説明

メタロセン錯体、およびそれを含む重合触媒組成物

【課題】 新たなメタロセン錯体、およびそれを含む重合触媒組成物、特に共役ジエンを1,4−シス選択的に、かつ収率よく重合させるための触媒組成物を提供する。
【解決手段】 例えば下記一般式(I)で示される金属としてガドリニウム等のランタノイドを含有するメタロセン錯体、およびそれを含む重合触媒組成物。


(式中Cpは置換していてもよいシクロペンタジエニルを、R〜Rはアルキル基、Lは中性のルイス塩基、wは0〜3の整数を表わす)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタロセン錯体、およびそれを含む重合触媒組成物、ならびにそれを用いて付加重合体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタロセン錯体は、種々の重合反応の触媒成分の一つとして利用されている化合物であり、一つまたは二つ以上のシクロペンタジエニルまたはその誘導体が中心金属に結合した錯体化合物である。特に、中心金属に結合したシクロペンタジエニルまたはその誘導体が1つであるメタロセン錯体を、ハーフメタロセン錯体と称することがある。
【0003】
中心金属がガドリニウムGdであるメタロセン錯体については、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ガドリニウムボレートや、ジメチルアルミニウム(μ−ジメチル)ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ガドリニウムなどが知られており、これらは重合触媒組成物の成分として用いられることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、ビス(トリメチルシリル)アミド配位子を有するランタノイドメタロセン錯体は、中心金属をセリウムCeとするもの(非特許文献1参照);中心金属をイットリウムY,ランタンLa,セリウムCeとするもの(非特許文献2参照);中心金属をネオジムNd,サマリウムSm,イッテリビウムYbとするもの(非特許文献3参照)が知られている。
これらのビストリメチルシリルアミド配位子を有するランタノイドメタロセン錯体は、いずれもテトラメチルシクロペンタジエン配位子を有する。
【0005】
一方、共役ジエンの重合のための重合触媒については、従来から数多くの提案がなされている。
例えば、ネオジム化合物と有機アルミニウム化合物を主成分とする複合触媒系を用いて、高シス1,4−結合共役ジエン重合体が得られることが知られており、これらの一部はブタジエンの重合触媒系として工業的に用いられている(例えば、非特許文献4および5参照)。
また、前述のジメチルアルミニウム(μ−ジメチル)ビス(シクロペンタジエニル)ガドリニウムなどを含む触媒系を用いて高シス1,4−結合共役ジエン重合体が得られることも報告されている(特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、ミクロ構造におけるシス1,4−構造の含有率が高く、高分子量かつ分子量分布がシャープな共役ジエン重合体をさらに効率的に製造する方法が求められ、そのための重合触媒の開発が求められている。
【特許文献1】特開2004−27179号公報
【非特許文献1】Orgnometallics 1989, 8, 2637-2646
【非特許文献2】Journal of Organometallic Chemistry, 364 (1989) 79-86.
【非特許文献3】Inorg. Chem. 1981, 20, 3267-3270
【非特許文献4】Macromolecules, 15, 230, 1982.
【非特許文献5】Makromol. Chem., 94, 119, 1981.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、新たなメタロセン錯体を提供すること、およびそれを用いて新たな重合触媒反応を提供することである。特に、共役ジエンをシス1,4−選択的に、かつ収率よく重合させるための触媒組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の第一は、以下に示されるメタロセン錯体に関する。
[1] 下記一般式(I)で示されるメタロセン錯体。
【0009】
【化1】

【0010】
(一般式(I)において、
Mは、ガドリニウムGdを示し、
CpRは、それぞれ独立して無置換もしくは置換シクロペンタジエニルを示し、
a〜Rfは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基を示し、
Lは、中性ルイス塩基を示し、
wは、0〜3の整数を示す。)
【0011】
[2] 下記一般式(II)で示されるメタロセン錯体。
【0012】
【化2】

【0013】
(一般式(II)において、
Mは、ガドリニウムGdを示し、
CpRは、無置換もしくは置換シクロペンタジエニルを示し、
a〜Rlは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基を示し、
Lは、中性ルイス塩基を示し、
wは0〜3の整数を示す。)
【0014】
[3] 下記一般式(III)で示されるメタロセン錯体。
【0015】
【化3】

【0016】
(一般式(III)において、
Mは、ランタノイド元素を示し、
Cpは、シクロペンタジエニルを示し、
a〜Rfは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基を示し、
Lは、中性ルイス塩基を示し、
wは、0〜3の整数を示す。)
【0017】
本発明の第二は、以下に示される重合触媒組成物に関する。
[4] [1]〜[3]のいずれかに記載のメタロセン錯体を含む、重合触媒組成物。
[5] 共役ジエンを重合するための、[4]に記載の重合触媒組成物。
[6] アルミノキサンをさらに含む、[4]または[5]に記載の重合触媒組成物。
[7] 有機アルミニウム化合物およびイオン性化合物をさらに含む、[4]または[5]に記載の重合触媒組成物。
【0018】
本発明の第三は、以下に示される付加重合体の製造方法に関する。
[8] [4]〜[7]のいずれかに記載の重合触媒組成物存在下で、付加重合性単量体を重合させるステップを含む、付加重合体を製造する方法。
[9] 前記付加重合性単量体が共役ジエンであって、前記付加重合体が共役ジエン重合体である、[8]に記載の方法。
[10] 前記付加重合性単量体が1,3−ブタジエンであって、前記付加重合体がブタジエン重合体である、[8]に記載の方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明のメタロセン錯体は、例えば重合触媒として用いられることができ、それにより新しい重合反応を提供する。好ましくは本発明のメタロセン錯体を共役ジエンの重合触媒として用いることで、ミクロ構造におけるシス1,4−含有率の高いジエン重合体を収率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<本発明のメタロセン錯体>
本発明のメタロセン錯体の第一は下記式(I)で示され、中心金属MがガドリニウムGdであることを特徴とし、二つのシクロペンタジエニルまたはその誘導体配位子CpR、および一つのビス(トリアルキルシリル)アミド配位子[-N(SiR3)2]を含む。
本発明のメタロセン錯体の第二は下記式(II)で示され、中心金属MがガドリニウムGdであることを特徴とし、一つのシクロペンタジエニルまたはその誘導体配位子CpR、および二つのビス(トリアルキルシリル)アミド配位子[-N(SiR3)2]を含む。
本発明のメタロセン錯体の第二は下記式(III)で示され、中心金属Mがランタノイド元素であって、一つのシクロペンタジエニル配位子Cp、二つのビス(トリアルキルシリル)アミド配位子[-N(SiR3)2]を含む。
本発明のメタロセン錯体はいずれも、さらに中性配位子、例えばルイス塩基Lを含んでいてもよい。
【0021】
【化4】

【0022】
一般式(I)および(II)におけるCpRは、無置換シクロペンタジエニルまたは置換シクロペンタジエニルであることを特徴とする。CpRの例には、1)シクロペンタジエニル環を基本骨格とするもの、2)シクロペンタジエニルを含む縮合環(インデニル環、フルオレニル環など)を基本骨格とするものが含まれる。
【0023】
シクロペンタジエニル環を基本骨格とするCpRは、C55-XXで示される。ここでXは0〜5の整数を示す。Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基;メタロイド基であることが好ましい。
前記ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜8であることがさらに好ましい。また、前記ヒドロカルビル基の好ましい具体例には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基などが含まれる。
前記メタロイド基のメタロイドの例には、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが含まれる。またメタロイド基は、ヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は、前記したヒドロカルビル基と同様である。前記メタロイド基の具体例には、トリメチルシリル基が含まれる。
【0024】
シクロペンタジエニル環を基本骨格とするCpRとして、具体的には以下のものが例示される。
【0025】
【化5】

【0026】
インデニル環を基本骨格とするCpRは、C97-XXまたはC911-XXで示され得る。ここでRは、前述したシクロペンタジエニル環のRと同様であり、Xは0〜7または0〜11の整数である。
フロオレニル環を基本骨格とするCpRは、C139-XXまたはC1317-XXで示され得る。ここでRは、前述したシクロペンタジエニル環のRと同様であり、Xは0〜9または0〜17の整数である。
【0027】
一般式(I)における二つのCpRは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
また、一般式(III)におけるCpは、シクロペンタジエニル配位子C55を示す。
【0028】
一般式(I)又は(II)における中心金属Mは、ガドリニウムGdであることを特徴とする。
【0029】
一般式(III)における中心金属Mは、ランタノイド元素であることを特徴とする。ランタノイド元素には原子番号57〜71の15元素が含まれ、特に限定されない。中心金属Mの好ましい例には、サマリウムSm、ネオジムNd、プラセオジムPr、ガドリニウムGdが含まれる。
【0030】
一般式(I),(II)または(III)で示される本発明のメタロセン錯体は、ビストリアルキルシリルアミド[-N(SiR3)2]配位子を含むことを特徴とする。ビストリアルキルシリルアミドに含まれるアルキルR(一般式(I)におけるRa〜Rf、または(II)もしくは(III)におけるRa〜Rl)は、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキルであり、メチルであることが好ましい。
【0031】
さらに本発明のメタロセン錯体には、0〜3個(好ましくは0〜1個)の中性ルイス塩基Lが含まれていてもよい。中性ルイス塩基の例には、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウムなどが含まれる。複数の中性ルイス塩基Lが含まれる場合には、それぞれのLは同一でも異なっていてもよい。
【0032】
本発明のメタロセン錯体は、一般式(I),(II)または(III)で示されたように単量体として存在していてもよく、二量体、またはそれ以上の多量体として存在していても構わない。
【0033】
本発明のメタロセン錯体は、例えば以下に示す手順により製造される。
一般式(I)で示される錯体は、溶媒中でビス(シクロペンタジエニル誘導体)ガドリニウムハライドを、ビス(トリアルキルシリル)アミドの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)と反応させることで得ることができる。
反応温度は室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また反応時間は任意であるが、数時間〜数十時間程度である。反応溶媒は特に限定されないが、原料および生成物を溶解する溶媒であることが好ましく、例えばトルエンを用いればよい。
以下に、一般式(I)で示される錯体を得るための反応例を示す。
【0034】
【化6】

【0035】
一般式(II)で示される錯体は、溶媒中でトリハロガドリニウムを、一当量のシクロペンタジエン誘導体の塩(例えばナトリウム塩)、および二当量のビス(トリメチルシリル)アミドの塩と反応させることで得ることができる。ここで、トリハロガドリニウムは、シクロペンタジエン誘導体の塩と、ビス(トリメチルシリル)アミドの塩とを段階的に反応されることが好ましい。例えばシクロペンタジエン誘導体の塩を反応させた後、ビス(トリメチルシリル)アミドの塩を反応させることができる。ただし、トリハロガドリニウムとシクロペンタジエン誘導体の塩との反応生成物を中間体として単離する必要はなく、反応系中でシクロペンタジエン誘導体の塩とビス(トリメチルシリル)アミドの塩を、ガドリニウム錯体に連続的に反応させることができる。
反応温度は室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また、反応温度は任意であるが、数時間〜数十時間程度である。
以下に、一般式(II)で示される錯体を得るための反応例を示す。
【0036】
【化7】

【0037】
一般式(III)で示される錯体は、一般式(II)で示される錯体の製造において、トリハロガドリニウムをトリハロランタノイドとして、かつシクロペンタジエン誘導体の塩をシクロペンタジエンの塩とすることで製造することができる。
【0038】
一般式(I)及び(II)で示される本発明のメタロセン錯体の構造は、X線構造解析により決定することが好ましい。ガドリニウム錯体は、常磁性化合物であるため、X線構造解析以外の手段で同定できないことがある。
[(C5Me5)2GdN(SiMe3)2]のX線結晶構造解析の結果を示すORTEP図、および[(C5Me5)Gd[N(SiMe3)2]2](thf)のX線結晶構造解析の結果を示すORTEP図を、それぞれ図1および図2に示す。
一般式(III)で示される本発明のメタロセン錯体の構造は、X線構造解析のほか、1H-NMRスペクトルの分析、IRスペクトル解析、元素分析などにより決定することができる。
【0039】
本発明のメタロセン錯体は種々の分野に適用されうるが、例えば重合触媒組成物の成分として用いられることができる。
【0040】
<本発明の重合触媒組成物>
本発明の重合触媒組成物は、前述のメタロセン錯体(一般式(I),(II)又は(III)で示される)を含むことを特徴とするが、さらに、通常のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物に含有される他の成分、例えば助触媒などを含むことが好ましい。
【0041】
前述の通り、本発明の重合触媒組成物は、メタロセン錯体以外の任意の成分を含むことができ、例えば助触媒を含むことが好ましい。助触媒は、通常のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物の助触媒として用いられている成分から任意に選択されうる。
好ましい助触媒の例には、1)アルミノキサン、および2)有機アルミニウム化合物とイオン性化合物の組み合わせが含まれる。
【0042】
アルミノキサンはアルキルアルミノキサンであることが好ましく、アルキルアルミノキサンの例には、メチルアルミノキサン(MAO)、修飾メチルアルミノキサンなどが含まれる。また、修飾メチルアルミノキサンの好ましい例には、MMAO−3A(東ソーファインケム社製)が含まれる。
【0043】
本発明の重合触媒組成物におけるアルミノキサンの含有量は、メタロセン錯体の中心金属元素Mと、アルミノキサンのアルミニウム元素Alの元素比率Al/Mが、10〜1000程度(好ましくは100程度)となるようにすることが好ましい。
【0044】
一方、有機アルミニウム化合物の例には、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムクロライド、アルキルアルミニウムジクロライド、ジアルキルアルミニウムハイドライドなどが含まれる。好ましくはトリアルキルアルミニウムであり、トリアルキルアルミニウムの例には、トリエチルアルミニウム、およびトリイソブチルアルミニウムなどが含まれる。
【0045】
本発明の重合触媒組成物に含まれ得るイオン性化合物は、非配位性アニオンとカチオンからなることが好ましい。
イオン性化合物の構成成分である非配位性アニオンの例には、4価のホウ素アニオンが含まれる。4価のホウ素アニオンの例には、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル,ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル),フェニル]ボレート、トリデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレートなどが含まれる。好ましくはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
【0046】
イオン性化合物の構成成分であるカチオンの例には、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アミンカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが含まれる。
カルボニウムカチオンの例には、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンが含まれる。トリ置換フェニルカルボニウムカチオンの例には、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオンなどが含まれる。
アミンカチオンの例には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N-ジメチルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチルアンモニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアンモニウムカチオンなどのN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが含まれる。
ホスホニウムカチオンの例には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンが含まれる。
これらのカチオンのうち、アニリニウムカチオンまたはカルボニウムカチオンが好ましく、アニリニウムカチオンが特に好ましい。
【0047】
すなわち、本発明の触媒組成物に含まれるイオン性化合物は、前記した非配位性アニオンおよびカチオンからそれぞれ選ばれるものを組み合わせたものである。
好ましくは、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレー
ト、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが含まれる。
【0048】
本発明の重合触媒組成物における有機アルミニウム化合物の含有量は、メタロセン錯体に対して1〜50倍モルであることが好ましく、約10倍モルであることがより好ましい。
また、本発明の重合触媒組成物におけるイオン性化合物の含有量は、メタロセン錯体に対して0.1〜10倍モルであることが好ましく、約1倍モルであることがより好ましい。
【0049】
本発明の重合触媒組成物は、付加重合性のある任意の単量体の重合反応系に提供される。例えば、1)各構成成分(メタロセン錯体および助触媒など)を含む組成物を重合反応系中に提供してもよく、2)各構成成分を別個に重合反応系中に提供し、反応系中において組成物としてもよい。
上記1)において「組成物を提供する」とは、助触媒によって活性化されたメタロセン錯体(活性種)を提供することを含む。
【0050】
本発明の重合触媒組成物を用いて重合される単量体の例には、オレフィン系モノマー、エポキシ系モノマー、イソシアネート系モノマー、ラクトン系モノマー、ラクチド系モノマー、環状カーボネート系モノマー、アルキン系モノマーなどが含まれる。
オレフィン系モノマーの例には、α−オレフィン、スチレン、エチレン、ジエン、環状オレフィンなどが含まれる。さらにジエンの例には、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−メチルペンタジエン、4−メチルペンタジエン及び2,4−ヘキサジエンなどの共役ジエンが含まれる。より好ましい共役ジエンは1,3−ブタジエンである。
【0051】
本発明の触媒組成物に含まれるメタロセン錯体(一般式(I),(II)又は(III)で示される)は、その触媒の用途に応じて選択される。例えば、共役ジエン重合用触媒として用いられる場合には、中心金属MがGdであるメタロセン錯体を用いることで、1)触媒活性を上げることができ、かつ2)得られるポリジエンのシス含量を上げることができる。
【0052】
また、共役ジエン重合用触媒として用いる場合には、シクロペンタジエニル誘導体CpR上の置換基の立体的な大きさを調整することにより、1)触媒活性、および2)得られるポリジエンのシス−1,4含量を制御することができる。すなわち、CpR上の置換基を立体的に小さくする(例えば、CpRを無置換のシクロペンタジエニルとする)ことにより、得られるポリジエンのシス1,4−含有率が高くなる傾向がある。一方、CpR上の置換基を立体的に大きくする(例えば、CpRをテトラメチルエチルシクロペンタジエニルとする)ことにより、短時間の反応で収率よくポリジエンを得ることができる傾向がある。
【0053】
さらに、共役ジエン重合用触媒として用いられる場合には、一般式(I),(II)又は(III)で示されるメタロセン錯体をそれぞれ、適切な助触媒と組み合わせることで、1)重合触媒組成物の触媒活性の調整、2)得られるポリジエンのシス含量を上げることができる。以下、触媒組成物に含まれる一般式(I),(II)又は(III)で示されるメタロセン錯体と助触媒との関係についてそれぞれ説明する。
【0054】
<一般式(I)で示されるメタロセン錯体を含む触媒組成物>
一般式(I)で示されるメタロセン錯体を、共役ジエン重合用触媒組成物の成分として用いる場合には、助触媒をアルミノキサンとすることで、得られるポリジエンの数平均分
子量が高くなる傾向がある。
【0055】
<一般式(II)または(III)で示されるメタロセン錯体を含む触媒組成物>
一般式(II)で示されるメタロセン錯体を、共役ジエン重合用触媒組成物の成分として用いる場合には、助触媒をアルミノキサンとすることで、得られるポリジエンの数平均分子量が高くなる傾向があり;助触媒として有機アルミニウム化合物とイオン性化合物の組み合わせを用いることで、ポリジエンのシス1,4-含量を高めることができる場合がある。特に、中心金属MをGd、CpRを無置換シクロペンタジエニルCpとした場合に、得られるポリジエンのシス1,4-含量が高くなる。
ただし、これらの傾向は、反応条件の違いによって必ずしも当てはまらないこともある。
【0056】
本発明の重合触媒組成物は、ホモ重合反応だけでなく、共重合反応における重合触媒組成物として用いられる。
【0057】
<本発明の付加重合体の製造方法>
本発明の付加重合体の製造方法は、付加重合性を有する任意の単量体を、前述の触媒組成物存在下で付加重合させるステップを含むことを特徴とする。また、本発明の製造方法は、重合触媒として本発明の触媒組成物を用いること以外は、従来の、配位イオン重合触媒を用いる付加重合反応による付加重合体の製造方法と同様とすることができる。つまり、本発明の付加重合体の製造方法は、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法などの任意の方法を用いることができる。
溶液重合法を用いる場合、用いられる溶媒は重合反応において不活性であり、重合単量体および触媒組成物を溶解するものであれば特に制限されない。用いられる溶媒の量は任意であるが、重合触媒に含まれる錯体の濃度を0.1〜0.0001mol/lとする量であることが好ましい。
【0058】
本発明の付加重合体の製造方法において、単量体の量に対する触媒組成物の使用量は、通常のメタロセン錯体を含有する触媒組成物と同様の使用量とすればよい。
【0059】
本発明の付加重合体の製造方法によれば、単独重合体はもちろん、ランダム共重合体、または交互共重合体、ブロック共重合体その他の定序性共重合体を製造することができる。
【0060】
以下に、本発明の製造方法による、1,3-ブタジエンからのポリブタジエンの製造手順の例を示す。
(1) 溶媒中に、本発明のメタロセン錯体、および必要に応じて助触媒を添加する。ここでメタロセン錯体は活性型に変化するものと思われる。これに、1,3−ブタジエンをさらに添加することにより、ポリブタジエンを得る。
(2) 1,3−ブタジエンを含む溶媒中に、触媒組成物の構成成分を別個に添加するか、または予め調製されて活性化されている触媒組成物を添加することにより、ポリブタジエンを得る。
いずれの手順も、不活性ガス雰囲気下において行われることが好ましい。不活性ガスの例には窒素ガスやアルゴンガスが含まれる。
【0061】
ポリブタジエンの製造においては、1,3-ブタジエンに対して、1/10000〜1/1000倍モル程度のメタロセン錯体を用いることが好ましい。
【0062】
重合反応の温度は特に制限されず、例えば−100℃〜200℃の範囲であるが、室温程度とすることができる。反応温度を上げると重合反応のシス1,4-選択性が低下するこ
とがある。
反応時間も特に制限されず、例えば1秒〜10日の範囲であるが、重合される単量体の種類や用いられる触媒の種類、反応温度などの条件によって適宜選択される。
【0063】
本発明の付加重合体の製造方法により、共役ジエン化合物から、シス1,4-含有率が高いポリジエンを製造することができる。例えば、本発明の方法によりブタジエンを重合させて製造されるポリブタジエンのシス1,4-含有率は、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上である。シス1,4-含有率は、1H-NMRおよび13C−NMRのスペクトルチャートのピークの積分比から求めることができ、その具体的な手法は特開2004−27179に記載されている。
また、本発明の方法により製造されるポリブタジエンの数平均分子量は特に限定されないが、通常は数十万〜百万程度であり、分子量分布の指標であるMw/Mnは、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。平均分子量および分子量分布Mw/Mnは、GPCによりポリスチレンを標準物質として求めることができる。
【0064】
本発明の付加重合体の製造方法により、共役ジエン化合物からポリジエンを製造する場合に、重合触媒組成物に含まれるメタロセン錯体、または助触媒の種類を適宜選択することにより、得られるポリジエンの収率、およびシス1,4-含有率を制御することができる。具体的には、前述の重合触媒組成物の説明において示された通りである。
【実施例】
【0065】
以下においいて、実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明するが、これらにより本発明の範囲が限定されることはない。
<実施例1>
メタロセン錯体の製造1
窒素雰囲気下、[(C5Me5)2GdCl2Li(thf)2] (1.95g,3mmol)のトルエン溶液40mlに、K[N(SiMe3)2] (0.60g,3mmol)(アルドリッチ社)のトルエン溶液15mlをゆっくりと滴下し、得られた溶液を室温で16時間撹拌した。
撹拌後、溶液からトルエンを減圧留去して、得られた残渣にヘキサン60mlを加え、3時間撹拌した。フィルターでろ過して、沈殿物を除去した。得られたろ液からヘキサンを減圧留去して、[(C5Me5)2GdN(SiMe3)2] (1.10g,収率62%)を黄色固体として得た。
トルエンから再結晶させて得られた単結晶をX線結晶構造解析して、構造を決定した。
【0066】
実施例1と同様にして、[(C5Me4H)2GdN(SiMe3)2]を黄緑色固体として(収率65%)、[(C5Me4Et)2GdN(SiMe3)2]を黄緑色固体として(収率67%)として、それぞれを得た。
【0067】
<実施例2>
メタロセン錯体の製造2
窒素雰囲気下、GdCl3 (0.84g,3.17mmol)のTHF溶液10mlに、Na(C5H5) (3.17mmol)のTHF溶液1.59mlをゆっくりと滴下し、得られた溶液を室温で1時間撹拌した。
撹拌後の溶液に、KN(SiMe3)2 (1.26g,6.34mmol)のTHF溶液15mlを加え、室温で14時間撹拌した。
溶液からTHFを減圧留去して得られた残渣に、ヘキサン60mlを加えた。得られた溶液をフィルターでろ過して、沈殿物を除去した。ろ液からヘキサンを減圧留去して、[(C5H5)Gd[N(SiMe3)2]2](thf) (1.14g,52%)を白色固体として得た。
ヘキサンから再結晶させて得られた単結晶をX線結晶構造解析して、構造を決定した。
【0068】
実施例2と同様にして、[(C5H5)Sm[N(SiMe3)2]2](thf)を黄色固体として(33%)、[
(C5H5)Nd[N(SiMe3)2]2](thf)を青色固体として(45%)、[(C5H5)Pr[N(SiMe3)2]2](thf)を緑色固体として(38%)、それぞれを得た。
【0069】
<実施例3>
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、十分に乾燥した30ml耐圧ガラスボトルに、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ガドリニウムビス(トリメチルシリルアミド)[(C5Me5)2GdN(SiMe3)2]を0.01mmol仕込み、トルエン6mlで溶解させた。
次いでMMAO(東ソー・ファインケム社より販売されるトルエン可溶性アルミノキサン)を、Al/Gd=100元素比となるように添加し、ボトルを打栓した。
その後、グローブボックスからボトルを取り出し、1,3−ブタジエンを1.35g仕込み、25℃で15分間重合を行った。
重合後、BHT〔2,6-ビス(t−ブチル)-4-メチルフェノール〕の10wt%のメタノール溶液10mlを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノール/塩酸混合溶媒で重合体を分離させ、60℃で真空乾燥した。
得られた重合体の収率は100wt%であった。重合体のミクロ構造のシス1,4−含量は97.52mol%、数平均分子量は1,027,400、Mw/Mnは2.05であった。
【0070】
<実施例4>
実施例3において、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ガドリニウムビス(トリメチルシリルアミド)の代わりに、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ガドリニウムビス(トリメチルシリルアミド)[(C5Me4H)2GdN(SiMe3)2]を用い、かつ重合時間を15分間から90分間とすること以外は、同様の方法で重合を行った。
得られた重合体の収率は100wt%であった。重合体のミクロ構造のシス1,4−含量が98.69mol%、数平均分子量は535,500、Mw/Mnは1.96であった。
【0071】
<実施例5>
実施例3において、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ガドリニウムビス(トリメチルシリルアミド)の代わりに、ビス(テトラメチルエチルシクロペンタジエニル)ガドリニウムビス(トリメチルシリルアミド)[(C5Me4Et)2GdN(SiMe3)2]を用いたこと以外は、同様の方法で重合を行った。
得られた重合体の収率は100wt%であった。重合体のミクロ構造のシス1,4−含量が98.03mol%で、数平均分子量は490,300であり、Mw/Mnは2.38であった。
【0072】
<実施例6>
実施例3において、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ガドリニウムビス(トリメチルシリルアミド)の代わりに、(シクロペンタジエニル)ガドリニウムビス(ビス(トリメチルシリルアミド))(テトラヒドロフラン)[(C5H5)Gd[N(SiMe3)2]2(thf)]を用いること以外は同様の方法で重合を行った。
得られた重合体の収率は92wt%であった。重合体のミクロ構造のシス1,4−含量が97.62mol%で、数平均分子量は835,000であり、Mw/Mnは1.84であった。
【0073】
<実施例7>
実施例3において、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ガドリニウムビス(トリメチルシリルアミド)の代わりに、(シクロペンタジエニル)サマリウムビス(ビス(トリメチルシリルアミド))(テトラヒドロフラン)[(C5H5)Sm[N(SiMe3)2]2(thf)]を用い、重合時間を15分間から20時間とすること以外は、同様の方法で重合を行った。
得られた重合体の収率は16wt%であった。重合体のミクロ構造のシス1,4−含量が95.52mol%で、数平均分子量は138,400であり、Mw/Mnは1.79であった。
【0074】
<実施例8>
実施例3において、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ガドリニウムビス(トリメチルシリルアミド)の代わりに、(シクロペンタジエニル)ネオジムビス(ビス(トリメチルシリルアミド))(テトラヒドロフラン)[(C5H5)Nd[N(SiMe3)2]2(thf)]を用い、重合時間を15分間から180分間とすること以外は、同様の方法で重合を行った。
得られた重合体の収率は76wt%であった。重合体のミクロ構造のシス1,4−含量が95.28mol%で、数平均分子量は352,700であり、Mw/Mnは1.86であった。
【0075】
<実施例9>
実施例3において、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ガドリニウムビス(トリメチルシリルアミド)の代わりに、(シクロペンタジエニル)プラセオジムビス(ビス(トリメチルシリルアミド))(テトラヒドロフラン)[(C5H5)Pr[N(SiMe3)2]2(thf)]を用い、重合時間を15分から180分間とすること以外は、同様の方法で重合を行った。
得られた重合体の収率は58wt%であった。重合体のミクロ構造のシス1,4−含量が94.06mol%で、数平均分子量は276,800であり、Mw/Mnは2.80であった。
【0076】
<実施例10>
実施例3において、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ガドリニウムビス(トリメチルシリルアミド)の代わりに、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ガドリニウムビス(ビス(トリメチルシリルアミド))[(C5Me5)Gd[N(SiMe3)2]2]を用い、重合時間を15分間から5分間とすること以外は、同様の方法で重合を行った。
得られた重合体の収率は100wt%であった。重合体のミクロ構造のシス1,4−含量が96.09mol%で、数平均分子量は730,200であり、Mw/Mnは2.44であった。
【0077】
<実施例11>
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、十分に乾燥した30ml耐圧ガラスボトルに、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ガドリニウムビス(トリメチルシリルアミド)[(C5Me5)2GdN(SiMe3)2]を0.01mmol仕込み、トルエン6mlで溶解させた。
次いでトリイソブチルアルミニウム0.1mmol、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Me2NHPhB(C6F5)4)0.01mmolを添加し、ボトルを打栓した。その後、グローブボックスからボトルを取り出し、1,3−ブタジエンを1.35g仕込み、25℃で2分間重合を行った。
重合後、BHT〔2,6-ビス(t−ブチル)-4-メチルフェノール〕の10wt%のメタノール溶液10mlを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノール/塩酸混合溶媒で重合体を分離させ、60℃で真空乾燥した。
得られた重合体の収率は91wt%であった。重合体のミクロ構造のシス1,4−含量が97.76mol%で、数平均分子量は553,700であり、Mw/Mnは1.85であった。
【0078】
<実施例12>
実施例11において、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ガドリニウムビス(トリメチルシリルアミド)の代わりに、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ガドリニウムビス(トリメチルシリルアミド)[(C5Me4H)2GdN(SiMe3)2]を用い、重合時間を2
分間から24時間とすること以外は、同様の方法で重合を行った。
得られた重合体の収率は10wt%であった。重合体のミクロ構造のシス1,4−含量が98.23mol%で、数平均分子量は240,200であり、Mw/Mnは2.29であった。
【0079】
<実施例13>
実施例11において、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ガドリニウムビス(トリメチルシリルアミド)の代わりに、ビス(テトラメチルエチルシクロペンタジエニル)ガドリニウムビス(トリメチルシリルアミド)[(C5Me4Et)2GdN(SiMe3)2]を用いること以外は、同様の方法で重合を行った。
得られた重合体の収率は100wt%であった。重合体のミクロ構造のシス1,4−含量が97.22mol%で、数平均分子量は346,600であり、Mw/Mnは1.98であった。
【0080】
<実施例14>
実施例11において、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ガドリニウムビス(トリメチルシリルアミド)の代わりに、(シクロペンタジエニル)ガドリニウムビス(ビス(トリメチルシリルアミド))(テトラヒドロフラン)[(C5H5)Gd[N(SiMe3)2]2(thf)]を用い、重合時間を5分間から60分間とすること以外は、同様の方法で重合を行った。
得られた重合体の収率は60wt%であった。重合体のミクロ構造のシス1,4−含量が99.28mol%で、数平均分子量は571,500であり、Mw/Mnは2.15であった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のメタロセン錯体は、例えば重合触媒の成分として用いられることができ、それにより新たな重合反応を提供し、好ましくは新しいポリマーを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】(C5Me5)2GdN(SiMe3)2のX線結晶構造解析の結果を示すORTEP図である。
【図2】(C5H5)Gd[N(SiMe3)2]2(OC4H8)のX線結晶構造解析の結果を示すORTEP図である。
【図3】(C5H5)Nd[N(SiMe3)2]2(OC4H8)の1H-NMRスペクトルチャートである。
【図4】実施例14で得られたポリブタジエンの1H-NMRスペクトルチャート、及び13C-NMRスペクトルチャートである。1H-NMRスペクトルチャートのピーク(5.35ppm)は、シス1,4-ユニットのオレフィン水素に帰属される。13C-NMRスペクトルチャートのピーク(27.4ppm)は、1,4シス-ユニットのメチレン炭素に帰属される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示されるメタロセン錯体。
【化1】

(一般式(I)において、
Mは、ガドリニウムGdを示し、
CpRは、それぞれ独立して無置換もしくは置換シクロペンタジエニルを示し、
a〜Rfは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基を示し、
Lは、中性ルイス塩基を示し、
wは、0〜3の整数を示す。)
【請求項2】
下記一般式(II)で示されるメタロセン錯体。
【化2】

(一般式(II)において、
Mは、ガドリニウムGdを示し、
CpRは、無置換もしくは置換シクロペンタジエニルを示し、
a〜Rlは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基を示し、
Lは中性ルイス塩基を示し、
wは0〜3の整数を示す。)
【請求項3】
下記一般式(III)で示されるメタロセン錯体。
【化3】

(一般式(III)において、
Mは、ランタノイド元素を示し、
Cpは、シクロペンタジエニルを示し、
a〜Rlは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基を示し、
Lは、中性ルイス塩基を示し、
wは0〜3の整数を示す。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のメタロセン錯体を含む、重合触媒組成物。
【請求項5】
共役ジエンを重合するための、請求項4に記載の重合触媒組成物。
【請求項6】
アルミノキサンをさらに含む、請求項4または5に記載の重合触媒組成物。
【請求項7】
有機アルミニウム化合物およびイオン性化合物をさらに含む、請求項4または5に記載の重合触媒組成物。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか一項に記載の重合触媒組成物存在下で、付加重合性単量体を重合させるステップを含む、付加重合体を製造する方法。
【請求項9】
前記付加重合性単量体が共役ジエンであって、前記付加重合体が共役ジエン重合体である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記付加重合性単量体が1,3−ブタジエンであって、前記付加重合体がブタジエン重合体である、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−63240(P2007−63240A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255247(P2005−255247)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】