説明

ムスカリン性受容体活性化によって改善される疾患の治療のための方法および組成物

ムスカリン活性剤とムスカリン阻害剤との組合せを用いて中枢神経系疾患を治療するための方法、およびムスカリン活性剤とムスカリン阻害剤とを含む薬剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、1)ムスカリン性受容体の活性化によって改善される疾病(例えば、統合失調症および関連疾患)の治療のために1種以上のムスカリン作動薬と1種以上のムスカリン拮抗薬との組合せを使用する方法;2)1種以上のムスカリン作動薬と1種以上のムスカリン拮抗薬とを含む薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
アセチルコリン神経伝達物質系は、様々な中枢神経系(CNS)および末梢機能において重要な役割を果たす。ニコチン性受容体およびムスカリン性受容体の2つの異なる種類の受容体によってアセチルコリンのシグナル伝達が行われる。ムスカリン性コリン受容体は、5つの異なる受容体サブタイプ(M1〜M5)を有するGタンパク質共役受容体であり(Raedler et al. American Journal of Psychiatry. 160:118. 2003)、受容体サブタイプの各々はCNSに見られるが、異なる組織分布を有する。ムスカリン作動薬を使用することによるムスカリン系の活性化は、アルツハイマー病、パーキンソン病、運動障害および薬物嗜癖を含むいくつかの疾病を治療する可能性を有することが示唆されている(米国特許出願公開第2005/0085463号;Langmead et al. Pharmacology & Experimental Therapeutics. 117:232:2008)。遺伝学的証明により、ムスカリン系と、アルコール嗜癖(Luo X. Et al. Hum Mol Genet. 14:2421. 2005)およびニコチン嗜癖(Mobascher A et al. Am J Med Genet B Neuropsychiatr Genet. 5:684. 2010)の両方との間の直接的関連が示唆されている。M1およびM4サブタイプは、様々な疾病の治療標的として特に関心を集めてきた。例えば、双極性うつ病を治療するのに用いられる気分安定剤であるリチウムおよびバルプロ酸は、特にM4サブタイプの受容体を通してムスカリン系を介して効果を発揮することができる(Bymaster & Felder. Mol Psychiatry. 7 Suppl 1:S57. 2002)。
【0003】
ムスカリン系と最も関連性が高いものの中には、人口の約0.5〜1%を侵す深刻な精神疾患である統合失調症がある(Arehart-Treichel. Psych News. 40:9. 2005)。この疾病は、一般に次の3つのカテゴリーに分類される一連の症状を特徴とする:1)陽性症状(例えば、幻覚、妄想など);2)陰性症状(例えば、社会的孤立、無快感症など);および3)認知症状(例えば、情報処理能力の喪失、ワーキングメモリの低下など)(Schultz. Am Fam Physician. 75:1821. 2007)。統合失調症の患者は、生活の質が大幅に低下し、かつ自殺率の上昇などのいくつかの要因による死亡のリスクが高い(Brown et al. British Journal of Psychiatry. 177:212. 2000)。統合失調症の患者は、投獄されたり、ホームレスになったり、または失業したりする可能性がはるかに高いため、統合失調症による社会に対する損失も大きい。
【0004】
現在、抗精神病薬が、統合失調症の治療の主力なものである。第一世代抗精神病薬が一般に「定型抗精神病薬」として知られているのに対し、新しい抗精神病薬は一般に「非定型抗精神病薬」と呼ばれている。定型抗精神病薬および非定型抗精神病薬は両方とも効能が限られ、重い副作用がある。定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬との効能の差はほとんど乃至全くないが、その理由は、両方の種類の薬物が同じ薬理学的機構によってその治療効果を発揮する(例えば、ドーパミン受容体拮抗薬として作用する)ことによるものである可能性が高い(Nikam et al. Curr Opin Investig Drugs. 9:37. 2008)。定型抗精神病薬の副作用には、異常運動(例えば、硬直)が含まれる一方、非定型抗精神病薬には、それとは異なるが同様に重い副作用(例えば、大きな体重増加、心血管作用など)がある。現在の抗精神病薬の副作用プロフィールは、多くの場合は既にコンプライアンスが低い患者集団のコンプライアンスをさらに低下させる。このため、統合失調症および関連疾患(例えば、統合失調性感情障害)を治療するための新規な治療法が明らかに必要とされている。
【0005】
クロザピンは、患者の最大54%に起こる流涎症(過流涎)を含む重い副作用がある抗精神病薬の一例である(DavydovおよびBotts、Ann Pharmacother. 34:662. 2000)。過流涎の正確な機構はまだ分かっていない(RogersおよびShramko. Pharmacotherapy. 20:109. 2000)。クロザピンは、ドーパミン受容体、セロトニン受容体、アドレナリン受容体、ムスカリン性受容体および場合により他の受容体を含む様々な受容体においてかなりの活性を有する複雑な薬理作用を有する(Coward. Br J Psychiatry Suppl. 17:5. 1992)。研究者は、抗精神病薬アミスルプリド(Croissant et al. Pharmacopsychiatry. 38:38. 2005)およびスルピリド(Kreinin et al. Isr J Psychiatry Relat Sci. 42:61. 2005)に加えてボツリヌス毒素(Kahl et al. Nervenarzt. 76:205. 2005)を含め、流涎症を防ぐために様々な薬理学的手法を試みてきた。取り組みは、主にα2アドレナリン作動薬ならびに抗コリン薬に重点が置かれてきた。クロザピンがこれらの受容体と相互作用することが知られているためである。ピレンゼピンなどの抗ムスカリン薬は、小規模試験では効能を示したが(Schneider et al. Pharmacopsychiatry. 37:43. 2004)、同じ剤を用いた他の試験では効果が確認されていない(Liu et al. J Clin Psychopharmacol. 21.:608. 2001)。クロニジンなどのα2アドレナリン作動薬(Singh et al., J Psychopharmacol. 19:426. 2005)も、小規模試験で流涎症を軽減する効能を示した。しかしながら、Syedらは、2008年のレビューの中で、臨床診療の指針とするにはデータが不十分であることを報告した(Syed et al. Cochrane Database Syst Rev. 16:3. 2008)。
【0006】
統合失調症の治療のための別の手法は、ムスカリン作動薬の使用であった。ムスカリン性受容体は、神経伝達物質アセチルコリンを結合するGタンパク質共役受容体である(Eglen RM. Auton Autacoid Pharmacol 26:219. 2006)。これまでに、ムスカリン性受容体の5つのサブタイプが特定されており、一般にそれぞれM1、M2、M3、M4、およびM5と表示される(Caulfield MP et al. Pharmacol. Rev. 50:279. 1998)。これらのムスカリンサブタイプは、受容体のための様々な作動薬および拮抗薬の親和性に関して様々である。いくつかの一連の証拠により、ムスカリン系が統合失調症の病状に大きな役割を果たすことが示唆されている。特に、死亡した統合失調症患者の死後研究においてM1およびM4受容体サブタイプの発現の低下が指摘された(Dean et al. Mol Psych. 1:54. 1996)。同様に、SPECT画像診断により、統合失調症におけるムスカリンの利用(muscarinic availability)の低下が示された(Raedler et al. Am J Psych.160:118. 2003)。
【0007】
ムスカリン性受容体の活性化を統合失調症のための潜在的な治療手法として示唆する薬理学的証拠もある。例えば、乗り物酔いを治療するのに用いられるムスカリン拮抗薬スコポラミンは、統合失調症に見られるタイプの認識機能障害および妄想を引き起こす(Ellis et al. Int. J. Neuropsychopharmacol. 9:175. 2006)。より選択的なM1作動薬が、治療効果を発揮させるのに役立ち得るグルタミン酸シグナル伝達を促進することが示唆されている(Jones et al. J. Neurosci. 28:10422. 2008)。M1およびM4受容体において選択的活性を有するキサノメリンを用いた統合失調症患者の二重盲検プラセボ対照試験において、統合失調症の緩和が観察された(Shekhar et al. Am. J. Psych. 165:1033. 2008)。しかしながら、キサノメリンはM1以外の受容体のサブタイプにも結合するため、唾液分泌過多とともに、胃腸(GI)の副作用、心臓の副作用および障害を含むいくつかの様々な重篤な副作用が観察された。
【0008】
ムスカリン作動薬が特定のムスカリン性受容体サブタイプと結合することに付随する副作用のため、これまで誰もムスカリン作動薬を用いた手法を活用できなかった。より少ない副作用で、ムスカリン性受容体の活性化に関連した治療効果を可能にし得る、ムスカリン作動薬を使用する方法およびこのようなムスカリン作動薬を用いた薬剤が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
一実施形態において、本発明は、1種以上のムスカリン「活性剤」(例えば、作動薬、部分作動薬、共作動薬(co-agonist)、生理的作用薬、増強剤、刺激剤、アロステリック増強剤、ポジティブアロステリックモジュレータまたはアロステリック作動薬)および1種以上のムスカリン「阻害剤」(例えば、拮抗薬、部分拮抗薬、競合的拮抗薬、非競合的(non-competitive)拮抗薬、不競合的(uncompetitive)拮抗薬、サイレントアンタゴニスト、逆作動薬、可逆的拮抗薬、生理的拮抗薬、非可逆的拮抗薬、阻害剤、可逆的阻害剤、非可逆的阻害剤、ネガティブアロステリックモジュレータ、またはアロステリック拮抗薬)を投与することによって、ムスカリン系の活性化によって改善される疾病または病態を治療する方法に関する。好ましい実施形態において、このような疾病には、統合失調症および関連疾患が含まれる。好ましい実施形態において、1種のムスカリン活性剤および1種のムスカリン阻害剤が用いられる。好ましい実施形態において、活性剤と阻害剤との組合せは、本明細書に記載される独自のアルゴリズムを用いたインシリコ(in silico)試験によって判定した際に230を超えるスコア(「θスコア(Theta score)」)を有する。別の実施形態において、2種以上のムスカリン活性剤および/または2種以上のムスカリン阻害剤が用いられる。
【0010】
本発明の別の実施形態において、治療方法は、哺乳動物に適用され得る。別の実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0011】
本発明の一実施形態において、阻害剤の使用により、活性剤の使用に付随する副作用が軽減される。別の実施形態において、阻害剤の使用により、活性剤のより高い最大耐性量(
tolerated dose)が可能になる。
【0012】
一実施形態において、ムスカリン活性剤は、阻害剤と連続して摂取されてもよい。本発明の別の実施形態において、ムスカリン活性剤は、阻害剤と同時に摂取されてもよい。本発明の好ましい実施形態において、活性剤および阻害剤は、同じ剤形または投与媒体(dosage vehicle)に含まれるように製剤化される。本発明の別の実施形態において、ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤は、別個の剤形または投与媒体中で製剤化される。一実施形態において、活性剤および阻害剤は、即放性剤形に製剤化される。別の実施形態において、活性剤および阻害剤は、徐放性剤形に製剤化される。別の実施形態において、活性剤または阻害剤のいずれかが即放性剤形に製剤化される一方、他方が徐放性剤形に製剤化される。
【0013】
本発明の別の実施形態において、ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤は、経口摂取することができる。活性剤および阻害剤は、錠剤、トローチ、液剤、滴下剤(drops)、カプセル、カプレットおよびジェルカプセル(gel cap)または当業者に公知の他のこのような製剤で経口投与され得る。他の投与経路には、非経口、局所、経皮、眼内、直腸、舌下、および膣内が含まれ得るがこれらに限定されない。
【0014】
本発明の別の実施形態において、ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤は、統合失調症の他の治療法と同時にまたは連続して投与される。本発明の一実施形態において、ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤は、精神療法と同時にまたは連続して用いられる。本発明の別の実施形態において、ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤は、他の薬物療法と同時にまたは連続して投与される。薬物療法には、抗精神病薬、抗不安薬、抗うつ剤、鎮静剤、精神安定剤および当業者に公知の他の薬理学的介入が含まれ得るがこれらに限定されない。
【0015】
本発明の別の実施形態は、ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤の両方を含む薬剤である。好ましい実施形態において、活性剤と阻害剤との組合せは、本明細書に記載される独自のアルゴリズムを用いたインシリコ試験によって判定した際に230を超えるθスコアを有する。
【0016】
本発明の別の実施形態において、薬剤は、経口摂取することができる。薬剤は、錠剤、トローチ、液剤、滴下剤、カプセル、カプレットおよびジェルカプセルまたは当業者に公知の他のこのような製剤で経口投与され得る。他の投与経路には、非経口、局所、経皮、眼内、直腸、舌下、および膣内が含まれ得るがこれらに限定されない。
【0017】
本発明の別の実施形態において、薬剤は、他の治療法と併用して投与することができる。本発明の一実施形態において、薬剤は、精神療法と同時にまたは連続して用いられる。本発明の別の実施形態において、薬剤は、他の薬物療法と同時にまたは連続して投与される。このような薬物療法には、抗精神病薬、抗不安薬、抗うつ剤、鎮静剤、精神安定剤および当業者に公知の他の薬理学的介入が含まれ得るがこれらに限定されない。
【0018】
本発明のこれらのおよび他の実施形態、ならびにそれらの特徴および特性は、本明細書およびそれに続く特許請求の範囲においてさらに詳細に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
定義
便宜上、本発明のさらなる説明の前に、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲で用いられるいくつかの用語をここにまとめる。これらの定義は、本開示の残りの部分に照らして読まれ、当業者によって理解されるように理解されるべきである。特に定義しない限り、本明細書に用いられる全ての専門用語および科学用語は、当業者によって理解され得るのと同じ意味を有する。
【0020】
本明細書において、冠詞「a」および「an」は、この冠詞の文法上の対象物の1つまたは2つ以上(すなわち少なくとも1つ)を言及するのに用いられる。例として、「要素(an element)」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0021】
用語「含む(comprise)」および「含む(comprising)」は、包括的な限定されない(open)意味で用いられ、さらなる要素が含まれ得ることを意味する。
【0022】
用語「からなる(consisting)」は、通常付随する不純物を除いて、指定されたものに要素を限定するのに用いられる。
【0023】
用語「から本質的になる」は、要素を指定されたもの及び材料または工程の基本かつ新規な特性に実質的に影響しないものに限定するのに用いられる。
【0024】
本明細書において用いられる際、特に規定がない限り、用語「徐放性(controlled release)」は、薬剤が一定期間にわたって放出されるような1種以上の薬剤の持続放出(prolonged release)パターンと定義される。徐放性製剤は、静脈注射の後または即放性経口剤形の投与の後にかかり得る期間より長い期間にわたって薬物の測定可能な血中濃度が得られる放出速度を有する製剤である。徐放性、徐放出(slow release)、持続放出(sustained release)、徐放出性(extended release)、持効性放出(prolonged release)、および遅延放出は、本発明について同じ定義を有する。
【0025】
本明細書において、用語「含む(including)」は、「含むがこれらに限定されない」を意味するのに用いられる。「含む」および「含むがこれらに限定されない」は同義的に用いられる。
【0026】
用語「哺乳動物」は、当該技術分野で公知であり、例示的な哺乳動物には、ヒト、霊長類、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、およびげっ歯類(例えば、ネズミおよびラット)が含まれる。
【0027】
用語「非経口投与」および「非経口投与される」は、当該技術分野において認識されており、通常は注射による、腸内投与および局所投与以外の投与形態を指し、静脈内、筋肉内、動脈内、脊髄内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、ならびに胸骨内注射および点滴を含むがこれらに限定されない。
【0028】
本発明の方法によって治療される「患者」、「被験者」または「宿主」は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物のいずれかを意味し得る。
【0029】
用語「薬学的に許容可能な担体」は、当該技術分野において認識されており、任意の本発明の組成物またはその成分を1つの器官または身体の一部から、別の器官または身体の一部へと運ぶまたは輸送するのに関わる液体もしくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または封入材料などの薬学的に許容可能な材料、組成物、または媒体を指す。各担体は、本発明の組成物およびその成分と適合し、かつ患者に有害でないという意味で「許容可能」でなければならない。薬学的に許容可能な担体として働くことができる材料のいくつかの例には、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖類;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのでんぷん;セルロース、ならびにナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースの誘導体;粉末状のトラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオ脂および坐薬ワックスなどの賦形剤;ラッカセイ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱性物質除去水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;および医薬製剤に用いられる他の非毒性の適合性物質が含まれる。
【0030】
「塩」と同義的に用いられる用語「薬学的に許容可能な塩」は、当該技術分野において認識されており、例えば、本発明の組成物に含まれるものを含む、無機酸および無機塩基ならびに有機酸および有機塩基を含む比較的非毒性の酸または塩基から調製される塩を指す。好適な非毒性の酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エテンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、および硫酸などの無機酸および有機酸が含まれる。
【0031】
用語「治療」は、当該技術分野において認識されており、任意の病態または疾患の少なくとも1つの症状を治すことならびに改善することを指す。
【0032】
用語「治療剤」は、当該技術分野において認識されており、被験者において局所的にまたは全身的に作用する生物学的に、生理学的に、または薬理学的に活性な物質である任意の化学部分を指す。「薬物」とも呼ばれる治療剤の例は、the Merck Index(第14版)、the Physicians' Desk Reference(第64版)、およびThe Pharmacological Basis of Therapeutics(第12版)などの周知の参考文献に記載されており、薬剤;ビタミン;ミネラルサプリメント;疾病または病気の治療、予防、診断、治癒または緩和に用いられる物質;身体の構造または機能に作用する物質、あるいは生理環境に置かれた後、生物学的に活性またはより活性になるプロドラッグを含むがこれらに限定されない。
【0033】
用語「精神療法」は、プラスの治療結果に影響を及ぼすための患者との言葉のやりとりおよび他のやりとりを含む様々な技術を当業者が用いる非薬物療法の使用を指す。このような技術には、行動療法、認知療法、精神力動療法、精神分析療法、集団療法、家族のカウンセリング、芸術療法、音楽療法、職業療法、人間主義的療法、実存療法、トランスパーソナル療法、来談者中心療法(人間中心療法とも呼ばれる)、ゲシュタルト療法、バイオフィードバック療法、論理情動行動療法、現実療法、応答療法(response based therapy)、箱庭療法、ステータスダイナミクス療法(status dynamics therapy)、催眠および確認療法が含まれるがこれらに限定されない。精神療法が2つ以上の技術を組み合わせることを含み得ることおよび治療専門家が個別の患者のニーズおよび患者の反応に基づいて技術を選択および調節できることがさらに理解される。
【0034】
用語「ムスカリン様の疾患(Muscarinic Disorder)」は、ムスカリン系の活性化によって改善される任意の疾病または病態を指す。このような疾病は、ムスカリン性受容体自体の直接の活性化またはコリンエステラーゼ酵素の阻害が治療効果を生み出している疾病を含む。
【0035】
用語「統合失調症に関連する疾病」および「統合失調症に関連する疾患」には、分裂情動性障害、精神病、妄想性障害、アルツハイマー病に関連する精神病、パーキンソン病に関連する精神病、精神病性うつ病、双極性障害、精神病を伴う躁うつ病または精神病性特徴を有する任意の他の疾病が含まれるがこれらに限定されない。
【0036】
用語「運動障害」には、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、フリードライヒ運動失調症、ハンチントン舞踏病、むずむず脚症候群ならびに過剰な運動、チック(ticks)およびけいれんを含む症状を有する他の疾病または疾患が含まれるがこれらに限定されない。
【0037】
用語「気分障害」には、大うつ病性障害、気分変調症、再発性軽度うつ病、軽度のうつ病性障害(minor depression disorder)、双極性障害、躁病および不安症が含まれる。
【0038】
用語「認知障害」は、認知障害(例えば、異常なワーキングメモリ、問題解決能力などを有する)を特徴とする疾病または疾患を指す。これらの疾病には、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症(AIDS関連の認知症、血管性認知症、加齢による認知症、レビー小体病に関連する認知症および突発性認知症を含むがこれらに限定されない)、ピック病、精神錯乱、疲労に関連する認知障害、学習障害、外傷性脳損傷、自閉症、加齢による認知低下、およびクッシング病、自己免疫疾患に関連する認識機能障害が含まれるがこれらに限定されない。
【0039】
用語「注意障害」は、注意持続時間の異常または短縮を有することを特徴とする疾病または病態を指す。この疾病には、注意欠陥多動性障害、注意欠陥障害、デュボヴィッツ症候群、FG症候群、ダウン症、インスリン様成長因子Iの不足による成長遅延、肝性脳症症候群、およびストラウス症候群が含まれるがこれらに限定されない。
【0040】
用語「嗜癖障害」は、Diagnostic & Statistical Manual IVによって定義される嗜癖または物質依存を特徴とする疾病または病態を指す。このような疾患は、特定の物質に対する身体的依存、禁断症状および耐性を特徴とする。このような物質には、アルコール、コカイン、アンフェタミン、オピオイド、ベンゾジアゼピン、吸入抗原、ニコチン、バルビツレート、コカインおよび大麻が含まれるがこれらに限定されない。嗜癖障害は、明らかなマイナスの結果にもかかわらず、患者が強迫的に継続して行う行動も包含し得る。例えば、問題賭博は、破滅的な結果をもたらすことが多い嗜癖行動として当業者によって認識されている。
【0041】
用語「活性剤」は、作動薬、部分作動薬、共作動薬、生理的作用薬、増強剤、刺激剤、アロステリック増強剤、ポジティブアロステリックモジュレータ、アロステリック作動薬として表され得る分子あるいは直接的または間接的手段によってムスカリン性受容体の活性またはシグナル伝達を高める分子を意味する。
【0042】
用語「阻害剤」は、拮抗薬、部分拮抗薬、競合的拮抗薬、非競合的拮抗薬、不競合的拮抗薬、サイレントアンタゴニスト、逆作動薬、可逆的拮抗薬、生理的拮抗薬、非可逆的拮抗薬、阻害剤、可逆的阻害剤、非可逆的阻害剤、ネガティブアロステリックモジュレータ、アロステリック拮抗薬として表され得る分子あるいは直接的または間接的手段によってムスカリン性受容体の活性またはシグナル伝達を低下させる分子を意味する。
【0043】
用語「最大耐性量」は、患者が耐えがたい副作用を受けずに摂取できる薬物または治療薬の最高用量を意味する。最大耐性量は、通常、臨床試験で実験的に決定される。
【0044】
用語「ムスカリン性受容体」は、神経伝達物質アセチルコリンを結合するGタンパク質共役受容体を指し、これまでに、ムスカリン性受容体の5つのサブタイプが特定されている。「M1」は、サブタイプ1のムスカリン性受容体を意味する。「M2」は、サブタイプ2のムスカリン性受容体を意味する。「M3」は、サブタイプ3のムスカリン性受容体を意味する。「M4」は、サブタイプ4のムスカリン性受容体を意味する。「M5」は、サブタイプ5のムスカリン性受容体を意味する。
【0045】
用語「抗精神病薬」は、精神病、幻覚または妄想を軽減する薬物を指す。抗精神病薬には、ハロペリドール、ドロペリドール、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、メソリダジン、ペリシアジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボメプロマジン、プロメタジン、ピモジド、クロルプロチキセン、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、アセナピン、パリペリドン、ゾテピン、アリピプラゾール、ビフェプルノックス、およびテトラベナジンが含まれ得るがこれらに限定されない。
【0046】
用語「抗不安薬」は、不安、恐怖、パニックまたは関連する感情を軽減する薬物を指す。このような薬物には、ベンゾジアゼピン(例えば、アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼペート、ジアゼパム、ロラゼパム)、ブスピロン、バルビツレート(例えば、アモバルビタール、ペントバルビタール、セコバルビタール、フェノバルビタール)およびヒドロキシジンが含まれるがこれらに限定されない。
【0047】
用語「抗うつ剤」は、うつ病および関連疾患(例えば、気分変調症)を緩和する薬物を指し、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(例えば、シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン)、セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(例えば、デスベンラファキシン、デュロキセチン、ミルナシプラン、ベンラファクシン)、ミアンセリン、ミルタザピン、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(例えば、アトモキセチン、マジンドール、レボキセチン、ビロキサジン)、ブプロピオン、チアネプチン、アゴメラチン、三環系抗うつ剤(例えば、アミトリプチリン、クロミプラミン、ドクセピン、イミプラミン、トリミプラミン、デシプラミン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(例えば、イソカルボキサジド、モクロベミド、フェネルジン、セレギリン、トラニルシプロミン)を含むがこれらに限定されない。
【0048】
用語「鎮静剤」または「精神安定剤」は、眠気を引き起こし、倦怠感または睡眠欲を促進し、または無意識状態を促進する薬物を指す。このような薬物には、ベンゾジアゼピン、バルビツレート(例えば、アモバルビタール、ペントバルビタール、セコバルビタール、フェノバルビタール)、エスゾピクロン、ザレプロン、ゾルピデム、ゾピクロンが含まれるがこれらに限定されない。
【0049】
用語「θスコア」は、ムスカリン活性剤とムスカリン阻害剤との任意の所与の組合せの全体的な効能および副作用を予測するのに用いられる本明細書に記載されるインシリコのアルゴリズムによって割り当てられる数値と定義される。
【0050】
導入部
本発明は、ムスカリン系の活性化によって改善することができる様々な疾患の治療にムスカリン性受容体の1種以上の活性剤および阻害剤を併用する方法に関する。本発明は、ムスカリン性受容体の1種以上の活性剤と1種以上の阻害剤とを含む薬剤も記載する。ムスカリン活性剤の使用が様々な中枢神経系関連疾患に有用であることは既に仮説を立てられている。特に、M1およびM4受容体サブタイプの活性化は、治療効果があることが判明しているであろう。しかしながら、許容できない副作用のため、M1およびM4ムスカリン活性剤を、臨床開発によって、CNS適応症のための規制機関の承認を受けるまで進展させることは誰もできていない。例えば、M1およびM4ムスカリン性受容体の活性剤は、統合失調症の有効な治療であることが示唆されているが(Shekhar et al. Am J Psychiatry. 165:1033. 2008; Shirey et el. Nature Chem Biol. 4:41. 2007)、M1およびM4だけでなくムスカリン性受容体のサブタイプへのそれらの活性剤による結合は副作用をもたらし、このことが、診療所におけるムスカリン活性剤の使用を妨げてきた(Shekhar et al. Am. J. Psych. 165:1033.2008)。例えば、第一相試験およびその後の試験の両方において、ムスカリン作動薬キサノメリンには、M1およびM4だけでなくムスカリン性受容体の結合に主に関連する許容できない胃腸(GI)の副作用ならびに他の副作用があった(Sramek et al. The Journal of Clinical Pharmacology. 35:800. 1995)、(Cutler & Sramek. Eur. J. Clin. Pharmacol. 48:421-428. 1995)、(Bodick et al. Arch Neuro 54:465-473. 1997)。ムスカリン活性剤を阻害剤と組み合わせることによって、好ましくないサブタイプの結合に関連する副作用を軽減するかまたはなくしつつ、所望の治療効果を得ることが可能である。
【0051】
ムスカリン阻害剤は、過活動膀胱および肺疾患の治療に使用され、他の疾患の治療についても提案されている(Witte LP et al. Curr. Opin. Urol. 1:13. 2009)。複数のグループが、疾病の治療により高い効果を得るための他の種類の薬物とムスカリン阻害剤との併用について概説している。例えば、国際公開第2008/121268号には、β−3アドレナリン作動薬(それ自体がLUTSの治療について研究されている)と、ムスカリン拮抗薬とからなる、下部尿路症状(LUTS)の治療のための組合せが示唆されている。他の文献には、治療効果をさらに与えるために、特定のムスカリン活性剤またはムスカリン阻害剤を、ムスカリン様作用薬以外の他の特定の治療剤と組み合わせることが示唆されている(例えば、国際公開第2009/037503号、国際公開第2009/036243号、国際公開第2008/104776号、国際公開第2008/096136号、国際公開第2008/096126号、国際公開第2008/096121号、国際公開第2008/096111号、国際公開第2007/127196号、国際公開第2007/125293号、欧州特許第2002843号、欧州特許第2002844号、米国特許第5744476号、米国特許第7524965号、米国特許出願公開第2005/0267078号、米国特許出願公開第2006/0189651号、および米国特許出願公開第2008/0045565号)。米国特許出願公開第2006/0287294 A1号には、認知障害の改善を含む、様々な疾病の治療のためのアスパルチルプロテアーゼ阻害剤と、M1作動薬またはM2拮抗薬のいずれかとの併用が概説されている。M1活性剤およびM2阻害剤は両方ともそれ自体(Carey et al. Eur J Pharmacol 431:198. 2001)が、認知障害の治療に有用であることが示唆されており、アスパルチルプロテアーゼ阻害剤との組合せの理由は、アスパルチルプロテアーゼ阻害剤の効果を促進することであった。M1活性剤をM2阻害剤と組み合わせることは示唆されておらず、両方の化合物は、中枢神経系に達することが可能であり、中枢神経系において活性であろう。米国特許第5480651号には、シナプス中のアセチルコリンを増加するかまたはニコチン性アセチルコリン受容体を活性化する剤を使用した後、アセチルコリン受容体拮抗薬を投与してニコチン嗜癖に関連する渇望を軽減するためのすることが開示されている。好ましい組成物は、ニコチン性アセチルコリン受容体を活性化しないであろうムスカリン活性剤とは対照的に、アセチルコリンエステラーゼの阻害剤であるフィゾスチグミンを使用する。国際公開第03/092580号には、特定の受容体サブタイプにおいてムスカリン活性剤として作用し得るのと同時に他の受容体サブタイプにおいて拮抗薬として作用し得る化合物が開示されている。複数のグループが、組合せの治療的使用を示唆せずに、薬物薬理学または正常生理学における様々なムスカリンサブタイプの役割を区別しようとする文脈において、様々なムスカリン活性剤とムスカリン阻害剤とを併用している。このような研究には、動物性物質から出発する細胞アッセイの使用が含まれる(例えば、Iwanaga K. et al. J. Pharmacol. Sci. 110:306. 2009)。米国特許出願公開第2009/0318522号では、Paborjiが、過活動膀胱の治療のために、M2およびM3受容体を標的とした末梢作用ムスカリン拮抗薬の使用を開示している。Paborjiの公報には、末梢作用M2/M3ムスカリン拮抗薬と関連する口渇を防ぐための末梢作用ムスカリンM2/M3作動薬の使用も開示されている。しかしながら、Paborjiの手法は、本明細書に記載される研究に決定的に重要である、CNS内のムスカリン性受容体における活性に関連せず、M1またはM4受容体のいずれかにおける活性にも関連しない。Paborjiの手法は、特定のムスカリン阻害剤に極めて限定され、実験的試験を行い得る可能な組合せが非常に多いにもかかわらず、ムスカリン活性剤とムスカリン拮抗薬との好ましいまたは規定の組合せを特定するための選択基準を全く提供していない。
【0052】
ムスカリン活性剤をムスカリン阻害剤と併用する方法
本発明の一実施形態において、ムスカリン様の疾患の治療のために、1種以上のムスカリン活性剤が、1種以上のムスカリン阻害剤と併用される。好ましい実施形態において、このような疾病または疾患には、統合失調症および統合失調症に関連する疾病が含まれる。別の実施形態において、気分障害の治療のために、1種以上のムスカリン活性剤が、1種以上のムスカリン阻害剤と併用される。別の実施形態において、運動障害を治療するために、1種以上のムスカリン活性剤が、1種以上のムスカリン阻害剤と併用される。別の実施形態において、特定の病変に関連しない認知機能を高めるための組合せを用いることを含めて、認知障害を治療するために、1種以上のムスカリン活性剤が、1種以上のムスカリン阻害剤と併用される。例えば、認識力の改善は、複雑な作業を行う際に重要であり得る。別の実施形態において、注意障害を治療するために、1種以上のムスカリン活性剤が、1種以上のムスカリン阻害剤と併用される。疾病治療の他に、注意力を高めることは、学習を改善し、睡眠不足および時差ぼけなどの概日リズムの乱れの両方による疲労に関連する症状を軽減し得る。別の実施形態において、嗜癖障害を治療するために、1種以上のムスカリン活性剤が、1種以上のムスカリン阻害剤と併用される。
【0053】
別の実施形態において、1種以上のムスカリン活性剤と1種以上のムスカリン阻害剤との組合せを用いて、コリンエステラーゼ酵素の阻害剤に反応して症状が改善されることを特徴とするムスカリン様の疾患を治療することができる。コリンエステラーゼ阻害剤は、特定の疾病(例えば、アルツハイマー病)に対する治療効果があることが分かっているが、このような阻害剤の使用は、毒性のために制限される。実際に、サリンガスなどの強力な化学兵器は、アセチルコリンエステラーゼを阻害することによってそれらの毒性作用を発揮する(サリンガスの製品安全データシート103d Congress, 2d Session. United States Senate. May 25, 1994. http://www.gulfweb.org/bigdoc/report/appgb.html)。1種以上のムスカリン活性剤と1種以上のムスカリン阻害剤との組合せは、コリンエステラーゼ阻害剤に反応することが示されている疾病を治療するより安全な方法であるだけでなく、現在のコリンエステラーゼ阻害剤に対する制限を考えるとより有効な方法でもある。
【0054】
一実施形態において、1種以上のムスカリン活性剤と1種以上のムスカリン阻害剤との組合せを用いて動物を治療する。さらなる実施形態において、動物は哺乳動物である。好ましい実施形態において、哺乳動物はヒトである。一実施形態において、1種のムスカリン活性剤および1種のムスカリン阻害剤が用いられる。別の実施形態において、2種以上のムスカリン活性剤および/または2種以上のムスカリン阻害剤が用いられる。
【0055】
一実施形態において、阻害剤の使用により、活性剤の使用に伴う副作用が軽減される。このような副作用には、胃腸(GI)の副作用、心臓の副作用、多汗および唾液分泌過剰が含まれるがこれらに限定されない。活性剤がその副作用のために本来であれば臨床的に使用できない場合、1種以上の阻害剤と1種以上の活性剤との併用により、その活性剤を臨床的に使用することが可能になる。別の実施形態において、阻害剤と活性剤との併用により、活性剤が本来達成するであろう最大耐性量より高い最大耐性量を達成することが可能になる。
【0056】
上述した実施形態の活性剤と阻害剤との組合せの両方の効能を実証するために、時間も資源もかかる様々な方法が用いられることがある。統合失調症の新規な治療法の効能を実証するために、例えば、薬理学モデル(例えば、ケタミンモデル)および遺伝モデル(例えば、DISCIマウス)(Dawe GS et al. Ann Acad Med Singapore. 38:425. 2009; Desbonnet L. Biochem Soc Trans. 37:308. 2009; Geyer MA. Neurotox Res. 14:71. 2008)の両方を含む動物モデルが用いられている。同様に、薬剤の副作用プロフィールを実証するために、げっ歯類、イヌおよび非ヒト霊長類を含む動物モデルが用いられ得る。動物モデルは、実験上のヒトの代わりとしての役割を果たすが、ヒトと動物との生理学的差異に関連する欠陥があり得るため、特に中枢神経系疾患の臨床実験への移行に対する予測力が限られ得る。あるいは、この組合せは、ヒトの比較臨床試験において試験され得る。当業者が患者の自己報告に基づいた標準的な尺度を用いて、胃腸(GI)の不快感などの様々な副作用を評価することができる。別の例として、当業者が客観的な生理学的尺度(例えば、EKG)を用いてもよい。簡易精神症状評価尺度(BPRS)、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)および臨床全般印象(CGI)を含む、統合失調症の症状を評価するための一連の標準的な尺度も開発されている(Mortimer AM. Br J Psychiatry Suppl. 50:s7. 2007)。通常、臨床試験は、一方のグループの患者が偽薬を摂取し、他方のグループが積極的な介入を受ける二重盲検法で行われる。
【0057】
本発明の一実施形態において、ムスカリン活性剤は、ムスカリン阻害剤と同時に投与される。別の実施形態において、ムスカリン阻害剤は、活性剤と連続して投与される。さらなる実施形態において、ムスカリン活性剤は、ムスカリン阻害剤の投与の前に投与される。別の実施形態において、ムスカリン阻害剤は、ムスカリン活性剤の投与の前に投与される。一実施形態において、ムスカリン阻害剤は、ムスカリン活性剤の投与の1時間以内に投与される。別の実施形態において、ムスカリン阻害剤は、ムスカリン活性剤の投与の30分以内に投与される。別の実施形態において、ムスカリン阻害剤は、ムスカリン活性剤の投与の10分以内に投与される。別の実施形態において、ムスカリン阻害剤は、ムスカリン活性剤の投与の1分以内に投与される。別の実施形態において、ムスカリン阻害剤は、ムスカリン活性剤の投与の30秒以内に投与される。上に概説したタイプの投薬計画の開始の前に、1日〜14日間続く導入期間(lead-in period)があり得る。この導入期間中、ムスカリン阻害剤は、組合せの投与を開始する前に単独で与えられてもよい。
【0058】
一実施形態において、10マイクログラム〜10グラムの活性剤が、阻害剤と併用される。別の実施形態において、1ミリグラム〜1グラムの活性剤が、阻害剤と併用される。好ましい実施形態において、5〜500ミリグラムの活性剤が用いられる。一実施形態において、10マイクログラム〜10グラムの阻害剤が、活性剤と併用される。別の実施形態において、1ミリグラム〜1グラムの阻害剤が、活性剤と併用される。好ましい実施形態において、2.5ミリグラム〜200ミリグラムの阻害剤が用いられる。
【0059】
一実施形態において、ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤は、24時間に6回患者に投与される。別の実施形態において、ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤は、24時間に5回患者に投与される。別の実施形態において、ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤は、24時間に4回患者に投与される。好ましい実施形態において、ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤は、24時間に3回患者に投与される。別の好ましい実施形態において、ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤は、24時間に2回患者に投与される。別の好ましい実施形態において、ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤は、24時間に1回患者に投与される。
【0060】
ムスカリンの組合せのインシリコ試験
現在知られている65種の特有のムスカリン活性剤および114種の特有のムスカリン阻害剤がある(Adis R&D Insight(商標)、Pubmed、Web of Science、U.S. FDA Orange Book、米国特許第5,852,029号)。したがって、1種のムスカリン活性剤が1種のムスカリン阻害剤と組み合わせられ得る可能な組合せが7,410通り存在する。2種以上のムスカリン活性剤を1種以上のムスカリン阻害剤と組み合わせるとすれば、組合せの数はさらに多くなるであろう。統合失調症などの関連する疾病のためのいくつかの動物モデルが存在するが(Dawe GS et al. Ann Acad Med Singapore. 38:425. 2009; Desbonnet L. Biochem Soc Trans. 37:308. 2009; Geyer MA. Neurotox Res. 14:71. 2008)、統合失調症などの複雑な疾病の動物モデルは不完全であるため、動物データに基づいてヒトでの効能および副作用の負担を予測する能力は限られたものとなり得る。同様に、疾病の治療の効能ならびに副作用の両方について標準的な測定尺度(Mortimer AM. Br J Psychiatry Suppl. 50:s7. 2007)が存在する場合、統合失調症などの特定の疾病を患っているヒトにおいて組合せを試験することが可能である。しかしながら、疾病の動物モデルまたはより重要にはヒトの臨床試験のいずれかにおいてこのような多数の組合せを試験することは、非常にコストがかかるであろうことから実際には不可能であり、存在する熟練した調査者の数および患者の動員に必要な時間における制約のために数十年かかり得る。
【0061】
所与の組合せの効能を試験し、予測する方法がなければ、このような組合せが有効であるかどうかを事前に予測するのが極めて難しい。例えば、Medinaらは、キサノメリンで観察される副作用である失神がムスカリン拮抗薬によって調整され得るかどうかを調べるために、ムスカリン作動薬のキサノメリンおよびムスカリン拮抗薬のメトスコポラミンを与えた(Medina et al. Hypertension. 29:828. 1997)。このグループは、失神に効果がないことを観察した。このことは、ムスカリン系が失神に関わりがないことを反映し得るか、あるいは、ムスカリンの組合せの選択が不適切であることを反映し得る。同様に、Maralらは、アルツハイマー病の治療のための、ムスカリン作動薬RS−86と抗コリン剤グリコピロレートとの併用を実証した(Maral et al. Neurology. 38:606. 1988)。この手法は、RS−86の使用量を漸増したにもかかわらず認識力を全く改善しなかった。米国特許出願公開第2006/0194831号には、ムスカリン性受容体を活性化するためのクロザピンの誘導体の使用が開示されている。米国特許出願公開第2006/0194831号には、クロザピンの誘導体の使用を、ムスカリン拮抗薬の使用を含む治療法の広いリストから選択される別の治療法と組み合わせることができることが開示されているが、この公報は、例えば、特定の剤がクロザピンの誘導体との組合せの広いリストから選択されるべき理由、またはこのような組合せが有用であろう理由についての指針または根拠を提供していない。特定のムスカリン作動薬を開示している米国特許第5852029号には、副作用をなくすのに役立つムスカリン拮抗薬と特定の作動薬との併用の可能性が記載されているが、適切な拮抗薬を選択するための基準を全く提供していない。
【0062】
Maralらなどのグループによる失敗は、ムスカリン活性剤とムスカリン阻害剤との組合せを慎重に選択し、理想的に試験する必要があることを示している。このような多数の組合せを物理的に試験することの非現実的な性質を考えて、所与の組合せが有効かつ安全であるかどうかを、生体内試験を行わずに事前に予測するという極めて困難な作業を行うために、本発明者らは、インシリコ試験のためのアルゴリズムを作成した。このアルゴリズムに基づいてインシリコ試験を行うために、本発明者らは、ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤についての公知の情報を集めた広範囲のデータベースを作成した。本発明者らがこの独自のアルゴリズム、ならびにムスカリン様作用薬およびその特性のデータベースを作成した方法は、多段階でかつ資源集約的なものであった。まず、本発明者らは、全ての公知のムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤のリストを作成した。次に、本発明者らは、有効でかつ安全な組合せを予測するのに有用であるムスカリン様作用薬の特性を選択し、各特性の相対的な重要度を判定した。次に、本発明者らは、各々のムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤の各特性に関連するデータを可能な限り収集するための広範囲にわたるデータ収集プロセスに取り組んだ。本発明者らは、このデータを取得してから、コンピューターベースのアルゴリズムを作成し、それによって、各特性および各組合せについてのスコアが計算され、次にこれらのスコアを用いて各組合せについての総合スコアを生成するようになっている。より高い合計スコア(「θスコア」)が、許容できる副作用で有効である可能性がより高い組合せに適用されるように評価システムは作成された。したがって、本発明者らは、このアルゴリズムを用いて各組合せを試験することによって、組合せの優先順位リストを作成し、それによって、より高いスコアの組合せが臨床試験のためのより魅力的な候補となる。考えられるあらゆる組合せを生体内で試験することの非現実性を考えると、ヒトにおいて試験するための組合せを選択するための優先順位付けは重要である。
【0063】
ムスカリン活性剤とムスカリン阻害剤との様々な組合せを評価するために、本発明者らは、全ての公知のムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤の独自のデータベースを作成した(表2および3を参照)。このデータベースは、ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤に関連する全ての現在および過去のプログラムを探して様々なリソースを系統的に調査することによって作成された。本発明者らの調査は、Pubmed and Web of Scienceなどの学術文献データベース、Delphionなどの特許データベース、およびAdis R&D Insight(商標)などの医薬品の研究開発データベースを含むものとした。本発明者らは、薬物容器に同封されている添付文書、新聞データベース、企業のウェブサイト、および会議抄録も調査した。本発明者らは、65種のムスカリン活性剤および114種のムスカリン阻害剤の総合データベースを作成するために、合計で数千の雑誌刊行物、特許、Adisレコード、および他の文献を調査した。
【0064】
次に、本発明者らは、所与の組合せが許容できる副作用で有効であるかどうかを予測するのに有用な特性を選択した。言い換えると、本発明者らは、定量的な予測評価を行うために各組合せを評価することができる基準を決定した。関連する特性を選択するこの方法は、厳密な内部分析によって進められ、通常は考慮されないか、および/または通常は好ましくないと考えられているが、本発明者らが好ましいとみなしたいくつかの特性を特定した。本出願における併用療法の手法は、2種の剤の相乗的な効能を探す必要のある通常の併用療法の手法とかなり異なっている。本発明において、本発明者らは、もう1つの剤の効果を打ち消す1つの剤を探し、これにより異例の薬物選択基準が得られる。例えば、本発明者らは、場合によっては、低いまたは弱い効能データが見直される(rewarded)ように、効能データに基づいて各ムスカリン阻害剤を評価した。また、通常の手法と対照的に、本発明者らは、場合によっては、臨床開発中に示された副作用についてムスカリン阻害剤を見直した。ほとんどのムスカリン阻害剤は、過活動膀胱などの関連のない適応症について試験されたため、これらの関連のない適応症に対する効能は望ましくないことがあり、許容できない副作用を有する可能性のある組合せを予測し得る。例えば、多尿は、ムスカリン活性剤の一般的に報告される副作用ではない。したがって、排尿を低減する最大の能力を有する阻害剤を与えることは、組合せの利点を与えることなく、尿閉を引き起こす最大のリスクとなり得る。
【0065】
本発明者らは、特定の副作用、特に抹消性抗コリン作用と関連することが知られている副作用を見直したが、その理由は、抹消性抗コリン作用は、ムスカリン活性剤の副作用の影響を解消または軽減し得るためである。見直した副作用と見直した弱い効能とをこのように組み合わせることは、ムスカリン活性剤の副作用をなくすのに望ましい抹消にわたって生理作用を有するムスカリン阻害剤の選択につながる。例えば、ある化合物が、全く副作用がなく過活動膀胱の治療に効能を示した場合、このことは、その化合物が膀胱においてムスカリン性受容体を阻害しているが、胃腸管または唾液腺においてはそれほど阻害しなかったことを示唆するであろう。このような化合物は、意図する目的が過活動膀胱の治療である薬物には理想的であろうが、このような化合物は、本明細書に記載される使用には好ましくないであろう。想定される組合せのためのより好ましい阻害剤は、活性剤が望ましくない副作用を引き起こす同じ器官(例えば胃腸管)において薬理作用(すなわち、過活動膀胱を治療するときに観察される副作用)を示すであろう。副作用の見直しおよび効能の不利な評価は、医薬品を選択するための通常の方法と対照的である。
【0066】
本発明者らの徹底的な選択プロセスにより、95の関連する特性が得られ、それに基づいて、公知のムスカリン活性剤とムスカリン阻害剤との7,410通りの組合せの各々が評価され得る。これらの特性は、次の3つのカテゴリー、すなわち、ムスカリン活性剤のみに関連する特性;ムスカリン阻害剤のみに関連する特性;ならびに活性剤および阻害剤の両方の特質を組み合わせた特性に分類される。これらの分類は、以下で詳細に説明される。
【0067】
各特性に基づいて各々のムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤のデータを収集するために、本発明者らは、全ての公知のムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤のデータベースを作成するのに用いられるものと同じリソースの多くを用いて、厳密なデータ収集プロセスに取り組んだ。また、本発明者らの調査は、Pubmed and Web of Scienceなどの学術文献データベース、Delphionなどの特許データベース、Adis R&D Insight(商標)およびthe U.S. FDA Orange Bookなどの医薬品の研究開発データベース、ならびに薬物容器に同封されている添付文書および他のリソースにわたった。しかしながら、このプロセスは、抽出される情報の詳細でかつ多くの場合は定量的な性質の点で異なっていた。例えば、本発明者らは、各々のムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤の全ての公知の効能および副作用データを収集し、分類した。本発明者らは、薬物動態学および薬力学に関する全ての公知のデータも収集した。本発明者らのデータベースに現在存在する化合物の新たなデータが入ったとき、または本発明者らのデータベースの新たなエントリの見込みに関する情報が入ったとき、データベースの更新を行うことができ、これにより新たなθスコアが得られることとなる。例えば、MCD 386は、データの追加により、MCD 386を含むムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤の組合せについてのθスコアを高めることができたムスカリン活性剤である。
【0068】
本発明者らは、次に、これらのデータを用いて、各々のムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤の組合せが、許容できる副作用で有効である相対的確率を定量するためにコンピューターベースのアルゴリズムを作成した。この評価システムは、各特性に基づいて各組合せにスコアを適用することによって機能し、本発明者らはこれをpスコアと呼ぶ。各pスコアは全体の計算に寄与し、高いpスコアは、組合せが所与の特性に基づいて許容できる副作用で有効である可能性が高いことを示すようになっていた。このアルゴリズムは、各々が95のpスコアに基づいて評価された7,410通りの可能な組合せの全てを試験したため、このアルゴリズムは、各組合せについて独自の総合スコア(「θスコア」)を計算した際に合計で703,950のpスコアをまとめたものであった(表1を参照)。
【0069】
特性ごとにデータの性質が様々であることを考えて、様々な評価方法を用いてpスコアを生成した。いずれの場合も、評価方法は、所与の特性の範囲内で一貫しており、10の最大値を生じ、これにさらに「重み因子(weight factor)」を掛けた。組合せが、許容できる副作用で有効である確率を予測する際に、重み因子を用いて各特性の重要度を反映した。作動薬の効能の実証に関する特性などのいくつかの特性は、好ましい組合せを評価する際により強い影響を有するため、より重く重み付けされた。全ての特性のベースラインの重み因子は1であり、用いられる最大重み因子は2であった。
【0070】
pスコアを生成するのに用いられる主な方法は、順位付けに基づくスコアリング、二元スコアリング(binary scoring)、およびカットオフ値(value cut-off)によるスコアリングであった。これらの方法の各々の機構が以下に詳述される:
・順位付けに基づくpスコアを、効能の測定などの定量的データを用いて生成し、最高値(例えば、10のスコア)を最も好ましいデータ点に与え、最低値(例えば、0のスコア)を最も好ましくないデータ点に与えた。次に、より好ましくないデータ点に、比例的により低いスコアが与えられるように、残りの値を線形に分配した。最後に、各スコアに、所与の特性の重要度を反映した所定の重みを掛けることによって、重み因子を各値に適用した。最小限の減少、または最も低い効能が必要とされるような、3種のムスカリン阻害剤(阻害剤A、阻害剤B、および阻害剤C)が尿意頻数(24時間当たりの排尿の回数)の示された減少に基づいて評価される場合を例にとる。この場合、阻害剤Aは、24時間で1回の排尿の減少を示す一方、阻害剤BおよびCは、それぞれ2回および4回の値を示す。各pスコアを計算するために、阻害剤Aが最も望ましい結果を示したため、本発明者らはまず、阻害剤AにBまたはCより比例的に高い値を与えなければならない(例えば、阻害剤A、B、およびCには、それぞれ1、1/2、および1/4の値が与えられる)。次に、本発明者らは、阻害剤Aが10のスコアを受け、阻害剤Bが5のスコアを受け、阻害剤Cが2.5のスコアを受けるようにこれらの値を線形に分配する。最後に、これらのスコアに重み因子(この場合、1であり得る)を掛けて、10、5、および2.5の最終的なpスコアを得る。
・二元pスコアを、二元特性に関連する2つの値のうちの1つを割り当てることによって生成した。臨床試験において効能を示したかどうかに基づいて評価される2種のムスカリン活性剤、AおよびBの場合を例にとる。効能を示したムスカリン活性剤Aに10の値を与える一方、効能を示さなかったBは0のスコアを受ける。この重要な特性が2の重み因子を有するため、ムスカリン活性剤AおよびBは、それぞれ20および0の最終的なpスコアを受ける。
・カットオフ値によるpスコアを、所与の値が分類されるグループに基づいて適用した。この方法を、順位付けの方法が好ましくないかまたは可能でない非二元の場合に用いた(例えば、定性的データのスコアリング、またはカットオフが関連する定量的データのスコアリング)。これらの場合、値が最も望ましいカテゴリーに分類されるムスカリン活性剤またはムスカリン阻害剤に10の値を与える(対応する重み因子を掛ける前に)。
【0071】
各組合せに適用されたpスコアを合計して、以下の3つの独自のサブスコア、すなわち、活性剤独立サブスコア(Activator Independent Subscore)、阻害剤独立サブスコア(Inhibitor Independent Subscore)、および組合せのサブスコアを生成した。活性剤独立サブスコアは、作動薬が組み合わされる拮抗薬から独立した特性(例えば、臨床試験における効能の実証)に基づいた各作動薬の評価を表す。同様に、阻害剤独立サブスコアは、拮抗薬が組み合わされる作動薬から独立した特性((例えば、CNS浸透のレベル)に基づいた各拮抗薬の評価を表す。これに対し、組合せのサブスコアは、作動薬および拮抗薬の両方の特徴が関連する特性(例えば、薬物動態学的研究に基づいたTmaxの類似性)に基づいた評価を表す。活性剤独立サブスコアおよび阻害剤独立サブスコアの両方について、各pスコアを合計し、次に最高順位のエントリに100のスコアが与えられるように各スコアを正規化することによって値を計算した。この際、各々のより低い順位のエントリを、最高順位のエントリと同じ因子によって比例的に増加または減少させた。組合せのサブスコアを計算する際、同じ原理を適用したが;与えられた最大スコアは50であった。
【0072】
最後に、このアルゴリズムは、θスコアが増加するにしたがい、組合せが許容できる副作用で効能が得られる確率も上がるように、各組合せについて最終的な「θスコア」を生成した。3つのサブスコアを合計することによってθスコアを計算した。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【0076】
以下の3つの表に記載の入力データを用いてアルゴリズムを構築した。各表における特性、スコアリング方法、高いスコアの基準、および重みの列は、各サブスコアを計算する際に用いられる基本的な入力データおよび機構を表す。
【0077】
【表4】

【0078】
【表5】

【0079】
【表6】

【0080】
【表7】

【0081】
【表8】

【0082】
【表9】

【0083】
本発明の好ましい実施形態において、上記のアルゴリズムを用いたインシリコ試験によって判定した際に230以上のθスコアを有するムスカリン活性剤とムスカリン阻害剤との組合せが用いられる。本発明の別の実施形態において、上記のアルゴリズムを用いたインシリコ試験によって判定した際に200以上のθスコアを有するムスカリン活性剤とムスカリン阻害剤との組合せが用いられる。本発明の別の実施形態において、上記のアルゴリズムを用いたインシリコ試験によって判定した際に150以上のθスコアを有するムスカリン活性剤とムスカリン阻害剤との組合せが用いられる。本発明のさらなる実施形態において、上記のアルゴリズムを用いたインシリコ試験によって判定した際に149以下のθスコアを有するムスカリン活性剤とムスカリン阻害剤との組合せが用いられる。
【0084】
一実施形態において、キサノメリンが、ムスカリン活性剤として、ムスカリン阻害剤と併用される。別の実施形態において、キサノメリンが、24時間に1〜5回、患者に投与される。好ましい実施形態において、キサノメリンが、24時間に1〜3回投与される。別の実施形態において、25ミリグラム〜700ミリグラムのキサノメリンが、24時間の間に用いられる。好ましい実施形態において、75ミリグラム〜300ミリグラムのキサノメリンが、24時間の間に用いられる。
【0085】
一実施形態において、サブコメリンが、ムスカリン活性剤として、ムスカリン阻害剤と併用される。別の実施形態において、サブコメリンが、24時間に1〜5回、患者に投与される。好ましい実施形態において、サブコメリンが、24時間に1〜3回投与される。別の実施形態において、50マイクログラム〜5ミリグラムのサブコメリンが、24時間の間に用いられる。好ましい実施形態において、150マイクログラム〜450マイクログラムのサブコメリンが、24時間の間に用いられる。
【0086】
一実施形態において、ミラメリンが、ムスカリン活性剤として、ムスカリン阻害剤と併用される。別の実施形態において、ミラメリンが、24時間に1〜5回、患者に投与される。好ましい実施形態において、ミラメリンが、24時間に1〜3回投与される。別の実施形態において、0.5ミリグラム〜50ミリグラムのミラメリンが、24時間の間に用いられる。好ましい実施形態において、4ミリグラム〜16ミリグラムのミラメリンが、24時間の間に用いられる。
【0087】
一実施形態において、タルサクリジンが、ムスカリン活性剤として、ムスカリン阻害剤と併用される。別の実施形態において、タルサクリジンが、24時間に1〜5回、患者に投与される。好ましい実施形態において、タルサクリジンが、24時間に1〜3回投与される。別の実施形態において、5ミリグラム〜1グラムのタルサクリジンが、24時間の間に用いられる。好ましい実施形態において、120ミリグラム〜480ミリグラムのタルサクリジンが、24時間の間に用いられる。
【0088】
一実施形態において、セビメリンが、ムスカリン活性剤として、ムスカリン阻害剤と併用される。別の実施形態において、セビメリンが、24時間に1〜5回、患者に投与される。好ましい実施形態において、セビメリンが、24時間に1〜3回投与される。別の実施形態において、45ミリグラム〜750ミリグラムのセビメリンが、24時間の間に用いられる。好ましい実施形態において、90ミリグラム〜360ミリグラムのセビメリンが、24時間の間に用いられる。
【0089】
一実施形態において、ピロカルピンが、ムスカリン活性剤として、ムスカリン阻害剤と併用される。別の実施形態において、ピロカルピンが、24時間に1〜5回、患者に投与される。好ましい実施形態において、ピロカルピンが、24時間に1〜3回投与される。別の実施形態において、7.5ミリグラム〜500ミリグラムのピロカルピンが、24時間の間に用いられる。好ましい実施形態において、30ミリグラム〜200ミリグラムのピロカルピンが、24時間の間に用いられる。
【0090】
一実施形態において、塩化トロスピウムが、ムスカリン阻害剤として、ムスカリン活性剤と併用される。別の実施形態において、塩化トロスピウムが、24時間に1〜5回、患者に投与される。好ましい実施形態において、塩化トロスピウムが、24時間に1〜3回投与される。別の実施形態において、5ミリグラム〜400ミリグラムの塩化トロスピウムが、24時間の間に用いられる。好ましい実施形態において、20ミリグラム〜200ミリグラムの塩化トロスピウムが、24時間の間に用いられる。
【0091】
一実施形態において、徐放出性塩化トロスピウムが、ムスカリン阻害剤として、ムスカリン活性剤と併用される。別の実施形態において、徐放出性塩化トロスピウムが、24時間に1〜5回、患者に投与される。好ましい実施形態において、徐放出性塩化トロスピウムが、24時間に1〜3回投与される。別の実施形態において、5ミリグラム〜400ミリグラムの徐放出性塩化トロスピウムが、24時間の間に用いられる。好ましい実施形態において、20ミリグラム〜200ミリグラムの徐放出性塩化トロスピウムが、24時間の間に用いられる。
【0092】
一実施形態において、ソリフェナシンが、ムスカリン阻害剤として、ムスカリン活性剤と併用される。別の実施形態において、ソリフェナシンが、24時間に1〜5回、患者に投与される。好ましい実施形態において、ソリフェナシンが、24時間に1〜3回投与される。別の実施形態において、0.25ミリグラム〜100ミリグラムのソリフェナシンが、24時間の間に用いられる。好ましい実施形態において、1ミリグラム〜30ミリグラムのソリフェナシンが、24時間の間に用いられる。
【0093】
一実施形態において、トルテロジンが、ムスカリン阻害剤として、ムスカリン活性剤と併用される。別の実施形態において、トルテロジンが、24時間に1〜5回、患者に投与される。好ましい実施形態において、トルテロジンが、24時間に1〜3回投与される。別の実施形態において、1ミリグラム〜16ミリグラムのトルテロジンが、24時間の間に用いられる。好ましい実施形態において、2ミリグラム〜8ミリグラムのトルテロジンが、24時間の間に用いられる。
【0094】
一実施形態において、フェソテロジンが、ムスカリン阻害剤として、ムスカリン活性剤と併用される。別の実施形態において、フェソテロジンが、24時間に1〜5回、患者に投与される。好ましい実施形態において、フェソテロジンが、24時間に1〜3回投与される。別の実施形態において、2ミリグラム〜56ミリグラムのフェソテロジンが、24時間の間に用いられる。好ましい実施形態において、4ミリグラム〜28ミリグラムのフェソテロジンが、24時間の間に用いられる。
【0095】
一実施形態において、ダリフェナシンが、ムスカリン阻害剤として、ムスカリン活性剤と併用される。別の実施形態において、ダリフェナシンが、24時間に1〜5回、患者に投与される。好ましい実施形態において、ダリフェナシンが、24時間に1〜3回投与される。別の実施形態において、3.75ミリグラム〜150ミリグラムのダリフェナシンが、24時間の間に用いられる。好ましい実施形態において、7.5ミリグラム〜30ミリグラムのダリフェナシンが、24時間の間に用いられる。
【0096】
被験者が治療されている間、患者の健康は、治療期間中、所定の時間に関連する指標のうちの1つ以上を測定することによってモニタリングされ得る。投与および製剤の組成、量、回数を含め、治療は、このようなモニタリングの結果に応じて最適化することができる。患者は、同じパラメータを測定することによって改善の程度を判定するために定期的に再評価され得る。投与される本発明の組成物の量および場合により投与の回数の調節は、これらの再評価に基づいて行うことができる。
【0097】
治療は、化合物の適量未満であるより少ない用量から開始され得る。その後、用量は、治療効果と副作用との間の最適なバランスが得られるまで少しずつ増加させることができる。
【0098】
組合せの剤形
一実施形態において、ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤は、剤形または投与媒体が異なる。好ましい実施形態において、ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤は、剤形または投与媒体が同じである。剤形は、1種以上の薬学的に許容可能な担体を含み得る。剤形は、1種以上の薬学的に許容可能な塩も含み得る。剤形は、経口投与され得る。活性剤および阻害剤は、錠剤、トローチ、液剤、乳剤、懸濁剤、滴下剤、カプセル、カプレットまたはジェルカプセルおよび当業者に公知の他の経口投与方法を用いて経口送達され得る。また、ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤は、非経口投与されてもよい。他の投与経路には、局所、経皮、経鼻、眼内、直腸、舌下、吸入、および膣内が含まれるがこれらに限定されない。局所および経皮投与の場合、活性剤および阻害剤は、クリーム、ゲル、軟膏、スプレー、懸濁剤、乳剤、フォーム、またはパッチで、あるいは当業者に公知の他の方法によって送達され得る。経鼻投与の場合、活性剤および阻害剤は、スプレー、滴下剤、乳剤、フォーム、クリーム、軟膏または当業者に公知の他の方法によって送達され得る。経鼻投与の場合、吸入用の製剤は、活性剤が噴射剤などの担体に可溶化されている溶液エアロゾル、または活性剤が担体および任意選択の溶媒全体にわたって懸濁または分散されている分散エアロゾルのいずれかのエアロゾルとして調製され得る。眼内投与の場合、活性剤および阻害剤は、滴下剤、スプレー、注射、溶液、乳剤、懸濁剤、または軟膏で、あるいは当業者に公知の他の方法によって送達され得る。直腸投与の場合、活性剤および阻害剤は、坐薬、かん腸剤、クリーム、フォーム、ゲル、または軟膏を用いて、あるいは当業者に公知の他の方法によって送達され得る。舌下投与の場合、活性剤および阻害剤は、錠剤、トローチ、液剤、乳剤、懸濁剤、滴下剤、カプセル、カプレットまたはジェルカプセルで、および当業者に公知の他の経口投与方法によって送達され得る。吸入による投与の場合、活性剤および阻害剤は、蒸気、噴霧、粉末、エアロゾル、または霧化形態で、あるいは当業者に公知の他の方法によって送達され得る。膣内投与の場合、活性剤および阻害剤は、溶液、乳剤、懸濁剤、軟膏、ゲル、フォーム、または膣リングで、あるいは当業者に公知の他の方法によって送達され得る。
【0099】
ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤は、薬物を即時放出する剤形であり得る。代替的な実施形態において、ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤は、徐放性剤形である。徐放性剤形の一実施形態において、活性剤および阻害剤は、類似の放出速度を有する。別の実施形態において、阻害剤は、活性剤が放出される前に放出される。別の実施形態において、阻害剤が即時放出された後、活性剤が徐放され、次に阻害剤が徐放されるように、3段階の放出プロファイルが用いられる。一実施形態において、ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤は、リポソームに入れられる。さらなる実施形態において、リポソームはリン脂質を含む。さらなる実施形態において、リポソーム中のリン脂質は、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、卵ホスファチジルグリセロール(EPG)、卵ホスファチジルイノシトール(EPI)、卵ホスファチジルセリン(EPS)、卵ホスファチジルエタノールアミン(EPE)、卵ホスファチジン酸(EPA)、大豆ホスファチジルコリン(SPC)、大豆ホスファチジルグリセロール(SPG)、大豆ホスファチジルセリン(SPS)、大豆ホスファチジルイノシトール(SPI)、大豆ホスファチジルエタノールアミン(SPE)、大豆ホスファチジン酸(SPA)、水素化卵ホスファチジルコリン(HEPC)、水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPQ)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、パルミトイルステアロールホスファチジルグリセロール(PSPG)、モノオレオイルホスファチジルエタノールアミン(MOPE)、ジラウロイルエチルホスホコリン(DLEP)、ジミリストイルエチルホスホコリン(DMEP)、ジパルミトイルエチルホスホコリン(DPEP)、ジステアロイルエチルホスホコリン(DSEP)、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)、ジミリストイルホスファチジルイノシトール(DMPI)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、N−アシル化ホスホリルエタノールアミン(NAPE)、およびそれらの組合せから選択される。
【0100】
さらなる実施形態において、徐放性製剤は半透膜を含む。ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤は、同じ製剤中の異なる膜内にあってもよい。別の実施形態において、ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤は、異なる製剤または投与媒体において異なる膜内にあり得る。さらなる実施形態において、半透膜はポリマーを含む。さらなる実施形態において、徐放性製剤は、ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤を懸濁するマトリックス(matrix)を含む。ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤は、同じ薬剤内で別のマトリックス内にあってもよい。さらなる実施形態において、マトリックスはポリマーを含む。さらなる実施形態において、ポリマーは水溶性ポリマーを含む。さらなる実施形態において、水溶性ポリマーは、オイドラギット(Eudragit)RL、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物から選択される。さらなる実施形態において、ポリマーは、不水溶性ポリマーを含む。さらなる実施形態において、不水溶性ポリマーは、オイドラギット(Eudragit)RS、エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリ(エチレン)、低密度ポリ(エチレン)、高密度ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルイソブチルエーテル)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニル)、ポリウレタン、およびそれらの混合物から選択される。さらなる実施形態において、マトリックスは脂肪族化合物を含む。さらなる実施形態において、脂肪族化合物は、ワックスまたはトリステアリン酸グリセリルである。さらなる実施形態において、ポリマーは、水溶性ポリマーおよび不水溶性ポリマーを含む。さらなる実施形態において、マトリックスは、脂肪族化合物をさらに含む。
【0101】
ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤は、当業者に公知の徐放性製剤の他の方法を使用する剤形であり得る(例えば、Dixit & Puthli. J. Control Release. 2:94. 2009;Mizrahi & Domb. Recent Pat Drug Deliv Formul. 2:108. 2008; Forqueri & Singh. Recent Pat Drug Deliv Formul. 3:40. 2009;Kalantzi et al. Recent Pat Drug Deliv Formul. 3:49. 2009;Iconomopoulou et al. Recent Pat Drug Deliv Formul. 2:94. 2008; Panos et al. Curr Drug Discov Technol. 5:333. 2008;2008. Wan et al. Nanomed. 2:483. 2007. Wang et al. Drug Delivery:Principles & Applications. Wiley 2005)。
【0102】
別の実施形態において、ムスカリン活性剤とムスカリン阻害剤との組合せは、精神療法および薬物の両方を含み得る1つ以上の治療法と併用される。治療剤には、抗精神病薬、抗不安薬、抗うつ剤、鎮静剤、精神安定剤および当業者に公知の他の薬理学的介入が含まれるがこれらに限定されない。治療剤は、2種以上の薬物のカテゴリーに分類され得る。例えば、ベンゾジアゼピンは、抗不安薬、鎮静剤および精神安定剤とみなすことができる。
【0103】
1種以上のムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤を含有する薬剤
本発明の一実施形態は、1種以上のムスカリン活性剤と、1種以上のムスカリン阻害剤とを含む薬剤である。
【0104】
一実施形態において、薬剤において、10マイクログラム〜10グラムの活性剤が、阻害剤と併用される。別の実施形態において、1ミリグラム〜1グラムの活性剤が、阻害剤と併用される。別の実施形態において、10マイクログラム〜10グラムの阻害剤が、活性剤と併用される。別の実施形態において、1ミリグラム〜1グラムの阻害剤が、活性剤と併用される。
【0105】
一実施形態において、薬剤は、24時間に6回、患者に投与される。別の実施形態において、薬剤は、24時間に5回、患者に投与される。別の実施形態において、薬剤は、24時間に4回、患者に投与される。別の実施形態において、薬剤は、24時間に3回、患者に投与される。別の実施形態において、薬剤は、24時間に2回、患者に投与される。別の実施形態において、薬剤は、24時間に1回、患者に投与される。好ましい実施形態において、薬剤は、24時間に1〜3回投与される。
【0106】
本発明の一実施形態において、薬剤は、上記のアルゴリズムを用いたインシリコ試験によって判定した際に230以上のθスコアを有するムスカリン活性剤とムスカリン阻害剤との組合せを含有する。本発明の別の実施形態において、薬剤は、上記のアルゴリズムを用いたインシリコ試験によって判定した際に200以上のθスコアを有するムスカリン活性剤とムスカリン阻害剤との組合せを含有する。本発明の別の実施形態において、薬剤は、上記のアルゴリズムを用いたインシリコ試験によって判定した際に150以上のθスコアを有するムスカリン活性剤とムスカリン阻害剤との組合せを含有する。本発明のさらなる実施形態において、薬剤は、上記のアルゴリズムを用いたインシリコ試験によって判定した際に149以下のθスコアを有するムスカリン活性剤とムスカリン阻害剤との組合せを含有する。さらなる実施形態において、キサノメリンが、薬剤におけるムスカリン活性剤として用いられる。別の実施形態において、薬剤は、5ミリグラム〜700ミリグラムのキサノメリンを含有する。好ましい実施形態において、薬剤は、25ミリグラム〜300ミリグラムのキサノメリンを含有する。
【0107】
一実施形態において、サブコメリンが、薬剤におけるムスカリン活性剤として用いられる。別の実施形態において、薬剤は、10マイクログラム〜5ミリグラムのサブコメリンを含有する。好ましい実施形態において、薬剤は、50マイクログラム〜450マイクログラムのサブコメリンを含有する。
【0108】
一実施形態において、ミラメリンが、薬剤におけるムスカリン活性剤として用いられる。別の実施形態において、薬剤は、0.1ミリグラム〜50ミリグラムのミラメリンを含有する。好ましい実施形態において、薬剤は、1ミリグラム〜16ミリグラムのミラメリンを含有する。
【0109】
一実施形態において、タルサクリジンが、薬剤におけるムスカリン活性剤として用いられる。別の実施形態において、薬剤は、1ミリグラム〜1グラムのタルサクリジンを含有する。好ましい実施形態において、薬剤は、40ミリグラム〜480ミリグラムのタルサクリジンを含有する。
【0110】
一実施形態において、セビメリンが、薬剤におけるムスカリン活性剤として用いられる。別の実施形態において、薬剤は、9ミリグラム〜750ミリグラムのセビメリンを含有する。好ましい実施形態において、薬剤は、30ミリグラム〜360ミリグラムのセビメリンを含有する。
【0111】
一実施形態において、ピロカルピンが、薬剤におけるムスカリン活性剤として用いられる。別の実施形態において、薬剤は、1.5ミリグラム〜500ミリグラムのピロカルピンを含有する。好ましい実施形態において、薬剤は、10ミリグラム〜200ミリグラムのピロカルピンを含有する。
【0112】
一実施形態において、塩化トロスピウムが、薬剤におけるムスカリン阻害剤として用いられる。別の実施形態において、薬剤は、1ミリグラム〜400ミリグラムの塩化トロスピウムを含有する。好ましい実施形態において、薬剤は、6.5ミリグラム〜200ミリグラムの塩化トロスピウムを含有する。
【0113】
一実施形態において、徐放出性塩化トロスピウムが、薬剤におけるムスカリン阻害剤として用いられる。別の実施形態において、薬剤は、1ミリグラム〜400ミリグラムの徐放出性塩化トロスピウムを含有する。好ましい実施形態において、薬剤は、6.5ミリグラム〜200ミリグラムの徐放出性塩化トロスピウムを含有する。
【0114】
一実施形態において、ソリフェナシンが、薬剤におけるムスカリン阻害剤として用いられる。別の実施形態において、薬剤は、0.25ミリグラム〜100ミリグラムのソリフェナシンを含有する。好ましい実施形態において、薬剤は、1ミリグラム〜30ミリグラムのソリフェナシンを含有する。
【0115】
一実施形態において、トルテロジンが、薬剤におけるムスカリン阻害剤として用いられる。別の実施形態において、薬剤は、0.2ミリグラム〜16ミリグラムのトルテロジンを含有する。好ましい実施形態において、薬剤は、0.7ミリグラム〜8ミリグラムのトルテロジンを含有する。
【0116】
一実施形態において、フェソテロジンが、薬剤におけるムスカリン阻害剤として用いられる。別の実施形態において、薬剤は、0.4ミリグラム〜56ミリグラムのフェソテロジンを含有する。好ましい実施形態において、薬剤は、1ミリグラム〜28ミリグラムのフェソテロジンを含有する。
【0117】
一実施形態において、ダリフェナシンが、薬剤におけるムスカリン阻害剤として用いられる。別の実施形態において、薬剤は、0.8ミリグラム〜150ミリグラムのダリフェナシンを含有する。好ましい実施形態において、薬剤は、2.5ミリグラム〜30ミリグラムのダリフェナシンを含有する。
【0118】
被験者が治療されている間、患者の健康は、治療期間中、所定の時間に関連する指標のうちの1つ以上を測定することによってモニタリングされ得る。投与および製剤の組成、量、回数を含め、治療は、このようなモニタリングの結果に応じて最適化することができる。患者は、同じパラメータを測定することによって改善の程度を判定するために定期的に再評価され得る。投与される本発明の組成物の量および場合により投与の回数の調節は、これらの再評価に基づいて行うことができる。
【0119】
治療は、化合物の適量未満であるより少ない用量から開始され得る。その後、用量は、治療効果と副作用との間の最適なバランスが得られるまで少しずつ増加させることができる。薬物滴定のこの原則は、当業者によってよく理解される。
【0120】
薬剤は、1種以上の薬学的に許容可能な塩も含み得る。薬剤は、1種以上の薬学的に許容可能な担体を含み得る。薬剤は、経口投与され得る。薬剤は、錠剤、トローチ、液剤、乳剤、懸濁剤、滴下剤、カプセル、カプレットまたはジェルカプセルおよび当業者に公知の他の経口投与方法を用いて経口送達され得る。また、薬剤は、非経口投与されてもよい。他の投与経路には、局所、経皮、経鼻、直腸、眼内、舌下、吸入、および膣内が含まれるがこれらに限定されない。局所および経皮投与の場合、薬剤は、クリーム、ゲル、軟膏、スプレー、懸濁剤、乳剤、フォーム、またはパッチで、あるいは当業者に公知の他の方法によって送達され得る。経鼻投与の場合、薬剤は、スプレー、滴下剤、乳剤、フォーム、クリーム、または軟膏あるいは当業者に公知の他の方法によって送達され得る。経鼻投与の場合、吸入用の製剤は、活性剤が噴射剤などの担体に可溶化されている溶液エアロゾル、または活性剤が担体および任意選択の溶媒全体にわたって懸濁または分散されている分散エアロゾルのいずれかのエアロゾルとして調製され得る。直腸投与の場合、薬剤は、坐薬、かん腸剤、クリーム、フォーム、ゲル、または軟膏を用いて、あるいは当業者に公知の他の方法によって送達され得る。眼内投与の場合、薬剤は、滴下剤、スプレー、注射、溶液、乳剤、懸濁剤、または軟膏で、あるいは当業者に公知の他の方法によって送達され得る。舌下投与の場合、薬剤は、錠剤、トローチ、液剤、乳剤、懸濁剤、滴下剤、カプセル、カプレットまたはジェルカプセルで、および当業者に公知の他の経口投与方法によって送達され得る。吸入による投与の場合、薬剤は、蒸気、噴霧、粉末、エアロゾル、または霧化形態で、あるいは当業者に公知の他の方法によって送達され得る。膣内投与の場合、薬剤は、溶液、乳剤、懸濁剤、軟膏、ゲル、フォーム、または膣リングで、あるいは当業者に公知の他の方法によって送達され得る。
【0121】
薬剤は、薬物を即時放出する剤形であり得る。代替的な実施形態において、薬剤は、徐放性剤形を有し得る。一実施形態において、薬剤は、リポソームに入れられる。さらなる実施形態において、リポソームはリン脂質を含む。さらなる実施形態において、リポソーム中のリン脂質は、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、卵ホスファチジルグリセロール(EPG)、卵ホスファチジルイノシトール(EPI)、卵ホスファチジルセリン(EPS)、卵ホスファチジルエタノールアミン(EPE)、卵ホスファチジン酸(EPA)、大豆ホスファチジルコリン(SPC)、大豆ホスファチジルグリセロール(SPG)、大豆ホスファチジルセリン(SPS)、大豆ホスファチジルイノシトール(SPI)、大豆ホスファチジルエタノールアミン(SPE)、大豆ホスファチジン酸(SPA)、水素化卵ホスファチジルコリン(HEPC)、水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPQ)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、パルミトイルステアロールホスファチジルグリセロール(PSPG)、モノオレオイルホスファチジルエタノールアミン(MOPE)、ジラウロイルエチルホスホコリン(DLEP)、ジミリストイルエチルホスホコリン(DMEP)、ジパルミトイルエチルホスホコリン(DPEP)、ジステアロイルエチルホスホコリン(DSEP)、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)、ジミリストイルホスファチジルイノシトール(DMPI)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、N−アシル化ホスホリルエタノールアミン(NAPE)、およびそれらの組合せから選択される。
【0122】
さらなる実施形態において、徐放性製剤は半透膜を含む。ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤は、同じ製剤中の異なる膜内にあってもよい。別の実施形態において、ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤は、異なる製剤または投与媒体において異なる膜内にあり得る。さらなる実施形態において、半透膜はポリマーを含む。さらなる実施形態において、徐放性製剤は、ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤を懸濁するマトリックスを含む。ムスカリン活性剤およびムスカリン阻害剤は、同じ薬剤内で別のマトリックス内にあってもよい。さらなる実施形態において、マトリックスはポリマーを含む。さらなる実施形態において、ポリマーは水溶性ポリマーを含む。さらなる実施形態において、水溶性ポリマーは、オイドラギット(Eudragit)RL、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物から選択される。さらなる実施形態において、ポリマーは、不水溶性ポリマーを含む。さらなる実施形態において、不水溶性ポリマーは、オイドラギット(Eudragit)RS、エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリ(エチレン)、低密度ポリ(エチレン)、高密度ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルイソブチルエーテル)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニル)、ポリウレタン、およびそれらの混合物から選択される。さらなる実施形態において、マトリックスは脂肪族化合物を含む。さらなる実施形態において、脂肪族化合物は、ワックスまたはトリステアリン酸グリセリルである。さらなる実施形態において、ポリマーは、水溶性ポリマーおよび不水溶性ポリマーを含む。さらなる実施形態において、マトリックスは、脂肪族化合物をさらに含む。
【0123】
薬剤は、当業者に公知の徐放性製剤の他の方法を使用する剤形であり得る(例えば、Dixit & Puthli. J. Control Release. 2:94. 2009;Mizrahi & Domb. Recent Pat Drug Deliv Formul. 2:108. 2008;Forqueri & Singh. Recent Pat Drug Deliv Formul. 3:40. 2009;Kalantzi et al. Recent Pat Drug Deliv Formul. 3:49. 2009;Iconomopoulou et al. Recent Pat Drug Deliv Formul. 2:94. 2008;Panos et al. Curr Drug Discov Technol. 5:333. 2008;Wan et al. Nanomed. 2:483. 2007. Wang et al. Drug Delivery:Principles & Applications. Wiley 2005)。
【0124】
別の実施形態において、薬剤は、精神療法および薬物の両方を含み得る1つ以上の治療法と併用される。治療剤には、抗精神病薬、抗不安薬、抗うつ剤、鎮静剤、精神安定剤および当業者に公知の他の薬理学的介入が含まれるがこれらに限定されない。治療剤は、2種以上の薬物のカテゴリーに分類され得る。例えば、ベンゾジアゼピンは、抗不安薬、鎮静剤および精神安定剤とみなすことができる。
【0125】
本発明の新規な方法および組成物の上述した利点は、以下の非限定的な実施例によって例示される。
【実施例】
【0126】
実施例1
1つの実施例において、本発明は、75ミリグラムのキサノメリンおよび20ミリグラムの塩化トロスピウムを含有する単一カプセル製剤である。カプセルは、活性化合物、媒体、界面活性剤および調整剤で構成される充填材料を囲むゼラチンシェルからなる。媒体は、500〜10,000ダルトンの範囲の分子量を有するポリエチレングリコールであり、充填材料の10重量%である。界面活性剤は、ポリソルベート80であり、充填材料の0.1重量%に相当する。調整剤は、充填材料の0.25重量%で存在するヒュームドシリカである。全充填材料は、カプセルの総重量の50%に相当し、ゼラチンシェルは、カプセルの総重量の50%である。
【0127】
実施例2
第2の製剤は、腸溶性材料(胃の酸性環境において比較的不溶性の材料)を含む外側の徐放性層が追加された実施例1のカプセルである。当業者に公知の様々な腸溶性材料がある。この特定の製剤のために、本発明者らは、カプセルの総重量の20%を構成し得るヒドロキシエチルセルロースを使用する。
【0128】
実施例3
第3の実施例は、カプセルが225mgのキサノメリンおよび60ミリグラムの塩化トロスピウムを含有する、実施例2のように調製される製剤である。
【0129】
実施例4
1つの実施例において、本発明は、75ミリグラムのキサノメリンおよび5ミリグラムのソリフェナシンを含有する単一カプセル製剤である。カプセルは、活性化合物、媒体、界面活性剤および調整剤で構成される充填材料を囲むゼラチンシェルからなる。媒体は、500〜10,000ダルトンの範囲の分子量を有するポリエチレングリコールであり、充填材料の10重量%である。界面活性剤は、ポリソルベート80であり、充填材料の0.1重量%に相当する。調整剤は、充填材料の0.25重量%で存在するヒュームドシリカである。全充填材料は、カプセルの総重量の50%に相当し、ゼラチンシェルは、カプセルの総重量の50%である。
【0130】
実施例5
第2の製剤は、腸溶性材料(胃の酸性環境において比較的不溶性の材料)を含む外側の徐放性層が追加された実施例4のカプセルである。当業者に公知の様々な腸溶性材料がある。この特定の製剤のために、本発明者らは、カプセルの総重量の20%を構成し得るヒドロキシエチルセルロースを使用する。
【0131】
実施例6
第3の実施例は、カプセルが225mgのキサノメリンおよび10ミリグラムのソリフェナシンを含有する、実施例5のように調製される製剤である。
【0132】
引用文献
本明細書に記載される全ての刊行物および特許は、各々の個々の刊行物または特許が具体的にかつ個別に参照により援用されているかのように、全体が参照により本明細書に援用される。矛盾が生じた場合、本明細書に記載の定義を含めて、本出願が優先するものとする。
【0133】
均等物
本発明の特定の実施形態を説明したが、上記の明細書は例示であり、限定されるものではない。本発明の多くの変形は、本明細書を検討することにより当業者に明らかになるであろう。本発明の全範囲は、特許請求の範囲をその均等物の全範囲とともに、および本明細書をこのような変形とともに参照することによって決定されるべきである。
【0134】
特に示されない限り、明細書および特許請求の範囲に用いられる成分の量、反応条件などを表す全ての数値は、いずれの場合も、「約」という用語により修飾されるものと理解されるべきである。したがって、相反する記載がない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムスカリン活性剤をムスカリン阻害剤とともに患者に投与する工程を含む、中枢神経系疾患を治療する方法であって、前記中枢神経系疾患が、統合失調症、統合失調症に関連する疾患、ムスカリン様の疾患、運動障害、気分障害、認知障害、注意障害、および嗜癖障害から選択される方法。
【請求項2】
患者におけるムスカリン活性剤によって引き起こされる副作用を軽減する方法であって、ムスカリン阻害剤を前記患者に投与する工程を含む方法。
【請求項3】
前記ムスカリン活性剤と前記ムスカリン阻害剤との組合せが、149未満のθスコアを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ムスカリン活性剤と前記ムスカリン阻害剤との組合せが、150を超えるθスコアを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記ムスカリン活性剤と前記ムスカリン阻害剤との組合せが、200を超えるθスコアを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記ムスカリン活性剤と前記ムスカリン阻害剤との組合せが、230を超えるθスコアを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記ムスカリン活性剤が、前記ムスカリン阻害剤と連続して投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記ムスカリン阻害剤および前記ムスカリン活性剤が同時に投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
10マイクログラム〜10グラムの前記ムスカリン活性剤が投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
1ミリグラム〜1グラムの前記ムスカリン活性剤が投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
10マイクログラム〜10グラムの前記ムスカリン阻害剤が投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
1ミリグラム〜1グラムの前記ムスカリン阻害剤が投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
前記ムスカリン活性剤および前記ムスカリン阻害剤が、1つの投与媒体に入れられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
前記投与媒体が、錠剤、トローチ、液剤、乳剤、懸濁剤、滴下剤、カプセル、ジェルカプセル、クリーム、ゲル、軟膏、フォーム、クリーム、エアロゾル、坐薬、かん腸剤、および膣リングから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ムスカリン活性剤および前記ムスカリン阻害剤が、錠剤、トローチ、液剤、乳剤、懸濁剤、滴下剤、カプセル、ジェルカプセル、クリーム、ゲル、軟膏、フォーム、クリーム、エアロゾル、坐薬、かん腸剤、および膣リングから独立して選択される別の投与媒体に入れられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
前記ムスカリン活性剤および前記ムスカリン阻害剤が、即放性製剤中に製剤化される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項17】
前記ムスカリン活性剤および前記ムスカリン阻害剤が、徐放性製剤中に製剤化される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項18】
前記ムスカリン活性剤および前記ムスカリン阻害剤が、治療剤と併用して投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項19】
前記治療剤が、抗精神病薬、抗不安薬、抗うつ剤、鎮静剤、精神安定剤、およびそれらの組合せから選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ムスカリン活性剤と、ムスカリン阻害剤と、薬学的に許容可能な担体とを含む薬剤。
【請求項21】
前記ムスカリン活性剤と前記ムスカリン阻害剤との組合せが、149未満のθスコアを有する、請求項20に記載の薬剤。
【請求項22】
前記ムスカリン活性剤と前記ムスカリン阻害剤との組合せが、150を超えるθスコアを有する、請求項20に記載の薬剤。
【請求項23】
前記ムスカリン活性剤と前記ムスカリン阻害剤との組合せが、200を超えるθスコアを有する、請求項20に記載の薬剤。
【請求項24】
前記ムスカリン活性剤と前記ムスカリン阻害剤との組合せが、230を超えるθスコアを有する、請求項20に記載の薬剤。
【請求項25】
10マイクログラム〜10グラムの前記ムスカリン活性剤を含む、請求項20に記載の薬剤。
【請求項26】
1ミリグラム〜1グラムの前記ムスカリン活性剤を含む、請求項20に記載の薬剤。
【請求項27】
10マイクログラム〜10グラムの前記ムスカリン阻害剤を含む、請求項20に記載の薬剤。
【請求項28】
1ミリグラム〜1グラムの前記ムスカリン阻害剤を含む、請求項20に記載の薬剤。
【請求項29】
錠剤、トローチ、液剤、乳剤、懸濁剤、滴下剤、カプセル、ジェルカプセル、クリーム、ゲル、軟膏、フォーム、クリーム、エアロゾル、坐薬、かん腸剤、または膣リングの形態である、請求項20に記載の薬剤。
【請求項30】
即放性製剤として製剤化される、請求項20に記載の薬剤。
【請求項31】
徐放性製剤として製剤化される、請求項20に記載の薬剤。

【公表番号】特表2012−533621(P2012−533621A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521617(P2012−521617)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/002044
【国際公開番号】WO2011/011060
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(510121710)
【Fターム(参考)】