説明

メタクリル化されたベンゾフェノンの製造方法

本発明は、メタクリル化されたベンゾフェノンの製造方法、及びその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル化されたベンゾフェノンの製造方法、及びその使用に関する。
【0002】
従来技術には、上記エステル製造のための(メタ)アクリル酸無水物法が記載されている(JP2003261506、三菱レーヨン)。触媒としては、トリエチルアミンが使用される。このアミンは反応の際に生じる(メタ)アクリル酸と塩を形成するため、前記アミンはベンゾフェノンに対して等モルに測らなければならない。これに相応して等モル量の塩が得られ、この塩は廃棄物として処理しなければならない。よってこの方法は、経済的ではない。
【0003】
従来技術のさらなる手法は、(メタ)アクリル酸塩化物と、ヒドロキシ官能性ベンゾフェノンとの反応、並びにこの原料とグリシジルメタクリレートとの反応である。(メタ)アクリル酸塩化物を扱う際には、腐蝕性の錆付与特性に注意しなければならない。その上、水との接触の際にHClが放出される。
【0004】
DE 1720603には、容易に架橋可能な重合体の水性分散液を製造する方法が記載されている。ここではアクリル酸エステル及び(メタ)アクリル酸エステルを、光活性のオレフィン性不飽和モノマーと共重合させ、場合により光活性の非イオノゲン性乳化剤を併用する。
【0005】
EP0346788は、メタクリレート末端基若しくはアクリレート末端基を少なくとも1つ有する、光線に敏感なカルバモイルベンゾフェノン及びカルバモイルアセトフェノンの製造方法を記載している。ここでは、ヒドロキシアセトフェノン又はヒドロキシベンゾフェノンを有するイソシアナトアルキル(メタ)アクリレートと、塩基性触媒とを反応させる。この際、湿分を遮断して作業しなければならない。加えて、乾燥された非求核性の溶剤のみが使用可能である。
【0006】
ヒドロキシ官能性ベンゾフェノンの(メタ)アクリル酸エステルの改善された製造方法を提供することが課題であった。
【0007】
この課題は、ヒドロキシベンゾフェノン及び(メタ)アクリル酸無水物を触媒量の酸の存在下で反応させ、それから前記触媒を中和し、引き続き粗モノマーを精製することを特徴とする、ベンゾフェノン(メタ)アクリレートの製造方法により解決された。
【0008】
(メタ)アクリレートという表現は、ここでは、メタクリレート、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート等も、またアクリレート、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート等も、この両方からなる混合物も意味する。
【0009】
意外なことに、本発明による方法により高い変換率が達成され、副生成物の量は著しく減少することが判明した。本発明による方法は、僅かな塩によってのみ負荷されており、この塩は、触媒の酸が後処理の際に中和されると生じるものである。副生成物として生じる(メタ)アクリル酸は、連続するベンゾフェノンモノマーの重合の際にコモノマーとして併用でき、又は新たな(メタ)アクリル酸無水物の製造のためにリサイクルできる。
【0010】
この反応は慣用のアルキルスルホン酸又はアリールスルホン酸の存在下で、好ましくは硫酸によって行うことができる。
【0011】
好適には4−ヒドロキシベンゾフェノン及び(メタ)アクリル酸無水物を、触媒量の濃硫酸の存在下で反応させる。
【0012】
(メタ)アクリル酸無水物は、ヒドロキシベンゾフェノンに対してやや過剰量で加える。反応は50〜120℃、好適には80〜100℃の温度で、4〜8時間にわたって、好ましくは5.5〜6.5時間にわたって行う。
【0013】
触媒的に使用される酸の中和は、水性塩基、好適にはアルカリ溶液又はアンモニア溶液によって行う。
【0014】
引き続き水の添加によって、粗モノマーの精製を行う。こうして不純物を溶解させて、問題なく分離することができる。[(メタ)アクリロイルオキシ]ベンゾフェノン溶融体の水溶性不純物は、好適には水の添加によって除去する。
【0015】
過剰量の水を反応混合物に添加することによって[(メタ)アクリロイルオキシ]ベンゾフェノンを沈殿させ、濾過により固体の形で単離する。
【0016】
高い純度で製造されたベンゾフェノン(メタ)アクリレートは、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、又はスチレンとの溶液で貯蔵でき、さらに変換させることができる。
【0017】
ベンゾフェノン(メタ)アクリレートは、日光又はUV光によるポリマーの事後的な光架橋に、またポリマー性光開始剤として使用できる。
【0018】
その上、ベンゾフェノン(メタ)アクリレートは、重合反応のためのコモノマーとして使用できる。
【0019】
次に記載の実施例は、本発明をより良好に説明するためのものであるが、本発明をこれに開示された特徴に制限することは適切ではない。
【0020】
実施例
実施例1:
【化1】

【0021】
装置:機械式撹拌機、還流冷却器、Pt100の温度計、空気導入管、アンシュッツ栓(Anschuetzaufsatz)、滴下漏斗、電気加熱式油浴を備える、4lの四ツ口フラスコ。
【0022】
バッチ:
99.7%の4−ヒドロキシベンゾフェノン3.5mol:695.9g
メタクリル酸無水物(2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール2000ppmで安定化されたもの)3.85mol:618.4g
濃硫酸 0.020mol:1.99g
ヒドロキノンモノメチルエーテル 1864mg
2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール 932mg。
【0023】
水10gに苛性ソーダ1.8gを溶かしたものによる酸触媒の中和
メタノール22.4gによる、過剰量のメタクリル酸無水物のエステル化
理論収率:930.0g。
【0024】
実施:
バッチをすべて秤量し、それから撹拌しながら空気を導入して90℃に加熱した。反応時間は90℃で6時間。それから約60℃に冷却し、触媒の硫酸を中和するために水に溶解させた水酸化ナトリウムを、そして未変換のメタクリル酸無水物をエステル化するためにメタノールを加えた。引き続き1時間60℃で撹拌し、それからバッチを撹拌しながら(金属羽根撹拌機、撹拌モータ)、薄い光線中で水3l中に注いだ。0.5時間撹拌し、それから沈殿物をガラスフィルターフリットを介して吸い取り、さらに二度、それぞれ2lの水で後洗浄した;引き続きヌッチェ上で空気により予備乾燥した。この固体を引き続き空気で乾燥させた。
【0025】
収率:924.6g(理論値の99.4%)
分析値:
水含分 0.08%
ヒドロキノンモノメチルエーテル:6ppm
2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール:174ppm
ガスクロマトグラフィー:
メチルメタクリレート 0.047%
メタクリル酸 0.013%
4−ヒドロキシベンゾフェノン 0.637%
4−(メタクリロイルオキシ)ベンゾフェノン 97.56%
アセトン中で20%溶液としてのPt−Co色価:150。
【0026】
実施例2:
装置:機械式撹拌機、還流冷却器、Pt100の温度計、空気導入管、アンシュッツ栓、滴下漏斗、電気加熱式油浴を備える、4lの四ツ口フラスコ。
【0027】
バッチ:
4−ヒドロキシベンゾフェノン1.5mol:303g
メタクリル酸無水物(2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール2000ppmで安定化されたもの)1.65mol:262g
濃硫酸0.0087mol:0.84g
ヒドロキノンモノメチルエーテル 798mg
2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール 399mg。
【0028】
実施:
バッチをすべて秤量し、それから撹拌しながら空気を導入して90℃に加熱した。反応時間は90℃で6時間。それから約60℃に冷却し、触媒の硫酸を中和するために水に溶解させた水酸化ナトリウムを、そして未変換のメタクリル酸無水物をエステル化するためにメタノールを加えた。引き続き1時間60℃で撹拌し、それからバッチを撹拌しながらメチルメタクリレート1566gと混合した。生成した溶液を撹拌しながら室温に冷却し、濾過した。メチルメタクリレート中の4−(メタクリロイルオキシ)ベンゾフェノンの溶液は、ガスクロマトグラフィーで測定したところ、以下の組成を有している:
メチルメタクリレート 56.016%
メタクリル酸 6.954%
4−ヒドロキシベンゾフェノン 2.399%
4−(メタクリロイルオキシ)ベンゾフェノン 32.717%。
【0029】
水含分は0.27%であり、安定剤含分は、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール113ppm、及びヒドロキノンモノメチルエーテル4ppmである。Pt−Co色価は、169である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシベンゾフェノン及び(メタ)アクリル酸無水物を触媒量の酸の存在下で反応させ、それから前記触媒を中和し、引き続き粗モノマーを精製することを特徴とする、ベンゾフェノン(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項2】
4−ヒドロキシベンゾフェノン及び(メタ)アクリル酸無水物を触媒量の酸の存在下で反応させ、それから前記触媒量の酸を水性塩基で中和し、引き続き[(メタ)アクリロイルオキシ]ベンゾフェノン溶融物の溶解性不純物を、水の添加により溶解させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
濃硫酸、アルキルスルホン酸、又はアリールスルホン酸の触媒量の存在下で反応させることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
水性アルカリ溶液又はアンモニア溶液により中和することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記反応を4〜8時間にわたって、50〜120℃で行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
過剰量の水を反応混合物に添加することによって[(メタ)アクリロイルオキシ]ベンゾフェノンを沈殿させ、濾過により固体の形で単離することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
液体の(メタ)アクリル酸エステル又はスチレンを反応混合物に添加することにより、[(メタ)アクリロイルオキシ]ベンゾフェノンを前記エステル中の溶液として使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載のベンゾフェノン(メタ)アクリレートを、重合反応のためのコモノマーとして用いる使用。
【請求項9】
ポリマーの事後的な光架橋のための、ベンゾフェノン(メタ)アクリレートの使用。
【請求項10】
ポリマー性光開始剤としての、ベンゾフェノン(メタ)アクリレートの使用。

【公表番号】特表2012−512216(P2012−512216A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541267(P2011−541267)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065431
【国際公開番号】WO2010/072479
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】