説明

ミリ波伝送システム

【課題】 各ミリ波受信アンテナを同一直線上に配置して、その見栄えをよくし、各ミリ波受信アンテナにおいて良好にミリ波信号を受信する。
【解決手段】 ミリ波送信ユニット18から送信されたミリ波信号を複数のミリ波受信ユニット32が受信する。各ミリ波受信ユニット32は、同一直線上に互いに間隔をおいて配置されている。ミリ波送信ユニット18が備えるミリ波送信アンテナのビーム角度範囲内にミリ波受信ユニットが備えるミリ波受信アンテナがほぼ位置するように、ミリ波送信アンテナのビーム中心軸が前記直線に対して傾斜してミリ波送信ユニット18を配置してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波を1台のミリ波送信アンテナから送信し、複数台のミリ波受信アンテナで受信させるミリ波伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のようなミリ波伝送システムは、例えば特許文献1に開示されているように、高層建築物の屋上に設置されたミリ波送信機から下方向に向けてミリ波を送信し、高層建築物の各階にミリ波信号を受信するミリ波受信アンテナを設置したものがある。この特許文献1では、ミリ波受信アンテナは、後続建築物の高さ方向に沿う直線上に位置するように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4204387号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなミリ波伝送システムでは、各ミリ波受信アンテナは、同一直線上に配置されているので、その見栄えはよいが、下層の階に配置されたミリ波受信アンテナは、上層の階に配置されたミリ波受信アンテナの影に位置するので、良好にミリ波信号を受信することができない。
【0005】
本発明は、同一直線上に配置しているにも拘わらず、良好にミリ波信号を受信することができるミリ波伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のミリ波伝送システムは、ミリ波送信手段と、このミリ波送信手段からのミリ波信号を送信するミリ波送信アンテナとを有している。ミリ波送信信号としては、例えばテレビジョン放送信号、具体的には地上デジタルテレビジョン放送信号や衛星放送中間周波信号や衛星通信中間周波信号を周波数変換したものを使用することができる。ミリ波送信アンテナとしては、例えばパラボラアンテナ(オフセットパラボラアンテナを含む)や誘電体レンズアンテナなどを使用することができる。このミリ波送信手段から送信された前記ミリ波信号を複数のミリ波受信アンテナが受信する。ミリ波受信アンテナとしては、上述したミリ波送信アンテナと同様なものを使用することができる。これらミリ波受信アンテナで受信した前記ミリ波信号を複数のミリ波処理手段が処理する。ミリ波処理手段としては、例えば増幅手段や、周波数変換手段を使用することができる。前記各ミリ波受信アンテナは、同一直線上に互いに間隔をおいて配置され、前記ミリ波送信アンテナのビーム角度範囲内に前記各ミリ波受信アンテナがほぼ位置するように、前記ミリ波送信アンテナのビーム中心軸が前記直線に対して傾斜して前記ミリ波送信アンテナが配置されている。ミリ波送信アンテナは、前記ミリ波受信アンテナの列の一方の端の近傍に配置することが望ましい。ビーム角度範囲は、電界強度が最も大きくなるビーム中心軸と、電界強度が中心軸での電界強度の約1/(21/2)となる位置との間である。
【0007】
このように構成されたミリ波伝送システムでは、各ミリ波受信アンテナは、同一直線上に配置されているので、例えば複数の階からなる複層建築物の高さ方向に沿って前記直線を配置し、前記各ミリ波受信アンテナを、前記各階において前記直線上に位置させたような場合に見栄えがよく、また例えば複層建築物の基準位置として特定の壁を使用し、この壁から予め定めた距離の位置に各階において設置すればよく、設置工事が容易である。このように同一直線上に配置しているにも拘わらず、ミリ波送信アンテナから見て、各ミリ波受信アンテナが他のミリ波受信アンテナの影に入ることがないので、ミリ波信号を良好に受信することができる。また、上記のように複層建築物の各階に各ミリ波受信アンテナを配置する場合、ミリ波送信アンテナを屋上や屋上から所定の高さの位置に設置することができ、その設置作業が容易になる。
【0008】
ミリ波受信手段は、前記ミリ波処理手段は、前記ミリ波受信アンテナが受信したミリ波信号のレベルが大きいとき、出力が飽和するものとすることができる。例えば増幅手段を備えるものとすることができる。この場合、前記ミリ波送信アンテナに近い位置に配置された前記ミリ波受信アンテナは、前記ミリ波送信アンテナのビーム角度範囲の外部に位置させる。
【0009】
このように構成することによって、ミリ波送信アンテナに近い位置に配置されたミリ波受信アンテナでの受信レベルを下げることができ、このようなミリ波受信アンテナのミリ波受信信号が供給されるミリ波処理手段で出力が飽和することを防止できる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、各ミリ波受信アンテナを同一直線上に配置して、その見栄えをよくすることができる上に、各ミリ波受信アンテナにおいて良好にミリ波信号を受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態のミリ波伝送システムのミリ波送信アンテナとミリ波受信アンテナとの配置を示す図である。
【図2】図1のミリ波伝送システムで使用する送信機の一例のブロック図である。
【図3】図1のミリ波伝送システムで使用する送信機の他の例のブロック図である。
【図4】図1のミリ波伝送システムで使用する受信機の一例のブロック図である。
【図5】本発明の第2実施形態のミリ波伝送システムのミリ波送信アンテナとミリ波受信アンテナとの配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1実施形態のミリ波伝送システムは、複数の階からなる複層建築物、例えば高層建築物、具体的には、高層マンションの各部屋に地上デジタルテレビジョン放送信号や、BS・CS信号を伝送しようとする場合であって、マンション内にこれらの信号を伝送するためのケーブルを新たに敷設しにくい場合に適用されるものである。
【0013】
図2に示すように、UHF帯のテレビジョン放送信号がUHF帯受信アンテナ2によって受信され、ヘッドエンド4に供給される。ヘッドエンド4では、これらUHF帯のテレビジョン放送信号のうち所望の複数の地上デジタルテレビジョン放送信号が選択され、これら地上デジタルテレビジョン放送信号のレベルが揃えられる。同様に、BS・CSアンテナ6で受信されたBS信号及びCS信号が、BS・CSアンテナ6に付属するコンバータ8で、BS中間周波信号とCS中間周波信号とに変換され、分波器10に供給されて、ここでBS中間周波信号とCS中間周波信号とに分波され、BS中間周波信号は減衰器12によって、CS中間周波信号は減衰器14によって、それぞれレベルが揃うように調整され、混合器16によって混合される。或いは、各減衰器12、14の代わりに、イコライザを使用することもできる。これにより、レベルを揃え、混合器17によって混合される。
【0014】
ヘッドエンド4からの地上デジタル放送信号並びに混合器16からのBS中間周波信号及びCS中間周波信号は、混合器17で混合されて、ミリ波送信ユニット18の送信手段、例えばコンバータ20に供給され、このコンバータ20によって、ミリ波帯信号に周波数変換され、送信ユニット18のミリ波送信アンテナ22に供給され、送信される。
【0015】
なお、図3に示すように、地上デジタル放送信号は、UHF帯受信アンテナ2によって受信されたUHF帯のテレビジョン放送信号のうちローパスフィルタ24によって例えばUHF帯の高域に配列され、受信したUHF地上アナログ放送信号をカットして、抽出することもできる。また、ローパスフィルタ24の出力に含まれるVHF帯の信号を除去するために、ローパスフィルタ24の出力はハイパスフィルタ26を介し、混合器17でBS中間周波信号とCS中間周波信号と混合されて、コンバータ20に供給される。
【0016】
図1に示すように、ミリ波送信ユニット18は、高層マンション28の屋上に取り付けられている。なお、UHF帯受信アンテナ2、ヘッドエンド4、BS・CSアンテナ6、分波器10、減衰器12、14、混合器16、17も、屋上に取り付けられている。マンション28は、例えば14階建てのものである。送信ユニット18は、マンション28のベランダ側の壁から外側にせり出して設けられている。
【0017】
ミリ波送信ユニット18のミリ波送信アンテナ22から送信されたミリ波信号を受信するために、ミリ波受信ユニット32が、各階のベランダからそれぞれ外方にせり出して設けられている。ミリ波受信ユニット32は、図4に示すように、ミリ波受信アンテナ34を有している。ミリ波受信アンテナ34としては、例えばミリ波送信アンテナ22と同様な誘電体レンズアンテナを使用している。
【0018】
ミリ波受信アンテナ34によって受信されたミリ波信号は、ミリ波受信ユニット32に設けられている処理手段、例えばコンバータ36に供給され、ここで元の地上デジタルテレビジョン放送信号、BS中間周波信号、110度CS中間周波信号に周波数変換され、分波器38によって分波され、各部屋内に設けられている地上デジタルチューナ40に地上デジタル信号が、BS・110度CSチューナ42にBS中間周波信号及びCS中間周波信号が供給される。
【0019】
これらミリ波受信ユニット32は、1台ずつ各ベランダに取り付けられる。その取り付けは、高層マンション28の高さ方向に沿って伸ばした鉛直な直線44上に各ミリ波受信ユニット32が位置するように行われる。即ち、マンション28の側壁から全て同じ距離の位置にミリ波受信ユニット32が配置されており、見栄えが良好であるし、いずれの階でも、基準となる位置、例えばマンション28の側壁から予め定めた距離の位置にミリ波受信ユニット32を取り付ければよいので、設置工事が容易になる。但し、ミリ波送信ユニット18を、この直線44上にある屋上に配置して、各ミリ波受信ユニット32側を向いて配置した場合、ミリ波送信ユニット18から見て、下層にあるミリ波受信ユニット32は、上層にあるミリ波受信ユニット32の影に入り、下層にあるミリ波受信ユニット32では良好にミリ波信号を受信できなくなる。
【0020】
そこで、これらミリ波受信ユニット32において、ミリ波送信ユニット18からのミリ波信号が良好に受信されるように、このミリ波送信アンテナ22が次のように配置されている。
【0021】
ミリ波送信ユニット18のミリ波送信アンテナ22は、そのビーム中心軸46上で最も電界強度が高くなる。電界強度が中心軸での電界強度の1/(21/2)となるラインの中心軸に対する角度がビーム半値角θであり、中心軸の両側にそれぞれあり、2θの角度範囲がビーム角度範囲である。このビーム角度範囲は、誘電体レンズアンテナの口径と使用するミリ波帯信号の波長とによって決定される。
【0022】
このビーム中心軸46が直線44と交差し、しかもほぼ全てのミリ波受信ユニット32がビーム角度範囲内に位置するようにミリ波送信ユニット18が屋上に配置されている。この交差角は、ミリ波送信ユニット18側において鋭角をなしている。これによって、ミリ波送信ユニット18側から各ミリ波受信ユニット32を見た場合、いずれのミリ波受信ユニット32も、他のミリ波受信ユニット32の影に位置せず、良好にミリ波送信ユニット18から送信されたミリ波信号を受信することができる。なお、図1における紙面の裏面から表面方向への各ミリ波受信ユニット32のベランダからの突出量は、表裏方向でのビーム角度範囲内に各ミリ波受信ユニット32が位置するように調整される。
【0023】
本発明の第2の実施形態のミリ波伝送システムは、図5に示すように、屋上の構築物28aの上にミリ波送信ユニット18を設置したものである。他の構成は、第1の実施形態と同一であるので、同一部分には同一符号を付して、その説明を省略する。屋上の構築物28aは、マンション28の一方の側壁から予め定めた距離だけ内側に位置し、屋上よりも所定の高さだけ上方に位置する。
【0024】
このように構築物28a上にミリ波送信ユニット18を設置すると、屋上よりも高い位置にミリ波送信ユニット18を設置することができるので、ミリ波送信ユニット18による送信エリアを拡大することができる。また、ミリ波送信ユニット18を設置する場合には、マンション28の最上階の居室内に作業員が立ち入る必要も無い。
【0025】
上記の実施形態では、ミリ波送信ユニット18を屋上または屋上の構築物上に設けたが、逆に地上に設けることもできる。また、第2の実施形態では、屋上の構築物28a上にミリ波送信ユニット18を設置したが、場合によっては、屋上に上方に伸びる支柱を設置し、その支柱にミリ波送信ユニット18を設置することもできる。上記の両実施形態では、高層建築物に本発明を実施したが、中層建築物や低層建築物においても、本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0026】
18 ミリ波送信ユニット
20 コンバータ(ミリ波送信手段)
22 ミリ波送信アンテナ
32 ミリ波受信ユニット
34 ミリ波受信アンテナ
36 コンバータ(ミリ波処理手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミリ波送信手段と、
このミリ波送信手段からのミリ波信号を送信するミリ波送信アンテナと、
このミリ波送信アンテナから送信された前記ミリ波信号を受信する複数のミリ波受信アンテナと、
これらミリ波受信アンテナで受信した前記ミリ波信号を処理する複数のミリ波処理手段とを、
具備し、前記各ミリ波受信アンテナは、同一直線上に互いに間隔をおいて配置され、前記ミリ波送信アンテナのビーム角度範囲内に前記各ミリ波受信アンテナがほぼ位置するように、前記ミリ波送信アンテナのビーム中心軸が前記直線に対して傾斜して前記ミリ波送信アンテナを配置したミリ波伝送システム。
【請求項2】
請求項1記載のミリ波伝送システムにおいて、複数の階からなる複層建築物の高さ方向に沿って前記直線が配置され、前記各ミリ波受信アンテナは、前記各階において前記直線上に位置するミリ波伝送システム。
【請求項3】
請求項2記載のミリ波伝送システムにおいて、前記ミリ波送信アンテナは、前記複層建築物の屋上または屋上から所定の高さの位置に配置されているミリ波伝送システム。
【請求項4】
請求項1記載のミリ波伝送システムにおいて、前記ミリ波処理手段は、前記ミリ波受信アンテナが受信したミリ波信号のレベルが大きいとき、出力が飽和し、前記ミリ波送信アンテナに近い位置に配置された前記ミリ波受信アンテナは、前記ミリ波送信アンテナのビーム角度範囲の外部に位置するミリ波伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−160143(P2011−160143A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19515(P2010−19515)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】