説明

メモリカード

【課題】従来のメモリカードとの互換性を確保しつつデータ伝送の高速化を可能とする、内部にデータ格納用の素子を備えたメモリカードを提供する。
【解決手段】メモリカード(20)は、情報を格納する記憶素子を内蔵し、さらに記憶素子に記録すべき情報または記憶素子から読み出した情報に関する電気信号を入出力するためのコンタクトパッド群を長さ方向の前方端に有する。メモリカード(20)は、メモリカードの幅方向に並置された第1及び第2のコンタクトパッド(202a、202b、205a、205b)と、メモリカードの長さ方向において第1及び第2のコンタクトパッドの後方に配置された第3のコンタクトパッド(202、205)とからなる3分割コンタクトパッド群を少なくとも1組含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データを格納する不揮発性記憶素子を内蔵するメモリカードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体材料からなるマスストレージフラッシュメモリデバイスを用いた小型のメモリカードが、新しいリムーバブルメディアとして定着してきた(非特許文献1参照)。これは、メモリデバイス自身の急速な進歩による大容量化とコストダウン、および実装技術の進化により安価で大容量なカードが製造可能になったこと、及び、情報の圧縮技術や、通信インフラの整備や、セキュリティ技術の進歩等と、デジタル情報家電製品が急速に進化したことを要因とする。その中でもSDメモリカード(登録商標)は、最も普及したカードフォーマットのひとつである。
【0003】
SDメモリカードは32mm×24mm×2.1mmの寸法のリムーバブルメディアである。SDメモリカードは、それを使用する機器(以下「ホスト機器」と称する。)に設けられたソケットに挿入されて使用される(特許文献1、2参照)。SDメモリカードは9つのコンタクトパッドを有し、ホスト機器に設けられたソケットを介して、ホスト機器と電気的な通信を行いSDメモリカードに格納されているデータの読み出しや、ホスト機器からSDメモリカードへのデータの書込みが可能となる。
【0004】
図13に従来のSDメモリカードにおけるコンタクトパッドが配置された部分の構成を示す。SDメモリカード10は、従来のホスト機器に実装された従来のソケットに挿入され、メモリカードの装着(メモリカードの固定)、およびメモリカードが装着されたことの検出、誤書込み防止スイッチの位置検出が行われ、その後、メモリカードと電気的な接続が行なわれる。
【0005】
図13に示すように、従来のSDメモリカード10はコンタクトパッド101〜109を有している。図14は、従来のSDメモリカード10に対応した従来のソケットの構成を示す(非特許文献1参照)。従来のソケット50は、SDメモリカード10の各コンタクトパッド101〜109に電気的に接続するためのコンタクトピン501〜509を有している。
【0006】
SDメモリカード10のコンタクトパッド101〜109は、通常、プリント基板上に形成され、金メッキが施されている。ソケット50のコンタクトピン501〜509は通常、金メッキされた板バネ状の金属部品で構成されている。これにより、SDメモリカード10が挿入された際、安定した圧力が印加され、安定した電気的な接続が確保される。
【0007】
また、従来のSDメモリカード10と従来のソケット50との電気的接続において、接続されるピンの順序が定められている。すなわち、SDメモリカード10が挿入される際、コンタクトパッド103(グランド)とコンタクトパッド104(電源)と、それらのパッドに対応するソケット50のコンタクトピン503、504とが最初に接続される。次にコンタクトパッド101以外のコンタクトパッドと、ソケットの対応するコンタクトピンとが接続され、最後にコンタクトパッド101とそれに対応するソケットのコンタクトピンとが接続される。SDメモリカード10がソケット50より抜去される際は、逆のシーケンスで接続が絶たれる。このように、最初にグランドと電源が結線されることにより、ホスト機器の電源が投入された状態でSDメモリカード10の挿入・抜去を繰り返しても、ラッチアップの問題を回避できる。この挿抜シーケンスを実現させるために、従来のSDメモリカード10のコンタクトパッド103、104が、他のコンタクトパッドより0.2mm以上前方に延長している。さらに、従来のソケット50の各コンタクトピンと、対応するコンタクトパッドの接触ポイントは、それぞれ微妙にその位置を異ならせている。コンタクトパッド102、105、106、107、108、109と、それらに対応するソケットのコンタクトピン502、505、506、507、508、509との接触ポイントは、コンタクトパッドの中央に位置しており、コンタクトパッド103、104での接触ポイントは、SDメモリカードの先端から見て中央からさらに後方の位置になり、またコンタクトパッド101の接触ポイントは、SDメモリカードの先端から見て中央より手前の位置になるよう設計されている。
【非特許文献1】SDメモリカードスタイルブック、インプレス編集部ほか著、インプレスジャパン発行
【特許文献1】特開2004−71175号公報
【特許文献2】特開2003−249290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
SDメモリカードのコンタクトパッドとは、物理的に形状を持った、電気的に接続するための電極を意味するが、この電気的な出入口となる構成要素を概念的に「ピン」と称し、信号の意味付けなどを定義する際には「ピン」という用語を用いることがある。図15はSDメモリカードの各ピンの配列と意味を説明した図である。SDメモリカードは9つのピン(コンタクトパッド)を有し、9つのピンには、電源やグランド電位を供給するもの、データ、コマンドおよびレスポンスの信号を伝送するものや、これらの信号を同期化させるためのクロックを伝送するものが含まれる。
【0009】
SDメモリカードはいくつかの動作モードを有し、動作モードに応じて、9つのピンの中の幾つかのピンはその意味付けが切り替えられる。現在のSDメモリカードにおいて、データを最も効率的に伝送可能な動作モードでは、データの入出力(伝送)を行うピンとして4個のピンが割り当てられている。すなわち、一度に4系統のデータ、即ち、1クロックサイクルで4ビットのデータが伝送できる構成である。
【0010】
近年、SDメモリカードにおいて、高細精度化されて行くコンテンツの記録や、動画のリアルタイム記録のために、さらなる高速なデータ伝送が要求されるようになってきた。
【0011】
SDメモリカードにおけるデータ伝送速度を高速化するためには、例えば、データピンの数を増やすことが考えられる。例えば、SDメモリカードの場合、従来の4個のデータピンを8個、16個等に増やすことが考えられる。しかし、データピンの数を増加させるためには、現行のコンタクトパッドの配列や形状の変更が必要になる。例えば、現行のコンタクトパッド列の後方に2列目、3列目のパッドの配列を用意する方法が考えられる。
【0012】
従来のSDメモリカードの場合、他の部材との接触によりコンタクトパッドを損傷しないようにするため、SDメモリカードのコンタクトパッドの外周部分(外部ソケットとの接続部分を除く)において0.7mmの段差を設け、コンタクトパッドの外周部分がコンタクトパッドより高くなるよう工夫してある。よって、現行のコンタクトパッド列の後方にさらなるコンタクトパッド列を設ける場合、既存の段差とは異なる段差を設け、2列目のコンタクトパッドはその異なる段差のところに設けならなければならず、集積回路を実装している基板を利用して容易にコンタクトパッドを形成できなくなるという問題が生じる。また、将来、さらなるデータ伝送の高速化が必要になった場合、さらに列を増やす必要があり、対応するソケットの構成の複雑化、ソケットの実装体積の増加を招くという問題もある。
【0013】
また、データ伝送の高速化のための別の方法として、データの伝送クロックの周波数を増加し、伝送レートを増やすことが考えられる。しかし、伝送クロックの周波数を増加すると、伝送路は他の信号線からのカップリングの影響を受けたり、インピーダンスマッチングのズレによる信号線の反射波による波形品質が低下したりするため、充分な伝送クロックの周波数増は困難である。
【0014】
上記のようにSDメモリカードにおいて高速化の要求が高まる一方で、SDメモリカードに対しては、すでに多くのホスト機器が生産されている。それらのホスト機器群はSDメモリカードをブリッジメディアとして活用し、互いにデータやコンテンツを受け渡ししているため、新しいSDメモリカードに対して、従来のホスト機器に対する互換性が要求される。
【0015】
逆に、高速伝送が可能な新しいSDメモリカードに対応するホスト機器(ソケット)に、従来のSDメモリカードが挿入された場合でも、少なくとも従来のモードでの動作や速度性能を引き出せることが要求される。すなわち、新しいSDメモリカードに対応しつつ、従来のSDメモリカードにも対応するソケットが要求される。
【0016】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、従来のメモリカードとの互換性を確保しつつデータ伝送の高速化を可能とする、内部にデータ格納用の素子を備えたメモリカードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
メモリカードの高速性能を飛躍的に向上させるためには、少なくともデータ伝送に関わるピンの信号振幅を小さくし、遷移時間を短縮させ、安定な波形を得るとともに、差動型動作を実現し、駆動する周波数を大幅に向上させても安定な動作を確保し、かつ、不要ふく射を抑えることが必要となる。そのために、メモリカードのコンタクトパッドを差動型の動作に適した形状や、必要なピン数の増加させる必要がある。本実施形態のメモリカードでは、従来のコンタクトパッドの一部を3分割することで、これらの問題を回避し、カードの高速性能を飛躍的に向上させた。
【0018】
本発明に係るメモリカードは、情報を格納する記憶素子を内蔵し、さらに記憶素子に記録すべき情報または記憶素子から読み出した情報に関する電気信号を入出力するためのコンタクトパッド群を長さ方向の前方端に有する。メモリカードは、メモリカードの幅方向に並置された第1及び第2のコンタクトパッドと、メモリカードの長さ方向において第1及び第2のコンタクトパッドの後方に配置された第3のコンタクトパッドとからなる3分割コンタクトパッド群を少なくとも1組含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明のメモリカードによれば、従来のメモリカードにおける一部のピン(コンタクトパッド)についてそのピンが設けられていた領域に、並置した第1及び第2のピンと、それら2つのピンの後方に位置する第3のピンとを設ける。このようなピン構成により、高速動作モードにおいては、第1及び第2のピンに差動信号を伝送するとともに第3のピンを所定電位に固定し、通常モードにおいては、第1及び第2のピンをハイインピーダンスにするとともに、第3のピンを所定の信号(コマンド/レスポンス、クロック)の伝送に用いることが可能となる。これにより、従来との互換性を保持しつつ高速なデータ伝送が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0021】
1.メモリカードの構成
図1に本発明の一実施形態のSDメモリカード(以下「メモリカード」と称す。)の斜視図を示す。図2に、メモリカード20の平面図、背面図、側面図、前面図を示す。図3は、メモリカード20のコンタクトパッドが配置された部分を示した図である。メモリカード20は内部に情報を格納するフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶素子を含む、記憶素子に書き込まれるデータまたは記憶素子から読み出されたデータはコンタクトパッドを介して外部機器とやりとりされる。
【0022】
図1ないし3に示すように、本実施形態のメモリカード20は、前方に電気的接続を得るためのコンタクトパッド201〜209、202a、202b、205a、205bを有する。メモリカード20のコンタクトパッド203、206、204、207、208、209は、従来のメモリカード10のコンタクトパッド103、106、104、107、108、109に対応する。そして、従来のメモリカード10のコンタクトパッド102が配置される部位に対応する位置に、本実施形態のメモリカード20のコンタクトパッド202、202a、202bが配置されている。従来のメモリカード10のコンタクトパッド105が配置される部位に対応する位置に、本実施形態のメモリカード20のコンタクトパッド205、205a、205bが配置されている。コンタクトパッド209、201、202(202a、202b)、203、204、205(205a、205b)、206、204、207、の間は絶縁性のリブにより形状的にも隔絶されている。
【0023】
さらに、メモリカード20は前方の一角に切り欠き部25を有する。切り欠き部25はメモリカード20の前面に接する、第1の切り欠き部25aと、メモリカード20の側面に接する、第1の部分25aから距離dだけ後方にずらして設けられた第2の切り欠き部25bとを含む。
【0024】
図4は、本実施形態のメモリカード20の各ピンの配列と意味を説明した図である。動作モード(SDモード、高速モード)に応じて一部のピンに対する意味づけが異なっている。SDモードは通常の動作モードであり、従来のSDカードにおいて定められた動作モードである。高速モードはSDモードよりも高速なデータ転送が可能なモードである。
【0025】
特に、高速モードにおいて、コンタクトパッド202aとコンタクトパッド202bは対をなし、1ビットの差動データ信号を送受信する。同様に、コンタクトパッド205aとコンタクトパッド205bは対をなし、1ビットの差動データ信号を送受信する。SDモードでは、コンタクトパッド207〜209、201を用いて4ビットのデータを送受信していたが、高速モードでは、コンタクトパッド202aとコンタクトパッド202bの対と、コンタクトパッド205aとコンタクトパッド205bの対とを用いて4ビットのデータを送受信する。高速モードの方がSDモードよりも同時に伝送されるビット数は少ないが、高速モード時の動作クロックの周波数がSDモードよりも飛躍的に高いため、結果として高速なデータ伝送が実現される。
【0026】
2.ソケットの構成
図5に本実施形態のメモリカード20に対応したソケット(以下「本実施形態のソケット」という。)60の構成を示す。本実施形態のソケット60は、挿入されたメモリカードの位置を固定するスライダ61と、メモリカード挿入時にソケットの開口方向にスライダ61を付勢するバネ62とを備える。スライダ61は、本実施形態のメモリカード20に固有の切り欠き部分25の形状(特に、切り欠き部25b)と当接して、本実施形態のメモリカード20に固有の切り欠き部分25の形状を検出するための突起部61aを有している。スライダ61は、この突起部61aを介して受けた押圧力によりメモリカード20をソケット奥の所定の挿入位置まで導く。
【0027】
本実施形態のソケット60は、コンタクトピン601〜609、602a、602b、605a、605bを有する。コンタクトピン603、604、606、607、608、609は、従来のソケット50のコンタクトピン503、504、506、507、508、509に対応する。コンタクトピン602a、602bは、メモリカード20のコンタクトパッド202a、202bと電気的接続を得るために設けられたピンであり、コンタクトピン602よりも短く設定されている。同様に、コンタクトピン605a、605bは、メモリカード20のコンタクトパッド205a、205bと電気的接続を得るために設けられたピンであり、コンタクトピン605よりも短く設定されている。本実施形態のソケット60には、本実施形態のメモリカード20のみならず、従来のメモリカード10も挿入することができるようになっている。本実施形態及び従来のメモリカードと、本実施形態及び従来のソケットとの接続状態については後述する。
【0028】
3.メモリカードの動作
本実施形態のメモリカード20のデータ転送動作について説明する。本実施形態では、2系統のデータ転送用のピンを有する。1つはコンタクトパッド204、205a、205b、206および205を用いるデータ転送の系統であり、他の1つはコンタクトパッド201、202a、202b、203および202を用いるデータ転送の系統である。
【0029】
最初に、コンタクトパッド204、205a、205b、206および205を用いたデータ転送について説明する。
【0030】
図4に示すように、コンタクトパッド205a、205bはデータの差動入出力用のパッドである。これらのパッド205a、205bは、メモリカード20内部で差動型インターフェース回路に接続されている。図6にこの差動型インターフェース回路の構成例を示す。
【0031】
図6に示すように、差動型インターフェース回路30は、メモリカード20へのデータ入力時に動作する差動入力回路31と、メモリカード20からのデータ出力時に動作するデータ出力回路32とを含む。差動入力回路31は、コンタクトパッド205a、205bを介して入力した入力データの信号レベルの差を検出し、後段に伝達する。差動入力回路31は250mV以下の小さな信号振幅でも高速にセンス可能に設計されている。
【0032】
データ出力回路32は、メモリカード20内部の不揮発性記憶素子(フラッシュメモリ)から読み出したデータを、コンタクトパッド205a、205bへ出力するための回路である。データ出力回路32は、n型トランジスタ301、303と、p型トランジスタ302、304と、定電流源305、306とで構成されている。コンタクトパッド205a、205bに出力される信号の振幅は、端子307、308の電圧で定まる。データ出力回路32は、ミラーカレントの構成になっており、トランジスタを非飽和状態で高速に動作させることができ、一定のスルーレートで出力を駆動することができる。このため、出力振幅を例えば250mV以下の小振幅に抑えることで、極めて高速でデータを伝送させることが可能となる。なお、データ入力時は、トランジスタ301〜304はオフするように、それぞれのゲート電圧が制御される。また、コンタクトパッド205a、205bからの出力をハイインピーダンス状態にするときも同様に、トランジスタ301〜304はオフに制御される。
【0033】
メモリカード20に電源投入後、メモリカード20に対するコマンドにより高速モードに移行するまでの間は、この差動型インターフェース回路30はディセーブル(disable)状態に制御されており、この間、コンタクトパッド205は、従来のメモリカード10のコンタクトパッド105と同じ機能を果たしている。高速モードに移行後は、コンタクトパッド205は、「L」レベルもしくは「H」レベルの固定電位を出力するよう制御される。また、コンタクトパッド204、206はそれぞれ電源およびグランドのピンであり、所定電位がホスト機器より供給されている。このように、データを高速伝送するコンタクトパッド205a、205bを、固定電位のコンタクトパッド205、204、206で包囲することにより、メモリカード20の基板上およびソケットのコンタクトピンの構成上で不要な干渉を防ぐとともに、伝送路の特性インピーダンスを安定化させている。
【0034】
コンタクトパッド205a、205bは、差動型インターフェース回路30のみに接続されており、従来のSDメモリカードに含まれる従来のインターフェース回路には接続されない。したがって、従来のSDメモリカードのインターフェース回路が有する入出力静電容量より小さい入出力静電容量で差動型インターフェース回路30を設計できる。つまり、コンタクトパッド205a、205bの静電容量は、従来のSDメモリカードのコンタクトバッドの静電容量より小さくすることが可能であり、それにより、より高速に動作させることが可能となる。
【0035】
もう1つのデータ転送の系統であるコンタクトパッド201、202a、202b、203および202を用いたデータ転送についても、基本的には、先のデータ転送の系統の場合と同様である。コンタクトパッド202a、202bに対してもインターフェース回路30と同様の回路が接続されている。ただし、コンタクトパッド201は、コマンドによる高速モードへの移行後は、「L」レベルまたは「H」レベルの固定電位を出力するよう制御される。これにより、データを高速伝送するコンタクトパッド202a、202bが、固定電位のコンタクトパッド201、203で挟まれ、よって、メモリカード20の基板上およびソケットのコンタクトピンの構成上で不要な干渉を防ぐとともに、伝送路の特性インピーダンスを安定化させている。なお、コンタクトパッド201は、カードに電源が投入後、コマンドにより高速モードに移行するまでの間は、従来のSDメモリカードのコンタクトパッド101と同じ機能を果たす。
【0036】
上記の構成により、各データ転送の系統で2.5GHzのレートでのデータ転送が可能となる。また、伝送データを平準化、即ち、データの「L」、「H」のバランスを改善するために、データの変調を行なったとしても、250MB/sのデータ転送性能が得られ、2系統のデータ転送のピンにより最大500MB/sのデータ転送性能が得られる。
【0037】
(メモリカードの活線挿抜の考慮)
本実施形態のソケット60または従来のソケット50の電源ピンや入力ピンに電圧が印加された状態で、本実施形態のメモリカード20をソケット60または50に挿入した場合、従来のSDメモリカードの場合と同様、コンタクトパッド203(グランド)とコンタクトパッド204(電源)が最初にソケットのコンタクトピンと接続される。このとき、本実施形態のメモリカード20において、増設されたコンタクトパッド202a、202b、205a、205bは、いずれもハイインピーダンス状態になるべく設計されている。このため、ホスト機器側にもメモリカード側にもダメージを与える心配がない。
【0038】
また、メモリカード20が本実施形態のソケット60に挿入され電源が供給され、差動型インターフェース回路30が動作している状態において、メモリカード20を抜去した場合、コンタクトパッド202a、202bとコンタクトピン602とがショートする可能性がある。しかし、コンタクトパッド202a、202bに接続されているデータ出力回路32は、定電流源305、306によりその出力電流が制限されている。このため、例え、コンタクトパッド202a、202bとコンタクトピン602とがショートしたとしても、過大電流が流れることを防止でき、ホスト機器及びメモリカードの損傷を防止できる。同様に、本実施形態のメモリカード20に対応するホスト機器がデータを出力し、そのデータをメモリカード20が入力しているときも、ホスト機器内のデータ出力回路は、メモリカード20内のデータ出力回路32と同様、定電流源で出力電流が制限されているため、損傷を防止できる。つまり、メモリカード20及び/またはホスト機器の動作中にメモリカード20を抜去しても、メモリカード20及びホスト機器の双方において破壊などのダメージを与えることはない。
【0039】
4.メモリカードとソケットの接続状態
図7は、本実施形態のソケット60に本実施形態のメモリカード20が挿入されたときの接続状態を示した図である。メモリカード20は、第2の切り欠き部25bがスライダ61の突起部61aと当接した状態でバネ62が最大限縮んだ位置まで挿入される。このように、本実施形態のソケット60内において挿入されることで、ソケット60の各コンタクトピンがメモリカード20の対応する各コンタクトパッドに電気的に接続される。これにより、メモリカード20において高速モードの動作が可能となる。
【0040】
図8は、本実施形態のソケット60に従来のメモリカード10が挿入されたときの接続状態を示した図である。従来のメモリカード10は切り欠き部15がスライダ61の突起部61aと当接した状態でバネ62が最大限縮んだ位置まで挿入される。ここで、図7に示す場合と比較した場合、本実施形態のメモリカード20の方が、切り欠き部25bによる段差(d)の分だけ、図8に示す従来のメモリカード10よりも、より深くソケット60内に挿入されていることが理解できる。すなわち、従来のメモリカード10は本実施形態のソケット60に対してより浅く挿入されることから、結果として、ソケット60のコンタクトピン602a、602b、605a、605bは、従来のメモリカード10のいずれのコンタクトパッドにも接続されない。
【0041】
このように、本実施形態のソケット60はスライダ61の突起部61aによりメモリカードの切り欠き部の形状の違いを検出して、メモリカードを形状に応じた所定の固定位置に導く。つまり、本実施形態のメモリカードの切り欠き部の形状を従来のメモリカードのものと異ならせることで、本実施形態のメモリカード20と従来のメモリカード10の判別が可能となり、メモリカードとソケットのコンタクトピンとの接続状態を変更することが可能となる。
【0042】
仮に、このような機能がなければ、従来のメモリカード10を本実施形態のソケット60に挿入したときに、メモリカード10のコンタクトパッド102、105がそれぞれ、ソケットの3個のコンタクトピン602a、602、602b及び605a、605、605bに接続されてしまう。よって、これらの3個のコンタクトピン602a、602、602b及び605a、605、605bはそれぞれ、ホスト機器の配線とその先のLSIの端子に接続されてしまい、高速動作が不可能となる。すなわち、余分なピンが接続され、従来のSDメモリカードと従来のソケットの組合せで動作させる場合よりも、メモリカードに大きな負荷が接続されるため、従来通りの高速性能が維持できなくなる。本実施形態のメモリカード20の特有の切り欠き部分25b及びソケット60のスライダ61の突起部61aにより、この問題を回避できる。
【0043】
(ソケットの別の構成例)
図9に、本実施形態のメモリカードに対応したソケットの別の構成例を示す。同図に示すソケット70は、本実施形態のメモリカード20の切り欠き部25の形状に対応した形状に形成され、メモリカード20が最も奧まで挿入されたときに切り欠き部25a、25bの双方に当接する形状を有する停止部72を有する。この停止部72は、前述のスライダ61の突起部61aと同様の機能を有する。すなわち、メモリカード20がソケット70に挿入された場合、図10に示すように、メモリカード20の第2の切り欠き部25bがソケット70の停止部72の第2の部分72aに当接するまで、メモリカード20がソケット70に深く挿入される。一方、従来のメモリカード10がソケット70に挿入された場合、図11に示すように、メモリカード10の切り欠き部15がソケット70の停止部72の段差部72aに当接するところで、メモリカード20が固定される。このように、突出した段差部72aを設けることで、メモリカードの切り欠き部分の形状を検出でき、本実施形態のメモリカードを従来のメモリカードよりも、より奥深くソケット内に挿入可能とする。これにより、本実施形態のメモリカードと従来のメモリカードとの間で、メモリカードとソケットのピンの電気的接続状態を異ならせることができる。
【0044】
以上のように、本実施形態のメモリカードに対応した本実施形態のソケットは、メモリカードの形状に基づき、メモリカードの挿入位置(挿入の深さ)を異ならせることを可能とする。すなわち、本実施形態のメモリカードの少なくとも一部の形状に基づいて、ソケット内でのメモリカードの挿入位置を、深くしたり、浅くしたりすることで、ソケットとメモリカードのピンの電気的接続状態を切り替えるようにする。
【0045】
(本実施形態のメモリカードと従来のソケットの接続状態)
図12は、従来のソケット50に本実施形態のメモリカード20が挿入されたときの接続状態を示した図である。メモリカード20が固定された位置において、本実施形態のメモリカード20において従来のメモリカード10のものと同じ機能を果たすピンが、すべて、従来のメモリカード10に対応する従来ソケットのコンタクトピン501〜509に接続される。このため、従来のメモリカードに対応するホスト機器でも、本実施形態のメモリカード20を従来のメモリカードと同様に使用することができる。
【0046】
5.まとめ
【0047】
本実施形態によれば、従来のメモリカードにおける一部のピン(コンタクトパッド)についてそのピンが設けられていた領域に、並置した第1及び第2のピンと、それら2つのピンの後方に位置する第3のピンとを設ける。このようなピン構成により、高速動作モードにおいては、第1及び第2のピンに差動信号を伝送するとともに第3のピンを所定電位に固定し、通常モードにおいては、第1及び第2のピンをハイインピーダンスにするとともに、第3のピンを所定の信号(コマンド/レスポンス、クロック)の伝送に用いることが可能となる。これにより、高速なデータ伝送が可能となる。
【0048】
具体的には、従来のSDメモリカードの場合、データの伝送クロックの周波数は、100MHz程度が実用上の最大であり、データ転送レートは50MB/s程度が最大である。一方、本実施形態の方法を用いた場合、2.5GHz程度のデータの伝送クロックが可能になる。また、データの「L」、「H」のバランスを改善するために、データの変調を行なったとしても、シリアルで転送して、約250MB/sのデータ転送レートが可能となり、5倍の高速性効果が期待できる。さらに、データは2つのビットに分割し、同時に2つの、ペアとなるコンタクトパッド群から伝送できるので、10倍の高速性効果が期待できる。また、さらにデータの伝送クロックの周波数を上げることも可能なので、上記以上の効果も期待できる。
【0049】
また、高速化に対応したSDメモリカードでも、従来のホスト機器で制御できる動作モードを保持し、従来のホスト機器のソケットのコンタクトピンに接続できる本発明を適用することで、従来のホスト機器との互換性を保つことが可能になる。
【0050】
さらに、挿入方向の先頭の辺の端にある切り欠き形状が、切り欠き形状途上で段差を持ち二段形状になっており、2段の切り欠き形状の内、側面側が後方側に所定の寸法だけ後退していることにより、本発明のカードに対応するソケットでは、従来のメモリカードを挿入しても、不用意に負荷静電容量が増えることがなく、従来のメモリカードの速度性能を維持することが可能になる。
【0051】
また、本実施形態のソケットは、メモリカードの切り欠き部の形状を検出し、その形状に応じて、メモリカードの挿入位置の深さを異ならせ、以て、ソケットのコンタクトピンとメモリカードのコンタクトパッドの電気的な接続状態を異ならせる。よって、本実施形態のメモリカードは従来のメモリカードと異なる形状の切り欠き部を有するため、本実施形態のソケットは、本実施形態のメモリカードに対応しつつ、従来のメモリカードにも対応することができる。
【0052】
なお、本実施形態での説明は、SDメモリカードでのデータ転送性能の大幅な改善の説明をしたが、SDIOカードでも同様に本発明の思想を適用することで、互換性を保ちつつ、データ転送性能を改善できる。
【0053】
また、上記説明では、メモリカードとしてSDメモリカードを一例として用いたが、メモリカードはこれに限られず、内部に集積回路を有し、同一平面上にコンタクトパッドを形成するものであれば、他の形式のものでもよい。例えば、メモリスティック、スマートメディア、xDピクチャカード等でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のメモリカードは、従来との互換性を確保しつつデータ伝送の高速化を可能できるため、高速なデータ伝送が要求されるアプリケーションにおいて有効である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態のメモリカードの斜視図
【図2】本発明の実施形態のメモリカードの平面図、背面図、側面図、前面図
【図3】本発明の実施形態のメモリカードのコンタクトパッドが配置された部分を示した図
【図4】本発明の実施形態のメモリカードの各ピンの名称と意味付けを示した図
【図5】本発明の実施形態のメモリカードに対応したソケットの構成を示す図
【図6】本発明の実施形態のメモリカードに含まれる差動型インターフェース回路の構成図
【図7】本発明の実施形態のソケットに本発明の実施形態のメモリカードが挿入されたときの接続状態を示す図
【図8】本発明の実施形態のソケットに従来のメモリカードが挿入されたときの接続状態を示す図
【図9】本発明の実施形態のメモリカードに対応したソケットの別の構成を示す図
【図10】本発明の実施形態の別の構成のソケットに本発明の実施形態のメモリカードが挿入されたときの接続状態を示す図
【図11】本発明の実施形態の別の構成のソケットに従来のメモリカードが挿入されたときの接続状態を示す図
【図12】従来のソケットに本発明の実施形態のメモリカードが挿入されたときの接続状態を示す図
【図13】従来の実施形態のメモリカードのコンタクトパッドが配置された部分を示した図
【図14】従来のメモリカードに対応したソケットの構成を示す図
【図15】従来のメモリカードの各ピンの名称と意味付けを示した図
【符号の説明】
【0056】
10 従来のメモリカード
15 従来のメモリカードの切り欠き部
20 本発明の実施形態のメモリカード
25、25a、25b 本発明の実施形態のメモリカード切り欠き部
30 差動型インターフェース回路
31 差動入力回路
32 データ出力回路
50 従来のソケット
52 停止部
60、70 本発明の実施形態のソケット
61 スライダ
61a 突起部
62 ばね
72 停止部
72a 停止部の段差部
25a 第1の切り欠き部
25b 第2の切り欠き部
101〜109 従来のメモリカードのコンタクトパッド
201〜209、202a、202b、205a、205b 本発明の実施形態のメモリカードのコンタクトパッド
501〜509 従来のソケットのコンタクトピン
601〜609、602a、602b、605a、605b 本発明の実施形態のソケットのコンタクトピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を格納する記憶素子を内蔵し、さらに前記記憶素子に記録すべき情報または前記記憶素子から読み出した情報に関する電気信号を入出力するためのコンタクトパッド群を長さ方向の前方端に有したメモリカードにおいて、
メモリカードの幅方向に並置された第1及び第2のコンタクトパッドと、メモリカードの長さ方向において前記第1及び第2のコンタクトパッドの後方に配置された第3のコンタクトパッドとからなる3分割コンタクトパッド群を少なくとも1組含む
ことを特徴とするメモリカード。
【請求項2】
前記3分割形状コンタクトパッド群と、隣接するコンタクトパッドとをリブで隔離したことを特徴とする請求項1記載のメモリカード。
【請求項3】
前記メモリカードの長さ方向の前方端に切り欠き形状を有し、該切り欠き形状はメモリカードの側面側において所定長だけ長さ方向の後方に後退した段差を有した形状であることを特徴とする請求項1記載のメモリカード。
【請求項4】
前記メモリカードは第1の動作モードと、前記第1の動作モードよりも高速で動作する第2の動作モードを有し、前記第3のコンタクトパッドは、前記第1の動作モードでの動作中は所定の信号を伝送し、前記第2の動作モードで動作中は所定電位に固定されることを特徴とする請求項1記載のメモリカード。
【請求項5】
前記3分割形状コンタクトパッド群に隣接するコンタクトパッドが、グランドもしくは電源または所定の固定電圧に接続可能なことを特徴とする請求項1記載のメモリカード。
【請求項6】
前記第1及び第2のコンタクトパッドのそれぞれに接続される静電容量は、前記第3のコンタクトパッドに接続される静電容量よりも小さい、ことを特徴とする請求項1記載のメモリカード。
【請求項7】
前記第1及び第2のコンタクトパッドに接続された、トランジスタを含む差動型インターフェース回路をさらに備え、前記差動型インターフェース回路は、前記トランジスタをオフすることでハイインピーダンスを出力することを特徴とする請求項1記載のメモリカード。
【請求項8】
前記第1及び第2のコンタクトパッドを介して高速差動データを伝送する際、前記第3のコンタクトパッドが所定の固定電位に接続可能なことを特徴とする請求項7記載のメモリカード。
【請求項9】
前記差動型インターフェース回路は出力電流を制限する手段を有することを特徴とする請求項7記載のメモリカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図13】
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【図15】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−252036(P2009−252036A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100652(P2008−100652)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】