説明

メモリーカード抜止め機構付機器

【課題】ボルト・ナット締付機棒にセットした電子式メモリーカードのカードホルダーからの脱落を確実に防止する。
【解決手段】締付機本体1、該締付機本体に連繋するソケットユニット2及び締付機本体とソケットユニットとの間に設けられる締付トルク測定ユニット3とからなり、締付機本体1又は締付トルク測定ユニット3に、電子式メモリーカード用のカードホルダー74、該カードホルダーへのカード挿脱路に出没可能な邪魔部材8及び該邪魔部材をカード挿脱路の閉じ状態に保持する保持手段5を搭載している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子式メモリーカードを装着可能な機器において、メモリーカードの抜止め機構を具えた機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
出願人は以前、図1乃至図3に示す、締付機本体(1)(図面では出力側先端部のみ示し、他の部分は省略)、該締付機本体(1)に連繋するソケットユニット(2)及び締付機本体(1)とソケットユニット(2)との間に、着脱可能に設けられる締付トルク測定ユニット(3)とからなる、ボルト・ナット締付機を提案した。
締付機本体(1)は、互いに逆回転可能な第1出力軸(11)と、第2出力軸(12)を同軸上に具えている。
締付トルク測定ユニット(3)は、締付機本体(1)の第1出力軸(11)に接続可能な内軸(31)と、第2出力軸(12)に接続可能な外軸(32)を有している。
ソケットユニット(2)は、締付トルク測定ユニット(3)の内軸(31)、或いは締付機本体(1)の第1出力軸(11)に係合可能な締付ソケット(21)と、締付トルク測定ユニット(3)の外軸(32)、或いは締付機本体(1)の第2出力軸(12)に係合可能な反力受け(23)を有している。
【0003】
締付機本体(1)の第1出力軸(11)及び第2出力軸(12)と、締付トルク測定ユニット(3)の内軸(31)及び外軸(32)との接続、該内、外の両軸(31)(32)とソケットユニット(2)の締付ソケット(21)及び反力受け(23)との接続、締付機本体(1)の第1出力軸(11)及び第2出力軸(12)とソケットユニット(2)の締付ソケット(21)及び反力受け(23)との接続は、締付トルク測定ユニット(3)の軸心に沿う方向に係脱する凸部と凹部の嵌合によって行われる。
【0004】
締付トルク測定ユニット(3)は、ボルト・ナットの締付時に、該締付トルク測定ユニットに作用する歪み量を検出して、締付トルクを表示するものであり、締付トルク管理の面から極めて有効であった。
そこで出願人は、ボルト・ナットの締付けに起因する後々のトラブルの原因究明等に役立てるため、締付トルク測定ユニット(3)に、SDカード、コンパクトフラッシュ(登録商標)、メモリースティック等の電子式メモリーカードをセットし、個々のボルト・ナットの締付けトルクを記録することを試みた。
【0005】
【特許文献1】特開2006−21272
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メモリーカードとそのカードホルダーには、カードホルダーに正しくメモリーカードCが納まったことが分かるクリック感のある係止手段が設けられているが、係止手段の係止力は弱い。
従って、動力締付機等、使用時に振動を伴ったり、作業現場での取扱いで衝撃が加わると、メモリーカードが簡単にカードホルダーから脱落して、締付トルクが記録できなかったり、記録が消滅してしまう危険がある。
本発明は、上記問題を解決できる、メモリーカード抜止め機構付き機器を明らかにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1のメモリーカード抜止め機構付き機器は、機器に搭載する電子式メモリーカード用のカードホルダー(74)と、該カードホルダー(74)へのカード挿脱路を開閉可能に配備された邪魔部材(8)と、カード挿脱路を閉じ状態に該邪魔部材(8)を保持する保持手段(5)を具えている。
【0008】
請求項2は、請求項1のメモリーカード抜止め機構付き機器において、締付機本体(1)、該締付機本体に連繋するソケットユニット(2)及び締付機本体とソケットユニットとの間に設けられる締付トルク測定ユニット(3)とからなり、締付機本体(1)又は締付トルク測定ユニット(3)に、電子式メモリーカード用のカードホルダー(74)、該カードホルダー(74)へのカード挿脱路を開閉可能な邪魔部材(8)及び該邪魔部材をカード挿脱路の閉じ状態に保持する保持手段(5)を搭載している。
【0009】
請求項3は、請求項1又は2のメモリーカード抜止め機構付き機器において、カードホルダー(74)は回路基板(7)上に配備され、邪魔部材(8)はメモリーカードCの挿脱路に直交する面内で回動して該挿脱路を開閉する。
【0010】
請求項4は、請求項3のメモリーカード抜止め機構付き機器において、カードホルダー(74)に正しく装着されたメモリーカードCの外端縁は、回路基板(7)の端縁に揃い或いは該端縁より僅か内側に位置し、邪魔部材(8)は回路基板(7)の該端縁と該端縁の反対側端縁を挟む2つの壁板(82)(83)を有し、該2つの壁板(82)(83)で回路基板(7)を挟んだときに、一方の壁板(82)でメモリーカードCの挿脱路を開閉する。
【0011】
請求項5は、請求項4に記載のメモリーカード抜止め機構付き機器において、邪魔部材(8)はその回動支持軸(84)上にてその軸方向に動き得る余裕があり、邪魔部材(8)の回動中心側の一端には邪魔部材(8)がカード挿脱路に対して閉じ方向に回転した状態にて回路基板(7)に当接可能な突起(86)が設けられ、該突起(86)には邪魔部材(8)の閉じ方向の回転によって回路基板(7)の端縁を押して、邪魔部材(8)の2つの壁板(82)(83)間に回路基板(7)が嵌まる様に、回路基板(7)と邪魔部材(8)の相対的な位置ずれを修正するための斜面(88)が形成されている。
【0012】
請求項6は、請求項5に記載のメモリーカード抜止め機構付き機器において、邪魔部材(8)には、付勢力によって邪魔部材(8)の回動支持軸(84)の軸方向のガタツキを解消するバネ(85)が連繋されている、請求項5に記載のメモリーカード抜止め機構付き締付機。
【0013】
請求項7は、請求項2乃至6の何れかに記載のメモリーカード抜止め機構付き機器において、円筒状ベース(6)に回路基板(7)が取り付けられ、邪魔部材(8)は回路基板(7)の板面と直交する面内で回動可能に取り付けられ、該邪魔部材(8)のメモリーカード挿脱路に対する開き方向の回転を阻止する保持手段(5)を兼用する円筒状の殻体(51)が、円筒状ベース(6)の軸芯に沿う方向から該べース(6)に嵌まっている。
【0014】
請求項8は請求項1の機器において、締付機本体(1)とソケットユニット(2)との間に設けられる締付トルク測定ユニット(3)であって、円筒状ベース(6)に回路基板(7)が取り付けられ、邪魔部材(8)は、回路基板(7)の板面と直交する面内で回動可能に取り付けられ、
該邪魔部材(8)のメモリーカード挿脱路に対する開き方向の回転を阻止する保持手段(5)を兼用する円筒状の殻体(51)が、円筒状ベース(6)の軸芯に沿う方向から該べース(6)に嵌まっている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1のメモリーカード抜止め機構付き機器は、邪魔部材(8)によって、カードホルダー(74)に対するメモリーカードCの挿脱路を閉じ、保持手段(5)によって、邪魔部材(8)のメモリーカード挿脱路を開く方向の回転を阻止できるから、カードホルダー(74)からメモリーカードCが脱出することを確実に防止できる。
【0016】
請求項2のメモリーカード抜止め機構付き機器は、請求項1と同様の効果を奏する。締付動作中にメモリーカードCがカードホルダー(74)から抜け出して、締付トルクが記録できなかったり、メモリーカードCに記録したデータが消滅する重大な事態を確実に回避できる。
【0017】
請求項3のメモリーカード抜止め機構付き機器は、請求項1又は2と同様の効果を奏する。
邪魔部材(8)は回動してメモリーカードCの挿脱路を開閉するから、邪魔部材(8)の操作を滑らかに行うことができる。
邪魔部材(8)がカードホルダー(74)の一部又は全部に被さる様にすれば、邪魔部材(8)がカードホルダー(74)及びメモリーカードCの保護の役割を果たすことができる。
【0018】
請求項4のメモリーカード抜止め機構付き機器は、請求項1乃至3の効果を奏する。
又、邪魔部材(8)の2つの壁板間に回路基板(7)を挟んだ状態で、メモリーカードCの挿脱路を閉じるため、邪魔部材(8)は回路基板(7)の面に対するスライドが規制されるから、締付機器に激しい振動、大きな衝撃が加わっても、メモリーカードCの脱落を一層確実に防止できる。
【0019】
請求項5のメモリーカード抜止め機構付き機器は、請求項1乃至4の効果を奏する。
又、邪魔部材(8)はその回動支持軸(84)上にてその軸方向に動き得る余裕があるから、回路基板(7)と邪魔部材(8)に、加工誤差、組立誤差等により位置ずれが生じていても、邪魔部材(8)が閉じ方向に回転するとき、最初に回動中心側に位置する突起(86)が回路基板(7)に当たる。
メモリーカードCをカードホルダー(74)に正しくセットした状態で、メモリーカードCの外端縁は、回路基板(7)の端縁に揃い或いは該端縁より僅か内側に位置し、且つ該カードホルダー(74)の挿脱口(75)から少し外側に臨出している。
前記の如く、邪魔部材(8)を閉じ方向に回転させたとき、その突起(86)は最初に回路基板(7)に当たり、カードホルダー(74)から臨出したメモリーカードCに当たることはないから、メモリーカードCの外的損傷を防止できる。
【0020】
又、邪魔部材(8)の突起(86)の斜面(88)が回路基板(7)の端縁に当たって、邪魔部材(8)が回動支持軸(84)の軸方向に移動して邪魔部材(8)と回路基板(7)の位置ずれを修正して、邪魔部材(8)の両壁板(82)(83)間に回路基板(7)を確実に嵌め込むことができる。
尚、回路基板(7)の取付けに多少のガタツキが生じていても、上記と同様にして回路基板(7)と邪魔部材(8)の位置ずれの修正が可能となる。
【0021】
請求項6のメモリーカード抜止め機構付き機器は、請求項1乃至5の効果を奏する。
又、バネ(85)によって回動支持軸(84)での軸方向のガタツキを解消しているから、該ガタツキによる音や振動を防止でき、メモリーカードCにも悪影響を及ぼさない。
邪魔部材(8)をカード挿脱路を閉じ状態にしたとき、バネ(85)付勢によるある程度の保持力が加わって邪魔部材(8)は軟係止され、自然に開くことは防止されるから、邪魔部材(8)を閉じ状態に保持する保持手段(5)をセットし易い。
【0022】
請求項7のメモリーカード抜止め機構付き機器は、円筒状ベース(6)に、円筒状ベース(6)の軸芯に沿う方向から円筒状の外殻体(51)を被せると、該外殻体(51)の内面が邪魔部材(8)の開き方向の回転を確実に阻止できる。
請求項6の様に、邪魔部材(8)をバネの付勢力で閉じ状態に軟係止しておけば、外殻体(51)を円筒状ベース(6)に嵌める際に、不用意に邪魔部材(8)が開いて、外殻体(51)が邪魔部材(8)に衝突して破損することを防止できる。
【0023】
請求項8のメモリーカード抜止め機構付き機器は、請求項1と同様の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、ボルト・ナット締付機に実施した本発明を説明する。
図1乃至図3に示す如く、ボルト・ナット締付機は、締付機本体(1)と、該締付機本体(1)によって駆動されるソケットユニット(2)と、締付機本体(1)とソケットユニット(2)との間に介装される締付トルク測定ユニット(3)とによって構成される。
締付トルク測定ユニット(3)は、締付機本体(1)に対しても、ソケットユニット(2)に対しても着脱可能であり、締付トルク測定ユニット(3)を省略して、ソケットユニット(2)を直接に締付機本体(1)に着脱することもできる。
【0025】
締付機本体(1)の先端には、内側に筒状の第1出力軸(11)、外側に筒状の第2出力軸(12)が同軸上に配備されている。第1出力軸(11)と第2出力軸(12)は、互いに逆方向に回転する様に遊星歯車減速機構(10)に連繋されている。
遊星歯車減速機構(10)は締付機本体(1)に内蔵したモータ(図示せず)によって作動する。
モータは、電流値が所定値に達すると停止する。
【0026】
前記第1出力軸(11)の内面には、軸心に沿う方向に延びる凸条(13)が、周方向に交互に形成されている。
第2出力軸(12)は第1出力軸(11)より少し外側まで延びており、先端縁に等間隔に複数の突片(14)を突設している。第2出力軸(12)の先端部には、締付トルク測定ユニット(3)に対する抜止めボルト(15)が螺合されている。
【0027】
締付用ソケット(2)は、締付ソケット(21)の先端を拡大して、拡大部にボルト・ナット係合穴(22)を形成している。
ソケットユニット(2)には、反力受け(23)が回転自由に被さっている。
反力受け(23)は、先端側が拡大した筒部材(24)の拡大部外周に、該筒部材(24)の軸心と直交して反力受けアーム(25)を突設して形成される。
反力受け(23)の筒部材(24)には、基端部に前記締付機本体(1)の抜止めボルト(15)の先端が侵入可能な周溝(26)が開設されている。
反力受け(23)には周溝(26)より少し先端側に周壁(27)が形成され、該周壁(27)には、前記締付機本体(1)の第2出力軸(12)上の突片(14)が嵌合可能な切欠(28)が開設されている。
【0028】
締付用ソケット(2)の締付ソケット(21)の基端は、反力受け(23)の筒部材(24)から突出しており、突出部の外周面に軸方向に伸びる凹条(20)を、周方向に交互に形成している。該凹条(20)は、前記締付機本体(1)の第1出力軸(11)内面の凸条(13)に嵌合可能である。
【0029】
図2、図4に示す如く、締付トルク測定ユニット(3)は筒状内軸(31)と、該内軸(31)を回転可能に同軸に収容した筒状外軸(32)を有している。
該外軸(32)が後記する回路基板(7)を取り付けるための円筒状ベース(6)となる。
内軸(31)の基端は外軸(32)の基端から突出しており、突出部外周面に軸方向に延びる凹条(33)を周方向に交互に形成している。該凹条(33)は、前記締付機本体(1)の第1出力軸(11)内面の凸条(13)に嵌合可能である。
【0030】
外軸(32)の基端外周に、前記締付機本体(1)の抜止めボルト(15)の先端が嵌まる周溝(34)が開設され、該周溝(34)より先端側の肉厚部には、締付機本体(1)の第2出力軸(12)上の突片(14)が嵌合する切欠(35)が開設されている。
外軸(32)の先端は、前記反力受け(23)の筒部材(24)の基端に嵌合する大きさに形成され、先端部には、該筒部材(24)上の周溝(26)に嵌まる抜止めボルト(36)が螺合され、先端縁には、筒部材(24)上の切欠(28)に嵌合する突片(37)が周方向に等間隔に突設されている。
外軸(32)には、両端側に2つの周壁(32e)(32f)が突設され、一方の周壁(32e)は他方の周壁(32f)よりも外径が小さく壁の肉厚が大である。小径の周壁(32e)の周面には、後記する円筒状外殻体(51)の抜止めを図る穴(32c)が開設され、大径の周壁(32f)には、該周壁を貫通し周方向に等間隔に4つのビス孔(32g)が開設されている。
【0031】
周壁(32e)(32f)間の中央部にて、外軸(32)表面に歪ゲージ(38)が貼り付けられる。
歪ゲージ(38)は、外軸(32)を一周する保護層(39)で覆われている。
周壁(32e)(32f)間にて、外軸(32)には同形状の2つのブロック(4)(41)が、外軸(32)を挟んで対向配備される。
ブロック(4)(41)の内面は外軸(32)に沿う円弧状に形成され、外面は、前記外軸(32)上の2つの周壁(32e)(32f)の内、大径の周壁(32f)の外径よりも少し小径の円弧面に形成されている。
【0032】
ブロック(4)(41)の外周には、周溝(42)及び該周溝(42)を横切って軸方向に伸びる凹部(43)が形成されている。
周溝(42)は前記各歪ゲージ(38)と後記する回路基板(7)(71)を繋ぐ配線(図示せず)を通す通路となる。
各凹部(43)には、バッテリーVを収納するケース(44)が取り付けられる。
各ブロック(4)(41)の端面には、前記外軸(32)上の大径周壁(32f)の4つのビス孔(32g)に対応してネジ穴(41b)が開設され、各ブロック(4)(41)は、夫々2本のビス(40b)で周壁(32f)に固定されている。
【0033】
ブロック(4)(41)の互いに対向する両端面間に、2つの回路基板(7)(71)が配備される。
両回路基板(7)(71)は、ブロック(4)(41)の対向する端面に開設された溝(45)(45)に、回路基板(7)(71)の端縁を嵌め込んで支持されている。
回路基板(7)(71)は、嵌め込まれた状態で回路基板自体に力が加わらない様に、該基板のカット精度、前記ブロック(4)(41)の溝(45)の深さの精度、組立の精度を考慮して、基板の板面に沿って1mm程度揺れ動くことが許される。
一方の回路基板(71)上には、前記歪ゲージ(38)の歪み量に応じた締付トルク値を表示する表示部(72)及び、回路基板(7)(71)への通電用押し釦スイッチ(73)を配備している。
【0034】
他方の回路基板(7)の外側面にメモリーカードCを保持するカードホルダー(74)が配備される。
カードホルダー(74)は、一端にカード挿脱口(75)を開口した長方形の扁平筺体であって、回路基板(7)の軸芯に沿う側縁と平行に該カード挿脱口(75)を位置させて回路基板(7)の板面に寝かせて固定されている。
カードホルダー(74)のカード挿脱口(75)にメモリーカードCを正しく挿入した状態で、メモリーカードCの外端縁は、回路基板(7)の端縁に揃い或いは該端縁より僅か内側に位置する。
【0035】
メモリーカードCとカードホルダー(74)には、メモリーカードCがカードホルダー(74)の奥まで挿入されたことをクリック感を得て軟係止する公知の軟係止手段(図示せず)が設けられている。この軟係止手段は、激しい振動や衝撃を受けた際に、メモリーカードCのカードホルダー(74)からの脱出を防止することは期待できない。
【0036】
そこで、本発明では、カードホルダー(74)へのカード挿脱路に出没して該挿脱路を開閉する邪魔部材(8)を配備し、更に、該邪魔部材(8)をカード挿脱路を閉じ状態に保持する保持手段(5)を具えたことを特徴とする。
【0037】
実施例の邪魔部材(8)は、メモリーカードCの挿脱路に直交する面内で回動して該挿脱路を開閉するものである。
図4乃至図7に示す如く、邪魔部材(8)は略長方形の板片(81)であるが、短手方向の一端側(基端側)と他端側では幅長さが異なる。
幅広側の板片の両端縁には、夫々全長に亘って板片(81)と直交して同じ方向に壁板(82)(83)が平行に突設されている。
両壁板(82)(83)の内面間の間隔W1は、前記回路基板(7)の幅長さW3をガタツキなく受け入れ可能な間隔である。
邪魔部材(8)の板片(81)の上記とは反対側は両端がカットされて、その幅長さW2は、回路基板(7)の幅長さW3及び前記ブロック(4)(41)間の幅長さW4よりも小さい。
【0038】
邪魔部材(8)の幅狭側基端に、回動支持軸(84)を幅方向に貫通させ、該回動支持軸の両端を前記2つのブロック(4)(41)の端部内面に開設した穴(46)(46)に嵌めて、邪魔部材(8)を、筒状外軸(32)の軸芯に略直交し且つ回路基板(7)の板面と直交する面内で回動可能に支持せしめる。
回動支持軸(84)には、邪魔部材(8)と一方のブロック(4)との間にてバネ(85)が嵌まっており、邪魔部材(8)を反対側のブロック(41)側へ付勢している。
【0039】
邪魔部材(8)の両壁板(82)(83)の回動支持軸(84)側の端部には、壁板(82)(83)の上縁寄りを少し隆起して突起(86)(87)が設けられ、邪魔部材(8)が閉じ方向(回路基板(7)側に)に回転したとき前記バネ側の突起(86)が最初に回路基板(7)の端縁に当たる。
上記2つの突起(86)(87)には、邪魔部材(8)の閉じ方向の回転によって回路基板(7)の端縁を押して、邪魔部材(8)の2つの壁板(82)(83)間に回路基板(7)が嵌まる様に、回路基板(7)と邪魔部材(8)の相対的な位置ずれを修正するための斜面(88)(88)が形成されている。
【0040】
邪魔部材(8)がその左右両端の壁板(82)(83)で回路基板(7)を挟む様に閉じた状態で、カードホルダー(74)側の壁板(82)は、該カードホルダー(74)へのメモリーカードCの挿脱路の一部又は全部を閉じて、メモリーカードCのカードホルダー(74)への挿脱を不可とする。
【0041】
上記円筒状ベース(6)(外軸(32))の2つの周壁(32e)(32f)に跨って円筒状外殻体(51)が被せられ、該外殻体(51)の内面が前記閉じ状態の邪魔部材(8)の背面に近接して被さり、邪魔部材(8)の開き、即ち、邪魔板がカードホルダー(74)へのメモリーカードCの挿脱移行路を開く方向の回転を阻止する。即ち、円筒状外殻体(51)は、締付トルク測定ユニット(3)の外ケースと邪魔部材(8)を閉じ状態に保持する保持手段(5)を兼用している。
外殻体(51)の一端に貫通螺合したビス(52)の先端を前記小径周壁(32e)上の係合穴(32c)に嵌めている。
【0042】
外殻体(51)には、前記回路基板(71)上のトルク表示部(72)及び押し釦スイッチ(73)に対応して窓部(53)(図1参照)が開設されており、外殻体(51)の外側から押し釦スイッチ(73)の操作が可能である。
又、ボルト・ナット個々の締付トルクは、前記メモリーカードCに記録される。
【0043】
然して、図3に示す様に、締付トルク測定ユニット(3)の内軸(31)基端を締付機本体(1)の第1出力軸(11)に嵌合し、該ユニット(3)の外軸(32)基端を締付機本体(1)の筒状第2出力軸(12)に挿入して、第2出力軸(12)上の突片(14)を、外軸(32)上の切欠(35)に嵌め込む。
トルク測定ユニット(3)の内軸(31)及び外軸(32)に、ソケットユニット(2)の締付ソケット(21)と反力受け(23)を接続する。
これによって、第1出力軸(11)と、締付トルク測定ユニット(3)の内軸(31)と、ソケットユニット(2)の締付用ソケット(21)は一体回転可能に連結され、第2出力軸(12)と締付トルク測定ユニット(3)の外軸(32)と、ソケットユニット(2)上の反力受け(23)は第1出力軸(11)の回転とは逆方向に一体回転可能に連結される。
尚、締付トルク測定ユニット(3)上のカードホルダー(74)には、予めメモリーカードCが投入されている。
【0044】
締付トルク測定ユニット(3)の押し釦スイッチ(73)を押して、回路基板(7)(71)に通電する。
ソケットユニット(2)の締付ソケット(21)をボルト・ナットに係合し、反力受けアーム(25)を該ナット近傍の突出物に当てる。
締付機本体(1)のモータを作動させると、第2出力軸(12)は反力受け(23)によって回転が阻止されるから第1出力軸(11)だけが回転する。即ち、締付ソケット(21)が回転して、ボルト・ナットを締め付ける。
締付機本体(1)のモータに流れる電流値が所定値に達するとモータが停止する。このとき、締付トルク測定ユニット(3)の外軸(32)の歪みをゲージ(38)が検出し、締付トルクとして表示部(72)に表示される。
【0045】
締付トルク測定ユニット(3)のメモリーカードCを取り出すには、外殻体(51)のねじ止めを解除して、筒状外軸(32)(円筒状ベース(6))から抜き外す。
邪魔部材(8)を開くと、メモリーカードCの挿脱路が開かれ、メモリーカードCを簡単に取り出しできる。
従って、締付動作中にメモリーカードCがカードホルダー(74)から抜け出して、締付トルクが記録できなかったり、メモリーカードCに記録したデータが消滅する重大な事態を確実に回避できる。
【0046】
実施例の邪魔部材(8)は回動してメモリーカードCの挿脱路を開閉するから、邪魔部材(8)の操作を滑らかに行うことができる。
邪魔部材(8)がカードホルダー(74)の一部又は全部に被さる様にすれば、邪魔部材(8)がカードホルダー(74)及びメモリーカードCの保護の役割を果たすことができる。
又、邪魔部材(8)を閉じないと外殻体(51)を所定位置に固定できないから、カード挿脱路を開いたまま、締付トルク測定ユニット(3)を使用してしまうことはない。
【0047】
邪魔部材(8)の2つの壁板(82)(83)間に回路基板(7)を挟んだ状態で、メモリーカードCの挿脱路を閉じるから、邪魔部材(8)は回路基板(7)の面に対するスライドが規制され、締付機器に激しい振動、大きな衝撃が加わっても、メモリーカードCの脱落を一層確実に防止できる。
【0048】
又、邪魔部材(8)はその回動中心軸上にてバネ(85)に抗して軸方向に動き得る余裕があり、回路基板(7)も少しガタ付きのある状態で支持されているが、邪魔部材(8)が閉じ方向に回転するとき、回転中心側の突起(86)が最初に回路基板(7)に当り、メモリーカードCに当たることはないから、メモリーカードCの外的損傷を防止できる。
【0049】
又、邪魔部材(8)の突起(86)(87)の斜面(88)が回路基板(7)の端縁に当たって、邪魔部材(8)が回転中心軸の軸方向に移動して邪魔部材(8)と回路基板(7)の位置ずれを修正して、邪魔部材(8)の両壁板間に回路基板(7)を確実に嵌込みできる。
尚、回路基板(7)の取付けに多少のガタツキが生じていても、上記と同様にして回路基板(7)と邪魔部材(8)の位置ずれの修正が可能となる。
又、バネ(85)によって回動支持軸(84)上での軸方向のガタツキを解消しているから、該ガタツキによる音や振動を防止でき、メモリーカードCにも悪影響を及ぼさない。
【0050】
締付トルク測定ユニット(3)の筒状外軸(32)に、該外軸(32)の軸芯に沿う方向から円筒状外殻体(51)を被せるから、該外殻体(51)の内面が邪魔部材(8)に近接して、邪魔部材(8)の開き方向の回転を確実に阻止できる。
【0051】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0052】
例えば、上記実施例では、締付トルク測定ユニット(3)にカードホルダー(74)及び邪魔部材(8)を搭載したが、締付機本体(1)にカードホルダー(74)及び邪魔部材(8)を搭載することもできる。この場合、邪魔部材(8)の保持手段(5)は、締付機本体(1)の側壁の位置一部を脱着式或いは回動開閉式として、該側壁の閉じ状態において、邪魔部材(8)の開きを阻止する様にすることができる。
【0053】
又、実施例の邪魔部材(8)は回動開閉式であるが、スライドしてメモリーカードCの挿脱移行路を開閉することも実施可能である。
【0054】
又、実施例のソケットユニット(2)は、先端にボルト・ナット係合穴(22)を有しているが、これに限定されることはない。ソケットユニット(2)先端に、六角穴付きボルトの該六角穴に係合する六角軸を突設する等、相手ボルト・ナットに係合する穴又は多角形軸を具えていれば本発明に係る締付ユニット(2)に含まれるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】ボルト・ナット締付機の分解正面図である。
【図2】同上の断面図である。
【図3】締付機本体に締付トルク測定ユニットをセットした断面図である。
【図4】締付トルク測定ユニットの分解斜面図である。
【図5】カードホルダーにメモリーカードを挿入する説明図である。
【図6】カードホルダーにメモリーカードを挿入した状態の斜視図である。
【図7】メモリーカードの挿脱路を邪魔部材によって閉じた状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1 締付機本体
2 ソケットユニット
21 締付けソケット
3 締付トルク測定ユニット
4 ブロック
5 保持手段
51 外殻体
6 円筒状ベース
7 回路基板
74 カードホルダー
8 邪魔部材
82 壁板
85 バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器に搭載する電子式メモリーカード用のカードホルダー(74)と、該カードホルダー(74)へのカード挿脱路を開閉可能に配備された邪魔部材(8)と、カード挿脱路を閉じ状態に該邪魔部材(8)を保持する保持手段(5)を具えた、メモリーカード抜止め機構付き機器。
【請求項2】
ボルト・ナット用締付機本体(1)、該締付機本体に連繋するソケットユニット(2)及び締付機本体とソケットユニットとの間に設けられる締付トルク測定ユニット(3)とからなり、締付機本体(1)又は締付トルク測定ユニット(3)に、電子式メモリーカード用のカードホルダー(74)、該カードホルダー(74)へのカード挿脱路を開閉可能な邪魔部材(8)及び該邪魔部材をカード挿脱路の閉じ状態に保持する保持手段(5)を搭載した、メモリーカード抜止め機構付き機器。
【請求項3】
カードホルダー(74)は回路基板(7)上に配備され、邪魔部材(8)はメモリーカードCの挿脱路に直交する面内で回動して該挿脱路を開閉する、請求項1又は2に記載のメモリーカード抜止め機構付き機器。
【請求項4】
カードホルダー(74)に正しく装着されたメモリーカードCの外端縁は、回路基板(7)の端縁に揃い或いは該端縁より僅か内側に位置し、邪魔部材(8)は回路基板(7)の該端縁と該端縁の反対側端縁を挟む2つの壁板(82)(83)を有し、該2つの壁板(82)(83)で回路基板(7)を挟んだときに、一方の壁板(82)でメモリーカードCの挿脱路を開閉する、請求項3に記載のメモリーカード抜止め機構付き機器。
【請求項5】
邪魔部材(8)はその回動支持軸(84)上にてその軸方向に動き得る余裕があり、邪魔部材(8)の回動中心側の一端には邪魔部材(8)がカード挿脱路に対して閉じ方向に回転した状態にて回路基板(7)に当接可能な突起(86)が設けられ、該突起(86)には邪魔部材(8)の閉じ方向の回転によって回路基板(7)の端縁を押して、邪魔部材(8)の2つの壁板(82)(83)間に回路基板(7)が嵌まる様に、回路基板(7)と邪魔部材(8)の相対的な位置ずれを修正するための斜面(88)が形成されている、請求項4に記載のメモリーカード抜止め機構付き機器。
【請求項6】
邪魔部材(8)には、付勢力によって邪魔部材(8)の回動支持軸(84)の軸方向のガタツキを解消するバネ(85)が連繋されている、請求項5に記載のメモリーカード抜止め機構付き機器。
【請求項7】
円筒状ベース(6)に回路基板(7)が取り付けられ、邪魔部材(8)は回路基板(7)の板面と直交する面内で回動可能に取り付けられ、該邪魔部材(8)のメモリーカード挿脱路に対する開き方向の回転を阻止する保持手段(5)を兼用する円筒状の殻体(51)が、円筒状ベース(6)の軸芯に沿う方向から該べース(6)に嵌まっている、請求項2乃至6の何れかに記載のメモリーカード抜止め機構付き機器。
【請求項8】
機器は、締付機本体(1)とソケットユニット(2)との間に設けられる締付トルク測定ユニット(3)であって、円筒状ベース(6)に回路基板(7)が取り付けられ、邪魔部材(8)は、回路基板(7)の板面と直交する面内で回動可能に取り付けられ、
該邪魔部材(8)のメモリーカード挿脱路に対する開き方向の回転を阻止する保持手段(5)を兼用する円筒状の殻体(51)が、円筒状ベース(6)の軸芯に沿う方向から該べース(6)に嵌まっている、請求項1に記載のメモリーカード抜止め機構付き機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−297872(P2009−297872A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157508(P2008−157508)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000201467)前田金属工業株式会社 (22)
【Fターム(参考)】