説明

ミラーホルダ

【課題】 樹脂製のホルダ本体が低温時において熱変形した際に、その熱変形に伴う負荷応力がミラーに加わらないようにミラーを保持し得るように改良された新規なミラー保持構造を備えるミラーホルダを提供する。
【解決手段】樹脂製のミラーホルダであって、ミラー1の背面側に被着されるホルダ本体2の背面保持部2aに、ミラー1の背面から離れる方向に向けて、かつ、ミラー1の周縁形状に沿うように形成された膨出部3を一体に備えている。この膨出部3にはホルダ本体2が熱変形した際に、その熱変形に追従させて弾性変形が可能な局所変形部4を備えることにより、膨出部3の膨出形状がホルダ本体2の熱変形方向に変化するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラーの周縁およびその背面に被着されてミラーを保持するミラーホルダに係り、詳しくはドアミラーやフェンダミラーなどの車両ミラーをミラーハウジングに組み込み保持させるためのミラーホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミラーを保持するミラーホルダとしては種々形態が提案されており、知られている(例えば特許文献1参照)。
この特許文献1において開示されているミラーホルダは、同文献1の図面に示されているように、中央にミラーの収容部を有し、この収容部の周縁を内側に向けて折り返すことにより縁部を一体に備え、前記ミラーの周縁(端部)およびその背面(裏面)にわたって被着されて前記ミラーを保持するように構成されている。
そして、ミラーの周縁が被着されて保持される縁部とミラーの周縁との間に、熱溶融性接着剤または熱溶融性接着テープを介在させることで、ミラーにガタが生じないように保持している。
このように構成されている従来のミラーホルダは、ミラーの周縁端面の電極端子とミラーホルダそのものとが熱溶融性接着剤または熱溶融性接着テープによって2重に覆われているので、電極端子の保護、防錆ならびに防水効果が向上するものとされている。
【特許文献1】実公平6−16833号公報(実施例、図面1〜3参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ミラーホルダは、一般的に樹脂材料を用いてミラーの周縁形状に沿わせた形状に成形されている。そしてミラーホルダの周縁寸法、換言すれば、ミラーの周縁が保持される内向き開口の周縁枠部(前記した縁部に相当する)の内側寸法は、ミラーの周縁寸法に沿わせて、なおかつ、ミラーホルダが高温熱によって熱膨張を起こしてもミラーにガタが生じたり、脱落することがない状態で確実に保持し得るように設計されている。
また、特許文献1のように、熱収縮性材料からなるミラーホルダの収容部にミラーを収容させた後に、ミラーホルダを加熱するといった熱処理を施すことにより、ミラーホルダを熱収縮させて、ミラーの周縁との隙間を無くし、ミラーを確実に保持するようにしている。
【0004】
このように、ミラーの周縁形状に沿わせた形状で、ほぼ同一寸法に形成された周縁枠部、あるいは熱処理により熱収縮する周縁枠部を備えるミラーホルダが、低温時において熱収縮した際には、その応力がミラーに加わり、ミラーには負荷応力によって歪みなどの変形が発生する。この歪みなどの変形が繰り返されると、ミラーに映される像の歪みなどの原因になる恐れがあり、その改善が求められていた。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題を解消すべく創案されたものであり、樹脂製のホルダ本体が温度変化により熱変形した際に、その熱変形に伴う負荷応力がミラーに加わらないようにミラーを保持し得るように改良された新規なミラー保持構造を備えるミラーホルダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1では、ミラーの周縁および背面に被着されてミラーを保持する樹脂製のミラーホルダであって、前記ミラーの背面に被着されるホルダ本体の背面保持部に、前記ミラーの背面から離れる方向に向けて、かつ、少なくとも前記ミラーの周縁形状に沿うように形成された膨出部を一体に備え、前記膨出部は、前記ホルダ本体が熱変形した際に、その熱変形に追従して弾性変形が可能な局所変形部を備えていることを特徴とするミラーホルダにある。
ここで、前記局所変形部は、前記ホルダ本体の成形と同時に形成され、前記ホルダ本体が熱変形した際に、その熱変形に追従して弾性変形する薄肉状に形成されていることが好適なものとなる(請求項2)。
【0007】
請求項1に記載の構成によれば、ホルダ本体が温度変化により熱変形すると、その熱変形に追従して膨出部に設けられている局所変形部が変形する。
つまり、局所変形部の変形によって膨出部の膨出形状が変化する。この変化によって、ホルダ本体の熱変形に伴ってミラーに加わる負荷応力は吸収緩和される。そして、請求項2に記載のように構成することにより、局所変形部を膨出部の要所に簡単にかつ容易に設けることができる。また、局所変形部が薄肉状であることで、弾性変形がし易くなる。
【0008】
請求項3では、前記局所変形部は、前記膨出部の膨出頂部に形成されていることを特徴とするミラーホルダにある。
【0009】
請求項3に記載の構成によれば、ホルダ本体が熱変形すると、膨出部の膨出形状は、膨出頂部に設けられている局所変形部の変形によって、膨出幅が広がるように変化する。
つまり、ホルダ本体の熱変形方向に広がるようにまたは縮まるように膨出部の膨出形状が変化することにより、前記請求項1に記載の作用が効果的に得られることになる。
【0010】
請求項4では、前記局所変形部は、前記膨出部の要所の複数箇所に形成されていることを特徴とするミラーホルダにある。
【0011】
請求項4に記載の構成によれば、前記請求項3に記載のように、膨出部の膨出形状がホルダ本体の熱変形方向に広がるようにまたは縮まるように変化するその作用が、要所の複数箇所に設けられている局所変形部の変形によってより一層効果的に得られることになる。
つまり、複数箇所の局所変形部が変形することによって膨出部の膨出形状を変化し易く、しかも、その変化しろを広くすることができる。これにより、前記請求項1に記載の作用がより一層効果的に得られることになる。
【0012】
請求項5では、前記膨出部が、前記ミラーの周縁を保持する前記ホルダ本体の周縁枠部と一体に連設するように、前記ホルダ本体の周縁に沿わされて形成されていることを特徴とするミラーホルダにある。
【0013】
請求項5に記載の構成によれば、局所変形部を備えた膨出部をホルダ本体の周縁に沿わせて形成した構造としたことで、ホルダ本体が熱変形した際に、ホルダ本体の全域に生じる熱変形に伴うミラーに加わる負荷応力を効果的に吸収緩和することができる。それにより、前記請求項1に記載の作用が確実にかつ効果的に得られることになる。
また、周縁枠部を連設するようにホルダ本体の周縁に沿わせて膨出部を設けたことで、前記周縁枠部に、ミラーの周縁を嵌め込む組付け作業が、膨出部を変形させた状態で行なうことができる。つまり、膨出部の変形によってミラーの組付け作業が容易に行なうことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上のように構成されていることで、樹脂製のホルダ本体が温度変化によって熱変形した際に、その熱変形に伴う負荷応力がミラーに加わらないようにミラーをホルダ本体に保持させることができる。よって、ミラーに歪みなどの変形が発生することを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係るミラーホルダの実施形態を示す斜視図であり、図2は、ミラーが組み付けられた状態の同ミラーホルダの正面図であり、図3は、図2における横断面図であり、図4は、同横断面図の要部の拡大図である。
【0016】
≪ホルダ本体の説明≫
ホルダ本体2は、樹脂材料から一体に成形されるものであり、図3に示されているように、ミラー1の背面側に被着される背面保持部2aの全周縁に、後記する膨出部3を介して一体に連設させて内向きに開口させた周縁枠部2bを備えている。この周縁枠部2bにミラー1の周縁1aが被着されて保持されるようにしている。
このようにして、ミラー1が組み付け保持されたホルダ本体2は、図2および図3に二点鎖線で示すミラーハウジング6に傾動可能に支承される。
なお、ここで言うホルダ本体2とは、ミラーホルダ自体を意味するものである。
【0017】
≪背面保持部の説明≫
背面保持部2aは、図1および図3に示すように、ミラー1の周縁形状に沿う形状で、該周縁形状寸法よりも一回りほど小さく、ミラー1の背面をほぼ全面にわたって保持し得るように形成されている。
そして、この背面保持部2aには図1に示されているように、複数の突起5…が突設されており、ミラー1の背面を突起5…群によって保持するようにしている。これは、背面保持部2aの厚さ方向の熱変形などに対する対応策である。
【0018】
なお、図示を省略しているが、突起5…に加えて、適宜リブなどを背面保持部2aに突設させて、背面保持部2aの機械的強度(特性)を向上させることにより、ホルダ本体2の軽量化を図ることができる。つまり、ホルダ本体2の機械的強度の向上と軽量化との両立を図ることができる。
【0019】
≪膨出部の説明≫
膨出部3は、ミラー1の周縁形状に沿って背面保持部2aの全周縁にわたり一体に形成されるものであり、図3に示すように、ミラー1の背面から離れる後方に向けて断面がほぼJ字状やU字状に膨出されて形成されている。そして、この膨出部3の膨出頂部(湾曲突端部)には局所変形部4が形成されている。
【0020】
≪局所変形部の説明≫
局所変形部4は、ホルダ本体2の特に背面保持部2aが冬期などの外気温が低い低温時において熱収縮を起こした際に、その熱変形に引っ張られるように追従して変形することで、背面保持部2aの熱収縮に伴い発生する負荷応力(周縁部側からの締付け力)がミラー1に加わらないように吸収緩和する。
つまり、ミラー1が歪むなどの変形を起こさないように、負荷応力を吸収緩和(抑制)する。
【0021】
この局所変形部4は、ホルダ本体2が成形される際に、前記膨出部3に一体に形成されるものであり、図1の拡大図に示すように、膨出部3の厚さを例えば凹形の薄肉状にすることで、膨出部3の膨出頂部に形成される。
なお、膨出部3の厚さを薄肉状にするに際して、図1の拡大図に示すように、膨出部3の厚さ方向一方側から行なうも、他方側との双方から行なうも任意である。また、溝状や筋状の薄肉状とするも、一定の区間(範囲)において薄肉状にするも任意である。
【0022】
なお、温度変化により、ミラー1に負荷応力が加わるのは、ミラー1を形成するガラスと、ホルダ本体2(背面保持部2a)を形成する樹脂との材質の違いにより熱膨張率(線膨張率)が異なるからである。
【0023】
以上のように構成された本実施形態のミラーホルダによれば、冬期などの外気温が低い低温時においてホルダ本体2が熱収縮を起こすと、図4(b)に矢印Xで示す熱収縮変形方向に引っ張られるように膨出部3の膨出頂部に設けられている局所変形部4が、前記熱収縮に伴う変形の起点となって変形する。この変形によって、膨出部3の膨出形状は膨出幅方向に広がるように変化し(L1→L2)、これにより、ホルダ本体2の熱収縮に伴ってミラー1に加わる負荷応力は吸収緩和されることになる。
従って、ミラー1に歪みなどの変形が発生することを抑制することができ、ミラー1の損傷などの恐れを防ぐことができる。
【0024】
また、ホルダ本体2が夏期に熱膨張した際も、最も熱膨張が顕著となる背面保持部2aの膨張が、ほぼU字状やJ字状を呈する膨出部3と、その膨出頂部の局所変形部4により、遮断されることになる。つまり、背面保持部2aが熱膨張を起こしても、その熱変形に伴う膨張作用が、膨出部3と、その膨出頂部の局所変形部4によって吸収遮断されることになり、ミラー1の周縁1aを保持する周縁枠部2bに伝播(伝達)されない。これにより、ミラー1にガタが生じないようにその周縁1aを安定的に保持させることができる。
【0025】
また、局所変形部4を備えた膨出部3をホルダ本体2の周縁に沿わせて形成した構造としたことで、ホルダ本体2の周縁枠部2bに、ミラー1の周縁1aを嵌め込み組付けるに際して、膨出部3を変形させた状態で行なうことができる。つまり、膨出部3をホルダ本体2の背面側に反転折り返すように変形させることによって、ホルダ本体2に対し、ミラー1の組付け作業が容易に行なうことができる。従って、生産性の向上と生産コストの削減などが期待できる。
【0026】
また、本実施形態のミラーホルダによれば、ミラー1の背面を被着保持するホルダ本体2の背面保持部2aに複数の突起5…を設けて、この突起5…群によってミラー1の背面を保持するように構成していることで、ミラー1とホルダ本体2との材質の違いにより異なる両者の熱膨張率(線膨張率)差による不具合を解消し、ミラー1をガタが生じない状態で安定よく保持させることができる。
つまり、ミラー1を背面保持部2aに対し、ベタ置きするのではなく、背面保持部2aから離間させた複数の突起5…による点接触(点支持)構造によってミラー1を保持させてなることで、背面保持部2aが温度変化によって熱収縮を起こした場合には背面保持部2aは、ミラー1と独立してその熱変形方向に別個に動くことができる。故に、ミラー1をガタが生じない状態で安定よくホルダ本体2に保持させることができるものである。
【0027】
[他の実施形態の説明]
図5は、本発明に係るミラーホルダの他の実施形態を示す要部の横断拡大図である。
なお、斯かる実施形態は、前記した膨出部3の膨出形態と前記した局所変形部4を複数箇所に設けるようにした以外の構成部分においては、前記した実施形態と基本的に同じことから同じ構成部分に同じ符号を付することで重複説明は省略する。
【0028】
図5に示すように、膨出部3は前記した実施形態に比べてその膨出形態が深め(高め)に形成されている。そして、膨出部3の膨出頂部とその膨出基部(背面保持部2aとの境部)との2箇所に薄肉状の局所変形部4,4が形成されている。
【0029】
以上のように構成された本実施形態のミラーホルダによれば、冬期などの外気温が低い低温時においてホルダ本体2が熱収縮を起こすと、図5(b)に矢印Xで示す熱収縮方向に引っ張られるように膨出部3の膨出頂部とその膨出基部との2箇所に設けられている局所変形部4が変形する。この変形によって、膨出部3の膨出形状は膨出幅方向に広がるように変化し(L1→L2)、これにより、ホルダ本体2の熱収縮に伴ってミラー1に加わる負荷応力は吸収緩和されることになる。
【0030】
なお、本発明の実施形態の具体的な構成は、前記した実施形態に限られるものではなく、請求項1から請求項5に記載の本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更などがあっても本発明に含まれるものである。
例えば、膨出部3の膨出形状を前記したほぼJ字状やU字状以外のほぼV字状やコの字状に膨出させて形成するもよい。また、局所変形部4を薄肉状ではなく、周縁枠部2bによるミラー1の保持剛性(耐久性)が低下することがない程度の折れ線状にするなど任意である。
また、局所変形部4は、膨出部3の膨出頂部と膨出基部との2ヶ所に限らず、ホルダ本体2が熱収縮を起こした際に、その熱変形に伴う負荷応力を効果的に吸収緩和するように膨出部3を弾性変形させることができる要所の3または4ヶ所などの複数箇所に設けるも任意である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るミラーホルダの実施形態を示し、ミラーを組み付ける前の斜視図である。
【図2】ミラーが組み付けられた状態の同ミラーホルダの正面図である。
【図3】図2における横断面図である。
【図4】同横断面図の要部の拡大図であり、(a)は、ホルダ本体が熱収縮する前の状態を示す、(b)は、ホルダ本体が熱収縮を起こした際の膨出部の変形(変化)を示す。
【図5】本発明に係るミラーホルダの他の実施形態を示す要部の拡大図であり、(a)は、ホルダ本体が熱収縮する前の状態を示す、(b)は、ホルダ本体が熱収縮した際の膨出部の変形(変化)状態を示す。
【符号の説明】
【0032】
1 ミラー
1a 周縁
2 ホルダ本体
2a 背面保持部
2b 周縁枠部
3 膨出部
4 局所変形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーの周縁および背面に被着されてミラーを保持する樹脂製のミラーホルダであって、
前記ミラーの背面に被着されるホルダ本体の背面保持部に、前記ミラーの背面から離れる方向に向けて、かつ、前記ミラーの周縁形状に沿うように形成された膨出部を一体に備え、
前記膨出部は、前記ホルダ本体が熱変形した際に、その熱変形に追従して弾性変形が可能な局所変形部を備えていることを特徴とするミラーホルダ。
【請求項2】
前記局所変形部は、前記ホルダ本体の成形と同時に形成され、前記ホルダ本体が熱変形した際に、その熱変形に追従して弾性変形が可能な薄肉状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のミラーホルダ。
【請求項3】
前記局所変形部は、前記膨出部の膨出頂部に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のミラーホルダ。
【請求項4】
前記局所変形部は、前記膨出部の要所の複数箇所に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のミラーホルダ。
【請求項5】
前記膨出部は、前記ミラーの周縁を保持する前記ホルダ本体の周縁枠部と一体に連設するように、前記ホルダ本体の周縁に沿わされて形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載のミラーホルダ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−62533(P2007−62533A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−250543(P2005−250543)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】