説明

メモリと、通信装置及び圧力センサを備えるフィルター

【課題】従来システム及び方法における欠点を解決する、フィルターハウジング内の色々のポイント位置でのフィルター要素の圧力及び又は流量を正確に測定するための方法を提供することである。
【解決手段】圧力センサ30がフィルタ要素10に取付けられ、圧力センサ30の付近に、あるいは圧力センサと一体化して無線トランスミッタ40も位置付けられる。無線トランスミッタ40は圧力センサ30と共に一つの一体部品内にカプセル封入され得、あるいはトランスミッタ40及びセンサ30は分離され、電気信号の如きを介して相互通信され得る。フィルタハウジング20の外側に位置付けた無線レシーバ60が無線トランスミッタとの通信用に使用され無線レシーバとしてはRFIDリーダーあるいはベースステーションが用いられる。RFIDタグのような無線トランスミッタ40を圧力センサ30にカップリングさせ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルターハウジング内の色々のポイント位置でのフィルター要素の圧力及び又は流量を正確に測定するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RFIDタグは、資産管理上の、特に在庫管理用途において取り分けその使用が普及している。例えば、RFIDタグを用いれば、製造ラインを監視したり、サプライチェーンを介して製造ラインや資産、あるいは部品の動きを監視することが可能となる。
この概念をもっと分かり易く説明すると、製造会社において、製造設備に入る各部品にRFIDタグが貼り付けられ、RFIDタグを貼り付けた部品が製造工程に送られ、製造工程下に別の部品と組み合わせたサブアセンブリとされ、最終的に製品として仕上げられる。RFIDタグを使用すると製造会社側で製造プロセス全体を通した特定の部品の動きを追跡できるようになる他、任意の特定アセンブリあるいは仕上げ製品を含む特定部品を識別することもできるようになる。
【0003】
RFIDタグの使用は薬品や製薬業界内でも支持されている。米国食品医薬品品質管理局は薬品のラベル表示及び監視のためのRFIDタグの使用を支持する報告書を2004年2月に提出したが、その狙いは、薬品に血統書を付けるとともに市場や消費者に偽処方薬が紛れ込むのを制限することにある。
【0004】
RFIDタグは、導入されて以降、多数の用途、例えば、フィルター製品の識別やそうした製品をプロセス制御するための情報提供に使用されてきている。米国特許第5,674,381号には、“電子ラベル”をろ過装置及び交換自在のフィルターアセンブリと組み合わせて使用することが開示される。詳しく説明すると、この米国特許には、リード/ライト型のメモリと、ラベル応答性の読み取り手段を有する関連ろ過装置とを備える電子ラベル付きフィルターが記載される。電子ラベルは交換自在のフィルターの実動時間をカウント及び記憶するようになっており、ろ過装置はこのリアルタイムの数値に基づいてフィルターを使用させあるいは使用させないようになっている。この米国特許には、電子ラベルを使用して交換自在のフィルターに関する識別情報を記憶させ得ることも記載される。
【0005】
米国特許出願公開第2005/0205658号にはプロセス装置追跡システムが開示される。このシステムにはプロセス装置と組み合わせて使用するRFIDタグが含まれる。RFIDタグは、“少なくとも一つのイベント”を記憶し得るものとして記載される。追跡可能なそうしたイベントとしては、洗浄日、バッチプロセス日、が挙げられる。この文献には、プロセス装置のデータベースを持つパソコンあるいはインターネットに接続自在のRFIDリーダーも記載される。プロセス装置のデータベースは追跡可能な多数のイベントを含み、“蓄積データに基づいたプロセス装置の有効寿命”を判断する上で有益な情報を提供することができる。この文献には、このタイプのシステムを多様なプロセス装置、例えば、弁、ポンプ、フィルター、紫外線ランプと共に使用することが含まれる。
【0006】
米国特許出願公開第2004/0256328号には、ろ過施設の完全性(integrity)をモニタリングするための装置及び方法が記載される。この文献には、オンボードメモリチップと通信装置とを格納するフィルターををフィルターハウジングと組み合わせて用いることが記載される。フィルターハウジングは、完全性試験器機にダイレクトカップリングした通信用リーダーを備える(あるいは通信用リーダーを、それ自体がデータ記憶用メモリを持つ手持ち式のリーダーとし、これを別個の完全性試験用器機に連結しても良い)。また、この文献には、マルチラウンド型ハウジング内で使用するろ過要素の完全性を保証するために一組の段階を使用することも開示され、それらの段階には、使用するフィルターの形式、限界データ値、製造公開データ、を確認するための処理要求(query)を記憶素子に出すことが含まれる。
【0007】
米国特許第6,936,160号には、フィルター要素と共に使用するための無線MEMS検知装置が記載される。この米国特許で説明される無線MEMS検知装置は、単一のアセンブリパッケージ内に少なくとも2つの異なるセンサを有しており、フィルターの、好ましくは流体の差圧測定用の端部キャップ内でハウジング内の運転状況を監視することが出来るようになっている。関連する特許には、MEMS装置がフィルター寿命を評価及び推定するために使用されることも記載される。
RFIDタグを使用することにより得られる改善によっても尚、その効果が十分ではない分野がある。そうした分野における用途には、例えば、フィルターハウジング内の色々なポイント位置での圧力をリアルタイムに監視することが極めて有益な、その場での(in−situ)フィルター完全性試験や経膜圧変化を介してのフィルター寿命監視、のような多くのものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5674381号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0205658号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0256328号明細書
【特許文献4】米国特許第6936160号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来システム及び方法における欠点を解決する、フィルターハウジング内の色々のポイント位置でのフィルター要素の圧力及び又は流量を正確に測定するためのシステム及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の、フィルターハウジング内の色々のポイント位置でのフィルター要素の圧力及び又は流量を正確に測定するためのシステム及び方法によれば、従来システム及び方法における欠点が解決される。本発明のシステムの第1実施例によれば、特定ポイント位置での圧力を測定可能なセンサが提供され、第2実施例によれば、2つのポイント位置間での差圧を測定可能な差圧センサが提供され、第3実施例によれば、フィルター内のあるポイント位置を通る流量を直接測定するためのフィルターのノーズ部内に組み込んだガス流量計が提供される。同様に、洗浄用流体のような臨界流体の流量を測定するために、差圧センサあるいは液体流量センサをTFFモジュール内に組み込むことができる。こうしたセンサは、フィルター使用中に圧力測定値を測定し且つ伝送することができるように通信装置と組み合わされる。本システムは、通信装置と圧力センサとを共に一体化した単一部品として構成され得るが、相互に通信する別個のセンサ部品とトランスミッタ部品とからも構成され得、トランスミッタ部品は有線あるいは無線の通信を使用可能である。更に他の実施例ではシステムに記憶素子が追加され、かくして装置に圧力値セットを記憶することが可能である。
本装置は多くの用途に対して有益に使用され得る。例えば、多重フィルター形態での個別のフィルターにおける経膜圧を監視できるので、完全性試験の信頼性及び有効性が改善され、また、その場で各フィルター要素の完全性を判定できるようにもなる。フィルターハウジング内の経膜圧を監視できるので多層化されたフィルターの目詰まりを監視することが可能となり、かくしてフィルター寿命を推定することも可能である。
【発明の効果】
【0011】
従来システム及び方法における欠点を解決する、フィルターハウジング内の色々のポイント位置でのフィルター要素の圧力及び又は流量を正確に測定するためのシステム及び方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例の概略図である。
【図2】マルチ形式でのフィルター要素形態において使用するものとしての本発明の代表的実施例の概略図である。
【図3】マルチ形式でのフィルター要素形態内部のその場での完全性試験において実施するためのものとしての本発明の代表的実施例の概略図である。
【図4】マルチ形式でのフィルター要素形態内部のその場での完全性試験において実施するためのものとしての本発明の他の代表的実施例の概略図である。
【図5】タンジェンシャルフローフィルターのその場での完全性試験において実施するために使用するものとしての本発明の代表的な実施例の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1には本発明に従う代表的なろ過システムが例示され、フィルター要素10がハウジング20で包囲されている。フィルター要素は、簡単な、プリーツ付きの紙あるいはPVDF(ポリビニリデンフルオリド)製の膜のような多孔質材であり得る。図2に示すような別の実施例では、多数のフィルター要素10がハウジング20内に包囲されている。あるいはフィルター要素は、プラスチック製の如きフレームと、多孔質材等から成り得る。圧力センサ30が、フィルター要素10に近接して且つ好ましくはフィルター要素に埋設される。圧力センサ30は周囲環境の圧力の関数として変動する出力を発生可能である。他の実施例ではセンサは差圧センサであり、その出力は2つの場所の間の圧力差の関数である。この出力はアナログでの電圧あるいは電流値、あるいはそれらのデジタル値あるいはパルスの形態を取り得るものであって、好ましい実施例では温度に伴って直線的に変化するが、これは本発明の条件ではなく、周囲温度に対して対数あるいは指数関数的といった如き既知の関係を有する任意出力形態のものであり得、その場合は出力値は実測温度を決定するべく変換される。
【0014】
一実施例では圧力センサ30は好ましくは差圧センサであり、フィルター要素10の端部キャップに埋設され、他の実施例ではフィルター要素の、好ましくは下流側の異なる位置に固着あるいは埋設される。ある用途ではフィルター要素の温度は145℃を超える可能性があるため、そうした温度でも安定したセンサを用いるべきである。同様に、トランスミッタもそうした温度に耐え得る物を使用すべきである。ハウジング20における温度サイクルは低温から高温に、そしてまた低温に戻るようなものであり得るので、圧力センサはそうした温度サイクルにも耐えるものとすべきである。
本発明のセンサには多数の実施例があり、例えば、微小機械技術、即ちメムスシステム(MEMS)テクノロジー、圧電素子、エラストマーやインクを含む伝導性ポリマーあるいは抵抗性ポリマー、あるいはトランスデューサー、を用いた構成とされ得る。差圧センサを用いるのが好ましいが、関心事項としての“差”は上流側圧力と下流側圧力との間におけるものであるため、フィルターの各側に一つを配置した別個の圧力センサを用いることも可能である。これらの例は使用可能なセンサ形式の幾つかを例示したものであって、好適な圧力センサの全てを網羅するものではない。
【0015】
圧力センサ30は有線あるいは無線的にトランスミッタ40と通信する。ハウジングの外部に無線で信号を伝送するための機構は既に開示されており且つ斯界に既知であり、米国特許出願公開第2004/0256328号には、フィルターハウジングに位置付けた中継器と、ハウジングの外部の監視及び試験用ユニットとの間で情報を中継するアンテナを使用するものとして説明されている。
図3に示すような流量測定用途では、圧力センサ30は随意的に拘束オリフィスと組み合わされて用途上必要な感度を得ている。拘束オリフィスあるいはベンチュリ型の拘束装置は代表的には液体流量を測定するために使用されるが、フィルターのコアのような主たる流路内での測定によって得られるよりもずっと高感度での測定が必要となる、ガス流量測定用にも用いることができる。例えば、拡散中に代表的に経験される流量は10cc/分であるが、対流中の流量は500〜1000cc/分である。
【0016】
図4には圧力センサに代えて流量センサ70を使用する状況が示される。流量を直接測定するためのセンサには数多くの実施例がある。ガス流量測定用途では流量測定値は、代表的には温度変化の監視により決定される。流量測定用センサは、その内部を電流が通過し且つ有線加熱される風力計に基づいたものであり得る。風力計がガス流れによって冷却されると、それがセンサの電流変化として測定される。あるいはガスのスリップストリームが狭幅の細孔を通して送られ、細孔内に配置した2つの熱コイルの一方が流動するガスに熱パルスを加え、他方が熱パルスの到達時間を検出する。この測定値は、細孔をガス流れ管の主たる管径に対して適切に設計することで全ガス流れに相関される。別の流量測定法は斯界に既知であり、それらは本発明の範囲内のものであるが、網羅的なものではない。流量センサは、フィルターハウジング内のある位置では全流れを受けることができないため、その配置位置が重要となる。例えば、フィルター要素の端部キャップ付近では流量センサの受ける流量は、特にフィルター要素の開放端部付近に配置した場合と比べて非常に少くなる。
【0017】
トランスミッタ40を、圧力センサ30付近に位置付けて、あるいは圧力センサ30と一体化して用いることができる。ある実施例ではトランスミッタ40は濃度センサ30と共に一つの一体部品内にカプセル封入される。あるいは、トランスミッタ40及びセンサ30は分離され、電気信号の如きを介して相互通信され得る。通信装置は色々なタイプのものであって良く、一実施例のものでは無線通信を使用するが、その場合はRFIDタグを用いるのが好ましい。RFIDタグはアクティブ状態でリーダーと定期通信可能である。あるいはパッシブRFIDタグを使用して、RFIDリーダーが伝送する電磁界から伝送及び圧力検出用のエネルギーを入手するようにもできる。
随意的には記憶素子50を、無線トランスミッタ40及び圧力センサ30と組み合わせて使用できる。記憶素子50はランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュEPROMあるいはNVRAMデバイスであり得るが、センサの定期サンプリングにより発生され得る如き圧力読み取り値セットを記憶させることができる。
これにより無線トランスミッタ40のデータ送信速度を圧力のサンプリング速度と異ならせることが可能となり、例えば圧力を毎秒10回サンプリングさせ、その間に送信されるデータは一回だけとすることができる。
【0018】
フィルターハウジング20の外部に随意的に位置付けた無線レシーバ60が、無線トランスミッタとの通信用に使用されるが、好ましい実施例では無線レシーバとしてはRFIDリーダーあるいはベースステーションが用いられる。RFIDリーダーは、無線トランスミッタに定期間隔で処理要求を出す(query)ような構成のものとされ得、あるいは装置オペレータの要求に応じて読み取りを実施するように手動操作され得る。別の実施例では無線レシーバ60にも記憶素子を持たせることができる。これにより、ハウジング内の装置に必要な複雑度が緩和される。本実施例では、無線レシーバは、好ましくは定期間隔で無線トランスミッタ/圧力センサに処理要求を出し、無線トランスミッタから、その時点で決定されたものとしての最新の圧力センサ測定値を受け、次いでその値を記憶素子に記憶する。記憶素子のキャパシティは変動可能であり、色々の因子に基づいて決定され得るが、それらの因子には、これに限定しないが、測定値の受信速度、記憶データのプロセス処理速度、記憶素子の外部環境との通信頻度、が含まれる。
【0019】
RFIDタグのような無線トランスミッタ40を圧力センサ30にカップリングさせたフィルター要素を一例として説明すると、この例ではRFIDタグは無線レシーバあるいはベースステーションからの処理要求があった時だけデータを送信するパッシブ型のものであり、そうした処理要求を受けて無線トランスミッタは圧力センサ30から現在入手可能である圧力値を伝送する。これらの圧力センサ値は、あるシナリオでは、コンピューターのような計算装置に連結した無線レシーバにより、随意的には関連する時間スタンプと共に、例えばログファイルに記憶される。無線レシーバをコンピューターと切り離すことを仮定した別のシナリオでは無線レシーバは、例えば、メインとなるコンピューター及び又は記憶装置に接続されるまでは数多くの圧力センサ測定値を内部に記憶している必要があるため、記憶素子を無線レシーバに一体化させる必要がある。
【0020】
別の実施例では無線トランスミッタとレシーバとは使用されず、圧力センサの出力がフィルターハウジングの外部に有線伝送される。
本発明の、定義された物理的構造は多用途において有益なものである。そうした用途の幾つかを以下に説明するが、そうした用途の全部を列挙することを意図したものではない。
一実施例では、本発明はその場での(in−situ)完全性試験と組み合わされる。このプロセスによればオペレーターは、追加設備無しで顧客サイトでハウジングフィルター内のフィルターの完全性を確認することができる。特に、代表的には空気であるガスが、ガス漏れのないハウジング内に格納した、液体で湿潤化したフィルターの上流側で所定圧力に加圧される。ハウジング内の圧力はフィルターを通過するガス流れの差圧や恐らくは対流によって時間と共に減少し、この圧力の減少速度がフィルター要素の完全性を確認するために用いられる。図3に示すようなある実施例ではフィルターのノーズ部分内に差圧センサが好ましく位置決めされる。差圧センサは、好ましくはオリフィスあるいはベンチュリと組み合わせることで、ベンチュリ効果を用いてのフィルターのガス通過流量を測定できる。上述したように、好ましくはオリフィスをフィルター要素10のノーズ部分に位置決めすることで、10cc/分の如き圧力低下を高精度で測定することが可能である。オリフィスは好ましくは着脱自在であり、この完全性試験の間だけ流路内に配置すればよい。図4に示すような第2実施例では、風力計あるいは質量流れ装置を用いてガス流量を直接測定する。
【0021】
マルチラウンド型のシステムでは、個別のフィルター要素の拡散率を決定することが出来るよう、多数の圧力センサが導入される。現在、多数のフィルターを平行状態で用いるシステムで完全性試験を実施するのは難しい。つまり、そうした場合は規格値をハウジング内のフィルターの数だけ倍増して行うためにエラーも倍増されるので欠陥の検出能力が著しく低下し、更には、欠陥が検出されたとしてもどのフィルターのものか見分けにくいのでフィルター毎の完全性試験が必要となるのである。また、広範囲に増大する圧力下にガス流量を測定する好ましいバブルポイント完全性試験ではフィルターを個別に測定可能であるが、この試験プロトコルは現在使用することができない。
ある実施例ではプラスチック製のフィルターハウジングが使用され、無線トランスミッタを用いて、任意時間に濃度データをハウジングを通過伝送させることが可能である。
【0022】
本発明によれば経膜圧の監視も可能である。経膜圧監視は幾つかの点で有益であって幾つかの用途がある。例えば、精密ろ過(MF)フィルターの好ましい出発手順は、運転圧力を直ちに開放して最大圧とするのではなく、徐々に上げてゆくことであり、そうすることでフィルター内でのエアロックが回避され、フィルターの有効寿命が長くなる。この用途では、ハウジング内の圧力を監視して運転圧力勾配を適切化するためのセンサがハウジング内に使用される。好ましい実施例では、各フィルター要素の端部キャップに差圧センサを位置付けることで上流側及び下流側の各圧力を観察し、他の実施例では圧力読み取り値を、プラスチック製のハウジングを通してRFIDタグを介して外部の無線レシーバに伝送する。
【0023】
アセンブリが運転圧力に達したら内側のセンサを使用してフィルターを連続監視する。例えば、フィルターが目詰まりすると流量が低下してフィルターの下流側圧力が相当分低下するので、経膜圧の変化率に基づいてフィルターの有効寿命を推定することができる。圧力サンプリングを連続ベースで行えば、フィルターの有効寿命の推定根拠となり得る圧力の異常変動を観察することができる。
【0024】
上述した手順は多重フィルター配列構成にも適用できる。好ましい実施例では圧力センサは各フィルターの端部キャップに固定され、各フィルター要素の上流及び下流側の各圧力を測定する。オペレーターはこの測定圧力値によりフィルターハウジング内の各フィルターの働きをより良く理解することができる。例えば、フィルター要素の上流側と下流側との間に検出される圧力降下は、典型的にはその場所のフィルター要素に目詰まりが生じ、あるいは付着層が形成されていることを表す。説明したように、フィルターの有効寿命を経膜圧の変化率に基づいて推定可能であり、また、各フィルターを横断する圧力を連続ベースでサンプリングすれば、特定のフィルター要素の残りの有効寿命を推定する上で根拠となり得る圧力の異常変動を観察できる。
【0025】
本発明はタンジェンシャルフローろ過(TFF)装置での経膜圧のような特定の運転パラメータを監視するためにも使用することができる。そうした装置は代表的にはマルチフィルターモジュール構成で使用される。これまでTFF装置の各モジュール間での圧力降下は監視されたことがなかったが、図5に示すように各モジュール間に圧力センサを導入することによってその監視が可能となる。各モジュール間での圧力降下を監視することで流量を推定できるので、特に、洗浄中に全モジュールが所望通り動作しているかを判断し易くなる。洗浄作用は、各モジュール内の各膜の膜流束が回復することをもって確認するのである。更には圧力センサは、モジュール内の膜スタック内で経膜圧あるいは溝横断圧を監視するように用いることで、各チャンネルへの流れの接近を、そしてまたモジュールを横断する流束が一様であることをさえ保証することができる。また、ハウジング内の色々のポイント位置での圧力を監視するようにすれば、ハウジング内の流れを確認することも可能である。そうした流れの確認情報はモジュール全体が一定様式下に使用されることが保証されるようにチャンネル内流れを調節するために使用され得る。最後に、各モジュールの出口ポート内のガス流れを測定することで、拡散試験により測定されるものとしてのTFFモジュールの完全性を各モジュール毎に決定することができる。圧力センサの記録する圧力測定値はトランスミッタを介してフィルターハウジングの外部に伝送される。
【符号の説明】
【0026】
10 フィルター要素
20 ハウジング
30 圧力センサ
40 トランスミッタ
50 記憶素子
60 無線レシーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層化フィルター環境内の特定のフィルター要素の完全性を決定するための方法であって、
a.フィルター要素の入口側位置での運転パラメータを測定するための第1のセンサを位置決めし、
b.フィルター要素の出口側位置での運転パラメータを測定するための第2のセンサを位置決めし、
c.フィルター要素の入口側及び出口側の各位置で測定した運転パラメータ間の差に基づいてフィルターの完全性を決定する前記方法。
【請求項2】
運転パラメータが圧力を含み、センサが圧力センサを含む請求項1の方法。
【請求項3】
運転パラメータが流量を含み、センサが流量センサを含む請求項1の方法。
【請求項4】
フィルターハウジング内で上流側と、出口とを有するフィルター要素の完全性を保証するための方法であって、
フィルター要素の出口位置での運転パラメータを測定するようになっているセンサをトランスミッタと組み合わせて固定し、
フィルター要素の上流側を所定圧力に加圧し、
フィルター要素の前記出口位置での前記運転パラメータを監視し、
監視されたパラメータが所定範囲内にあるかを判定してフィルター要素の完全性を決定する前記方法。
【請求項5】
フィルター要素の前記出口位置での前記運転パラメータの監視が定期間隔で実施される請求項4の方法。
【請求項6】
トランスミッタが無線トランスミッタを含み、監視された濃度をハウジングの外部に位置付けたレシーバに無線伝送する請求項4の方法。
【請求項7】
センサが圧力センサであり、運転パラメータが圧力降下である請求項4の方法。
【請求項8】
センサが、MEMS装置、圧電装置、伝導性ポリマー装置、エラストマー装置、インク
装置、からなる群から選択される請求項7の方法。
【請求項9】
無線トランスミッタがRFIDタグを含む請求項6の方法。
【請求項10】
流路内に流れ拘束体が配置され、運転パラメータが該流れ拘束体を横断して測定される請求項4の方法。
【請求項11】
フィルター要素の上流側が複数の圧力に加圧され、各圧力に相当する運転パラメータが測定される請求項4の方法。
【請求項12】
センサが直接ガス流れセンサであり、運転パラメータがガス流量である請求項4の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−101226(P2012−101226A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−14179(P2012−14179)
【出願日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【分割の表示】特願2007−102696(P2007−102696)の分割
【原出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(504115013)イーエムディー ミリポア コーポレイション (33)
【Fターム(参考)】