説明

モータの始動装置およびモータの運転方法

【課題】低電圧の長距離配線で使用する場合に、その配線距離に伴う電圧降下を補償できる上に、省スペース化を実現できるようにしたモータの始動装置の提供。
【解決手段】この発明は、主巻線11と補助巻線12とを有する変圧器1と、主巻線11に並列接続されるスイッチ2と、補助巻線12の両端の各端子と電源4とを接続する選択スイッチ3と、を備えている。主巻線11の一方の端子をモータ5に接続させている。補助巻線12のタップと主巻線11の他方の端子とを共通接続させてこの共通接続部を電源4の一方の端子に接続させている。選択スイッチ3は、第1の動作モードのときに補助巻線12の一方の端子を電源4の他方の端子に接続させ、第2の動作モードのときに補助巻線12の他方の端子を電源4の他方の端子に接続させ、かつ、第3の動作モードのときに補助巻線12の双方の端子と電源4の他方の端子との接続を解くようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの始動装置、およびモータの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、誘導電動機のモータの始動装置として、例えばリアクトル始動器及びコンドルファ始動器が知られている(例えば特許文献1など)。リアクトル始動器はモータと電源の間に始動リアクトルを挿入し、コンドルファ始動器はモータと電源の間に単巻変圧器を挿入して、モータを減電圧始動する。また、この種のモータの始動装置として、例えばスター・デルタ結線の切り換えにより減電圧始動するものが知られている(例えば特許文献2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−271060号公報
【特許文献2】特開2005−27486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、トンネル工事などの工事現場では、従来のモータの始動装置を設置したままとし、工事の進捗に応じてモータの移動が必要な場合がある。この場合には、工事の進捗に伴って始動装置とモータとの間の配電線路の距離が長くなるので、その距離が長くなるにしたがって配電線路の電圧降下が大きくなり、モータの起動が完了できないことがある。このような不具合は、従来のモータの始動装置を低電圧の長距離配電(例えば数100m程度)で使用する場合に顕著である。
【0005】
このような不具合を回避するためには、例えば、上記の電圧降下を補償するためのトランスをモータの始動装置とは別個に設置することで解消できる。しかし、そのために新たなトランスが必要になる上に、そのトランスをモータの始動装置とは別個に設置するためのスペースが必要になる。
そこで、本発明の目的は、例えば低電圧の長距離配線で使用する場合に、その配線距離に伴う電圧降下を補償できる上に、省スペース化を実現できるようにしたモータの始動装置などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決し本発明の目的を達成するために、本発明は、以下のような構成からなる。
すなわち、第1の発明は、主巻線と補助巻線とを有する変圧器と、前記主巻線に並列接続され開閉動作する第1のスイッチと、前記補助巻線の両端の各端子と電源とを接続する第2のスイッチと、を備え、前記主巻線の一方の端子をモータに接続させ、前記補助巻線にタップを設け、前記タップと前記主巻線の他方の端子とを共通接続させてこの共通接続部を前記電源の一方の端子に接続させ、前記第2のスイッチは、第1の動作モードのときに前記補助巻線の一方の端子を前記電源の他方の端子に接続させ、第2の動作モードのときに前記補助巻線の他方の端子を前記電源の他方の端子に接続させ、かつ、第3の動作モードのときに前記補助巻線の双方の端子と前記電源の他方の端子との接続を解くようになっている。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、前記第1の動作モードのときには、前記第1のスイッチを開動作させ、かつ、前記第2のスイッチは前記補助巻線の一方の端子を前記電源の他方の端子に接続させ、前記第2の動作モードのときには、前記第1のスイッチを開動作させ、かつ、前記第2のスイッチは前記補助巻線の他方の端子を前記電源の他方の端子に接続させ、前記第3の動作モードのときには、前記第1のスイッチを閉動作させ、かつ、前記第2のスイッチは前記補助巻線の双方の端子と前記電源の他方の端子との接続を解くようにした。
【0008】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記補助巻線は複数のタップを有し、前記複数のタップのうちの1つを任意に選択し、この選択したタップを前記電源の一方の端子と接続させる第3のスイッチを、さらに備えている。
第4の発明は、第1または第2の発明において、前記補助巻線は複数のタップを有し、前記複数のタップのうちの1つを前記モータに流れる電流に応じて選択し、この選択したタップを前記電源の一方の端子と接続させる第3のスイッチを、さらに備えている。
【0009】
第5の発明は、主巻線と補助巻線とを有する変圧器を使用するモータの運転方法であって、前記補助巻線にタップを設けておき、前記タップと前記主巻線の一方の端子とを共通接続させ、この共通接続部を前記電源の一方の端子に接続させておくとともに、前記主巻線の他方の端子をモータに接続させておき、第1の運転モードで運転するときには、前記補助巻線の一方の端子を電源の他方の端子に接続し、第2の運転モードで運転するときには、前記補助巻線の他方の端子を前記電源の他方の端子に接続し、第3の運転モードで運転するときには、前記補助巻線の双方の端子と前記電源の他方の端子との接続を解き、かつ、前記主巻線の両端を電気的に接続する。
第6の発明は、第5の発明において、前記補助巻線には複数のタップを設けておき、前記複数のタップのうちの1つを選択し、この選択したタップを前記電源の一方の端子と接続させておく。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、モータの印加電圧として、電源電圧よりも低い電圧、電源電圧、および電源電圧よりも高い電圧をそれぞれ生成し、その生成した電圧のうちの1つを選択してモータに供給(印加)できる。
このため、例えば、トンネル工事などの工事現場において、工事の進捗に伴ってモータのモータの始動装置とモータとの間の配電線路の距離が変化する場合には、配電線路の距離の変化に応じてモータの供給電圧を変更(調整)できる。このため、配電線路の距離の変化に応じて適正な電圧で始動、運転ができる上に、配電線路の距離が長くなって配電線路の電圧降下が無視できない場合には、その電圧降下を補償することができる。
【0011】
また、本発明は、変圧器と複数のスイッチの組み合わせた簡易な構成で、始動機能の他に電源電圧の昇圧機能も備えるようにしたので、新たな昇圧機能が追加されたにもかかわらず、その設置スペースが従来のモータの始動装置と殆ど変わることがなく省スペース化を図ることができる。
さらに、本発明は、例えば、電源電圧よりも低い電圧でモータを始動させ、その後に電源電圧で通常動作をさせている場合において、モータが軽負荷のときには電源電圧よりも低い電圧で動作させることができる。このような場合には、省エネルギー効果を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態の構成を示す回路図である。
【図2】本発明の第2実施形態の構成を示す回路図である。
【図3】本発明の第3実施形態の構成を示す回路図である。
【図4】本発明の第4実施形態の構成を示す回路図である。
【図5】トンネル工事の進捗状況と、この進捗状況に対応する始動装置およびモータの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の構成を示す回路図である。
この第1実施形態に係るモータの始動装置100は、図1に示すように、変圧器1と、スイッチ2と、選択スイッチ3とを備え、誘導型のモータ(電動機)5に適用する3相結線のうち1相について(仮想の中性点間に接続されたモータとして)示したものである。そして、このモータの始動装置100では、スイッチ2と選択スイッチ3の操作に応じてモータ5に供給する電圧を調整できるようになっている。
【0014】
変圧器1は、主巻線(第1巻線)11と補助巻線(第2巻線)12とを有し、これらの巻線11、12は同一(共通)の鉄心に巻かれている。主巻線11は、巻線数がn3からなり、その両端が端子11−1、11−2にそれぞれ接続されている。
補助巻線12は、その両端が端子12−1、12−2にそれぞれ接続されている。また、補助巻線12の所定位置(この例では中間位置)にはタップ12−3が設けられている。さらに、端子12−1とタップ12−3との間の巻線数はn1であり、端子12−2とタップ12−3との間の巻線数はn2である。
【0015】
ここで、この例では、巻線数n1、n2は、n1=n2に設定されている。また、巻線数n1、n2、n3は、n1>n3、n2>n3に設定されている。
主巻線11の両端の端子11−1、11−2には、接点が開閉自在なスイッチ2が接続されている。また、主巻線11の端子11−1はモータ5の端子5−1と接続され、モータ5の端子5−2は電源4の端子4−2に接続されている。
補助巻線12の端子12−1、12−2は、後述のように選択スイッチ3を介して電源4の端子4−2と接続されるようになっている。また、補助巻線12のタップ12−3は主巻線11の端子11−2と共通接続され、この共通接続部が電源4の端子4−1に接続されている。
【0016】
選択スイッチ3は、通常は中立位置にある切り換え接点3−1と、切り換え接点3−1と接続される接点3−2、3−3とを有する。そして、切り換え接点3−1が電源4の端子4−2に接続され、接点3−2が補助巻線12の端子12−1に接続され、接点3−3が補助巻線12の端子12−2に接続されている。
このような接続により、選択スイッチ3は、後述のように動作モードに応じて、補助巻線12の端子12−1を電源4の端子4−2に接続させたり、補助巻線12の端子12−2を電源4の端子4−2に接続させたり、あるいは補助巻線12の端子12−1、12−2の双方を電源4の端子4−2から切り離すことができる。
【0017】
次に、このような構成の第1実施形態は3つの動作モードを有するので、これについて図1を参照して説明する。
3つの動作モードは、「減電圧動作モード」、「昇電圧動作モード」、および「運転動作モード」である。
まず、「減電圧動作モード」の場合には、スイッチ2の接点を開いた状態とし、この状態で選択スイッチ3の切り換え接点3−1を接点3−3側に接続させる。このときには、変圧器1の主巻線11と補助巻線12とは、減極性の接続になる。
【0018】
上記のように、主巻線11の巻線数n3と補助巻線12の端子12−2とタップ12−3との間の巻線数n2は、n2>n3の関係にある。このため、主巻線11と補助巻線12と間の電圧、すなわちモータ5の印加電圧VMは、補助巻線12の端子12−1とタップ12−3との間の電圧をVA、主巻線11の誘起電圧をVBとすると、次の(1)式のようになる。
VM=VA−VB・・・(1)
このように、「減電圧動作モード」の場合には、電源4の電圧が主巻線11の誘起電圧VB分だけ減圧されることになるので、モータ5の印加電圧VMは電源4の電圧よりも低い電圧となる。ここで、印加電圧VMの大きさは、主巻線11の巻線数n3と補助巻線12の巻線数n2とによって決まるので、その巻線数の比を任意に設定できる。
【0019】
次に、「昇電圧動作モード」の場合には、スイッチ2の接点を開いた状態とし、この状態で選択スイッチ3の切り換え接点3−1を接点3−2側に接続させる。このときには、変圧器1の主巻線11と補助巻線12とは、加極性の接続になる。
上記のように、主巻線11の巻線数n3と補助巻線12の端子12−1とタップ12−3との間の巻線数n1は、n1>n3の関係にある。このため、主巻線11と補助巻線12と間の電圧、すなわちモータ5の印加電圧VMは、補助巻線12の端子12−1とタップ12−3との間の電圧をVAとし、主巻線11の誘起電圧をVBとすると、(2)式のようになる。
VM=VA+VB・・・(2)
【0020】
このように、「昇電圧動作モード」の場合には、電源4の電圧に主巻線11の誘起電圧VB分だけ加わることになるので、モータ5の印加電圧VMは電源4の電圧よりも高い電圧となる。ここで、印加電圧VMの大きさは、主巻線11の巻線数n3と補助巻線12の巻線数n1とによって決まるので、その巻線数の比を任意に設定できる。
さらに、「運転動作モード」の場合には、選択スイッチ3の切り換え接点3−1を図1のように中立位置とし、かつ、スイッチ2の接点を閉じた状態にする。これにより、変圧器1はその動作を停止し、電源4の電圧がモータ5に印加される。
【0021】
次に、第1実施形態では、上記の3つの動作モードを使用してモータを運転させることができる。そこで、第1実施形態をトンネル工事で使用するモータに適用した場合について、図1および図5を参照して説明する。
工事の進捗状況が図5(A)〜(B)の状態では、始動装置100とモータ5との配電線路20の距離が比較的短く、配電線路20における電圧降下が小さいので、その電圧降下を無視できる。
そこで、この場合には、最初に「減電圧動作モード」を選択し、モータ5の印加電圧として電源4の電圧よりも低い電圧を印加させてモータ5を始動させる。その後、「減電圧動作モード」から「運転動作モード」に切り換え、モータ5の印加電圧として電源4の電圧(定格電圧)を印加させてモータ5の通常の運転を行なう。
【0022】
そして、モータ5の運転の開始後に、モータ5の負荷が軽くなった場合には、「運転動作モード」から「減電圧動作モード」に運転を変更することができ、モータ5の回転数を落とさずに省エネルギー運転を実現できる。
そして、再びモータ5が負荷が重くなった場合には、「減電圧動作モード」から「運転動作モード」に運転を変更することができ、モータ5を通常の定格運転に復帰させることができる。
【0023】
一方、工事の進捗状況が図5(B)〜(C)の状態では、始動装置100とモータ5との配電線路20の距離が比較的長く、配電線路20における電圧降下が大きくなり、その電圧降下が無視できなくなる。
この場合には、配電線路の電圧降下のために「減電圧動作モード」を使用すると、モータ5の始動が完了しないおそれがある。そこで、最初に「昇電圧動作モード」を選択するので、その配電線路の電圧降下が補償され、モータ5の始動は円滑に行なわれる。
その後、配電線路の電圧降下が程度が大きくなく、モータ5の負荷が軽いような場合には、「昇電圧動作モード」から「運転動作モード」に切り換えても運転を継続することができる。一方、配電線路の電圧降下が程度が大きい上に、モータ5の負荷が重いような場合には、「昇電圧動作モード」のまま運転を継続すれば良い。
【0024】
以上のように、第1実施形態では、トンネル工事などの工事現場において、工事の進捗に伴って始動装置とモータとの間の配電線路の距離が変化する場合には、配電線路の距離の変化に応じてモータの供給電圧を変更(調整)できる。このため、配電線路の距離の変化に応じて適正な電圧で始動、運転ができる上に、配電線路の距離が長くなって配電線路の電圧降下が無視できない場合には、その電圧降下を補償することができる。
また、第1実施形態では、変圧器と複数のスイッチの組み合わせた簡易な構成で、始動機能の他に電源電圧の昇圧機能も備えるようにしたので、新たな昇圧機能が追加されたにもかかわらず、その設置スペースが従来のモータの始動装置と殆ど変わることがなく省スペース化を図ることができる。
【0025】
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態の構成を示す回路図である。
この第2実施形態に係るモータの始動装置100aは、図1に示す第1実施形態のモータの始動装置100の構成を基本とし、その第1実施形態の変圧器1を図2に示す変圧器1aに変更するとともに、選択スイッチ6を追加したものである。
したがって、図1の第1実施形態と同一の構成要素には同一符号を付してその説明をできるだけ省略し、以下では変更、追加した点の構成について主に説明する。
【0026】
変圧器1aは、図1の変圧器1と同様に主巻線11と補助巻線12とを有し、これらの巻線11、12は同一の鉄心に巻かれている。補助巻線12には、タップ12−3の他にタップ12−4、12−5が追加され、タップが複数になっている点が異なる。
選択スイッチ6は、補助巻線12のタップ12−3、12−4、12−5と電源4の端子4−1との接続を選択するものであり、通常は、補助巻線12のタップ12−3と電源4の端子4−1の接続が選択されている。
【0027】
このため、選択スイッチ6は、切り換え接点6−1と、3つの端子6−2、6−3、6−4とを有する。そして、切り換え接点6−1は、電源4の端子4−1に接続されている。また、端子6−2は補助巻線12のタップ12−4に接続され、端子6−3は補助巻線12のタップ12−3に接続され、端子6−4は補助巻線12のタップ12−5に接続されている。
【0028】
次に、このような構成の第2実施形態は3つの動作モードがあるので、これについて図2を参照して説明する。
3つの動作モードは、第1実施形態の場合と同様であって、「減電圧動作モード」、「昇電圧動作モード」、および「運転動作モード」であるが、選択スイッチ6を追加などしているのでその点で以下のように異なる。
【0029】
「減電圧動作モード」の場合には、スイッチ2の接点を開いた状態とし、この状態で選択スイッチ3の切り換え接点3−1を接点3−3側に接続させ、かつ、選択スイッチ6の切り換え接点6−1を例えば接点6−3の位置に接続させたままとする。この場合には、第1実施形態において「減電圧動作モード」を設定した場合に相当する。
しかし、第2実施形態では、選択スイッチ6の切り換え接点6−1を接点6−3の位置から接点6−4の位置に切り換えておくことができるので、モータ5の印加電圧を第1実施形態の「減電圧動作モード」の場合に比べて細かに調整できる。
【0030】
次に、「昇電圧動作モード」の場合には、スイッチ2の接点を開いた状態とし、この状態で選択スイッチ3の切り換え接点3−1を接点3−2側に接続させ、かつ、選択スイッチ6の切り換え接点6−1を例えば接点6−3の位置に接続させたままとする。この場合には、第1実施形態において「昇電圧動作モード」を設定した場合に相当する。
しかし、第2実施形態では、選択スイッチ6の切り換え接点6−1を接点6−3の位置から接点6−2の位置に切り換えておくことができるので、モータ5の印加電圧を第1実施形態の「減電圧動作モード」の場合に比べて細かに調整できる。
【0031】
さらに、「運転動作モード」の場合には、選択スイッチ3の切り換え接点3−1を図2のように中立位置にするとともに、選択スイッチ6の切り換え接点6−1を図2の位置とし、かつ、スイッチ2の接点を閉じた状態にする。この場合には、第1実施形態において「運転動作モード」を設定した場合に相当する。
ここで、第2実施形態を適用したモータの運転例は、第1実施形態を適用したモータの運転例が適用できる。
【0032】
ただし、この2実施形態では、選択スイッチ6を追加するようにした。このため、「減電圧動作モード」あるいは「昇圧電圧動作モード」で運転中において、モータ5に流れる電流を電流センサ(図示せず)で検出し、この検出値に応じて選択スイッチ6の切り換え接点6−1の切り換えを行なうようにしても良い。
以上のように、第2実施形態では、第1実施形態の構成を基本にし、さらに、変圧器1aの補助巻線12のタップを複数にするとともに、選択スイッチ6を追加するようにした。このため、選択スイッチ6を使用することにより、「減電圧動作モード」や「昇電圧動作モード」を設定するときに、モータ5の印加電圧VMを細かに調整できる(増減することができる)。
【0033】
(第3実施形態)
図3は、本発明の第3実施形態の構成を示す回路図である。
この第3実施形態に係るモータの始動装置100bは、図3に示すように、図2に示す第2実施形態のモータの始動装置100aの構成を基本にし、これに電流センサ7、設定・指示部8、およびコントローラ9を追加するようにしたものである。
したがって、図2の第2実施形態と同一の構成要素には同一符号を付してその説明をできるだけ省略し、以下では追加した点の構成について主に説明する。
【0034】
電流センサ7は、モータ5に流れる電流を検出し、この検出電流をコントローラ9に出力するようになっている。設定・指示部8は、操作者がモータ5の始動、運転などを設定、指示すると、その設定、指示の内容がコントローラ9に入力されるようになっている。コントローラ9は、電流センサ7の検出電流、設定・指示部8で設定、指示される内容に基づき、スイッチ2の開閉制御を行なう制御信号S1、選択スイッチ3の選択信号S2、および選択スイッチ6の選択信号S3を制御するようになっている。
【0035】
ここで、スイッチ2、選択スイッチ3、および選択スイッチ6は、コントローラ9からの制御信号S1、選択信号S2、および選択信号S3により制御できるようにトランジスタなどの電子的なスイッチにより構成されている。
このような構成の第3実施形態では、設定・指示部8によって、3つの動作モードを設定できるので、設定した場合のコントローラ9の制御について以下に説明する。
【0036】
このように設定・指示部8で設定できる3つの動作モードは、第2実施形態の場合と同様であって、「減電圧動作モード」、「昇電圧動作モード」、および「運転動作モード」からなる。
まず、「減電圧動作モード」が設定された場合には、制御信号S1によってスイッチ2が開いた状態となり、その後に選択信号S2によって選択スイッチ3の切り換え接点3−1が接点3−3側に接続され、かつ、選択信号S3によって選択スイッチ6の切り換え接点6−1が接点6−3の位置に接続されたまま、あるいは接点6−4と接続される。
【0037】
次に、「昇電圧動作モード」が設定された場合には、制御信号S1によってスイッチ2が開いた状態となり、その後に選択信号S2によって選択スイッチ3の切り換え接点3−1が接点3−2側に接続され、かつ、選択信号S3によって選択スイッチ6の切り換え接点6−1が接点6−3の位置に接続されたまま、あるいは接点6−2と接続される。
さらに、「運転動作モード」が設定された場合には、選択信号S2によって選択スイッチ3の切り換え接点3−1を図3のように中立位置になるとともに、選択信号S3によって選択スイッチ6の切り換え接点6−1が図3の位置になり、かつ、制御信号S1によってスイッチ2が閉じた状態になる。
【0038】
次に、第3実施形態では、設定・指示部8によって、3つの動作モードを設定できる上に、その3つの動作モードを適宜組み合わせることにより所望の運転パターンを設定できるので、以下にこれらについて説明する。
まず、「第1の運転パターン」として、第3実施形態とモータ5との配電線路の距離が短く配電線路における電圧降下が無視できる場合であって、モータ5を始動させて定格電圧で運転させる場合について説明する。
この場合には、操作者が、設定・指示部8に配置される「運転パターンボタン」を押下した後、「減電圧動作モード」と「運転動作モード」の各選択ボタンを順に押下し、さらに「設定完了ボタン」を押下する。これにより、「第1の運転パターン」の設定が完了する。
【0039】
そして、その設定した「第1の運転パターン」の運転が開始されると、まず「減電圧動作モード」による動作が開始され、モータ5の印加電圧VMとして電源4の電圧よりも低い電圧を印加させて、モータ5を始動させる。その後、「減電圧動作モード」から「運転動作モード」による動作に切り換わり、モータ5の印加電圧VMとして電源4の電圧(定格電圧)を印加させて、モータ5の定格運転を行なう。
【0040】
次に、「第1の運転パターン」に運転に加え、モータ5の運転中にその負荷に応じて運転を制御する「第2の運転パターン」について説明する。
この場合には、操作者が、設定・指示部8上で「第1の運転パターン」の設定をするときに、「モータ負荷制御」というボタンを押下すれば良い。
そして、その設定した「第2の運転パターン」の運転が開始されると、「第1の運転パターン」の設定の場合と同様に、「減電圧動作モード」によりモータ5が始動し、運転動作モード」によりモータ5の定格運転を行なう。
【0041】
その後、モータが「運転動作モード」で動作中において、電流センサ7の検出電流が所定値以下になった場合には、例えばモータ5が無負荷の状態になったと判断し、「運転動作モード」から「減電圧動作モード」に運転を変更させる。これにより、モータ5の回転数を落とさずに省エネルギー運転を実現できる。
そして、電流センサ7の検出電流が所定値以上になった場合には、再びモータ5が負荷のある状態になったと判断し、「減電圧動作モード」から「運転動作モード」に運転を変更させ、モータ5を通常の定格運転に復帰させる。
【0042】
次に、「第3の運転パターン」として、第3実施形態とモータ5との配電線路の距離が長く配電線路における電圧降下が無視できない場合であって、モータ5を始動させて定格電圧で運転させる場合について説明する。
この場合には、操作者が、設定・指示部8に配置される「運転パターンボタン」を押下した後、「昇電圧動作モード」と「運転動作モード」の各選択ボタンを順に押下し、さらに「設定完了ボタン」を押下する。これにより、「第3の運転パターン」の設定が完了する。
【0043】
そして、その設定した「第3の運転パターン」の運転が開始されると、まず「昇電圧動作モード」による動作が開始され、モータ5の印加電圧VMとして電源4の電圧よりも高い電圧を印加させて、モータ5を始動させる。その後、「運転動作モード」による動作に切り換わり、モータ5の印加電圧VMとして電源4の電圧を印加させて、モータ5の定格運転を行なう。
【0044】
(第4実施形態)
図4は、本発明の第4実施形態の構成を示す回路図である。
この第4実施形態に係るモータの始動装置は、図1に示す第1実施形態のモータの始動装置100を3相誘導電動機に適用したものであり、3つの始動装置100−1、100−2、100−3からなる。これらの始動装置100−1、100−2、100−3のそれぞれは、図1の始動装置100と構成が同じであるので、同一の構成要素には同一符号を付してその説明は省略する。
【0045】
次に、始動装置100−1、100−2、100−3のそれぞれは、図4に示すように、3相電源200および3相誘導電動機300に接続されるので、この接続について説明する。
始動装置100−1の主巻線11の一端側は3相電源200の端子201に接続され、主巻線11の他端側は3相誘導電動機300の端子301に接続される。始動装置100−1の主巻線12のタップは3相電源200の端子201に接続される。
【0046】
始動装置100−2の主巻線11の一端側は3相電源200の端子202に接続され、主巻線11の他端側は3相誘導電動機300の端子302に接続される。始動装置100−2の主巻線12のタップは3相電源200の端子202に接続される。
始動装置100−3の主巻線11の一端側は3相電源200の端子203に接続され、主巻線11の他端側は3相誘導電動機300の端子303に接続される。始動装置100−3の主巻線12のタップは3相電源200の端子203に接続される。
【0047】
さらに、始動装置100−1、100−2、100−3の各選択スイッチ3の切り換え接点は共通接続されている。
このような構成の第4実施形態では、3つの動作モードがあるので、これについて図4を参照して説明する。
3つの動作モードは、第1実施形態の始動装置100の場合と同様であって、「減電圧動作モード」、「昇電圧動作モード」、および「運転動作モード」である。
【0048】
しかし、第4実施形態では、第1実施形態のように始動装置100が1つではなく3つの始動装置100−1、100−2、100−3を備えているので、各動作モードは3つの始動装置100−1、100−2、100−3に対して同時に設定するようにしなければならない点が異なる。
ここで、第4実施形態を適用した3相誘導電動機の運転例は、第1実施形態を適用したモータの運転例が適用できるので、その説明は省略する。
【0049】
(その他の実施形態)
上記の第4実施形態は、図1に示す第1実施形態のモータの始動装置100を3相誘導電動機に適用した場合について説明した。
しかし、他の実施形態として、これに代えて図2に示す第2実施形態のモータの始動装置100aあるいは図3に示す第3実施形態のモータの始動装置100bを、3相誘導電動機に適用するようにしても良い。
【符号の説明】
【0050】
1、1a 変圧器
2 スイッチ
3、6 選択スイッチ
4 電源
5 モータ
7 電流センサ
8 設定・指示部
9 コントローラ
11 主巻線
12 補助巻線
100、100a、100b 始動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主巻線と補助巻線とを有する変圧器と、
前記主巻線に並列接続され開閉動作する第1のスイッチと、
前記補助巻線の両端の各端子と電源とを接続する第2のスイッチと、を備え、
前記主巻線の一方の端子をモータに接続させ、
前記補助巻線にタップを設け、前記タップと前記主巻線の他方の端子とを共通接続させてこの共通接続部を前記電源の一方の端子に接続させ、
前記第2のスイッチは、第1の動作モードのときに前記補助巻線の一方の端子を前記電源の他方の端子に接続させ、第2の動作モードのときに前記補助巻線の他方の端子を前記電源の他方の端子に接続させ、かつ、第3の動作モードのときに前記補助巻線の双方の端子と前記電源の他方の端子との接続を解くようになっていることを特徴とするモータの始動装置。
【請求項2】
前記第1の動作モードのときには、前記第1のスイッチを開動作させ、かつ、前記第2のスイッチは前記補助巻線の一方の端子を前記電源の他方の端子に接続させ、
前記第2の動作モードのときには、前記第1のスイッチを開動作させ、かつ、前記第2のスイッチは前記補助巻線の他方の端子を前記電源の他方の端子に接続させ、
前記第3の動作モードのときには、前記第1のスイッチを閉動作させ、かつ、前記第2のスイッチは前記補助巻線の双方の端子と前記電源の他方の端子との接続を解くようにしたことを特徴とする請求項1に記載のモータの始動装置。
【請求項3】
前記補助巻線は複数のタップを有し、
前記複数のタップのうちの1つを任意に選択し、この選択したタップを前記電源の一方の端子と接続させる第3のスイッチを、さらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモータの始動装置。
【請求項4】
前記補助巻線は複数のタップを有し、
前記複数のタップのうちの1つを前記モータに流れる電流に応じて選択し、この選択したタップを前記電源の一方の端子と接続させる第3のスイッチを、さらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモータの始動装置。
【請求項5】
主巻線と補助巻線とを有する変圧器を使用するモータの運転方法であって、
前記補助巻線にタップを設けておき、前記タップと前記主巻線の一方の端子とを共通接続させ、この共通接続部を前記電源の一方の端子に接続させておくとともに、前記主巻線の他方の端子をモータに接続させておき、
第1の運転モードで運転するときには、前記補助巻線の一方の端子を電源の他方の端子に接続し、
第2の運転モードで運転するときには、前記補助巻線の他方の端子を前記電源の他方の端子に接続し、
第3の運転モードで運転するときには、前記補助巻線の双方の端子と前記電源の他方の端子との接続を解き、かつ、前記主巻線の両端を電気的に接続することを特徴とするモータの運転方法。
【請求項6】
前記補助巻線には複数のタップを設けておき、前記複数のタップのうちの1つを選択し、この選択したタップを前記電源の一方の端子と接続させておくことを特徴とする請求項5に記載のモータの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−259663(P2011−259663A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134021(P2010−134021)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【出願人】(594010434)電光工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】