説明

メータ装置の照明構造

【課題】少ない光源で指針及び文字盤を表示する際に、大きく指針が回転移動する場合であっても、指針回転に伴う照明むらを抑制することができるメータ装置の照明構造を提供する。
【解決手段】プリズム7は、受光面6Dに対向する表面の、該プリズム7を貫通する指針6Bが回動する際に受光面6Dがその表面上を通過する領域に、該受光面6Dとプリズム7の中央部との距離が離れるにつれて該プリズム7の表面からの出射光量を逓増するセレーション部7Cが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、航空機、船舶等に搭載されるメータ装置に係り、特に、指針が大きく回動する場合であっても指針回転に伴う照明むらを効果的に抑制することができるメータ装置の照明構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
導光体を用いた従来の照明装置としては、例えば特許文献1に記載のものなどが知られている。即ち、この照明装置は、例えば車両などの計器用の照明装置であって、図9及び図10に示すように、回転軸101を中心に回転する第1の照明対象である指針102と、この指針102の背後(同図中下側)に位置し透過照明される表示部材である文字板103と、この文字板103の背後(同図中下側)に位置するガラスエポキシ樹脂からなる硬質の回路基板104と、この回路基板104上に設けられ、それぞれ指針102と文字板103を照明する第1,第2の光源である発光ダイオード105,106と、発光ダイオード105,106のそれぞれの照明領域を区画する仕切部材である円筒形の仕切壁107と、回路基板104の背後に固定される回転軸101を回動させる計器本体108と、発光ダイオード105の光を指針102に導く第1の導光体110と、発光ダイオード106の光を文字板103に導く第2の導光体111と、第1,第2の導光体110,111を支持するケース112と、第1の導光体110と第2の導光体111とを接続する連結部113とを設けた照明装置である。連結部113には凹部114が備わっている。
【0003】
この照明装置によれば、連結部113は逆U字形状をしていることにより、異なる照明色である第1,第2の光源である発光ダイオード105,106からの光が連結部113に入り込んで、それぞれの第1,第2の導光体110,111にて発光ダイオード105,106が混合することを防止し、照明品質の低下を抑制しているので、照明品質の良好な照明装置が得られる。
【0004】
ところが、このような構成の照明装置にあっては、光源であるLEDは点光源でありしかも指向性が強いので、指針回転に伴う照明むらを防止するためには、指針軸を中心とした円周状に多数の光源を設置させておくことが必要であった。
【0005】
そこで、このような光源を多数設置しなくて済むようにするため、例えば、特許文献2に記載のものも知られている。即ち、この表示装置は、図11及び図12に示すように、光源201の光軸Dが、指針部202の軸線Cに対して上方向にΔLだけオフセットして配されており、光源201から発せられた光の一部は、第1の入光面203から導光部材204に入射し、円筒部204Aを通り、指針部202に入射するように構成されている。さらに、指針部202に入射した光は、指針部202の反射面205で、指針202Aの先端方向へ向けて反射する一方、光源201から発せられた光の一部は、第2の入光面206から導光部材204に入射し、円錐面207の内面で屈折及び反射し、外周側の光反射面208に向かうように構成されている。なお、同図中、符号202Bは指針軸、209は文字板を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−77185号公報
【特許文献2】特開2010−48743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した後者の表示装置は、僅かな数の光源を用いて、文字盤及び指針の双方を照明させることができるので、その点では問題ない。ところが、指針の回転動作に伴い移動する指針の位置によっては、指針での入光面が光源から離れてしまい、指針での照明光の光量が大幅に低下する虞がある。
【0008】
その結果、指針を用いた回転式のゲージのうち、例えば燃料計、水温計などのような指針の回転角度が狭いものではあまり問題ないが、スピードメータやタコメータ等の大きな回転角度で指針が回動するタイプのものでは、指針角度位置によっては、指針照明光の光量にばらつきなどを生じてしまい、照明装置としての品質低下をもたらす虞がある。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、少ない数の光源を用いて指針及び文字盤を表示する際に、指針が大きく回動する場合であっても、指針回転に伴う照明むらを効果的に抑制することができるメータ装置の照明構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために、本発明に係るメータ装置の照明構造は、下記(1)から(4)を特徴としている。
(1) 透光性の表示板と、
指針と、指針軸と、前記指針及び前記指針軸に連結され、前記指針軸が連結された裏面において該指針軸とは異なる位置に受光面が設けられたヘッドを備え、前記指針が前記指針軸を中心に回動する指針部と、
表面が前記受光面に対向して配置されるとともに中央部を避けて前記指針軸によって貫通される、透光性材料で形成された光量調整素子と、
前記光量調整素子の裏面における前記中央部に照明光を出射する光源と、
前記光量調整素子及び前記表示板を貫通した前記指針軸を回動させる駆動手段と、
を備え、
前記光量調整素子は、前記受光面に対向する表面の、該光量調整素子を貫通する前記指針部が回動する際に前記受光面がその表面上を通過する領域に、該受光面と前記中央部との距離が離れるにつれて該光量調整素子の表面からの出射光量を逓増する照明光逓増出射部が形成されている、
こと。
(2) 上記(1)の構成のメータ装置の照明構造であって、
前記照明光逓増出射部は、前記光量調整素子の前記中央部から周縁部に向けて次第に傾斜角度が大きくなるように山の高さを高くした断面略山型形状、又は谷の深さを深くした断面略谷型形状の凹凸を多数連続的に設けたセレーション部で構成されている、
こと。
(3) 上記(1)または(2)の構成のメータ装置の照明構造であって、
前記光量調整素子は、前記中央部の表面が凹状に窪んだすり鉢形状である、
こと。
(4) 上記(1)から(3)のいずれか一つの構成のメータ装置の照明構造であって、
前記照明光逓増出射部は、前記中央部を中心とする略扇型形状に形成されている、
こと。
【0011】
上記(1)に記載のメータ装置の照明構造によれば、少ない数の光源を用いて指針及び文字盤を表示することができ、また、その指針で表示する際に、指針が大きく回動する場合であっても、指針回転に伴う照明むらを効果的に抑制することができ、高品位のメータ装置の照明構造を提供できる。
上記(2)に記載のメータ装置の照明構造によれば、照明光逓増出射部を、比較的簡単な構造の、セレーション構造を有するセレーション部で構成することができるので、コストの削減が可能となる。
上記(3)に記載のメータ装置の照明構造によれば、照明光逓増出射部内を伝播する光を照明光逓増出射部の表面に案内することができる。この結果、限られた照明光量を有効利用することができるので、その分、表示板や指針に対する照明効率を高めることができる。
上記(4)に記載のメータ装置の照明構造によれば、略扇型形状を有する比較的単純な形状のもので照明光逓増出射部を構成できるので、金型等のコストの削減が可能となり、延いては製造コストの削減を図ることも可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のメータ装置の照明構造によれば、指針部の回動動作に伴って光源の光軸からずれた方向に向けて指針部の受光面が次第に大きく移動することにより光量低下が増大していくのに反して、照明光逓増出射部への受光面の重なり領域が増大していくように構成されている。
従って、双方の光量変化を相殺させることが可能となるので、指針が大きく回動しても、指針に対してほぼ均一な光量を入射することができるようになる。これにより、本発明では、少ない光源で指針及び文字盤を表示する際に、大きく指針が大きく回動する場合であっても、指針回転に伴う照明むらを効果的に抑制することができるようになる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る照明構造が適用されたメータ装置を説明する図であって、(A)はその平面図であり、(B)はその要部を拡大させた説明図である。
【図2】図1(A)におけるII−II線矢視断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る照明構造が適用されたメータ装置に用いる指針部を説明する図であって、(A)はその斜視図であり、(B)はその裏面側を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る照明構造が適用されたメータ装置に用いる指針部の要部拡大斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る照明構造が適用されたメータ装置に用いる指針部のヘッドとプリズムを説明する図であって、(A)はその指針部のヘッドとプリズムとの相対位置関係を示す説明図であり、(B)は図1(B)におけるVB−VB線矢視断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る照明構造が適用されたメータ装置の作用を示す説明図である。
【図7】本発明の実施形態に係る照明構造が適用されたプリズムの内部を進行する照明光の光路を示す説明図である。
【図8】本発明の変形例の照明構造が適用されたメータ装置の説明図である。
【図9】従来の照明構造が適用されたメータ装置の断面図である。
【図10】従来の照明構造が適用されたメータ装置の指針と文字板を取り除いた状態を示す平面図である。
【図11】従来の他の照明構造が適用されたメータ装置の外観正面図である。
【図12】従来の他の照明構造が適用されたメータ装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明の照明構造が適用されたメータ装置1を示すものである。
メータ装置1は、基板2の上に実装された光源3と、この光源3が搭載された基板2の裏面側の所定の場所に取付けられたムーブメント4と、光源3の直上であって、かつ、ムーブメント4の上部に偏倚した状態で設置された、意匠、例えば、数字、文字、記号など、車自体或いは車周辺の環境などに関する必要情報を表示する表示盤を構成する表示板5と、指針部6と、光量調整素子を構成するプリズム7と、を有する。なお、同図中符号8は内面が反射板を構成するケーシングの一部を示す。
【0016】
本実施形態のメータ装置1は、コンビネーションメータの一部を構成しており、見返し板で周囲が覆われている。また、この見返し板には、メータ装置1を含む各種計器類を設置するための各種表示窓を開口させており、側面及び背面側を構成するコンビネーションメータケースと一体化されている。更に、この見返し板は、黒色系などの透明なカバーガラスで上部が覆われている。
【0017】
なお、本実施形態のメータ装置1は、速度計を構成しており、図示しないセンサによって検出された速度に対応したセンサ信号に基づき、指針部6の指針6Bを所定角度だけ回動させ、表示板5に形成された特定の数字又は目盛を指し示す。
【0018】
光源3は、光量調整素子であるプリズム7の表面(図2では上面)とは反対の裏面中央部に設けた入射面7Bを光軸Aが通過するようにその直下に設置され(図5(B)参照)ており、プリズム7の裏面中央部に位置する入射面7Bに向けて照明光を出射する。本実施形態の光源3は、所定波長(λ)の可視光を出射する例えばLED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)で構成されており、この光源3から出射する光(以下、照明光とよぶ)は、光軸Aが設けられた中央部を最大光量とした分布状態を有しているが、位相角度には方向依存性のない、均一な出射特性のものが使用されている。即ち、本実施形態の光源3では、水平面(X−Y平面)方向に関しては全周に亘り、略均一な光量を出射する光量分布特性を有する。なお、本実施形態の光源3としては、特にこのLEDに限定されるものではないが、消費電力が少なく小型の点光源であるものが好ましい。
【0019】
ムーブメント4は、何れも図示しないが、内部に、指針部6の指針軸6Aを回動させる駆動手段であるモータと、ギアと、指針軸6Aに一体に接続させる出力軸など、を備えている。
【0020】
モータは、指針部6を回動させるためのものであり、ギアを介して出力軸を回動させることにより、表示板5の表面に沿って指針6Bを回動させ、指針6Bが必要な各種情報を指し示すようになっている。なお、本実施形態のモータは、ステッパモータを構成している。
【0021】
表示板5は、透光性を有しているとともに、照明光意匠を構成する上述の速度表示用の数字や目盛などを外面側に設けており、光源3から出射してプリズム7を透過してきた照明光によって数字や目盛などを発光させるようになっている。
【0022】
指針部6は、指針軸6Aと、指針6Bと、指針軸6A及び指針6Bに連結され、指針軸6Aが連結された裏面において該指針軸6Aとは異なる位置に受光面6Dが設けられたヘッド6Cを備える。指針軸6Aは、表示板5の軸孔5A(図1(A)及び図2参照)及びプリズム7の貫通孔7Aを貫通し、モータの出力軸に一体に接続されており、この指針軸6Aを中心としてヘッド6C及び指針6Bが、図示しないセンサによって検出された速度に対応して回動動作する。
【0023】
また、指針部6は、指針6Bの回動動作に伴い、受光面6Dが後述するゼロ位相位置α(図6参照)から離れるように回動するにつれて、受光面6Dへの照明光は同じく後述する照明光一般出射部7D(図7参照)からの入射量が少なくなる代わりに、後述する照明光逓増出射部であるセレーション部7Cからの入射光を増大させて指針6Bへ進行する照明光量の均一化を図るように構成している。
【0024】
本実施形態の光量調整素子を構成するプリズム7は、透光性を有する適宜の材料で形成されている。プリズム7は、図5(B)に示すように、表示板5の外面(図2では上面)とは反対の内面(同図で下面)に表面(図5(B)では上面)が臨む状態で、かつ、表面が指針部6の受光面6Dに対向した状態で、表示板5の内面近傍に適宜の手段で設置されている。このプリズム7は、裏面中央部に設けた入射面7Bの中心位置を光軸Aが通過するように、光源3に対する相対位置が調整された状態に設置されており、この入射面7Bの中心に向けて照明光が入射する。
【0025】
また、このプリズム7は、図5(B)に示すように、入射面7Bが位置する中央部を避けた位置に指針軸6Aを回転自在に貫挿させるための貫通孔7Aが縦(Z)方向に貫いて穿設されている。さらに、プリズム7の表面の所定形状の固有領域に照明光逓増出射部を構成するセレーション部7Cを設けており、それ以外の表面部分が照明光一般出射部7Dを構成している。
【0026】
セレーション部7Cは、ヘッド6Cの受光面6Dに対向する表面の、プリズム7を貫通する指針部6が回動する際に受光面6Dがその表面上を通過する領域に、該受光面6Dと中央部との距離が離れるにつれて該プリズム7の表面からの出射光量を逓増するように形成されている。より詳細にセレーション部7Cについて図6を参照して説明する。まず、セレーション部7Cがプリズム7の表面に形成される位置は次の通りである。
【0027】
すなわち、セレーション部7Cは、軸線Bを中心に回転する受光面6Dがプリズム7の中央部に最も接近するゼロ位相位置α(図6参照)から、指針部6に許容される最大角度の回動位置において受光面6Dが位置する最大位相位置β(図6参照)までに亘って、受光面6Dが通過する受光面位置6Dα、6Dβ、6Dγを含むプリズム7の表面上の領域に形成されている。受光面6Dがゼロ位相位置αにある場合には、指針6Bは図6の6Bαで示す線上に位置し、受光面6Dが最大位相位置βにある場合には、指針6Bは図6の6Bβで示す線上に位置する。
【0028】
セレーション部7Cは、図7に示すプリズム7の表面において、ゼロ位相位置αに対応するプリズム7の表面中央部Aから離れる表面外縁部に向けて傾斜角度が次第に大きくなるように凹凸を多数連設させてある。即ち、このセレーション部7Cには、山が次第に高くなるか又は谷が次第に深くなるように、断面略山型形状又は断面略谷型形状の微細な凹凸を多数連設させたセレーション構造が形成されている。
【0029】
また、セレーション部7Cは、プリズム7の表面中央部Aを除くその近傍部分を中心としプリズム7の表面外縁部に至る方向を半径とする略扇型形状を有する。
【0030】
また、このプリズム7は、図5(B)に示すように、入射面7B直上のプリズム7の表面が、凹状に窪んだすり鉢形状の傾斜曲面領域を有するとともに、この傾斜曲面領域には、セレーション部7Cへ向けて照明光を反射させる内側内部反射面71を有する。さらに、プリズム7には、プリズム7表面の外周部分に、内側内部反射面71で内部反射後に内部を透過してきた照明光をさらに内部反射させることで、セレーション部7Cから出射させる照明光量を増大させる外側内部反射面72を有する。これにより、セレーション部7C内を伝播する光をセレーション部7Cの表面に案内することができる。
【0031】
照明光一般出射部7Dは、セレーション部7Cが形成された領域を除くプリズム7の表面である。照明光一般出射部7Dもまた、図7に示すように、プリズム7を透過後、そのプリズム7表面から出射する照明光を表示板5及び受光面6Dに向けて入射する。ところで、指針部6の指針6Bが図6の6Bαに位置するとき、受光面6Dの受光面位置6Dαは光軸Aに最も近づく。このため、この場合であれば照明光一般出射部7Dから受光面6Dに入射される照明光でも充分な光量が見込める。他方、指針部6の指針6Bが図6の6Bγ、6Bβと徐々に6Bαから離れて位置するとき、受光面6Dの受光面位置6Dβ、6Dγは光軸Aから離れていく。仮にプリズム7の表面にセレーション部7Cが無い場合、照明光一般出射部7Dから受光面6Dに入射される照明光が逓減し、その照明光だけでは充分な光量が見込めない。そこで、本発明のメータ装置の照明構造では、照明光一般出射部7Dから受光面6Dに入射される照明光の逓減分を、セレーション部7Cから受光面6Dに入射される照明光によって補う。
【0032】
次に、本実施形態の作用について、主に図5乃至図7を参照しながら説明する。なお、ここでのメータ装置1の説明は、各計器類のうちスピードメータを例に挙げてその作用を説明するが、特にこれに限定されるものではない。また、この作用については、他のアナログタイプのメータ装置の場合でも同様である。
【0033】
メータ装置1のムーブメント4の内部に設けたモータが、図示しない速度センサによって検出された現在速度に対応するセンサ信号に基づいて回転駆動し、これに接続されている指針6Bを所定角度だけ回動し、表示板5に形成された意匠である特定の数字又は目盛を指示する。
【0034】
即ち、モータ側の出力軸及びこれと一体の指針軸6Aが所定の角速度で回転を始め、指針軸6Aを取り付けたヘッド6Cに基端部が固定されている指針6Bが所定角度だけ回動され、指針の先で表示板5上の特定の数字又は目盛を指し示す。これによって、現在速度を運転者などにアナログ表示させて知らせることができる。
【0035】
このような速度表示を行うメータ装置1にあっては、同時に、図5(B)に示すように、プリズム7の下面中央に設けた入射面7Bの中心A(この光軸Aの部分が最大光量となる)に向けて、対面する光源3から照明光が出射する。この場合、光軸Aを最大光量とする光量分布であるので、この入射面7Bに入射した照明光は、プリズム7を透過した後、プリズム7の上面から出射する際には、概して、中央部からの出射光量が多く半径方向外側に沿った周辺部に向かうほど出射光量が低下する特性を有する。
【0036】
ところで、プリズム7から出射する照明光を受光する指針部6の受光面6Dは、指針部6のヘッド6C下面の指針軸6A近傍の指針6B寄りである前方側に設けてあって、指針軸6Aが軸線Bを中心として回動するような配置構成である。しかも、指針軸6Aの回動中心となる軸線Bは、光源3の光軸Aから距離δだけ位置ズレした配置である。
【0037】
一方、指針6Bがプリズム7上面の中心に位置しているときには、別言すれば、指針部6の指針6Bが図6の6Bαに位置するとき、受光面6Dが光源3の直上に位置するように設定されており、最大光量で照明光を受光面6Dに入射させることができる。
【0038】
一方、指針6Bが6Bαから左右何れかの方向(図6では時計回り方向)に特定角度(例えば、ωγrad)回動したときには、この指針軸6Aの回動動作につられてヘッド6Cも一体に同角度(ωγ)だけ回動する。ところが、光源3の光軸Aに対して指針部6の指針軸6Aの軸線Bが、プリズム7の中央部を通過する光軸Aから半径方向に距離δだけ外周方向にシフトしている。このため、指針6Bが上記角度(ωγrad)だけ回動すると、受光面6Dは、この軌跡である円弧線Sに沿って中間位置γでの受光面位置6Dγに移動する。つまり、これは、プリズム7表面の中央部を通過する光軸Aから離れたことになるため、受光面位置6Dγでの受光面6Dへの入射光量は、その光軸Aから離れた分だけプリズム7表面の光軸A上での入射光量よりも減衰したものになる。また、受光面位置6Dγでの入射光量が減衰する分、指針6Bでの発光輝度も低下することになる。
【0039】
しかしながら、本実施形態には、プリズム7にセレーション部7Cが設けられており、受光面位置6Dγは、セレーション部7Cの領域に一部(図6ではほぼ半分)入り込んでこれと重なる配置となっている。従って、そのセレーション部7Cとの重なり領域では、セレーション部7Cの光量逓増機能により、光量がアップされる。これにより、受光面位置6Dγに位置する受光面6Dがプリズム7の中央部に位置する光軸Aから外れることによる光量低下を相殺させることができる。
【0040】
同様に、指針6Bが許容される最大角度(例えば、ωβrad)まで回動したときには、この指針6Bの回動動作につられてヘッド6Cも一体に同角度(ωβ)だけ回動する。その結果、最大位相位置βでの方位における受光面位置6Dβは、プリズム7の中央部の光軸Aからさらに離れたことになるため、受光面位置6Dβでの受光面6Dへの入射光量がさらに減衰することとなる。
【0041】
ところが、上述したように、本実施形態ではセレーション部7Cが設けられており、この受光面位置6Dβはセレーション部7Cの領域に受光面6Dの全域が入り込み、受光面位置6Dβがセレーション部7Cに含まれる配置となっている(図7も参照のこと)。このように、受光面6Dが全面でセレーション部7Cに重なることから、セレーション部7Cの光量逓増機能により、セレーション部7Cからの光量がさらにアップされる。これにより、受光面位置6Dβがプリズム7の中心位置から大きく外れることによる光量低下をうまく相殺させることができるわけである。
【0042】
なお、指針6Bの回動位置に連動して円弧線Sに沿って移動する受光面6Dと照明光の受光量との関係は、以下の[表1]に示す通りである。
【0043】
【表1】

【0044】
従って、本実施形態によれば、指針6Bがゼロ位相位置αから最も外れた最大位相位置βまで回動しても、受光面6Dにはゼロ位相位置αでの照明光の光量と略同等の光量を確保できる。つまり、指針6Bの回動位置が何れであってもほぼ均等の状態で、指針6Bの先まで発光照明させることができる。
【0045】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施し得るものである。例えば、本実施形態では、プリズム7から出射する照明光を受光する指針部6の受光面6Dが、指針軸6Aから視たときの指針6B寄りである前方側に設けてあるが、これに限定されるものではない。図8に記載してあるように、指針部6の受光面6Dは、指針軸6から視たときに指針6Bとは反対の後方側に設けた構成であってもよい。その場合であっても、プリズム7に設ける照明光逓増出射部(これを構成するセレーション部7C)の形状及び配置については、特に新たに変更などを加える必要はない。
【0046】
また、本発明の照明構造が適用されたメータ装置としては、例えば本実施形態のスピードメータ部の他に、例えば、タコメータ部、燃料計部、及び水温計等の各種計器類への適用が可能であり、特に大型メータ、即ち、指針が大きな角度範囲に亘って回動するようなタイプのものでも指針での輝度の均一化を図ることが可能となるので、便宜である。
【符号の説明】
【0047】
1 メータ装置
2 基板
3 光源
4 ムーブメント
5 表示板
5A 軸孔
6 指針部
6A 指針軸
6B 指針
6C ヘッド
6D 受光面
6Dα、6Dβ、6Dγ 受光面位置
7 プリズム
7A 貫通孔
7B 入射面
7C セレーション部
7D 照明光一般出射部
71 内側内部反射面
72 外側内部反射面
8 ケーシング
A 光軸
B 軸線
S 円弧線
α ゼロ位相位置
β 最大位相位置
γ 中間位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の表示板と、
指針と、指針軸と、前記指針及び前記指針軸に連結され、前記指針軸が連結された裏面において該指針軸とは異なる位置に受光面が設けられたヘッドを備え、前記指針が前記指針軸を中心に回動する指針部と、
表面が前記受光面に対向して配置されるとともに中央部を避けて前記指針軸によって貫通される、透光性材料で形成された光量調整素子と、
前記光量調整素子の裏面における前記中央部に照明光を出射する光源と、
前記光量調整素子及び前記表示板を貫通した前記指針軸を回動させる駆動手段と、
を備え、
前記光量調整素子は、前記受光面に対向する表面の、該光量調整素子を貫通する前記指針部が回動する際に前記受光面がその表面上を通過する領域に、該受光面と前記中央部との距離が離れるにつれて該光量調整素子の表面からの出射光量を逓増する照明光逓増出射部が形成されている、
ことを特徴とするメータ装置の照明構造。
【請求項2】
前記照明光逓増出射部は、前記光量調整素子の前記中央部から周縁部に向けて次第に傾斜角度が大きくなるように山の高さを高くした断面略山型形状、又は谷の深さを深くした断面略谷型形状の凹凸を多数連続的に設けたセレーション部で構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のメータ装置の照明構造。
【請求項3】
前記光量調整素子は、前記中央部の表面が凹状に窪んだすり鉢形状である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のメータ装置の照明構造。
【請求項4】
前記照明光逓増出射部は、前記中央部を中心とする略扇型形状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のメータ装置の照明構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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