説明

メタンから製造された芳香族炭化水素の同位体分析による同定

特定の重水素と13Cの分布を有するベンゼンとキシレンに関し、ベンゼンとキシレンの両者のδ(重水素)が−250未満であり、ベンゼンのδ(13C)が−36を超え、キシレンのδ(13C)は−24未満である。ここで、δ(重水素)=(R’sample/R’standard−1)×1000で定義され、R’sampleはベンゼンまたはキシレン中の重水素と水素の存在比、R’standardは自然界での重水素と水素の存在比であり、また、δ(13C)=(R”sample/R”standard−1)×1000で定義され、R”sampleはベンゼン/キシレン中の13Cと12Cの存在比、R”standardは、自然界での13Cと12Cの存在比である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、メタン、特に天然ガスから製造された芳香族炭化水素の同定への、同位体分析の適用に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族炭化水素、特にベンゼン、トルエン、エチルベンゼンやキシレンは、石油化学産業の重要な化学商品である。現在、芳香族炭化水素は、触媒改質や触媒クラッキングなどを含む様々な製造プロセスにより、石油ベースの原料油から製造することが最も一般的に行われている。しかし、世界的に石油原料油の供給が減少しているため、芳香族炭化水素の代替原料に対する必要性が高まっている。
【0003】
可能性のある代替原料のひとつは、天然ガスやバイオガスの主成分のメタンである。世界的に天然ガスの推定埋蔵量は増加し続けており、現在、石油よりも天然ガスの発見量の方が多くなっている。大量の天然ガスの輸送に付随する問題のため、石油とともに生産される天然ガスの大部分は、特に僻地では、燃やされ、無駄にされている。したがって、付随する技術的問題を克服できるなら、天然ガスに含まれるアルカンを芳香族炭化水素などの高級炭化水素に直接転換することは、天然ガスの高付加価値化を図る上で魅力的である。
【0004】
メタンを液状炭化水素に転換する製造プロセスの主流は、先ずメタンをHとCOの混合物である合成ガスに転換する方法である。しかし、合成ガスの製造には、集約的な設備投資とエネルギーが必要である。したがって、合成ガスの生成を必要としない方法が好ましい。
【0005】
メタンを高級炭化水素に直接転換するための、多くの代替製造プロセスが提案されている。このような製造プロセスのひとつには、酸化力のある触媒によりメタンをカップリングしてオレフィンとし、次に触媒によりオレフィンを、芳香族炭化水素を含む液状炭化水素に転換するものである。
例えば、米国特許第5336825号に、メタンをガソリン相当の、芳香族炭化水素を含む、炭化水素に酸化性転化する二段階製造プロセスが開示されている。第1ステップでは、メタンを遊離酸素の存在下で、アルカリ土類金属と希土類金属酸化触媒を用いて温度500℃から1000℃で、エチレンと少量のCとCオレフィンに転換する。
次に、第1ステップで生成したエチレンと高級オレフィンを、高級シリカペンタシル(pentasil)ゼオライトを含む酸性固体触媒上で、ガソリン相当の液状炭化水素に転換する。
【0006】
しかしながら、酸化性カップリング法は、高発熱反応でありメタンの燃焼反応が生じる危険性があり、また、環境に影響を及ぼす炭素の酸化物を大量に生じる問題がある。
【0007】
メタンを直接高級炭化水素、特にエチレン、ベンゼン、ナフタレンに転換する潜在的な魅力ある方法は、脱水素芳香族化(Dehydroaromatization)または還元性カップリングである。
一般にこの製造プロセスでは、メタンを、ZSM−5などのゼオライトに担持されたレニウム、タングステン、またはモリブデンなどの金属を含む触媒に、600℃から1000℃の高温下で接触させる。通常、金属触媒活性種は、ゼロ価、または炭素化、または酸化炭素化された形態である。
【0008】
例えば、米国特許第4727206号は、液状成分の多い芳香族炭化水素の製造方法を開示している。この方法では、メタンを酸素の不存在下、600℃から800℃の温度で触媒組成物に接触させる。この触媒組成物は、シリカ対アルミナのモル比が少なくとも5:1のアルミノシリケートを有し、このアルミノシリケートは、(i)ガリウムまたはその化合物と、(ii)周期律表第VIIB族の金属またはその化合物とともに充填される。
【0009】
さらに、米国特許第5026937号は、0.5モル%以上の水素と、50モル%のメタンを含む供給流を、温度が550℃から750℃、絶対圧力が10気圧(1000kPa−a)未満、気体空間速度が400から7500時間−1の条件を含む転換条件下で、ZSM−5と、リンを含むアルミナとを備える固体触媒床を有する反応ゾーンに流通させるステップを有するメタンの芳香族化の製造プロセスを開示している。
【0010】
さらに、米国特許第5936135号には、メタンやエタンなどの低級アルカンを芳香族に転化する、低温、非酸化性条件の製造プロセスが開示されている。
この製造プロセスでは、低級アルカンは、プロピレンまたはブテンなどの高級オレフィンまたはパラフィンと混合され、この混合物を、温度300℃から600℃、ガス空間速度1000から100000cm−3ghr−1で、圧力が1から5気圧(100から500kPa)の条件下で、前処理されたGaZSM−5などの、二官能性ペンタジルゼオライト触媒と接触させる。
触媒の前処理は、触媒と、水素とスチームの混合物とを、温度400℃から800℃、圧力1から5気圧(100から500kPa)で、ガス空間速度が少なくとも500cm−3ghr−1の条件下で少なくとも0.5時間接触させた後、この触媒と、空気または酸素とを、温度400℃から800℃、ガス空間速度が少なくとも200cm−3ghr−1で、圧力が1から5気圧(100から500kPa)の条件下で少なくとも0.2時間接触させて行われる。
【0011】
天然ガスを芳香族炭化水素の原料に用いる際に特に問題になる点は、大多数の世界の天然ガス田の天然ガスには、高濃度の、ときには50%を超える、二酸化炭素が含有されていることである。
二酸化炭素は、世界的気候変動の潜在的原因になりうるとして、政府の規制対象になるばかりでなく、大量の二酸化炭素の分離と廃棄が必要となる製造プロセスは、経済的にも成立しないであろう。事実、いくつかの天然ガス田の天然ガスは、現状では経済的に採掘できないと思われるほど高濃度の二酸化炭素を含有している。
【0012】
このため、メタンを芳香族炭化水素に転換する改良された製造プロセス、特にメタンが天然ガス中に大量の二酸化炭素とともに存在している場合に、メタンを芳香族炭化水素に転換する改良された製造プロセスが求められている。
【0013】
さらに、米国特許第6239057号、第6426442号は、例えばメタンなどの炭素数の少ない炭化水素と、表面にレニウムと、鉄、コバルト、バナジウム、マンガン、モリブデン、タングステン、およびこれらの混合物などの反応促進金属が分散された、例えばZMS−5などの多孔質の担体から成る触媒とを接触させることによって、ベンゼンなどの炭素数の多い炭化水素を製造する製造プロセスを開示している。
担体にレニウムとプロモーター金属を含浸させた後、温度約100℃から約800℃で約0.5時間から約100時間の条件で、触媒を水素および/またはメタンで処理して活性している。
供給原料に、COまたはCOを添加することにより、ベンゼンの収率が向上し、触媒の安定性が増すとされている。COおよび/またはCOとメタンとの比の範囲は、約0.001から約0.5、好ましくは約0.01から0.3である。
【0014】
ロシア特許第2135441号には、メタンをより重質の炭化水素に転換する方法が開示されている。
この方法では、メタンにベンゼンなどのC+炭化水素を少なくとも5wt%混合し、メタンの分圧が少なくとも0.05Mpa、温度が少なくとも440℃の条件で、酸化度がゼロより大きい白金金属を含む触媒に接触させる。この方法は、中間再加熱方法を用いた多段反応系で行われる。
製造プロセスで生じた水素は、炭素の酸化物に接触させてメタンを発生させ、副生した水分を除去した後、メタン供給源に追加される。メタン転化後の生成物はCからCのガス相と、C+の液相であるが、実施例によれば、供給原料と比較した芳香族環の増分はごく僅か(5wt%未満)であるか、ほとんど無い。
【0015】
本願出願人らは、2004年12月22日に出願した米国特許出願番号60/638922に、メタンを、芳香族を含む炭化水素に転換する製造プロセスであって、(a)メタンを含む原料と、脱水素環化触媒とを、メタンを芳香族炭化水素に転換できる条件下で接触させて、芳香族炭化水素と水素とを含み、原料より芳香族含有量が少なくとも5wt%多い第1生成物を生成させ、(b)第1生成物中の水素の少なくとも一部を、酸素を含有する化学種、特にCOおよび/またはCOに接触させ、第1生成物より水素含有量が低下した第2生成物を生成させる製造プロセスを開示した。
【0016】
さらに本願出願人らは、2004年12月22日に出願した米国特許出願番号60/638605に、メタンを、アルキル化された芳香族を含む炭化水素に転換する製造プロセスであって、メタンを含む原料と、脱水素環化触媒とを、メタンを芳香族炭化水素に転換できる条件下で接触させて、芳香族炭化水素と水素とを含み、原料より芳香族含有量が少なくとも5wt%多い第1生成物を生成させ、第1生成物中の含まれる炭化水素の少なくとも一部を、芳香族をアルキル化させることができる条件下でアルキル化剤に接触させ、アルキル化反応前よりも多くのアルキル鎖を有する、アルキル化された芳香族炭化水素を生成させる製造プロセスを開示した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
芳香族炭化水素は、全ての炭化水素と同様に、分子中の炭素原子および水素原子の由来によって異なる量の、重水素および13Cをもともと含有している。
さらに、同位体の分布に関する研究により、天然の地中にあるメタン中の重水素および13Cの量は、ナフサ中の重水素および13Cの量とは大きく異なること、さらに、天然の地中にあるCO中の13Cの量は、地中にあるメタン中およびナフサ中の13Cの量とは大きく異なることが明らかになっている。
すなわち、この発明は、芳香族炭化水素の製品中の重水素および13Cの量により、ナフサから製造された芳香族炭化水素と、地中にあるメタンのみの脱水素環化により製造された芳香族炭化水素と、地中にあるメタンおよびCOから作られたメタンの脱水素環化により製造された芳香族炭化水素とを識別することができるとの認識に基づく。
【0018】
この発明では、ベンゼンまたはキシレンのサンプル中の重水素の同位体存在比を、
δ(重水素)=(R’sample/R’standard−1)×1000
と定義する。ここで、R’sampleはベンゼンまたはキシレン中の重水素と水素の存在比であり、R’standardは、自然界での重水素と水素の存在比(0.00015/0.99985に等しい)である。
また、サンプル中の13Cの同位体存在比を、
δ(13C)=(R”sample/R”standard−1)×1000
と定義する。ここで、R”sampleはベンゼンまたはキシレン中の13Cと12Cの存在比であり、R”standardは、自然界での13Cと12Cの存在比(0.01109/0.98891に等しい)である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
ひとつの側面では、この発明は、ベンゼンのδ(重水素)が−250未満で、ベンゼンのδ(13C)が−36を超える量で、重水素および13Cを含むベンゼンに関する。ここで、δ(重水素)とδ(13C)は、前記の定義に従う。
【0020】
好ましくは、ベンゼンのδ(重水素)は−450を超え、−250未満であり、ベンゼンのδ(13C)は、−36を超え、−24未満である。
【0021】
別の実施形態では、この発明は、ベンゼン中のδ(重水素)の値が−250未満、または、ベンゼンのδ(13C)の値が−24未満の、重水素および13Cを含むベンゼンに関し、以下の製造プロセスで製造されたベンゼンに関する。
(a)メタンを含む原料を、ベンゼンを含む芳香族炭化水素に転化できる条件下で、脱水素環化触媒に接触させて、芳香族炭化水素と水素とを含み、原料よりも芳香族を少なくとも5wt%多く含む第1生成物を生成させる。
(b)第1生成物中の水素の少なくとも一部を、COおよび/またはCOと反応させて、第1生成物よりも水素含有量が少なく、炭化水素含有量が多い第2生成物を生成させる。
(c)第2生成物の少なくとも一部を、(a)の接触工程へ送り返す。
【0022】
また別の実施形態では、この発明は、キシレン中のδ(重水素)の値が−250未満、または、キシレンのδ(13C)の値が−24未満の、重水素および13Cを含むキシレンに関する。
【0023】
また別の実施形態では、この発明は、キシレン中のδ(重水素)の値が−250未満、または、キシレンのδ(13C)の値が−32未満の、重水素および13Cを含むキシレンに関する。
【0024】
また別の実施形態では、この発明は、キシレン中のδ(重水素)の値が−250未満、または、キシレンのδ(13C)の値が−24未満の、重水素および13Cを含むキシレンに関し、以下の製造プロセスで製造されたキシレンに関する。
(a)メタンを含む原料を、ベンゼンを含む芳香族炭化水素に転化できる条件下で、脱水素環化触媒に接触させて、芳香族炭化水素と水素とを含む第1生成物を生成させる。
(b)第1生成物中のベンゼンの少なくとも一部を、ベンゼンをアルキル化してアルキルベンゼンを生成させることができる条件下で、アルキル化剤と接触させる。
【0025】
また別の実施形態では、この発明は、キシレン中のδ(重水素)の値が−250未満、または、キシレンのδ(13C)の値が−24未満の、重水素および13Cを含むキシレンに関し、以下の製造プロセスで製造されたキシレンに関する。
(a)メタンを含む原料を、ベンゼンを含む芳香族炭化水素に転化できる条件下で、脱水素環化触媒に接触させて、芳香族炭化水素と水素とを含む第1生成物を生成させる。
(b)第1生成物中の水素の少なくとも一部を、COおよび/またはCOと反応させて、第1生成物よりも水素含有量が少なく、炭化水素含有量が多い第2生成物を生成させる。
(c)第2生成物の少なくとも一部を、(a)の接触工程へ送り返す。
(d)第1生成物中のベンゼンの少なくとも一部を、ベンゼンをアルキル化してアルキルベンゼンを生成させることができる条件下で、アルキル化剤と接触させる。
【0026】
またこの発明の別の実施形態は、合成された芳香族炭化水素の原料、および/または製造プロセスを同定するための手段として、芳香族炭化水素中の、重水素と13Cの測定値を使用することに関する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本願は、メタンを脱水素環化する製造プロセスで製造されたことにより、新規な重水素および13Cの分布を有するベンゼン、キシレン、およびこれらの誘導体に関する。
以下に詳細に説明するように、ベンゼンの場合、その製造プロセスには、脱水素環化工程の副生成物である水素の少なくとも一部を、COおよび/またはCOと反応させて炭化水素をさらに生成させ、この炭化水素を脱水素環化工程へ送り返す工程が含まれる。好ましくは、COおよび/またはCOは、天然ガス中に前記メタンと共に含まれているものである。
キシレンの場合、その製造プロセスには、脱水素環化工程で生成したベンゼンと、アルキル化剤とを接触させる工程が含まれる。アルキル化剤は、好ましくは水素と、COおよび/またはCOであり、脱水素環化工程の副生成物である水素と、天然ガス中に前記メタンと共に含まれているCOおよび/またはCOである。
使用するアルキル化剤の種類により、アルキル化工程で生成するアルキルベンゼンは、1種類以上のキシレン異性体であってもよく、あるいは、異性化、アルキル転移、不均化などの公知の技術でキシレンに転化されてもよい。
【0028】
またこの発明は、合成された芳香族炭化水素の原料、および/または製造プロセスを同定するための手段として、芳香族炭化水素中の、重水素と13Cの測定値を使用することに関する。
すなわち、重水素および13Cの量により、ナフサから製造された芳香族炭化水素と、地中にあるメタンのみの脱水素環化により製造された芳香族炭化水素と、地中にあるメタンおよびCOから作られたメタンの脱水素環化により製造された芳香族炭化水素とが、識別される。
【0029】
<原料>
この発明のベンゼンとキシレンは、メタンを含有するあらゆる原料を用いて製造することができるが、本願の製造プロセスは天然ガスの使用を意図している。
天然ガスなどのメタンを含有する供給原料は、一般に、メタンに加え、二酸化炭素とエタンを含有する。供給原料に含まれるエタンと他の脂肪族炭化水素は、脱水素環化反応により当然目的の芳香族に転化される。さらに、以下説明するように、二酸化炭素も、脱水素環化反応により直接的に、あるいは、脱水素反応による炭化水素への転化または脱水素環化反応における芳香族のアルキル化を通じて間接的に、有用な芳香族に転化される。
【0030】
一般にメタンを含有する原料に含まれる不純物の窒素、および/または硫黄は、この発明の製造プロセスで使用される前に除去されるか、または、低濃度まで削減されることが好ましい。ひとつの実施形態では、脱水素環化工程への供給原料中の窒素および硫黄の各々の含有量は、100ppm未満、例えば10ppm未満、あるいは1ppmである。
【0031】
メタンに加え、脱水素環化工程へ送られる供給原料は、コークス除去を助けるために、水素、水、一酸化炭素、および二酸化炭素の少なくともいずれか1つを含有する。これらの添加剤は、副原料として供給されるか、あるいは、例えば、メタンが二酸化炭素を含む天然ガスから供給されるような場合のように、メタン中に含まれている。この他の二酸化炭素の供給源には、燃焼ガス、LNGプラント、水素プラント、アンモニアプラント、グリコールプラント、無水フタル酸プラントが含まれる。
【0032】
ひとつの実施形態では、脱水素環化工程への供給原料は二酸化炭素を含有し、その組成は、メタンが90から99.9モル%、例えば97から99モル%であり、COが0.1から10モル%、例えば1から3モル%である。
別の実施形態では、脱水素環化工程への供給原料は一酸化炭素を含有し、その組成は、メタンが80から99.9モル%、例えば94から99モル%であり、COが0.1から20モル%、例えば1から6モル%である。
また別の実施形態では、脱水素環化工程への供給原料はスチームを含有し、その組成は、メタンが90から99.9モル%、例えば97から99モル%であり、スチームが0.1から10モル%、例えば1から3モル%である。
さらに別の実施形態では、脱水素環化工程への供給原料は水素を含有し、その組成は、メタンが80から99.9モル%、例えば95から99モル%であり、水素が0.1から20モル%、例えば1から5モル%である。
【0033】
また、脱水素環化工程への供給原料は、メタンより高級な、芳香族炭化水素を含む炭化水素を含有することができる。このような高級炭化水素は、脱水素工程から送り返されて来るものであり、副原料に加えられる。あるいは、例えばエタンが供給原料の天然ガス中に含有されている場合のように、メタン中に含まれる。
脱水素環化工程から送り返されて来る高級炭化水素は、一般に、単環の芳香族、および/または、炭素原子数が6以下、例えば5以下、例えば4以下、典型的には3以下の、パラフィン、およびオレフィンを含む。一般に、脱水素環化工程への供給原料は、5wt%未満、例えば3wt%未満のC+炭化水素を含有する。
【0034】
<脱水素環化反応>
この発明の脱水素環化工程では、メタンを含有する供給原料を、通常は非酸化条件下、好ましくは還元条件下で、メタンをベンゼン、ナフタレンを含む高級炭化水素に転換できる条件で、脱水素環化触媒に接触させる。
脱水素環化工程に含まれる全反応は、次の通りである。
【化1】

【0035】
供給原料中に存在する一酸化炭素、および/または、二酸化炭素は、次のような反応を促進し、触媒の活性と安定性を向上させる。
【化2】

しかし、全反応に対し逆行する次のような反応を生じ、平衡に影響を与える。
【化3】

【0036】
脱水素環化工程に適した条件には、温度が400℃から1200℃、例えば500℃から975℃、例えば、600℃から950℃、圧力が1kPaから1000kPa、例えば10kPaから500kPa、例えば50kPaから200kPa、重量空間速度が0.01から1000時間―1、例えば0.1から500時間―1、例えば1から20時間―1であることが含まれる。
好ましくは、脱水素環化工程は非酸化条件下で行われる。
一般に、脱水素環化条件は、原料中のメタンを、芳香族炭化水素、特にベンゼンなどの高級炭化水素に、少なくとも5wt%、例えば7wt%、例えば少なくとも10wt%、例えば少なくとも12wt%、例えば15wt%転換できる条件のことである。
【0037】
この発明の脱水素環化触媒には、メタンを芳香族に転換できるものであれば、いかなる触媒でも用いることができる。しかし、一般に、脱水素環化触媒には、金属成分、特に無機担体に担持された遷移金属、またはその化合物が用いられる。金属成分の含有量は、全触媒に対する重量%が0.1%から20%、例えば1%から10%であることが好ましい。一般に、金属成分は触媒中に、炭素化された形態で存在する。
【0038】
触媒に適した金属成分には、カルシウム、マグネシウム、バリウム、イットリウム、ランタン、スカンジウム、セリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、白金、銅、銀、金、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、シリコン、ゲルマニウム、インジウム、錫、鉛、ビスマス、超ウラン金属が含まれる。これらの金属成分は元素の状態で存在するか、あるいは、酸化物、カーバイド、窒化物、および/または、リン化物などの金属化合物として存在し、単独または組み合わせて用いられる。白金とオスミウムも金属成分として用いることができるが、一般には好ましくない。
【0039】
無機材料の担体は、アモルファス、または結晶性であり、特に、ホウ素、アルミニウム、シリコン、リン、チタン、スカンジウム、クロム、バナジウム、マグネシウム、マンガン、鉄、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、イリジウム、錫、バリウム、ランタン、ハフニウム、セリウム、タンタル、タングステン、あるいは、その他超ウラン元素の酸化物、カーバイド、または窒化物である。さらに、担体は、ミクロポーラスな結晶性材料、またはメソポーラスな孔質材料である。本願で「ミクロポーラス」というときは、直径が2ナノメートル未満の孔であることを意味し、「メソポーラス」というときは、直径が2から50ナノメートルの孔であることを意味する。
【0040】
好ましいミクロポーラスな結晶性材料には、シリケート、アルミノシリケート、チタノシリケート、チタノアルミノシリケート、アルミノホスフェート、メタロホスフェート、メタロアルミノホスフェート、シリコアルミノホスフェート、またはこれらの混合物が含まれる。
このようなミクロポーラスな結晶性材料には、骨格の型がMFI(例えば、ZSM−5、TS−I、TS−2と、シリカライト)、MEL(例えば、ZSM−11)、MTW(例えば、ZSM−12)、TON(例えば、ZSM−22)、MTT(例えば、ZSM−23)、FER(例えば、ZSM−35)、MFS(例えば、ZSM−57)、MWW(例えば、MCM−22、PSH−3、SSZ−25、ERB−1、ITQ−1、ITQ−2、MCM−36、MCM−49と、MCM−56)、IWR(例えば、ITQ−24)、KFI(例えば、ZK−5)、BEA(例えば、ゼオライトベータ)、ITH(例えば、ITQ−13)、MOR(例えば、モルデナイト)、FAU(例えば、ゼオライトX、Y、超安定化Y と脱アルミ化Y)、LTL(例えば、ゼオライトL)、IWW(例えば、ITQ−22)、VFI(例えば、VPI−5)、AEL(例えば、SAPO−11)、AFI(例えば、ALPO−5) および、AFO(SAPO−41)、さらに、MCM−68、EMM−I、EMM−2、ITQ−23、ITQ−24、ITQ−25、ITQ−26、ETS−2、ETS−10、ETAS−10、ETGS−10、SAPO−17、SAPO−34、およびSAPO−35等の材料が含まれる。好ましいメソポーラス材料には、MCM−41、MCM−48、MCM−50、FSM−16と、SBA−15が含まれる。
【0041】
好ましい触媒の例には、ZSM−5、またはアルミナ上に担持された、モリブデン、タングステン、亜鉛、レチウム、およびこれらの組合せ、および化合物が含まれる。
【0042】
金属成分は、共沈法、IW(incipient wetness)法、蒸発乾固法、含浸法、スプレイ乾燥法、ゾル−ゲル法、イオン交換法、化学蒸着法、拡散法および物理的混合など、周知の方法で無機担体上に分散される。さらに、無機担体は、例えば、スチーミング、酸洗、苛性洗浄、および/または、含珪素化合物による処理、含リン化合物による処理、および/または、周期律表の1,2,3、および13族の元素または化合物による処理などの、公知の方法で修飾することができる。このような修飾は、担体の表面活性を変え、担体の内部孔構造へのアクセスを妨げ、あるいは促進する。
【0043】
脱水素環化工程は、メタンを含有する供給原料を、1以上の固定床、移動床、または流動床反応ゾーンにおいて、脱水素環化触媒に接触させて行う。
一般に、各反応ゾーンにおいて、供給原料の流れる方向に対して脱水素環化触媒の移動方向を向流にして、脱水素環化触媒の移動床と供給原料とを接触させる。
ひとつの実施形態では、反応ゾーンは沈降床反応器で構成される。沈降床反応器とは、垂直に設けられた反応器であって、触媒粒子が反応器の頂部またはその近傍に供給され、重力により流下して触媒床を形成し、一方、供給原料が反応器の底部またはその近傍に供給され、触媒床中を上方へ流動する反応器である。
別の実施形態では、反応ゾーンは連結された複数の流動床反応ゾーンで構成される。触媒粒子は一方向に沿って、ひとつの反応ゾーンから隣接する反応ゾーンへ転送され、原料は各反応ゾーン間を逆方向に転送される。
【0044】
脱水素環化工程の生成物の主成分は、水素、ベンゼン、ナフタレン、一酸化炭素、エチレン、および未反応のメタンである。
一般に、この生成物は供給原料よりも少なくとも5wt%、例えば少なくとも10wt%、例えば少なくとも20wt%、好ましくは少なくとも30wt%より多い芳香族環を含有する。
すなわち、脱水素環化反応後の生成物中の芳香族環の総量は、供給原料中の芳香族環の総量よりも少なくとも5wt%多い。例えば、原料に芳香族環が1wt%含まれている場合、脱水素環化反応後の生成物中に含まれる芳香族環の量は、少なくとも6wt%である。この計算には、原料から第1生成物が生じる間に起きる、芳香族環上の置換基の変化は含まれていない。
【0045】
この発明のひとつの実施形態では、ベンゼンは脱水素環化生成物から、例えば溶剤抽出後分留することにより、回収される。
しかし、以下に説明するように、キシレンなどの高付加価値の物質を製造するために、ベンゼンを回収する前、または回収した後に、ベンゼンの少なくとも一部をアルキル化工程で処理する。
【0046】
<水素の管理>
水素は脱水素環化生成物の主成分であるため、芳香族成分を回収した後、水素の少なくとも一部を更に炭化水素に転化するために、脱水素環化生成物を水素分離工程で処理する。さらに、原料の利用効率を高めるために、この水素を、未反応のメタンとともに脱水素環化工程に送り返す。
一般に、水素分離工程には、少なくとも水素の一部を、COおよび/またはCOと反応させることが含まれる。好ましくは、このCOおよび/またはCOは、天然ガス中にメタンとともに存在するものである。
【0047】
水素分離工程には好ましくは、(i)メタン化反応、および/またはエタン化反応、(ii)フィッシャー−トロプシュ合成工程、(iii)CからCのアルコール、特にメタノール、およびその他の酸素含有化合物の合成工程、および/または(iv)中間体にメタノールまたはジメチルエーテルを用いる、軽質オレフィン、パラフィン、および/または、芳香族の合成工程、が含まれる。
これらの工程は効率が最大になるように順次行われ、例えばC+成分に富む生成物を得るために最初にフィッシャー−トロプシュ合成工程を行ない、次に高い水素の転化率を得るために、メタン化反応を行うことができる。
【0048】
以下に説明するように、一般に、水素分離工程ではパラフィンおよびオレフィンが発生する。この場合、副生物の水を除去した後、炭素数が6以下、例えば炭素数が5以下、例えば炭素数が4以下、例えば炭素数が3以下のパラフィンまたはオレフィンが、脱水素環化工程へ送り返される部分に含まれることになるので、好ましい。
水素分離工程で発生した炭化水素に芳香族が含まれる場合、脱水素環化工程へ送り返される部分には、単環の芳香族が含まれるので好ましい。
【0049】
<メタン化、エタン化>
ひとつの実施形態では、水素除去工程には、以下の式で表される反応が含まれ、脱水素環化生成物中の水素の少なくとも一部と、二酸化炭素とにより、メタン、および/または、エタンが発生する。
【化4】

【0050】
用いられる二酸化炭素は、天然ガスの一部、好ましくは脱水素環化工程へ送られる供給原料と同じ天然ガスの一部とすることができる。二酸化炭素がメタンを含む供給流の一部である場合は、供給流のCO:CHを、1:1から0.1:1の範囲に保つことが好ましい。二酸化炭素を含む供給流と脱水素環化生成物の混合は、ガス状の供給原料をジェットエジェクターの入り口に供給することにより行うことができる。
【0051】
メタンまたはエタンを発生させる水素除去工程は、通常は、目的の反応6または反応7に要求される化学量論比に近いH:COモル比を用いる。しかし、二酸化炭素を含有する第2の生成物、または水素を含有する第2の生成物を発生させたい場合には、化学量論比から少しずらすことができる。
メタンまたはエタンを発生させる水素除去工程は、金属成分、特に遷移金属またはその化合物を含む2機能性で、無機担体に担持された触媒の存在下で行なうことができる。適切な金属成分には、銅、鉄、バナジウム、クロム、亜鉛、ガリウム、ニッケル、コバルト、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、タングステン、イリジウム、白金、金、ガリウムと、これらの組合せ、および化合物が含まれる。
無機担体は、シリカ、アルミナ、またはシリカ−アルミナなどのアモルファス材料であり、脱水素環化触媒で挙げられたものなどである。さらに、無機担体は、ミクロポーラス、またはメソポーラスな結晶性の材料でもよい。適切なポーラスな結晶性の材料には、脱水素環化触媒に挙げられたアルミノシリケート、アルミノホスフェートや、シリコアルミノホスフェートが含まれる。
【0052】
メタンおよび/またはエタンを発生させる水素除去工程は、温度が約100℃から約900℃、例えば温度約150℃から約500℃、例えば温度約200℃から約400℃、圧力が約200kPaから約20000kPa、約500kPaから約5000kPa、重量空間速度が約0.1時間−1から約10000時間−1、約1時間−1から約1000時間−1の広い範囲で操業することができる。
二酸化炭素の転化率は、一般に、20から100%の間で、好ましくは90%を超え、例えば99%を超える。この吸熱性反応は、複数の触媒床で行われ、触媒床間で除熱され、さらに、上流側の触媒床は反応速度を大きくするため高温で操業され、下流側の触媒床は熱力学的転化率を大きくするため低温で操業される。
【0053】
この反応の主な生成物は、水と、H:COのモル比により、メタン、エタン、高級アルカン、さらに不飽和Cと高級炭化水素である。さらに、二酸化炭素の一部を水素化して一酸化炭素を生じさせることが好ましい。水を除去した後、メタン、一酸化炭素、未反応の二酸化炭素と高級炭化水素を、脱水素環化工程に直接供給し、さらに芳香族化合物を生成させることができる。
【0054】
<フィッシャー−トロプシュ合成工程>
別の実施形態では、水素除去工程は、フィッシャー−トロプシュ合成により、脱水素環化生成物中の水素の少なくとも一部と、一酸化炭素とを反応させて、CからCのパラフィンとオレフィンを生成させる反応を含む。
【0055】
フィッシャー−トロプシュ合成工程はよく知られており、例えば、本願に参照として組み込まれる米国特許第5348982号、第5545674号が参照される。
この製造プロセスには水素と一酸化炭素の反応が含まれ、モル比が約0.5:1から4:1、好ましくは約1.5:1から2.5:1、温度が約175℃から約400℃、好ましくは約180℃から約240℃、圧力が約1から約100バール(100から10000kPa)、好ましくは約10から約40バール(1000から4000kPa)の条件で、一般に、担持され、または担持されていない第VIII族、Fe、Ni、Ru、Coなどの非貴金属、ルテニウム、レチウム、ハフニウム、ジルコニウム、チタンなどの促進剤を含有または含有しないフィッシャー−トロプシュ触媒の存在下で行われる。
担体が用いられるときは、耐火性の、例えば第IVB族の金属、すなわち、チタン、ジルコニウムの金属酸化物、またはシリカ、アルミナ、またはシリカ−アルミナを用いることができる。
ひとつの実施形態では、この触媒は、例えばコバルトまたはルテニウム、好ましくはコバルトを含む非シフト触媒であり、レニウムまたはジルコニウムを促進剤として有し、好ましくは、コバルトとレニウムがシリカまたは酸化チタン、好ましくは酸化チタンに担持されている。
【0056】
別の実施形態では、炭化水素合成触媒は、ZSM−5上のCu、Cu/Zn,または、Cr/Znなどの金属を含み、この製造プロセスは大量の単環の芳香族炭化水素を生成するように操業される。
このような製造プロセスの例は、Jose Erenaの「Study of Physical Mixtures of Cr‐ZnO and ZSM−5 Catalysts for the Transformation of Syngas into Liquid Hydrocarbons」; Ind. Eng. Chem Res. 1998年, 37, 1211−1219ページに記載されており、本願に参照として組み込まれる。
【0057】
フィッシャー−トロプシュ液、すなわち、C+は回収され、軽いガス、例えば未反応の水素、CからCまたはCの成分および水は、より重い炭化水素から分離される。より重い炭化水素は製品として回収されるか、あるいは、さらに芳香族生成物を発生させるために脱水素環化工程に送られる。
【0058】
フィッシャー−トロプシュ反応に必要な一酸化炭素は、全部または一部がメタンを含有する供給原料中に含まれるか、供給原料とともに供給され、脱水素環化工程で副生物として発生する。必要であれば、二酸化炭素を含有するガス、例えば天然ガスをシフト触媒に供給し、次に示す逆水性ガスシフト反応により、追加の一酸化炭素を発生させることができる。
【化5】

および次の反応
【化6】

【0059】
<アルコール合成>
さらに別の実施形態では、水素除去工程には、脱水素環化生成物中の少なくとも一部と、一酸化炭素とによりCからCのアルコール、特にメタノールを生成させる反応が含まれる。
メタノールや他の酸素含有化合物を合成ガスから製造することはよく知られており、例えば、米国特許第6114279号、第6054497号、第5767039号、第5045520号、第5254520号、第5610202号、第4666945号、第4455394号、第4565803号、第5385949号に開示されており、本願に参照として取り込まれる。
一般に、用いられる合成ガスは、水素(H)と炭素の酸化物(CO + CO)のモル比が、約0.5:1から約20:1の範囲、好ましくは2:1から約10:1の範囲であり、任意に二酸化炭素が、全合成ガスの重量に対し、好ましくは50%を超えない量で存在する。
【0060】
メタノール合成工程に用いられる触媒は、銅、銀、亜鉛、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、バナジウム、クロム、マンガン、ガリウム、パラジウム、オスミウムおよびジルコニウムから成るグループから選択される少なくとも1つの元素の酸化物を含有する。
この触媒は、酸化銅のような、銅がベースの触媒であり、任意に、銀、亜鉛、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、バナジウム、クロム、マンガン、ガリウム、パラジウム、オスミウム、およびジルコニウムから成るグループから選択される、少なくとも1つの元素の酸化物が存在することが好ましい。この触媒は、酸化銅を含有し、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、クロム、およびジルコニウムから成るグループから選択される、少なくとも1つの元素の酸化物が存在することが好ましい。
ひとつの実施形態では、メタノール合成触媒は、酸化銅、酸化亜鉛、および酸化アルミニウムから成るグループから選択される。より好ましくは、この触媒には銅と亜鉛の酸化物が含まれる。
【0061】
メタノール合成は、広い温度および圧力範囲で行うことができる。適切な温度は、約150℃から約450℃、例えば約175℃から約350℃、例えば約200℃から約300℃の範囲である。適切な圧力は、約1500kPaから約12500kPa、例えば約2000kPaから約10000kPa、例えば約2500kPaから約7500kPaの範囲である。
ガス空間速度は、用いられる製造プロセスにより異なる。一般に、触媒床を通過するガスのガス空間速度は、約50時間−1から約50000時間−1、例えば約250時間−1から約25000時間−1、より好ましくは約500時間−1から約10000時間−1の範囲である。
この吸熱反応は、複数の触媒床と触媒床間での除熱を備える固定床または流動床で行うことができる。また、上流側の触媒床は反応速度を大きくするため高温で操業され、下流側の触媒床は熱力学的転化率を大きくするため低温で操業される。
【0062】
生成するメタノール、および/またはその他の酸素含有化合物は、以下説明する脱水素環化工程で生成したベンゼンのアルキル化によるキシレンへの転化に用い、または、特にエチレンとプロピレンなどの低級オレフィンの製造用の供給原料に用いることができる。メタノールからオレフィンへの転化はよく知られた製造プロセスであり、例えば米国特許第4499327号に開示されており、本願に参照として組み込まれる。
【0063】
<アルキル化>
この発明のひとつの実施形態では、脱水素環化反応で生成したベンゼンの少なくとも一部をアルキル化して、ベンゼンを直接的、または間接的に1種以上のキシレン異性体へ転化する。
ベンゼンのアルキル化は周知の技術であり、一般に、オレフィン、アルコール、またはハロゲン化アルキルと、気相または液相のベンゼンとを、酸性触媒の存在下で反応させて行う。
適切な酸性触媒には、中孔径のゼオライト(すなわち、米国特許第4016218号に示されたコンストレイントインデックス(Constraint Index)が2から12のもの)であって、骨格がMFI型(例えばZSM−5やシリカ)、MEL型(例えばZSM−Il)、MTW型(例えばZSM−12)、TON型(例えばZSM−22)、MTT型(例えばZSM−23)、MFS型(例えばZSM−57)、およびFER型(例えばZSM−35)および、ZSM−48型、また、大孔径のゼオライト(すなわち、コンストレイントインデックスが2未満のもの)であって、例えば、骨格がBEA型(例えばゼオライトベ−タ)、FAU型(例えばZSM−3、ZSM−20、ゼオライトX、Y、 超安定化Yと脱アルミ化Y)、MOR型(例えばモルデナイト)、MAZ型(例えばZSM−4)、MEI型(例えばZSM−18)およびMWW型(例えばMCM−22、PSH−3、SSZ−25、ERB−I、ITQ−I、ITQ−2、MCM−36、MCM−49およびMCM−56)のものが含まれる。
【0064】
この発明のひとつの実施形態では、ベンゼンは脱水素環化生成物から回収され、エタン化/メタン化を行う水素除去工程の副生物として得られたエチレンなどのオレフィンでアルキル化される。一般に、気相中でエチレンを用いてベンゼンのアルキル化を行う反応条件は、温度が華氏650度から900度(343から482℃)、圧力がほぼ大気圧から3000psig(100から20800kPa)、エチレン基準の重量空間速度が0.5時間−1から2.0時間−1、ベンゼン:エチレンのモル比が1:1から30:1.である。
液相中でベンゼンをエチレンでアルキル化するときの反応条件は、温度が華氏300度から650度(150から340℃)、圧力が最大3000psig(20800kPa)、エチレン基準の重量空間速度が0.1時間−1から20時間−1、ベンゼン:エチレンのモル比が1:1から30:1.である。
【0065】
ベンゼンのエチル化は、少なくとも一部が液相の状態で行い、触媒には、ゼオライトベータ、ゼオライトY、MCM−22、PSH−3、SSZ−25、ERB−1、ITQ−1、ITQ−2、ITQ−13、ZSM−5、MCM−36、MCM−49およびMCM−56の内の、少なくともいずれか1つを用いることが好ましい。
【0066】
ベンゼンのエチル化は、脱水素環化/水素除去工程製造プロセスのプラントで行うことができ、あるいは、ベンゼンを別の場所へ輸送してエチルベンゼンに転化することもできる。得られたエチルベンゼンは、公知の方法で混合キシレンへ異性化される。
【0067】
この発明の方法の別の実施形態では、アルキル化剤はメタノールまたはジメチルエーテル(DME)であり、アルキル化は、2,2ジメチルブタンの圧力が60torr(8kPa)、温度120℃で測定した2,2ジメチルブタンに対する拡散係数が0.1から15秒−1になるような条件で、スチーミングにより改質処理されたZSM−5、ゼオライトベータ、ITQ−13、MCM−22、MCM−49、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48などのゼオライトを含む触媒の存在下で行うことができる。
このような方法はパラ−キシレンの製造に対する選択性があり、本願に参照として組み込まれる米国特許第6504272号に開示されている。
【0068】
この発明の方法で、メタノールまたはDMEをアルキル化剤に用いる場合、別の供給源から供給するか、あるいは、その少なくとも一部を、脱水素環化工程からの生成物の一部または全部に、二酸化炭素を含有する天然ガスなどの供給ガスを添加して、その場で生成させることができる。特に、芳香族成分を分離する前に、脱水素環化生成物を逆シフト反応器へ送り、生成物中の一酸化炭素濃度が高くなるような条件下で、例えば前述の反応5,8のようにして、二酸化炭素を含有する供給ガスと反応させる。
【0069】
さらに、メタンとCO、および/または、スチームを逆シフト反応器へ送って合成ガスを発生させ、この合成ガスを脱水素環化反応の生成物の一部に混合して、アルキル化反応で要求されるH/CO/COモル比に調整する。
【0070】
一般に、逆シフト反応器は、遷移金属が担体に担持された触媒、例えばFe、Ni、Cr、Zn、アルミナが、シリカ、酸化チタンに担持された触媒を備え、温度が500℃から1200℃の範囲、例えば温度が600℃から1000℃の範囲、例えば温度が700℃から950℃の範囲、圧力が1kPaから10000kPaの範囲、例えば2000kPaから10000kPaの範囲、例えば3000kPaから5000kPaの範囲で行なわれる。
ガス空間速度は使用する製造プロセスにより異なる。一般に、触媒を通過するガスのガス空間速度は、50時間−1から50000時間−1、例えば250時間−1から25000時間−1、より好ましくは500時間−1から10000時間−1である。
【0071】
逆シフト反応器からの生成物は、次に下記の反応が生じる条件で操業されるアルキル化反応器へ送られる。
【化7】

【0072】
アルキル化反応器の適切な反応条件には、温度が100℃から700℃の範囲、圧力が1から300気圧(100から30000kPa)、および、芳香族炭化水素の重量空間速度が0.01時間−1から100時間−1とすることが含まれる。
適切な触媒はコンストレイントインデックスが1から12の、ZSM−5などのモレキュラーシーブを含み、一般に、銅、 クロム、および/または、酸化亜鉛などの1以上の金属成分または金属酸化物が併用される。
【0073】
アルキル化触媒がモレキュラーシーブを含むときは、反応11で発生するキシレン異性体の主成分がパラキシレンになるように、モレキュラーシーブの拡散性を改質する。
拡散性の改質に適した方法には、スチーミングや、反応器内または反応器外で、シリコン化合物、コークス、MgO、などの金属酸化物、および/またはPを、モレキュラーシーブの表面または開口部に堆積させる方法などである。また、活性金属をモレキュラーシーブに組み入れて、より反応性の高い化学種、例えばオレフィンを飽和させることが好ましい。オレフィンは、副生物として生じるものであり、触媒の不活性化を起こす。
【0074】
アルキル化反応器からの生成物は分離セクションへ移送され、ここで芳香族生成物は、好ましくは溶剤抽出法により、水素やその他の低分子量から分離される。
次に、芳香族生成物は、ベンゼン留分、トルエン留分、C留分、ナフタレンやアルキル化されたナフタレンを含む重質分留分に分留される。
次に、C芳香族留分は、結晶化、または吸着製造プロセスへ送られ、価値のあるパラ−キシレンを分離し、残余の混合キシレンは販売されるか、さらにパラ−キシレンを製造するために、異性化ループへ送られる。トルエン留分は販売されるか、アルキル化反応器へ送り返されるか、あるいはトルエン不均化装置、好ましくは、さらにパラ−キシレンを製造するために、選択的トルエン不均化装置へ送られる。
【0075】
<更なる加工>
この発明の製造プロセスで生産されたベンゼンおよびキシレンは、回収された後、販売されるか、または、有用な誘導体を製造するために更に加工される。
このような誘導体の例には、トルエン、エチルベンゼン、スチレン、ポリスチレン、フェノール、ポリエチレンテレフタレート、あるいは、シクロヘキサン、ナイロンなどの、ベンゼン環が消失した誘導体が挙げられる。
このような誘導体を製造するために用いられた製造プロセスにより、ベンゼン環は、この発明のベンゼンおよびキシレンの新規な重水素および13C分布を保持する。
【0076】
<同位体の分布>
ベンゼンまたはキシレンのサンプル中の重水素の同位体の分布は、自然界での重水素と水素の存在比からの偏差δ(重水素)と、自然界での13Cと12Cの存在比からの偏差δ(13C)で定義され、以下の式で表わされる。
δ(重水素)=(R’sample/R’standard−1)×1000
ここで、R’sampleはベンゼンまたはキシレン中の重水素と水素の存在比であり、R’standardは、自然界での重水素と水素の存在比(0.00015/0.99985に等しい)である。
δ(13C)=(R”sample/R”standard−1)×1000
ここで、R”sampleは、ベンゼンまたはキシレン中の13Cと12Cの存在比であり、R”standardは、自然界での13Cと12Cの存在比(0.01109/0.98891に等しい)である。
【0077】
芳香族生成物およびその誘導体中の同位体組成を、原料中の組成から求めるために、表計算モデルを作成した。すべての場合について、反応中に同位体の崩壊は生じないと仮定した。
ベンゼンおよびキシレン中の重水素と13Cの測定はすべて、高分解能質量分析計による公知の方法で行なった。
【0078】
第1入力値は、表1に示すとおりの、天然の地中にある化学種の同位体組成である。
【表1】

【0079】
この組成範囲と表計算モデルを用いて、公知の製造プロセスで製造されるベンゼンとキシレンの同位体組成を計算した。その結果を表2に示す。
【表2】

【0080】
前記と同じ組成範囲と表計算モデルを用いて、この発明の製造プロセスで製造される製品の同位体組成を計算した。その結果を表3に示す。
【表3】

【0081】
表3では、メタンの脱水素環化によりベンゼンと水素とを含む第1生成物を生成させ、水素の少なくとも一部を、COおよび/またはCOと反応させて、第1生成物よりも水素含有量が少なく、炭化水素含有量が多い第2生成物を生成させ、第2生成物の少なくとも一部が脱水素環化工程へ送り返される製造プロセスによって、ベンゼンを製造する場合を想定した。
このような製造プロセスで製造されたベンゼンのδ(重水素)は、−250未満、例えば−260未満、例えば−270未満、例えば−280未満、例えば−290未満、例えば−300未満であり、δ(13C)の値は、−59を超え、例えば−57を超え、例えば−55を超え、例えば−53を超え、例えば−51を超え、例えば−49を超える値である。
より好ましくは、ベンゼンのδ(13C)は−36を超え、例えば−34を超え、例えば−33を超え、例えば−32を超え、例えば−31を超え、例えば−30を超える値である。
一般に、ベンゼンのδ(重水素)は、−450を超え、例えば−440を超え、例えば−430を超え、例えば−420を超え、例えば−410を超え、例えば−400を超える値であり、ベンゼンのδ(13C)は−24未満、例えば−25未満、例えば−26未満、例えば−27未満、例えば−28未満、例えば−29未満の値である。
【0082】
表3に示す全ての範囲がこの発明の範囲に含まれる。すなわち、この発明のベンゼンは、δ(13C)の値が約−59,−58,−57,−56,−55,−54,−53,−52,−51,−50,−49,−48,−47,−46,−45,−44,−42,−40,−38,−36,−34,−32,−30,−28,−26,または−24と、δ(重水素)の値が約−450,−440,−430,−420,−410,−400,−390,−380,− 370,−360,− 350,−340,−330,−320,−310,−300,−290,−280,−270,− 260,または−250との、いずれかの組み合わせを有する。
【0083】
同様に、表3では、メタンを脱水素環化してベンゼンと水素とを含む第1生成物を生成させ、第1生成物中のベンゼンの少なくとも一部をアルキル化剤と反応させて、アルキルベンゼンを生成させる製造プロセスによって、キシレンを製造する場合を想定した。
また、第1生成物中の水素の少なくとも一部を、COおよび/またはCOと反応させて、第1生成物よりも水素含有量が少なく、炭化水素含有量が多い第2生成物を生成させ、この第2生成物の少なくとも一部を、脱水素環化工程へ送り返すことを想定した。
あるいは、水素の少なくとも一部をCOおよび/またはCOと反応させてメタノールを生成させ、このメタノールを、ベンゼンからキシレンを製造する際のアルキル化剤に用いることを想定した
このような製造プロセスで製造されたキシレンのδ(重水素)は、−250未満、例えば−260未満、例えば−270未満、例えば−280未満、例えば−290未満、例えば−300未満の値である。
ひとつの実施形態では、キシレンのδ(13C)は、−24未満、例えば−25未満、例えば−26未満、例えば−27未満、例えば−28未満、例えば−29未満の値である。
別の実施形態では、キシレンのδ(13C)は−32未満、例えば−34未満、例えば−36未満、例えば−38未満、例えば−40未満、例えば−42未満の値である。
一般に、製造されたキシレンのδ(重水素)は、−450を超え、例えば−440を超え、例えば−430を超え、例えば−420を超え、例えば−410を超え、例えば−400を超える値であり、δ(13C)は、−60を超え、−58を超え、例えば−56を超え、例えば−54を超え、例えば−52を超え、例えば−50を超える値である。
【0084】
表3に示す全ての範囲がこの発明の範囲に含まれる。すなわち、この発明のキシレンは、δ(13C)の値が約−60,−59,−58,−57,−56,−55,−54,−53,−52,−51,−50,−49,−48,−47,−46,−45,−44,−42,−40,−38,−36,−34,−32,−30,−28,−26,または−24と、δ(重水素)の値が約−450,−440,−430,−420,−410,−400,−390,−380,− 370,−360,− 350,−340,−330,−320,−310,−300,−290,−280,−270,− 260,または−250との、いずれかの組み合わせを有する。
【0085】
また、ナフタレンがベンゼンとともに生成し、ベンゼンと同様のδ(重水素)とδ(13C)の、同位体シフトを有する。
【0086】
前記と同じ組成範囲と表計算モデルを用いて、この発明の製造プロセスで製造されるベンゼンおよびキシレンの、種々の誘導体の同位体組成を計算した。その結果を表4に示す。
【表4】

【0087】
表4に示す全ての範囲がこの発明の範囲に含まれる。すなわち、この発明のポリスチレンは、δ(13C)の値が約−60,−59,−58,−57,−56,−55,−54,−53,−52,− 51,−50,−49,−48,−47,−46,−45,−44,−42,−40,−38,−36,−34,−32,−30,−28,−26,−24,または−22と、δ(重水素)の値が約−450,−440,−430,−420,−410,−400,−390,−380,−370,−360,− 350,−340,−330,−320,−310,−300,−290,−280,−270,− 260,−250,−240,−230,−220,または−213との、いずれかの組み合わせを有する。
【0088】
表4に示す全ての範囲がこの発明の範囲に含まれる。すなわち、この発明のポリエチレンテレフタレートは、δ(13C)の値が約−52,−51,−50,−49,−48,−47,−46,−45,−44,−42,−40,−38,−36,−34,−32,−30,−28,−26,−24,−22,−20,または−19と、δ(重水素)の値が約−400,−390,−380,−370,−360,−350,−340,−330,−320,−310,−300,−290,−280,−270,−260,−250,−240,−230,−220,または−210,−200,−190,−180,または−175との、いずれかの組み合わせを有する。
【0089】
表4に示す全ての範囲がこの発明の範囲に含まれる。すなわち、この発明のナイロンは、δ(13C)の値が約−57,−56,−55,−54,−53,−52,−51,−50,−49,−48,−47,−46,−45,−44,−42, −40,−38,−36,−34,−32,−30,−28,−26,−24,または−22と、δ(重水素)の値が約−400,−390,−380,−370,−360,−350,−340,−330,−320,−310,−300,−290,−280,−270,−260,−250,−240,−230,−220,または−210,−200,−190,−180,−170,−160,−150,−140,または−138,−310,−300,−290,−280,−270,−260,−250,−240,−230,−220,または−210,−200,−190,−180,−170,−160,−150,−140,または−138との、いずれかの組み合わせを有する。
【0090】
別の実施形態では、芳香族炭化水素の同位体分布を測定することにより、製造に用いられた製造プロセスを同定することが可能になる。
例えば、出所不明のベンゼンのδ(重水素)の測定値が−250未満で、δ(13C)の測定値が−32未満のとき、ナフサ改質プロセスではなく、メタンの脱水素環化プロセスにより製造されたと、同定することができる。
このように、芳香族炭化水素の製造プロセスの同定が可能になるのは、芳香族炭化水素の製品中の重水素および13Cの量により、ナフサから製造された芳香族炭化水素と、地中にあるメタンのみの脱水素環化により製造された芳香族炭化水素と、地中にあるメタンおよびCOから作られたメタンの脱水素環化により製造された芳香族炭化水素とを識別することができるとの認識に基づく。
【0091】
この発明について、合理的に予想される実施形態について開示した。しかし、予想不能な、あるいはこの発明と均等の範囲内での変更もありうるであろう。さらに、この発明について実施形態に基づき説明したが、当業者であれば、明細書に開示された事項に基づき、種々の変更、修正を行なうことが可能であろう。従って本願には、このような種々の変更、修正などのすべてが包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重水素および13Cを含むベンゼンであって、
ベンゼンのδ(重水素)が−250未満、好ましくは−450を超え−250未満であり、
ベンゼンのδ(13C)が−36を超え、好ましくは−36を超え−24未満であり、
δ(重水素)およびδ(13C)が下記により定義されるベンゼン:
δ(重水素)=(R’sample/R’standard−1)×1000
ここで、R’sampleはベンゼン中の重水素と水素の存在比であり、R’standardは、自然界での重水素と水素の存在比:
δ(13C)=(R”sample/R”standard−1)×1000
ここで、R”sampleはベンゼン中の13Cと12Cの存在比であり、R”standardは、自然界での13Cと12Cの存在比。
【請求項2】
重水素および13Cを含むベンゼンであって、
ベンゼンのδ(重水素)が−250未満、好ましくは−450を超え−250未満であるか、または、
ベンゼンのδ(13C)が−24未満、好ましくは−59を超え−24未満であり、
δ(重水素)およびδ(13C)は請求項1の定義に従い、以下の製造プロセスで製造されたベンゼン:
(a)メタンを含む原料を、ベンゼンを含む芳香族炭化水素に転化できる条件下で、脱水素環化触媒に接触させて、芳香族炭化水素と水素とを含み、原料よりも芳香族を少なくとも5wt%多く含む第1生成物を生成させる。
(b)第1生成物中の水素の少なくとも一部を、COおよび/またはCOと反応させて、第1生成物よりも水素含有量が少なく、炭化水素含有量が多い第2生成物を生成させる。
(c)第2生成物の少なくとも一部を、(a)の接触工程へ送り返す。
【請求項3】
メタンが、天然ガスから生産されたものである、請求項2に記載のベンゼン。
【請求項4】
メタンと、COおよび/またはCOとが、天然ガスから生産されたものである、請求項2または請求項3に記載のベンゼン。
【請求項5】
メタンと、COおよび/またはCOとが、同一の天然ガスから生産されたものである、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のベンゼン。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれか1項に記載のベンゼンとともに製造されたナフタレンであって、δ(重水素)の値が−250未満、または、δ(13C)の値が−24未満である、ナフタレン。
【請求項7】
重水素および13Cを含むキシレンであって、
キシレンのδ(重水素)が−250未満、好ましくは−450を超え−250未満であり、
キシレンのδ(13C)が−24未満、好ましくは−60を超え−24未満であり、
δ(重水素)およびδ(13C)が下記により定義されるキシレン:
δ(重水素)=(R’sample/R’standard−1)×1000
ここで、R’sampleはキシレン中の重水素と水素の存在比であり、R’standardは、自然界での重水素と水素の存在比:
δ(13C)=(R”sample/R”standard−1)×1000
ここで、R”sampleはキシレン中の13Cと12Cの存在比であり、R”standardは、自然界での13Cと12Cの存在比。
【請求項8】
重水素および13Cを含むキシレンであって、
キシレンのδ(重水素)の値が−250未満、好ましくは−450を超え−250未満であるか、または、
キシレンのδ(13C)の値が−32未満、好ましくは−60を超え−32未満であり、
δ(重水素)およびδ(13C)が請求項7の定義に従うキシレン。
【請求項9】
重水素および13Cを含むキシレンであって、
キシレンのδ(重水素)が−250未満、好ましくは−450を超え−250未満であるか、または、
キシレンのδ(13C)が−24未満、好ましくは−60を超え−24未満であり、
δ(重水素)およびδ(13C)が請求項7の定義に従い、以下の製造プロセスで製造されたキシレン。
(a)メタンを含む原料を、ベンゼンを含む芳香族炭化水素に転化できる条件下で、脱水素環化触媒に接触させて、芳香族炭化水素と水素とを含む第1生成物を生成させる。
(b)第1生成物中のベンゼンの少なくとも一部を、ベンゼンをアルキル化してアルキルベンゼンを生成させることができる条件下で、アルキル化剤と接触させる。
【請求項10】
メタンが、天然ガスから生産されたものである、請求項9に記載のキシレン。
【請求項11】
アルキル化剤が、水素とCOおよび/またはCOとから成るか、または水素とCOおよび/またはCOとから製造される請求項9または請求項10に記載のキシレン。
【請求項12】
メタンと、COおよび/またはCOとが、天然ガスから生産されたものである、請求項9から請求項11のいずれか1項に記載のキシレン。
【請求項13】
メタンと、COおよび/またはCOとが、同一の天然ガスから生産されたものである、請求項9から請求項12のいずれか1項に記載のキシレン。
【請求項14】
重水素および13Cを含むキシレンであって、
キシレンのδ(重水素)が−250未満、好ましくは−450を超え−250未満であるか、または、
キシレンのδ(13C)が−24未満、好ましくは−60を超え−24未満であり、
δ(重水素)およびδ(13C)が請求項7の定義に従い、以下の製造プロセスで製造されたキシレン。
(a)メタンを含む原料を、ベンゼンを含む芳香族炭化水素に転化できる条件下で、脱水素環化触媒に接触させて、芳香族炭化水素と水素とを含む第1生成物を生成させる。
(b)第1生成物中の水素の少なくとも一部を、COおよび/またはCOと反応させて、第1生成物よりも水素含有量が少なく、炭化水素含有量が多い第2生成物を生成させる。
(c)第2生成物の少なくとも一部を、(a)の接触工程へ送り返す。
(d)第1生成物中のベンゼンの少なくとも一部を、ベンゼンをアルキル化してアルキルベンゼンを生成させることができる条件下で、アルキル化剤と接触させる。
【請求項15】
メタンが、天然ガスから生産されたものである、請求項14に記載のキシレン。
【請求項16】
メタンと、COおよび/またはCOとが、天然ガスから生産されたものである、請求項14または請求項15に記載のキシレン。
【請求項17】
メタンと、COおよび/またはCOとが、同一の天然ガスから生産されたものである、請求項14から請求項16のいずれか1項に記載のキシレン。
【請求項18】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のベンゼンから製造された炭化水素製品であって、トルエン、クメン、エチルベンゼン、スチレン、ポリスチレン、フェノール、ポリエチレンテレフタレート、シクロヘキサン、ナイロンからなる群から選択される炭化水素製品。
【請求項19】
請求項7から請求項17のいずれか1項に記載のキシレンから製造された炭化水素製品であって、トルエン、クメン、エチルベンゼン、スチレン、ポリスチレン、フェノール、ポリエチレンテレフタレート、シクロヘキサン、ナイロンからなる群から選択される炭化水素製品。
【請求項20】
トルエン、クメン、エチルベンゼン、スチレン、ポリスチレン、フェノール、ポリエチレンテレフタレート、シクロヘキサン、ナイロンからなる群から選択される炭化水素製品であって、δ(重水素)およびδ(13C)の値が、表4に示す範囲にある炭化水素製品。
【請求項21】
芳香族炭化水素製品に用いられた特定の製造工程、および/または、特定の原料を同定する方法であって、芳香族炭化水素製品中のδ(重水素)およびδ(13C)の量を測定することを含む方法。
【請求項22】
ナフサから製造された芳香族炭化水素製品と、地中にあるメタンのみの脱水素環化により製造された芳香族炭化水素製品と、地中にあるメタンおよびCOから作られたメタンの脱水素環化により製造された芳香族炭化水素製品とを識別するために用いられる、請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2009−538908(P2009−538908A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513191(P2009−513191)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/012419
【国際公開番号】WO2007/142864
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】