説明

モノレール分岐器の浮き上がり防止装置

【課題】 モノレール車両の分岐器において、水平震度が大きな(例えば、0.9G)地震荷重が作用しても分岐器の転倒を防ぐことができ、さらに、既存の分岐器に取付け可能な構造であるモノレール分岐器の浮き上がり防止装置を提供することにある。
【解決手段】 分岐桁1を載せた台車2の移動方向の前後端に水平方向に突出する受け座7a、7bがあり、台車2の始端停止位置で前記受け座7a、7bにかぶさる第2のストッパーが設けられる。終端停止位置の前後端の受け座7a、7bに対応して、第2のストッパー9a,9dがあり、受け座7a,7bを覆う。このため、大きな水平地震荷重が掛かっても分岐桁1の転倒を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐震仕様によるモノレール分岐器の浮き上がり防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術のモノレール分岐器は、特許文献1に示すように、モノレール車両が走行する分岐桁と、該分岐桁を支持する台車と、該台車を載せたレールと、からなる。
地震による水平振動で台車が移動しないようにするために、レールを有する地面側に設けた案内溝に、台車から案内腕(ころ)を嵌合して、位置決めを行うようにしている。
【特許文献1】特公昭60−6401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
平成7年の兵庫県南部地震により、地震に対する設計条件の見直しが行われ、平成8年12月に道路橋示方書が改訂され、地震荷重が水平震度0.2Gから0.9Gへと大幅に厳しくなった。
前記従来の固定装置は、従来の設計水平荷重0.2Gで設計されており、前述した地震荷重が作用した場合、ころが案内溝から抜け出し、分岐桁が転倒する恐れが生じる。このため、浮き上がり防止装置を設ける必要がある。
【0004】
また、既に従来仕様の分岐器(既存の分岐器)が多数設置されていることから、該浮き上がり防止装置は、既存の分岐器にも現地工事により簡単に設置できる構造でなければならない。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、水平震度が大きな(例えば、0.9G)地震荷重が作用しても分岐器の転倒を防ぐことができ、さらに、従来のモノレール分岐器に取付け可能な構造であるモノレール分岐器の浮き上がり防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、モノレール車両が走行する分岐器において、各分岐桁を支持する各台車にあり、前記台車が走行するレールを設置したベースの穴に挿入するものであって、前記台車に設置した第1のストッパーと、前記台車の進行方向の前後端部において、水平方向に突出させた受け座と、前記台車が走行するレールを設置したベースに設置されていて、前記台車がその停止位置に位置したとき、前記受け座にかぶさる第2のストッパーと、からなること、を特徴とするモノレール分岐器の浮き上がり防止装置を構成することによって達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施例を図1〜4によって説明する。分岐桁は複数の分岐桁を直列接続しているが、図面では1つの分岐桁(連結部の分岐桁)の台車の平面図、側面図を示す。
【0008】
分岐桁1は、従来同様に直列に複数連結してあり、各分岐桁1はそれぞれ台車2に載っている。各台車2は、ベース4上のレール6に沿って所定距離移動する。台車2は始端と終端との間を走行する。
【0009】
分岐桁1を載せた台車2は、ベース4に固定されたレール6の上を水平移動し、直線状態(図1)及び曲線状態(図2)に進路を構成する。
台車2には、第1のストッパー(ロックシリンダー)5が取付けられており、各々の停止位置において、第1のストッパー5の頭部をベース4に設けたロック穴3aに押し込むことにより、分岐桁1と地上側すなわちベースとを機械的に締結する。第1のストッパー5は走行方向に対して台車2の側方面に固定されている。第1のストッパー5を構成するロックシリンダーは、垂直方向に伸縮する。第1のストッパー5は、そのロックシリンダーの伸縮軸の先端部分がロック穴に挿入される。
台車2が終端に停止した場合(図2に示した状態)は、第1のストッパー5はロック穴3bに挿入される。
【0010】
また、浮き上がり防止装置は、分岐桁1を支持する台車2の下部に取付けた受け座7(7a,7b)と、ベース4に取付けられ、前記受け座7にかぶさることができる第2のストッパー9(9a,9b,9c,9d)と、第2のストッパー9を支えるストッパー支え8(8a,8b,8c,8d)とからなる。ストッパー支え8は各第2のストッパー9の下方にあるが、図4では第2のストッパー9a,9cを示しているので、ストッパー支えも8a、8cのみを示している。
【0011】
受け座7(7a,7b)は、台車2の水平方向に突出している。第2のストッパー9(9a,9b,9c,9d)は、受け座7の上部を覆うものである。第2のストッパー9は、台車2が始端に停止したとき、その始端側の受け座7aにかぶさる。水平地震力で分岐桁1(台車2を含む)に上揚力が作用した場合に、受け座7aが第2のストッパー9aに掛り、分岐桁1(台車2を含む)の転倒を防ぐことができる。それぞれの第2のストッパー9に掛かる受け座7aまたは7bは、台車2の停止位置によって異なる。
【0012】
受け座7aは、台車2の前端部に取付けられており、受け座7bは台車2の後端部(終端部)に取付けられている。台車2は始端と終端に停止し、第1のストッパー5の頭部がロック穴3aまたは3bに挿入される。このように台車2は、始端、終端間を移動し、第1のストッパー5で固定される。このため、始端の位置で前端部側の受け座7aに掛かるストッパーは、第2のストッパー9aであるが、終端の位置で受け座7bに掛かるストッパーは、第2のストッパー9bである。これでは各停止位置で受け座7を保持する第2のストッパー9は1つしかないので、大きな水平荷重が作用した際に、分岐桁1の転倒を防止しきれない恐れがある。
【0013】
このため、台車2の各停止点で前後端を押える第2のストッパー9が必要である。そこで、始端の停止位置(図1に示す)で、受け座7aを押える第2のストッパー9aと、後端側の受け座7bを押える第2のストッパー9dを設けている。
【0014】
また、終端の停止位置で後端側の受け座7bを押える第2のストッパー9bと、このとき、前端側の受け座7aを押える第2のストッパー9cを設けている。
【0015】
受け座7a,7bは台車2の移動方向(前後方向)に沿って突出している。また、受け座7a,7bは台車2の移動方向に沿って側方にも突出している。第2のストッパー9c、9dは台車2の移動方向に対して側方にある。なお、台車2が移動することによって受け座7a、7bが第2のスットッパー9a、9b、9c、9dの下方に入る。受け座7とストッパー9との間には、通常転換では干渉しないよう適当な隙間が設けてある。
【0016】
このため、ストッパー支え8aと第2のストッパー9aとの間にライナー10aを挿入し、受け座7と第2のストッパー9との間に隙間を確保する。第2のストッパー9c、9dは台車2の移動方向に対して一方の側面のみに設けているが、第1のストッパー5に影響を与えない位置であれば、他方の側面にも設置しても良い。
これによれば従来の分岐器(既存の分岐器)にも第2のストッパーを溶接によってベースに溶接すれば、大地震にも対応できる。
【0017】
従来の分岐器(既存の分岐器)は、ベース4の上面から建築限界11までのスペースが狭く設計されていることから、受け座7、ストッパー支え8、第2のストッパー9の取付けスペースが限られる。したがって、台車2の移動方向に対して側方に第2のスットッパー9c、9dを設け、装置の小型化を図る。
これによれば、既存の分岐器にも容易に設置できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】台車の直線転換状態における平面図。
【図2】台車の曲線転換状態における平面図。
【図3】台車の側面図。
【図4】図3の正面から見た図。
【符号の説明】
【0019】
1:分岐桁
2:台車
3a、3b:ロック穴(直線状態、台車の始端停止位置のロック溝)
4:ベース
5:第の1ストッパー
6:レール
7a、7b:受け座
9a、9b、9c、9d:第2のストッパー
11:建築限界

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノレール車両が走行する分岐器において、
各分岐桁を支持する各台車にあり、台車が走行するレールを設置したベースの穴に挿入するものであって、前記台車に設置した第1のストッパーと、前記台車の進行方向の前後端部において、水平方向に突出させた受け座と、前記台車が走行するレールを設置したベースに設置されていて、前記台車がその停止位置に位置したとき、前記受け座にかぶさる第2のストッパーと、からなること、
を特徴とするモノレール分岐器の浮き上がり防止装置。
【請求項2】
請求項1の浮き上がり防止装置において、
前記第2のストッパーは、前記台車の停止位置のそれぞれにおいて、前記台車の前後端に設置した受け座にそれぞれかぶさるものであること、
を特徴とするモノレール分岐器の浮き上がり防止装置。
【請求項3】
請求項2の浮き上がり防止装置において、
前記受け座は、走行方向の前後端、およびその側方に突出していること、
を特徴とするモノレール分岐器の浮き上がり防止装置。
【請求項4】
請求項2の浮き上がり防止装置において、
前記第2のストッパーであって、前後端の受け座にかぶさる第2のストッパーをのぞく他の第2のストッパーは、前記台車の移動方向に対して側方にあること、
を特徴とするモノレール分岐器の浮き上がり防止装置。
【請求項5】
請求項1の浮き上がり防止装置において、
前記第2のストッパーは、前記台車が走行するレールを載せたベースに、溶接で固定されていること、
を特徴とするモノレール分岐器の浮き上がり防止装置。
【請求項6】
請求項2の浮き上がり防止装置において、
前記第2のストッパーは前記ベースに溶接したストッパー座と前記第2のストッパーとの間にシムを介在させていること、
を特徴とするモノレール分岐器の浮き上がり防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−70639(P2006−70639A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257875(P2004−257875)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(390010973)日立笠戸エンジニアリング株式会社 (20)
【Fターム(参考)】