説明

メルトブローンポリ乳酸を含む多層構造スパンボンド不織布およびこの製造方法

【課題】メルトブローンポリ乳酸を含む多層構造スパンボンド不織布およびこの製造方法の提供。
【解決手段】スパンボンド不織布を最外層とし、内層に少なくとも1以上のメルトブローン不織布層を有する多層構造のスパンボンド不織布において、前記不織布の内層は、1層以上のポリ乳酸メルトブローン不織布層を有し、必要に応じて、1層以上のスパンボンド不織布層またはポリ乳酸メルトブローン不織布層がさらに積層されてなるが、連続して駆動されるスクリーンベルトの上にスパンボンド不織布層を積層し、スパンボンド不織布層の上に1層以上のポリ乳酸メルトブローン不織布層を積層し、必要に応じて、1層以上のスパンボンド不織布層またはポリ乳酸メルトブローン不織布層をさらに積層した後、さらにスパンボンド不織布層を積層し、熱カレンダーを用いて熱と圧力を同時に与えることにより熱粘着させて製造し、前記ポリ乳酸メルトブローン不織布の重量は、総重量の5〜15重量%となり、総重量は10〜100gsmとなることを特徴とするメルトブローンポリ乳酸を含む多層構造スパンボンド不織布。
このような構成を有する本発明のメルトブローンポリ乳酸を含む多層構造スパンボンド不織布は、流体遮断性に優れた効果が得られるだけではなく、不織布の層間剥離が起こらず、しかも、環境にやさしい高分子であるポリ乳酸を用いることにより、炭素排出の低減にも有利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメルトブローンポリ乳酸を含む多層構造スパンボンド不織布およびこの製造方法に係り、さらに詳しくは、スパンボンド不織布を最外層とし、内層は少なくとも1層のポリ乳酸メルトブローン不織布層を有し、必要に応じて、少なくとも1層以上のスパンボンド不織布層および/またはポリ乳酸メルトブローン不織布層がさらに積層されてなるが、連続して駆動されるスクリーンベルトの上にスパンボンド不織布層を積層し、スパンボンド不織布層の上に少なくとも1層のポリ乳酸メルトブローン不織布層を積層し、必要に応じて、少なくとも1層以上のスパンボンド不織布層および/またはポリ乳酸メルトブローン不織布層をさらに積層した後、さらにスパンボンド不織布層を積層し、熱カレンダーを用いて熱と圧力を同時に与えることにより熱粘着させて製造し、ポリ乳酸メルトブローン不織布の量を最適化させ、熱風量を制御するとともに、カレンダーロールの適正温度を維持して、流体遮断性に優れた効果が得られるだけではなく、不織布の層間剥離が起こらず、しかも、環境にやさしい高分子であるポリ乳酸を用いることにより、炭素排出の低減にも有利なメルトブローンポリ乳酸を含む多層構造スパンボンド不織布およびこの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ての衛生製品は、幼児用おむつ、排便練習用パンツ型のおむつおよび成人失禁用のおむつ、ポリエチレン(PE)フィルムとラミネートする衛生材、生理用のナプキンなどのように、現在、多くの分野において幅広く用いられている。具体的に、幼児および子供の衛生分野においては、おむつおよび幼児排便訓練用のショーツパンツが一般に再使用可能な布製の衛生用品の代わりに用いられてきている。他の代表的な使い捨ての衛生製品としては、女性衛生製品、例えば、生理用のナプキンまたはタンポン、成人失禁用製品、および保健衛生製品、例えば、手術用ドレープまたは創傷被覆材(ドレッシング)が挙げられる。代表的な使い捨ての衛生製品は、一般に、表面シート、裏面シート、および表面シートと裏面シートとの間に挟まれた衛生構造物を含む複合構造体を備える。なお、これらの製品は、普通、製品を着用者にぴったりと合わせるための幾つかの類型の係合システムを備える。
【0003】
たとえ、現在の使い捨ての幼児用のおむつおよび他の使い捨ての衛生製品が一般に大衆によって受け入れられているとはいえ、これらの製品は特定の領域において依然として改善の余地を有している。例えば、固体ゴミの処理に対する関心が全世界的に高まりつつある。ゴミの埋立地が引き続きいっぱいになることに伴い、使い捨ての製品において、原料の減少、使い捨ての製品により多くリサイクル可能であるか、そして付加して分解可能な成分の混入およびゴミ埋立などの手段以外の方法によって廃棄処理可能な製品の考案に対するニーズが高まりつつあるのが現状である。このため、一般に、使用中には、その一体性および強度を保有するものの、使用後には材料が一層効率よく廃棄可能な使い捨ての衛生製品に使用可能な新規材料の必要性が大幅に増大している。かようなニーズに応えられるものとして、例えば、ポリ乳酸から製造された不織布は、堆肥化によって容易に且つ効率よく廃棄処理可能であり、また、ポリ乳酸は、重合工程から廃棄工程に至るまでに発生する二酸化炭素の量が、現在汎用されている高分子よりも低いため、炭素排出の低減に有利であるというメリットがあり、これらの使用が考えられるが、そのままで使用するには、機械的な強度などの他の諸特性における問題点もまた有している。
【0004】
一方、全世界的に環境にやさしい製品への関心および需要も高まりつつある。これとあいまって、二酸化炭素の発生量を規制しようとする世界的な動きも既に始まっており、炭素排出量を定めておいた状態で、排出量の許容値を超えた企業または国が、許容値を超えていない企業または国から炭素排出権を買わなければ、規制が避けられない時代を迎えている現在、上記のポリ乳酸は、炭素排出の低減に有利な位置を占めている。現在、使い捨ての衛生製品に最も汎用されているポリプロピレンの場合、1トンのポリプロピレンの燃焼量につき、二酸化炭素の発生量が3200kgであるのに対し、ポリ乳酸の場合には1830kgであって、ポリプロピレンの約57重量%のレベルにしかならず、極めて有利な位置にあるといえる。
【0005】
また、スパンボンド不織布と合成樹脂との粘着方式によってラミネートする場合に、ポリ乳酸メルトブローン不織布の重量が高ければ、流体遮断性が高くなって合成樹脂が染み出るという現象がないものの、異成分間不織布の熱粘着不良によって各不織布の層間剥離現象が起こり、ポリ乳酸メルトブローン不織布の重量が低ければ、合成樹脂が染み出てロール状に巻き取るときに、背面に粘着されて品質が低下してしまうという問題があった。このため、多層構造スパンボンド不織布を使い捨ての衛生製品に使用するためには、合成樹脂が染み出る現象を防いだり、流体遮断性を高めるとともに、層間剥離現象が起こることを抑止するといった機能性が求められる。ところが、これまで、ポリ乳酸の最適なメルトブローン量を指摘している技術は言及されていないのが現状である。
【0006】
これらの問題に加えて、ポリ乳酸をメルトブローン法により紡糸するときに吹き付ける熱風の量が多過ぎる場合に、細繊度化したポリマーがスクリーンベルトに積層できずに吹き飛ばされる現象が発生し、熱風の量が少な過ぎる場合、メルトブローン不織布の繊度が太過ぎて流体遮断性が低下するという問題点が発生していた。このため、熱風の量を最適に調節する技術も求められるのが現状である。なお、ポリ乳酸をメルトブローン法により紡糸するとき、DCD(Die to Collector Distance)の調節が上手く行われなければ、不織布の形成に問題がある。DCDが高過ぎると、ポリマーがまるで綿のように紡糸されてウェブが正常に形成できず、低すぎると、ポリマー同士が固まってしまい、まるでフィルムのようにウェブが形成されてしまう。
【0007】
最後に、積層されたウェブを熱粘着させる過程で経ることとなるカレンダーロールの温度もまた適正レベルを維持しなければならない。温度が高過ぎると、カレンダーロールにくっつくという融着現象が発生し、温度が低すぎると、スパンボンド層とポリ乳酸メルトブローン層との間の剥離現象が現れるという問題点があり、このため、カレンダーロールの温度を適正に維持する技術も求められる。
【0008】
このため、上述したように、ポリ乳酸は、衛生剤の材料として使われるときに優れた機能性を有しているが、上述した諸問題があるため、実用的な製品として開発されたものがこれまで提案されておらず、単に衛生材料の一部にポリ乳酸を使用することができると開示したものとしては、高度に順応性である個人衛生製品を提供するためのものであり、大韓民国特許出願第2003−7002997号は、液体との接触および極小の力の適用によってゲルとなる吸収体および水溶性重合体を含む個人衛生製品を開示し、「繊維の製造に利用可能な他の重合体としては、ポリ乳酸およびバイオノルとアジピン酸とユニトックスのブレンドがある。」と開示しているだけである。
【0009】
ところが、前記開示された発明は、単にポリ乳酸が衛生剤を構成する混合繊維の一つとして使用可能であることを開示しているだけであり、これらの使用による上述した従来の問題点を認識しておらず、このため、これに対する解決策は全く提示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】大韓民国特許出願第2003−7002997号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の従来の技術における技術的問題点に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、上記の優れた特性を有するポリ乳酸を衛生剤の材料として用いることによる問題点を解消するために、内層のメルトブローン不織布層をポリ乳酸を用いて紡糸するが、量を最適化して流体遮断性を高め、不織布の層間剥離現象は起こらない程度の最適なメルトブローンの量を定めて各種の個人衛生製品として用いて好適なポリ乳酸を含む多層構造のメルトブローンポリ乳酸を含む多層構造スパンボンド不織布を提供するところにある。
【0012】
本発明の他の目的は、前記目的の多層構造スパンボンド不織布を一層容易に製造する方法を提供するところにある。
【0013】
前記目的だけではなく、容易に表出される他の目的を達成するために、本発明においては、流体遮断性に優れた効果が得られるだけではなく、不織布の層間剥離が起こらず、しかも、環境にやさしい高分子であるポリ乳酸を用いることにより、炭素排出の低減にも有利となる多層構造スパンボンド不織布を製造するところにその目的がある。
【0014】
本発明の前記および他の目的と利点は、好適な実施例を挙げるための下記の説明から一層明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するための本発明のメルトブローンポリ乳酸を含む多層構造スパンボンド不織布は、スパンボンド不織布を最外層とし、内層に少なくとも1以上のメルトブローン不織布層を有する多層構造のスパンボンド不織布において、前記不織布の内層は、1層以上のポリ乳酸メルトブローン不織布層を有し、必要に応じて、1層以上のスパンボンド不織布層またはポリ乳酸メルトブローン不織布層がさらに積層されてなるが、連続して駆動されるスクリーンベルトの上にスパンボンド不織布層を積層し、スパンボンド不織布層の上に1層以上のポリ乳酸メルトブローン不織布層を積層し、必要に応じて、1層以上のスパンボンド不織布層またはポリ乳酸メルトブローン不織布層をさらに積層した後、さらにスパンボンド不織布層を積層し、熱カレンダーを用いて熱と圧力を同時に与えることにより熱粘着させて製造し、前記ポリ乳酸メルトブローン不織布の重量は、総重量の5〜15重量%となり、総重量は10〜100gsmとなることを特徴とする。
【0016】
本発明の他の構成によれば、前記メルトブローン不織布層の高分子は、溶融指数(MI:Melt Index、210℃)が70〜85g/10分のポリ乳酸であることを特徴とする。
【0017】
前記他の目的を達成するための本発明のメルトブローンポリ乳酸を含む多層構造スパンボンド不織布の製造方法は、スパンボンド不織布を最外層とし、内層に少なくとも1以上のメルトブローン不織布層を有する多層構造のスパンボンド不織布を製造する方法であって、スパンボンド不織布を最外層とし、内層は1層以上のポリ乳酸メルトブローン不織布層を有し、必要に応じて、1層以上のスパンボンド不織布層またはポリ乳酸メルトブローン不織布層がさらに積層されてなるが、連続して駆動されるスクリーンベルトの上にスパンボンド不織布層を積層し、スパンボンド不織布層の上に1層以上のポリ乳酸メルトブローン不織布層を積層し、必要に応じて、1層以上のスパンボンド不織布層またはポリ乳酸メルトブローン不織布層をさらに積層した後、さらにスパンボンド不織布層を積層するステップと、前記積層された構造の不織布を、熱カレンダーを用いて熱と圧力を同時に与えることにより熱粘着させるステップと、を含み、前記ポリ乳酸メルトブローン不織布の重量は、総重量の5〜15重量%となり、総重量は10〜100gsmとなることを特徴とする。
【0018】
本発明の他の構成によれば、前記メルトブローン不織布の製造に際して吹き付ける熱風の量は、1000〜3000m3/hに制御されることを特徴とする。
【0019】
本発明のさらに他の構成によれば、前記メルトブローン不織布の製造に際して、DCD(ダイスと収集システムの距離:Die to CollectorDistance)は100〜350mmに制御されることを特徴とする。
【0020】
本発明のさらに他の構成によれば、前記メルトブローン不織布の製造に際して、熱粘着させるカレンダーロールの温度範囲は、120〜150℃に制御されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
上記のような構成を有する本発明のメルトブローンポリ乳酸を含む多層構造スパンボンド不織布およびその製造方法は、スパンボンド不織布を最外層とし、内層は少なくとも1層のポリ乳酸メルトブローン不織布層またはスパンボンド不織布層および/またはメルトブローン不織布層を特定の条件下でさらに積層して構成するので、流体遮断性に優れた効果が得られるだけではなく、不織布の層間剥離が起こらず、環境にやさしい高分子であるポリ乳酸を用いることにより、炭素排出の低減にも有利となる不織布を製造することができて、上記の本発明の不織布は、幼児用のおむつ、排便練習用のパンツ型のおむつおよび成人失禁用のおむつ、生理用のナプキンなどに有効に使用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を好適な実施態様によって一層詳述する。
【0023】
本発明を詳細に説明するに先立って、まず、本発明の明細書の全般に亘って使われている上記のポリ乳酸について定義すれば、ポリ乳酸は、一般に、乳酸またはラクテッドの重合によって製造されるものであり、このため、本発明において用いられる用語「ポリ乳酸」は、乳酸またはラクテッドの重合によって製造される重合体を示している。任意の公知の重合方法、例えば、重縮合または開環重合を用いて乳酸を重合してもよい。重縮合方法において、例えば、L−乳酸、D−乳酸またはこれらの混合物は、脱水−重縮合に直接的に適用される。開環重合方法において、乳酸のシクリックダイマーであるラクテッドは、重合調節剤および触媒の援助により重合に適用される。ラクテッドは、L−ラクテッド、D−ラクテッドおよびDL−ラクテッド(メゾ−ラクテッド、L−乳酸とD−乳酸の縮合物とも呼ばれる。)を含んでいてもよい。それぞれの前記ラクテッド(すなわち、L−ラクテッド、D−ラクテッドおよびDL−ラクテッド)は、ダイマーである。すなわち、これらは2つの乳酸単位からなる。そのキラル中心のため、乳酸は2つの異なる立体化学的異性体、すなわち、R異性体およびS異性体の形状を有する。D−ラクテッドは、2つのR異性体を含み、L−ラクテッドは、2つのS異性体を含み、メゾ−ラクテッドは、R異性体およびS異性体を含む。異なる異性体を混合し、必要に応じて重合して、後述する任意の要求組成および結晶度を有するポリ乳酸が得られる。なお、少量の鎖延長剤(例えば、後述するジイソシアネート化合物、エポキシ化合物または酸無水物)を用いてポリ乳酸の分子量を増大させることができる。好適には、ポリ乳酸の重量平均分子量は、約60,000〜約1,000,000である。
【0024】
本発明において使用可能な好適なポリ乳酸重合体としては、これに限定されるものではないが、一つの具体例としては、米国メネソタ州ミネアポリス所在のネイチャーワークス (登録商標)という名前で商業的に入手可能である。他の好適なポリ乳酸重合体は、ドイツのクライリング所在のビオマーインコーポレーテッド(Biomer、Inc.)からビオマー(BIOMER(登録商標))L9000または三井ケミカル社(LACEA(登録商標))から商業的に入手可能である。他の好適なポリ乳酸は、本発明に参照として取り込まれる米国特許第4,797,468号;第5,470,944号;第5,770,682号;第5,821,327号;第5,880,254号;および第6,326,458号に記述されているものが使用可能である。
【0025】
また、前記ポリ乳酸の溶融指数(メルトインデックス)は、任意の温度(例えば、210℃)において10分につき2160gの荷重に適用されるときに押出流量計オリフィス (直径0.0825インチ)を介して強制的に送り込まれる、ASTM試験方法D1238−Eに従って測定される重合体の重量(g)を示す。ポリ乳酸はまた、典型的に融点が約100℃〜約240℃、一部の実施態様において、約120℃〜約220℃、一部の実施態様において、約140℃〜約200℃である。このような低融点のポリ乳酸は、これらが高速にて生分解されるという点で有用である。ポリ乳酸のガラス転移温度(「Tg」)もまた、重合体の可溶性および加工性を改善させるように比較的に低い。例えば、Tgは、約80℃以下、一部の実施態様において約70℃以下、一部の実施態様において約65℃以下であってもよい。以下、さらに詳しく論議されるように、融点およびガラス転移温度は、いずれもASTMD−3417に従って視差走査熱量計(「DSC」)を用いて決定することができる。
【0026】
本発明に従い、メルトブローンポリ乳酸を含む多層構造スパンボンド不織布は、スパンボンド不織布を最外層とし、内層は少なくとも1層のポリ乳酸メルトブローン不織布層を有し、必要に応じて、少なくとも1層以上のスパンボンド不織布層および/またはポリ乳酸メルトブローン不織布層がさらに積層されてなる。
【0027】
また、本発明の好適な実施態様によれば、本発明の多層構造スパンボンド不織布の製造方法は、連続して駆動されるスクリーンベルトの上にスパンボンド不織布層を積層し、スパンボンド不織布層の上に少なくとも1層のポリ乳酸メルトブローン不織布層を積層し、必要に応じて、少なくとも1層以上のスパンボンド不織布層および/またはポリ乳酸メルトブローン不織布層がさらに積層した後、さらにスパンボンド不織布層を積層し、熱カレンダーを用いて熱と圧力を同時に与えることにより熱粘着させることを特徴とする。
【0028】
上述したように、本発明においては、合成樹脂接着剤を用いて低重量のスパンボンド不織布とポリエチレンフィルムをラミネートする過程で、合成樹脂接着剤が不織布を透過することを遮断し、流体遮断性を高めるためには、基本的な不織布の構成をスパンボンド不織布/メルトブローン不織布/スパンボンド不織布のように多層に構成している。ここで、外部層を形成するスパンボンド不織布層は、1層以上に構成することができ、内部のポリ乳酸メルトブローン不織布層もまた1層以上に構成することができて、構成する層数を限定するものではない。以下、本発明の多層構造スパンボンド不織布を「SMS系不織布」と称する。
【0029】
上記の本発明に係るSMS系不織布の目付は、10〜100gsm(g/m2)であることが好ましく、さらに好ましくは、13〜35gsmである。重量が100gsmを超える場合には、経済的な問題点があり、9gsm未満である場合には、強度および肌触りの低下という欠点があるため、好ましくない。
【0030】
本発明のSMS系不織布を構成するポリ乳酸メルトブローン不織布の重量は、総重量の5〜15重量%であることが好ましく、さらに好ましくは、8〜12重量%である。前記SMS系不織布に含まれるポリ乳酸メルトブローン不織布の重量が4重量%未満と少な過ぎると、テクスチャーが緻密ではないため、効果的に合成樹脂の透過を遮断することができず、流体遮断性もまた低下される。逆に、前記SMS系不織布に含まれるポリ乳酸メルトブローン不織布の重量が15重量%を超えると、テクスチャーが緻密であるため、合成樹脂の透過の遮断には有効であるとはいえ、不織布の層間剥離現象を生じさせるため好ましくない。すなわち、ポリ乳酸メルトブローン不織布の量が少な過ぎると、不織布を構成する繊維と繊維との積層によって形成される気孔径が大きくなって、流体状の合成樹脂を効果的に遮断することができず、ポリ乳酸メルトブローン不織布の量が多過ぎると、不織布の層間剥離現象を生じさせてしまう。
【0031】
また、本発明の好適な実施態様によれば、前記メルトブローン不織布を紡糸するために、ポリ乳酸ポリマーに加えられる熱風の量は、1000〜3000m3/hであることが好ましく、さらに好ましくは、1800〜2500m3/hである。ポリ乳酸ポリマーに加えられる空気の量が3100m3/h以上である場合には、細繊度化したポリマーがスクリーンベルトに積層できずに、吹き飛ばされるという現象が発生し、1000m3/h以下である場合には、ポリマーの繊度が太過ぎて流体遮断性の効果が低下するという欠点があるため好ましくない。
【0032】
本発明の他の好適な実施態様によれば、前記ポリ乳酸ポリマーがスクリーンベルトに積層されるまでの距離であるDCDは、100〜350mmであることが好ましく、さらに好ましくは、150〜250mmである。DCDが350mm以上である場合には、ポリマーがまるで綿のように紡糸されてウェブが正常に形成できず、100mm以下である場合には、ポリマー同士が固まりを作ってまるでフィルムのようにウェブが形成されてしまうという問題点が発生するため好ましくない。
【0033】
本発明に係るスパンボンド不織布は、溶融可塑性樹脂を溶融させて多数のオリフィスにより押出させてフィラメントを形成し、紡糸されたフィラメントは蜂の巣状のチャンバーを介して噴射される冷却空気によって固化され、上部から吹き付ける空気とコンベヤベルトの下部において吸入する空気の圧力によって延伸され、コンベヤベルトの上に所定の重量で積層されてウェブが形成される。本発明においてスパンボンド不織布層を形成するときに用いられる樹脂は、ポリオレフィン系ポリプロピレン樹脂であり、ポリ乳酸メルトブローン不織布の製造方法は、本発明が属する技術分野において通常用いられる公知の方法によって溶融指数(MI:Melt Index、210℃)が70〜85g/10分であるポリ乳酸を溶融し、多数のオリフィスにより紡糸するとき、口金の両側から強い熱風を吹き付けて極細糸を作る。通常、ポリ乳酸メルトブローン不織布を構成する繊維は、1〜5μmの太さを有する。本発明の主な機能は、不織布が流体遮断性に優れているとともに、炭素排出の低減にも有利なものであり、この機能を発現させるのは、メルトブローン不織布層、すなわち、メルトブローン不織布層の単位面積当たりの重量が大きな影響因子として作用するため、メルトブローン不織布の単位面積当たりの重量を総重量の5〜15重量%にする必要がある。基本的な多層構造スパンボンド不織布(SMS系不織布)は、連続して駆動されるスクリーンベルトの上にスパンボンド不織布層が積層され、スパンボンド不織布層の上にメルトブローン不織布層が積層され、最終的にスパンボンド不織布層が積層されることにより、SMS系不織布として製造される。ここで、スパンボンド不織布層およびメルトブローン不織布層は1層以上であってもよく、層数を限定することはない。すなわち、連続して駆動されるスクリーンベルトの上にスパンボンド不織布層を積層し、スパンボンド不織布層の上に少なくとも1層のメルトブローン不織布層を積層し、必要に応じて、少なくとも1層以上のスパンボンド不織布層および/またはメルトブローン不織布層をさらに積層した後、さらにスパンボンド不織布層を積層することにより、SMMS(スパンボンド不織布/メルトブローン不織布/メルトブローン不織布/スパンボンド不織布)、SSMS、SSMMS、SSMMSSなどといったようにスパンボンドとベルトブローン紡糸ビームの追加有無によって様々に製造することができる。
【0034】
上記のように多層に集積されたウェブは、力学的特性および形態安定性を与えるためにヒートシールを行う。接着面積を限定することはないが、カレンダーロールの構成は、一方は、通常、接着面積が10〜20重量%となるエンボスロール面、他方は、表面が滑らかなロールから構成されており、多層に集積されたウェブは、前記ロールを通過しつつシート化される。このとき、エンボスロールと滑らかなロールの温度は、120〜150℃であることが好ましく、さらに好ましくは、130〜140℃である。エンボスロールと滑らかなロールの温度が150℃を超えると、ポリ乳酸メルトブローン不織布層がカレンダーロールに融着される現象が発生し、120℃未満では、ポリ乳酸メルトブローン不織布層とスパンボンド不織布層との間の剥離現象が現れるため好ましくない。
【0035】
下記の実施例および比較例は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範疇がこれらの実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0036】
下記の実施例および比較例によって製造された不織布の各種の特性および物性値は、下記の方法により測定および評価した。
(1)重量:EDANA 40.3−90
(2)引張り剛伸度:EDANA 20.2−89
(3)剛軟度:EDANA 50.5−99
(4)耐水圧:DIN53886
【0037】
実施例1
溶融指数(MI:Melt Index)が35g/10分であるポリプロピレン樹脂と溶融指数(MI:Melt Index)が70〜85g/10分であるポリ乳酸を用いて多層構造のスパンボンドを製造する方法において、総重量15gsmのうち、スパンボンド不織布層の重量は88重量%/m2、ポリ乳酸メルトブローン不織布層の重量は12重量%/m2とし、メルトブローンの熱風量は2500m3/h、DCDは200mm、カレンダーロールの温度は135℃として、総重量が15gsmであるSMS系不織布を製造し、特性および物性を測定して下記表1に示す。
【0038】
実施例2
総重量を18gsmに変えた以外は、実施例1の方法と同様にしてSMS系不織布を製造し、特性および物性を測定して下記表1に示す。
【0039】
比較例1
総重量15gsmのうちメルトブローン不織布層の重量を3重量%/m2に変えた以外は、実施例1の方法と同様にして不織布を製造し、特性および物性を測定して下記表1に示す。
【0040】
比較例2
総重量18gsmのうちメルトブローン不織布層の重量を20重量%/m2に変えた以外は、実施例1の方法と同様にして、SMS系の不織布を製造し、特性および物性を測定して下記表1に示す。
【0041】
比較例3
総重量18gsmのうちメルトブローン不織布層の重量を12重量%/m2、カレンダーロールの温度を155℃に変えた以外は、実施例1の方法と同様にしてSMS系不織布を製造し、特性および物性を測定して下記表1に示す。
【0042】
比較例4
総重量18gsmのうちメルトブローン不織布層の重量を12重量%/m2、カレンダーロールの温度を115℃に変えた以外は、実施例1の方法と同様にしてSMS系不織布を製造し、特性および物性を測定して下記表1に示す。
【0043】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパンボンド不織布を最外層とし、内層に少なくとも1以上のメルトブローン不織布層を有する多層構造のスパンボンド不織布において、
前記不織布の内層は、1層以上のポリ乳酸メルトブローン不織布層を有し、必要に応じて、1層以上のスパンボンド不織布層またはポリ乳酸メルトブローン不織布層がさらに積層されてなるが、連続して駆動されるスクリーンベルトの上にスパンボンド不織布層を積層し、スパンボンド不織布層の上に1層以上のポリ乳酸メルトブローン不織布層を積層し、必要に応じて、1層以上のスパンボンド不織布層またはポリ乳酸メルトブローン不織布層をさらに積層した後、さらにスパンボンド不織布層を積層し、熱カレンダーを用いて熱と圧力を同時に与えることにより熱粘着させて製造し、前記ポリ乳酸メルトブローン不織布の重量は、総重量の5〜15重量%となり、総重量は10〜100gsmとなることを特徴とするメルトブローンポリ乳酸を含む多層構造スパンボンド不織布。
【請求項2】
前記メルトブローン不織布層の高分子は、溶融指数(MI:Melt Index、210℃)が70〜85g/10分のポリ乳酸であることを特徴とするメルトブローンポリ乳酸を含む多層構造スパンボンド不織布。
【請求項3】
スパンボンド不織布を最外層とし、内層に少なくとも1以上のメルトブローン不織布層を有する多層構造のスパンボンド不織布を製造する方法であって、
スパンボンド不織布を最外層とし、内層は1層以上のポリ乳酸メルトブローン不織布層を有し、必要に応じて、1層以上のスパンボンド不織布層またはポリ乳酸メルトブローン不織布層がさらに積層されてなるが、連続して駆動されるスクリーンベルトの上にスパンボンド不織布層を積層し、スパンボンド不織布層の上に1層以上のポリ乳酸メルトブローン不織布層を積層し、必要に応じて、1層以上のスパンボンド不織布層またはポリ乳酸メルトブローン不織布層をさらに積層した後、さらにスパンボンド不織布層を積層するステップと、
前記積層された構造の不織布を、熱カレンダーを用いて熱と圧力を同時に与えることにより熱粘着させるステップと、
を含み、
前記ポリ乳酸メルトブローン不織布の重量は、総重量の5〜15重量%となり、総重量は10〜100gsmとなることを特徴とするメルトブローンポリ乳酸を含む多層構造スパンボンド不織布の製造方法。
【請求項4】
前記メルトブローン不織布の製造に際して吹き付ける熱風の量は、1000〜3000m3/hに制御されることを特徴とする請求項3に記載のメルトブローンポリ乳酸を含む多層構造スパンボンド不織布の製造方法。
【請求項5】
前記メルトブローン不織布の製造に際して、DCD(ダイスと収集システムの距離:Die to CollectorDistance)は100〜350mmに制御されることを特徴とする請求項3に記載のメルトブローンポリ乳酸を含む多層構造スパンボンド不織布の製造方法。
【請求項6】
前記メルトブローン不織布の製造に際して、熱粘着させるカレンダーロールの温度範囲は、120〜150℃に制御されることを特徴とする請求項3に記載のメルトブローンポリ乳酸を含む多層構造スパンボンド不織布の製造方法。