説明

メッセージ公開制御プログラム、装置、方法

【課題】ユーザ入力されたメッセージが全ユーザに公開される前に、第三者が、メッセージの誤りや不適切な記載を確認し、メッセージの修正を行えるようにする。
【解決手段】メッセージ入出力部18は、電子掲示板に対しユーザ入力されたメッセージを受け付ける。遅延時間算出部14は、この電子掲示板に属するユーザのユーザ属性情報に基づいて、各ユーザに対しメッセージの公開遅延時間を設定する。このとき、一部のユーザには他のユーザとは異なる公開遅延時間が設定される。公開遅延部16は、設定された公開遅延時間に従って、順次該当するユーザにメッセージを公開するよう設定を行い、メッセージ入出力部18は、そのユーザに公開された旨を伝える電子メールを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザ入力されたメッセージを他のユーザに対して公開する技術、特に、その公開時期を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子メールあるいは電子掲示板など、メッセージを他のユーザに伝達するシステムにおいては、しばしば、送信者によってあるいは受信者によってメッセージの誤りを指摘される場合がある。
【0003】
図10は、この状況における問題点を示す図である。図においては、まず、発信者300が電子メールその他のメッセージ発信システムを利用して、メッセージ発信302を行っている。メッセージは、例えば、新規開発製品の発表展示会への案内であり、社外の送信先である顧客304、及び社内の送信先である取締役306、直属上司308、部門長310、社内の同じ作業グループのグループメンバ312と同僚314に同時送信されている。ここで、受信者の一人であるグループメンバ312が、「間違いだ(318)」と、電子メール中の誤記に気づいたとする。しかし、この時には、誤記があるメッセージは、既に全ての送信先に到達してしまっている。したがって、訂正したメッセージを再度全員に送付しなければならず、また、誤記によって顧客304などに迷惑をかけることもありえる。
【0004】
下記特許文献1には、電子メール送信時に一定時間送信を留保し、留保中であれば送信を取り消し可能とする技術が開示されている。しかし、この技術では、保留中のメッセージは送信者当人の手元にとどまるにすぎず、例えば、第三者が電子メール内のメッセージの誤り等に気付く機会は一切提供されていない。
【0005】
下記特許文献2には、受信者に未だ到達していない電子メール、または既に到達したが未読状態にある電子メールを取り消す技術が記載されている。取り消しは、後から「削除指示」メールを送信し、受信者のメールサーバーやメールクライアント内の未読メッセージを削除することで行われる。このため、相手先(受信先)のメールシステムに改変を加えなければならず、特に広範囲(多数)のユーザを対象としてこのシステムを導入する場合に障害となる。また、電子メールの未到達あるいは未読は、物理的なネットワーク経路あるいは受信者の行動に左右されるにすぎず、しかも、第三者が電子メール内のメッセージの誤り等に気付く機会は与えられていない。
【0006】
下記特許文献3に記載の技術は、電子掲示板において、投稿したメッセージを指定期間留保し、再考する時間を与えるものである。そして、一定時間後には、第三者に対し予告としてタイトルなどメッセージの一部が公開される。しかし、この技術では、留保されたメッセージは送信者当人の手元にとどまるだけであり、この間に第三者が誤りに気付く機会は提供されていない。
【0007】
下記特許文献4には、電子掲示板システムにメッセージが投稿されると、システムがキーワードなどを使用して不適切なメッセージがある旨を管理者に連絡したり、そのメッセージを削除したりする技術が記されている。しかし、システムのチェック機能には限界があり、必ずしも内容の誤りや不適切な表現を的確にチェックすることはできない。
【0008】
【特許文献1】特開2003−157216号公報
【特許文献2】特開2001−350705号公報
【特許文献3】特開2003−281037号公報
【特許文献4】特開2003−076640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1乃至4に記載された技術では、上述の通り、入力されたメッセージを第三者が修正する記載は与えられていない。このため、第三者がメッセージにおける誤りに気づいたときには、全ユーザがそのメッセージを受信あるいは閲覧してしまっており、誤記や不適切な記載は広範囲に悪影響を及ぼすこととなる。
【0010】
本発明の目的は、ユーザ入力されたメッセージが全ユーザに公開される前に、第三者がメッセージの誤りや不適切な記載を確認し、修正できる技術を実現することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、入力されたメッセージを、優先度の高いユーザから順次閲覧させるための新たな技術を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のメッセージ公開制御プログラムは、コンピュータに対し、ユーザ入力されたメッセージ及びメッセージの公開対象となる複数のユーザの情報を受け付ける受付手順と、前記複数のユーザに対しメッセージの公開遅延時間を設定する手順であって、一部のユーザには他のユーザとは異なる公開遅延時間を設定する設定手順と、設定された公開遅延時間に従って、順次該当するユーザにメッセージを公開する公開手順と、を実行させる。
【0013】
コンピュータは、演算機能を備えたハードウエアをソフトウエア(プログラム)で制御することにより動作する装置であり、コンピュータの一例としては、PC(パーソナルコンピュータ)が挙げられる。メッセージ公開制御プログラムは、このコンピュータの動作を制御して受付手順、設定手順、及び公開手順などを実行させ、コンピュータをメッセージの公開制御を行う装置として機能させる。
【0014】
受付手順においては、ユーザ指示に基づいて入力されたメッセージを受け付ける。メッセージは、他ユーザに伝達する情報であり、そのデータは、典型的にはテキストデータであるが、例えば、ワープロソフトや画像ファイルなどのデータ形式(からなる添付ファイルなど)であってもよい。また、ユーザ入力は、例えば、このコンピュータに付属するキーボードなどの入力装置から行われてもよいし、このコンピュータに接続された別のコンピュータから行われてもよい。受付手順においては、さらに、メッセージの公開対象となる複数のユーザについての情報を受け付ける。この情報は、ユーザ入力によって明示的に指定されたものであってもよいし、ユーザが明示的に指定しなくても、メッセージの入力態様に応じて決定される標準値などであってもよい。
【0015】
設定手順においては、公開対象となるユーザに、メッセージの公開遅延時間を設定する。公開遅延時間とは、そのユーザに対するメッセージの公開をどの程度遅らせるかを定める情報である。公開遅延時間は、例えば、ユーザ入力によって明示的に与えられてもよいし、設定に従って、固定値が与えられても動的に算出されてもよい。一部のユーザには他のユーザとは異なる公開遅延時間が与えられる。言い換えれば、各ユーザには、2段階以上に設定された公開遅延時間のうちのいずれかの公開遅延時間が与えられることになる。複数の公開遅延時間のうちの一つは、遅延させない(即座に公開する)というものであってもよい。なお、設定手順(における各ユーザへの公開遅延時間の設定)は、受付手順にさきだって行われてもよい。
【0016】
公開手順においては、設定された公開遅延時間に従って、各ユーザにメッセージを公開する。したがって、一部のユーザには、他のユーザとは異なるタイミングでメッセージが公開される。ここで、メッセージの公開とは、公開対象となるユーザがメッセージを読み込み可能となるようにすることをいう。メッセージの公開は、例えば、メッセージをユーザ宛に送信することで行われても、メッセージに対するユーザからのアクセスを許すことで行われてもよい。
【0017】
この構成によれば、ユーザ入力されたメッセージは、公開対象となるユーザに対し、多段階のタイミングで公開される。したがって、優先度の高いユーザには、早くにメッセージを公開し、優先度の低いユーザには、遅れてメッセージを公開するという操作が容易に実施できる。また、早くに公開したユーザからの反応に基づいて、未公開のユーザに対する公開を制御することも容易となる。
【0018】
本発明のメッセージ公開制御プログラムの一態様においては、前記設定手順においては、公開遅延時間は、メッセージをユーザ入力したユーザについてのユーザ属性情報と公開対象となるユーザのユーザ属性情報の関連性に基づいて設定される。つまり、公開遅延時間は、ユーザ入力(を一部反映してもよいが)に基づかなくても、ユーザ属性情報に基づいて、内部的に定めることができる。ユーザ属性情報は、ユーザについての登録情報であり、具体的には、所属や役職などの実組織構造を反映した情報や、コンピュータ上での権限、所属ユーザグループ、登録日などコンピュータ内の構造を反映した情報などを例示することができる。そして、設定手順では、ユーザ入力を行ったユーザと、公開対象となるユーザのユーザ属性情報の関連性に基づいて公開遅延時間が決定される。関連性の一例としては、実組織上であるいはコンピュータ内の構造上に基づいて算出されるつながりの近さ(近親度)を挙げることができる。一般に、つながりが近い身内に対しては、誤りを含むメッセージが公開されてもその影響は少ない。そこで、つながりが近いユーザに対して、公開遅延時間を短く(あるいは即座に公開)することが有効となる。
【0019】
本発明のメッセージ公開制御プログラムの一態様においては、前記設定手順においては、公開遅延時間は、過去に公開されたメッセージに関する履歴情報に基づいて設定される。ここで、履歴情報は、例えば、どのユーザが発信したか、どのユーザに公開されたか、そのメッセージは途中で公開中止(キャンセル)されたか、誰の指示に基づいて公開中止されたか、そのメッセージに対しての応答メッセージが公開されたかなどの情報をいう。そのユーザのユーザ入力になるメッセージのキャンセル回数が多い場合は、誤りが多いことを意味していると考えられ、例えば、少なくとも最初は遅い速度で公開することが有効となりうる。また、他人のユーザ入力になるメッセージをキャンセルした回数が多いユーザには、内容の早期チェックを期待して、早い公開遅延時間で公開することが有効となりうる。
【0020】
本発明のメッセージ公開制御プログラムの一態様においては、前記設定手順においては、公開緊急度、公開が最も遅いユーザに対する公開遅延時間、またはあるユーザに対する公開遅延時間の少なくとも一つについてのユーザ入力にも基づいて、公開遅延時間が設定される。例えば、ユーザが(公開遅延は必要であるが)早期に全ユーザに公開したいとして公開緊急度を高める入力を行った場合には、通常よりも公開を早めるように設定を行う。同様にして、最も遅いユーザへの公開遅延時間や特定のユーザへの公開遅延時間の設定が行われた場合に、それと整合性をとるように、全体の公開遅延時間を改変する。
【0021】
本発明のメッセージ公開制御プログラムの一態様においては、前記公開手順におけるメッセージの公開は、公開遅延時間に従って、順次該当するユーザに対し、電子掲示板に表示したメッセージへのアクセス権を設定することで行われる。つまり、メッセージの公開は電子掲示板によって行われる。この電子掲示板での公開にあわせて、そのユーザに対し、電子メール等によって、アクセス制限が解除された(公開がされた)旨を通知することも有効である。なお、電子掲示板に、そのメッセージに対する応答のメッセージが記されるような場合には、当初のメッセージ及び応答メッセージの公開を様々に制御することが可能である。例えば、応答メッセージを当初のメッセージの未公開者には公開しないようにしてもよいし、当初のメッセージよりも先に応答メッセージの公開対象となる者には、応答メッセージの公開にあわせて当初のメッセージも公開させるようにしてもよい。
【0022】
本発明のメッセージ公開制御プログラムの一態様においては、前記公開手順におけるメッセージの公開は、公開遅延時間に従って、順次該当するユーザに対し電子メールを送信することで行われる。つまり、メッセージの公開は電子メールによって行われる。当初の電子メールに対する応答電子メールが送信されるような場合には、電子掲示板の場合と同様に、その公開制御を様々に行うことができる。
【0023】
本発明のメッセージ公開制御プログラムの一態様においては、前記コンピュータに対し、メッセージをユーザ入力したユーザ、または既にメッセージが公開されたユーザからなされる指示に基づいて、前記公開手順におけるそれ以降の公開過程を制御する公開制御手順を実行させる。本発明のメッセージ公開制御プログラムの一態様においては、前記公開制御手順において行われる公開過程の制御は、未公開のユーザに対する公開処理を一時停止、又は完全停止する制御である。また、本発明のメッセージ公開制御プログラムの一態様においては、前記公開制御手順において行われる公開過程の制御は、未公開のユーザに対する公開遅延時間を短くするまたは長くする制御、つまり公開速度を加速または減速する制御である。公開速度を加速する場合には、公開遅延時間を極めて短くする制御、言い換えれば公開遅延がされない一般のメッセージと同様に即座に未公開ユーザに公開を行う制御を行うことも有効である。
【0024】
本発明のメッセージ公開制御プログラムの一態様においては、前記コンピュータに対し、前記公開制御手順においてメッセージの公開処理を一時停止又は完全停止する制御が行われた後で、前記受付手順においてこのメッセージを修正した修正メッセージが受け付けられ、前記公開手順において修正メッセージが公開される場合に、少なくとも前のメッセージが公開されたユーザに対しては修正メッセージである旨を通知する通知手順を実行させる。また、本発明のメッセージ公開制御プログラムの一態様においては、前記通知手順においては、前のメッセージが公開されていないユーザに対しては修正メッセージである旨を通知しない。
【0025】
修正メッセージを改めて公開する際には、受け手の混乱を避けるべく、修正したものか否かを明示することが好ましい場合がある。そこで、少なくとも前のメッセージを公開したユーザには修正した旨を伝えることが望ましい。全てのユーザに修正した旨を伝えことも有効であろう。しかし、その一方で、修正した旨をあまり知られたくない相手先などには、安易に通知を行うべきではない。そこで、前のメッセージを公開していないユーザに対して修正した旨を通知しないことも有効であろう。なお、受付手順において修正メッセージを受け付ける際には、修正メッセージであることを、その投稿を行ったユーザからの明示的指示に基づいて認識してもよいし、公開制御のあとの投稿であることやメッセージIDが一致・類似することなどから推測するようにしてもよい。また、修正メッセージである旨を通知する際には、何回目の修正か、元のメッセージはいつ公開されたかなどの詳細な情報を通知することも有効である。
【0026】
本発明のメッセージ公開制御プログラムの一態様においては、前記コンピュータに対し、前記公開制御手順がなされた場合に、既にメッセージが公開されたユーザに対し、公開過程の制御がなされた旨を通知する通知手順を実行させる。つまり、あるユーザによる公開制御の情報を、公開済みの他のユーザと共有させることで、他のユーザが同様の公開制御を行う手間を省いたり、他のユーザによる公開制御の監視を可能にしたりする。
【0027】
本発明のメッセージ公開制御プログラムの一態様においては、前記設定手順においては、少なくとも一部のユーザに公開されたメッセージに対し、これらのユーザから再送信されるメッセージ、またはこれらのユーザから応答されるメッセージについて、前記公開されたメッセージに関して設定された公開遅延時間を(部分的または完全に)反映させて、公開遅延時間が設定される。再送信されるメッセージ、あるいは応答メッセージを、当初のユーザ入力を行ったユーザとは別のユーザが行った場合に、公開対象となるユーザに対して設定される公開遅延時間が当初のものとは異なることがありうる。このため、例えば、当初のメッセージについては既に公開対象となったが、応答メッセージについては、公開対象となるまでに長い時間がかかってしまうということが起こりうる。また、当初のメッセージについては未だ公開対象となっていないが、応答メッセージについてはそれよりも先に公開対象となるユーザが存在する場合がありえる。そこで、新たなメッセージに対しては、当初のメッセージに対する公開遅延時間を反映させることで、公開時間の不整合性を解消もしくは軽減することとした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は、本実施の形態にかかる装置構成を説明するブロック図である。図には、主たる構成要素として、電子掲示板装置10、ネットワークとしてのインターネット30、及び、各ユーザが使用するPCである端末A32、端末B34、及び端末C36が図示されている。
【0029】
電子掲示板装置10は、PC等のコンピュータに電子掲示板のアプリケーションプログラムをインストールすることで構成されている。このアプリケーションプログラムは、コンピュータの演算装置や記憶装置を制御して、一般的な電子掲示板システムを構築する他、電子掲示板に公開するメッセージを各ユーザに時間差をつけて公開する機能を実現する。
【0030】
電子掲示板装置10には、制御部12と、電子掲示板データベース20が含まれる。制御部12は、演算装置の制御に基づいて構築された構成要素であり、遅延時間算出部14、公開遅延部16、メッセージ入出力部18を含んでいる。また、電子掲示板データベース20は、記憶装置を利用して構築された構成要素であり、電子掲示板情報DB(データベース)22、メッセージDB24、遅延メッセージDB26、ユーザDB28を含んでいる。
【0031】
遅延時間算出部14は、電子掲示板データベース20から、ユーザDB28に含まれるユーザの属性情報や、過去のメッセージ公開にかかる履歴情報などを入力して、公開の遅延時間を算出する。また、公開遅延部16は、遅延時間算出部14で算出された遅延時間をもとに、新たに公開対象となるユーザを検出するとともに、遅延制御の対象外となったメッセージを遅延メッセージDB26からメッセージDB24に移動させて監視対象外とするなどの処理を行う。そして、メッセージ入出力部18は、インターネット30を通じて公開するメッセージを各ユーザから受け付け、メッセージを登録するとともに、インターネット30を通じて、各ユーザに登録したメッセージを公開する。具体的には、遅延処理の対象外のメッセージは、メッセージDB24に登録し、遅延処理の対象のメッセージは、遅延メッセージDB26に登録する。また、公開遅延部16の公開タイミングの制御のもと、公開対象となったユーザに対し、電子メールでその旨、及び公開場所を通知する。
【0032】
電子掲示板情報DB22は、電子掲示板装置10上に構築される複数の電子掲示板を管理する情報を格納している。図2は、この電子掲示板情報DB22に管理された電子掲示板情報テーブル40を例示する図である。ここには、複数の電子掲示板がID番号によって識別されるとともに、各電子掲示板名と、電子掲示板にアクセスできる関与者のユーザ名が登録されている。例えば、ID番号「100」は、「機能仕様検討会」についての電子掲示板であり、その関与者は「ユーザA、ユーザB、ユーザC、...」である。同様に、ID番号「101」には、「A社案件対応」、「ユーザA、ユーザD、ユーザE、...」が登録され、ID番号「102」は、「全社横断プロジェクトA」、「ユーザE、ユーザF、ユーザG、...」が登録されている。ある電子掲示板に書き込みが行われた場合には、その電子掲示板にメッセージが書き込まれ、また、標準的には、そのメッセージの公開対象は関与者として登録された者となる。
【0033】
メッセージDB24は、即時公開される通常のメッセージと、遅延処理が終了したメッセージが登録されるデータベースである。図3には、このメッセージDB24に格納されたメッセージテーブル50を例示した。各メッセージには、ID番号が付与され、対応する電子掲示板の電子掲示板ID、投稿者のユーザ名、投稿日時、件名、及びメッセージ内容が登録されている。例えば、ID番号「1000」として登録されたメッセージは、電子掲示板ID「100」(機能仕様検討会)の掲示板に「ユーザA」が「2005年10月1日10時00分」に「ドラフトができました」との件名で書き込んだものである。同様に、ID番号「1001」は、電子掲示板ID「101」、「ユーザD」、「2005年10月2日11時00分」、「担当者様との打ち合わせ内容です。」のメッセージに対応し、ID番号「1002」は、このメッセージを受けて投稿された電子掲示板ID「101」、「ユーザE」、「2005年10月2日12時00分」、「Re:担当者様との打ち合わせ内容です。」のメッセージに対応する。
【0034】
遅延メッセージDB26は、遅延処理の対象となるメッセージが登録されるデータベースである。図4には、この遅延メッセージDB26に格納された遅延メッセージテーブル60を例示した。各メッセージには、ID番号が付与され、対応する電子掲示板の電子掲示板ID、投稿者のユーザ名、投稿日時、件名、及びメッセージ内容が登録されている他、遅延して公開させる際の伝播速度の情報と、各ユーザに対する公開日時の情報が登録されている。例えば、ID番号「1010」として登録されたメッセージは、電子掲示板ID「101」の掲示板に「ユーザA」が「2005年10月4日10時00分」に「説明用資料です。」との件名で書き込まれたものである。そして、伝播速度は適当な単位のもと「2.3」(例えば標準を1とし、その何倍の速度であるかを表す)と設定され、「ユーザA」への公開日時は「2005年10月4日10時00分」であり既に「公開」済みであること、「ユーザD」への公開日時は「2005年10月4日10時01分」であり既に「公開」済みであること、「ユーザE」への公開日時は「2005年10月4日17時00分」であり「未公開」であることが記録されている。
【0035】
ユーザDB28は、電子掲示板に登録されている関与者のユーザ属性情報を登録したデータベースである。図5には、このユーザDB28に格納されたユーザテーブル70を例示した。各ユーザには、ID番号が付与され、ユーザ名、実際の名前、職場のカテゴリ、職場における等級、電子メールアドレス、及びコンピュータ上での所属グループコードが登録されている。例えば、ID番号「U001」は、「ユーザA」に対応するものであり、その名前は「XXXXX」、カテゴリは「社内」、等級は「G1」、電子メールアドレスは「xxx@xxx.jp」、所属グループコードは「D01001」である。
【0036】
続いて、この電子掲示板装置10の動作を、図6と図7のフローチャートを用いて説明する。
【0037】
図6は、メッセージが登録される過程を説明するフローチャートである。インターネット30を経由してメッセージ入出力部18にメッセージが入力されると、まず、即時登録要求がなされたものか否かが判定される(S10)。即時登録要求がなされたものである場合、すなわち、通常のメッセージである場合には、そのメッセージはメッセージDB24に登録される(S12)。そして、メッセージ入出力部18から、登録された電子掲示板の関与者にメッセージが登録された旨のメールが通知される(S14)。これにより、各ユーザは、即座にメッセージを閲覧できることとなる。
【0038】
他方、即時登録要求がない場合、すなわち、遅延処理を行う要求があった場合には、入力されたメッセージは、遅延メッセージDB26に登録される。そして、このメッセージを即時に公開すべき即時登録者が含まれているか否かが判断される(S18)。含まれている場合には、その者に対しメールを通知して(S20)、登録処理を終了し、含まれていない場合にはそのまま登録処理を終了する。
【0039】
なお、遅延時間の算出が必要な場合には、遅延メッセージDBへのメッセージの登録にあたり、遅延時間算出部14によって、遅延時間が算出される。ここでは、ユーザ近親度と履歴情報とに基づいて、遅延時間を算出する例について説明する。メッセージを入力(投稿)したユーザと公開対象となるあるユーザに関して、共に登録された電子掲示板の数をSC、所属グループの組織上の距離差をΔGroup、カテゴリ差をΔUserCategory、ユーザの階級(役割)の差をΔUserRankとしたときに、ユーザ近親度ΔUを次式で定義する。
ΔU=1/(SC+1)×ΔGroup
×ΔUserCategory×ΔUserRank (1)
ユーザ近親度ΔUは、近親である場合ほど値が小さくなる。また、公開対象となるユーザが過去に他人のメッセージを遅延またはキャンセル(公開停止)した回数をTD、他人のメッセージを加速または確定(遅延の解除)した回数をTAとすると、メッセージ伝達における貢献度ΔCは次式で定義される。
ΔC=1/(TD+TA) (2)
貢献度ΔCは、貢献が大きな場合ほど小さな値となる。伝達の優先度ΔPは、ユーザ近親度ΔUと貢献度ΔCとの積からなる次式により表される。
ΔP=ΔU×ΔC (3)
ユーザへの公開遅延時間は、例えば、このΔPとメッセージの伝播速度によって決定することができる。伝播速度は、標準値を採用してもよいし、ユーザ指定された公開緊急度、最も遅いユーザの公開遅延時間、あるユーザへの公開遅延時間などから決定してもよい。また、メッセージを入力したユーザが、過去にどのくらいのメッセージについて、減速処理や、キャンセル処理を受けているかといった履歴情報に基づいて決定してもよい。
【0040】
図7は、公開遅延部16による処理を説明するフローチャートである。公開遅延部16では、定期的(例えば1分間隔)に、その時刻において、遅延メッセージDB26に登録されているメッセージに、公開対象外から公開対象へと移り変わるユーザがいるか否かを判定する(S30)。そして、該当するユーザがいない場合には処理を終了し、該当するユーザがいる場合には、その新規公開対象者にその旨をメールで通知する(S32)。これにより、新規対象者は、そのメッセージにアクセスできるようになる。続いて、公開遅延部16は、このメッセージに関して、まだ公開対象となっていないユーザがいるか否かを判定する(S34)。そのようなユーザがいる場合には、処理は終了し、いない場合には、このメッセージは遅延メッセージDB26からメッセージDB24へと移される(S36)。これにより、公開遅延部16が参照すべき遅延メッセージDB26内のメッセージの数が減るため、処理効率が向上することとなる。
【0041】
最後に、図8と図9の模式図を用いて、本実施の形態を実施した場合のイメージを簡単に説明する。
【0042】
図8は、図10と対比的に作成した模式図である。ただし、この図では、中心にメッセージ発信100のイベントを記し、その周囲に複数の同心円を描いている。各同心円は、メッセージが同時期に公開される対象及び時間を示すものであり、外側の同心円ほど、公開時期が遅いことを示している。
【0043】
図では、メッセージ発信100のイベントから近い順に、同僚102、グループメンバ104、直属上司106、部門長108、取締役110、顧客112が配置されている。つまり、まず同僚102にメッセージが伝達された後、徐々に公開範囲114が拡がり、一番最後に公開範囲に含まれる顧客112には十分時間が経過した後にメッセージが伝達される。最初の方でメッセージが伝達されるユーザは、発信者に比較的近い(近親度が高い)ユーザである。これらの者は、メッセージの内容を熟知していることが期待できるため、メッセージに誤りがある場合や不適切な部分がある場合に発見を容易に行うことができ、また、そのようなメッセージを受けても混乱するおそれは小さい。そして、このような者達によるチェックを経ることで、最後の方に伝達される近親度が低いユーザに対して、自信をもってメッセージを伝達することができるようになる。
【0044】
図9は、メッセージに誤りがある場合の処理を模式的に説明する図である。この図は、基本的に図8と同様であり、同一又は対応する構成要素には、同一の番号を付している。図において特徴的な点は、グループメンバ104にまでメッセージが到達した時点で、グループメンバ104が、「間違いだ。(120)」と、そのメッセージ内容の誤りを指摘していることである。そして、このグループメンバ104によって、メッセージの遅延公開の続行が中止され、メッセージの公開範囲122は、同僚102とグループメンバ104を含む範囲でストップしている。この結果、グループメンバ104よりも近親度が低いユーザには、誤りを含むメッセージが公開されずに終わっている。グループメンバ104あるいは当初の投稿者は、誤りを訂正したメッセージを再送信することで、瑕疵のないメッセージを改めて全ユーザに公開することができる。なお、この場合、前のメッセージを公開したユーザに対しては訂正したメッセージである旨を同時に通知することが好ましい。前のメッセージを公開しなかったユーザに対しては、必要に応じて、訂正したメッセージである旨を通知すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施の形態にかかる装置構成を説明するブロック図である。
【図2】電子掲示板情報テーブルの例を示す図である。
【図3】メッセージテーブルの例を示す図である。
【図4】遅延メッセージテーブルの例を示す図である。
【図5】ユーザテーブルの例を示す図である。
【図6】メッセージの登録過程を示すフローチャートである。
【図7】メッセージの遅延公開過程を示すフローチャートである。
【図8】メッセージ公開の概略を説明する模式図である。
【図9】メッセージ公開の概略を説明する模式図である。
【図10】従来のメッセージ公開の概略を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0046】
10 電子掲示板装置、12 制御部、14 遅延時間算出部、16 公開遅延部、18 メッセージ入出力部、20 電子掲示板データベース、30 インターネット、40 電子掲示板情報テーブル、50 メッセージテーブル、60 遅延メッセージテーブル、70 ユーザテーブル、100 メッセージ発信、102 同僚、104 グループメンバ、106 直属上司、108 部門長、110 取締役、112 顧客、114,122 公開範囲。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに対し、
ユーザ入力されたメッセージ及びメッセージの公開対象となる複数のユーザの情報を受け付ける受付手順と、
前記複数のユーザに対しメッセージの公開遅延時間を設定する手順であって、一部のユーザには他のユーザとは異なる公開遅延時間を設定する設定手順と、
設定された公開遅延時間に従って、順次該当するユーザにメッセージを公開する公開手順と、
を実行させる、ことを特徴とするメッセージ公開制御プログラム。
【請求項2】
請求項1に記載のメッセージ公開制御プログラムであって、
前記設定手順においては、公開遅延時間は、メッセージをユーザ入力したユーザについてのユーザ属性情報と公開対象となるユーザのユーザ属性情報の関連性に基づいて設定される、ことを特徴とするメッセージ公開制御プログラム。
【請求項3】
請求項1に記載のメッセージ公開制御プログラムであって、
前記設定手順においては、公開遅延時間は、過去に公開されたメッセージに関する履歴情報に基づいて設定される、ことを特徴とするメッセージ公開制御プログラム。
【請求項4】
請求項2または3に記載のメッセージ公開制御プログラムであって、
前記設定手順においては、公開緊急度、公開が最も遅いユーザに対する公開遅延時間、またはあるユーザに対する公開遅延時間の少なくとも一つについてのユーザ入力にも基づいて、公開遅延時間が設定される、ことを特徴とするメッセージ公開制御プログラム。
【請求項5】
請求項1に記載のメッセージ公開制御プログラムであって、
前記公開手順におけるメッセージの公開は、公開遅延時間に従って、順次該当するユーザに対し、電子掲示板に表示したメッセージへのアクセス権を設定することで行われる、ことを特徴とするメッセージ公開制御プログラム。
【請求項6】
請求項1に記載のメッセージ公開制御プログラムであって、
前記公開手順におけるメッセージの公開は、公開遅延時間に従って、順次該当するユーザに対し電子メールを送信することで行われる、ことを特徴とするメッセージ公開制御プログラム。
【請求項7】
請求項1に記載のメッセージ公開制御プログラムであって、
前記コンピュータに対し、
メッセージをユーザ入力したユーザ、または既にメッセージが公開されたユーザからなされる指示に基づいて、前記公開手順におけるそれ以降の公開過程を制御する公開制御手順を実行させる、ことを特徴とするメッセージ公開制御プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のメッセージ公開制御プログラムであって、
前記公開制御手順において行われる公開過程の制御は、未公開のユーザに対する公開処理を一時停止、又は完全停止する制御である、ことを特徴とするメッセージ公開制御プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のメッセージ公開制御プログラムであって、
前記コンピュータに対し、
前記公開制御手順においてメッセージの公開処理を一時停止又は完全停止する制御が行われた後で、前記受付手順においてこのメッセージを修正した修正メッセージが受け付けられ、前記公開手順において修正メッセージが公開される場合に、少なくとも前のメッセージが公開されたユーザに対しては修正メッセージである旨を通知する通知手順を実行させる、ことを特徴とするメッセージ公開制御プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のメッセージ公開制御プログラムであって、
前記通知手順においては、前のメッセージが公開されていないユーザに対しては修正メッセージである旨を通知しない、ことを特徴とするメッセージ公開制御プログラム。
【請求項11】
請求項7に記載のメッセージ公開制御プログラムであって、
前記公開制御手順において行われる公開過程の制御は、未公開のユーザに対する公開遅延時間を短くするまたは長くする制御である、ことを特徴とするメッセージ公開制御プログラム。
【請求項12】
請求項7に記載のメッセージ公開制御プログラムであって、
前記コンピュータに対し、
前記公開制御手順がなされた場合に、既にメッセージが公開されたユーザに対し、公開過程の制御がなされた旨を通知する通知手順を実行させる、ことを特徴とするメッセージ公開制御プログラム。
【請求項13】
請求項1に記載のメッセージ公開制御プログラムであって、
前記設定手順においては、少なくとも一部のユーザに公開されたメッセージに対し、これらのユーザから再送信されるメッセージ、またはこれらのユーザから応答されるメッセージについて、前記公開されたメッセージに関して設定された公開遅延時間を反映させて、公開遅延時間が設定される、ことを特徴とするメッセージ公開制御プログラム。
【請求項14】
ユーザ入力されたメッセージ及びメッセージの公開対象となる複数のユーザの情報を受け付ける受付手段と、
前記複数のユーザに対しメッセージの公開遅延時間を設定する手段であって、一部のユーザには他のユーザとは異なる公開遅延時間を設定する設定手段と、
設定された公開遅延時間に従って、順次該当するユーザにメッセージを公開する公開手段と、
を備える、ことを特徴とするメッセージ公開制御装置。
【請求項15】
コンピュータが実行する方法であって、
ユーザ入力されたメッセージ及びメッセージの公開対象となる複数のユーザの情報を受け付ける受付手順と、
前記複数のユーザに対しメッセージの公開遅延時間を設定する手順であって、一部のユーザには他のユーザとは異なる公開遅延時間を設定する設定手順と、
設定された公開遅延時間に従って、順次該当するユーザにメッセージを公開する公開手順と、
を含む、ことを特徴とするメッセージ公開制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate