説明

メタルフォーム用基材ウレタンフォーム

【課題】減圧下におけるガスの発生が抑制されたメタルフォーム用基材ウレタンフォームを提供する。
【解決手段】ポリオール、イソシアネート、発泡剤、及び界面活性剤を含む発泡原液を発泡硬化してなるメタルフォーム用基材ウレタンフォームであって、前記界面活性剤は、100℃における蒸気圧が1Pa未満であるメタルフォーム用基材ウレタンフォーム。界面活性剤の100℃における蒸気圧が1Pa未満であるため、スパッタリング時にウレタンフォームからガスが発生して真空度が低下することが防止され、スパッタリングを良好に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極用の母材として好適に使用されるメタルフォーム用基材ウレタンフォームに関する。メタルフォーム用基材ウレタンフォームとは、ウレタンフォーム表面にメッキ、スパッタリング、蒸着等により金属層を形成するための基材となるウレタンフォームを示す。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは、ポリオールとイソシアネートとからなる主原料と、水等の発泡剤とを含んでなる発泡原液から製造される。
従来、この発泡原液に、界面活性剤や酸化防止剤等を添加することが行われている(例えば、特許文献1)。また、特許文献2には、異臭やいわゆるシックハウスの原因となる揮発性有機化合物(VOC)の発生量を抑制するために、発泡原液に添加する酸化防止剤や、発泡原液中のポリオールの合成時に添加する酸化防止剤として、一定以上の数平均分子量を有する高分子化合物を用いることが記載されている。
ところで、近年、ウレタンフォームの表面に金属を付着させたものを、電池用の電極として使用することが行われている。例えば特許文献3には、ウレタンフォームの表面に金属をスパッタリングによって付着させたものを、電池用の電極として使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−051280号公報
【特許文献2】特開2004−211032号公報
【特許文献3】特開2010−253901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献3のように、ウレタンフォームの表面に対して金属をスパッタリングによって付着させて電極を製造するためには、スパッタリング装置内を真空に保持する必要がある。そのため、特許文献2のような、数平均分子量が一定以上であり、常圧におけるVOCの発生量が抑制されたウレタンフォームを、メタルフォーム用基材ウレタンフォームとして用いた場合、減圧下では必ずしもVOCの発生量が抑制されずにウレタンフォームからガスが発生し、スパッタリング装置内の真空度が低下してスパッタリング効率が低下するという問題が生じる。
本発明は、上記問題を解決し、減圧下におけるガスの発生が抑制されたメタルフォーム用基材ウレタンフォーム(電極材用ウレタンフォーム)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、界面活性剤として蒸気圧の低いものを用いることにより、減圧下でもウレタンフォームからのガスの発生が抑制され得ることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0006】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(4)を発明とするものである。
(1)ポリオール、イソシアネート、発泡剤、及び界面活性剤を含む発泡原液を発泡硬化してなるメタルフォーム用基材ウレタンフォームであって、前記界面活性剤は、100℃における蒸気圧が1Pa未満であるメタルフォーム用基材ウレタンフォーム。
(2)前記界面活性剤の数平均分子量が4000〜8000である(1)に記載のメタルフォーム用基材ウレタンフォーム。
(3)前記ポリオールは酸化防止剤を含まない(1)又は(2)に記載のメタルフォーム用基材ウレタンフォーム。
(4)前記界面活性剤は、前記ポリオール100質量部に対して0.2〜4.0質量部である(1)〜(3)に記載のメタルフォーム用基材ウレタンフォーム。
(4)前記界面活性剤は、前記ポリオール100質量部に対して0.5〜2.0質量部である(1)〜(3)に記載のメタルフォーム用基材ウレタンフォーム。
【発明の効果】
【0007】
ウレタンフォームの表面に金属をスパッタリングによって付着させる場合、スパッタリング装置内は1Pa程度の真空に保持することがある。また、スパッタリング時にウレタンフォーム表面が発熱して100℃程度になることがある。
本発明のメタルフォーム用基材ウレタンフォームによれば、界面活性剤の100℃における蒸気圧が1Pa未満であるため、スパッタリング時にウレタンフォームからガスが発生して真空度が低下することが防止され、スパッタリングを良好に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のメタルフォーム用基材ウレタンフォームは、ポリオール、イソシアネート、発泡剤、及び界面活性剤を含む発泡原液を発泡硬化してなるメタルフォーム用基材ウレタンフォームであって、前記界面活性剤は、100℃における蒸気圧が1Pa未満であることを特徴とするものである。
このように、本発明のメタルフォーム用基材ウレタンフォームによれば、界面活性剤の100℃における蒸気圧が1Pa未満であるため、スパッタリング時にウレタンフォームからガスが発生して真空度が低下することが防止され、スパッタリングを良好に行うことができる。
以下に、発泡原液の各成分について説明する。
【0009】
(ポリオール)
ポリオール成分としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリマーポリオール等が挙げられる。これらのポリオールは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
上記ポリエステルポリオールとしては、例えばアジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ブラシル酸等の炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などを酸成分とし、エチレングリコール等の炭素数1〜6の脂肪族ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のエーテルグリコールなどをポリオール成分(アルコール成分)とするポリエステルポリオールを挙げることができる。
【0010】
上記ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されるものではないが、反応性の観点からアルキレンオキシドの開環重合により得られるポリエーテルポリオールが好適である。このようなアルキレンオキシドとしてはプロピレンオキシド(PO)、エチレンオキシド(EO)等が挙げられ、これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
また、上記ポリエーテルポリオールとしては、上記POの単独重合体、上記EOの単独重合体、及びPOとEOとを共重合して得られたポリエーテルポリオールを用いることができる。なお、共重合は、ランダム共重合であっても、ブロック共重合であってもよい。
重合開始剤としては、例えばペンタエリスリトール、グリセリン、エチレンジアミン、マンニッヒ、トリレンジアミン、シュークロース等が挙げられる。これら重合開始剤についても1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0011】
ポリオールとしては、ウレタン発泡の反応速度、及び発泡体の力学特性の両立の観点から、全ポリオールにおける水酸基価が20〜1000、好ましくは100〜700であり、かつ全ポリオールにおける数平均分子量が200〜12000、好ましくは200〜1000であるポリオールを含むことが好適である。なお、本発明において数平均分子量とはGPC法によりポリスチレン換算値として算出した値であり、水酸基価とはJIS K1557に準拠して測定した値である。
上記ポリオールのうちポリエステルポリオールを用いて製造されたウレタンフォームは、他のポリオールを用いたウレタンフォームと比較して、スパッタリング時に真空度が低下することが多い。その理由は、界面活性剤として蒸気圧の低いものを用いていることや、触媒として非反応型のものを用いていることが多いためであると推察される。すなわち、ポリエステルポリオールを用いた場合、発泡時にエステル結合によって粘性が高くなる。このため、粘性が過剰に高くなることを防止するために、比較的数平均分子量が低く蒸気圧の低い界面活性剤を用いることが多く、この界面活性剤がスパッタリング時に揮発するためであると推察される。また、非反応型触媒は、反応型触媒と比べて、スパッタリング時に揮発し易いためであると推察される。したがって本発明は、ポリオールとしてポリエステルポリオールを用いた場合に特に有用である。
【0012】
(イソシアネート)
イソシアネート成分としては、公知の各種多官能性の脂肪族、脂環族および芳香族のイソシアネートを用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリフェニルジイソシアネート、キシレンジイソシアネート(XDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、オルトトルイジンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等を挙げることができ、これらは1種を単独で、又は2種以上を併用しても良い。
【0013】
ここで、上記イソシアネート発泡原液中に占める割合としては、イソシアネート当量(発泡原液中の活性水素量(モル)を100とした時の、発泡原液中のイソシアネ−ト基のモル比)値として、80〜125の範囲が好ましい。イソシアネート当量が80以上であると、発泡及び硬化が良好に行われ、125以下であると低密度化が実現できる。以上の観点から、イソシアネート当量は、95〜115の範囲がより好ましい。
【0014】
(発泡剤)
発泡剤としては、水、フロン、ペンタン等が挙げられるが、好ましくは水である。ポリオール100質量部に対する水の割合は、0.80〜4.80質量部であることが好ましい。水の含有量が0.80質量部以上であると発泡倍率が高くなり、4.80質量部以下であるとウレタンフォームの寸法安定性が良好となる。この観点から、水の割合は、3.20〜4.30であることがより好ましい。メチレンクロライド、モノフッ化トリ塩化メタンなどの低沸点の化合物を水と併用することも可能である。
【0015】
(界面活性剤)
本発明では、界面活性剤の100℃における蒸気圧が1Pa未満であることを必須とする。界面活性剤の100℃における蒸気圧が1Pa未満であると、1Pa程度の真空下でウレタンフォームの表面に金属のスパッタリングを行う際に、ウレタンフォーム内の界面活性剤が蒸発して真空度が低下することが防止され、スパッタリングを良好に行うことができる。この観点から、界面活性剤の100℃における蒸気圧は、好ましくは1Pa未満であり、より好ましくは0.8Pa未満である。
この界面活性剤の材料は、上記蒸気圧の条件を満たすものであれば特に制限はなく、従来公知の有機シリコーン系界面活性剤が好適に使用される。この有機シリコーン系界面活性剤としては、好ましくは、ポリエーテル変性シリコーン、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0016】
この界面活性剤の数平均分子量は、3000〜9000であることが好ましい。3000以上であると、スパッタリング時に界面活性剤が蒸発して真空度が低下することがより防止され、スパッタリングを良好に行うことができる。9000以下であると、ウレタンの発泡膜が強固になり、連通化し難い。この観点から、界面活性剤の数平均分子量は、より好ましくは4000〜8000であり、更に好ましくは5000〜8000である。
上記界面活性剤の配合量は、ポリオール100質量部に対して0.2〜4質量部であることが好ましい。0.2質量部以上であると、十分な整泡力が得られるとともに、低密度のウレタンフォームを得ることができる。4質量部以下であると、界面活性剤の蒸発による真空度の低下がより防止されるとともに、界面活性剤が他の成分に対して占める割合が多くなりすぎず、ウレタンフォーム形成時の反応性の低下を防ぐことができる。この観点から、界面活性剤はポリオール100質量部に対して、0.2〜4.0質量部の範囲であることが好ましく、0.5〜2.0質量部の範囲であることがさらに好ましい。
【0017】
(酸化防止剤)
酸化防止剤は、スパッタリング時に真空度の低下の原因となるため、発泡原液中に含まないことが好ましい。
酸化防止剤を含む場合には、酸化防止剤の100℃における蒸気圧が1Pa未満であることが好ましい。酸化防止剤の100℃における蒸気圧が1Pa未満であると、1Pa程度の真空下でウレタンフォームの表面に金属のスパッタリングを行う際に、ウレタンフォーム内の酸化防止剤が蒸発して真空度が低下することが防止され、スパッタリングを良好に行うことができる。この観点から、酸化防止剤の100℃における蒸気圧は、好ましくは1Pa未満であり、より好ましくは0.8Pa未満である。
酸化防止剤の数平均分子量は、1000以上であることが好ましい。1000以上であると、スパッタリング時の蒸発量が抑制され、真空度が低下することが抑制される。この観点から、酸化防止剤の数平均分子量は、好ましくは1000以上であり、より好ましくは3000以上である。
上記酸化防止剤の配合量は、ポリオール100質量部に対して0.30質量部未満であることが好ましい。ただし、0.05質量部以上であると、ウレタンフォームの発泡熱によりフォームブロック内部の酸化が良好に防止される。0.10質量部以下であると、酸化防止剤の蒸発による真空度の低下がより防止されるとともに、酸化防止剤が他の成分に対して占める割合が多くなりすぎず、ウレタンフォーム形成時の反応性の低下を防ぐことができる。この観点から、酸化防止剤はポリオール100質量部に対して、0.30質量部未満であることが好ましく、0.1質量部未満であることがさらに好ましい。
この酸化防止剤は、ポリオールの合成時に添加されたものであってもよく、ポリオール合成後に添加されたものであってもよい。
【0018】
前記酸化防止剤の種類としては、ポリエーテルポリオール合成およびポリウレタンフォーム製造に対して汎用的に使用可能な、例えば2,6−ジ−tert−ブチルー4−メチルフェノール(BHT)(数平均分子量:220)、カルシウムジエチルビスIII3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル[メチル]ホスホネート(数平均分子量:695)、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−O−クレゾール(数平均分子量424.7)、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート](数平均分子量:586.8)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](数平均分子量:1178)、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](数平均分子量:643)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(数平均分子量:531)、N,N'−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)](数平均分子量:637)等のヒンダードフェノール系物質が好適であり、該ヒンダードフェノール系物質以外には、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤またはヒンダードアミン系酸化防止剤が挙げられる。
【0019】
(触媒)
発泡原液は、触媒を含んでいてもよい。触媒の配合量は、ポリオール100質量部に対して0〜5質量部以下であることが好ましい。ただし、触媒活性により配合量は決定されるため、十分な反応活性があり、発泡が十分に行われる量を適宜添加すればよい。
【0020】
触媒としては、例えば、有機酸金属スズ系触媒、アミン系触媒等が用いられる。これら有機酸金属スズ系触媒とアミン系触媒の両方を用いてもよい。
【0021】
有機酸金属スズ系触媒としては、スタナスオクトエート、ジブチルチンジアセテートまたはジブチルチンジラウレート等が挙げられる。添加量については、生成するウレタンフォームの樹脂化速度と発泡速度のバランスにより、適宜調整するのが好ましい。
【0022】
上記アミン系触媒の100℃における蒸気圧は、1Pa未満であることが好ましい。この蒸気圧が1Pa未満であると、1Pa程度の真空下でウレタンフォームの表面に金属のスパッタリングを行う際に、ウレタンフォーム内のアミン系触媒が蒸発して真空度が低下することが防止され、スパッタリングを良好に行うことができる。この観点から、アミン系触媒の100℃における蒸気圧は、好ましくは1Pa未満であり、より好ましくは0.9Pa未満である。
また、蒸気圧が高い低沸点化合物であっても、発泡時の発熱によりその大半が揮発すれば、残存するアミン系触媒が真空時に揮発することが抑制されるべく、その添加量を必要最小限に留めることが好ましい。
また、残存するアミン系触媒量を低減するためには、発泡硬化後のウレタンフォームに対して、発泡膜の除膜を行うことが好ましい。この発泡膜の除膜時に、ウレタンフォーム内に残存する上記触媒が良好に揮散する。このように発泡膜を除去したオ−プンセルフォ−ム(三次元網状化フォ−ム)は、例えばアルカリ水溶液に浸漬する方法、又は爆発法により製造することができる。
ここで、アミン経系触媒には、反応型アミン系触媒と、活性水素基を有するような反応型アミン系触媒とが挙げられる。反応型アミン系触媒は反応によりウレタンフォーム内に固定されて揮発し難いため、非反応型アミン系触媒よりも反応型アミン系触媒の方が好ましい。
【0023】
この非反応型アミン系触媒としては、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチルモルフォリン、N−エチルモルフォリン、N−ジメチルベンジルアミン等の非反応型モノアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビスジメチルアミノエチルエーテル、テトラメチルプロパンジアミン、ジメチルアミノエチルモルフォリン、テトラメチルエチレンジアミン、ジアゾビシクロウンデセン、2−メチル−1,4−ジアゾ(2,2,2)ビシクロオクタン等の非反応型ジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン等の非反応型トリアミン等が挙げられる。
【0024】
この反応型アミン系触媒としては、ジメチルエタノールアミン、N−トリオキシエチレン−N,N−ジメチルアミン、N,N−ジメチル−N−ヘキサノールアミン等の他、N,N−ジメチルアミノエタノール、エトキシド水酸化アミン、N,N−テトラメチル−1,3−ジアミノ−2−プロパノール、N,N,N'−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N,N−トリメチルアミノプロピルエタノルアミン、N−メチルN'−(2−ヒドロキシル)モルフォリン、1−(2−ヒドロキシプロピル)イミダソール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)−フェノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−2−メチルピペラジン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0025】
また、発泡原料液には、必要に応じて、架橋剤、充填剤などを適宜配合することができる。
【0026】
(メタルフォーム用基材ウレタンフォームの製造方法)
上記発泡原液を用いてメタルフォーム用基材ウレタンフォームを製造する方法は、特に限定されるものではなく、常法により製造することができる。例えば、上記イソシアネート以外の各成分よりなるポリオール組成物を調製し、その後イソシアネートと混合することで製造される。
このポリオール組成物の調製は、水と触媒とをなるべく接触させないとの観点から、上記ポリオールに対して、上記触媒を配合し、次いで上記整泡剤及びその他の成分を配合し、最後に発泡成分である上記水を配合することが好適である。
【0027】
(電極の製造方法)
上記メタルフォーム用基材ウレタンフォームを用いて電極を製造する方法は、特に限定されるものではない。
例えば、メタルフォーム用基材ウレタンフォームに金属材料をスパッタリングすることにより電極を製造することができる。
また、表面に導電処理を行う工程(導電処理工程)と、金属を電気めっきで付着させる工程(電気めっき工程)とを実施することにより、電極を製造することができる。また、この電気めっき工程の後に、熱処理によりウレタンフォームを燃焼除去する工程(焙焼工程)を行うことが好ましい。この焙焼工程後に、さらに金属を還元・アニールする工程を行ってもよい。これらの工程は、公知の方法を用いて行うことができ、例えば導電処理工程は、真空蒸着、化学めっき、カーボン等の導電性材料の塗布などにより行うことができる。
【0028】
これらの電極の製造方法のうち、スパッタリングや真空蒸着のように、メタルフォーム用基材ウレタンフォームを真空下に保持する工程を含む方法において、本発明のメタルフォーム用基材ウレタンフォームは有効に使用される。すなわち、本発明のメタルフォーム用基材ウレタンフォームは、真空下におけるガスの発生が防止されるため、ウレタンフォームの表面にスパッタリングや真空蒸着によって良好に金属皮膜を形成することができる。
このメタルフォーム用基材ウレタンフォームの表面に被覆させる金属としては、Ni、Cu、Fe等が好ましい。
【実施例】
【0029】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、原料として以下のものを用いた。
(ポリオール)
ポリエステルポリオール「エディフォームE−522」(花王(株)社製)、数平均分子量2200
(イソシアネート)
TDI系イソシアネート(2,4−TDI:2,6−TDI=80:20(質量比))「T80」(三井化学ポリウレタン社製)、数平均分子量174.2
(発泡剤)

(界面活性剤)
数平均分子量6000のポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンA「商品名 SILBYK9100」(BYKCHEMIE社製)、数平均分子量6000、100℃における蒸気圧0.3Pa
N−エチルモルフォリン「商品名 カオーライザーNo.22」(花王(株)社製)、分子量115.17、100℃における蒸気圧100Pa超
スタナスオクトエイト「商品名ニッカオクチックス錫28%」(日本化学産業(株)社製)、分子量405.12、100℃における蒸気圧100Pa超
(酸化防止剤)未添加
【0030】
実施例1
(メタルフォーム用基材ウレタンフォームの製造)
酸化防止剤無添加のポリエステルポリオール100質量部に対し、TDI系イソシアネート41.4質量部、水3.2質量部、N−エチルモルフォリン0.8質量部、スタナスオクトエイト0.01質量部を加え、さらに界面活性剤として、数平均分子量6000のポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンA1.0質量部を添加し、発泡硬化させてブロック状のウレタンフォーム700(H)×700(W)×1100(L)(mm)を作製した。
得られたウレタンフォームを爆発処理して発泡膜の除去を行い、厚さ1.4mmにピーリング裁断し、200m超のロール状のメタルフォーム用基材ウレタンフォームを製造した。
【0031】
(メタルフォームの製造)
マグネトロンスパッタリング装置を用いて、ロール状のメタルフォーム用基材ウレタンフォームの表面に連続的にニッケルスパッタリングを実施することにより、メタルフォームを製造した。すなわち、装置内にロール状のメタルフォーム基材用ウレタンフォームをセットし、1Pa未満に減圧した状態で、Ar分圧が0.2Paになるように流量調整し、ロール状のメタルフォーム基材ウレタンフォームを送り出し速度3.7m/sにて送り出しながらニッケルターゲットをスパッタした。
その結果、真空度の低下はならびに、ターゲット表面の黒変は確認されず、安定したスパッタリングを実施することが出来た。JIS K7194に準拠して四探針法により抵抗を測定した。この値を1とし、実施例2及び比較例1,2と比較するための指標とした。その結果を表1に示す。
【0032】
実施例2
(メタルフォーム用基材ウレタンフォームの製造)
酸化防止剤無添加のポリエステルポリオール100質量部に代えて、酸化防止剤としてBHT3000ppmを添加したポリエステルポリオール100質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にしてメタルフォーム用基材ウレタンフォームを製造した。
(電極の製造)
得られたメタルフォーム基材用ウレタンフォームについて、実施例1と同様の方法で、メタルフォームの製造を行った。その結果、真空度の低下ならびに、ターゲット表面の黒変は確認されなかった。JIS K7194に準拠して四探針法により抵抗を測定し、実施例1との比を計算した結果を表1に示す。
【0033】
比較例1
(メタルフォーム用基材ウレタンフォームの製造)
酸化防止剤としてBHT3000ppmを添加したポリエステルポリオール100質量部に対し、TDI系イソシアネート41.4質量部、水3.2質量部、N−エチルモルフォリン0.8質量部、スタナスオクトエイト0.01質量部を加え、さらに界面活性剤として数平均分子量1500のポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンB0.8質量部及び数平均分子量600の有機界面活性剤C1.0質量部を添加し、発泡硬化させてブロック状のウレタンフォーム700(H)×700(W)×1100(L)(mm)を作製した。
得られたウレタンフォームを爆発処理して発泡膜の除去を行い、厚さ1.4mmにピーリング裁断し、200m超のロール状のメタルフォーム用基材ウレタンフォームを製造した。
【0034】
(電極の製造)
得られたメタルフォーム用基材ウレタンフォームについて、実施例1と同様の方法で、メタルフォームの製造を行った。
その結果、真空度が1.3Pa程度に低下したため、真空度ならびにAr分圧の再調整を行う必要に迫られるとともに、ターゲット表面が揮発物質により汚染され、スパッタリング効率が悪化した。その結果、2回スパッタ処理を実施しなければ、基材ウレタン上に未着部分なく、十分なニッケル皮膜を形成させることが出来なかった。また、こうして得られたメタルフォームの電気抵抗は表1に記載の通り、良品(実施例1)対比35%の導電抵抗値の上昇を生じてしまった。
【0035】
比較例2
(メタルフォーム用基材ウレタンフォームの製造)
酸化防止剤としてBHT3000ppmを添加したポリエステルポリオール100質量部に代えて、酸化防止剤無添加のポリエステルポリオール100質量部を用いたこと以外は比較例1と同様にしてメタルフォーム用基材ウレタンフォームを製造した。
(電極の製造)
得られたメタルフォーム用基材ウレタンフォームについて、実施例1と同様の方法で、電極の製造を行った。
その結果、真空度の低下が生じたが、送り出し速度を0.9m/s程度で、保持したところ、ターゲット表面が黒色に変化したことに加え、得られたメタルフォームの電気抵抗値は良品(実施例1)対比500%以上の上昇を生じ、また、メタルフォーム上には部分的に未着部分やピンホールが生じていた。
【0036】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のメタルフォーム用基材ウレタンフォームは、電池用電極などの、高い電流密度及び高い容量特性を有する多孔質電極の母材として好適に用いられる。特に、真空下における揮発が抑制されるため、スパッタリングや真空蒸着により形成される電極の母材として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、イソシアネート、発泡剤、及び界面活性剤を含む発泡原液を発泡硬化してなるメタルフォーム用基材ウレタンフォームであって、
前記界面活性剤は、100℃における蒸気圧が1Pa未満であるメタルフォーム用基材ウレタンフォーム。
【請求項2】
前記界面活性剤の数平均分子量が4000〜8000である請求項1に記載のメタルフォーム用基材ウレタンフォーム。
【請求項3】
前記ポリオールは酸化防止剤を含まない請求項1又は2に記載のメタルフォーム用基材ウレタンフォーム。
【請求項4】
前記界面活性剤は、前記ポリオール100質量部に対して0.2〜4.0質量部である請求項1〜3に記載のメタルフォーム用基材ウレタンフォーム。
【請求項5】
前記界面活性剤は、前記ポリオール100質量部に対して0.5〜2.0質量部である請求項1〜3に記載のメタルフォーム用基材ウレタンフォーム。

【公開番号】特開2012−214654(P2012−214654A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81789(P2011−81789)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】