説明

メタルシート成形段階のジオメトリモデルの決定

本発明は、CADシステムにおいてメタルシート成形段階(1)のジオメトリをモデリングするためのジオメトリオブジェクトの決定方法に関する。前記方法によれば、第1のジオメトリモデルを第2のジオメトリモデルにリンクする演算子が規定される。リンクは、対応する第1段階から第2段階へ成形段階(1)を移動させる処理工程を物理的にモデリングするための方法と関連付けられる。第1のジオメトリモデルが変更されると、物理的モデリングコンセプトに従って第2のジオメトリモデルが自動的にアップデートされる。それにより、成形段階のための物理的モデリングコンセプトは、CADシステムの静的ジオメトリモデル環境に統合される。本発明の好ましい実施例によれば、物理的モデリング方法は、成形工程後の結果状態の境界線(3)のジオメトリから、成形工程前の初期状態の成形段階の境界線(3)を計算するための方法であるか、または反復シミュレーションにより予め決定されたコースとして仕上がり成形段階(1)の境界エッジからトリミング線(3)を反復的に決定する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば深絞り成形法または引張り成形法などによるシートメタル成形部品の製造上の処理ステップを決定し、最適化する分野にある。本発明は、それぞれの独立請求項の前文にしたがい、コンピュータ支援設計(CAD)システムにおける成形段階のジオメトリモデルの決定のための方法、データ処理システム、コンピュータプログラム、およびデータキャリヤに関する。
【背景技術】
【0002】
シートメタル成形部品は通常、深絞り成形法によって製造される。半製品、いわゆるシートメタルブランク(または単に「ブランク」)は、この目的のためにマルチパートの成形工具に配置される。部品はプレス成形され、成形工具がクランプ締めされる。通常、部品はトリミングステップと組合わされた、絞り、整形、硬化等の機械加工ステップによるいくつかの成形段階を通じて、平板なシートメタルブランクから製造される。この工程に関連して、問題を呈するゾーンは、特にいわゆる付加物(addendum)であるエッジ領域である。中でも成形ステップ用の工具設計に関して、好適に準備されたコンポーネントジオメトリ、またはマルチステップ工程における中間的ジオメトリ(本願明細書では両方ともコンポーネントジオメトリと呼ばれる)をエッジ領域を付加物によって補足する場合、工具ジオメトリがここから生じ、それを用いて、予め規定されたコンポーネントジオメトリが、失敗(割れまたはしわ)が起らないよう、かつ例えば厚みの減少の制限、シートメタルの最小ストレッチの達成、および製造ジオメトリに関する制限などの品質上の要求が守られるよう、製造され得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
付加物の寸法決めおよび硬化は、今日相当な問題を呈している。工具が満足できる態様で機能するまでに数ヶ月かかることも珍しくない。反復工程では多くの不良部品ができたりエネルギおよびリソースを大量に消費したりすることがよくある。今日の付加物の製造の大部分が、手動の態様およびコンピュータ支援設計システム(CAD)による、極めて時間のかかる態様において行われている。このようなCADシステムは物理的本体のジオメトリ、特に、工程のさまざまな段階における成形部品および対応する工具のジオメトリをモデルとする。したがって、何百もの個別の表面が生成され、湾曲部、そこから派生する支持面、およびそれらのトリミングの設計にしたがって編集される。大型車体の部品の付加物の生成においてさえ、他の方法がなく、数週間もかかり得る。この手順態様は、成形技術およびCAD分野における高い専門知識を設計者に要求する。
【0004】
例として、詳細には下記のように進行する。
成形動作と、何をどの動作で成形し、切削するかとを決定することを意味する方法プランの開発に伴い、現在では、通常下記のように進行する。説明の基礎として、処理ステップの単純なシーケンスが図2から図8に示される。図2は、初期状態におけるシートメタル部品またはシートメタルブランク1を示す。シートメタルブランク1は、図3において、下部ダイ11およびバインダ10の間に保持される。下部ダイ11およびバインダ10は他の保持部および工具と同様、続く図には示されない。図4は深絞り成形後、図5はトリミング後、図6は整形後、図7はフランジ5のフランジング後、および図8はフランジの硬化後の、シートメタルブランク1を示す。成形部品の個別の状態もまた成形段階と呼ばれる。
【0005】
第1に、絞り動作は、CADに示されたコンポーネントジオメトリから始まって設計さ
れる。これは通常、以下を含む。
● 絞り段階では形成されないフランジ領域の決定
● アンダカットのない絞り位置の決定
● 穴埋め
● バインダ面および付加物の展開
● 深絞りを可能にするための、(鋭利な)ジオメトリ細部の鈍化/単純化
● スプリングバックの補正のための、個別の領域の曲げ/エンボス加工
付加物(およびバインダ面)は、例えば下記によって検査される。
● 切削角および剪断角の制御
● 可能な限り最小のブランクのサイズ制御
● シミュレーション法による、成形能力および結果として生じるコンポーネント品質の検査
● 個別の断面の断面長の比較、またはシミュレーションにおける質点のトラッキングによる後縁の決定
このコンテクストにおけるシミュレーションは、成形工程または機械加工工程のシミュレーションと理解され、それは対象の物性を考慮するものである。例えば摩擦、潤滑、加工速度などの工程の特性も同様に考慮される。例えば有限要素法、定差、境界要素法、またはいわゆるメッシュレス法などがシミュレーションで用いられる。
【0006】
したがってCADシステムは、異なる機械加工段階の静的状態をモデルとする。そのため、各状態のモデルは、基本要素から実質的に手動で生成されるか、または別のモデルからの変更によって生成される。これとは対照的に、シミュレーションは、応力、伸び、切削力、補強などの物性を考慮し、および/または計算しながら、動的工程または状態の遷移をシミュレーションする。CADシステムとシミュレーションシステムとは、今日では別個のプログラムシステムとして実現される。相互作用が生じるのは、せいぜいジオメトリデータのデータ交換による。
【0007】
上記の個々の検査基準が満たされない場合、付加物の反復的変更/適合が実行される。
以下を評価することによって次の成形動作の設計が続く。
● 作業方向
● ジオメトリ細部の成形を仕上げるための整形工具の活性表面
● フランジ領域の形成のためのフランジング/硬化工具の活性表面
● トリミング動作(切削方向およびトリミングシーケンス)
以上から、以下の検査結果が出る。
● ジオメトリ解析によるトリミング線の実現可能性
● 成形シミュレーションによる成形能力およびコンポーネント品質
フォローアップ動作は、反復手順において類似の態様で決定される。結果基準が満たされない場合、ジオメトリおよび/または方法パラメータは、絞り動作から始まって反復的に適合される。
【0008】
方法プラン、例えばどの成形ステップおよびトリミングステップでどのようにコンポーネントが製造されるべきかについての規則が次に示される。
【0009】
工具本体の設計、鋳型、CNC−フライスデータの生成および工具の製造は、方法プランの発表後に実行される。
【0010】
次に試作、例えば工具の試行および初期化が行われる。この初期化は時間がかかり、高価で、数ヶ月間続き得る。コンポーネントの所望の品質および寸法的精密さが達成されない場合には、工程パラメータおよび工具を適合させなければならない(例えば径の拡張、材料の粉砕または溶接による領域の変更など(小さな反復ループ)。極端な場合には方法
が適合されなければならない(大きな反復ループ)。特に正しいトリミング工具、すなわち、さらなる成形後に寸法的に正しいコンポーネントエッジに導くトリミング線は、試行錯誤によって反復的に決定される。
【0011】
必要な試作ループの数は方法プランの質に主に依存し、特に成形の初期における絞り動作の設計および、例えば付加物に依存する。
【0012】
付加物を生成し試験するための上述の手順態様は、下記の深刻な不利益を有する。
● フランジの巻出し(unroll)、切削角の試験、最小のバンクの評価および後縁の評価は、純粋に幾何学的な態様で、例えばおそらくは発見的な補正係数を用いて断面の巻出しの長さなどを通じ、2D断面の解析を介して行われる。これは第1に、成形によって生じる材料の伸びが考慮されていないか、または不正確な態様でされているために不正確であり、第2に、断面の解析がコンポーネントエッジに沿った全ての位置において実行されていない可能性があり、または、完全に成熟していない既存のCAD工具の処理がいまだ完全な解析ができないので、不完全である。
● 純粋に幾何学的な方法でなく物理的方法、例えばシミュレーションを用いた場合、正確さは増すが、しかしながら、例えば付加物が変更された後シミュレーションがセットアップされ、実行され、別個のステップで評価されるなど、検査が厳格に連続的な態様でさまざまなプログラムにおいて行われる。したがって各検査がこれによりさらに時間のかかるステップとなり、それはしばしば、正確な物理的な方法の代わりに純粋に幾何学的な方法のみが適用されることにつながる。
【0013】
この理由により、成形部品および対応する工具の予備設計のためのCADシステムを用いた作業態様を単純化し、生成された部品の品質を向上する方法が提供されるべきである。設計の目的となる正確さもまた向上し、そのため試作に関する労力が減じられる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の詳細な説明
したがって、本発明の目的は、最初に述べた種類のコンピュータ支援設計システム(CADシステム)における成形段階のジオメトリモデルの決定のための方法であって、上述の不利益を解決する方法を提供することである。対応するデータ処理システム、コンピュータプログラムおよびデータキャリヤもまた提供される。
【0015】
この目的は、独立請求項の特徴によって達成される。
したがって下記のステップは、コンピュータ支援設計(CAD)システムにおいて成形段階のジオメトリのモデリングのためのジオメトリオブジェクトを決定する方法で実行される。
● 第1の状態の成形段階のジオメトリモデルを有する第1のジオメトリオブジェクトを規定するステップと、
● 第1のジオメトリオブジェクトと第2のジオメトリオブジェクトとの関係を表わすために演算子を規定するステップとであって、演算子は第2の状態の成形段階を表わし、演算子は成形段階の少なくとも1つの成形ステップを表わすためのパラメータを有し、
● 演算子方法を実行することによる、第1のジオメトリオブジェクトからの第2のジオメトリオブジェクトの自動計算であって、第1の状態の成形段階のジオメトリに基づいて、少なくとも1つの成形ステップのパラメータに基づいて、かつその少なくとも1つの成形ステップの物理的シミュレーションに基づいて、第2の状態の成形段階のジオメトリを決定しまたは計算するステップとである。
【0016】
これにより、次に演算子が規定され、それは第1のジオメトリモデルを第2のジオメトリモデルにリンクする。処理工程の物理的モデリング方法はこのリンク付けに割付けられ
、この処理工程によって対応する第1の状態から第2の状態へ成形段階が移動する。第1のジオメトリモデルが変更されると、第2の第1のジオメトリモデルは物理的モデリングに従って自動的にアップデートされる。
【0017】
これにより、成形ステップの物理的モデリングは、CADシステムの静的幾何学的モデルの世界に統合される。したがって、ジオメトリデータはCADシステムからシミュレーションシステムに手動で転送される必要はなく、同様に、人が手動で成形パラメータを規定する必要はなく、シミュレーションの結果生じるジオメトリデータをおそらくはCADシステムに戻して転送する必要もなく、このデータを手動の態様で解析する必要もない。その代わり、情報は第2の状態のジオメトリモデルから自動的に計算され、例えばCADシステムの枠組内の解析にアクセス可能になる。これにより、第1の状態の特徴が変更されるような反復的変更の効果は、CADシステム内でそれ自身視覚化され、および/または、大量のさらなるユーザ操作なしに、他の幾何学的モデルにおいて用いられる。
【0018】
このように、正確な物理的検査方法が付加物の関連する数量的特徴に与えられ、これらの方法は連合的態様で直接に付加物に結合される。したがって、概算的な幾何学的方法ではなく高精度のシミュレーション方法に特に基づいて、付加物の各変化は自動的に即時に品質基準のアップデートにつながり、変化の効果は直ちに見える。固定された絞り段階および他の成形段階、ならびに特にその付加物は、はるかにより高速に、高度な正確さで生成され得る。この結果、方法プランの開発がより加速するのみならず、大小の試作ループの数を著しく減じる。
【0019】
ジオメトリオブジェクトという用語に関しては、「オブジェクト」という単語はコンピュータサイエンス用語、例えばともに1つのエンティティを記述する関連データの1単位として理解される。ジオメトリオブジェクトは、物理的オブジェクトの表示または物理的オブジェクトの特徴を含み、例えば線、表面、または形体を含む。ジオメトリオブジェクトを決定する際に計算されるのは、実質的には物理的オブジェクトの幾何学的モデル概要である。
【0020】
2つのジオメトリオブジェクトが演算子によって連合的態様で互いに割当てられ、例えば連合的態様で互いにリンクされる。含まれる計算方法により、例えば演算子は第1および第2の状態のジオメトリモデルの2地点間にマップを規定する。
【0021】
「第1および第2の状態」という用語は、処理ステップのシーケンスと対照的に、演算子による計算のシーケンスに関連する。したがって、成形段階の実際の生成においては、「第1の」状態は「第2の」状態として後の処理状態に対応し得る。
【0022】
本発明の好ましい発明によれば、演算子に従って成形を表わすパラメータもまた説明され、それにより、連合的リンク付けによって第2のモデルを自動的にアップデートすることが考慮に入れられる。それにより成形は、単一の成形ステップ、または、例えば深絞り成形および/または絞り、整形、フランジング、硬化などのいくつかの成形ステップのシーケンスから構成される。このようなパラメータは、特に、付加物のジオメトリ、成形ステップの工具のジオメトリ、および成形の温度、速度、潤滑、工具力などである。
【0023】
好ましくは、少なくとも2つの演算子は、各場合において互いに対応する演算子方法を用いて連結される(次のセクション参照)。これは、少なくとも2つの演算子の第2の演算子が、少なくとも2つの演算子の第1の演算子によって決定された成形段階のジオメトリに適用されることを意味する。したがって、第1の演算子は第1の状態のジオメトリから第2の状態のジオメトリを自動的に計算し、第2の演算子は次にここから第3の状態のジオメトリを自動的に計算する。さらに連結された演算子によるさらなる計算が、類似の
態様で実行される。
【0024】
演算子に割付けられた成形方法のための計算方法は、簡明さのために演算子方法と呼ばれる。本発明の好ましい変形例において、演算子方法は下記の方法のうちの1つである。● 成形工程前の初期状態における成形段階のエッジ線を、成形工程後の結果状態のエッジ線のジオメトリから計算するための方法。それにより、エッジ線は好ましくは深絞り以前のシートメタルブランクのエッジングであって、結果状態は深絞り後の絞りステップを表わし、またはエッジ線はトリミング線であって、結果状態は仕上げ成形された成形段階を表わす。
● 反復シミュレーションによる、仕上げ成形された成形段階のエッジングからトリミング線を反復的に評価するための方法。したがってこの場合のエッジングは予め規定されたコースに対応する。
● 後縁のコース、すなわち下部ダイの絞り角半径および/またはパンチの衝撃エッジにおよぶ深絞りによる引掻き線またはチャネルを含む、周辺面の限界線を決定するための方法。
【0025】
これらの方法は下記に詳細に説明される。これらの方法は原則として、各場合において上記のコンテクストで演算子に割付けられなくとも適用され得る。しかしながら、ジオメトリオブジェクトの連合的リンク付けのために演算子を用いてCADシステムに統合すると特に有利である。
【0026】
成形段階のエッジ線を計算するための方法は下記のステップを含む。
● 例えば有限要素メッシュ、または、結果状態の成形段階のジオメトリを表わす別の離散方法などの計算メッシュを生成するステップと、
● 結果状態の成形段階の多数のメッシュ要素および/またはメッシュノードの状態パラメータを初期化するステップと、
● 初期状態の成形段階のジオメトリに計算メッシュをマッピングするステップと、
● マッピングされたメッシュ要素および/またはメッシュノード(マッピングされたメッシュ要素および/またはメッシュノードは成形段階の初期状態を表わす)において、マップに従って変更された状態パラメータを計算するステップと、
● 例えば最小のエネルギ状態に対応してメッシュの素子力および外力が少なくともほぼ平衡するまで、メッシュ要素および/またはメッシュノードを置換することにより初期状態の釣り合いのとれた計算メッシュを決定するステップと、
● 釣り合いのとれた計算メッシュから、初期状態の成形段階のエッジ線を計算するかまたは抽出するステップとである。
【0027】
結果的に、このように第1に幾何学的マッピングまたは巻出しが実行され、次に材料特性および/または工程特性を考慮に入れるために補正計算が実行される。これにより、幾何学的マッピング方法と物理的な基礎に基づいた補正計算とを組合わせる一方で、初期状態のエッジ線を結果状態によってシングルステップで決定することが可能となる。評価の正確さは、純粋に幾何学的なマッピングまたは巻出しに比較して著しく増加する。
【0028】
それにより、状態パラメータは好ましくは下記のパラメータのカテゴリの少なくとも1つから生じる。応力、伸び、切削力、強さまたは硬化およびシートメタル厚さである。結果状態における初期化は好ましくは材料の通常状態、特に応力および伸びのない状態に対応する。有限要素メッシュを初期状態の成形段階のジオメトリにマッピングすることは、好ましくは投影(projection)または幾何学的巻出しによって、したがって物理的材料特性を考慮したりシミュレーションしたりすることなく行われる。有限要素メッシュにおいては、物理的材料特性は、好ましくは反復的な補正計算によっては、有意に限定された程度までしか考慮されない。
【0029】
深絞り後の状態、または他の成形ステップ後の状態、特に深絞り後の補強または硬化および/または厚さにしたがった初期化は、好ましくはメッシュの補正前に行われる。これにより、深絞りのために変更され、材料の通常状態または初期状態から逸脱する状態パラメータが、補正計算において考慮される。物理的補正計算は、たとえ正確でなくとも少なくとも通常状態よりも実際の材料状態に近い条件下で起こる。それにより計算の正確さが増す。この方法は、所望の結果から始まって遡って計算し、同時に最終の仮想の成形ステップのみをシミュレーションすることにより、すべて前方向の全成形ステップのシミュレーションに比較して極めて速い。これにより、下記に説明される変形例は、速く、効率的で、付加物または他の初期データの変更直後に情報が表示されることを導く。
【0030】
正確さを増すために、巻出しおよび補正は、成形段階の状態の初期状態と結果状態との間の中間ステップのジオメトリによっても実行され得る。それにより第1に中間状態で巻出し、補正がこの状態で実行され、次に初期状態に巻出し、そこで補正計算が再度実行される。いくつかの中間ステップが類似の態様で可能である。
【0031】
好ましくは、成形工程による成形段階の成形能力の査定は、補正された計算メッシュによって実行される。これは例えば、シートメタルのやせが大きすぎないか、割れもしくはしわが生じていないか、またはシートメタルが成形のために裂けていないかについて、自動的に検査することを意味する。
【0032】
成形段階のエッジ線の計算方法の第1の好ましい変形例において、成形工程が深絞り工程である場合、初期状態は深絞り前のシートメタルブランクを表わし、初期状態のエッジ線はシートメタルブランクのエッジングであって、結果状態は深絞り後または他の成形ステップ後の絞り段階を表わす。
【0033】
これにより、深絞り後に必要な最小シートメタルのサイズから、深絞り前の最小シートメタルのサイズを結論づけることが可能である。付加物のブランクサイズへの影響およびそのための材料コストへの影響は、これにより概算され得る。連合的演算子を介してCADシステムに統合することで、付加物の変化がCADモデルにおいて材料コストに与える影響は、ユーザ側でのさらなる複雑な介入なしに、予備設計中に直接計算され得る。このように、単純な態様で影響が見えるようになり得るか、および/または変更された部品ジオメトリが他の幾何学モデルにおいて用いられ得る。
【0034】
成形段階のエッジ線の計算方法の第2の好ましい変形例において、成形工程は個別の成形ステップのシーケンスを有し、初期状態はトリミング動作後の成形段階を表わし、初期状態のエッジ線はトリミング線であり、結果状態は仕上げ成形された成形段階を表わす。
【0035】
これにより、最終商品の所望のエッジ線から、例えば仕上げ成形された成形段階のエッジまたは隅から始まって深絞り段階(または後の段階)における所望のエッジ線に至るトリミング線を、1つのステップで決定することが可能である。当然、類似の態様で、最終製品にいまだ対応しない中間段階の所望のエッジ線から始めることもできる。上述の説明のコンテクストにおける「最終製品」は、最後の処理ステップの製品である必要はない。
【0036】
初期状態におけるトリミング線の特徴的な特性、特に剪断角および/または切削角および/または切削台の特性は、自動的に決定され、査定される。これらの特性が予め規定された限度内にない場合は、好ましくは好適な視覚的目印、例えばトリミング線の着色などにより表示される。このようなトリミング線の特性の視覚的表示は、好ましくは成形段階の視覚表示に重ね合わされる。それにより、トリミング線の完全な断面が計算され、高解像度で表示される。これは、トリミング線に対して横向きの僅かな数の個別の断面しか観
察されない、かつトリミング線の一点しか各断面に決定されない、公知の方法とは対照的である。
【0037】
仕上げ成形された成形段階のエッジングからトリミング線の反復的評価を行う方法は、特に有限要素法に基づいて物理的シミュレーションを実行し、それを用いてトリミング線の仮定コースからエッジングの仮定コースが計算される。トリミング線の仮定コースは、エッジングの仮定コースが、予め規定されたコースに所与の許容誤差で接近するまで、物理的シミュレーションの反復実現を伴って反復的に適合される。例えば、規定されたコースからエッジ点が逸脱すると、トリミング線の対応するエッジ点は、各場合において偏差に比例する量だけ変位される。労力および時間に関して反復的なこの方法は、上述の連合的演算子を介したCADシステムへの統合を用いるシングルステップ法より広範囲であるにもかかわらず、しかしながらそれはユーザにとって透明であって、さらなる手動の労力なく適用され得る。結果は視覚化され得るか、または他の幾何学モデルにおいて用いられ得る。
【0038】
本発明の好ましい変形例において、いくつかの成形段階でトリミング動作が実行される。ここでも第1の予備設計から始まり、異なる成形段階におけるトリミング線の位置が決定され、反復的に修正される。したがって、各場合に同じシートメタルブランクの異なる成形段階においていくつかのトリミング動作が実行され、さらに本発明にしたがってシミュレーションされる。各場合において、トリミング線のいくつかの異なる断面のうちの1つについて、各場合のこの断面の初期状態は異なる成形ステップ後のシートメタルブランクに同時に対応する。
【0039】
後縁のコースを決定するための方法は深絞り動作をシミュレーションし、その手段によって、成形段階の関連付けられた点が、深絞り前の成形段階の規定された線上の物質的固定点の各数量について深絞り後に計算され、これらの関連付けられた点の全体が後縁を表わす。
【0040】
成形段階の予め規定された線は、深絞りの前にいわゆるパンチ開口線(punch opening line)として工具ジオメトリを成形段階に投影することにより、好ましくは計算される。代替として、成形段階の予め規定された線は、バインダが閉じられた後かつ深絞り前に、内側バインダエッジに一定の距離を有する線として計算される。
【0041】
これにより、複雑な別個のシミュレーションなしに、後縁の近似コースを決定することが可能になる。CADモデルにおいて後縁を計算し、即時に視覚化することが予備設計中に可能であり、同様に、計算された後縁を連合的演算子を用いてCADシステムに統合し、他の幾何学的モデルにおいて用いることも可能である。
【0042】
好ましくは、予め規定された線上の前述の点のマップを計算するのみならず、シートメタル[部品]全体の全ての点、または例えばパンチ開口線および内側バインダエッジの間、または深絞り前のパンチ開口線および外側バインダエッジの間の、予め規定された領域のみにおける全ての点のマッピングをも計算する。これにより、シートメタル面またはシートメタル本体の点間の全単射マップが深絞りの前後で決定される。深絞りの前後の点の概要は、第1および第2のジオメトリオブジェクトに含まれる。したがって、全単射マップは演算子方法または演算子の結果である。
【0043】
本発明の好ましい変形例において、後縁の評価は、トリミング線を決定する方法のうちの1つと組合わされる。
【0044】
これにより、トリミング線のジオメトリと後縁のジオメトリとを比較することが可能に
なる。後縁が絞り段階でトリミング線の外に走っている限り、引掻きまたはチャネルは完成した成形部品においては全く見えない。トリミング線および後縁の間で安全距離を規定することもでき、それは観察されなければならない。または、製品の種類に依存して、いわゆる視覚の限度に従って許容誤差領域を指定することもでき、そこで後縁はトリミング線内に位置し得る。いずれの場合も、成形段階の図式的または視覚的表示において、例えばトリミング線および/または後縁のコースの適切な着色によって、後縁のコースに対する要求が満たされるかどうかについて印がつけられる。
【0045】
コンピュータ支援設計(CAD)システムにおいて成形段階のジオメトリモデルを決定するためのデータ処理システムは、コンピュータプログラムを記述するコンピュータプログラムコード手段がその中に格納されるメモリ手段と、コンピュータプログラムを実行するデータ処理手段とを含み、コンピュータプログラムの実現は本発明による方法の実現につながる。
【0046】
コンピュータ支援設計(CAD)システムにおいて成形段階のジオメトリモデルを決定するための本発明によるコンピュータプログラムは、デジタルデータ処理装置の内部メモリにロードされることができ、コンピュータプログラムコード手段がデジタルデータ処理装置で実行されるとそれに本発明による手段を実現させる、コンピュータプログラムコード手段を含む。本発明の好ましい実施例において、コンピュータプログラム製品は、コンピュータプログラムコード手段が格納されるコンピュータ可読媒体を含む。
【0047】
他の好ましい実施例は、従属請求項から推論される。
本発明の主題は、添付図において表示される好ましい実施例として、さらに詳細に以下に説明される。各場合に概略図で示される。
【0048】
図面に用いられる参照番号およびその意味は、参照番号表にグループ化された態様でリスト化される。基本的には、同じ部品には図の同じ参照番号が与えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
発明の実施方法
図1は、本発明による方法の手順課程を示す。方法は、成形段階のジオメトリの設計用のCADシステム20で作動する。方法は、CADシステム20に統合されているか、または、プログラムインターフェイスを介して物理的シミュレーションシステム40で利用可能となっているかのいずれかである、物理的シミュレーションシステム40の機能を用いる。ジオメトリオブジェクト22のモデル生成のためのステップは、方法のスタート21の後にCADシステム20内で実行される。それにより、例えばコンピュータの作業メモリ領域にあるモデルは、CADシステム20によって処理され得るよう、ユーザ入力または格納されたモデルデータによって生成される。演算子23を規定するステップにおいて、ジオメトリオブジェクトを互いに関係して設定する演算子は手動で規定されるか、または格納されたモデル記述から読み取られる。演算子は、例えばfとして書き込まれることができ、
【0050】
【数1】

【0051】
ここでGは第1の、G2は第2のジオメトリオブジェクトを示し、Pは演算子パラメータであって、例えば1つ以上の対応する処理ステップの記述である。演算子に割当てられる成型方法のための計算方法は、簡明にするため演算子方法と呼ばれる。演算子方法は演算子24の適用によって実行され、そこで物理的シミュレーション26も実行される。このた
め、第1の変換ステップ25において、第1に計算メッシュ、特に有限要素メッシュが、第1のジオメトリオブジェクトのCADモデルから生成される。これは、シートメタルブランク1の物理的材料特性および1つ以上の物理的処理ステップに対応する工程特性を考慮しながらシミュレーション26によって変更される。シミュレーションは、いくつかの反復的に実現される個々のシミュレーションをも含み得る。変更された有限要素メッシュは、必要であれば、第2の変換27においてCADシステム20がアクセス可能な表示に変換される。関連する演算子に関係する機能は関連機能抽出ステップ28でモデルに抽出される。任意で、このステップ28は第2の変換27の前にも起こり得る。関連機能は表示29で視覚的に表示され、例えばある処理段階において、例えば成形されたシートメタルブランク1の表示上に重ねられる。当然それらはまたジオメトリモデルの他のステップでも用いられ得る。
【0052】
コンピュータ技術に関しては、演算子はデータ構造によって、または、オブジェクト指向プログラミングのコンテクストにおいてソフトウェアオブジェクトによって実現され、例えば演算子はリンクされたジオメトリオブジェクトに対するインジケータ、および1つ以上の処理ステップの特性を表示する。「変化を待機する」ステップ30において、CADシステム20の監視ルーチンは、第1のジオメトリオブジェクトまたはパラメータで変化が生じたか否かを制御し、演算子方法に対応する新たな計算をトリガする。CADシステム20で観察されるジオメトリオブジェクトが処理される限り、方法は待機状態30にあるか、または新たな計算24−28にある。方法は処理完了時、31において完了する。
【0053】
図2から図8は、成形工程の異なる処理段階を各場合に断面図で示す。図2は、ブランク1とも呼ばれるシートメタル部品を、平らな初期状態で示す。図3は、深絞り圧縮の下部ダイ11およびバインダ10の間のクランプ締め後のシートメタルブランク1のコースを示す。示されていないパンチを用いた絞りの後、シートメタルブランク1は図4による形状を有し、絞り段階とも呼ばれる。絞り段階は、後に切取られる、いわゆる付加物4を含むが、それは実際には最終製品の材料特性に影響する。図5は、トリミング線3に沿って実行されるトリミング動作後のシートメタルブランク1を示し、そこでシートメタルブランク1のエッジが形成される。図6は、整形後のシートメタルブランク1を示し、そこで個々の形状がより大幅に整形される。図7は、フランジ5のフランジング後の、図8はフランジ5の硬化後の、シートメタルブランク1を示す。
【0054】
シートメタルブランク1を通る他の(例えば図面の上から下へ、および図の面に対して直角に)断面は、示されているものと同様の態様である。示される処理シーケンスは、例証として単純化される。個々の細部の形状、例えば開口部を作るために、同様の方法の他の処理ステップが加えられ得る。例えば整形後にも、いくつかのトリミング動作を実行することができる。
【0055】
図9は、フランジ領域14をマッピングした深絞り段階を示す。これにより、図8の終了状態から絞り段階2までのトリミング線3の巻出しが示される。巻出しはシングルステップでも、または1つ以上の中間段階を介しても実行され得る。
【0056】
図10は、深絞りの前後のブランクの概略的詳細図を示す。図は、現実にはシートメタルブランク1がバインダ10および下部ダイ11の間で保持され、下部ダイ11の絞り角半径15の上にきつく引張られるという意味では概略図である。さらに示されるのは、深絞り前のシートメタルエッジング線6a、深絞り後のシートメタルエッジング線6b、パンチ開口線8およびパンチ方向12、すなわち示されていないパンチの運動方向である。図11は、この詳細図のある質点の変位、および深絞りによってシートメタルブランク1に生じる領域チャネル9を示す。
【0057】
好ましい演算子方法がここで以下に説明される。
トリミング線の正確な巻出しおよびフランジの実現可能性
物理的巻出しは、エッジ線に直角の個々のステップにおける通常の幾何学的巻出しの代わりに、逆シングルステップシミュレーションによって行われる。
【0058】
この方法は、フランジ5を生成するための成形動作に適用される。それは、連合性の物理的演算子としてCAD工程に組み込まれることができ、前記演算子は付加物上に巻出されるコンポーネントエッジ線を付加物と組合わせる。方法は、これによりフランジ5の製造可能性を評価するための信頼性の高い解析手段を構成し、前記解析またはその結果は、好ましくは同様に連合的に付加物にリンクされる。
【0059】
これにより次のステップが実行され、図8および図9を参照すると、仕上げ成形されたコンポーネントおよび絞り段階2を示す。
a)中間的にまたは仕上げ成形されたフランジ5を伴うコンポーネント上に計算メッシュとして有限要素メッシュを生成するステップと、
b)フランジ5の成形前にこのメッシュを絞り段階2のジオメトリにマッピングするステップ。このメッシュは、均衡反復d)のためのスタートソリューションを表す。例えば、パンチ方向における投影、幾何学的な巻出し、または回転投影アルゴリズムが、マップ関数として用いられ得る。
c)コンポーネントメッシュの伸びおよび応力を、絞り段階の成形によって生じる伸びおよび応力が考慮されない場合にはゼロに、または、スタートソリューションにおける絞り段階2の、伸びならびに応力値および/または硬化もしくは補強、およびシートメタル厚さを初期化するステップと、
d)絞り段階の逆有限要素法による均衡の反復。それにより、ノードの素子力が均衡するまで、メッシュノードは絞り段階に沿って反復的にシフトされる。これにより、成形(例えば絞り段階において)の初期位置の均衡が反復され、すなわち、予め規定された終了状態(コンポーネントメッシュ)において均衡状態に至る、初期状態のノード位置が求められる。例えば、弾性、硬質プラスチックまたはしかしながらより正確な弾性プラスチック法則が、材料法則としてほぼ適用されることができる。
e)伸びおよび応力が絞り段階で考慮された場合の、伸びおよび応力の初期化の可能な再反復。これは初期のメッシュがシフトしており、したがってある質点に他の初期的な伸びおよび応力が存在し得るので、必要である。再初期化は均衡反復と同時に行われ得る。
【0060】
応力および伸びの代わりに、類似の態様で切削力を用いることもできる。
結果は、絞り段階における最終の反復メッシュである。そのエッジは絞り段階2で巻出されたフランジエッジング3を表す。絞り段階2で評価された伸びは逆にされることができ、次にフランジングとして生じたコンポーネント1の伸びを示す。これにより、それ以上の作業ステップなしに、絞り段階ジオメトリの各変化、特に付加物4によって、各場合に結果として生じた巻出されたコンポーネントエッジング3、すなわちトリミング線3の位置が付加物4上に見られ、同時にフランジ5の成形によって生じた伸びおよび応力(およびそこから派生する変数)が見られ、それによりフランジ5が成形され得るか否かが認識され得る。
【0061】
本方法の利点は、続くフランジ動作に関して最適な付加物4が、極めて速く生成されることである。方法はまた、下記にさらに説明されるように、トリミング線の実現可能性の解析のための基礎を形成し、必要な試作の反復を減じる。
【0062】
可能な最小のブランク/形成能力およびコンポーネント品質
逆シングルステップシミュレーションを用いた可能な最小のブランクの評価によって材
料コストの概算が可能になり、結果として、成形工程のシミュレーションおよび試作のためのスタートブランク(starting blank)になる。
【0063】
可能な最小のブランクエッジングの評価は、付加物または絞り動作のジオメトリに連合的にリンクされ得る。これにより、連合性の物理的演算子を用いてCAD工程に統合され得る。それはまた同時に、絞り動作の実現可能性を評価するための信頼性の高い解析手段でもあり、解析の表示は同様に、付加物または絞り段階に連合的にリンクする。
【0064】
可能な最小のブランクエッジングを決定する方法の1つの可能な実施例は、図10による状況に基づく。方法は、基本的に、トリミング線を決定する上述の方法に類似する。異なる成形ステップにわたってトリミング線をシフトする代わりに、深絞りにおいてブランクエッジングをシフトすることが考慮される。これは結果として、逆シングルステップシミュレーションを用いる絞り動作のシミュレーションのための下記のステップを生じる。a) 絞り工具上での絞り動作後、所望のシートメタルエッジング6bを硬化させるステップ。このエッジング線6bも、例えばパンチ開口線に対して一定のオフセットのある線として、自動的に生成され得る。
b) この線によってエッジングされる絞りジオメトリを連結するステップと、
c) 伸びおよび応力または切削力をこのメッシュにおいてゼロに初期化するステップと、
d) 例えば投影を介して、初期シートメタル平面の均衡反復のためのスタートソリューションを評価するステップと、
e) 平面の初期シートメタルにおける逆有限要素法を用いた均衡の反復とである。
【0065】
各場合において、上述のステップで、例えば保持力、特にバインダ力などの制限をも考慮し得る。
【0066】
このシミュレーションはまた代替的に、例えば第1のステップで絞りジオメトリからバインダ面へ戻って、次に第2のステップで初期シートメタルへ戻るなど、いくつかのステップにおいて行われ得る。
【0067】
結果は、絞り動作後に規定されたシートメタルエッジング6bに至る、平面の初期シートメタル1における必要なエッジング6aである。伸びおよび応力は同時に評価され得る。これらは次に絞り動作についての成形能力/コンポーネント品質の概算を可能にし、それがCAD設計に連合的にリンクされる。付加物(またはコンポーネントについても)の各変化は、結果として即時に新たな最小のブランクおよび、成形能力の視覚化を生じる。材料コストもまた最小ブランクのサイズから概算され得る。このように、絞り段階ジオメトリにおける変化、特に付加物4の材料コストに対する影響は直ちに明白になり、それは材料コストに関する付加物4の最適化を大幅に単純化する。
【0068】
トリムの実現可能性、最適なトリミング方向の評価
これにより、初期状態のトリミング線の特徴的特性が自動的に評価され、査定される。これは、トリミング線および切削台の実現可能性(切削角および剪断角、切削台の幅および平坦さ)に関する査定ならびにトリミング方向の評価を含む。
【0069】
切削角特性および切削台特性の評価および査定は、好ましくは連合的に付加物にリンクされる。トリミング線3に沿った切削角の表示は好ましくは着色により行われ、その結果、個々の点における点別の解析のみならず、トリミング線に沿った全ての情報が存在する。査定はトリミング線自体に行われるのみならず、シートメタルブランク1のトリミング線の両側に走るベルト、いわゆる切削台をも介して好ましくは行われる。最適な切削方向の自動評価または作業方向の自動割付けが、トリミング線領域で追加的に起こり得る。
【0070】
1つの可能な実施例は以下の通りである。付加物上の巻出された断面線は、絞り段階ジオメトリまたは付加物における各変化の後、切削角および剪断角に関して評価されることができ、着色された態様で即時に表示され得る。このため、トリミング線3またはトリミング線3の領域がどの角から切削されるかについて予め規定しなければならない。これは好ましくは成形動作のうちの1つの主要な作業方向であるが、しかしながら、(カムトリミングについては)横方向でもあり得る。代替的に、トリミング線3の選択された全ての領域について査定基準を満たす切削方向を独立して選択することによって、または、作業方向のための可能な角度範囲をダイヤグラムに表示し、ユーザがこのダイヤグラムまたはグラフィック表示の助けを借りて作業方向を選択することによって、トリミング線3の所与の領域のための最適な切削方向を決定することができる。さらに、評価規準が満たされるように、トリミング線領域を自動的に作業方向および/またはカム方向の所与の量のうちの1つに割当てることも可能である。
【0071】
トリミング線3を得るために、その後の動作において形成されるフランジ5が、付加物上に巻出される。トリミング線3は実現可能性に関して検査される。
−切削角は、予め規定された限度、例えば15度より小さくなければならない。切削角は、端面において生じる断面の傾きを特徴付け、例えば以下のように規定される。切削角は断面の湾曲に法線である表面、および、断面の湾曲の法平面への切削方向の投影(projection)によって囲まれる。
−剪断角は、予め規定された限度、例えば80度より小さくなければならない。剪断角はナイフ係合の傾きを特徴付け、例えば下記のように規定される。剪断角は、切削湾曲に法線である表面、および、表面法線ならびに切削線への接線ベクトルによって形成される平面への切削方向の投影(projection)によって囲まれる。
−切削台の幅。切削線に直角である平面におけるジオメトリの切込みは、切削線3に沿ったマージンにおいて適切に平らであり、前記マージンは両側で5mmの幅がある。このために、例えばマージンのこれらの断面の最大曲率半径が決定され得る。このマージンは限度より大きくなければならず、例えば20mmより大きくなければならない。その理由は、保持工具のための「きれいな」接触面、保持工具および切削ナイフの最小限の幅もしくは最小限の強さ、または切削台を境界付ける面が試験中に変えられなければならない場合には、「予備」が必要だからである。
【0072】
これらの規準が満たされない場合は、中間段階、特に付加物4の反復的変更/適合が行われる。
【0073】
図2から図8による手順は、非常に単純な工程に対応する。例えばトリミング動作は、しばしばいくつかの成形段階で実行される。したがって最終エッジ線の異なる断面は、同じシートメタルの異なる成形段階のトリミングから生じる。ここでも第1の予備設計から始まり、さまざまな成形段階でトリミング線の位置が決定されて、反復的に修正される。
【0074】
連続的処理ステップの組合わされたシミュレーションは、結果として終了状態における現在のコンポーネントのエッジとなり、それは予め規定された所望のコンポーネントエッジに近い反復位置の進行に依存する。これによって、終了状態において予め規定された所望のコンポーネントエッジの点および対応する偏差が、現在のコンポーネントエッジの各質点に割当てられ得る。これによって、終了状態におけるコンポーネントエッジに沿った、および質点の助けを借りた逆向きのマッピングにおける偏差分布が、以前の成形段階において規定される。この偏差分布が、以前の成形段階におけるトリミング動作のトリミング線の断面を反復的に修正するかまたは適応させるために次に用いられ、そこで、反復において続く連続的な機械加工ステップをシミュレーションする目的でコンポーネントエッジの対応するセクションが生成され、その間、終了状態のこの新たなトリミング線を用い
、規定された所望のコンポーネントエッジに近いコンポーネントエッジの対応する断面をもたらす。連続的な処理ステップのこの反復的なシミュレーションは、シミュレーションから生じるコンポーネントエッジと予め規定されたコンポーネントエッジとの間の終了状態の偏差が、異なる成形段階において生成される全てのエッジ断面について予め規定された許容誤差に達しなくなるまで実行される。
【0075】
後縁
後縁は、シートメタルが絞り角半径15からあふれると生じる。絞り角半径15は、シートメタルブランク1が下部ダイ11の上で引張られる、下部ダイ11の内側エッジである。絞り角半径12からあふれた全ての質点の内側エッジングが後縁13として示される。表面引掻きを有するチャネルもしくは領域またはチャネル9が、後縁13および絞り角半径15の間で形成される。絞り動作後のこれらのチャネルは、仕上がったコンポーネントの可視域にあるようにはならない。シートメタル1がいわゆるパンチの衝撃エッジ上で絞られるという点で、チャネルと、したがってさらに後縁とがシートメタルの反対側でも同様に生じる。
【0076】
後縁13の評価は好ましくはシミュレーションによって行われ、この評価はCAD工程に固定的に統合される。このことにより、付加物4に対する後縁13の連合的な接続が、物理的連合演算子を介して実行される。後縁13の変化は、付加物4の各変化と同時に即時に見ることができ、これに関して最適な付加物4が、はるかにより急速に生成され得る。
【0077】
図11による状態に基づく1つの可能な実施例。絞り動作は、例えば1つまたは2つの連続的なシングルステップ法によって(前方にまたは後方に、増分方法もまた可能であろう)シミュレーションされる。これにより、2つのステップを用いて、中間的ジオメトリとしてのシートメタル形状は、絞り動作終了時に成形されたジオメトリと同様に、図3のようにバインダが閉じた後に示される。これら2つのジオメトリ間の全単射マッピングは、物理的な固定点によって示される。バインダが閉じた後の絞り角半径の初めに位置するか、または同様の方法で規定される質点は、絞り動作終了時にジオメトリに後縁を形成する。
【0078】
後縁12を評価するために、深絞り前に、パンチ開口線8を成形段階へ投影することから始めることができる。パンチ開口線8は実質的に、シートメタルブランク1に直角な下部ダイ11の面の延長の断面である。シミュレーションによって、絞り段階2でパンチ開口線8の点がくる場所が決定される。これらの点は後縁13として観察される。本発明の他の変形例においては、パンチ開口線8から一定の距離内に位置する線8´から始められる。第2の後縁13はこの結果生じる。示された例において、第2の後縁13´はトリミング3内にある。部品の要求に依存して、これは許容されたりされなかったりする。他の変形例において、深絞りの前に、クランプ締めされた成形部品について、内側バインダまで一定の距離を有する線が想定される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明による方法の手順課程を示す図である。
【図2】成形工程の異なる処理段階を示す図である。
【図3】成形工程の異なる処理段階を示す図である。
【図4】成形工程の異なる処理段階を示す図である。
【図5】成形工程の異なる処理段階を示す図である。
【図6】成形工程の異なる処理段階を示す図である。
【図7】成形工程の異なる処理段階を示す図である。
【図8】成形工程の異なる処理段階を示す図である。
【図9】マッピングされたフランジ領域を有する深絞り段階を示す図である。
【図10】深絞り前後のブランクの詳細図である。
【図11】詳細図からのある質点のシフトを示す図である。
【符号の説明】
【0080】
1 シートメタルブランク
2 絞り段階
3 トリミング線
4 付加物
5 フランジ
7 シートメタルエッジング線
6a 深絞り前のシートメタルエッジング線
6b 深絞り後のシートメタルエッジング線
8 パンチ開口線
9 チャネルのある領域
10 バインダ
11 下部ダイ
12 パンチ方向
13 後縁
14 巻出されたフランジ
15 絞り角半径
20 CADシステム
21 スタート
22 ジオメトリオブジェクトからのモデル生成、defmod
23 演算子の規定、defop
24 演算子の適用、exop
25 第1の変換、conv1
26 物理的シミュレーション、simul
27 第2の変換、conv2
28 関連した機能の拡大、extr
29 表示、disp
30 変化を待機、chg?
31 ストップ
40 物理的シミュレーションシステム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ支援設計(CAD)システムにおける、成形段階(1)のジオメトリモデルを決定するための方法であって、
● 第1の状態の成形段階(1)のジオメトリモデルを含む第1のジオメトリオブジェクトを規定するステップと、
● 第1のジオメトリオブジェクトと第2のジオメトリオブジェクトとの関係を表わすために演算子を規定するステップとを含み、演算子は第2の状態の成形段階を表わし、演算子は成形段階(1)の少なくとも1つの成形ステップを表わすためのパラメータを含み、さらに、
● 演算子方法を実行することによる、第1のジオメトリオブジェクトからの第2のジオメトリオブジェクトの自動計算であって、第1の状態の成形段階(1)のジオメトリによって、少なくとも1つの成形ステップのパラメータによって、かつその少なくとも1つの成形ステップの物理的シミュレーションによって、第2の状態の成形段階のジオメトリを決定するステップとを含む、方法。
【請求項2】
第2のジオメトリオブジェクトは、少なくとも一つの成形ステップを表わすパラメータの変化によって、自動的に計算されるかまたは新たに適合される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも2つの演算子は、各場合に対応する演算子方法を用いて規定され、演算子は連結されることを特徴とし、それは少なくとも2つの演算子の第2の演算子が、少なくとも2つの演算子の第1の演算子によって決定された成形段階(1)のジオメトリに適用されることを意味する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
演算子方法は、成形工程後の結果状態のエッジ線(3)のジオメトリから成形工程前の初期状態の成形段階のエッジ線を計算する方法であって、演算子方法は、
● 結果状態の成形段階のジオメトリを表わすために、計算メッシュを生成するステップと、
● 結果状態の成形段階(1)の多数のメッシュ要素および/またはメッシュノードの状態パラメータを初期化するステップと、
● 初期状態の成形段階(1)のジオメトリに計算メッシュをマッピングするステップと、
● マッピングされたメッシュ要素および/またはメッシュノードにおいて、マッピングに従って変更された状態パラメータを計算するステップと、
● メッシュの素子力および外力が少なくともほぼ平衡するまで、メッシュ要素またはメッシュノードをシフトすることにより初期状態の釣り合いのとれた計算メッシュを決定するステップと、
● 釣り合いのとれた計算メッシュから、初期状態の成形段階(1)のエッジ線(3)を抽出するステップとを含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
状態パラメータは、応力、伸び、切削力、硬化または強さ、シートメタル厚さのパラメータのカテゴリのうちの少なくとも1つから生じる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
結果状態における初期化は、材料の標準状態、特に応力および伸びのない状態に対応する、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
深絞り後の状態に対応する、特に深絞り後の強さおよび/または厚さに対応する初期化は、メッシュを補償する前に行われる、請求項4から6に記載の方法。
【請求項8】
成形工程による成形段階(1)の成形能力の査定は、釣り合いのとれた計算メッシュによって実行される、請求項4から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
成形工程は深絞り工程であって、初期状態は深絞り前のシートメタルブランク(1)を表わし、初期状態のエッジ線はシートメタルブランク(1)のエッジング(6a)であり、結果状態は深絞り後の絞り段階を表わすことを特徴とする、請求項4から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
成形工程は、一連の個々の成形ステップを含み、初期状態はトリミング動作後の成形段階(1)を表わし、初期状態のエッジ線はトリミング線(3)であり、結果状態は仕上げ成形された成形段階(1)を表わすことを特徴とする、請求項4から8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
初期状態のトリミング線の特徴的特性、特に剪断角および/または切削角および/または切削台の特性は自動的に決定され、査定されて、最適な切削方向は任意で計算されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
トリミング線(3)の完全な断面の特性の視覚的表示は、成形段階(1)の視覚的表示の上に重ね合わされることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
演算子方法は、第1のジオメトリオブジェクトとして予め規定されたコースとしての仕上げ成形された成形段階(1)のエッジングから、第2のジオメトリオブジェクトとしてのトリミング線(3)の計算を実行し、そこで物理的シミュレーションが実行され、それを用いてトリミング線の仮定コースからエッジングの仮定コースが計算され、物理的シミュレーションの反復実現を伴ったトリミング線(3)の仮定コースは、エッジングの仮定コースが予め規定されたコースに予め規定された許容誤差で接近するまで、自動的かつ反復的に適合される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
いくつかのトリミング動作は、各場合に同じシートメタルブランク(1)の異なる成形段階でシミュレーションされ、この態様で、トリミング線のいくつかの異なる断面について、各場合にこれらの断面のうちの1つの初期状態が異なる成形ステップ後のシートメタルブランク(1)に各場合に対応することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
演算子方法は後縁(13)のコースを決定し、そこで深絞り動作がシミュレーションされ、その手段により、深絞りの後の成形段階(1)の関連付けられた点が、深絞り前の成形段階(1)の予め規定された線(8、8´)上の物質的固定点の各数量について計算され、これらの関連付けられた点の全体が後縁(13、13´)を表わす、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
成形段階(1)のトリミング線(3)のコースが、自動的に評価された後縁(13、13´)のコースと比較されることを特徴とする、請求項10から14および15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
コンピュータ支援設計(CAD)システムにおいて成形段階のジオメトリモデルを決定するためのデータ処理システムであって、データ処理システムは、請求項1から16の1つ以上の請求項に記載の方法を実行するための手段を含む、システム。
【請求項18】
コンピュータ支援設計(CAD)システムにおいて成形段階のジオメトリモデルを決定するためのコンピュータプログラムであって、データ処理装置にロードされ得、実行されることができる、かつ実現の際、請求項1から16の1つ以上の請求項に記載の方法を実
行する、コンピュータプログラム。
【請求項19】
請求項18に記載のコンピュータプログラムを含む、データキャリア。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−507013(P2007−507013A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508664(P2005−508664)
【出願日】平成15年9月11日(2003.9.11)
【国際出願番号】PCT/CH2003/000613
【国際公開番号】WO2005/024671
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(502405354)アウトフォルム・エンジニアリング・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (6)
【Fターム(参考)】