説明

モノクローナル抗体

【課題】ヒト由来エンドセリン受容体タイプAに対する新規のモノクローナル抗体を提供する。
【解決手段】ヒト由来エンドセリン受容体タイプAに対するモノクローナル抗体であって、ヒト由来エンドセリン受容体タイプAの細胞外ループに反応し、ヒト由来エンドセリン受容体タイプAのN末端ドメイン、C末端ドメイン、及び細胞内ループのいずれにも反応しないモノクローナル抗体。前記細胞外ループドメインは、細胞外第2ループである構成、エンドセリン受容体とナチュラルリガンドとの結合を阻害することができる構成、エンドセリン受容体が有するナチュラルリガンド特異的なシグナル伝達を阻害することができる構成が推奨される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモノクローナル抗体に関し、さらに詳細には、ヒト由来エンドセリン受容体タイプAに対する新規のモノクローナル抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞表面上の膜受容体タンパク質は、細胞外の情報を細胞内へ伝達する極めて重要な働きをしている。そのため、膜受容タンパク質に結合する物質はアゴニスト型医薬品やアンタゴニスト型医薬として候補物質となる。膜受容体タンパク質の中でも特にGタンパク質共役型受容体(G protein-coupled receptor;GPCR)は、現在市販されている低分子医薬品の約半数がこの受容体を標的としているため、医薬品開発において極めて注目を集めている。また、GPCRの約半数が、生体内で機能しているナチュラルリガンドが同定されていないオーファンGPCRであり、ナチュラルリガンドやその類縁化合物が新規医薬品の候補物質として期待されていることから、オーファンGPCRに対するリガンドのスクリーニングが熾烈を極めている。
【0003】
GPCRは、細胞膜を7回貫通し、そのN末端を細胞外に、C末端を細胞内に向けて存在している。すなわち、GPCRの細胞外ドメインは、N末端ドメイン、細胞外第1ループ、細胞外第2ループ、および細胞外第3ループから構成されている。同様に、GPCRの細胞内ドメインは、細胞内第1ループ、細胞内第2ループ、細胞内第3ループ、およびC末端ドメインから構成されている。
【0004】
エンドセリン(endothelin;ET)は21個のアミノ酸残基からなるペプチドであり、強力な血管収縮作用を有することが知られている。エンドセリンにはET−1、ET−2、ET−3の3種類のアイソフォームが見出されている。一方、エンドセリンに特異的に結合する受容体がエンドセリン受容体(endothelin receptor)である。エンドセリン受容体にはエンドセリン受容体タイプA(ETAR)とエンドセリン受容体タイプB(ETBR)の2種類が見出されており、ETARはET−1とET−2に対する強い結合性を示し、ETBRは3種類のETに対して同程度の結合性を示す。
【0005】
エンドセリン受容体はGPCRの一種であり、細胞膜を7回貫通する構造を有している。ヒト由来エンドセリン受容体タイプA(以下、「hETAR」と略記することがある。)の1次構造はすでに解明されており、そのN末端ドメイン、各細胞外ドメイン、各細胞内ドメイン、およびC末端ドメインに相当する部位も特定されている。
【0006】
エンドセリン受容体のアンタゴニストは、エンドセリンが関与する種々の疾病の治療薬となる可能性があり、新規アンタゴニストの探索が盛んに行われている(例えば、特許文献1,2)。例えば、当該アンタゴニストは血管収縮を抑える作用を有することが予想され、心筋症の治療薬となる可能性がある。一方で、受容体に対する抗体をアンタゴニストとして応用することも一般に試みられており(アンタゴニスト抗体)、エンドセリン受容体に対する抗体が心筋症等の治療薬となる可能性もある。現在、ヒト由来エンドセリン受容体タイプAに対する抗体としては、ポリクローナル抗体がすでに取得され、一部は市販もされている。一方、モノクローナル抗体に関しては、hETARの1次構造のみを特異的に認識するものが取得されている(非特許文献1)。しかし、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体のいずれにおいても、hETARの細胞外ループを特異的に認識するものは取得されていない。したがって、hETARとナチュラルリガンド(ET−1、ET−2)との結合やシグナル伝達を阻害することができる抗体も取得されていない。
【0007】
【特許文献1】特開2001-64262号公報
【特許文献2】特開2004-43495号公報
【非特許文献1】バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochemical and Biophysical Research Communications),1992年,第187巻,第3号,p.1241−1248
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、新たな医薬品開発等に有用なヒト由来エンドセリン受容体タイプAに対する新規のモノクローナル抗体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、分子シャペロンの一種であるシャペロニンをコードする遺伝子とヒト由来エンドセリン受容体タイプAをコードする遺伝子との融合遺伝子を用いて、マウスに遺伝子免疫を施し、ヒト由来エンドセリン受容体タイプAに対する免疫応答を誘導した。そして、当該マウスの脾臓細胞とミエローマとを融合させてハイブリドーマの集団を作製し、hETARの細胞外ループを特異的に認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを検索した。その結果、1種のクローンを選抜することに成功した。そして、当該ハイブリドーマから所望のモノクローナル抗体を取得することに成功し、本発明を完成した。本発明の要旨は以下のとおりである。
【0010】
請求項1に記載の発明は、ヒト由来エンドセリン受容体タイプAに対するモノクローナル抗体であって、ヒト由来エンドセリン受容体タイプAの細胞外ループに反応し、ヒト由来エンドセリン受容体タイプAのN末端ドメイン、C末端ドメイン、及び細胞内ループのいずれにも反応しないモノクローナル抗体である。
【0011】
本発明のヒト由来エンドセリン受容体タイプAに対するモノクローナル抗体(以下、「抗hETARモノクローナル抗体」と略記することがある。)は、ヒト由来エンドセリン受容体タイプAの細胞外ループに特異的に反応するものであり、N末端ドメイン、C末端ドメイン、及び細胞内ループのいずれにも反応しない。本発明のモノクローナル抗体は、ヒト由来エンドセリン受容体タイプAの細胞外ループに関係する疾病の治療薬開発に有用である。また、本発明のモノクローナル抗体は、エンドセリン受容体タイプAの細胞外ループに関係する疾病の診断や、エンドセリン受容体タイプAの免疫測定法の構築にも有用である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記細胞外ループの立体構造を認識するものである請求項1に記載のモノクローナル抗体である。
【0013】
本発明のモノクローナル抗体は、細胞外ループの立体構造を認識するものである。換言すれば、細胞外ループの1次構造のみを認識するものではない。かかる構成により、hETARのアンタゴニスト抗体として特に好適なモノクローナル抗体が提供される。なお、立体構造を保持した細胞外ループは、天然(native)のhETAR(活性型hETAR)の細胞外ループが該当し、例えば、生きた細胞の表面上に存在する。
【0014】
前記細胞外ループドメインは、細胞外第2ループである構成が推奨される(請求項3)。
【0015】
マウス由来のものである構成(請求項4)、および以下の性質を有する構成(請求項5)が推奨される。
(a)サブクラス:IgG2a
(b)軽鎖:κ鎖
(c)ヒト由来エンドセリン受容体タイプAに反応し、マウス由来エンドセリン受容体タイプAとラット由来エンドセリン受容体タイプAのいずれにも実質的に反応しない。
【0016】
請求項6に記載の発明は、エンドセリン受容体とナチュラルリガンドとの結合を阻害することができる請求項1〜5のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体である。
【0017】
また請求項7に記載の発明は、エンドセリン受容体が有するナチュラルリガンド特異的なシグナル伝達を阻害することができる請求項1〜6のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体である。
【0018】
かかる構成により、ヒト由来エンドセリン受容体タイプAに対するアンタゴニストとして使用可能なモノクローナル抗体が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明のモノクローナル抗体は、ヒト由来エンドセリン受容体タイプAの細胞外ループに関係する疾病の治療薬開発に有用である。また、エンドセリン受容体タイプAの細胞外ループに関係する疾病の診断や、エンドセリン受容体タイプAの免疫測定法の構築にも有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0021】
まず、ヒト由来エンドセリン受容体タイプA(hETAR)の構造について説明する。
前述したように、hETARはGタンパク質共役型受容体(GPCR)の一種であり、細胞膜を7回貫通し、そのN末端を細胞外に、C末端を細胞内に向けて存在している。hETARをコードする遺伝子(cDNA)はすでに単離されており、hETARのアミノ酸配列も知られている。配列番号3にhETAR遺伝子の塩基配列と該塩基配列に対応するアミノ酸配列を、配列番号4にアミノ酸配列のみを示す。
【0022】
hETARの疎水性モデルにより一般的に考えられている構造によれば、hETARの各ドメインは、配列番号4に示すアミノ酸配列における以下の部分に相当する。左側がアミノ酸番号、右側が各ドメインである。なお、異種動物間で細胞外ドメイン(N末端ドメイン、細胞外第1ループ、細胞外第2ループ、細胞外第3ループ)のアミノ酸配列を比較すると、N末端ドメインの相同性は低く、各ループの相同性は高いことがわかっている。
【0023】
1〜 24:膜移行シグナルペプチド配列(発現後に切断・除去される)
25〜 80:N末端ドメイン
101〜119:細胞内第1ループ
141〜161:細胞外第1ループ
180〜205:細胞内第2ループ
225〜256:細胞外第2ループ
275〜310:細胞内第3ループ
332〜348:細胞外第3ループ
372〜427:C末端ドメイン
【0024】
本発明のモノクローナル抗体は、ヒト由来エンドセリン受容体タイプAに対するモノクローナル抗体であって、ヒト由来エンドセリン受容体タイプAの細胞外ループに反応し、ヒト由来エンドセリン受容体タイプAのN末端ドメイン、C末端ドメイン、及び細胞内ループのいずれにも反応しないものである。本発明のモノクローナル抗体を製造する方法としては、公知の方法をそのまま採用することができ、例えばケーラーとミルシュタインの細胞融合法を基礎として製造することができる。概説すれば、hETARに対する免疫応答が誘導されたマウス等の動物の脾臓細胞とミエローマとを融合してハイブリドーマの集団を作製し、該ハイブリドーマの集団から所望のモノクローナル抗体を産生するものを選抜する。そして、選抜したハイブリドーマを培養し、その培養物から所望のモノクローナル抗体を単離・精製することができる。
【0025】
hETARに対する免疫応答を誘導する方法としては、動物にhETAR(タンパク質)を接種する一般的なタンパク免疫の手法によってもよいが、動物にhETAR遺伝子を投与する遺伝子免疫の手法が好ましく用いられる。
【0026】
すなわち、hETARは膜タンパク質であるので、全長のhETARを免疫原として使用することは一般に難しい。そこで、タンパク免疫をもってhETARの細胞外ループに対する免疫応答を誘導したい場合には、細胞外ループのペプチドを免疫原として用いることとなる。しかし、細胞外ループは異種生物間で相同性が高いので、当該ペプチドを免疫原に用いても十分な免疫応答を誘導することができないことがある。結局、タンパク免疫によって細胞外ループに対する免疫応答を十分に誘導することは難しい。
【0027】
一方、遺伝子免疫によれば、hETARの全長をコードする遺伝子を用いることにより、全長のhETARを免疫原に用いたのと同様の状況を作り出すことができる。さらに、発現したhETARが動物体内で天然(native)の状態(活性型の状態)で存在できるので、hETARの立体構造に特異的な免疫応答を誘導することが可能となる。また遺伝子免疫の手法によれば、hETAR遺伝子さえ入手できれば行うことができ、精製されたhETARを準備する必要がない。
【0028】
ただしこの場合でも、hETARにおいては異種動物間でN末端ドメインの相同性が低いため、N末端ドメインに対する免疫応答が主として誘導されてしまうおそれがある。従来、hETARに対する抗体に関してN末端ドメインを認識するものしか取得されていないのは、これが原因の1つと考えられる。そこで、より好ましくは、動物に接種する遺伝子として、シャペロニンをコードする遺伝子とhETARをコードする遺伝子との融合遺伝子を用いる。当該融合遺伝子を免疫原として用いることにより、hETAR遺伝子を単独で用いる場合よりも細胞外ループに対する免疫応答をより選択的に誘導することができる。当該融合遺伝子を用いた遺伝子免疫の方法については、国際公開第2006/041157号パンフレットにその詳細が記載されている。
【0029】
シャペロニンは分子シャペロンの一種であり、バクテリア、古細菌、真核生物等の全ての生物に存在している。特に、バクテリアの細胞質、真核細胞のミトコンドリア、葉緑体に多量に存在している。シャペロニンは、タンパク質の折り畳みを促進する活性やタンパク質の変性を阻止する活性を有する。シャペロニンは、分子量約6万のシャペロニンサブユニット(HSP60ともいう)7〜9個からなるリング状構造体が2個重なった、総分子量80万〜100万程度のシリンダー状の巨大な複合タンパク質である。シャペロニンはそのリング状構造体の内部に空洞を有しており、その空洞内に折り畳み途中のタンパク質や変性したタンパク質を一時的に収納して複合体を形成する。そして、空洞内で収納したタンパク質を正しく折り畳み、続いて空洞から正しく折り畳まれたタンパク質を放出することが知られている。
【0030】
シャペロニンは、バクテリアや真核生物のオルガネラにみられるグループI型と、真核生物や古細菌にみられるグループII型に分類される。本発明のモノクローナル抗体を製造する際に行う遺伝子免疫において、前記した融合遺伝子を用いる場合には、グループI型とグループII型のいずれのシャペロニン遺伝子を採用してもよい。グループI型シャペロニンの代表例としては、大腸菌由来のGroELが挙げられる。グループII型シャペロニンの代表例としては、古細菌由来のTCPが挙げられる。GroELサブユニットをコードする遺伝子の塩基配列を配列番号8に示す。
【0031】
ここで「シャペロニンをコードする遺伝子(シャペロニン遺伝子)」には、シャペロニンサブユニットをコードする遺伝子(シャペロニンサブユニット遺伝子)に加え、複数のシャペロニンサブユニットがタンデムに連結された「シャペロニンサブユニット連結体」をコードする遺伝子を含む。シャペロニンサブユニット連結体をコードする遺伝子は、複数のシャペロニンサブユニット遺伝子がタンデムに連結された遺伝子と同じである。なお、シャペロニンサブユニット連結体は、天然のシャペロニンと同様のリング状構造体を形成することができる。
【0032】
前記融合遺伝子の作製方法としては、例えば、hETAR遺伝子とシャペロニン遺伝子とをライゲーション反応によって連結すればよい。なお、融合遺伝子を動物に投与する際には、融合遺伝子が発現ベクターに組み込まれ、プロモーターの制御下にある状態で投与することが好ましい。発現ベクターの例としては、pCI、pSI、pAdVantage、pTriEX、pKA1、pCDM8、pSが挙げられる。また、発現ベクター上のプロモーターの例としては、CMVプロモーター、AMLプロモーター、SV40プロモーター、SRαプロモーター、EF−1αプロモーター等が挙げられる。さらに、発現ベクターには、プロモーター活性を増強するエンハンサーを含めてもよい。またさらに、発現ベクターには、CpGモチーフを含めてもよい。
【0033】
融合遺伝子を動物に投与する方法としては、例えば、皮下注射、筋肉注射、静脈注射等が挙げられる。またパーティクルガンによる投与も適用可能である。また投与量としては、用いる発現ベクターやプロモーターの種類等に応じて適宜決定すればよいが、1回当たりおおむね1〜3mg/kg体重で、これはマウスの場合は25〜100μg/回になる。また投与の回数は、1回でもよいが、一定間隔をおいて複数回行う方がより高い免疫応答を誘導することができる。
【0034】
なお、タンパク免疫によって動物に免疫応答を誘導する場合には、一般的に行われている方法をそのまま採用することができる。例えば、精製したhETARを用意し、アジュバントとの混合液を調製する。この混合液をマウス等に皮下注射し、hETARに対する免疫応答を誘導する。必要に応じて、間隔をあけて複数回投与し、追加免疫してもよい。
【0035】
免疫される動物としては特に限定はないが、好ましくは、マウスが用いられる。これにより、マウス由来のモノクローナル抗体を得ることができる。
【0036】
ハイブリドーマの作製は、ケーラーとミルシュタインの方法によって行うことができる。すなわち、上記した手順で遺伝子免疫あるいはタンパク免疫され、hETARに対する免疫応答が誘導された動物から脾臓を摘出し、脾臓細胞を採取する。そして、脾臓細胞とミエローマとを細胞融合し、ハイブリドーマの集団を作製する。ハイブリドーマの選抜は、例えば、HAT選択培地を用いて行うことができる。また、ハイブリドーマのクローニングは、例えば、限界希釈法により行うことができる。このようにして、hETARの細胞外ループに反応し、hETARのN末端ドメイン、C末端ドメイン、及び細胞内ループのいずれにも反応しない抗hETARモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選抜ならびにクローニングすればよい。
【0037】
そして、選抜ならびにクローニングされたハイブリドーマを培養することにより、前記の性質を有する抗hETARモノクローナル抗体を製造することができる。ハイブリドーマの培養は、動物の腹腔内で行ってもよく、ディッシュ等を用いてインビトロで行ってもよい。動物の腹腔内でハイブリドーマを培養する場合には、腹水を採取し、その腹水からモノクローナル抗体を単離・精製することができる。インビトロで培養する場合には、その培養液からモノクローナル抗体を単離・精製することができる。
【0038】
モノクローナル抗体の精製については、各種クロマトグラフィー、塩析、透析、膜分離等の公知の手法を組み合わせて行うことができる。モノクローナル抗体のサブクラスがIgGである場合には、プロテインAを用いたアフィニティクロマトグラフィーによって簡便に精製することもできる。
【0039】
本発明のモノクローナル抗体は、種々の用途に使用できる。例えば、hETARに対するアンタゴニストとして、医薬品開発に応用することができる。すなわち、hETARが有するナチュラルリガンド特異的なシグナル伝達を阻害することにより、血管収縮を抑え、心筋症治療や高血圧症治療に応用することができる。また、本発明のモノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)の構造を特定し、キメラ化あるいはヒト化すれば、より安全性が高い医薬品とすることができる。また本発明のモノクローナル抗体は、低分子医薬のスクリーニング用試薬、心筋症・高血圧症検査試薬、組織切片・細胞等を用いたETAR局在検証用研究試薬、組換えETAR発現細胞調製用検査試薬、ETARの結晶構造解析用研究試薬、等の用途にも使用できる。
【0040】
以下に実施例を掲げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
(1)ヒト由来エンドセリン受容体タイプA遺伝子の単離
ヒト肺cDNAライブラリー(タカラバイオ社)を鋳型とし、配列番号1及び2に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行い、配列番号3に示す塩基配列を有するヒト由来エンドセリン受容体タイプA(hETAR)遺伝子を含むDNA断片(以下、「DNA断片A」と称する。)を増幅した。DNA断片Aには、プライマーに由来して、5’末端にNheIサイト、3’末端にSalIサイトが導入された。また、同様にして配列番号1及び5に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行い、配列番号3に示す塩基配列を有するhETAR遺伝子を含むDNA断片(以下、「DNA断片B」と称する。)を増幅した。DNA断片Bには、プライマーに由来して、5’末端にNheIサイト、3’末端に2個の停止コドン(TAATAG)をコードする配列及びSalIサイトが導入された。
【0042】
(2)GroELサブユニット遺伝子の単離
大腸菌HMS174(DE3)株(ノバジェン社)からゲノムDNAを抽出・精製した。次に、精製したゲノムDNAを鋳型とし、配列番号6及び7に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行い、配列番号8に示す塩基配列を有するGroELサブユニット遺伝子を含むDNA断片(以下、「DNA断片C」と称する。)を増幅した。DNA断片Cには、プライマーに由来して、5’末端にSalIサイト、3’末端に2個の停止コドン(TAATAG)をコードする配列及びNotIサイトが導入された。
【0043】
(3)ヒト由来エンドセリン受容体タイプAとGroELサブユニットとの融合タンパク質を発現する遺伝子免疫用ベクターの構築
哺乳動物発現ベクターpCI Mammalian Expression Vector(プロメガ社)を制限酵素NheIとSalIで消化し、バクテリア由来アルカリフォスファターゼ(BAP)にて末端を脱リン酸化処理した後、上記(1)で調製したDNA断片Aを挿入した。さらに、この発現ベクターをSalIおよびNotIで消化し、BAPにて末端を脱リン酸化処理した後、上記(2)で調製したDNA断片Cを挿入し、ベクターpCI−hETAR・GroELを構築した。すなわち、ベクターpCI−hETAR・GroELは、hETARをコードする遺伝子とGroELサブユニットをコードする遺伝子との融合遺伝子を有している。一方、同様にして、哺乳動物発現ベクターpCI Mammalian Expression Vectorを制限酵素NheIとSalIで消化し、BAPにて末端を脱リン酸化処理した後、上記(1)で調製したDNA断片Bを挿入し、ベクターpCI−hETARを構築した。すなわち、ベクターpCI−hETARはhETAR遺伝子のみを有している。
【0044】
(4)ヒト由来エンドセリン受容体タイプA安定発現細胞及びヒト由来エンドセリン受容体タイプB安定発現細胞の作製
(3)で構築したpCI−hETAR・GroELを鋳型とし、配列番号1及び5に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行い、hETAR遺伝子を含むDNA断片を得た。このDNA断片をpCIneo(Promega社)のNheI−XhoIサイトに導入し、pCIneo−hETARを構築した。一方、ヒト胎盤cDNAライブラリー(タカラバイオ社)を鋳型とし、配列番号9及び10に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行い、ヒト由来エンドセリン受容体タイプB(hETBR)遺伝子(配列番号11)を含むDNA断片を得た。このDNA断片をpCIneoのNheI−XhoIサイトに導入し、pCIneo−hETBRを構築した。
【0045】
Lipofectamin溶液37.5μLと、OPTI−MEMI培地625μLと、20μgのpCIneo−hETARを含むOPTI―MEMI培地625μLとを混和した。この混和液を用いて、pCIneo−hETARを2×105個のCHO−K1細胞(大日本製薬社)に導入した。同様の手順で、pCIneo−hETBRをCHO−K1細胞に導入した。対照として、pCIneo1のみをCHO−K1細胞に導入した。遺伝子が導入された各CHO−K1細胞を、Ham’sF12K+10%FBS培地(ICN社)にて30時間培養した。さらに、各細胞を剥離、懸濁し、100mmディッシュに5×105個を播き、抗生物質G418(プロメガ社)を0.8mg/mLの濃度で含有するHam’sF12K+10%FBS培地で2週間薬剤処理を行なった。薬剤処理後、限界希釈法により、抗生物質耐性細胞をクローニングした。クローニングした各CHO−K1細胞を、さらに、2×104個/100μLの初期細胞濃度にて、96穴マイクロタイタープレートを用いて一昼夜培養した。培養終了後、10-6〜10-12Mの濃度範囲内のET―1(ペプチド研究所)によって各細胞を刺激したところ、細胞内のCa2+濃度が一過的に上昇した。Ca2+濃度は、Ca2+シグナル解析装置(FLIPR;Molecular Devices社)及び細胞内Ca2+染色キット(Ca3kit;Molecular Devices社)を用いて測定した。このことから、活性型hETARと活性型hETBRのいずれもが、CHO−K1細胞膜上に正常に安定発現していることがわかった。
【0046】
(5)遺伝子免疫
生理食塩水にベクターpCI−hETAR・GroELを250μg/mLの濃度になるよう溶解し、免疫用組成物を調製した。この免疫用組成物を、8週齢のマウスBALB/c(雌)の両足大腿筋に各0.12mLずつ注射を行い、免疫した(0日目)。これにより、pCI−hETAR・GroELを両足に各30μgずつ、すなわち、1匹につき1回あたり60μg投与した。その後、7日目、21日目、及び28日目にも同様して繰り返し免疫した。そして、0、7、14、21、28、35、42日目に採血を行い、血清を調製した。対照として、hETARを単独で発現するベクターpCI−hETARを用いてマウスを免疫した。
【0047】
(6)フローサイトメトリーによる活性型hETARに対する血清中抗体結合性評価
pCIneo−hETARが導入され安定発現を確認したCHO−K1細胞(以下、「hETAR遺伝子導入細胞」と称する。)、pCIneo−hETBRが導入され安定発現を確認したCHO−K1細胞(以下、「hETBR遺伝子導入細胞」と称する。)、及び、pCIneoが導入されたCHO−K1細胞(対照の細胞)をPBSで洗浄した。免疫後35日目の血清を500倍希釈し、各細胞と一緒にインキュベートした。さらに、各細胞をPBSで洗浄し、2次抗体としてフィコエリスリン標識抗マウスIgG抗体(ベックマンコールター社)を添加した後、フローサイトメーターFACScalibur(ベクトンディッキンソン社)を用いて、各細胞と血清中の抗hETAR抗体との相互作用を解析した。
【0048】
その結果、hETAR遺伝子導入細胞を用いた場合は、遺伝子免疫前の血清ではフィコエリスリンがほとんど検出されなかったが、遺伝子免疫後の血清では検出された。これは、免疫後の血清中の抗hETAR抗体がhETAR遺伝子導入細胞に結合することを示していた。一方、hETBR遺伝子導入細胞を用いた場合は、遺伝子免疫後の血清でもフィコエリスリンが検出されなかった。これは、免疫後の血清中の抗hETAR抗体がhETBR遺伝子導入細胞に結合しないことを示していた。なお、対照の細胞を用いた場合も、遺伝子免疫後の血清でもフィコエリスリンが検出されなかった。これは、免疫後の血清中の抗hETAR抗体が対照の細胞に結合しないことを示していた。
以上のことから、ベクターpCI−hETAR・GroELによる遺伝子免疫によって、マウス血清中に活性型hETARの細胞外ドメインを特異的に認識する抗体の産生を誘導することができた。
【0049】
(7)抗hETARモノクローナル抗体の作製
上記(5)と同様の手順で遺伝子免疫したマウス6匹に対して追加免疫を行った。追加免疫の3日後に脾臓を摘出し、脾細胞を調製した。PEG法により、1×108個の脾細胞と、1×107個のBALB/Cマウス由来のHAT選択性のミエローマSP2/0細胞とを融合した(細胞融合)。融合した細胞(ハイブリドーマ)の集団をRPMI培地に懸濁し、96穴マイクロプレート14枚の各穴に播種した。この段階で、約990種のハイブリドーマが得られた。
【0050】
細胞融合の翌日から2週間、3日に1度の頻度で、上記マイクロプレート内の培地をHAT Media Supplement(50×)(Sigma社、品番:H0262)を添加したRPMI培地に置き換えた。
【0051】
上記(6)と同様のフローサイトメトリーによって抗体結合評価を行い、hETAR遺伝子導入細胞と各穴のハイブリドーマ培養上清中の抗体との結合性を調べた。その結果、4穴において抗体との結合性が確認された。
【0052】
抗体との結合性が確認された4種のハイブリドーマについて、限界希釈法によるクローニングを行った。すなわち、4種のハイブリドーマについて96穴マイクロプレートに細胞1個以下/穴になるように播種し、培養した。2週間後、同様のフローサイトメトリーを行い、クローニングされた培養上清中の抗体(抗hETARモノクローナル抗体)の結合性を確認した。その結果、抗hETARモノクローナル抗体を産生する4種のハイブリドーマがクローニングされた。
【0053】
各ハイブリドーマについてRPMI培地100mL内でフラスコ培養を2週間行った。各培養上清を、プロテインGカラム(アマシャムバイオサイエンス社)に供して精製・濃縮し、精製された4種の抗hETARモノクローナル抗体を各々約2mg得た。
【0054】
各々の抗hETARモノクローナル抗体について、以下に示す試験を行った。それらの結果から、所望の性質を有する抗hETARモノクローナル抗体を1種選抜した(クローン番号hA21)。以下、クローン番号hA21の抗hETARモノクローナル抗体(以下、単に「hA21」と略記することがある。)を代表として、試験の手順と結果を順次示す。
【0055】
(8)フローサイトメトリーによるhETARに対する結合性評価
10μg/mL濃度のhA21のPBS溶液(以下、「hA21溶液」と称する。)を調製した。一方、hETAR遺伝子導入細胞、hETBR遺伝子導入細胞、および対照の細胞をそれぞれPBSで洗浄した後、hA21溶液を各細胞と共にインキュベートした。さらに、各細胞をPBSで洗浄し、2次抗体としてフィコエリスリン標識抗マウスIgG抗体(ベックマンコールター社)を添加した後、フローサイトメーターFACScalibur(ベクトンディッキンソン社)を用いて、各細胞とhA21との相互作用を解析した。結果を図1〜3に示す。図1はhETAR遺伝子導入細胞とhA21との相互作用の解析結果を表すヒストグラムである。図2はhETBR遺伝子導入細胞とhA21との相互作用の解析結果を表すヒストグラムである。図3は対照の細胞とhA21との相互作用の解析結果を表すヒストグラムである。図1〜3において、縦軸は細胞数、横軸はフィコエリスリン(PE)由来の蛍光強度を表す。また、2つのエリア(M1、M2)のうち、M2(右領域)に属する細胞がhA21と結合した細胞を表す。
【0056】
その結果、hETAR遺伝子導入細胞を用いた場合は、M2のエリアに多くの細胞が検出された(図1)。これは、hA21がhETAR遺伝子導入細胞に結合することを示していた。一方、hETBR遺伝子導入細胞を用いた場合(図2)と対照の細胞を用いた場合(図3)は、M2のエリアにはほとんど細胞が検出されなかった。これは、hA21がhETBR遺伝子導入細胞と対照の細胞のいずれにも結合しないことを示していた。以上のことから、hA21が活性型hETARの細胞外ドメインを特異的に認識するものであることが示された。
【0057】
(9)免疫学的細胞染色よるhETARに対する結合性評価
hETAR遺伝子導入細胞ならびにhETAR遺伝子導入細胞を、カバーガラスを入れた6穴プレートに播種し、培養した。細胞が接着増殖したことを確認した後、カバーガラスを4%パラホルムアルデヒド/PBS溶液に浸漬して細胞を固定化し、サポニンにより細胞膜透過処理を行った。その後、カバーガラスをhA21溶液と共にインキュベートした。さらに、カバーガラスをPBSで洗浄し、2次抗体としてフィコエリスリン標識抗マウスIgG抗体(ベックマンコールター社)を添加した後、蛍光顕微鏡(オリンパス社)を用いて観察し、各細胞とhA21との相互作用を解析した。結果を図4(a)(b)及び図5(a)(b)に示す。図4はhA21溶液と共にインキュベートしたhETAR遺伝子導入細胞を蛍光顕微鏡で観察した結果を表す写真であり、(a)は微分干渉画像、(b)は蛍光顕微鏡画像である。図5はhA21溶液と共にインキュベートしたhETBR遺伝子導入細胞を蛍光顕微鏡で観察した結果を表す写真であり、(a)は微分干渉画像、(b)は蛍光顕微鏡画像である。図4,5において、蛍光が検出された箇所が、細胞上でhA21が結合した箇所である。図4,5中に示したスケールバーは100μmを示す。
【0058】
図4(b)に示すように、細胞膜上に発現しているhETAR遺伝子導入細胞を用いた場合には蛍光が検出され、細胞膜上にhA21が結合していた。一方、hETBR遺伝子導入細胞を用いた場合には、蛍光は検出されず、細胞膜上にhA21が結合していなかった。以上より、免疫学的細胞染色によっても、hA21が細胞上に発現したhETAR(細胞外ドメイン)に特異的に結合することが示された。
【0059】
(10)エピトープ解析
配列番号4に示すアミノ酸配列の以下の4つの枠内で3アミノ酸残基ずつずらし、15アミノ酸残基からなるペプチドを計60種作製した。
・配列番号4のアミノ酸番号25〜96(N末端ドメインを包含する枠):ペプチド番号1〜20
・配列番号4のアミノ酸番号128〜175(細胞外第1ループを包含する枠):ペプチド番号25〜36
・配列番号4のアミノ酸番号210〜272(細胞外第2ループを包含する枠):ペプチド番号37〜53
・配列番号4のアミノ酸番号312〜356(細胞外第3ループを包含する枠):ペプチド番号61〜71
【0060】
作製した各ペプチドをガラスアレイ上に固相化した。このガラスアレイを、ラット血清でブロッキングした後、hA21溶液と共にインキュベートした。さらに、2次抗体としてCy5標識抗マウスIgGラット抗体(JacksonImmunoReseach社)を添加した後、蛍光スライドスキャナーGenepix4200A(AxsonInstruments社)を用いて、各ペプチドとhA21との相互作用を解析した。結果を図6に示す。図6において、縦軸は蛍光強度、横軸は各ペプチドの番号を表す。図6に示すように、hA21は細胞外第2ループの一部に相当する42番と43番のペプチドにのみ強く結合した(図6の丸囲み部分)。42番のペプチドは配列番号4のアミノ酸番号225(Val)〜239(Cys)、43番のペプチドはアミノ酸番号228(Pro)〜242(Asn)の部分に相当し、いずれも細胞外第2ループ(アミノ酸番号225〜256)の一部を構成するものであった。以上より、hA21がhETARの細胞外第2ループを特異的に認識することがわかった。
【0061】
(11)細胞内Ca2+シグナル伝達阻害活性評価
hETAR遺伝子導入細胞を、2×104個/100μLの初期細胞濃度にて、96穴マイクロタイタープレートを用いて一昼夜培養した。培養終了後、各穴に10-6〜10-12Mの濃度範囲内のhA21を添加した。また対照として、マウスIgG(ピアス社、陰性対照)又はペプチド性アンタゴニストBQ123(TOCRIS社、陽性対照)を同様に10-6〜10-12Mの濃度範囲内で添加したものも調製した。1時間後、1×10-8MのエンドセリンET−1(ペプチド研究所)によって各細胞を刺激した際の細胞内Ca2+濃度の一過的上昇の抗体濃度依存的減少度を測定した。Ca2+濃度の測定は、Ca2+シグナル解析装置(FLIPR;Molecular Devices社)及び細胞内Ca染色キット(Ca3kit;Molecular Devices社)を用いて行った。結果を図7に示す。図7は細胞内Ca2+濃度と各添加物の濃度との関係を表すグラフである。図7に示すように、hA21を添加した場合には、BQ123と添加した場合と同様に細胞内Ca2+濃度の低下がみられた。これは、hA21がエンドセリンET−1とhETARとの結合を競合的に阻害した結果、細胞内へのシグナル伝達が阻害されたことを示していた。50%阻害濃度(IC50)を算出すると、hA21では1.708×10-7M、BQ123では2.807×10-8Mであった。
以上より、hA21が、hETARが有するナチュラルリガンド特異的なシグナル伝達を阻害できることが示された。
【0062】
(12)アイソタイプ解析
マウスモノクローナル抗体アイソタイピングキット(GEヘルスケア社)を用いて、hA21のアイソタイプを決定した。検出はホースラディッシュペルオキシダーゼ標識マウスIgG抗体を用いたサンドイッチELISAによった。結果を図8に示す。図8(a)は対照の結果を表す写真、図8(b)はhA21の結果を表す写真である。図8(b)に示すように、hA21のサブクラスはIgG2a、軽鎖はκ鎖であった(矢印参照)。
【0063】
(13)異種ETARに対する結合性評価
上記(1)〜(6)と同様にして「mETAR遺伝子導入細胞」と「rETAR遺伝子導入細胞」を作製した。これらの細胞を用い、上記(8)と同様のフローサイトメトリーにて、hA21のmETARとrETARに対する結合性を評価した。結果を図9に示す。図9(a)はmETAR遺伝子導入細胞とhA21との相互作用の解析結果を表すヒストグラム、図9(b)はrETAR遺伝子導入細胞とhA21との相互作用の解析結果を表すヒストグラムである。すなわち、いずれの細胞を用いた場合でも、M2のエリアにはほとんど細胞が検出されなかった。これは、hA21がmETAR遺伝子導入細胞とrETAR遺伝子導入細胞のいずれにも結合しないことを示していた。なおrETAR遺伝子導入細胞を用いた場合(図9(b))は、mETAR遺伝子導入細胞を用いた場合(図9(a))よりもM2のエリアに検出された細胞数が多かったが、実質的には結合していないと呼べるレベルであった。以上より、hA21はhETARに対して特異的に反応するが、mETARとrETARのいずれにも実質的に反応しないことが示された。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】hETAR遺伝子導入細胞とhA21との相互作用の解析結果を表すヒストグラムである。
【図2】hETBR遺伝子導入細胞とhA21との相互作用の解析結果を表すヒストグラムである。
【図3】対照の細胞とhA21との相互作用の解析結果を表すヒストグラムである。
【図4】hA21溶液と共にインキュベートしたhETAR遺伝子導入細胞を蛍光顕微鏡で観察した結果を表す写真であり、(a)は微分干渉画像、(b)は蛍光顕微鏡画像である。
【図5】hA21溶液と共にインキュベートしたhETBR遺伝子導入細胞を蛍光顕微鏡で観察した結果を表す写真であり、(a)は微分干渉画像、(b)は蛍光顕微鏡画像である。
【図6】エピトープ解析の結果を表すグラフである。
【図7】細胞内Ca2+濃度と各添加物の濃度との関係を表すグラフである。
【図8】アイソタイプ解析の結果を表す写真であり、(a)は対照の結果、(b)はhA21の結果を表す。
【図9】(a)はmETAR遺伝子導入細胞とhA21との相互作用の解析結果を表すヒストグラム、(b)はrETAR遺伝子導入細胞とhA21との相互作用の解析結果を表すヒストグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト由来エンドセリン受容体タイプAに対するモノクローナル抗体であって、ヒト由来エンドセリン受容体タイプAの細胞外ループに反応し、ヒト由来エンドセリン受容体タイプAのN末端ドメイン、C末端ドメイン、及び細胞内ループのいずれにも反応しないモノクローナル抗体。
【請求項2】
前記細胞外ループの立体構造を認識するものである請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項3】
前記細胞外ループドメインは、細胞外第2ループである請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体。
【請求項4】
マウス由来のものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体。
【請求項5】
以下の性質を有する請求項4に記載のモノクローナル抗体。
(a)サブクラス:IgG2a
(b)軽鎖:κ鎖
(c)ヒト由来エンドセリン受容体タイプAに反応し、マウス由来エンドセリン受容体タイプAとラット由来エンドセリン受容体タイプAのいずれにも実質的に反応しない。
【請求項6】
エンドセリン受容体とナチュラルリガンドとの結合を阻害することができる請求項1〜5のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体。
【請求項7】
エンドセリン受容体が有するナチュラルリガンド特異的なシグナル伝達を阻害することができる請求項1〜6のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−280266(P2008−280266A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124283(P2007−124283)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】