ムービングボルスタ装置の給電装置および給電方法
【課題】給電ケーブルを付帯させる必要がなく、しかも無線制御のように電源やアンテナを搭載することなしにボルスタに給電して、作動安定性を確保できる給電装置を提供する。
【解決手段】プレス機械M1,M2とボルスタ待機エリアE1,E2との間で、左右走行用レール1および前後走行用レール2を介してボルスタB1〜B3の入れ替えを可能とする。レール1,2に沿って左右走行用給電トロリ7および前後走行用給電トロリ8を進退移動可能に設けるとともに、各ボルスタB1〜B3には左右走行用集電子5および前後走行用集電子6を設ける。ボルスタB1〜B3がレール1または2に沿って走行移動する際には、給電トロリ7または8と集電子5または6とを介してボルスタB1〜B3側に給電する。
【解決手段】プレス機械M1,M2とボルスタ待機エリアE1,E2との間で、左右走行用レール1および前後走行用レール2を介してボルスタB1〜B3の入れ替えを可能とする。レール1,2に沿って左右走行用給電トロリ7および前後走行用給電トロリ8を進退移動可能に設けるとともに、各ボルスタB1〜B3には左右走行用集電子5および前後走行用集電子6を設ける。ボルスタB1〜B3がレール1または2に沿って走行移動する際には、給電トロリ7または8と集電子5または6とを介してボルスタB1〜B3側に給電する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機械におけるムービングボルスタ装置の給電装置および給電方法に関し、特に所定のレール上を走行移動することになる可動式のボルスタに外部から給電する装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、プレス機械におけるクイック・ダイ・チェンジ・システムとしてムービングボルスタ装置が知られている。そして、可動式のボルスタであるムービングボルスタには電動式の自走機構が内蔵されていることから、当該自走機構の電動モータ等に対し給電ケーブル等を介して外部から給電する方式に代えて、ムービングボルスタそのものに電動モータのための電源(電池)や制御器を搭載し、無線制御方式にてムービングボルスタを走行移動させるようにしたものが特許文献1で提案されている。
【特許文献1】特開2002−160027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載された技術では、ボルスタが走行移動する際のケーブルの処理や脱着等の煩わしさを解消できる反面、プレス作業時の衝撃や振動から電源や制御器を保護することが難しく、電源等の故障により作動不良を招きやすいばかりでなく、電源の定期的な交換や充電等の二次的工数が増大することとなって好ましくない。
【0004】
その上、ボルスタには無線制御のための受信用アンテナが付帯しているため、このアンテナが作業者やプレス機械の一部に引っ掛かりやすく、それによってアンテナの折損あるいは無線制御が不能になる等の二次的不具合を招きやすいという問題がある。
【0005】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、給電ケーブルを付帯させる必要がなく、しかも無線制御のように電源やアンテナを搭載することなしにボルスタに給電して、作動安定性を確保できるようにした給電装置と給電方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ムービングボルスタ装置の主要な構成要素であるところの可動式のボルスタが走行移動するレールに近接して給電トロリを設けるとともに、ボルスタ側には上記給電トロリと摺接可能な集電子を設け、少なくともボルスタがレールに沿って走行移動する際には、上記給電トロリと集電子とを介してボルスタ側に給電可能としたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、給電トロリと集電子とを介してボルスタ側に給電されることになるので、ボルスタに給電ケーブルを付帯させる必要もなければ、無線制御のための電源やアンテナを搭載する必要もなく、特にプレス作業時の衝撃や振動の影響を回避することができるので、ボルスタの走行移動に際してその作動安定性および信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明に係る給電装置が適用されるムービングボルスタ装置のより具体的な実施の形態を示す図であり、ここでは2台のプレス機械M1,M2がムービングボルスタと称される可動式の合計3台のボルスタB1,B2,B3を共有している場合の例を示している。なお、図2に示すように、それぞれのボルスタB1〜B3には上下型Du,Dlがセットになった所定のプレス型Dが搭載されるものであることは周知の通りである。
【0009】
図1に示すように、便宜上四隅のアプライトPで概略構造が図示されている一方のプレス機械M1と他方のプレス機械M2とが並設されている。これらのプレス機械M1,M2同士の並設方向を左右方向、それに直交する方向(紙面の上下方向)を前後方向とすると、プレス機械M1,M2同士の間の床面には互いに平行な二本で一組の第1のレールとして左右走行用レール1が敷設されている。
【0010】
また、左右走行用レール1の長手方向中間部において当該左右走行用レール1と交差(図1の例では直交している。)する同じく互いに平行な二本で一組の第2のレールとして前後走行用レール2が敷設されている。そして、その前後走行用レール2の長手方向両端部にはボルスタ待機エリアE1,E2が設定されていて、図示のように双方のプレス機械M1,M2の内部にそれぞれボルスタB1またはB2が位置しているものとすれば、ボルスタ待機エリアE1,E2のいずれか一方に別のボルスタB3が待機している。
【0011】
ここで、それぞれのボルスタB1〜B3は、その底部に左右走行用レール1上を走行するための左右走行用車輪3と、前後走行用レール2上を走行するための前後走行用車輪4を備えているほか、それらの車輪3,4を回転駆動するための回転駆動源である図示外の電動モータおよび変速機構等を備えている。なお、図1ではボルスタB2のみに上記各車輪3,4を描いてあり、それ以外のボルスタB1,B3では各車輪3,4を図示省略してある。
【0012】
上記の構成のために、それぞれのボルスタB1〜B3は左右走行用車輪3を回転駆動することで左右走行用レール1上を自走にて走行移動できることはもちろんのこと、前後走行用車輪4を回転駆動することでその左右走行用レール1に交差する前後走行用レール2上をも自走にて走行移動できるようになっている。なお、上記各車輪3,4のほか電動モータおよび変速機構等は、各ボルスタB1〜B3の走行移動のための自走機構を構成している。
【0013】
図3,4は、一例として図1におけるプレス機械M2側のボルスタB2とボルスタ待機エリアE1にあるボルスタB3とを入れ替える場合の手順を示しており、最初に図3の(A)に示すようにプレス機械M2側のボルスタB2を左右走行用レール1に沿って自走にて走行移動させて引き出して、同図(B)に示すように左右走行用レール1と前後走行用レール2との交差部であるレールクロスエリアC1に位置させる。ボルスタB2がレールクロスエリアC1に位置した時には、そのボルスタB2は左右走行用レール1に沿って走行移動させることができるとともに、前後走行用レール2に沿って走行移動させることもできる状態となる。
【0014】
上記のようにプレス機械M2から引き出したボルスタB2がレールクロスエリアC1に位置したならば、続いて同図(C)に示すようにそのボルスタB2を前後走行用レール2に沿って自走にて走行移動させて、空いている他方のボルスタ待機エリアE2に位置させる。
【0015】
この後、同図(C)に示すように、それまで一方のボルスタ待機エリアE1で待機していたボルスタB3を前後走行用レール2に沿って自走にて走行移動させて、レールクロスエリアC1に位置させる。続いて、図4の(A)に示すようにそのボルスタB3を左右走行用レール1に沿って自走にて走行移動させて、プレス機械M2内に送り込む。
【0016】
以上をもって、図1に示したところのプレス機械M2内のボルスタB2とそれまでボルスタ待機エリアE1で待機していたボルスタB3との入れ替え作業が完了することになる。
【0017】
この場合において、プレス機械M2から引き出したボルスタB2を、それまでボルスタB3が待機していたボルスタ待機エリアE1に位置させる必要がある場合には、図4の(B)に示すように、他方のボルスタ待機エリアE2に一旦運び込まれたボルスタB2を前後走行用レール2に沿って自走にて走行移動させて、反対側のボルスタ待機エリア1に送り込むものとする。
【0018】
したがって、他方のプレス機械M1側についても、上記とほぼ同様の手順を踏むことで、そのプレス機械M1内のボルスタB1と他の二つのボルスタB2,B3のうちのいずれかとを入れ替えることができる。
【0019】
先に述べたように、それぞれのボルスタB1〜B3には左右走行用車輪3および前後走行用車輪4を駆動するための電動モータおよび変速機構等が内蔵されていて、それらが各ボルスタB1〜B3の走行移動のための自走機構を構成している。そして、左右走行用車輪3および前後走行用車輪4が電動モータを駆動源としているかぎりにおいては、少なくとも自走させようとするボルスタB1〜B3に対して外部から給電する給電装置が必要となる。
【0020】
本実施の形態では、その給電装置として、図2に示すようにそれぞれのボルスタB1〜B3には左右走行用集電子5と前後走行用集電子6を設けてあるとともに、図1に示すように左右走行用レール1および前後走行用レール2に近接する位置には、左右走行用集電子5または前後走行用集電子6と摺接可能な給電トラックとして機能する左右走行用給電トロリ7または前後走行用給電トロリ8をそれぞれ設けてある。
【0021】
ここで、先に述べたように図3は図1の作動説明図であって、さらに図5は図3の(A)の要部斜視図を、図6は図3の(B)の平面立体図を、図7は同じく図3の(B)のQ方向斜視図を、図8は図3の(C)の平面立体図をそれぞれ示していることから、以下の説明において図1を参照する際には図5〜8を併せて参照されたい。
【0022】
なお、図5,7の符号17はダイクランパを示し、このダイクランパ17は、プレス型Dの上型Duをプレス機械M1またはM2内のボルスタに対向するスライドに固定する際に使用される。
【0023】
より詳しくは、図2に示すように、略矩形状の各ボルスタB1〜B3の四周の壁面のうち左右走行用レール1と平行ないずれか一つの壁面には一対の左右走行用集電子5を突出させて設けてあるとともに、左右走行用集電子5が設けられた壁面に隣接する前後走行用レール2と平行ないずれか一つの壁面には一対の前後走行用集電子6を突出させて設けてある。
【0024】
他方、図1のほか図5〜8に示すように、左右走行用レール1および前後走行用レール2が敷設された床面には、双方のプレス機械M1,M2に近い位置であって且つ一方の左右走行用レール1に近接する位置にはこれと平行な一対の左右走行用給電トロリ7を配設してある。同様に、双方のボルスタ待機エリアE1,E2の外側であって且つ一方の前後走行用レール2に近接する位置にはこれと平行な一対の前後走行用給電トロリ8を配設してある。なお、双方の各給電トロリ7,8には先に述べた電動モータを駆動するのに必要な電力が通電される。
【0025】
そして、図1のほか例えば図5〜8に示すように、左右走行用給電トロリ7は床面から突設した支持ブラケット9に案内支持されているとともに、同じく床面に配置した直動型アクチュエータであるところのシリンダ(例えば、エアシリンダまたは油圧シリンダ)10のピストンロッド11に連結ブロック12を介して連結されていて、各左右走行用給電トロリ7はシリンダ10の伸縮作動に応じて進退駆動されるようになっている。
【0026】
また、図1のほか例えば図5〜8に示すように、一対の前後走行用給電トロリ8は床面に配置した直動型アクチュエータであるところのシリンダ(例えば、エアシリンダまたは油圧シリンダ)13のピストンロッド14に連結ブロック15を介して連結・支持されていて、各前後走行用給電トロリ8はシリンダ13の伸縮作動に応じて進退駆動されるようになっている。
【0027】
先の図1の例では、2台のボルスタB1,B2がそれぞれのプレス機械M1,M2内の正規取付位置(あくまで平面視での位置)に位置していて、且つ残る1台のボルスタB3が一方のボルスタ待機エリアE1で待機している状態を示していることから、この状態では全ての給電トロリ7,8が後退位置にある。したがって、この状態では合計3台のボルスタB1〜B3をどの順番で動かしても、各ボルスタB1〜B3と各給電トロリ7,8とが干渉することはないようになっている。
【0028】
そして、各プレス機械M1,M2内の正規取付位置にあるボルスタB1,B2は、同時に左右走行用レール1に沿って直ちに走行移動可能な状態にあることから、この状態では各プレス機械M1,M2内のボルスタB1,B2に付帯している一対の左右走行用集電子5のうち少なくともいずれか一つが左右走行用給電トロリ7と接触している。さらに、ボルスタ待機エリアE1にあるボルスタB3は同時に前後走行用レール2に沿って直ちに走行移動可能な状態にあることから、この状態ではボルスタ待機エリアE1にあるボルスタB3に付帯している一対の前後走行用集電子6のそれぞれが前後走行用給電トロリ8と接触している。
【0029】
先に述べた図1の状態から図3の(A)に示すように一方のプレス機械M2からボルスタB2を引き出す際には、図5に示すように、当該一方のプレス機械M2側の左右走行用給電トロリ7をシリンダ10の伸長動作に基づいて前進動作させる。
【0030】
この一方のプレス機械M2側の左右走行用給電トロリ7を前進動作させても、当該左右走行用給電トロリ7と左右走行用集電子5とが互いに接触状態にあることには変わりはなく、ボルスタB2の走行起動スイッチを入れることにより、図3の(B)に示すように、それまで一方のプレス機械M2内に位置していたボルスタB2をレールクロスエリアC1まで自走にて左右走行用レール1上を走行移動させて引き出すことができる。
【0031】
次いで、上記一方のプレス機械M2内のボルスタB2をレールクロスエリアC1まで引き出したならば、直ちにプレス機械M2側の左右走行用トロリ7を後退動作させ、代わって図3の(B)および図5,6に示すように双方の前後走行用給電トロリ8をシリンダ13の伸長動作に基づいて前進動作させる。この左右走行用給電トロリ7から前後走行用給電トロリ8への切り換えにより、左右走行用給電トロリ7からボルスタB2側の左右走行用集電子5が離れることになる一方、代わってボルスタB2のほかボルスタ待機エリアE1で待機しているボルスタB3の前後走行用集電子6の双方が該当する前後走行用給電トロリ8と接触することになる。
【0032】
そして、ボルスタB2の走行起動スイッチを入れることにより、図3の(C)および図7に示すように、レールクロスエリアC1にあるボルスタB2を空いているボルスタ待機エリアE2まで自走にて前後走行用レール2上を走行移動させる。それに続いて、ボルスタB3の走行起動スイッチを入れることにより、同図(C)に示すようにそれまでボルスタ待機エリアE1で待機していたボルスタB3をレールクロスエリアC1まで自走にて前後走行用レール2上を走行移動させる。なお、レールクロスエリアC1からボルスタ待機エリアE2へのボルスタB2の走行移動と、ボルスタ待機エリアE1からレールクロスエリアC1へのボルスタB3の走行移動とを同時並行的に行うこともできる。
【0033】
こうして、レールクロスエリアC1からボルスタ待機エリアE2へのボルスタB2の走行移動と、ボルスタ待機エリアE1からレールクロスエリアC1へのボルスタB3の走行移動とを終えたならば、同図(C)に示すようにそれぞれの前後走行用給電トロリ8を後退させる一方、代わってプレス機械M2側の左右走行用給電トロリ7を前進動作させる。これにより、その左右走行用給電トロリ7とレールクロスエリアC1にあるボルスタB3の左右走行用集電子5とが接触することになる。そして、ボルスタB3の走行起動スイッチを入れることにより、図4の(A)および図8に示すようにそれまでレールクロスエリアC1に位置していたボルスタB3をプレス機械M2内まで自走にて左右走行用レール1上を走行移動させる。この後、プレス機械M2側の左右走行用給電トロリ7を後退動作させる。
【0034】
さらに続いて、図3の(B)および図8と同様にして、双方の前後走行用給電トロリ8を前進動作せた上で、図4の(A),(B)に示すように、一旦ボルスタ待機エリアE2に搬入したボルスタB2の走行起動スイッチを入れることにより、ボルスタB2を反対側のボルスタ待機エリアE1に搬入する。図4の(B)の状態は、ボルスタB2とB3とが入れ替わっているだけで当初の図1の状態が再現されたことになる。
【0035】
以上により、図1のプレス機械M2内のボルスタB2とボルスタ待機エリアE1で待機していたボルスタB3との入れ替えが完了する。
【0036】
このように本実施の形態によれば、左右走行用給電トロリ7と左右走行用集電子5との組み合わせ、または前後走行用給電トロリ8と前後走行用集電子6との組み合わせを介してボルスタB1〜B3側に給電されることになるので、ボルスタB1〜B3に給電ケーブルを付帯させる必要もなければ、無線制御のための電源やアンテナを搭載する必要もなく、特にプレス作業時の衝撃や振動の影響を回避することができるので、ボルスタB1〜B3の走行移動に際してその作動安定性および信頼性を確保することができる。
【0037】
また、左右走行用給電トロリ7および前後走行用給電トロリ8がそれぞれ進退移動可能となっていることにより、3台のボルスタB1〜B3がどのような順番で走行移動したとしても、それらのボルスタB1〜B3と左右走行用給電トロリ7および前後走行用給電トロリ8との干渉を確実に回避することができる。
【0038】
ここで、図5,8に符号16で示すように左右走行用レール1の一部にはリフタを設けてある。このリフタ16は、ボルスタB1〜B3のいずれかがレールクロスエリアC1に位置した場合であって、且つ左右走行用レール1と前後走行用レール2間でその走行方向を切り換える必要がある場合に、左右走行用車輪3と前後走行用車輪4との接地面の高さ位置がわずかに異なることから、これを補うために設けられている。なお、かかる構造は、例えば特開2000−5830号公報および特開平2−133122号公報等にて公知である。
【0039】
また、上記実施の形態では、2台のプレス機械M1,M2と2箇所のボルスタ待機エリアE1,E2との組み合わせについて例示したが、少なくとも1台のプレス機械M1またはM2と2台のボルスタB1,B2および2箇所のボルスタ待機エリアE1,E2との組み合わせであっても本発明を適用することができる。
【0040】
この場合において、ボルスタ待機エリアE1,E2のうちいずれか一方は左右走行用レール1上においてプレス機械M1またはM2と反対側の位置にあっても良い。さらに、前後走行用レールを廃止するとともに、左右走行用レール1上においてプレス機械M1またはM2とその両側のボルスタ待機エリアE1,E2との組み合わせとしても良い。
【0041】
図9,10は本発明の第2の実施の形態を示し、図9は図1に相当する平面図を、図10は図9のQ1方向斜視図をそれぞれ示している。
【0042】
この第2の実施の形態では、図1に示した前後走行用レール2および前後走行用給電トロリ8をそれぞれ延長するとともに、二つのボルスタ待機エリアE1,E2に隣接してさらに二つのボルスタ待機エリアE3,E4を増設し、2台のプレス機械M1,M2で合計4台のボルスタB1〜B4を共有するようにしたものである。
【0043】
この第2の実施の形態によれば、先の第1の実施の形態と同様の効果に加えて、各プレス機械M1,M2は4台のボルスタB1〜B4のうちからいずれか一つを選択的に使用することができ、第1の実施の形態のものと比べて型交換できるプレス型の自由度が一段と増加する利点がある。
【0044】
図11以下の図面は本発明の第3の実施の形態を示し、この第3の実施の形態では、図11から明らかなように、図1に示した給電装置をいわゆる複列型のタンデムプレスラインに適用したものである。
【0045】
すなわち、図11に示すタンデムプレスラインは、図1に示したように3台のボルスタB1〜B3を共有する左右2台のプレス機械M1,M2の組み合わせを直列に複数組並べて、プレス機械M1,M2,M3‥‥Mnの集合体としたものと理解することができる。
【0046】
そして、図11の(B)に示したように、例えば奇数番号のプレス機械M1,M3,M5‥からのボルスタの引き出しは同時並行的に行われ、さらに図12の(A)に示したようなボルスタの前後方向での走行移動も同時並行的に行われる。さらに、同図(B)に示したような奇数番号のプレス機械M1,M3,M5‥へのボルスタの引き込みのほか、図13の(A)に示したような残されたボルスタの前後方向での走行移動、さらには同図(B)に示したような定位置への走行移動もまた同時並行的に行われることになる。
【0047】
この第3の実施の形態によれば、先の第1の実施の形態と同様の効果に加えて、タンデムプレスラインへのムービングボルスタ装置の適用が省スペースをもって実現できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、本発明の給電装置が適用されるムービングボルスタ装置の平面説明図。
【図2】図1に示すボルスタの詳細を示す斜視図。
【図3】図1におけるボルスタ入れ替え時の作動説明図。
【図4】同じく図1におけるボルスタ入れ替え時の作動説明図。
【図5】図5は図3の(A)の要部拡大斜視図。
【図6】図3の(B)の平面立体説明図。
【図7】同じく図3の(B)のQ方向斜視図。
【図8】図3の(C)の平面立体説明図。
【図9】本発明の第2の実施の形態を示す図で、図1と同様のムービングボルスタ装置の平面説明図。
【図10】図9のQ1方向斜視図。
【図11】本発明の第3の実施の形態を示す図で、(A)は本発明の給電装置を適用したタンデムプレスラインの要部斜視図、同図(B)はその作動説明図。図1と同様のムービングボルスタ装置の平面説明図。
【図12】(A),(B)共に図11の(A)に示したタンデムプレスラインの作動説明図。
【図13】(A),(B)共に図11の(A)に示したタンデムプレスラインの作動説明図。
【符号の説明】
【0049】
1…左右走行用レール(第1のレール)
2…前後走行用レール(第2のレール)
3…左右走行用車輪
4…前後走行用車輪
5…左右走行用集電子
6…前後走行用集電子
7…左右走行用給電トロリ
8…前後走行用給電トロリ
10…シリンダ(アクチュエータ)
13…シリンダ(アクチュエータ)
B1…ボルスタ
B2…ボルスタ
B3…ボルスタ
E1…ボルスタ待機エリア
E2…ボルスタ待機エリア
M1…プレス機械
M2…プレス機械
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機械におけるムービングボルスタ装置の給電装置および給電方法に関し、特に所定のレール上を走行移動することになる可動式のボルスタに外部から給電する装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、プレス機械におけるクイック・ダイ・チェンジ・システムとしてムービングボルスタ装置が知られている。そして、可動式のボルスタであるムービングボルスタには電動式の自走機構が内蔵されていることから、当該自走機構の電動モータ等に対し給電ケーブル等を介して外部から給電する方式に代えて、ムービングボルスタそのものに電動モータのための電源(電池)や制御器を搭載し、無線制御方式にてムービングボルスタを走行移動させるようにしたものが特許文献1で提案されている。
【特許文献1】特開2002−160027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載された技術では、ボルスタが走行移動する際のケーブルの処理や脱着等の煩わしさを解消できる反面、プレス作業時の衝撃や振動から電源や制御器を保護することが難しく、電源等の故障により作動不良を招きやすいばかりでなく、電源の定期的な交換や充電等の二次的工数が増大することとなって好ましくない。
【0004】
その上、ボルスタには無線制御のための受信用アンテナが付帯しているため、このアンテナが作業者やプレス機械の一部に引っ掛かりやすく、それによってアンテナの折損あるいは無線制御が不能になる等の二次的不具合を招きやすいという問題がある。
【0005】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、給電ケーブルを付帯させる必要がなく、しかも無線制御のように電源やアンテナを搭載することなしにボルスタに給電して、作動安定性を確保できるようにした給電装置と給電方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ムービングボルスタ装置の主要な構成要素であるところの可動式のボルスタが走行移動するレールに近接して給電トロリを設けるとともに、ボルスタ側には上記給電トロリと摺接可能な集電子を設け、少なくともボルスタがレールに沿って走行移動する際には、上記給電トロリと集電子とを介してボルスタ側に給電可能としたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、給電トロリと集電子とを介してボルスタ側に給電されることになるので、ボルスタに給電ケーブルを付帯させる必要もなければ、無線制御のための電源やアンテナを搭載する必要もなく、特にプレス作業時の衝撃や振動の影響を回避することができるので、ボルスタの走行移動に際してその作動安定性および信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明に係る給電装置が適用されるムービングボルスタ装置のより具体的な実施の形態を示す図であり、ここでは2台のプレス機械M1,M2がムービングボルスタと称される可動式の合計3台のボルスタB1,B2,B3を共有している場合の例を示している。なお、図2に示すように、それぞれのボルスタB1〜B3には上下型Du,Dlがセットになった所定のプレス型Dが搭載されるものであることは周知の通りである。
【0009】
図1に示すように、便宜上四隅のアプライトPで概略構造が図示されている一方のプレス機械M1と他方のプレス機械M2とが並設されている。これらのプレス機械M1,M2同士の並設方向を左右方向、それに直交する方向(紙面の上下方向)を前後方向とすると、プレス機械M1,M2同士の間の床面には互いに平行な二本で一組の第1のレールとして左右走行用レール1が敷設されている。
【0010】
また、左右走行用レール1の長手方向中間部において当該左右走行用レール1と交差(図1の例では直交している。)する同じく互いに平行な二本で一組の第2のレールとして前後走行用レール2が敷設されている。そして、その前後走行用レール2の長手方向両端部にはボルスタ待機エリアE1,E2が設定されていて、図示のように双方のプレス機械M1,M2の内部にそれぞれボルスタB1またはB2が位置しているものとすれば、ボルスタ待機エリアE1,E2のいずれか一方に別のボルスタB3が待機している。
【0011】
ここで、それぞれのボルスタB1〜B3は、その底部に左右走行用レール1上を走行するための左右走行用車輪3と、前後走行用レール2上を走行するための前後走行用車輪4を備えているほか、それらの車輪3,4を回転駆動するための回転駆動源である図示外の電動モータおよび変速機構等を備えている。なお、図1ではボルスタB2のみに上記各車輪3,4を描いてあり、それ以外のボルスタB1,B3では各車輪3,4を図示省略してある。
【0012】
上記の構成のために、それぞれのボルスタB1〜B3は左右走行用車輪3を回転駆動することで左右走行用レール1上を自走にて走行移動できることはもちろんのこと、前後走行用車輪4を回転駆動することでその左右走行用レール1に交差する前後走行用レール2上をも自走にて走行移動できるようになっている。なお、上記各車輪3,4のほか電動モータおよび変速機構等は、各ボルスタB1〜B3の走行移動のための自走機構を構成している。
【0013】
図3,4は、一例として図1におけるプレス機械M2側のボルスタB2とボルスタ待機エリアE1にあるボルスタB3とを入れ替える場合の手順を示しており、最初に図3の(A)に示すようにプレス機械M2側のボルスタB2を左右走行用レール1に沿って自走にて走行移動させて引き出して、同図(B)に示すように左右走行用レール1と前後走行用レール2との交差部であるレールクロスエリアC1に位置させる。ボルスタB2がレールクロスエリアC1に位置した時には、そのボルスタB2は左右走行用レール1に沿って走行移動させることができるとともに、前後走行用レール2に沿って走行移動させることもできる状態となる。
【0014】
上記のようにプレス機械M2から引き出したボルスタB2がレールクロスエリアC1に位置したならば、続いて同図(C)に示すようにそのボルスタB2を前後走行用レール2に沿って自走にて走行移動させて、空いている他方のボルスタ待機エリアE2に位置させる。
【0015】
この後、同図(C)に示すように、それまで一方のボルスタ待機エリアE1で待機していたボルスタB3を前後走行用レール2に沿って自走にて走行移動させて、レールクロスエリアC1に位置させる。続いて、図4の(A)に示すようにそのボルスタB3を左右走行用レール1に沿って自走にて走行移動させて、プレス機械M2内に送り込む。
【0016】
以上をもって、図1に示したところのプレス機械M2内のボルスタB2とそれまでボルスタ待機エリアE1で待機していたボルスタB3との入れ替え作業が完了することになる。
【0017】
この場合において、プレス機械M2から引き出したボルスタB2を、それまでボルスタB3が待機していたボルスタ待機エリアE1に位置させる必要がある場合には、図4の(B)に示すように、他方のボルスタ待機エリアE2に一旦運び込まれたボルスタB2を前後走行用レール2に沿って自走にて走行移動させて、反対側のボルスタ待機エリア1に送り込むものとする。
【0018】
したがって、他方のプレス機械M1側についても、上記とほぼ同様の手順を踏むことで、そのプレス機械M1内のボルスタB1と他の二つのボルスタB2,B3のうちのいずれかとを入れ替えることができる。
【0019】
先に述べたように、それぞれのボルスタB1〜B3には左右走行用車輪3および前後走行用車輪4を駆動するための電動モータおよび変速機構等が内蔵されていて、それらが各ボルスタB1〜B3の走行移動のための自走機構を構成している。そして、左右走行用車輪3および前後走行用車輪4が電動モータを駆動源としているかぎりにおいては、少なくとも自走させようとするボルスタB1〜B3に対して外部から給電する給電装置が必要となる。
【0020】
本実施の形態では、その給電装置として、図2に示すようにそれぞれのボルスタB1〜B3には左右走行用集電子5と前後走行用集電子6を設けてあるとともに、図1に示すように左右走行用レール1および前後走行用レール2に近接する位置には、左右走行用集電子5または前後走行用集電子6と摺接可能な給電トラックとして機能する左右走行用給電トロリ7または前後走行用給電トロリ8をそれぞれ設けてある。
【0021】
ここで、先に述べたように図3は図1の作動説明図であって、さらに図5は図3の(A)の要部斜視図を、図6は図3の(B)の平面立体図を、図7は同じく図3の(B)のQ方向斜視図を、図8は図3の(C)の平面立体図をそれぞれ示していることから、以下の説明において図1を参照する際には図5〜8を併せて参照されたい。
【0022】
なお、図5,7の符号17はダイクランパを示し、このダイクランパ17は、プレス型Dの上型Duをプレス機械M1またはM2内のボルスタに対向するスライドに固定する際に使用される。
【0023】
より詳しくは、図2に示すように、略矩形状の各ボルスタB1〜B3の四周の壁面のうち左右走行用レール1と平行ないずれか一つの壁面には一対の左右走行用集電子5を突出させて設けてあるとともに、左右走行用集電子5が設けられた壁面に隣接する前後走行用レール2と平行ないずれか一つの壁面には一対の前後走行用集電子6を突出させて設けてある。
【0024】
他方、図1のほか図5〜8に示すように、左右走行用レール1および前後走行用レール2が敷設された床面には、双方のプレス機械M1,M2に近い位置であって且つ一方の左右走行用レール1に近接する位置にはこれと平行な一対の左右走行用給電トロリ7を配設してある。同様に、双方のボルスタ待機エリアE1,E2の外側であって且つ一方の前後走行用レール2に近接する位置にはこれと平行な一対の前後走行用給電トロリ8を配設してある。なお、双方の各給電トロリ7,8には先に述べた電動モータを駆動するのに必要な電力が通電される。
【0025】
そして、図1のほか例えば図5〜8に示すように、左右走行用給電トロリ7は床面から突設した支持ブラケット9に案内支持されているとともに、同じく床面に配置した直動型アクチュエータであるところのシリンダ(例えば、エアシリンダまたは油圧シリンダ)10のピストンロッド11に連結ブロック12を介して連結されていて、各左右走行用給電トロリ7はシリンダ10の伸縮作動に応じて進退駆動されるようになっている。
【0026】
また、図1のほか例えば図5〜8に示すように、一対の前後走行用給電トロリ8は床面に配置した直動型アクチュエータであるところのシリンダ(例えば、エアシリンダまたは油圧シリンダ)13のピストンロッド14に連結ブロック15を介して連結・支持されていて、各前後走行用給電トロリ8はシリンダ13の伸縮作動に応じて進退駆動されるようになっている。
【0027】
先の図1の例では、2台のボルスタB1,B2がそれぞれのプレス機械M1,M2内の正規取付位置(あくまで平面視での位置)に位置していて、且つ残る1台のボルスタB3が一方のボルスタ待機エリアE1で待機している状態を示していることから、この状態では全ての給電トロリ7,8が後退位置にある。したがって、この状態では合計3台のボルスタB1〜B3をどの順番で動かしても、各ボルスタB1〜B3と各給電トロリ7,8とが干渉することはないようになっている。
【0028】
そして、各プレス機械M1,M2内の正規取付位置にあるボルスタB1,B2は、同時に左右走行用レール1に沿って直ちに走行移動可能な状態にあることから、この状態では各プレス機械M1,M2内のボルスタB1,B2に付帯している一対の左右走行用集電子5のうち少なくともいずれか一つが左右走行用給電トロリ7と接触している。さらに、ボルスタ待機エリアE1にあるボルスタB3は同時に前後走行用レール2に沿って直ちに走行移動可能な状態にあることから、この状態ではボルスタ待機エリアE1にあるボルスタB3に付帯している一対の前後走行用集電子6のそれぞれが前後走行用給電トロリ8と接触している。
【0029】
先に述べた図1の状態から図3の(A)に示すように一方のプレス機械M2からボルスタB2を引き出す際には、図5に示すように、当該一方のプレス機械M2側の左右走行用給電トロリ7をシリンダ10の伸長動作に基づいて前進動作させる。
【0030】
この一方のプレス機械M2側の左右走行用給電トロリ7を前進動作させても、当該左右走行用給電トロリ7と左右走行用集電子5とが互いに接触状態にあることには変わりはなく、ボルスタB2の走行起動スイッチを入れることにより、図3の(B)に示すように、それまで一方のプレス機械M2内に位置していたボルスタB2をレールクロスエリアC1まで自走にて左右走行用レール1上を走行移動させて引き出すことができる。
【0031】
次いで、上記一方のプレス機械M2内のボルスタB2をレールクロスエリアC1まで引き出したならば、直ちにプレス機械M2側の左右走行用トロリ7を後退動作させ、代わって図3の(B)および図5,6に示すように双方の前後走行用給電トロリ8をシリンダ13の伸長動作に基づいて前進動作させる。この左右走行用給電トロリ7から前後走行用給電トロリ8への切り換えにより、左右走行用給電トロリ7からボルスタB2側の左右走行用集電子5が離れることになる一方、代わってボルスタB2のほかボルスタ待機エリアE1で待機しているボルスタB3の前後走行用集電子6の双方が該当する前後走行用給電トロリ8と接触することになる。
【0032】
そして、ボルスタB2の走行起動スイッチを入れることにより、図3の(C)および図7に示すように、レールクロスエリアC1にあるボルスタB2を空いているボルスタ待機エリアE2まで自走にて前後走行用レール2上を走行移動させる。それに続いて、ボルスタB3の走行起動スイッチを入れることにより、同図(C)に示すようにそれまでボルスタ待機エリアE1で待機していたボルスタB3をレールクロスエリアC1まで自走にて前後走行用レール2上を走行移動させる。なお、レールクロスエリアC1からボルスタ待機エリアE2へのボルスタB2の走行移動と、ボルスタ待機エリアE1からレールクロスエリアC1へのボルスタB3の走行移動とを同時並行的に行うこともできる。
【0033】
こうして、レールクロスエリアC1からボルスタ待機エリアE2へのボルスタB2の走行移動と、ボルスタ待機エリアE1からレールクロスエリアC1へのボルスタB3の走行移動とを終えたならば、同図(C)に示すようにそれぞれの前後走行用給電トロリ8を後退させる一方、代わってプレス機械M2側の左右走行用給電トロリ7を前進動作させる。これにより、その左右走行用給電トロリ7とレールクロスエリアC1にあるボルスタB3の左右走行用集電子5とが接触することになる。そして、ボルスタB3の走行起動スイッチを入れることにより、図4の(A)および図8に示すようにそれまでレールクロスエリアC1に位置していたボルスタB3をプレス機械M2内まで自走にて左右走行用レール1上を走行移動させる。この後、プレス機械M2側の左右走行用給電トロリ7を後退動作させる。
【0034】
さらに続いて、図3の(B)および図8と同様にして、双方の前後走行用給電トロリ8を前進動作せた上で、図4の(A),(B)に示すように、一旦ボルスタ待機エリアE2に搬入したボルスタB2の走行起動スイッチを入れることにより、ボルスタB2を反対側のボルスタ待機エリアE1に搬入する。図4の(B)の状態は、ボルスタB2とB3とが入れ替わっているだけで当初の図1の状態が再現されたことになる。
【0035】
以上により、図1のプレス機械M2内のボルスタB2とボルスタ待機エリアE1で待機していたボルスタB3との入れ替えが完了する。
【0036】
このように本実施の形態によれば、左右走行用給電トロリ7と左右走行用集電子5との組み合わせ、または前後走行用給電トロリ8と前後走行用集電子6との組み合わせを介してボルスタB1〜B3側に給電されることになるので、ボルスタB1〜B3に給電ケーブルを付帯させる必要もなければ、無線制御のための電源やアンテナを搭載する必要もなく、特にプレス作業時の衝撃や振動の影響を回避することができるので、ボルスタB1〜B3の走行移動に際してその作動安定性および信頼性を確保することができる。
【0037】
また、左右走行用給電トロリ7および前後走行用給電トロリ8がそれぞれ進退移動可能となっていることにより、3台のボルスタB1〜B3がどのような順番で走行移動したとしても、それらのボルスタB1〜B3と左右走行用給電トロリ7および前後走行用給電トロリ8との干渉を確実に回避することができる。
【0038】
ここで、図5,8に符号16で示すように左右走行用レール1の一部にはリフタを設けてある。このリフタ16は、ボルスタB1〜B3のいずれかがレールクロスエリアC1に位置した場合であって、且つ左右走行用レール1と前後走行用レール2間でその走行方向を切り換える必要がある場合に、左右走行用車輪3と前後走行用車輪4との接地面の高さ位置がわずかに異なることから、これを補うために設けられている。なお、かかる構造は、例えば特開2000−5830号公報および特開平2−133122号公報等にて公知である。
【0039】
また、上記実施の形態では、2台のプレス機械M1,M2と2箇所のボルスタ待機エリアE1,E2との組み合わせについて例示したが、少なくとも1台のプレス機械M1またはM2と2台のボルスタB1,B2および2箇所のボルスタ待機エリアE1,E2との組み合わせであっても本発明を適用することができる。
【0040】
この場合において、ボルスタ待機エリアE1,E2のうちいずれか一方は左右走行用レール1上においてプレス機械M1またはM2と反対側の位置にあっても良い。さらに、前後走行用レールを廃止するとともに、左右走行用レール1上においてプレス機械M1またはM2とその両側のボルスタ待機エリアE1,E2との組み合わせとしても良い。
【0041】
図9,10は本発明の第2の実施の形態を示し、図9は図1に相当する平面図を、図10は図9のQ1方向斜視図をそれぞれ示している。
【0042】
この第2の実施の形態では、図1に示した前後走行用レール2および前後走行用給電トロリ8をそれぞれ延長するとともに、二つのボルスタ待機エリアE1,E2に隣接してさらに二つのボルスタ待機エリアE3,E4を増設し、2台のプレス機械M1,M2で合計4台のボルスタB1〜B4を共有するようにしたものである。
【0043】
この第2の実施の形態によれば、先の第1の実施の形態と同様の効果に加えて、各プレス機械M1,M2は4台のボルスタB1〜B4のうちからいずれか一つを選択的に使用することができ、第1の実施の形態のものと比べて型交換できるプレス型の自由度が一段と増加する利点がある。
【0044】
図11以下の図面は本発明の第3の実施の形態を示し、この第3の実施の形態では、図11から明らかなように、図1に示した給電装置をいわゆる複列型のタンデムプレスラインに適用したものである。
【0045】
すなわち、図11に示すタンデムプレスラインは、図1に示したように3台のボルスタB1〜B3を共有する左右2台のプレス機械M1,M2の組み合わせを直列に複数組並べて、プレス機械M1,M2,M3‥‥Mnの集合体としたものと理解することができる。
【0046】
そして、図11の(B)に示したように、例えば奇数番号のプレス機械M1,M3,M5‥からのボルスタの引き出しは同時並行的に行われ、さらに図12の(A)に示したようなボルスタの前後方向での走行移動も同時並行的に行われる。さらに、同図(B)に示したような奇数番号のプレス機械M1,M3,M5‥へのボルスタの引き込みのほか、図13の(A)に示したような残されたボルスタの前後方向での走行移動、さらには同図(B)に示したような定位置への走行移動もまた同時並行的に行われることになる。
【0047】
この第3の実施の形態によれば、先の第1の実施の形態と同様の効果に加えて、タンデムプレスラインへのムービングボルスタ装置の適用が省スペースをもって実現できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、本発明の給電装置が適用されるムービングボルスタ装置の平面説明図。
【図2】図1に示すボルスタの詳細を示す斜視図。
【図3】図1におけるボルスタ入れ替え時の作動説明図。
【図4】同じく図1におけるボルスタ入れ替え時の作動説明図。
【図5】図5は図3の(A)の要部拡大斜視図。
【図6】図3の(B)の平面立体説明図。
【図7】同じく図3の(B)のQ方向斜視図。
【図8】図3の(C)の平面立体説明図。
【図9】本発明の第2の実施の形態を示す図で、図1と同様のムービングボルスタ装置の平面説明図。
【図10】図9のQ1方向斜視図。
【図11】本発明の第3の実施の形態を示す図で、(A)は本発明の給電装置を適用したタンデムプレスラインの要部斜視図、同図(B)はその作動説明図。図1と同様のムービングボルスタ装置の平面説明図。
【図12】(A),(B)共に図11の(A)に示したタンデムプレスラインの作動説明図。
【図13】(A),(B)共に図11の(A)に示したタンデムプレスラインの作動説明図。
【符号の説明】
【0049】
1…左右走行用レール(第1のレール)
2…前後走行用レール(第2のレール)
3…左右走行用車輪
4…前後走行用車輪
5…左右走行用集電子
6…前後走行用集電子
7…左右走行用給電トロリ
8…前後走行用給電トロリ
10…シリンダ(アクチュエータ)
13…シリンダ(アクチュエータ)
B1…ボルスタ
B2…ボルスタ
B3…ボルスタ
E1…ボルスタ待機エリア
E2…ボルスタ待機エリア
M1…プレス機械
M2…プレス機械
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1台のプレス機械に複数台の可動式のボルスタを付帯させるとともに、プレス機械とプレス機械外のボルスタ待機エリアとの間にレールを敷設し、
ボルスタをレールに沿って走行移動させることで、プレス機械とボルスタ待機エリアとの間でボルスタの入れ替えを可能としたムービングボルスタ装置の給電装置であって、
ボルスタが走行移動するレールに近接して給電トロリを設けるとともに、
ボルスタ側には上記給電トロリと摺接可能な集電子を設け、
少なくともボルスタがレールに沿って走行移動する際には、上記給電トロリと集電子とを介してボルスタ側に給電可能としたことを特徴とするムービングボルスタ装置の給電装置。
【請求項2】
それぞれのボルスタは、電動式の自走機構を有するものであることを特徴とする請求項1に記載のムービングボルスタ装置の給電装置。
【請求項3】
上記給電トロリは、ボルスタが走行移動するレールの長手方向に沿って設けてあることを特徴とする請求項1または2に記載のムービングボルスタ装置の給電装置。
【請求項4】
上記給電トロリは、レールの長手方向に進退移動可能となっていることを特徴とする請求項3に記載のムービングボルスタ装置の給電装置。
【請求項5】
上記給電トロリは、当該給電トロリをレールの長手方向に沿って進退移動させるアクチュエータを備えていることを特徴とする請求項4に記載のムービングボルスタ装置の給電装置。
【請求項6】
2台のプレス機械同士の間に第1のレールを敷設するとともに、この第1のレールの中間位置で当該第1のレールと交差する第2のレールを敷設し、
第2のレールの両端部にボルスタ待機エリアをそれぞれに設定してあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のムービングボルスタ装置の給電装置。
【請求項7】
少なくとも1台のプレス機械に複数台の可動式のボルスタを付帯させるとともに、プレス機械とプレス機械外のボルスタ待機エリアとの間にレールを敷設し、
ボルスタをレールに沿って走行移動させることで、プレス機械とボルスタ待機エリアとの間でボルスタの入れ替えを可能としたムービングボルスタ装置の給電方法であって、
ボルスタが走行移動するレールに近接して給電トロリを設けるとともに、
ボルスタ側には上記給電トロリと摺接可能な集電子を設けておき、
少なくともボルスタがレールに沿って走行移動する際には、上記給電トロリと集電子とを介してボルスタ側に給電することを特徴とするムービングボルスタ装置の給電方法。
【請求項1】
少なくとも1台のプレス機械に複数台の可動式のボルスタを付帯させるとともに、プレス機械とプレス機械外のボルスタ待機エリアとの間にレールを敷設し、
ボルスタをレールに沿って走行移動させることで、プレス機械とボルスタ待機エリアとの間でボルスタの入れ替えを可能としたムービングボルスタ装置の給電装置であって、
ボルスタが走行移動するレールに近接して給電トロリを設けるとともに、
ボルスタ側には上記給電トロリと摺接可能な集電子を設け、
少なくともボルスタがレールに沿って走行移動する際には、上記給電トロリと集電子とを介してボルスタ側に給電可能としたことを特徴とするムービングボルスタ装置の給電装置。
【請求項2】
それぞれのボルスタは、電動式の自走機構を有するものであることを特徴とする請求項1に記載のムービングボルスタ装置の給電装置。
【請求項3】
上記給電トロリは、ボルスタが走行移動するレールの長手方向に沿って設けてあることを特徴とする請求項1または2に記載のムービングボルスタ装置の給電装置。
【請求項4】
上記給電トロリは、レールの長手方向に進退移動可能となっていることを特徴とする請求項3に記載のムービングボルスタ装置の給電装置。
【請求項5】
上記給電トロリは、当該給電トロリをレールの長手方向に沿って進退移動させるアクチュエータを備えていることを特徴とする請求項4に記載のムービングボルスタ装置の給電装置。
【請求項6】
2台のプレス機械同士の間に第1のレールを敷設するとともに、この第1のレールの中間位置で当該第1のレールと交差する第2のレールを敷設し、
第2のレールの両端部にボルスタ待機エリアをそれぞれに設定してあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のムービングボルスタ装置の給電装置。
【請求項7】
少なくとも1台のプレス機械に複数台の可動式のボルスタを付帯させるとともに、プレス機械とプレス機械外のボルスタ待機エリアとの間にレールを敷設し、
ボルスタをレールに沿って走行移動させることで、プレス機械とボルスタ待機エリアとの間でボルスタの入れ替えを可能としたムービングボルスタ装置の給電方法であって、
ボルスタが走行移動するレールに近接して給電トロリを設けるとともに、
ボルスタ側には上記給電トロリと摺接可能な集電子を設けておき、
少なくともボルスタがレールに沿って走行移動する際には、上記給電トロリと集電子とを介してボルスタ側に給電することを特徴とするムービングボルスタ装置の給電方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−274118(P2009−274118A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128984(P2008−128984)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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