説明

ミル容器

【課題】部材数が少なく、また、充填操作が容易で、安全性にも富んだミル容器を提案する。
【解決手段】上端を開口した有底筒状をなすとともに、周壁11内周に係止凸部12を突設した合成樹脂製の容器体Aと、外面に凹設した係合凹部23を係止凸部12に嵌合させて容器体A内上端部に筒状基体20を嵌合させるとともに、筒状基体20内周面に固定刃24を突設した合成樹脂製の固定刃部材Bと、容器体Aの外周上端部に抜け出しを防止して回転可能に嵌合させた操作筒30より、周縁部に排出口32を穿設した回転歯33付きの蓋板31を延設した合成樹脂製の蓋体Cとを備えている。また、容器体Aに対する蓋体Cの回転により固定刃24と回転刃33とで収容物を粉砕するミル機構を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はミル容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ごま等の粒状物を収納し、使用時に簡単な操作で一部を粉砕して粉末状に排出することができるミル機構を備えたミル容器が種々提案されている。(例えば、特許文献1を参照)
【0003】
上記特許文献1に記載されたミル容器は、オス刃とメス刃を有するミルを口部に装着したミル容器であり、オス刃とメス刃とを相対的に回転させて内容物を粉砕し、容器外に排出する如く構成したものであり、オス刃及びメス刃の本体をプラスチック製として、これらの刃の刃面を金属製としている。
【0004】
また、上記ミル容器は、容器体口頸部に螺合する内筒に、筒状をなすプラスチック製の本体の内面にステンレス製の刃を埋設したメス刃を融着,接着等により固定している。また、内筒に回転可能に嵌合させるキャップ状の外筒の頂部下面に、円錐台形状をなすプラスチック製の本体の外周にステンレス例の刃を埋設したオス刃を融着,接着等により固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−128862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記した如きミル容器で、部材数が少なく、また、充填操作が容易で、安全性にも富んだミル容器を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の手段として、以下の通り構成した。即ち、上端を開口した有底筒状をなすとともに、周壁11内周に係止凸部12を突設した合成樹脂製の容器体Aと、外面に凹設した係合凹部23を係止凸部12に嵌合させて容器体A内上端部に筒状基体20を嵌合させるとともに、筒状基体20内周面に固定刃24を突設した合成樹脂製の固定刃部材Bと、容器体Aの外周上端部に抜け出しを防止して回転可能に嵌合させた操作筒30より、周縁部に排出口32を穿設した回転刃33付きの蓋板31を延設した合成樹脂製の蓋体Cとを備え、容器体Aに対する蓋体Cの回転により固定刃24と回転刃33とで収容物を粉砕するミル機構を構成した。
【0008】
第2の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段に於いて、容器体Aを透明乃至半透明に形成した。
【0009】
第3の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段又は第2の手段のいずれかの手段に於いて、係合凹部23を、筒状基体20外周を一周して等間隔に並設した複数の単位凹部23a で構成し、係止凸部12を、1又は周方向複数の単位凸部12a で構成し、任意の単位凹部23a を単位凸部12a の上方からの嵌合が可能に構成した。
【0010】
第4の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第3の手段に於いて、単位凹部23a を、筒状基体20外面を縦断する縦凹溝形態に形成し、単位凸部12a を、容器体周壁11を縦断して形成された縦突条形態に形成し、周方向等間隔に1乃至3本設けた。
【0011】
第5の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段又は第4の手段のいずれかの手段に於いて、容器体Aの底部に充填口17を開口し、充填口17を閉塞する底蓋Dを設けた。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、容器体Aの周壁11内周に係止凸部12を突設し、容器体A内上端部に嵌合させる筒状基体20の外面に係止凸部12に嵌合させる係合凹部23を突設した固定刃部材Bを設けているため、固定刃部材Bの容器体Aへの装着が簡単で、装着された固定刃部材Bは容器体Aに対しての回動を確実に防止できる。しかも、係止凸部12が容器体A内に突設されており、係合凹部23が筒状基体20の側面に形成されているため、これらにより分解掃除等の取り扱い時に手を怪我する等の不都合を極力防止できる利点もある。また、部材数も容器体A以外に固定刃部材Bと蓋体Cとの二部材で済むため製造も煩雑でなく、低コストでの製造が可能である。
【0013】
容器体Aを透明乃至半透明に形成した場合には、収容物の量の確認を行えるとともに、収容物の粉砕状況を観察できるため使用者の興味を喚起させることができる。
【0014】
係合凹部23を、筒状基体20外周を一周して等間隔に並設した複数の単位凹部23a で構成し、係止凸部12を、1又は周方向複数の単位凸部12a で構成し、任意の単位凹部23a を単位凸部12a の上方からの嵌合が可能に構成した場合には、固定刃部材Bの容器体Aへの装着が極めて容易となる利点がある。
【0015】
単位凹部23a を、筒状基体20外面を縦断する縦凹溝形態に形成し、単位凸部12a を、容器体周壁11を縦断して形成された縦突条形態に形成し、周方向等間隔に1乃至3本設けた場合にも上記と同様に固定刃部材Bの容器体Aへの装着が極めて容易となる利点があり、また、合成樹脂製の容器体Aを形成する上で各単位凸部12a が周壁11内面を縦断することで容器体Aの成形が容易に行えるという利点もある。また、この様な形態で容器体Aを透明に形成した場合には、単位凹部23a が筒状基体20外面を縦断する縦凹溝形態であることから1乃至3本の単位凸部12a の数であっても充分その嵌合強度を維持することができ、外観上も好ましく或いは内部観察の際にも邪魔にならずに良好な観察を行える。
【0016】
容器体Aの底部に充填口17を開口し、充填口17を閉塞する底蓋Dを設けた場合には、固定刃部材B及び蓋体Cを容器体Aに装着した状態で充填業者への納品が可能となり、充填業者の余分な組み立て工程を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ミル容器の半断面図である。(実施例1)
【図2】容器体を示す、(a)は平面図、(b)は半断面図。(実施例1)
【図3】固定刃部材を示す、(a)は平面図、(b)は半断面図、(c)は底面図である。(実施例1)
【図4】蓋体を示す、(a)は平面図、(b)は半断面図、(c)は底面図である。(実施例1)
【図5】ミル容器の半断面図である。(実施例2)
【図6】回転刃部材を示す、(a)は平面図、(b)は半断面図、(c)は底面図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、ミル容器1の一例を示す。
【0020】
ミル容器1は、容器体Aと、固定刃部材Bと、蓋体Cとを備えている。
【0021】
容器体Aは透明乃至半透明な合成樹脂で形成されたもので、上端を開口した有底筒状をなし、本例では底壁10周縁部より周壁11を立設している。また、周壁11の内周には、容器体Aに対する相対回転を防止して固定刃部材Bを容器体Aに嵌合固定するための係止凸部12を突設している。この場合の係止凸部12は、図2に示す如く、容器体周壁11内周を縦断して周方向等間隔に突設した、三本の単位凸部12a で構成しており、各単位凸部12a は、上端に傾斜面13を形成している。また、周壁11の外周上端部には、第1上向き段部14及び第2上向き段部15により二段階に縮径した第1縮径部11a 及び第2縮径部11b を形成しており、第2縮径部には蓋体Cの抜け出しを防止するための係止突条16を突周設している。尚、係止凸部12の数は三本に限らず、一本であっても二本であっても四本以上であってもよく単位凹部23a の数に併せて選択すればよいが、外部からの見栄え、或いは内容物の観察に不都合を生じず、しかも、固定刃部材Bの確実な固定を考慮した場合には1〜3本程度が好ましく採用できる。
【0022】
固定刃部材Bは合成樹脂製で、上下端を開口した筒状をなし、容器体Aの内周上端部に回転を防止して、着脱可能に嵌合させている。本例では、図3に示す如く、上下端開口の筒状基体20の上端縁より容器体Aの上面に載置するフランジ21を延設し、また、筒状基体20の外周下端部は装着を容易ならしめるためのテ−パ部22を形成している。更に、筒状基体20の外面には、筒状基体20外周を一周して等間隔に並設した複数の係合凹部23を凹設している。本例に於ける係合凹部23は、図3(b)にある如く、筒状基体20を縦断して周方向等間隔に形成された多数の単位凹部23a により構成されている。各単位凹部23a は容器体Aの各単位凸部12a と横幅が同じに形成されており、筒状基体20を上方から容器体Aに嵌合させる際に、任意の単位凹部23a を対応する単位凸部12a と嵌合させることができる。従って、この場合は一つの単位凹部23a の両側のそれぞれ120度離間位置に、それぞれ対応する単位凸部12a と嵌合する他の二つの単位凹部23a が存在する如く、各単位凹部23a を等間隔に配置している。
【0023】
また、筒状基体20の内周面には固定刃24を形成している。固定刃24は、図3(a)に示す如く、平面視が鋸刃状に連設された横断面形状を備えたもので、図3(b)に示す如く、側面視が筒状基体20を縦断した形態を採っている。
【0024】
上記固定刃部材Bは、図1に示す如く、容器体Aの上方より任意の単位凹部23a を係止凸部12に嵌合させるとともに、フランジ21を容器体周壁上面に当接した状態で、筒状基体20を容器体周壁11内面上端部に嵌合させて装着している。
【0025】
蓋体Cも合成樹脂製で、容器体Aの外周上端部に抜け出しを防止して回転可能に嵌合させた操作筒30を備え、操作筒30より、中央を凹陥部31b に形成し、周縁部には排出口32を穿設した蓋板31を延設し、凹陥部31b 外周面に回転刃33を突設している。
【0026】
図示例では、操作筒30の内面上部に係合突条35を周設しており、また、蓋板31の周縁部はリング状の水平板部31a で構成され、水平板部31a の内周縁より、上部に傾斜角度を変化させた略円錐台形状の凹陥部31b を延設している。水平板部31a には、円弧状の排出口32を周方向等間隔に6箇所穿設している。また、凹陥部31b 外周面には放射状の6枚の刃33a で構成された回転刃33を突設している。更に、凹陥部31b 外周面の上縁部分には、放射線状の突部及び凹部を交互に配列した凹凸部34を周設してミル機構の一役を担っている。
【0027】
蓋体Cは、図1に示す如く、係止突条16に係合突条35を乗り越え係合させて上方への抜け出しを防止して、操作筒30を第1縮径部11a 及び第2縮径部11b 外周に嵌合させ、容器体Aに対して回転可能に装着している。その際、各排出口32はその内側部分を固定刃部材Bの内周縁部より内方に臨ませて内外を連通させている。尚、蓋体Cは容器体Aに対して抜け出しを防止して嵌合されているが、通常の外力では外れないが、取り外しを意図して強制的な取り外しは可能であり、これにより、必要に応じて蓋体C及び固定刃部材Bを取り外しての洗浄が可能に構成している。
【0028】
上記の如く構成したミル容器1を使用する場合について説明する。ごま等の粉砕する対象物を容器体A内に収容し、使用に当たっては、ミル容器1を倒立させて容器体Aに対して蓋体Cを回転させると固定刃24と回転刃33との間の収容物が粉砕され、粉砕物が各排出口32より排出される。
【0029】
図5は他の例を示し、図1の例に於いて、容器体Aの底部に充填口17を開口し、充填口17を閉塞する底蓋Dを設けている。容器体Aは底壁を無くして、周壁11の下端開口を充填口17となし、周壁11の内周下端部を大径部に形成してそこに係止用の突条18を周設している。また、底蓋Dは充填口17を閉塞する底蓋板40の周縁部より立設した嵌合筒41を容器体周壁11の大径部に嵌合させ、嵌合筒41に突周設した係合用の突条42を係止用の突条18に乗り越え係合させて嵌着固定している。その他の構成は図1の例と同様であるため、同符号付して説明を省略する。
【0030】
この場合には、容器体Aに固定刃部材B及び蓋体Cをセットした状態での納品が可能であり、内容物の充填後に底蓋Dのみを嵌着することで充填作業を完了する。
【0031】
図6は更に他の例を示すもので、上記図1の例に使用が可能である蓋体Cの例を示す。この場合の蓋体Cは回転刃33の各刃33a が肉厚に形成された例であり、その他の構造は図4の例と同様である。この様に回転刃33及び固定刃24の具体的形状は、上記例に限らず採用でき、固定刃部材Bの筒状基体20内面に設けた固定刃24と蓋体Cの凹陥部31b 外周に設けた回転刃33であればその具体的形状は種々選択できる。
【符号の説明】
【0032】
1:ミル容器
A:容器体
10…底壁、11…周壁、11a …第1縮径部、11b …第2縮径部、12…係止凸部、
12a …単位凸部、13…傾斜面,14…第1上向き段部、15…第2上向き段部、
16…係止突条、17…充填口、18…係止用の突条
B:固定刃部材
20…筒状基体、21…フランジ、22…テ−パ部、23…係合凹部、23a …単位凹部、
24…固定刃
C:蓋体
30…操作筒、31…蓋板、31a …水平板部、31b …凹陥部、32…排出口、
33…回転刃、33a …刃、34…凹凸部、35…係合突条
D:底蓋
40…底蓋板、41…嵌合筒、42…係合用の突条


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端を開口した有底筒状をなすとともに、周壁(11)内周に係止凸部(12)を突設した合成樹脂製の容器体(A)と、外面に凹設した係合凹部(23)を係止凸部(12)に嵌合させて容器体(A)内上端部に筒状基体(20)を嵌合させるとともに、筒状基体(20)内周面に固定刃(24)を突設した合成樹脂製の固定刃部材(B)と、容器体(A)の外周上端部に抜け出しを防止して回転可能に嵌合させた操作筒(30)より、周縁部に排出口(32)を穿設した回転刃(33)付きの蓋板(31)を延設した合成樹脂製の蓋体(C)とを備え、容器体(A)に対する蓋体(C)の回転により固定刃(24)と回転刃(33)とで収容物を粉砕するミル機構を構成したことを特徴とするミル容器。
【請求項2】
容器体(A)を透明乃至半透明に形成した請求項1記載のミル容器。
【請求項3】
係合凹部(23)を、筒状基体(20)外周を一周して等間隔に並設した複数の単位凹部(23a)で構成し、係止凸部(12)を、1又は周方向複数の単位凸部(12a)で構成し、任意の単位凹部(23a)を単位凸部(12a)の上方からの嵌合が可能に構成した請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のミル容器。
【請求項4】
単位凹部(23a)を、筒状基体(20)外面を縦断する縦凹溝形態に形成し、単位凸部(12a)を、容器体周壁(11)を縦断して形成された縦突条形態に形成し、周方向等間隔に1乃至3本設けた請求項3記載のミル容器。
【請求項5】
容器体(A)の底部に充填口(17)を開口し、充填口(17)を閉塞する底蓋(D)を設けた請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のミル容器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−245153(P2011−245153A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123429(P2010−123429)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】