説明

メッシュ生成装置、メッシュ生成方法、及びコンピュータプログラム

【課題】解析対象となる回転体の形状モデルの対称性を損なうことなく、計算精度を高く維持しつつ計算時間を短縮することができるメッシュ生成装置、メッシュ生成方法、及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報及び複数の対称領域に関する情報に基づいて、形状モデルを複数の対称領域に分割し、所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶する。生成した所定のメッシュに基づいて、所定の回転角度まで回転させて磁界解析し、磁界解析の結果に基づいたアダプティブ解析によりメッシュを細分化する。複数の対称領域のうち、メッシュが最も密に細分化された対称領域を抽出し、抽出した対称領域に生成してあるメッシュを、複数の対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有限要素法を用いて電磁界などの数値解析を行うためのメッシュを生成するメッシュ生成装置、メッシュ生成方法、及びコンピュータを該メッシュ生成装置として具現化するためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
回転機は、様々な機器に組み込まれて使用される重要な部品であり、高性能化のための改良が繰り返されている。新たな回転機の設計を支援するために、設計された回転機の性能を、有限要素法を用いて数値解析することが一般的に行われている。
【0003】
有限要素法では、CADシステム等を用いて作成された、解析対象を表した二次元又は三次元の形状モデルを、複数の多角形又は多面体の要素の組み合わせとして表現したメッシュを生成し、数値解析を行う。また、解析結果の計算精度を高めるために、得られた解の誤差を評価し、要素分割と電磁界解析とを繰り返し実行するアダプティブメッシュ方法も開発されている。
【0004】
しかし、解析結果の計算精度を高めるべくより細かく要素分割を行うにつれ、所定の物理量を求めるために方程式を解く回数が反復回数に応じて増加することになり、計算時間が膨大となるおそれがあった。そこで、非特許文献1では、回転部のメッシュを回転させ、回転させる都度アダプティブ解析を実行することによりメッシュを細分化していく。すなわち、回転部のメッシュを回転させた場合、その前の回転時にアダプティブ解析を実行することにより細分化したメッシュを基礎として、再度アダプティブ解析を実行する。このようにすることで、2回目以降のアダプティブ解析に要する時間を短縮することができ、一定の計算精度を維持することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】山▲崎▼克巳、他3名、「回転機の電磁界解析のための逐次アダプティブ有限要素法」、2005年、電気学会論文、125巻3号、p.259−269
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、非特許文献1に開示されている方法では、回転部のメッシュの回転位置に応じて、生成されるメッシュが変動することから、計算誤差が比較的生じやすい。したがって、高い計算精度が要求される解析対象物に対しては適用することが困難であるという問題があった。
【0007】
一方、計算精度を維持するべく、メッシュが生成される領域の親子関係を維持しつつアダプティブ解析を実行することも考えられている。例えば回転機におけるコギングトルクを計算する場合、メッシュの対称性を維持しつつ計算することができるので、計算したコギングトルクの波形に上下方向のオフセットが生じることもなく、計算精度を高く維持することができる。しかし、非特許文献1と同様、回転部のメッシュを回転させ、回転させる都度アダプティブ解析を実行することによりメッシュを細分化していくので、計算時間を短縮することができないという問題点が残されていた。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、解析対象となる回転体の形状モデルの対称性を損なうことなく、計算精度を高く維持しつつ計算時間を短縮することができるメッシュ生成装置、メッシュ生成方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために第1発明に係るメッシュ生成装置は、形状モデルを複数の有限要素の組み合わせとして表現し、有限要素法にて所定の物理量を算出するためのメッシュを生成して記憶するメッシュ生成装置において、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報を取得し、取得した形状モデルに関する情報を記憶部に記憶する形状モデル取得手段と、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域に関する情報を取得する対称領域情報取得手段と、取得した形状モデルに関する情報及び複数の対称領域に関する情報に基づいて、前記形状モデルを複数の対称領域に分割し、所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶するメッシュ生成手段と、生成した所定のメッシュに基づいて、所定の回転角度まで回転させて磁界解析する解析手段と、磁界解析の結果に基づいたアダプティブ解析によりメッシュを細分化する細分化手段と、複数の対称領域のうち、該細分化手段でメッシュが最も密に細分化された対称領域を抽出する抽出手段と、抽出した対称領域に生成してあるメッシュを、複数の前記対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写する複写手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
次に、上記目的を達成するために第2発明に係るメッシュ生成装置は、形状モデルを複数の有限要素の組み合わせとして表現し、有限要素法にて所定の物理量を算出するためのメッシュを生成して記憶するメッシュ生成装置において、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報を取得し、取得した形状モデルに関する情報を記憶部に記憶する形状モデル取得手段と、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域に関する情報を取得する対称領域情報取得手段と、取得した形状モデルに関する情報及び複数の対称領域に関する情報に基づいて、前記形状モデルを複数の対称領域に分割し、所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶するメッシュ生成手段と、生成した所定のメッシュに基づいて、所定の回転角度まで回転させて磁界解析する解析手段と、磁界解析の結果に基づいたアダプティブ解析によりメッシュを細分化する細分化手段と、該細分化手段で複数の対称領域にそれぞれ生成されたメッシュに基づいて、複数の所定の領域にて最も密に細分化されたメッシュを、前記対称領域内に生成する一のメッシュとして合成するメッシュ合成手段と、合成したメッシュを、複数の前記対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写する複写手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、第3発明に係るメッシュ生成装置は、第1又は第2発明において、前記形状モデルに関する情報の入力を受け付け、入力を受け付けた形状モデルに関する情報を記憶部に記憶する形状モデル入力受付手段を備えることを特徴とする。
【0012】
また、第4発明に係るメッシュ生成装置は、第1乃至第3発明のいずれか1つにおいて、前記対称領域情報取得手段は、前記複数の対称領域に関する情報の入力を受け付ける対称領域情報受付手段を備え、前記メッシュ生成手段は、入力を受け付けた複数の対称領域に関する情報に基づいて、複数の前記対称領域のうち一の対称領域に所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶することを特徴とする。
【0013】
また、第5発明に係るメッシュ生成装置は、第1乃至第3発明のいずれか1つにおいて、前記対称領域情報取得手段は、記憶してある形状モデルに関する情報に基づいて、メッシュを生成する対象領域にて、所定の図形と前記形状モデルとの交点に関する位置情報を取得する交点位置情報取得手段と、取得した交点に関する位置情報に基づいて、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域を抽出する対称領域抽出手段とを備え、前記メッシュ生成手段は、抽出した複数の対称領域のうち一の対称領域に所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶することを特徴とする。
【0014】
また、第6発明に係るメッシュ生成装置は、第1乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記細分化手段は、磁界解析した結果に基づいて解析条件を特定して再度磁界解析する再解析手段と、磁界解析した結果と、特定した解析条件により再度磁界解析した結果とに基づいて、生成したメッシュの要素ごとの誤差を算出する誤差算出手段と、算出した誤差が所定値より大きいか否かを判断する判断手段と、該判断手段で誤差が所定値より大きいと判断した要素をさらに細分化する再細分化手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
次に、上記目的を達成するために第7発明に係るメッシュ生成方法は、形状モデルを複数の有限要素の組み合わせとして表現し、有限要素法にて所定の物理量を算出するためのメッシュを生成して記憶するメッシュ生成装置で実行することが可能なメッシュ生成方法において、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報を取得し、取得した形状モデルに関する情報を記憶部に記憶するステップと、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域に関する情報を取得するステップと、取得した形状モデルに関する情報及び複数の対称領域に関する情報に基づいて、前記形状モデルを複数の対称領域に分割し、所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶するステップと、生成した所定のメッシュに基づいて、所定の回転角度まで回転させて磁界解析するステップと、磁界解析の結果に基づいたアダプティブ解析によりメッシュを細分化するステップと、複数の対称領域のうち、メッシュが最も密に細分化された対称領域を抽出するステップと、抽出した対称領域に生成してあるメッシュを、複数の前記対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写するステップとを含むことを特徴とする。
【0016】
次に、上記目的を達成するために第8発明に係るメッシュ生成方法は、形状モデルを複数の有限要素の組み合わせとして表現し、有限要素法にて所定の物理量を算出するためのメッシュを生成して記憶するメッシュ生成装置で実行することが可能なメッシュ生成方法において、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報を取得し、取得した形状モデルに関する情報を記憶部に記憶するステップと、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域に関する情報を取得するステップと、取得した形状モデルに関する情報及び複数の対称領域に関する情報に基づいて、前記形状モデルを複数の対称領域に分割し、所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶するステップと、生成した所定のメッシュに基づいて、所定の回転角度まで回転させて磁界解析するステップと、磁界解析の結果に基づいたアダプティブ解析によりメッシュを細分化するステップと、複数の対称領域にそれぞれ生成されたメッシュに基づいて、複数の所定の領域にて最も密に細分化されたメッシュを、前記対称領域内に生成する一のメッシュとして合成するステップと、複数の対称領域に生成したメッシュに基づいて、複数の所定の領域にて最も密に細分化されたメッシュを、前記対称領域内に生成する一のメッシュとして合成するステップと、合成したメッシュを、複数の前記対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写するステップとを含むことを特徴とする。
【0017】
次に、上記目的を達成するために第9発明に係るコンピュータプログラムは、形状モデルを複数の有限要素の組み合わせとして表現し、有限要素法にて所定の物理量を算出するためのメッシュを生成して記憶するメッシュ生成装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、前記メッシュ生成装置を、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報を取得し、取得した形状モデルに関する情報を記憶部に記憶する形状モデル取得手段、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域に関する情報を取得する対称領域情報取得手段、取得した形状モデルに関する情報及び複数の対称領域に関する情報に基づいて、前記形状モデルを複数の対称領域に分割し、所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶するメッシュ生成手段、生成した所定のメッシュに基づいて、所定の回転角度まで回転させて磁界解析する解析手段、磁界解析の結果に基づいたアダプティブ解析によりメッシュを細分化する細分化手段、複数の対称領域のうち、該細分化手段でメッシュが最も密に細分化された対称領域を抽出する抽出手段、及び抽出した対称領域に生成してあるメッシュを、複数の前記対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写する複写手段として機能させることを特徴とする。
【0018】
次に、上記目的を達成するために第10発明に係るコンピュータプログラムは、形状モデルを複数の有限要素の組み合わせとして表現し、有限要素法にて所定の物理量を算出するためのメッシュを生成して記憶するメッシュ生成装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、前記メッシュ生成装置を、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報を取得し、取得した形状モデルに関する情報を記憶部に記憶する形状モデル取得手段、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域に関する情報を取得する対称領域情報取得手段、取得した形状モデルに関する情報及び複数の対称領域に関する情報に基づいて、前記形状モデルを複数の対称領域に分割し、所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶するメッシュ生成手段、生成した所定のメッシュに基づいて、所定の回転角度まで回転させて磁界解析する解析手段、磁界解析の結果に基づいたアダプティブ解析によりメッシュを細分化する細分化手段、該細分化手段で複数の対称領域にそれぞれ生成されたメッシュに基づいて、複数の所定の領域にて最も密に細分化されたメッシュを、前記対称領域内に生成する一のメッシュとして合成するメッシュ合成手段、及び合成したメッシュを、複数の前記対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写する複写手段として機能させることを特徴とする。
【0019】
第1発明、第7発明及び第9発明では、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報を取得し、取得した形状モデルに関する情報を記憶部に記憶する。互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域に関する情報を取得し、取得した形状モデルに関する情報及び複数の対称領域に関する情報に基づいて、形状モデルを複数の対称領域に分割し、所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶する。生成した所定のメッシュに基づいて、所定の回転角度まで回転させて磁界解析し、磁界解析の結果に基づいたアダプティブ解析によりメッシュを細分化し、複数の対称領域のうち、メッシュが最も密に細分化された対称領域を抽出する。抽出した対称領域に生成してあるメッシュを、複数の対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写する。アダプティブ解析により細分化されたメッシュのうち、メッシュが最も密に細分化された対称領域に生成されたメッシュを親メッシュとして、複数の対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写することにより、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する形状モデルにおけるメッシュを生成する対象領域に対称性を損なうことなくメッシュを生成することができる。しかも、回転部のメッシュを回転させる都度、アダプティブ解析によりメッシュを細分化する必要がないので、有限要素法を用いた所定の物理量の解析結果の計算精度を高く維持しつつ、計算時間を大きく短縮することが可能となる。
【0020】
第2発明、第8発明及び第10発明では、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報を取得し、取得した形状モデルに関する情報を記憶部に記憶する。互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域に関する情報を取得し、取得した形状モデルに関する情報及び複数の対称領域に関する情報に基づいて、形状モデルを複数の対称領域に分割し、所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶する。生成した所定のメッシュに基づいて、所定の回転角度まで回転させて磁界解析し、磁界解析の結果に基づいたアダプティブ解析によりメッシュを細分化し、複数の対称領域にそれぞれ生成されたメッシュに基づいて、複数の所定の領域にて最も密に細分化されたメッシュを、対称領域内に生成する一のメッシュとして合成する。合成したメッシュを、複数の対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写する。アダプティブ解析により細分化され、複数の対称領域にそれぞれ生成されたメッシュに基づいて、複数の所定の領域にて最も密に細分化されたメッシュを、対称領域内に生成する一のメッシュとして合成することにより一の対称領域内に最も密に細分化されたメッシュを合成し、合成されたメッシュを親メッシュとして、複数の対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写することにより、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルにおけるメッシュを生成する対象領域に対称性を損なうことなくメッシュを生成することができる。しかも、回転部のメッシュを回転させる都度、アダプティブ解析によりメッシュを細分化する必要がないので、有限要素法を用いた所定の物理量の解析結果の計算精度を高く維持しつつ、計算時間を大きく短縮することが可能となる。
【0021】
第3発明では、形状モデルに関する情報の入力を受け付け、入力を受け付けた形状モデルに関する情報を記憶部に記憶することにより、様々な形状モデルについて複数の対称領域を抽出して、精度よく対称性を有するメッシュを生成することができ、有限要素法を用いた所定の物理量の解析結果の計算精度を高く維持しつつ、計算時間を大きく短縮することが可能となる。
【0022】
第4発明では、複数の対称領域に関する情報の入力を受け付け、入力を受け付けた複数の対称領域に関する情報に基づいて、複数の対称領域のうち一の対称領域に所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶する。事前に回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域に関する情報の入力を受け付けておくことにより、対称性を有する対称領域及び対称領域間の親子関係等が明確となり、親メッシュ領域に生成したメッシュを他の対称領域へ確実に複写することができる。したがって、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルにおけるメッシュを生成する対象領域に対称性を損なうことなくメッシュを生成することができる。
【0023】
第5発明では、記憶してある形状モデルに関する情報に基づいて、メッシュを生成する対象領域にて、所定の図形と形状モデルとの交点に関する位置情報を取得する。取得した交点に関する位置情報に基づいて、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域を抽出し、抽出した複数の対称領域のうち一の対称領域に所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶する。所定の図形と形状モデルとの交点に関する位置情報に基づいて複数の対称領域を抽出することにより、事前に対称性を有する対称領域及び対称領域間の親子関係等を指定しておく必要がなく、親メッシュ領域として他の対称領域へ複写するメッシュを生成する対称領域を容易に選択することができる。したがって、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルにおけるメッシュを生成する対象領域に対称性を損なうことなくメッシュを生成することができる。
【0024】
第6発明では、磁界解析した結果に基づいて解析条件を特定して再度磁界解析し、所定のメッシュに基づいて磁界解析した結果と、特定した解析条件により再度磁界解析した結果とに基づいて、生成したメッシュの要素ごとの誤差を算出し、算出した誤差が所定値より大きいと判断した要素をさらに細分化する。これにより、誤差が所定値より小さくなるまでメッシュを細分化することができ、計算精度を高く維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
上記構成によれば、アダプティブ解析により細分化されたメッシュのうち、最も密に細分化されたメッシュを親メッシュとして、複数の対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写することにより、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルにおけるメッシュを生成する対象領域に対称性を損なうことなくメッシュを生成することができる。しかも、回転部のメッシュを回転させる都度、アダプティブ解析によりメッシュを細分化する必要がないので、有限要素法を用いた所定の物理量の解析結果の計算精度を高く維持しつつ、計算時間を大きく短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置を、CPUを用いて具現化した場合の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置の機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置のメッシュ生成対象となる回転機の形状モデルの一部を模式的に示す例示図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置のCPUのメッシュ生成処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置で、複数の対称領域に領域分割した形状モデルの一部を模式的に示す例示図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置で、形状モデルに生成したメッシュの例示図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置のCPUのメッシュ細分化処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置でメッシュを細分化した状態を示す例示図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置で、抽出した対称領域に生成してある、最も密に細分化されたメッシュを複写した状態を示す例示図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置で生成したメッシュの例示図である。
【図11】本実施の形態1に係るメッシュ生成方法と従来のメッシュ生成方法とで計算した、ロータに生じるトルクの比較図である。
【図12】本実施の形態1に係るメッシュ生成方法と従来のメッシュ生成方法とで計算した、ロータの周縁部に配設されているバーに生じるジュール損失の比較図である。
【図13】本発明の実施の形態2に係るメッシュ生成装置の機能ブロック図である。
【図14】本発明の実施の形態2に係るメッシュ生成装置のCPUのメッシュ生成処理の手順を示すフローチャートである。
【図15】本発明の実施の形態2に係るメッシュ生成装置のステータのメッシュ合成の例示図である。
【図16】本発明の実施の形態2に係るメッシュ生成装置のCPUのメッシュ合成処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図17】本発明の実施の形態3に係るメッシュ生成装置の部分機能ブロック図である。
【図18】本発明の実施の形態3に係るメッシュ生成装置の交点に関する位置情報の取得方法を説明するためのメッシュ生成対象となる回転機の形状モデルの一部を模式的に示す例示図である。
【図19】本発明の実施の形態3に係るメッシュ生成装置における、取得した回転角の分布状況の解析手順を説明する例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態に係るメッシュ生成装置について図面に基づいて具体的に説明する。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置を、CPUを用いて具現化した場合の構成を示すブロック図である。図1において、メッシュ生成装置1は、演算を行う演算部を構成するCPU(中央演算装置)11、演算に伴って発生する一時的な情報を記憶するメモリ12、ハードディスク等の記憶装置13、I/Oインタフェース14、ビデオインタフェース15、可搬型ディスクドライブ16、通信インタフェース17及び上述したハードウェアを接続する内部バス18で構成されている。
【0029】
CPU11は、内部バス18を介してメッシュ生成装置1の上述したようなハードウェア各部と接続されており、上述したハードウェア各部の動作を制御するとともに、記憶装置13に記憶しているコンピュータプログラム100に従って、種々のソフトウェア的機能を実行する。メモリ12は、SRAM、SDRAM等の揮発性メモリで構成され、コンピュータプログラム100の実行時にロードモジュールが展開され、コンピュータプログラム100の実行時に発生する一時的なデータ等を記憶する。
【0030】
記憶装置13は、内蔵される固定型記憶装置(ハードディスク)、ROM等で構成されている。記憶装置13に記憶しているコンピュータプログラム100は、プログラム及びデータ等の情報を記録したDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体90から、可搬型ディスクドライブ16によりダウンロードされ、実行時には記憶装置13からメモリ12へ展開して実行される。もちろん、通信インタフェース17を介して、接続されている外部のコンピュータからダウンロードされたコンピュータプログラムであっても良い。
【0031】
また記憶装置13は、形状モデル記憶部131、対称領域情報記憶部132、メッシュ情報記憶部133を備えている。形状モデル記憶部131には、後述する形状モデル取得部で取得した形状モデルに関する情報、例えば数値情報、仕様情報等を記憶する。また、対称領域情報記憶部132には、入力を受け付けた複数の対称領域に関する情報、又は後述する交点位置情報取得部で取得した、所定の図形と形状モデルとの交点に関する位置情報に基づいて抽出した複数の対称領域に関する情報を記憶する。メッシュ情報記憶部133には、後述するメッシュ生成部で、対称領域のそれぞれに生成したメッシュに関する情報、例えば節点の位置情報、節点間の結合情報等を記憶する。
【0032】
通信インタフェース17は内部バス18に接続されており、インターネット、LAN、WAN等の外部のネットワークに接続されることにより、外部のコンピュータ等とデータ送受信を行うことが可能となっている。
【0033】
I/Oインタフェース14は、キーボード21、マウス22等のデータ入力媒体と接続され、データの入力を受け付ける。また、ビデオインタフェース15は、CRTモニタ、LCD等の表示装置23と接続され、所定の画像を表示する。
【0034】
以下、回転体を含む回転機の形状モデルに対して二次元のメッシュを生成する例を用いて、本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成方法を説明する。図2は、本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置1の機能ブロック図である。
【0035】
形状モデル取得部201は、オペレータによって操作されたキーボード21、マウス22等から、又は通信インタフェース17を介して外部のコンピュータから、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報を取得する。取得した形状モデルに関する情報は、記憶装置13の形状モデル記憶部131に記憶される。
【0036】
図3は、本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置1のメッシュ生成対象となる回転機の形状モデルの一部を模式的に示す例示図である。図3は、紙面に向かって垂直な方向の回転軸Oを中心に回転する、周縁部に等間隔にバー34、34、・・・を配置してあるロータ31、ステータ32、及びロータ31とステータ32との間の空間部分33を含む回転機の、回転軸Oに対して垂直な所定の平面での部分断面(4分の1断面)を示している。
【0037】
図2に戻って、対称領域情報取得部202は、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域に関する情報を取得する。本実施の形態1では、対称領域情報受付部203が、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域に関する情報の入力を受け付ける。これにより、どの対称領域がメッシュを複写する基礎となる親メッシュが生成されている親メッシュ領域(一の対称領域)であり、どの対称領域が親メッシュを複写する領域である子メッシュ領域(他の対称領域)であるかを特定することができ、親メッシュ領域に生成したメッシュを複数の子メッシュ領域に複写することで、対称性を維持したメッシュを生成することができる。入力を受け付けた複数の対称領域に関する情報は、記憶装置13の対称領域情報記憶部132に記憶される。
【0038】
メッシュ生成部204は、取得した形状モデルに関する情報及び複数の対称領域に関する情報に基づいて、形状モデルを複数の対称領域に領域分割し、所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶装置13に記憶する。解析部205は、生成した所定のメッシュに基づいて、所定の回転角度まで回転させて磁界解析する。なお、すべての対称領域について、生成したメッシュに関する情報は、記憶装置13のメッシュ情報記憶部133に記憶される。
【0039】
細分化部206は、磁界解析の解析結果に基づいてメッシュ全体に対してアダプティブ解析を実行し、細分化が必要な領域(要素)についてはメッシュをさらに細分化する。具体的には、対称領域ごとに、生成したメッシュに基づく有限要素法による解析誤差が所定範囲内に収束する(所定値より小さくなる)までメッシュを細分化する。
【0040】
抽出部207は、複数の対称領域のうち、生成したメッシュが最も密に細分化された対称領域を抽出する。どの対称領域にてメッシュが最も密に細分化されているかを判断する判断基準は特に限定されるものではなく、例えば対称領域内の節点の数が最も多い対称領域を抽出しても良いし、要素数が最も多い対称領域を抽出しても良い。
【0041】
複写部208は、抽出した対称領域に生成した、最も密に細分化されたメッシュを、複数の対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて、他の対称領域のそれぞれに複写する。このようにすることで、従来のアダプティブ解析で生じやすかった、生成されたメッシュに粗密ムラが生じることなく、対称性を維持したメッシュを確実に生成することができる。また、回転部(ロータ)のメッシュを一定の回転角度回転させる都度、アダプティブ解析を実行する必要がないので、所定の物理量の解析に要する計算時間を大きく短縮することが可能となる。
【0042】
図4は、本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置1のCPU11のメッシュ生成処理の手順を示すフローチャートである。図4において、メッシュ生成装置1のCPU11は、オペレータによって操作されたキーボード21、マウス22等から、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報の入力を受け付ける(ステップS401)。もちろん、通信インタフェース17を介して外部のコンピュータから形状モデルに関する情報を取得しても良い。入力を受け付けた形状モデルに関する情報は、記憶装置13の形状モデル記憶部131に記憶される。
【0043】
CPU11は、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域に関する情報の入力を受け付ける(ステップS402)。入力を受け付ける情報は、対称領域の境界の座標値、回転角等の数値情報を含む。これにより、どの対称領域がメッシュを複写する基礎となる親メッシュが生成されている親メッシュ領域であり、どの対称領域が親メッシュを複写する領域である子メッシュ領域であるかを特定することができ、親メッシュ領域に生成したメッシュを複数の子メッシュ領域に複写することで、対称性を維持したメッシュを生成することができる。入力を受け付けた複数の対称領域に関する情報は、記憶装置13の対称領域情報記憶部132に記憶される。
【0044】
CPU11は、入力を受け付けた(取得した)形状モデルに関する情報及び複数の対称領域に関する情報に基づいて、形状モデルを、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域に領域分割する(ステップS403)。図5は、本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置1で、複数の対称領域に領域分割した形状モデルの一部を模式的に示す例示図である。図5では、ロータ31とステータ32との間の空間部分33の近傍について、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有するように考慮して複数の対称領域に領域分割している。複数の対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性は、取得した複数の対称領域に関する情報に基づいて特定される。
【0045】
CPU11は、領域分割した形状モデルに、周知の方法により粗メッシュを生成する(ステップS404)。ここで、粗メッシュとは要素面積の大小ではなく、対称性を考慮しないことを意味する。また、ロータ31とステータ32との間の空間部分33には、ロータ31のメッシュを一定の回転角度回転させる都度、磁界解析をすることが可能なように、回転方向に等ピッチで分割されたメッシュを生成する。
【0046】
メッシュの生成方法は、周知の方法であれば特に限定されるものではない。例えば、領域分割した所定の対称領域に複数の節点を生成する。節点は、ランダムな位置に生成してもよく、所定の規則に従った位置に生成してもよい。そして、デラウニ法等を用いて、生成した節点同士を結んでメッシュを生成する。
【0047】
図6は、本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置1で、形状モデルに生成したメッシュの例示図である。図6に示すように、回転部であるロータ31、固定部であるステータ32には粗メッシュを生成し、ロータ31に生成した粗メッシュを変更することなく回転させることが可能なように、回転方向に等ピッチで分割されたメッシュを空間部分33に生成している。
【0048】
図4に戻って、メッシュ生成装置1のCPU11は、生成した粗メッシュに基づいて磁界解析し(ステップS405)、回転部であるロータ31に生成してあるメッシュが所定の回転角度まで回転したか否かを判断する(ステップS406)。CPU11が、所定の回転角度まで回転していないと判断した場合(ステップS406:NO)、CPU11は、ロータ(回転部)31に生成したメッシュを、空間部分33に生成された回転方向に等ピッチで分割されたメッシュに沿って一定の回転角度だけ回転させ(ステップS407)、処理をステップS405へ戻して上述した処理を繰り返す。
【0049】
CPU11が、所定の回転角度まで回転したと判断した場合(ステップS406:YES)、CPU11は、生成したメッシュ全体に対してアダプティブ解析を実行し、細分化が必要な領域(要素)についてはメッシュをさらに細分化する(ステップS408)。具体的には、対称領域ごとに、生成したメッシュに基づく有限要素法による解析誤差が所定範囲内に収束するまでメッシュを細分化する。
【0050】
メッシュを細分化する方法は特に限定されるものではない。例えば生成したメッシュの要素ごとの誤差が所定範囲内に収束するまでメッシュを細分化すれば良い。図7は、本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置1のCPU11のステップS408におけるメッシュ細分化処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0051】
メッシュ生成装置1のCPU11は、ステップS405での磁界解析の結果に基づいて、解析するべき回転角度及び起磁力を解析条件として特定し(ステップS701)、特定された回転角度及び起磁力に基づいて再度磁界解析する(ステップS702)。CPU11は、メッシュの要素ごとの誤差を算出し(ステップS703)、算出した誤差が所定値より大きい要素が存在するか否かを判断する(ステップS704)。
【0052】
CPU11が、誤差が所定値より大きい要素が存在すると判断した場合(ステップS704:YES)、CPU11は、必要な要素、すなわち誤差が所定値より大きい要素を分割して(ステップS705)、処理をステップS702へ戻して上述した処理を繰り返す。CPU11が、誤差が所定値より大きい要素が存在しないと判断した場合(ステップS704:NO)、CPU11は、細分化処理が終了したと判断し、処理をステップS409へ戻す。
【0053】
実際の有限要素法を用いる解析処理では、物理量の真値は未知であるので、誤差を特定することができない。そこで、計算値に基づいて仮の真値を推定しておき、仮の真値と計算値との差を誤差とする。例えば電磁界解析では、磁界の強さHの接線成分の連続性が損なわれている要素に誤差が生じているものと仮定し、以下の手順で誤差を算出しても良い。
【0054】
まず、有限要素ソルバによる計算結果である要素中心の磁界Hcに基づいて、要素ごとの要素辺上の接線成分Htを算出する。次に、要素辺ごとに、算出した接線成分Htの平均値Ht_Aveを算出する。今度は、接線成分Htの平均値Ht_Aveに基づいて、要素中心での磁界Hcの平均値Hc_Aveを算出し、磁界Hcと磁界Hcの平均値Hc_Aveとの差を誤差として算出する。もちろん、絶対値ではなく百分率として算出しても良い。
【0055】
図4に戻って、メッシュ生成装置1のCPU11は、複数の対称領域のうち、生成したメッシュが最も密に細分化された対称領域を抽出する(ステップS409)。どの対称領域にてメッシュが最も密に細分化されているかを判断する判断基準は特に限定されるものではなく、例えば対称領域内の節点の数が最も多い対称領域を抽出しても良いし、要素数が最も多い対称領域を抽出しても良い。
【0056】
図8は、本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置1でメッシュを細分化した状態を示す例示図である。図8に示すように、この状態では、生成されたメッシュのギャップ近傍に回転方向の粗密ムラが生じている。メッシュのギャップ近傍に回転方向の粗密ムラが存在する場合、高い精度で所定の物理量を算出することが困難になる。
【0057】
図4に戻って、メッシュ生成装置1のCPU11は、抽出した対称領域に生成してある、最も密に細分化されたメッシュを、複数の対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて、他の対称領域のそれぞれに複写する(ステップS410)。ここで「複写する」とは、既に生成されているメッシュをすべて削除し、抽出した対称領域に生成された、最も密に細分化されたメッシュを複写するという意味である。どの対称領域にてメッシュが最も密に細分化されているかを判断する判断基準は特に限定されるものではなく、例えば対称領域内の節点の数が最も多い対称領域を抽出しても良いし、要素数が最も多い対称領域を抽出しても良い。図8の例では、ロータ31については領域81近傍を含む対称領域にてメッシュが最も密に細分化されていると判断することができ、ステータ32については領域82近傍を含む対称領域にてメッシュが最も密に細分化されていると判断することができる。
【0058】
図9は、本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置1で、抽出した対称領域に生成してある、最も密に細分化されたメッシュを複写した状態を示す例示図である。図9に示すように、最も密に細分化されたメッシュを、複数の対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて、他の対称領域のそれぞれに複写しているので、対称性を維持したメッシュを確実に生成することができ、図8に顕著であったメッシュに存在する粗密ムラも解消されている。
【0059】
図4に戻って、メッシュ生成装置1のCPU11は、ステップS410で複写して生成したメッシュの周囲及び空間部分に、境界部分で整合するようにメッシュを生成して(ステップS411)、形状モデル全体に対するメッシュを生成する。図10は、本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置1で生成したメッシュの例示図である。対称性を維持しつつ、ロータ31を回転させる都度、アダプティブ解析を実行し、さらに細分化する必要もないので、所定の物理量の解析に要する計算時間を大きく短縮することが可能となる。
【0060】
図4のステップS411までの処理で生成した、粗密ムラが生じていないメッシュを用いて、図4のステップS405乃至ステップS407の処理を所定の回転角度まで実行することにより、従来の方法よりも計算時間が短時間であるにもかかわらず、所定の物理量を高い精度で算出することができる。以下、本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成方法と、従来のメッシュ生成方法との解析結果の比較を行う。ここで、従来のメッシュ生成方法とは、アダプティブ解析の処理フローの中に電磁界解析の処理フローを挿入した方法であり、回転部(ロータ)のメッシュを回転させ、回転させる都度アダプティブ解析を実行することによりメッシュを細分化する方法である。
【0061】
図11は、本実施の形態1に係るメッシュ生成方法と従来のメッシュ生成方法とで計算した、ロータ31に生じるトルクの比較図であり、図12は、本実施の形態1に係るメッシュ生成方法と従来のメッシュ生成方法とで計算した、ロータ31の周縁部に配設されている、図3に示すバー34に生じるジュール損失の比較図である。図11に示す本実施の形態1に係るメッシュ生成方法で生成したメッシュを用いて計算したトルク111と従来のメッシュ生成方法で生成したメッシュを用いて計算したトルク112とはほとんど一致しており、両者の差113は0近傍に収束している。同様に、図12に示す本実施の形態1に係るメッシュ生成方法で生成したメッシュを用いて計算したジュール損失121と従来のメッシュ生成方法で生成したメッシュを用いて計算したジュール損失122とはほとんど一致しており、両者の差123は0近傍に収束している。したがって、両メッシュ生成方法のいずれの計算結果も差はほとんどない。
【0062】
一方、従来のメッシュ生成方法では、計算結果を得るまでに要する時間が約20時間であったのに対し、本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成方法では、計算結果を得るまでに要する時間が約5時間であり、計算時間は約4分の1に短縮されている。
【0063】
以上のように本実施の形態1によれば、従来のアダプティブ解析では生じやすかった、生成されたメッシュに粗密ムラが生じることなく、対称性を維持したメッシュを確実に生成することができる。また、回転部(ロータ)のメッシュを一定の回転角度回転させる都度、アダプティブ解析を実行する必要がないので、所定の物理量の解析に要する計算時間を大きく短縮することが可能となる。
【0064】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係るメッシュ生成装置1の構成は、実施の形態1と同様であることから、同一の符号を付することにより詳細な説明は省略する。本実施の形態2は、アダプティブ解析により生成されたメッシュのうち、最も密に細分化されている対称領域に生成されているメッシュを親メッシュとして複写するのではなく、アダプティブ解析により複数の対称領域のそれぞれに生成したメッシュに基づいて、最も密に細分化されたメッシュを一の対称領域内にて合成し、合成したメッシュを親メッシュとして他の対称領域のそれぞれに複写する点で実施の形態1と相違する。
【0065】
以下、回転体を含む回転機の形状モデルに対して二次元のメッシュを生成する例を用いて、本発明の実施の形態2に係るメッシュ生成方法を説明する。図13は、本発明の実施の形態2に係るメッシュ生成装置1の機能ブロック図である。
【0066】
形状モデル取得部201は、オペレータによって操作されたキーボード21、マウス22等から、又は通信インタフェース17を介して外部のコンピュータから、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報を取得する。取得した形状モデルに関する情報は、記憶装置13の形状モデル記憶部131に記憶される。
【0067】
対称領域情報取得部202は、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域に関する情報を取得する。本実施の形態2では、対称領域情報受付部203が、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域に関する情報の入力を受け付ける。これにより、どの対称領域がメッシュを複写する基礎となる親メッシュが生成されている親メッシュ領域(一の対称領域)であり、どの対称領域が親メッシュを複写する領域である子メッシュ領域(他の対称領域)であるかを特定することができ、親メッシュ領域に生成したメッシュを複数の子メッシュ領域に複写することで、対称性を維持したメッシュを生成することができる。入力を受け付けた複数の対称領域に関する情報は、記憶装置13の対称領域情報記憶部132に記憶される。
【0068】
メッシュ生成部204は、取得した形状モデルに関する情報及び複数の対称領域に関する情報に基づいて、形状モデルを複数の対称領域に領域分割し、所定のメッシュ(粗メッシュ)を生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶装置13に記憶する。解析部205は、生成した所定のメッシュに基づいて、所定の回転角度まで回転させて磁界解析する。なお、すべての対称領域について、生成したメッシュに関する情報は、記憶装置13のメッシュ情報記憶部133に記憶される。
【0069】
細分化部206は、磁界解析の解析結果に基づいてメッシュ全体に対してアダプティブ解析を実行し、細分化が必要な領域(要素)についてはメッシュをさらに細分化する。具体的には、対称領域ごとに、生成したメッシュに基づく有限要素法による解析誤差が所定範囲内に収束する(所定値より小さくなる)までメッシュを細分化する。
【0070】
メッシュ合成部1301は、複数の所定の領域について、それぞれ生成したメッシュが最も密に細分化された所定の領域を抽出し、抽出した所定の領域に生成してあるメッシュを一の対称領域に合成して、最も密に細分化されたメッシュを生成する。どの所定の領域にメッシュが最も密に細分化されているかを判断する判断基準は特に限定されるものではなく、例えば領域内の節点の数が最も多い領域を抽出しても良いし、要素数が最も多い領域を抽出しても良い。
【0071】
複写部208は、合成して生成した、最も密に細分化されたメッシュを、複数の対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて、他の対称領域のそれぞれに複写する。このようにすることで、従来のアダプティブ解析で生じやすかった、生成されたメッシュに粗密ムラが生じることなく、対称性を維持したメッシュを確実に生成することができる。また、回転部(ロータ)のメッシュを一定の回転角度回転させる都度、アダプティブ解析を実行する必要がないので、所定の物理量の解析に要する計算時間を大きく短縮することが可能となる。
【0072】
図14は、本発明の実施の形態2に係るメッシュ生成装置1のCPU11のメッシュ生成処理の手順を示すフローチャートである。図14において、メッシュ生成装置1のCPU11は、オペレータによって操作されたキーボード21、マウス22等から、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報の入力を受け付ける(ステップS1401)。もちろん、通信インタフェース17を介して外部のコンピュータから形状モデルに関する情報を取得しても良い。入力を受け付けた形状モデルに関する情報は、記憶装置13の形状モデル記憶部131に記憶される。
【0073】
CPU11は、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域に関する情報の入力を受け付ける(ステップS1402)。入力を受け付ける情報は、対称領域の境界の座標値、回転角等の数値情報を含む。これにより、どの対称領域がメッシュを複写する基礎となる親メッシュが生成されている親メッシュ領域(一の対称領域)であり、どの対称領域が親メッシュを複写する領域である子メッシュ領域(他の対称領域)であるかを特定することができ、親メッシュ領域に生成したメッシュを複数の子メッシュ領域に複写することで、対称性を維持したメッシュを生成することができる。入力を受け付けた複数の対称領域に関する情報は、記憶装置13の対称領域情報記憶部132に記憶される。
【0074】
CPU11は、入力を受け付けた(取得した)形状モデルに関する情報及び複数の対称領域に関する情報に基づいて、形状モデルを、互いの回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の領域に領域分割する(ステップS1403)。CPU11は、領域分割した形状モデルを、通常の方法により粗メッシュを生成する(ステップS1404)。ここで、粗メッシュとは要素面積の大小ではなく、対称性を考慮しないことを意味する。また、実施の形態1と同様、ロータ31とステータ32との間の空間部分33には、ロータ31を一定の回転角度回転させる都度、磁界解析をすることが可能なように、回転方向に等ピッチで分割されたメッシュを生成する。
【0075】
メッシュの生成方法は、周知の方法であれば特に限定されるものではない。例えば、領域分割した所定の対称領域に複数の節点を生成する。節点は、ランダムな位置に生成してもよく、所定の規則に従った位置に生成してもよい。そして、デラウニ法等を用いて、生成した節点同士を結んでメッシュを生成する。
【0076】
CPU11は、生成した粗メッシュに基づいて磁界解析し(ステップS1405)、回転部であるロータ31に生成してあるメッシュが所定の回転角度まで回転したか否かを判断する(ステップS1406)。CPU11が、所定の回転角度まで回転していないと判断した場合(ステップS1406:NO)、CPU11は、ロータ(回転部)31に生成したメッシュを、空間部分33に生成された、回転方向に等ピッチで分割されたメッシュに沿って一定の回転角度だけ回転させ(ステップS1407)、処理をステップS1405へ戻して上述した処理を繰り返す。
【0077】
CPU11が、所定の回転角度まで回転したと判断した場合(ステップS1406:YES)、CPU11は、生成したメッシュ全体に対してアダプティブ解析を実行し、細分化が必要な領域(要素)についてはメッシュをさらに細分化する(ステップS1408)。具体的には、対称領域ごとに、生成したメッシュに基づく有限要素法による解析誤差が所定範囲内に収束するまでメッシュを細分化する。
【0078】
メッシュを細分化する方法は特に限定されるものではなく、実施の形態1と同様であることから詳細な説明は省略する。
【0079】
CPU11は、複数の対称領域に生成されたメッシュを一の対称領域内に生成された、最も密に細分化されたメッシュへと合成し(ステップS1409)、一の対称領域内に合成されたメッシュを他の対称領域のそれぞれへ複写する(ステップS1410)。合成されたメッシュに関する情報は、記憶装置13のメッシュ情報記憶部133に記憶される。
【0080】
メッシュの合成方法は、メッシュが最も密に細分化されるよう合成する方法であれば特に限定されるものではない。例えば所定の領域内の節点の複写を相互に行うことにより、メッシュを合成しても良い。
【0081】
図15は、本発明の実施の形態2に係るメッシュ生成装置1のステータ32のメッシュ合成の例示図である。図15(a)及び(b)は、形状モデルの異なる対称領域に生成されたメッシュを示しており、図15(a)では、図面に向かって左端側が密に細分化されており、図15(b)では、図面に向かって右端側が密に細分化されている。
【0082】
そこで、図15(a)及び(b)において対称領域に生成されているすべての節点を同一形状の一の対象領域にすべて複写する。同一位置の節点についてはいずれか一方を、所定の距離内に近接している節点についてもいずれか一方を残す。残された節点を用いてメッシュを生成したのが図15(c)である。図15(c)では、図面に向かって左端側及び右端側の両方が密に細分化されており、2つのメッシュを合成することにより最も密に細分化されたメッシュとして合成されている。
【0083】
図16は、本発明の実施の形態2に係るメッシュ生成装置1のCPU11のメッシュ合成処理の手順の一例を示すフローチャートである。メッシュ生成装置1のCPU11は、所定の対称領域をマスター領域として抽出し、形状対称性を有する他の対称領域に含まれる所定の領域(以下、スレーブ領域)に生成してある節点をすべてマスター領域へ複写する(ステップS1601)。このとき、マスター領域の同じ位置又は近接する位置に既に節点が存在する場合には、新たな節点を追加しない。CPU11は、複写することにより新たに追加された節点に基づいて、マスター領域内のメッシュを分割する(ステップS1602)。図16に示す処理を実行することにより、一の対称領域中に最も密に細分化されたメッシュを合成することができ、合成したメッシュを他の対称領域のそれぞれへ複写することにより、対称性を有するメッシュを容易に生成することができる。
【0084】
なお、上述した処理は、合成が完了したメッシュを含む対称領域に生成してあるメッシュを他の対称領域のそれぞれへ複写する処理として記載しているが、特にこのような処理に限定されるものではなく、例えばマスター領域へ節点を複写する都度、合成途中のメッシュをスレーブ領域に対して複写しても良いことは言うまでもない。
【0085】
図14に戻って、メッシュ生成装置1のCPU11は、ステップS1410で複写して生成したメッシュの周囲及び空間部分に、境界部分で整合するようにメッシュを生成して(ステップS1411)、形状モデル全体に対するメッシュを生成する。図14のステップS1411までの処理で生成したメッシュを用いて、図14のステップS1405乃至ステップS1407の処理を所定の回転角度まで実行することにより、従来の方法よりも計算時間が短時間であるにもかかわらず、所定の物理量を高い精度で算出することができる。
【0086】
以上のように本実施の形態2によれば、従来のアダプティブ解析で生じやすかった、生成されたメッシュのギャップ近傍に回転方向の粗密ムラが生じることなく、対称性を維持したメッシュを確実に生成することができる。また、回転部(ロータ)のメッシュを一定の回転角度回転させる都度、アダプティブ解析を実行する必要がないので、所定の物理量の解析に要する時間を大きく短縮することが可能となる。
【0087】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係るメッシュ生成装置1の構成は、実施の形態1及び2と同様であることから、同一の符号を付することにより詳細な説明は省略する。本実施の形態3は、互いに対称性を有する複数の対称領域を抽出する点で、事前に複数の対称領域に関する情報の入力を受け付ける実施の形態1及び2と相違する。
【0088】
以下、回転体を含む回転機の形状モデルに対して二次元のメッシュを生成する例を用いて、本発明の実施の形態3に係るメッシュ生成方法を説明する。図17は、本発明の実施の形態3に係るメッシュ生成装置1の部分機能ブロック図である。対称領域情報取得部202以外は、実施の形態1及び2と同一であることから、詳細な説明は省略する。
【0089】
実施の形態1及び2とは異なり、メッシュを生成する前には、解析対象となる回転機の形状モデルの互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域に関する情報は取得していない。すなわち、基礎となる親メッシュ領域、及び親メッシュ領域に生成されたメッシュを複写してメッシュを生成する領域である子領域が特定されていない。そこで、本実施の形態3では、取得して形状モデル記憶部131に記憶してある形状モデルに関する情報に基づいて、所定の図形と形状モデルとの交点に関する位置情報を取得することで、互いに対称性を有する複数の対称領域を抽出する。例えば交点位置情報取得部1701は、所定の半径を有する円弧と形状モデルとの交点に関する位置情報を取得する。取得する位置情報は、二次元平面における座標値であっても良いし、回転対称性を有する場合には、回転軸Oを中心とした回転角であっても良い。取得した交点に関する位置情報は、記憶装置13に記憶される。
【0090】
対称領域抽出部1702は、交点位置情報取得部1701で取得し、記憶装置13に記憶してある交点に関する位置情報に基づいて、互いに対称性を有する複数の対称領域を抽出する。例えば、回転対称性を有する回転機がメッシュ生成対象である場合、該回転機の形状モデルと、所定の半径を有する円弧との交点に関する位置情報として、回転軸Oを中心とした回転角を取得する。取得した回転角を記憶装置13に記憶しておき、回転角の分布状況を解析することにより、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域を抽出することができる。
【0091】
図18は、本発明の実施の形態3に係るメッシュ生成装置1の交点に関する位置情報の取得方法を説明するためのメッシュ生成対象となる回転機の形状モデルの一部を模式的に示す例示図である。図18に示すように、回転対称性を有する回転機の形状モデルの一部を、回転軸Oを中心として互いに直交するX−Y軸上に設定する。そして、例えばステータ32の最小半径Rを超える長さの半径(R+Δr)を有する円弧51と、ステータ32を構成する各部材の境界との交点P1、P2、・・・、Pnの回転角を求める。
【0092】
求める回転角は、X軸方向を0(ゼロ)とする。すなわち、交点P1の回転角を0度とし、以後、円弧51とステータ32を構成する各部材の境界との交点P2、P3、・・・、Pn(nは自然数)の回転角をそれぞれ求める。求めた回転角は、記憶装置13に記憶する。
【0093】
図19は、本発明の実施の形態3に係るメッシュ生成装置1における、取得した回転角の分布状況の解析手順を説明する例示図である。まず、図19(a)に示すように交点P1、P2、・・・、P14の回転角を取得した場合、CPU11は、隣接する回転角間の差分を図19(b)のように算出する。
【0094】
次にCPU11は、図19(b)に示す差分列から、共通の差分列を抽出する。図19(c)の例では、(3、14、3)という差分列71を共通の差分列として抽出することができる。CPU11は、共通の差分列71以外の差分について、共通であるか、倍数となっているかを判断し、共通である差分、又は倍数となっている差分の中央部分を、互いに回転対称性を有する対称領域の境界位置を示す回転対称軸72が存在する位置とする。
【0095】
例えば図19(d)に示すように、共通である差分、例えば交点P1、P14、又は倍数となっている差分の中央部分、例えば交点P5、P6の中央部分、交点P9、P10の中央部分が、互いに回転対称性を有する対称領域の境界位置を示す回転対称軸72が存在する位置となる。このようにすることで、(5、3、14、3、5)という差分列73が、互いに回転対称性を有していることがわかり、互いに回転対称性を有する対称領域として抽出することができる。抽出した複数の対称領域のうち、例えば交点P1から交点P5、P6の中央部分までの差分列73、すなわち回転角が0度から30度までの対称領域を一の対称領域(親メッシュ領域)として選択することで、親メッシュ領域に生成したメッシュ(親メッシュ)を他の対称領域に複写することができる。
【0096】
また、鏡面対称性に着目した場合、差分列73は中央部分を鏡面対称軸とする鏡面対称性を有することがわかる。例えば図19(e)に示すように、(5、3、7)又は(7、3、5)という差分列74、74が中央部分を鏡面対称軸75とする鏡面対称性を有しているので、互いに鏡面対称性を有する対称領域として抽出することができる。抽出した対称領域のうち、交点P1から交点P3、P4の中央部分までの差分列74、すなわち回転角が0度から15度までの対称領域を一の対称領域(親メッシュ領域)として選択し、鏡面対称軸75にて鏡面複写することで、親メッシュ領域に生成したメッシュ(親メッシュ)を他の対称領域へ複写することができる。
【0097】
なお、メッシュ(親メッシュ)を生成する親メッシュ領域は、小さければ小さいほど、対象領域全体の対称性を維持しやすい。したがって、大きさの相違する複数種類の対称領域を親メッシュ領域として選択することができる場合には、大きさが最小である対称領域を親メッシュ領域として選択することが好ましい。図19の例では、鏡面対称性を有する差分列74で表される対称領域の一つを親メッシュ領域として選択することが好ましい。
【0098】
以上のように本実施の形態3によれば、所定の図形と形状モデルとの交点に関する位置情報に基づいて複数の対称領域を抽出することにより、事前に対称性を有する対称領域及び対称領域間の親子関係等を指定しておく必要がなく、親メッシュ領域として他の対称領域へ複写するメッシュを生成する対称領域を容易に選択することができる。したがって、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転機の形状モデルにおけるメッシュを生成する対象領域に対称性を損なうことなくメッシュを生成することができ、生成したメッシュに基づく有限要素法を用いた所定の物理量の解析結果の計算精度をより高めることが可能となる。
【0099】
なお、上述した実施の形態1乃至3において、形状モデル全体が対象領域であることに限定されるものではなく、対称性を有する部分を対象領域として指定を受け付けても良い。また、上述した実施の形態1乃至3では二次元の形状モデルについて説明しているが、三次元の形状モデルであっても同様の効果が期待できることは言うまでもない。
【0100】
その他、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内であれば多種の変形、置換等が可能である。したがって、形状モデルについても回転体を含む回転機の形状モデルに限定されるものではなく、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する形状モデルであれば同様の効果が期待できる。また、回転対称性のみ、鏡面対称性のみを有している形状モデルであっても同様である。
【符号の説明】
【0101】
1 メッシュ生成装置
11 CPU
12 メモリ
13 記憶装置
14 I/Oインタフェース
15 ビデオインタフェース
16 可搬型ディスクドライブ
17 通信インタフェース
18 内部バス
90 可搬型記録媒体
100 コンピュータプログラム
131 形状モデル記憶部
132 対称領域情報記憶部
133 メッシュ情報記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状モデルを複数の有限要素の組み合わせとして表現し、有限要素法にて所定の物理量を算出するためのメッシュを生成して記憶するメッシュ生成装置において、
回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報を取得し、取得した形状モデルに関する情報を記憶部に記憶する形状モデル取得手段と、
互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域に関する情報を取得する対称領域情報取得手段と、
取得した形状モデルに関する情報及び複数の対称領域に関する情報に基づいて、前記形状モデルを複数の対称領域に分割し、所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶するメッシュ生成手段と、
生成した所定のメッシュに基づいて、所定の回転角度まで回転させて磁界解析する解析手段と、
磁界解析の結果に基づいたアダプティブ解析によりメッシュを細分化する細分化手段と、
複数の対称領域のうち、該細分化手段でメッシュが最も密に細分化された対称領域を抽出する抽出手段と、
抽出した対称領域に生成してあるメッシュを、複数の前記対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写する複写手段と
を備えることを特徴とするメッシュ生成装置。
【請求項2】
形状モデルを複数の有限要素の組み合わせとして表現し、有限要素法にて所定の物理量を算出するためのメッシュを生成して記憶するメッシュ生成装置において、
回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報を取得し、取得した形状モデルに関する情報を記憶部に記憶する形状モデル取得手段と、
互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域に関する情報を取得する対称領域情報取得手段と、
取得した形状モデルに関する情報及び複数の対称領域に関する情報に基づいて、前記形状モデルを複数の対称領域に分割し、所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶するメッシュ生成手段と、
生成した所定のメッシュに基づいて、所定の回転角度まで回転させて磁界解析する解析手段と、
磁界解析の結果に基づいたアダプティブ解析によりメッシュを細分化する細分化手段と、
該細分化手段で複数の対称領域にそれぞれ生成されたメッシュに基づいて、複数の所定の領域にて最も密に細分化されたメッシュを、前記対称領域内に生成する一のメッシュとして合成するメッシュ合成手段と、
合成したメッシュを、複数の前記対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写する複写手段と
を備えることを特徴とするメッシュ生成装置。
【請求項3】
前記形状モデルに関する情報の入力を受け付け、入力を受け付けた形状モデルに関する情報を記憶部に記憶する形状モデル入力受付手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のメッシュ生成装置。
【請求項4】
前記対称領域情報取得手段は、
前記複数の対称領域に関する情報の入力を受け付ける対称領域情報受付手段
を備え、
前記メッシュ生成手段は、入力を受け付けた複数の対称領域に関する情報に基づいて、複数の前記対称領域のうち一の対称領域に所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のメッシュ生成装置。
【請求項5】
前記対称領域情報取得手段は、
記憶してある形状モデルに関する情報に基づいて、メッシュを生成する対象領域にて、所定の図形と前記形状モデルとの交点に関する位置情報を取得する交点位置情報取得手段と、
取得した交点に関する位置情報に基づいて、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域を抽出する対称領域抽出手段と
を備え、
前記メッシュ生成手段は、抽出した複数の対称領域のうち一の対称領域に所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のメッシュ生成装置。
【請求項6】
前記細分化手段は、
磁界解析した結果に基づいて解析条件を特定して再度磁界解析する再解析手段と、
磁界解析した結果と、特定した解析条件により再度磁界解析した結果とに基づいて、生成したメッシュの要素ごとの誤差を算出する誤差算出手段と、
算出した誤差が所定値より大きいか否かを判断する判断手段と、
該判断手段で誤差が所定値より大きいと判断した要素をさらに細分化する再細分化手段と
を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のメッシュ生成装置。
【請求項7】
形状モデルを複数の有限要素の組み合わせとして表現し、有限要素法にて所定の物理量を算出するためのメッシュを生成して記憶するメッシュ生成装置で実行することが可能なメッシュ生成方法において、
回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報を取得し、取得した形状モデルに関する情報を記憶部に記憶するステップと、
互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域に関する情報を取得するステップと、
取得した形状モデルに関する情報及び複数の対称領域に関する情報に基づいて、前記形状モデルを複数の対称領域に分割し、所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶するステップと、
生成した所定のメッシュに基づいて、所定の回転角度まで回転させて磁界解析するステップと、
磁界解析の結果に基づいたアダプティブ解析によりメッシュを細分化するステップと、
複数の対称領域のうち、メッシュが最も密に細分化された対称領域を抽出するステップと、
抽出した対称領域に生成してあるメッシュを、複数の前記対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写するステップと
を含むことを特徴とするメッシュ生成方法。
【請求項8】
形状モデルを複数の有限要素の組み合わせとして表現し、有限要素法にて所定の物理量を算出するためのメッシュを生成して記憶するメッシュ生成装置で実行することが可能なメッシュ生成方法において、
回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報を取得し、取得した形状モデルに関する情報を記憶部に記憶するステップと、
互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域に関する情報を取得するステップと、
取得した形状モデルに関する情報及び複数の対称領域に関する情報に基づいて、前記形状モデルを複数の対称領域に分割し、所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶するステップと、
生成した所定のメッシュに基づいて、所定の回転角度まで回転させて磁界解析するステップと、
磁界解析の結果に基づいたアダプティブ解析によりメッシュを細分化するステップと、
複数の対称領域にそれぞれ生成されたメッシュに基づいて、複数の所定の領域にて最も密に細分化されたメッシュを、前記対称領域内に生成する一のメッシュとして合成するステップと、
複数の対称領域に生成したメッシュに基づいて、複数の所定の領域にて最も密に細分化されたメッシュを、前記対称領域内に生成する一のメッシュとして合成するステップと、
合成したメッシュを、複数の前記対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写するステップと
を含むことを特徴とするメッシュ生成方法。
【請求項9】
形状モデルを複数の有限要素の組み合わせとして表現し、有限要素法にて所定の物理量を算出するためのメッシュを生成して記憶するメッシュ生成装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、
前記メッシュ生成装置を、
回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報を取得し、取得した形状モデルに関する情報を記憶部に記憶する形状モデル取得手段、
互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域に関する情報を取得する対称領域情報取得手段、
取得した形状モデルに関する情報及び複数の対称領域に関する情報に基づいて、前記形状モデルを複数の対称領域に分割し、所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶するメッシュ生成手段、
生成した所定のメッシュに基づいて、所定の回転角度まで回転させて磁界解析する解析手段、
磁界解析の結果に基づいたアダプティブ解析によりメッシュを細分化する細分化手段、
複数の対称領域のうち、該細分化手段でメッシュが最も密に細分化された対称領域を抽出する抽出手段、及び
抽出した対称領域に生成してあるメッシュを、複数の前記対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写する複写手段
として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項10】
形状モデルを複数の有限要素の組み合わせとして表現し、有限要素法にて所定の物理量を算出するためのメッシュを生成して記憶するメッシュ生成装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、
前記メッシュ生成装置を、
回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報を取得し、取得した形状モデルに関する情報を記憶部に記憶する形状モデル取得手段、
互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域に関する情報を取得する対称領域情報取得手段、
取得した形状モデルに関する情報及び複数の対称領域に関する情報に基づいて、前記形状モデルを複数の対称領域に分割し、所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶するメッシュ生成手段、
生成した所定のメッシュに基づいて、所定の回転角度まで回転させて磁界解析する解析手段、
磁界解析の結果に基づいたアダプティブ解析によりメッシュを細分化する細分化手段、
該細分化手段で複数の対称領域にそれぞれ生成されたメッシュに基づいて、複数の所定の領域にて最も密に細分化されたメッシュを、前記対称領域内に生成する一のメッシュとして合成するメッシュ合成手段、及び
合成したメッシュを、複数の前記対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写する複写手段
として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−191896(P2011−191896A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56053(P2010−56053)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(507228172)株式会社JSOL (23)
【Fターム(参考)】