説明

メマンチンのアッセイ方法

本発明は、メマンチンおよび関連の化合物を分析するための新規アッセイに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メマンチンを分析するための新規なアッセイおよび関連の化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品の製造販売承認を得るためには、製造者は適切な行政当局に詳細な証拠を提出して、製品が市場で販売されるのに適していることを示さなければならない。とりわけ、製品がヒトへの投与に許容し得ることおよび販売予定である特定の医薬組成物が販売時、不純物を含まないこと、許容し得る保存安定性(有効期間)を有することについて行政当局を納得させなければならない。
【0003】
したがって、行政当局に提出するものには、製造時、医薬品有効成分(API)に不純物が存在していないかまたはごくわずかなレベルでしか存在していないことおよび医薬組成物の有効期間が許容し得ることを証明する分析データが含まれていなければならない。
【0004】
APIおよび医薬組成物に存在し得る不純物には、APIの合成前駆体の残量、活性薬剤の合成中に生じる副産物、残留溶媒、活性薬剤の異性体、APIの合成または医薬組成物の調製で使用される材料中に存在した汚染物質および特定できない付随的物質が含まれる。保存中に生じ得る他の不純物には、例えば酸化または加水分解による活性薬剤の分解によって生じる物質が含まれる。
【0005】
保健当局の基準は非常に厳しく、製造者は製造者の製品には不純物が比較的存在せず(一定の認められた限度以内)、この基準が、生産される医薬品の各バッチに再現可能であることを証明しなければならない。
【0006】
APIおよび医薬組成物が安全で有効であることを関係の保健当局に納得させるために必要な試験には、純度試験、含量均一性試験、溶出試験および関連物質試験が挙げられる。純度試験は、既知の純度の基準と比較して、試験製品(検体)の純度を測定するが、関連物質試験は、製品に存在するすべての不純物を定量するのに使用される。含量均一性試験は、製品(例えば、錠剤)のバッチが均一量のAPIを含有することを保証し、溶出試験は、製品の各バッチが一貫したAPIの溶解および放出を有することを保証する。
【0007】
APIまたは医薬組成物(例えば、錠剤またはカプセル)を分析するためのこれらの方法を開発する場合、最適の技法は一般に紫外線可視分光計と組み合わせた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)である。混合して存在するAPIと任意の不純物は、HPLC固定相で分離され、紫外線可視分光計を介して検出および測定することにより定量できる。
【0008】
HPLCは、クロマトグラフィーによる分離技法であり、その技法において、高圧ポンプにより、分析される物質または混合物(検体)を液体溶媒、すなわち移動相(溶離液とも呼ぶ)とともに、固定相を含有する分離カラムに通す。構成物質が固定相と強く相互作用すると、その構成物質は比較的長時間カラムに留まるが、一方、固定相と強く相互作用しない物質ほどカラムから速く出ていく。相互作用の強度に応じて、検体の様々な構成要素が異なる時間(保持時間)に分離カラムの末端に現れ、そこで適切な検出器によって同定され得る。
【0009】
この方法は、発色団を有する化合物、すなわち、電磁スペクトルのUV可視範囲におけるエネルギーを吸収する化合物で良く機能する。しかし、発色団を含有しない他の化合物については、別の検出方法を見出さなければならない。これは、UV可視検出器を用いて検出し得る発色団を得られた検体が含有するように、対象の化合物を試薬で誘導体化することを含むことがある。
【0010】
別の検出方法とは、UV可視検出器を蛍光検出器に変えることである。しかし、この技法は、検体がフルオロフォアを有することを必要とするが、蛍光を発する化合物が非常に稀であるので、対象の化合物は通常、蛍光を発する化学的部分で誘導体化させなければならない。これもやはり、今度は蛍光化合物を生成する試薬で、検体を誘導体化することを必要とする。特に、一部の検体は、誘導体化試薬と容易に反応する官能基を有していないので、検体の誘導体化は多大な時間がかかるうえに、開発も難しい。さらに、いくつかの関連物質は、分解中に誘導体化され得る官能基を失うことがあり、結果として、これらの関連物質は検出されないことになる。蛍光誘導体化の別の欠点は、蛍光検出器が製薬会社の分析実験室にUV可視検出器ほど普及していないことである。
【0011】
ガスクロマトグラフィー(GC)は、医薬組成物およびAPIの両方における残留溶媒を定量するために製薬会社で通常使用されている。前記方法は一般的に、試験サンプルをある量の1種または複数の溶媒に溶解するステップと、サンプルを注入するステップとヘッドスペース法を用いて溶媒を揮発させるステップとを含む。検体は、典型的には水素炎イオン化検出器(FID)技法を用いて検出される。これらのFID検出器は、C-CまたはC-H結合を含有する任意の検体を検出することができるので、ほぼすべての医薬品に使用できる。しかし、ガスクロマトグラフィーを用いて化合物を分析するためには、化合物は、クロマトグラフィーカラムと相互作用する前に揮発でき十分低い蒸気圧を有していなければならない。
【0012】
ガスクロマトグラフィーは非常に効率的で感受性の高い方法であり、物質の複雑な混合物を分析するのに使用される。ガスクロマトグラフィーは、移動相としてガスを使用するクロマトグラフ法であり、ガスは、固定相の高粘性液体を含有する規定の直径のカラムに送り込まれる。ほとんどの毛管カラムは一般に溶融石英からつくられ、内径が0.1から0.5mmの間、長さが5から60mの間である。カラムの内壁は固定相でコーティングされており、フィルムの厚さは、0.1から5μmである。水素、ヘリウムまたは窒素が通常キャリアガスとして使用され、水素は分離効率および分析速度の点で有意義な利点をもたらす。
【0013】
ガスクロマトグラフィーの1つの基本的な必要条件は、物質がガス形態で利用不可能であるとすれば、分解することなく蒸発し得ることである。揮発度が不十分な物質は選択的に誘導体化させて、トリメチルシリル誘導体のようなより揮発性のある物質を生成することができる。サンプルは、液体サンプルを直接注入するかまたはサンプルバイアルのガス空間から抽出することにより毛管カラムへ導入され得る。後者の方法は、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーと呼ばれる特殊な技法であり、液体サンプルまたは固体サンプルにおける低濃度の高揮発性物質を検出する手段をもたらす。
【0014】
別の検出方法は、質量分析法を使用して、ガスクロマトグラフィー(GC-MS)または液体クロマトグラフィー(LC-MS)のいずれかにより分離された化合物を検出することである。しかし、この方法は、多くの分析実験室に不都合な高価な質量分析計を要する。
【0015】
メマンチンは、3,5-ジメチルトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン-1-アミンまたは1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタンに一般的な化学名である。メマンチンは、中等度の親和性を有するN-メチル-D-アスパルテート(NMDA)受容体アンタゴニストである。
【0016】
Bormannらは、メマンチン塩酸塩が脳卒中後の脳虚血、心臓切開手術、くも膜下出血、一過性脳虚血発作、周産期仮死、酸素欠乏症、低血糖症、無呼吸およびアルツハイマー病の予防および治療に有用であることを米国特許第5061703号に開示している。さらに、哺乳動物において非虚血性NMDA受容体媒介の神経変性を減少するのにメマンチンを使用する方法が、米国特許第5614560号に開示されている。
【0017】
式Iによって表されるメマンチン塩酸塩は、現在、中等度から重度のアルツハイマー病の予防および治療について承認され、販売されている。
【0018】
【化1】

【0019】
メマンチンの調製方法は、当分野において知られており、これらの方法には、米国特許第4122193号およびK Gerzonらの、J. Med. Chem.、第6巻、760〜763頁、1963年に開示されているものが含まれる。
【0020】
メマンチンは、分子が発色団を含有してないことから、医薬化合物として非常に独特である。上述のように、これは、UV可視検出器を有するHPLCという通常の選択は、メマンチンおよびその不純物を分析する方法として実用性がないことを意味する。メマンチンはまた、ごくわずかな官能基しか含有しておらず、このことはこのような方法の全般的な欠点に加えて、誘導体化して適切な発色団またはフルオロフォアを含有する化合物を形成することが難しいであろうことを意味する。
【0021】
メマンチンを分析するためのいくつかの方法が文献に発表されてきたが、これらの様々な方法は、誘導体化および/または専門の検出装置を必要とするため、上述の問題をすべて有している。
【0022】
これらの方法を開示しているより最近の刊行物の例には、以下のものが挙げられる:HPLC methods using fluorescent reagents to derivatise memantine in articles、T-H Duhら、J. Chromatography A、987巻、205〜209頁、2003年およびJ. Chromatography A、1088巻、175〜181頁、2005年。An HPLC method using derivatisation and UV detection、C Shuangjin、J. Pharm. & Biomed. Analysis (近刊で)。A liquid chromatography-mass spectrometry (LC-MS) method、MJ Koeberleら、J. Chromatography B、787巻、313〜322頁、2003年。A specific liquid chromatography-tandem mass spectrometry (LC-MS/MS) method、AA Almeidaら、J. Chromatography B、848巻、311〜316頁、2007年。An electrophoretic method、N Reichovaら、Electrophoresis、23巻、259〜262頁、2002年。
【0023】
したがって、メマンチンおよびその不純物の分析に関していくつかの方法が開示されてきたが、上述のような既知の方法に関係する問題を回避する代替方法が依然求められている。
【0024】
驚くべきことに、本発明者らの研究により、メマンチンが誘導体化も分解もせずに、GCで使用するのに十分揮発性であることが判明した。このため、GCを用いた製品の分析が可能になり、メマンチンのサンプルを、上述のヘッドスペースサンプリングの必要なしに、カラムに直接注入することができる。また、このGC法を用いてメマンチンの有機不純物を定量することも可能である。本発明者らはまた、GC法のためにサンプルを調製する、新規で、効率的で再現可能な方法を開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】米国特許第5061703号
【特許文献2】米国特許第5614560号
【特許文献3】米国特許第4122193号
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】K Gerzonら、J. Med. Chem.、第6巻、760〜763頁、1963年
【非特許文献2】HPLC methods using fluorescent reagents to derivatise memantine in articles、T-H Duhら、J. Chromatography A、987巻、205〜209頁、2003年
【非特許文献3】J. Chromatography A、1088巻、175〜181頁、2005年
【非特許文献4】An HPLC method using derivatisation and UV detection、C Shuangjin、J. Pharm. & Biomed. Analysis
【非特許文献5】A liquid chromatography-mass spectrometry (LC-MS) method、MJ Koeberleら、J. Chromatography B、787巻、313〜322頁、2003年
【非特許文献6】A specific liquid chromatography-tandem mass spectrometry (LC-MS/MS) method、AA Almeidaら、J. Chromatography B、848巻、311〜316頁、2007年
【非特許文献7】An electrophoretic method、N Reichovaら、Electrophoresis、23巻、259〜262頁、2002年
【非特許文献8】Fiedler、「Lexikon der Hilfsstoffe」、第4版、ECV Aulendorf、1996年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
したがって、本発明の目的は、メマンチンおよびその不純物を分析する、新規の代替方法を提供することであり、さらに、誘導体化および専門の検出方法の使用に関係する、典型的な先行技術の問題を回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
したがって、本発明の第1の態様は、ガスクロマトグラフィーを用いてメマンチンまたは薬学的に許容し得るその塩およびその不純物を分析する方法を提供する。好ましくは、方法は、ヘッドスペースサンプリングを行うことなく、メマンチンの試験サンプルをGCカラムに直接注入することを含む。好ましくは、方法は水素炎イオン化検出を使用する。メマンチンは、好ましくは、遊離塩基、塩酸塩または別の酸付加塩の形態である。
【0029】
本発明の第1の態様の方法は、メマンチンAPIまたは医薬組成物として調製された場合のメマンチンを分析するために使用できる。好ましくは、メマンチンは医薬組成物として調製される。
【0030】
本発明の第1の態様の方法により分析され得る医薬組成物は、固体組成物および液体組成物を含み、1種または複数の薬学的に許容し得る担体または賦形剤を場合により含む。固体形態の組成物には、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、サシェ、坐薬および分散性顆粒が挙げられる。液体形態の組成物には、経口経路、注入可能経路または点滴経路により投与され得る溶液または懸濁液が挙げられる。
【0031】
本明細書に使用されている用語「不純物」は、明細書全体を通して、APIまたは医薬組成物の製造中に形成される不純物および/または保存中の医薬組成物中に分解により形成される不純物(または関連物質)のいずれかを意味し得る。
【0032】
上記のように、メマンチンは通常、薬学的使用のためには塩酸塩として存在する。この塩は強い酸性であり、分離のために使用されるカラムを腐食し得るので、これはガスクロマトグラフィーによる分析にさらなる問題をもたらす。したがって、塩は典型的には、分析前に中和して、メマンチン遊離塩基を形成しなければならない。このような場合の典型的なサンプル調製法は、APIとして存在するかまたは医薬組成物中に存在する場合のメマンチン塩酸塩を、水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液と反応させることにより中和することである。このように形成されたメマンチン遊離塩基および対応する不純物は、次いで、クロロホルムなどの有機溶媒を用いて抽出される。
【0033】
しかし、この抽出法は、有機層への抽出率が不定であること、水層と有機溶媒層の分離が不完全であることを含むいくつかの理由により、非常に信頼性に乏しいと言える。本発明者らは、この種の抽出工程後に回収されるメマンチンの量は一貫して再現可能ではなく、このことが関連物質の定量にさらなる問題をもたらすことを見出した。
【0034】
結果として、本発明の第2の態様は、メマンチン塩酸塩または別の薬学的に許容し得るその酸付加塩およびその不純物をガスクロマトグラフィーを用いて分析する方法を提供し、その方法において、試験サンプルは、メマンチン塩酸塩もしくは別の薬学的に許容し得るその酸付加塩またはメマンチン塩酸塩もしくは別の薬学的に許容し得るその酸付加塩を含む医薬組成物を1種または複数の溶媒および非水性アルカリ性試薬と混合することにより調製され、この溶媒(複数可)はメマンチンおよびアルカリ性試薬を溶解できる。
【0035】
本発明の第2の態様の方法は、好ましくは、ヘッドスペースサンプリングを行うことなく、メマンチンの試験サンプルをGCカラムに直接注入することを含む。好ましくは、方法は水素炎イオン化検出を使用する。
【0036】
本発明の第2の態様の方法は、メマンチンAPIまたは医薬組成物として調製された場合のメマンチンを分析するために使用できる。好ましくは、メマンチンは医薬組成物として調製される。
【0037】
本発明の第2の態様の方法により分析され得る医薬組成物は、固体組成物および液体組成物を含み、1種または複数の薬学的に許容し得る担体または賦形剤を場合により含む、固体形態の組成物には、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、サシェ、坐薬および分散性顆粒が挙げられる。液体組成物には、経口経路、注入可能経路または点滴経路により投与され得る溶液または懸濁液が挙げられる。
【0038】
本発明の第2の態様の方法に使用され得るアルカリ性試薬には、無機アルカリ性試薬、例えば炭酸ナトリウム;重炭酸ナトリウム;炭酸カリウム;重炭酸カリウム;炭酸カルシウム;重炭酸カルシウム;炭酸マグネシウム;重炭酸マグネシウム;水酸化ナトリウム;水酸化カリウム;水酸化カルシウム;水酸化リチウム;水酸化アンモニウム;水酸化アルミニウム;酸化マグネシウム;水酸化マグネシウム;水酸化アルミニウム・マグネシウム;ケイ酸アルミニウム・マグネシウム;リン酸塩(例えば、第2リン酸ナトリウム、第2リン酸カリウムまたは第2リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウムまたはリン酸三ナトリウム);およびそれらの混合物が含まれる。好ましくは、アルカリ性試薬はアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである。最も好ましくは、アルカリ性試薬は水酸化カリウムである。
【0039】
本発明の第2の態様の方法に使用される有機溶媒(複数可)は、好ましくは、低級アルキルアルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールまたはイソプロパノールまたはそれらの混合物である。あるいは、有機溶媒(複数可)は、テトラヒドロフラン、酢酸エチルもしくはアセトニトリル、またはアルカリ性試薬および遊離したメマンチン遊離塩基を完全溶解できる任意の適切な有機溶媒(複数可)であってもよい。好ましくは、有機溶媒はメタノールまたはエタノールであり、最も好ましくはメタノールである。
【0040】
必要であれば、形成された試験サンプル溶液を、濾過または遠心分離などの当技術における標準的な方法により、残存医薬組成物の残留固体すべてから分離することができる。好ましくは、試験サンプル溶液は遠心分離により分離される。
【0041】
標準参照化合物は、十分に確立された純度を有する検体のサンプルであり、標準の溶液は通常、サンプル溶液と並行して調製され、いわゆる「外部参照標準」として使用される。次いで、主な化合物またはその不純物の純度は、標準に対するそれらの反応に基づいて計算され得る。しかし、この方法は、サンプル調製方法の再現性が低いので、メマンチンの分析には不適当であることがわかった。
【0042】
内部参照標準は、分析前にサンプル溶液に添加される既知量の化合物である。多くの場合、検体に類似の構造を有する、安価で単純な炭化水素が選ばれよう。これにより、内部参照標準が検体と同様の保持時間を有し、高純度の標準を得られることが保証される。
【0043】
本発明者らは、内部参照標準を用いる代替技法を開発したが、その技法はクロロホルムなどの有機溶媒で水層を抽出することを必要としない。
【0044】
本発明者らが開発した方法は、内部参照標準としてアマンタジン塩酸塩を使用する。本発明者らにより、驚くべきことに、サンプル調製工程の間、アマンタジンおよびその塩はメマンチンおよびその塩と同様に挙動し、サンプル調製工程から回収されるメマンチン:アマンタジンの比がサンプル調製工程前のサンプルに存在したメマンチン塩酸塩:アマンタジン塩酸塩の比と一致することがわかった。この手法を用いると、サンプル抽出に伴う問題が完全に克服され、単純で信頼性が高く、費用効率のよい、メマンチンまたは薬学的に許容し得るその塩およびその関連物質をガスクロマトグラフィーを用いて分析する方法が提供される。
【0045】
本発明者らは前記方法を大規模に試験して、前記方法が再現可能で、正確で、精密で、濃度に対して直線性を有し、ロバストであることを示した。検出および定量の限度もまた決定された。
【0046】
本発明の第1および第2の態様は、内部参照標準の使用を含んでもよい。好ましくは、内部標準参照化合物はアマンタジンまたはリマンタジンである。最も好ましくは、内部標準参照化合物はアマンタジンである。
【0047】
本発明の第3の態様は、
(a)内部標準参照化合物の第1の有機溶媒の溶液を調製するステップと;
(b)内部標準参照化合物溶液を、メマンチン塩酸塩、メマンチン塩酸塩を含む医薬組成物、第2の有機溶媒および非水性アルカリ性試薬と混合して、溶液中にメマンチン遊離塩基を遊離するステップと;
(c)上清溶液を分析するステップと
を含む、ガスクロマトグラフィーを用いてメマンチン塩酸塩およびその不純物を分析する方法を提供する。
【0048】
本発明の第3の態様の方法で使用される第1および第2の有機溶媒は、同一であっても、同一でなくてもよく、好ましくは、低級アルキルアルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールまたはイソプロパノールである。あるいは、第1および第2の有機溶媒は、テトラヒドロフラン、酢酸エチルもしくはアセトニトリル、またはアルカリ性試薬および遊離したメマンチン遊離塩基を完全溶解できる任意の適切な有機溶媒であってもよい。好ましくは、有機溶媒はメタノールまたはエタノールであり、最も好ましくはメタノールである。
【0049】
本発明の第3の態様の方法に使用される適切なアルカリ性試薬は、無機アルカリ性試薬、例えば炭酸ナトリウム;重炭酸ナトリウム;炭酸カリウム;重炭酸カリウム;炭酸カルシウム;重炭酸カルシウム;炭酸マグネシウム;重炭酸マグネシウム;水酸化ナトリウム;水酸化カリウム;水酸化カルシウム;水酸化リチウム;水酸化アンモニウム;水酸化アルミニウム;酸化マグネシウム;水酸化マグネシウム;水酸化アルミニウム・マグネシウム;ケイ酸アルミニウム・マグネシウム;リン酸塩(例えば、第2リン酸ナトリウム、第2リン酸カリウムまたは第2リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウムまたはリン酸三ナトリウム);およびそれらの混合物であり得る。好ましくは、アルカリ性試薬は水酸化塩、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである。最も好ましくは、アルカリ性試薬は水酸化カリウムである。
【0050】
通常、アルカリ性試薬は、ステップ(b)で溶液に添加される。あるいは、アルカリ性試薬は、ステップ(b)ではなく、ステップ(a)で溶液に添加してもよい。
【0051】
好ましくは、内部標準参照化合物は、アマンタジンまたはリマンタジンである。最も好ましくは、内部標準参照化合物はアマンタジンである。
【0052】
必要であれば、ステップ(c)の上清溶液は、濾過または遠心分離などの当技術における標準的な方法により、医薬組成物由来の残留固体すべてから分離され得る。好ましくは、上清溶液は遠心分離により分離される。
【0053】
本発明の第2および第3の態様で使用されている用語「非水性」とは、有機溶媒層から分離する明確な水層を形成するのに十分な水が存在しないことを意味する。したがって、用語「非水性アルカリ性試薬」とは、アルカリ性試薬が水性であったとしても有機溶媒層から分離する明確な水層を形成するのに十分な水が存在しないため、アルカリ性試薬が1種または複数の有機溶媒に溶解していることを意味する。
【0054】
本発明の第2および第3の態様は、単相溶媒抽出法を用いてメマンチン遊離塩基を分析する方法を含む。結果として、有機/水性二相溶媒抽出法は回避され、水層と有機層の分離は必要とされず、よって上述の先行技術方法に伴う問題が回避される。
【0055】
しかし、二相溶媒抽出法が好ましい場合、本発明者らは、結果が再現可能ではなく、クロロホルム層が水層の下にあり、したがって、アッセイのために分離するのがより困難なので、塩素系溶媒、例えばクロロホルムの使用はサンプルの調製にあまり適当ではないことを見出した。驚くべきことに、本発明者らは、低級アルキル炭化水素有機溶媒、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタンおよびオクタンまたは芳香族炭化水素、例えばベンゼンまたはトルエンが使用される場合、水性アルカリ性/有機溶媒二相抽出法が非常に良く作用することを見出した。本発明者らはこの方法を大規模に試験して、この方法が再現可能で、正確で、精密で、濃度に対して直線性を有し、ロバストであることを示した。
【0056】
したがって、本発明の第4の態様は、メマンチン塩酸塩または別の薬学的に許容し得るその酸付加塩およびその不純物をガスクロマトグラフィーを用いて分析する方法であって、メマンチン塩酸塩もしくは別の薬学的に許容し得るその酸付加塩またはメマンチン塩酸塩もしくは別の薬学的に許容し得るその酸付加塩を含む医薬組成物を、1種または複数の有機溶媒および水性アルカリ性試薬と混合して、有機溶媒(複数可)の溶液にメマンチン遊離塩基を遊離するステップと、二相混合物を分離して有機溶媒層を得るステップと、有機溶媒溶液を分析するステップとを含む方法を提供する。
【0057】
本発明の第4の態様は、内部標準参照化合物の使用を含むことができる。好ましくは、内部標準参照化合物は、アマンタジンまたはリマンタジンである。最も好ましくは、内部標準参照化合物はアマンタジンである。
【0058】
本発明の第4の態様で使用される有機溶媒(複数可)は、好ましくは、以下の溶媒の1つまたは複数から選択される炭化水素溶媒である:ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼンまたはトルエン。好ましくは、炭化水素溶媒はn-ヘキサンである。
【0059】
本発明の第4の態様の方法に使用される適切なアルカリ性試薬は、無機アルカリ性試薬、例えば炭酸ナトリウム;重炭酸ナトリウム;炭酸カリウム;重炭酸カリウム;炭酸カルシウム;重炭酸カルシウム;炭酸マグネシウム;重炭酸マグネシウム;水酸化ナトリウム;水酸化カリウム;水酸化カルシウム;水酸化リチウム;水酸化アンモニウム;水酸化アルミニウム;酸化マグネシウム;水酸化マグネシウム;水酸化アルミニウム・マグネシウム;ケイ酸アルミニウム・マグネシウム;リン酸塩(例えば、第2リン酸ナトリウム、第2リン酸カリウムまたは第2リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウムまたはリン酸三ナトリウム);およびそれらの混合物であり得る。好ましくは、アルカリ性試薬は水酸化塩、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである。最も好ましくは、アルカリ性試薬は水酸化カリウムである。
【0060】
必要であれば、有機溶媒溶液は、濾過または遠心分離などの当技術における標準的な方法により、医薬組成物の残留固体すべてから分離され得る。好ましくは、有機溶媒溶液は遠心分離により分離される。
【0061】
本発明の第4の態様で使用されている用語「水性」とは、有機溶媒層から分離する明確な水層を形成するのに十分な水が存在することを意味する。したがって、用語「水性アルカリ性試薬」とは、少なくともいくつかのアルカリ性試薬が水層に溶解することを意味する。
【0062】
塩酸塩の代わりに、本発明の第4の態様は、メマンチンの他の酸付加塩、例えば臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、マレイン酸塩、メシル酸塩、ベシル酸塩、トシル酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩またはギ酸塩を分析するために使用されてもよい。しかし、本発明の方法は好ましくは、メマンチンの塩酸塩を分析するために使用される。
【0063】
本発明のすべて4つの態様より分析され得る医薬組成物には、1種または複数の薬学的に許容し得る担体または賦形剤を場合により含む、固体組成物および液体組成物が含まれる。固体形態の組成物には、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、サシェ、坐薬および分散性顆粒が挙げられる。固体剤形に使用される典型的な賦形剤には、問題の剤形の従来の添加剤が含まれる。錠剤製剤に通常使用される錠剤化補助剤が使用でき、その対象物について膨大な文献が参照されるが、特にFiedlerの「Lexikon der Hilfsstoffe」、第4版、ECV Aulendorf、1996年(参照によりその全体を本明細書に組み込む)を参照されたい。典型的な賦形剤には、限定するわけではないが、充填剤、結合剤、崩壊剤、流動促進剤、潤滑剤、安定剤、希釈剤、界面活性剤などが含まれる。
【0064】
したがって、分析される医薬組成物は典型的には以下を含む:1種または複数の充填剤、例えば、微結晶性セルロース、ラクトース、ラクトース一水和物、糖、デンプン、加工デンプン、マンニトール、ソルビトールおよび他のポリオール、デキストリン、デキストランまたはマルトデキストリン;1種または複数の結合剤、例えば、ラクトース、デンプン、加工デンプン、トウモロコシデンプン、デキストリン、デキストラン、マルトデキストリン、微結晶性セルロース(例えば、Avicel(登録商標))、糖、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、アカシアゴム、トラガカント、ポリビニルピロリドンまたはクロスポビドン;1種または複数の崩壊剤、例えば、クロスカルメロースナトリウム、架橋結合ポリビニルピロリドン、クロスポビドン、架橋結合カルボキシメチルデンプン、デンプン、微結晶性セルロース、ポリアクリリンカリウム;1種または複数の異なる流動促進剤または潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、タルク、三ケイ酸マグネシウム、ステアリン酸、パルミチン酸、カルナウバワックスまたは二酸化ケイ素(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)。
【0065】
必要であれば、分析される医薬組成物はまた、界面活性剤および他の従来の賦形剤を含んでもよい。使用してもよい典型的な界面活性剤は、イオン性界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムまたは非イオン性界面活性剤、例えば様々なポロキサマー(ポリオキシエチレンコポリマーおよびポリオキシプロピレンコポリマー)、天然レシチンまたは合成レシチン、ソルビタンおよび脂肪酸のエステル(例えば、Spano(登録商標))、ポリオキシエチレンソルビタンおよび脂肪酸のエステル(例えば、Tween(登録商標))、ポリオキシエチル化水素化ヒマシ油(例えば、Cremophor(登録商標))、ステアリン酸ポリオキシエチレン(例えば、Brij(登録商標))、ジメチルポリシロキサンまたは上記の界面活性剤の任意の組合せである。
【0066】
固体医薬組成物がコーティング錠形態である場合、コーティングは、少なくとも1つのフィルム形成剤、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはメタクリレートポリマー(これらは場合により、少なくとも1つの可塑剤を含有してもよい)、例えばポリエチレングリコール、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチルおよび膜コーティングのための従来の他の薬学的補助物質、例えば、顔料、充填剤などから調製されてもよい。
【0067】
これらの賦形剤の1種または複数は、当業者により、日常的な実験により、またいかなる不当な負担もなく、固体経口剤形の具体的な所望の特性を考慮して選択でき、また使用できる。
【0068】
各賦形剤の絶対量および他の添加剤に相対的な量は同様に、固体経口剤形の所望の特性に応じ、当業者により日常的な実験により、不当な負担もなく、選択されてもよい。例えば、固体経口剤形は、活性剤放出の量的制御があってもなくても活性剤が加速放出および/または遅延放出を示すように、選択されてもよい。
【0069】
粉末において、担体は、微粉化したAPIを有する混合物中に存在する微粉化した固体である。錠剤において、APIは、必要な結合特性を有する担体と適切な割合で混合され、所望の形とサイズに圧縮される。
【0070】
液体形態の製剤には、溶液、懸濁液およびエマルション、例えば水またはプロピレングリコール水溶液が含まれる。非経口注入のために、液体製剤は、ポリエチレングリコール水溶液で溶液に製剤化され得る。
【0071】
経口使用に適切な水溶液は、APIを水に溶解し、必要に応じて、適切な着色剤、香料、安定剤および増粘剤を添加することにより調製され得る。
【0072】
単位用量製剤における活性成分の量は、0.5mgから50mg、好ましくは2mgから30mg、最も好ましくは5mgから20mgで変化してもよいし、または調節してもよい。約5mgから約20mgの日用量の範囲が好ましい。必要であれば、組成物はまた、他の相溶性のある治療剤を含有できる。
【0073】
本発明を、具体的な実施形態に関して記載してきたが、特定の修正および均等物は当業者には明らかであり、本発明の範囲内に含まれることを意図する。
【0074】
本明細書に開示された発明の方法はまた、メマンチン、類似の化学的構造および/または類似の化学的特性または物理的特性を有する化合物、例えばリマンタジンおよび薬学的に許容し得るその塩の分析にも使用できる。
【0075】
本発明を以下の実施例により説明するが、限定するものではない。
【0076】
(実施例)
【0077】
【表1】

【0078】
内部希釈標準溶液(ISTD)
アマンタジンHCl(C10H17N・HC1)約100mgを精密に計量し、1000mL容のフラスコに移す。希釈剤約600mLを添加し、約2分間または溶解するまで超音波で分解する。室温に冷却し、希釈剤である容量に希釈し、十分に混合する。(濃度約100μg/mLのアマンタジンHCl)
【0079】
希釈標準溶液(2連で調製)
メマンチンHCl RS(C12H21N・HC1)約25.0mgを精密に計量し、250mL容のフラスコに移す。ISTD約150mLを添加し、約2分間または溶解するまで超音波で分解する。室温に冷却し、ISTDで量に希釈し、十分に混合する。(濃度約100μg/mLのメマンチンHClおよび約100μg/mLのアマンタジンHCl)
【0080】
サンプル希釈標準溶液
錠剤1錠を100mL容のフラスコに移す。ISTD 70mLを添加する。20分間または錠剤が完全に崩壊するまで機械的に振動させる。ときおり回転させながら、10分間超音波で分解する。室温で10分間放置する。ISTDで量に希釈する。十分に混合する。一部分を3000rpmで5分間遠心分離する。分析のため上清溶液を採取する。(濃度約100μg/mLのメマンチンHClおよび約100μg/mLのアマンタジンHCl)
【0081】
【表2A】

【0082】
【表2B】

【0083】
内部標準品(ISTD)
内部標準原液
アマンタジンHCl(C10H17N・HC1)27.8mgを計量し、50mL容のフラスコに移す。媒体約40mLを添加する。2分間または溶解するまで超音波で分解する。媒体で量に希釈する。十分に混合する。
【0084】
内部標準中間溶液
内部標準原液30.0mLを100mL容のフラスコに移す。5.0mLの1.0N NaOH溶液を添加する。回転させて混合する。n-ヘキサン20.0mLを添加する。しっかりと栓をする。5分間機械的に振動させる。10分間放置する。
【0085】
内部標準溶液(ISTD)
内部標準中間溶液の上層5.0mLを250mL容のフラスコに移す。n-ヘキサンで量に希釈する。十分に混合する。(濃度約16.7μg/mLのアマンタジンHCl)
【0086】
標準原液
メマンチンHCl RS(C12H21N・HCl)約22.2mgを精密に計量し、100mL容のフラスコに移す。約30mLの媒体を添加し、約2分間または溶解するまで超音波で分解する。媒体で量に希釈する。十分に混合する。(濃度約222μg/mLのメマンチンHCl)
【0087】
10mg錠剤について:
標準原液5.0mLをピペットで採取し、100mL容のフラスコに移す。媒体で量に希釈し、混合する。(濃度約11.1μg/mLのメマンチンHCl)
【0088】
5mg錠剤について:
標準原液5.0mLをピペットで採取し、200mL容のフラスコに移す。媒体で量に希釈し、混合する。(濃度約5.56μg/mLのメマンチンHCl)
【0089】
10mg錠剤について:
標準原液6.0mLをピペットで採取し、25mL容のフラスコに移す。1.0N NaOH溶液1.0mLを添加する。回転させることにより混合する。ISTD 4.0mLを添加する。しっかりと栓をする。5分間機械的に振動させる。10分間放置する。使い捨てガラスピペットを用いて、注意深く上層をGCバイアルに移す。(濃度約16.7μg/mLのメマンチンHClおよび約16.7μg/mLのアマンタジンHCl)
【0090】
5mg錠剤について:
標準原液6.0mLをピペットで採取し、25mL容のフラスコに移す。1.0N NaOH溶液1.0mLを添加する。回転させることにより混合する。ISTD 4.0mLを添加する。しっかりと栓をする。5分間機械的に振動させる。10分間放置する。使い捨てガラスピペットを用いて、注意深く上層をGCバイアルに移す。(濃度約8.33μg/mLのメマンチンHClおよび約16.7μg/mLのアマンタジンHCl)
【0091】
媒体6.0mLをピペットで採取し、25mL容のフラスコに移す。1.0N NaOH溶液1.0mLを添加する。回転させることにより混合する。ISTD 4.0mLを添加する。しっかりと栓をする。5分間機械的に振動させる。10分間放置する。使い捨てガラスピペットを用いて、注意深く上層をGCバイアルに移す。(濃度約16.7μg/mLのアマンタジンHCl)
【0092】
サンプル原液
媒体900mLを6つ溶解容器のそれぞれに入れ、媒体を37℃±0.5℃に平衡させる。バスケット速度を100rpmに予め設定する。錠剤1錠をドライバスケットのそれぞれに入れる。バスケットを媒体に落とし、バスケットの回転を開始する。30分後、容器の壁から1cm以上の、媒体表面と回転バスケットの上部との間の中間区域からプローブを用いて各容器からサンプル10mLを引き出す。直後に溶液を濾過する。
【0093】
10mg錠剤について:
サンプル原液6.0mLをピペットで採取し、25mL容のフラスコに移す。1.0N NaOH溶液1.0mLを添加する。回転させることにより混合する。ISTD 4.0mLを添加する。しっかりと栓をする。5分間機械的に振動させる。10分間放置する。使い捨てガラスピペットを用いて、注意深く上層をGCバイアルに移す。(濃度約16.7μg/mLのメマンチンHClおよび約16.7μg/mLのアマンタジンHCl)
【0094】
5mg錠剤について:
サンプル原液6.0mLをピペットで採取し、25mL容のフラスコに移す。1.0N NaOH溶液1.0mLを添加する。回転させることにより混合する。ISTD 4.0mLを添加する。しっかりと栓をする。5分間機械的に振動させる。10分間放置する。使い捨てガラスピペットを用いて、注意深く上層をGCバイアルに移す。(濃度約8.33μg/mLのメマンチンHClおよび約16.7μg/mLのアマンタジンHCl)
【0095】
【表3】

【0096】
標準原液:
メマンチンHCl RS(C12H21N・HCl)約5.0gを精密に計量し、100mL容のフラスコに移す。H2O約60mLを添加し、溶解する必要があれば、30秒間超音波で分解する。H2Oで量に希釈し、十分に混合する。(濃度約50μg/mLのメマンチンHCl)
【0097】
標準中間溶液:
標準原液4.0mLをピペットで採取し、100mL容のフラスコに入れる。H2Oで量に希釈し、十分に混合する。(濃度約2μg/mLのメマンチンHCl)
【0098】
希釈標準溶液:
標準中間溶液5.0mLをピペットで採取し、25mL容のフラスコに入れる。6M NaOH溶液1.0mLおよびn-ヘキサン5.0mLを添加する。n-ヘキサンを添加した直後にフラスコがしっかり蓋をしてあることを確認して、いかなる漏出および/または蒸発も防ぐ。5分間フラスコを手で振動させる。5分間放置して層を分離させる。上部有機層の一部分をGCバイアルに移し、すぐに蓋をする。(濃度約2μg/mLのメマンチンHCl)
【0099】
サンプル希釈溶液:
錠剤20錠を精密に計量し、平均錠剤重量を測定する。乳鉢および乳棒を用いて錠剤を微粉化する。20.0mgのメマンチンHClと同等の錠剤粉末を精密に計量し、ナルジーン(Nalgene)スクリューキャップを有する40mLポリカーボネート遠心分離管に移す。H2O 10.0mLを添加し、ときおり振動させながら2分間超音波で分解する。6M NaOH溶液2.0mLおよびn-ヘキサン10.0mLを添加する。n-ヘキサンを添加した直後に管がしっかり蓋をされているか確認して、いかなる漏出および/または蒸発をも防ぐ。管を手で5分間振動させる。10分間放置して層を分離させる。上部有機層の一部分をGCバイアルに移して、すぐに蓋をする。(濃度約2mg/mLのメマンチンHCl)
【0100】
【表4】

【0101】
内部希釈標準溶液(TSTD)
アマンタジンHCl(C10H17N・HC1)約125mgを精密に計量し、1000mL容のフラスコに移す。希釈剤約600mLを添加し、約2分間または溶解するまで超音波で分解する。室温に冷却し、希釈剤で量に希釈し、十分に混合する。(濃度約125μg/mLのアマンタジンHCl)
【0102】
希釈標準溶液(2連で調製)
メマンチンHCl RS(C12H21N・HC1)約25.0mgを精密に計量し、200mL容のフラスコに移す。ISTD約150mLを添加し、約2分間または溶解するまで超音波で分解する。室温に冷却し、ISTDで量に希釈し、十分に混合する。(濃度約125μg/mLのメマンチンHClおよび約125μg/mLのアマンタジンHCl)
【0103】
サンプル希釈溶液(2連で調製)
錠剤20錠を精密に計量し、平均錠剤重量を測定する。乳鉢および乳棒を用いて錠剤を微粉化する。25.0mgのメマンチンHClと同等の錠剤粉末を精密に計量し、200mL容のフラスコに移す。ISTD約100mLを添加する。10分間機械的に振動させる。ときおり回転させながら5分間超音波で分解する。10分間室温で放置する。ISTDで量に希釈し、十分に混合する。一部分を3000rpmで5分間遠心分離にかける。澄んだ上清溶液の一部分をGCバイアルに移す。(濃度約125μg/mLのメマンチンHClおよび約125μg/mLのアマンタジンHCl)
【0104】
ブランク溶液(ISTD)を注入し、ベースラインが明確で、安定であるようにする。
【0105】
希釈標準溶液1を5回注入する。
【0106】
メマンチン対ISTDのピーク領域比の相対標準偏差(RSD)を計算する。RSDはNMT 2.0%である。メマンチンピークについてテーリング係数(T)およびカラム効率(N)を計算する。Tは0.8から1.2以内であり、NはNLT 100000である。ISTDとメマンチンの間の分解能(R)は、NLT 3.5である。
【0107】
希釈標準溶液2、ブランク溶液(ISTD)およびサンプル希釈溶液を1回注入する。
【0108】
希釈標準溶液1を6つのサンプルごとに1回注入する。
【0109】
希釈標準溶液1を実行の終わりにそれぞれ1回注入する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスクロマトグラフィーを用いてメマンチンまたは薬学的に許容し得るその塩およびその不純物を分析する方法。
【請求項2】
メマンチンがその塩酸塩または遊離塩基の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
医薬組成物から調製されたメマンチンを含有するサンプルが、濾過または遠心分離により、医薬組成物の残留固体すべてから分離される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
メマンチンを含有するサンプルが、遠心分離により残留固体すべてから分離される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
試験サンプルが、メマンチン塩酸塩もしくは別の薬学的に許容し得るその酸付加塩またはメマンチン塩酸塩もしくは別の薬学的に許容し得るその酸付加塩を含む医薬組成物を、1種または複数の有機溶媒および非水性アルカリ性試薬と混合することによって調製され、溶媒が、遊離されたメマンチン遊離塩基およびアルカリ性試薬を溶解することができる、メマンチン塩酸塩または別の薬学的に許容し得るその酸付加塩およびその不純物をガスクロマトグラフィーを用いて分析する方法。
【請求項6】
有機溶媒が、低級アルキルアルコール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトニトリルまたはそれらの混合物である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
低級アルキルアルコールが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノールまたはそれらの混合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
低級アルキルアルコールが、メタノールまたはエタノールである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
医薬組成物から調製された試験サンプル溶液が、濾過または遠心分離により、医薬組成物の残留固体すべてから分離される、請求項5から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
試験サンプル溶液が遠心分離により残留固体すべてから分離される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(a)内部標準参照化合物の第1の有機溶媒の溶液を調製するステップと;
(b)内部標準参照化合物溶液を、メマンチン塩酸塩またはメマンチン塩酸塩を含む医薬組成物、第2の有機溶媒および非水性アルカリ性試薬と混合して、溶液中にメマンチン遊離塩基を遊離させるステップと;
(c)上清溶液を分析するステップと
を含む、ガスクロマトグラフィーを用いてメマンチン塩酸塩およびその不純物を分析する方法。
【請求項12】
第1の有機溶媒および第2の有機溶媒が同一であるかまたは異なる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第1の有機溶媒および第2の有機溶媒が、遊離されたメマンチン遊離塩基およびアルカリ性試薬またはそれらの混合物の完全溶解を可能にする低級アルキルアルコール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトニトリルまたは任意の適切な有機溶媒である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
低級アルキルアルコールが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノールまたはそれらの混合物である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
低級アルキルアルコールが、メタノールまたはエタノールである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(b)ではなくステップ(a)においてアルカリ性試薬を溶液に添加する、請求項11から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
ステップ(c)の上清溶液が、濾過または遠心分離により、医薬組成物の残留固体すべてから分離される、請求項11から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
上清溶液が、遠心分離により残留固体すべてから分離される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
メマンチン塩酸塩もしくは別の薬学的に許容し得るその酸付加塩またはメマンチン塩酸塩もしくは別の薬学的に許容し得るその酸付加塩を含む医薬組成物を1種または複数の有機溶媒および水性アルカリ性試薬と混合して、有機溶媒の溶液中にメマンチン遊離塩基を遊離するステップと、二相混合物を分離して有機溶媒層を得るステップと、有機溶媒溶液を分析するステップとを含む、ガスクロマトグラフィーを用いてメマンチン塩酸塩または別の薬学的に許容し得るその酸付加塩およびその不純物を分析する方法。
【請求項20】
有機溶媒が炭化水素溶媒である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
炭化水素溶媒が、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼンまたはトルエンである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
炭化水素溶媒がn-ヘキサンである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
有機溶媒溶液が、濾過または遠心分離により、医薬組成物の残留固体すべてから分離される、請求項19から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
有機溶媒溶液が、遠心分離により残留固体すべてから分離される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
アルカリ性試薬が、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムである、請求項5から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
アルカリ性試薬が水酸化カリウムである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
メマンチンを含有するサンプルが、ヘッドスペースサンプリングなしにGCカラムへ直接注入される、請求項1から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
水素炎イオン化検出が使用される、請求項1から27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
メマンチンAPIもしくは医薬組成物として調製された場合のメマンチンまたはメマンチン塩APIもしくは医薬組成物として調製された場合のメマンチン塩が分析される、請求項1から28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
医薬組成物として調製された場合のメマンチンまたは医薬組成物として調製された場合のメマンチン塩が分析される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
医薬組成物が固体組成物または液体組成物である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
医薬組成物が錠剤である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
錠剤が1種または複数の薬学的に許容し得る担体または賦形剤を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
内部参照標準が使用される、請求項1から33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
内部参照標準としてアマンタジン、アマンタジン塩酸塩、リマンタジンまたはリマンタジン塩酸塩が使用される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
内部参照標準としてアマンタジンまたはアマンタジン塩酸塩が使用される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
メマンチンの塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、マレイン酸塩、メシル酸塩、ベシル酸塩、トシル酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩またはギ酸塩を分析するために使用される、請求項1から36のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2010−533858(P2010−533858A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516600(P2010−516600)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050592
【国際公開番号】WO2009/010806
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(508116469)ジェネリクス・(ユーケー)・リミテッド (34)