて進行し、孔部16の形成箇所に到達する。すると、この水は、ロータ2の軸状部21の回転により生じているポンピング作用によって孔部16に積極的に吸い込まれ、貯液部14に流入する。したがって、底壁部11から多くの水滴が下方に流れ落ちることが抑制される。
【0036】
一方、底壁部11に付着した水のなかには、各支持部5の外面50を下向きに伝って液体受け部4上に導かれるものもある。液体受け部4は、既述したように、複数の支持部5よりも外側方にはみ出したはみ出し部41を有しているために、支持部5の外面50を伝った水は、このはみ出し部41によって確実に受けられることとなり、液体受け部4を素通りしてそのまま下方に流れ落ちる水の量を少なくすることができる。さらに、液体受け部4の上面部40に存在するパーティングラインPL1〜PL3は、液体受け部4の中心部Oから外縁部40aに向けて延びているために、このパーティングラインPL1〜PL3が、液体受け部4上における半径方向への水の流れを阻害するといった不具合もない。
【0037】
前記のようにして液体受け部4上に受けられた水は、ロータ2の軸状部21のポンピング作用により上方に汲み上げられ、貯液部14に流入する。したがって、底壁部11の外面の水が支持部5を伝って液体受け部4上に順次流れ込む状態が継続した場合であっても、液体受け部4から水が溢れ落ちないようにすることができる。液体受け部4から貯液部14に汲み上げられた水や、孔部16内に吸い込まれた水は、ミスト発生に再利用される。
【0038】
ミスト発生装置MGの組み立てに際しては、種々の事情により、軸状部21と孔部16との位置合わせに誤差を生じ、これらの中心が互いに位置ずれする場合がある。この位置ずれ量が比較的大きい場合には、ロータ2の回転時であっても、貯液部14の水が孔部16を通過してその下方に漏出する。ただし、この水は、液体受け部4によって受けられる。また、このようにして受けられた水は、既述した支持部5を伝ってきた水と同様に、軸状部21が回転することにより生じるポンピング作用によって貯液部14まで汲み上げられる。したがって、軸状部21と孔部16との位置ずれに起因して孔部16から水が漏出する現象を仮に生じたとしても、この水をミスト発生装置MGの下方に流れ落ちないようにすることができる。このようなことから、本実施形態のミスト発生装置MGでは、ミスト発生装置MGの下方に存在する入浴者の頭上に多くの水滴が落ちないようにすることが可能である。
【0039】
ミスト発生動作を終了する場合には、ハウジングH内への給水を停止し、かつ貯液部14に残存する水の略全量をミスト化して消費した後に、ロータ2の回転を停止させればよい。このことにより、ロータ2の回転停止後に貯液部14内の水が孔部16からハウジングHの下方に流れ落ちることが適切に回避される。また、液体受け部4上の水についても、その略全量を汲み上げて消費することにより、この液体受け部4に残存する水の量を少なくすることができる。ハウジングHは、ミスト噴出口13を有しているために、ミスト発生装置MGの運転停止時において、シャワーなどの水がミスト噴出口13からハウジングH内に進入する虞がある。ただし、このようにしてハウジングH内に進入した水は、孔部16を通過してハウジングHの外部に排出される。また、この水は、液体受け部4上に受けられるが、この水の殆どは液体受け部4から溢れ落ちることとなり、液体受け部4上には比較的少量の水が滞留するのみとなる。とくに、液体受け部4の上面部40は略水平な平面状であるために、その水捌け性がよい。したがって、ミスト発生装置MGの運転停止状態時において、ハウジングH内や液体受け部4上に多くの水が溜まったままになることが防止され、ミスト発生装置MGを衛生的な状態に維持するのに好ましいものとなる。
【0040】
図5〜図7は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している。
【0041】
図5に示す実施形態においては、ハウジング本体1、支持部5、および液体受け部4一体的に樹脂成形するための金型D1〜D4のうち、金型D1には、支持部5の内面部を規定する下向きの凸部80が設けられている。これ以外の構成は、図4に示した構成と同様である。本実施形態によれば、支持部5の断面形状を前記実施形態のものとは相違した形状とすることが可能であるが、前記実施形態と同様に、3つの金型D2〜D4の接触箇所に対応するパーティングラインPL1〜PL3については、液体受け部4の半径方向に延びたものとして、液体受け部4の半径方向に水が流れることがパーティングラインPL1〜PL3によって阻害されないようにすることができる。
【0042】
図6に示す実施形態においては、液体受け部4が複数の支持部5を介して底壁部11に連設されているが、液体受け部4には、前記実施形態のはみ出し部41に相当する部分は設けられていない。図7に示す金型D5,D6は、図6に示した部分を一体的に樹脂成形するためのものであり、金型D5は、ハウジング本体1の上面側を成形し、金型D6は、ハウジング本体1の下面側を成形する。本実施形態によれば、2つの金型D5,D6を利用するだけで、底壁部11、支持部5、および液体受け部4を一体成形することが可能であり、成形用金型に要するコストを低減することができる。ただし、本実施形態では、液体受け部4の外縁部40aの略全周に沿って延びるパーティングラインPL4が形成される。このようなパーティングラインPL4は、底壁部11から支持部5を下向きに伝ってきた水が液体受け部4上に流れ込む際の障害となる虞がある。このため、支持部から液体受け部上への水の流れ込みを円滑に行なわせる観点からすると、図4および図5に示した実施形態のように、液体受け部4の半径方向にパーティングラインが延びるように構成することが好ましい。
【0043】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係るミスト発生装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0044】
本発明でいう液体受け部は、ハウジングの底壁部の孔部から下方に漏出した液体の少なくとも一部を受けることが可能に設けられ、かつ受けた液体を軸状部のポンピング作用によって吸い上げることができるように軸状部の下端部と接近していればよく、具体的な形状やサイズなどは種々に変更することができる。製造コストを低減する観点からすると、液体受け部は、支持部やハウジングの底壁部と一体成形することが好ましいものの、やはりこれに限定されず、液体受け部をハウジングの底壁部とは別体に形成し、これらを接合させた構成とすることもできる。
【0045】
ハウジングは、液体を貯留可能な貯液部を形成する底壁部を有していればよく、その具体的な形状などは、やはり限定されない。微細なミストを多く発生させるには、ロータの周囲に、複数の衝突壁部を設けることが好ましいものの、やはりこれに限定されない。ロータを高速回転させて液体をロータの周囲に高速で飛散させるだけであっても、ミスト(この場合のミストは、粒子径が大きい粗ミスト)を発生させることが可能である。
【0046】
本発明に係るミスト発生装置は、浴室での温水または非加熱水のミスト発生用途に適するが、その具体的な用途も限定されない。浴室以外の場所に設置し、たとえば、一般家庭、工場、あるいは病院などにおける加湿用途、冷水ミストシャワーを利用した屋内外におけるクーリング用途、薬液などの液体散布の用途、ミスト発生に伴うマイナスイオン効果を目的とする用途などに用いることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留可能な貯液部を形成する底壁部を有し、かつこの底壁部に孔部が貫通して設けられているハウジングと、
前記孔部内に隙間を生じるように前記孔部に挿入された軸状部を有し、かつ回転時には前記貯液部および前記隙間に存在する液体を前記軸状部の外周面に沿って上昇させてから周囲に飛散させてミスト化を図るためのロータと、
を具備している、ミスト発生装置であって、
前記孔部の下方に位置し、かつ前記貯液部の液体が前記隙間からその下方に漏出したときにこの液体の少なくとも一部を受けることが可能な液体受け部を備えており、
この液体受け部の上面部と前記軸状部の下端部とは、互いに接近または接触していることにより、前記液体受け部上に受けられた液体を前記ロータの回転時において前記軸状部の外周面に沿って上昇させることが可能な構成とされていることを特徴とする、ミスト発生装置。
【請求項2】
前記ハウジングの底壁部と前記液体受け部との間には、前記液体受け部上に存在する液体の量が所定量を超えたときにこの液体の一部を前記液体受け部の下方に溢れ落とすことが可能な開口部または隙間が設けられており、
前記ロータの回転停止時において、前記所定量を超える液体が前記液体受け部上に滞留することが防止される構成とされている、請求項1に記載のミスト発生装置。
【請求項3】
前記液体受け部の上面部は、前記軸状部の下端部よりも大径であり、かつ略水平な平面状である、請求項2に記載のミスト発生装置。
【請求項4】
前記液体受け部は、前記底壁部から下向きまたは斜め下向きに突出した少なくとも1つの支持部に支持されている、請求項1ないし3のいずれかに記載のミスト発生装置。
【請求項5】
前記支持部の下端部は、前記液体受け部の上面部に繋がり、かつ前記液体受け部の上面部は、前記支持部の下端部よりも外側方にはみ出したはみ出し部を有しており、
前記ハウジングの底壁部の外面に付着した液体が前記支持部の外面を伝って下降したときには、この液体を前記はみ出し部によって受けることが可能とされている、請求項4に記載のミスト発生装置。
【請求項6】
前記底壁部、前記支持部、および前記液体受け部は、一体的に樹脂成形されており、
前記樹脂成形によって前記液体受け部に生じるパーティングラインは、前記液体受け部の略中心部から外縁部に向けて延びており、前記液体受け部には、この液体受け部の周方向に延びたパーティングラインが存在しない構成とされている、請求項4または5に記載のミスト発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−255930(P2010−255930A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106978(P2009−106978)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】