説明

メタンガス精製装置

【課題】バイオガスから高濃度の濃縮メタンを得ることができるメタンガス精製装置を提供することを課題とする。
【解決手段】バイオガス中に含まれるメタンガスを精製するメタンガス精製装置であって、バイオガスを冷却部3に通すことで冷却し、バイオガス中の二酸化炭素を始めとする不純物を殆ど固化させ、次いで、この冷却部3からのバイオガス中の固化不純物を固気分離膜4に捕集して確実に除去し、バイオガスから高濃度の濃縮メタンを得ることができるメタンガス精製装置100を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオガス中に含まれるメタンガスを精製するメタンガス精製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオマスエネルギーとしてバイオガスが注目されている。このバイオガスの一般的な組成は、メタンが約60%、二酸化炭素が約40%、水素、窒素、酸素等がそれぞれ1%程度であり、その他、シロキサン、硫化水素、炭化水素等を微量含んでいる。ここで、バイオガスを使用する上での問題点として以下の点が挙げられる。すなわち、(1)ガス組成が安定しない、(2)メタン濃度が低いため、天然ガスやプロパンガスに比して発熱量が低く、汎用性に乏しい、(3)シロキサン等の有害物質を含む、等である。このような問題点を解決するためには、メタン以外の不純物を除去することによって、より安定した品質で熱量の高いガスを作ることが必要である。
【0003】
ここで、バイオガスを精製する方法としては、吸着法、吸収法、膜分離法等の技術が単独又は組み合わされて用いられている。しかしながら、吸着法にあっては、吸着剤の交換が必要となるため、手間とコストがかかり、吸収法にあっては、多量の水を使うため、排水処理にコストがかかり、膜分離法にあっては、膜の交換が必要となるため、手間とコストがかかると共に、オフガスが発生するため、メタンガスの回収率が悪い。
【0004】
そこで、以下の特許文献1には、バイオガスを加圧し冷却することによって、不純物ガスを凝縮させ液化させて除去し精製メタンを得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−504875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、液化二酸化炭素として除去する除去率が然程高くなく、従って、メタンを最大90モル%まで含むメタンガスしか得ることができず、ガス会社等へ売却するにあっては低いメタン精製率である。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、バイオガスから高濃度の濃縮メタンを得ることができるメタンガス精製装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるメタンガス精製装置は、バイオガス中に含まれるメタンガスを精製するメタンガス精製装置において、バイオガスを冷却し不純物を固化する冷却部と、冷却部からのバイオガスから固形分を除去する固気分離膜と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
このようなメタンガス精製装置によれば、バイオガスが冷却部により冷却され、バイオガス中の二酸化炭素を始めとする不純物が殆ど固化され、この冷却部からのバイオガス中の固化不純物が固気分離膜に捕集されて確実に除去される。従って、バイオガスから高濃度の濃縮メタンを得ることができる。
【0010】
ここで、冷却部と固気分離膜の組が2組直列に接続され、上流側の第1の冷却部の温度は、不純物であるシロキサンを固化する温度に設定され、下流側の第2の冷却部の温度は、不純物である二酸化炭素を固化する温度に設定されているのが好ましい。
【0011】
このような構成を採用した場合、冷却部の温度を、シロキサンを固化する温度より低温である二酸化炭素を固化する温度に設定し、1個の冷却部のみでシロキサン及び二酸化炭素の両方を固化し下流の固気分離膜で除去する場合に比して、効率良く各不純物を除去することができる。
【0012】
ここで、精製処理を行うに連れて、不純物が固化した固化物、特に二酸化炭素が固化したドライアイスが、冷却部のバイオガスが流れる流路に付着し、伝熱不足が生じる。従って、冷却部においてバイオガスが流れる流路に付着した固化物を気化させ当該流路内をクリーニングするクリーニング手段を備えるのが好ましい。このような構成を採用した場合、冷却部の流路に付着した固化物が気化し、当該流路内がクリーニングされるため、伝熱不足が解消される。
【0013】
また、第1の冷却部、これより下流側の第1の固気分離膜、第2の冷却部、これより下流側の第2の固気分離膜が直列に並ぶ組を並列に備え、精製処理を行う組が切り替え可能とされ、何れか一方の組で精製処理を行うにあたって、他方の精製処理を行わない組においてクリーニング手段によるクリーニングを行う構成であると、精製処理を行う組で高濃度の濃縮メタンを生成しつつ、精製処理を行わない組の冷却部の流路内をクリーニング手段によりクリーニングできる。
【0014】
ここで、固化物の付着が特に問題となるのは、第2の冷却部の流路において二酸化炭素が固化し付着するドライアイスである。従って、クリーニング手段は、精製処理を行わない組において第2の冷却部の流路に熱媒体を流すのが好ましい。このような構成を採用した場合、精製処理を行う組で高濃度の濃縮メタンを生成しつつ、精製処理を行わない組において第2の冷却部の流路内に付着したドライアイスが熱媒体により気化されて二酸化炭素となり、当該流路内をクリーニングできる。
【0015】
また、精製処理を行わない組において第2の冷却部の流路に流れた熱媒体を、精製処理を行う組において第1の冷却部の補助冷却に用いる構成とすると、冷却コストを低減できる。
【0016】
また、第1の冷却部、これより下流側の第1の固気分離膜、第2の冷却部、これより下流側の第2の固気分離膜の順にバイオガスが流れる順方向流路と、第1の冷却部及び第2の冷却部を共通に使用し、第2の冷却部、第1の冷却部の順にバイオガスが流れる逆方向流路と、逆方向流路に設けられ、第2の冷却部より下流側の第3の固気分離膜及び第1の冷却部より下流側の第4の固気分離膜と、を具備し、精製処理を行う流路が切り替え可能とされ、クリーニング手段は、逆方向流路で精製処理を行う場合に、第1の冷却部の温度と第2の冷却部の温度を入れ替える構成であると、二酸化炭素を固化する温度に設定され流路内にドライアイスが付着して伝熱不足が生じた冷却部が、今度は、シロキサンを固化する温度(二酸化炭素を固化する温度より高い温度)に設定されるため、当該冷却部の流路内に付着したドライアイスが気化されて二酸化炭素となる。従って、精製処理を行う流路で高濃度の濃縮メタンを生成しつつ、精製処理を行わない流路の冷却部の流路内をクリーニングでき、また、このとき、該当する冷却部において精製処理を行わない流路で生じる気化熱は、当該冷却部において精製処理を行う流路の冷却に利用することができる。
【発明の効果】
【0017】
このように本発明によるメタンガス精製装置によれば、バイオガスから高濃度の濃縮メタンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係るメタンガス精製装置を示す概略構成図である。
【図2】図1中の冷却部の具体的な構成を示す一部破断斜視図である。
【図3】二酸化酸素濃度と温度の関係を示す線図である。
【図4】シロキサン濃度と温度の関係をフィルタの有無で比較して示す線図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るメタンガス精製装置を示す概略構成図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るメタンガス精製装置を示す概略構成図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係るメタンガス精製装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明によるメタンガス精製装置の好適な実施形態について図1〜図7を参照しながら説明する。なお、各図において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図1〜図4は、本発明の第1実施形態を、図5〜図7は、本発明の第2〜第4実施形態をそれぞれ示すものであり、先ず、図1〜図4に示す第1実施形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態に係るメタンガス精製装置を示す概略構成図である。
【0021】
図1に示すように、メタンガス精製装置100は、メタン発酵槽1、ポンプ2、冷却部3、フィルタ4をこの順に備える。
【0022】
メタン発酵槽1は、例えば、生ごみ、食品廃棄物、脱水汚泥等の有機物を導入し、嫌気性微生物によりメタン発酵して、メタンガスと二酸化炭素を主成分としたバイオガスを生成するものである。
【0023】
ポンプ2は、メタン発酵槽1で生成したバイオガスを吸引し下流に移送するためのものである。
【0024】
冷却部3は、ポンプ2からのバイオガスを冷却するためのものであり、ここでは熱交換器が用いられている。この冷却部3には、内部流路を流れるバイオガスを所定の温度に冷却するための冷凍機5が付設されている。
【0025】
図2は、図1中の冷却部3の具体的な構成を示す一部破断斜視図である。図2に示すように、冷却部3には、その内部にバイオガスが流れる流路が形成され、この流路を流れるバイオガスの流れ方向Aに直交し横切るように銅パイプ5aが多数並設され、この銅パイプ5aを冷凍機5により冷却することで、冷却部3内に形成された流路を流れるバイオガスを冷却する構成とされている。ここで、バイオガス中には、硫化水素等の腐食性ガスが混じっているため、バイオガスと接触する部分は、ステンレス等の耐腐食性金属で覆うことが好ましい。そして、冷却部3の温度は、バイオガス中の不純物である二酸化炭素を固化するための温度、具体的には、145K程度に設定されている。なお、ここでは、冷却部3に対して、設定温度になるように制御するための温度調節計6が付設されている。
【0026】
図1に示すフィルタ4は、冷却部3により冷却されたバイオガスから固形分を除去し気体分を通過させる固気分離膜として機能するものであり、冷却部3からのバイオガスが流れる流路に対面するように設けられている。
【0027】
このように構成されたメタンガス精製装置100によれば、メタン発酵槽1で生成されたバイオガスは、ポンプ2の駆動に従い下流に移送され、冷却部3を通過する際に145K程度に冷却され、バイオガス中の二酸化炭素は殆ど固化されドライアイスになると共に、水分やシロキサンも固化される。
【0028】
図3は、二酸化酸素濃度と温度の関係を示す線図である。図3に示すように、大気圧下で145K程度にまで冷却すると、二酸化炭素は0.5%程度まで除去できる。
【0029】
そして、ドライアイスを始めとした水分やシロキサン等の固化不純物及びメタンガスを含むバイオガスは、フィルタ4に達し当該フィルタ4を通過する際に、上記固化不純物がフィルタ4に捕集されバイオガスから除去される。
【0030】
図4は、シロキサン濃度と温度の関係をフィルタの有無で比較して示す線図であり、本発明者による実験値である。丸印はフィルタが有る場合を示し、四角印はフィルタが無い場合を示している。図4に示すように、フィルタが無い場合に比してフィルタが有る場合の方が、大幅にシロキサン濃度を低下できる。
【0031】
このように、本実施形態においては、バイオガスが冷却部3により冷却され、バイオガス中の二酸化炭素を始めとする不純物が殆ど固化され、この冷却部3からのバイオガス中の固化不純物がフィルタ4に捕集されて確実に除去されるため、バイオガスから高濃度の濃縮メタンを得ることができる。また、上記固化不純物の除去を、フィルタ4という簡易な構成で低コストにて行うことができる。
【0032】
なお、ここでは述べていないが、脱硫装置を設けてバイオガス中の硫化水素を除去するようにしても良い。
【0033】
図5は、本発明の第2実施形態に係るメタンガス精製装置を示す概略構成図である。
【0034】
この第2実施形態のメタンガス精製装置200が第1実施形態のメタンガス精製装置100と違う第1の点は、第1実施形態の冷却部3とフィルタ4の組を2組直列に接続し、上流側の冷却部を第1の冷却部13、上流側のフィルタを第1のフィルタ15、下流側の冷却部を第2の冷却部14、下流側のフィルタを第2のフィルタ16とした点である。
【0035】
また、第2実施形態のメタンガス精製装置200が第1実施形態のメタンガス精製装置100と違う第2の点は、第1の冷却部13を冷却する第1の冷凍機17により第1の冷却部13の温度を、不純物であるシロキサンを固化する温度である200K程度に設定し、第2の冷却部14を冷却する第2の冷凍機18により第2の冷却部14の温度を、不純物である二酸化炭素を固化する温度である145K程度に設定した点である。
【0036】
このように構成されたメタンガス精製装置200によれば、メタン発酵槽1からのバイオガスは、第1の冷却部13を通過する際に200K程度に冷却され、バイオガス中のシロキサン及び水分が固化され、この第1の冷却部13からのバイオガス中の固化シロキサン及び氷が第1のフィルタ15に捕集されて確実に除去され、第1のフィルタ15からのバイオガスは、第2の冷却部14を通過する際に145K程度に冷却され、バイオガス中の二酸化炭素が固化され、この第2の冷却部14からのバイオガス中のドライアイスが第2のフィルタ16に捕集されて確実に除去される。
【0037】
このように、第2実施形態においては、固化温度が違うシロキサン、二酸化炭素を順を追って別々に固化して除去していくため、1個の冷却部3のみでシロキサン及び二酸化炭素の両方を固化し下流のフィルタ4で除去する第1実施形態に比して、効率良く各不純物を除去することができる。
【0038】
ところで、精製処理を行うに連れて、不純物が固化した固化物、特に二酸化炭素が固化したドライアイスが、冷却部のバイオガスが流れる流路に付着し、伝熱不足が生じる。そこで、以降の実施形態では、これをクリーニング手段によりクリーニングすることで解決する。
【0039】
図6は、本発明の第3実施形態に係るメタンガス精製装置を示す概略構成図である。この第3実施形態のメタンガス精製装置300にあっては、第2実施形態の冷却部とフィルタが直列に並ぶ組を並列に備えている。
【0040】
具体的には、第2実施形態の第1の冷却部13、第1のフィルタ15、第2の冷却部14、第2のフィルタ16の直列組の経路L1の他に、これと並列に、第1の冷却部23、第1のフィルタ25、第2の冷却部24、第2のフィルタ26の直列組の経路L2を備えている。
【0041】
第1の冷却部13,23は、第2実施形態と同様な第1の冷凍機17によりシロキサンを固化する温度に冷却され、第2の冷却部14,24は、第2実施形態と同様な第2の冷凍機18により二酸化炭素を固化する温度に冷却される。
【0042】
また、これらの並列組にあっては、精製処理を行う組が切り替え可能とされている。
【0043】
そして、ポンプ2と第1の冷却部13との間にはバルブV1が、第1の冷却部13と第1のフィルタ15との間にはバルブV2が、第1のフィルタ15と第2の冷却部14との間にはバルブV3が、第2の冷却部14と第2のフィルタ16との間にはバルブV4が、第2のフィルタ16の下流側にはバルブV5がそれぞれ設けられ、ポンプ2と第1の冷却部23との間にはバルブV6が、第1の冷却部23と第1のフィルタ25との間にはバルブV7が、第1のフィルタ25と第2の冷却部24との間にはバルブV8が、第2の冷却部24と第2のフィルタ26との間にはバルブV9が、第2のフィルタ26の下流側にはバルブV10がそれぞれ設けられている。
【0044】
また、メタンガス精製装置300にあっては、冷却部の流路内をクリーニングするための熱媒体の流路が2系統設けられている。ここで用いられる熱媒体は、例えばNやHe等である。
【0045】
一方の熱媒体流路L3は、図示上側の第2の冷却部14の流路をクリーニングするためのもので、熱媒体の供給側に接続されると共に第2の冷却部14の流路(バイオガスが流れる流路)に接続されて当該第2の冷却部14の流路を共通に使用し、図示下側の第1の冷却部23内を通って排出される流路であり、第2の冷却部14の上流側にはバルブV15が、第2の冷却部14の下流側にはバルブV16が、第1の冷却部23の上流側にはバルブV17が、第1の冷却部23の下流側にはバルブV18がそれぞれ設けられている。
【0046】
また、他方の熱媒体流路L4は、図示下側の第2の冷却部24の流路をクリーニングするためのもので、熱媒体の供給側に接続されると共に第2の冷却部24の流路(バイオガスが流れる流路)に接続されて当該第2の冷却部24の流路を共通に使用し、図示上側の第1の冷却部13内を通って排出される流路であり、第2の冷却部24の上流側にはバルブV11が、第2の冷却部24の下流側にはバルブV12が、第1の冷却部13の上流側にはバルブV13が、第1の冷却部13の下流側にはバルブV14がそれぞれ設けられている。
【0047】
そして、各フィルタ15,16,25,26には、捕集した固化不純物を排出するためのラインがそれぞれ接続され、各ラインには、バルブV19〜V22がそれぞれ設けられている。
【0048】
このように構成されたメタンガス精製装置300によれば、一方の経路で精製処理を行うべく例えば先ず図示上側の経路L1が選択され、このとき、バルブV1〜V5が開とされ、他の全てのバルブV6〜V22が閉とされる。この状態でのバイオガスの精製処理は第2実施形態と同様である。
【0049】
そして、精製処理を行うに連れて、不純物が固化した固化物、特に二酸化炭素が固化したドライアイスが、第2の冷却部14のバイオガスが流れる流路に付着し、伝熱不足が生じる。
【0050】
このような状態となったら、バルブV1〜V5が閉とされて図示上側の経路L1での精製処理が止められると共に、バルブV15〜V18が開とされる。これにより、熱媒体が、第2の冷却部14のバイオガスが流れる流路に流れ、流路内に付着したドライアイスが熱媒体により気化されて二酸化炭素となり、当該流路内がクリーニングされる。
【0051】
この熱媒体は、さらに第1の冷却部23内を通って流れるため、精製処理を行う図示下側の経路L2において第1の冷却部23の補助冷却に用いられる。
【0052】
そして、バルブV6〜V10が開とされ図示下側の経路L2に切り替えられて当該経路L2で精製処理が行われる。バルブV15〜V18は、第2の冷却部14でのドライアイスの気化に従い適宜閉とされる。
【0053】
また、精製処理を行うに連れて、ドライアイスが第2の冷却部24のバイオガスが流れる流路に付着し伝熱不足が生じたら、バルブV6〜V10が閉とされて図示下側の経路L2での精製処理が止められる共に、バルブV11〜V14が開とされ、熱媒体が、第2の冷却部24のバイオガスが流れる流路に流れ、流路内に付着したドライアイスが熱媒体により気化されて二酸化炭素となり、当該流路内がクリーニングされる。この熱媒体は、さらに第1の冷却部13内を通って流れ、精製処理を行う図示上側の経路L1において第1の冷却部13の補助冷却に用いられる。そして、バルブV1〜V5が開とされて図示上側の経路L1に切り替えられて当該経路L1で精製処理が行われる。バルブV11〜V14は、第2の冷却部24でのドライアイスの気化に従い適宜閉とされる。
【0054】
そして、精製処理を行うに連れて、ドライアイスが第2の冷却部14のバイオガスが流れる流路に付着し伝熱不足が生じたら、最初のプロセスに戻り、これを繰り返す。
【0055】
なお、バルブV19〜V22は、各フィルタ15,16,25,26のクリーニングを行う場合に適宜開閉される。
【0056】
このように、第3実施形態においては、クリーニング手段によって、冷却部の流路に付着した固化物が気化し、当該流路内がクリーニングされるため、伝熱不足が解消される。伝熱不足を検知する指標としては、冷却部に対して設置した温度調節計の指示値、冷却後のバイオガス濃度、冷却後の二酸化炭素濃度(若しくはシロキサン濃度)等が挙げられる。これらの指標が基準値よりも高い場合に伝熱不足と判定する。
【0057】
また、第1の冷却部、第1のフィルタ、第2の冷却部、第2のフィルタが直列に並ぶ組を並列に備え、精製処理を行う組が切り替え可能とされ、何れか一方の組で精製処理を行うにあたって、他方の精製処理を行わない組においてクリーニング手段によるクリーニングを行う構成のため、精製処理を行う組で高濃度の濃縮メタンを生成しつつ、精製処理を行わない組の冷却部の流路内をクリーニング手段によりクリーニングできる。
【0058】
また、特に付着が問題となるのはドライアイスのため第2の冷却部14,24に着目し、クリーニング手段により、精製処理を行わない組において第2の冷却部の流路に熱媒体を流すようにしているため、精製処理を行う組で高濃度の濃縮メタンを生成しつつ、精製処理を行わない組において第2の冷却部の流路内に付着したドライアイスが熱媒体により気化して二酸化炭素となり、当該流路内をクリーニングできる。
【0059】
また、精製処理を行わない組において第2の冷却部の流路に流れた熱媒体を、精製処理を行う組において第1の冷却部の補助冷却に用いるため、冷却コストを低減できる。
【0060】
図7は、本発明の第4実施形態に係るメタンガス精製装置を示す概略構成図である。この第4実施形態のメタンガス精製装置400にあっては、第2実施形態の第1の冷却部13、第1のフィルタ15、第2の冷却部14、第2のフィルタ16及びバルブV1〜V5を直列に有する経路L1が用いられ、当該経路L1が、バイオガスが順方向に流れる順方向流路とされ、さらに、第1の冷却部13及び第2の冷却部14を共通に使用し、第2の冷却部14、第1の冷却部13の順にバイオガスが流れる逆方向流路L5が設けられている。そして、この逆方向流路L5においては、第2の冷却部14より下流側に第3のフィルタ35が、第1の冷却部13より下流側に第4のフィルタ36がそれぞれ設けられている。
【0061】
また、逆方向流路L5にあっては、第2の冷却部24の上流側にバルブV31が、第2の冷却部24の下流側にバルブV32が、第3のフィルタ35の下流側にバルブV33が、第1の冷却部13の下流側にバルブV34が、第4のフィルタ36の下流側にバルブV35がそれぞれ設けられている。
【0062】
これらの流路L1、L5にあっては、精製処理を行う流路が切り替え可能とされている。
【0063】
また、逆方向流路L5で精製処理を行う場合には、第1の冷却部13の温度と第2の冷却部14の温度を入れ替える構成となっている。
【0064】
そして、各フィルタ15,16,35,36には、捕集した固化不純物を排出するためのラインがそれぞれ接続され、各ラインには、バルブV19,V20,V36,V37がそれぞれ設けられている。
【0065】
このように構成されたメタンガス精製装置400によれば、精製処理を行うべく例えば順方向流路L1が選択されると、バルブV1〜V5が開とされ、他の全てのバルブが閉とされる。この状態でのバイオガスの精製処理は第2実施形態と同様である。
【0066】
そして、精製処理を行うに連れて、不純物が固化した固化物、特に二酸化炭素が固化したドライアイスが、順方向流路L1での第2の冷却部14のバイオガスが流れる流路に付着し、伝熱不足が生じると、バルブV1〜V5が閉とされて順方向流路L1での精製処理が止められると共に、バルブV31〜V35が開とされバイオガスの流路が切り替えられて、バイオガスは逆方向流路L5を流れる。
【0067】
このとき、第1の冷却部13の温度と第2の冷却部14の温度が入れ替えられ、具体的には、第2の冷却部14が、第2の冷凍機18により、シロキサンを固化する温度である200K程度に設定され、第1の冷却部13が、二酸化炭素を固化する温度である145K程度に設定されるため、順方向流路L1での第2の冷却部14の流路内に付着したドライアイスは気化されて二酸化炭素となり、当該流路内がクリーニングされる。このとき、逆方向流路L5にあっては、バイオガスの精製処理が第2実施形態と同様にして行われる。また、このとき、第2の冷却部14において順方向流路(精製処理を行わない流路)L1で生じる気化熱は、当該第2の冷却部14において逆方向流路(精製処理を行う流路)L5の冷却に利用される。
【0068】
そして、逆方向流路L5で精製処理を行うに連れて、ドライアイスが逆方向流路L5での第1の冷却部13のバイオガスが流れる流路に付着し伝熱不足が生じたら、バルブV31〜V35が閉とされてと逆方向流路L5での精製処理が止められると共に、バルブV1〜V5が開とされバイオガスの流路が切り替えられて、バイオガスは順方向流路L1を流れる。
【0069】
このとき、第1の冷却部13の温度と第2の冷却部14の温度が入れ替えられ、具体的には、第1の冷却部13が、第1の冷凍機17により、シロキサンを固化する温度である200K程度に設定され、第2の冷却部14が、二酸化炭素を固化する温度である145K程度に設定されるため、逆方向流路L5での第1の冷却部13の流路内に付着したドライアイスは気化されて二酸化炭素となり、当該流路内がクリーニングされる。このとき、順方向流路L1にあっては、バイオガスの精製処理が行われる。また、このとき、第1の冷却部13において逆方向流路(精製処理を行わない流路)L5で生じる気化熱は、当該第1の冷却部13において順方向流路(精製処理を行う流路)L1の冷却に利用される。
【0070】
そして、精製処理を行うに連れて、ドライアイスが順方向流路L1での第2の冷却部14のバイオガスが流れる流路に付着し伝熱不足が生じたら、最初のプロセスに戻り、これを繰り返す。
【0071】
なお、バルブV19,V20,V36,V37は、各フィルタ15,16,35,36のクリーニングを行う場合に適宜開閉される。
【0072】
このように、第4実施形態においては、第1の冷却部13、第1のフィルタ15、第2の冷却部14、第2のフィルタ16の順にバイオガスが流れる順方向流路L1と、第1の冷却部13及び第2の冷却部14を共通に使用し、第2の冷却部14、第1の冷却部13の順にバイオガスが流れる逆方向流路L5と、逆方向流路L5に設けられ、第2の冷却部14より下流側の第3のフィルタ35及び第1の冷却部13より下流側の第4のフィルタ36と、を具備し、精製処理を行う流路が切り替え可能とされ、クリーニング手段は、逆方向流路L5で精製処理を行う場合に、第1の冷却部13の温度と第2の冷却部14の温度を入れ替える構成のため、二酸化炭素を固化する温度に設定され流路内にドライアイスが付着して伝熱不足が生じた冷却部が、今度は、シロキサンを固化する温度(二酸化炭素を固化する温度より高い温度)に設定され、当該冷却部の流路内に付着したドライアイスが気化されて二酸化炭素となり、従って、精製処理を行う流路で高濃度の濃縮メタンを生成しつつ、精製処理を行わない流路の冷却部の流路内をクリーニングでき、また、このとき、該当する冷却部において精製処理を行わない流路で生じる気化熱が、当該冷却部において精製処理を行う流路の冷却に利用することができる。
【0073】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記第3実施形態にあって、第1の冷却部13,23において、バイオガスが流れる流路と熱媒体が流れる流路とを二重管の内管、外管にそれぞれ流す構成とすれば、補助冷却を効率的に行うことができる。
【0074】
また、上記第4実施形態にあって、第1、第2の冷却部13,14において、順方向流路L1と逆方向流路L5とを二重管の内管、外管で構成すれば、気化熱利用を効率的に行うことができる。
【符号の説明】
【0075】
3,13,14,23,24…熱交換器(冷却部)、4,15,16,25,26,35,36…フィルタ(固気分離膜)、5,17,18…冷凍機、100,200,300,400…メタンガス精製装置、L1…順方向流路、L3…一方の熱媒体流路、L4…他方の熱媒体流路、L5…逆方向流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオガス中に含まれるメタンガスを精製するメタンガス精製装置において、
前記バイオガスを冷却し不純物を固化する冷却部と、
前記冷却部からのバイオガスから固形分を除去する固気分離膜と、を備えたことを特徴とするメタンガス精製装置。
【請求項2】
前記冷却部と前記固気分離膜の組が2組直列に接続され、
上流側の第1の冷却部の温度は、前記不純物であるシロキサンを固化する温度に設定され、
下流側の第2の冷却部の温度は、前記不純物である二酸化炭素を固化する温度に設定されていることを特徴とする請求項1記載のメタンガス精製装置。
【請求項3】
前記冷却部において前記バイオガスが流れる流路に付着した固化物を気化させ当該流路内をクリーニングするクリーニング手段を備えることを特徴とする請求項2記載のメタンガス精製装置。
【請求項4】
前記第1の冷却部、これより下流側の第1の固気分離膜、前記第2の冷却部、これより下流側の第2の固気分離膜が直列に並ぶ組を並列に備え、
精製処理を行う組が切り替え可能とされ、
何れか一方の組で精製処理を行うにあたって、他方の精製処理を行わない組において前記クリーニング手段によるクリーニングを行うことを特徴とする請求項3記載のメタンガス精製装置。
【請求項5】
前記クリーニング手段は、精製処理を行わない組において第2の冷却部の流路に熱媒体を流すことを特徴とする請求項4記載のメタンガス精製装置。
【請求項6】
前記精製処理を行わない組において第2の冷却部の流路に流れた熱媒体を、精製処理を行う組において第1の冷却部の補助冷却に用いることを特徴とする請求項5記載のメタンガス精製装置。
【請求項7】
前記第1の冷却部、これより下流側の第1の固気分離膜、前記第2の冷却部、これより下流側の第2の固気分離膜の順に前記バイオガスが流れる順方向流路と、
前記第1の冷却部及び前記第2の冷却部を共通に使用し、前記第2の冷却部、前記第1の冷却部の順に前記バイオガスが流れる逆方向流路と、
前記逆方向流路に設けられ、前記第2の冷却部より下流側の第3の固気分離膜及び前記第1の冷却部より下流側の第4の固気分離膜と、を具備し、
精製処理を行う流路が切り替え可能とされ、
前記クリーニング手段は、前記逆方向流路で精製処理を行う場合に、前記第1の冷却部の温度と前記第2の冷却部の温度を入れ替えることを特徴とする請求項3記載のメタンガス精製装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−231181(P2011−231181A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100992(P2010−100992)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】