説明

モータ磁性部材接着用加熱発泡シート

【課題】モータの信頼性低下を抑制させつつモータ用ロータコアの収容孔に磁性部材を接着させる場合の作業性を向上させることを課題としている。
【解決手段】磁性部材を間隙を設けて収容させ得るように該磁性部材よりも断面積が大きな収容孔が形成されたモータ用ロータコアと、前記収容孔に収容される磁性部材との接着に用いられ、前記磁性部材と前記収容孔との間隙に介装し得るようにシート状に形成され、しかも、前記介装された状態で加熱されることにより発泡されて厚さが増大され一面側が磁性部材外表面に接着され且つ他面側が前記収容孔内壁面に接着され得るように、加熱されて気体が発生される発泡剤が含有された樹脂組成物が用いられてなることを特徴とするモータ磁性部材接着用加熱発泡シートを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ磁性部材接着用加熱発泡シートと該モータ磁性部材接着用加熱発泡シートにより磁性部材が接着されて収容されたモータ用ロータコアが用いられてなるモータ用ロータ、該モータ用ロータが備えられてなるモータと、前記モータ磁性部材接着用加熱発泡シートを用いたモータ用ロータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業機器や自動車用の動力源として使用されるモータには、永久磁石などの磁性部材が用いられたモータが広く用いられており、このようなモータとして、例えば、永久磁石式同期モータ(PMモータ:Permanent Magnet Motor)がある。PMモータは、さらに、永久磁石をモータ用ロータ(以下単に「ロータ」ともいう)の表面に取り付けたSPM(Surface Permanent Magnet)タイプと、永久磁石が埋め込まれたロータを用いたIPM(Interior Permanent Magnet)タイプとに分類される。特に、IPMタイプは、ロータに永久磁石が埋め込まれているため高速回転が可能であり、磁石の形状や磁束の通り道によってリラクタンストルクを発生する。このリラクタンストルクは永久磁石のトルクに加わって、高出力かつ高効率のモータを得ることができる。
【0003】
図3に、従来の永久磁石埋め込み型モータのロータの斜視図を示す。モータ用ロータコア10(以下単に「ロータコア」ともいう)は円筒状に積層された鋼板からなり、その中心に軸心方向に向かってシャフト13が挿入される。さらに、ロータコア10の円周方向に永久磁石20が挿入されて収容され得るように、前記永久磁石20の断面積よりもひとまわり大きな断面積を有する収容孔11が軸心方向に複数貫通形成されている。そして、ロータ1は、これらのロータコア10と該ロータコア10の両端部を塞ぐエンドプレート15,15と該ロータコア10とエンドプレート15,15とに挿通されるシャフト13により構成されている。
【0004】
ここで、収容孔11に単に永久磁石20を挿入しただけでは、ロータ1が高速回転する際に永久磁石20が収容孔11の内壁に衝突して大きな騒音が発生し、また永久磁石20が破損するおそれも有している。そこで、従来、液状エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられてなる液状接着剤を収容孔11と永久磁石20との間隙を充填させて永久磁石20を接着させた状態で収容孔11に収容させている。この場合、予め収容孔11の容積と永久磁石20の体積との差から求められる所定量の液状接着剤を収容孔11に流し込み、次いで、永久磁石20を収容孔11に挿入させた後、永久磁石20が収容孔11に挿入された状態でロータコア10を加熱して液状接着剤を熱硬化させて永久磁石20を固定する方法が用いられている。
【0005】
しかしながら、単に上記のような固定方法で永久磁石を収容孔に接着させると、液状接着剤を充填する際あるいは永久磁石を挿入する際などに収容孔と永久磁石との間隙に充填された液状接着剤中に空気の気泡を発生させるおそれがある。このように、液状接着剤中に気泡が発生されると、ロータコア10を加熱して液状接着剤を硬化する際に気泡が膨張することとなる。しかも、この気泡は液状接着剤に閉じ込められた状態となっていることから膨張により液状接着剤を収容孔から押し出して漏出させ、収容孔内壁と永久磁石外表面との接着面積を大きく減少させてしまうおそれがある。
【0006】
このことに対して、例えば、収容孔の容積と永久磁石の体積との差よりも用いる液体接着剤の量を減少させて液体接着剤の漏出を抑制させることも考え得るがその場合には永久磁石外表面や収容孔内表面の接着面積を減少させてしまうこととなり、モータの信頼性を低下させるおそれを有する。
【0007】
また、液状接着剤に比べて流動性の低い、例えば、熱硬化性樹脂シートのような常温固体の樹脂を液状接着剤に代えて用いることも考えられる。このとき熱硬化性樹脂シートは、液状接着剤のような低粘度とならないことから樹脂の漏出を抑制させることができるものの、この場合には、液状接着剤を用いた場合のように永久磁石外表面や収容孔内表面との密着性が得られにくくこれら表面と熱硬化性樹脂シートとの接着力が低下して、モータの信頼性を低下させるおそれを有する。また、樹脂シートを用いる場合にも永久磁石と収容孔との間隙部よりも樹脂シートの体積が小さくなることから、収容孔内壁面と永久磁石外表面との接着面積が減少して接着力を低下させるおそれも有している。
【0008】
そのようなことから、従来は、図4に示すような永久磁石を収容孔に固定する方法が採用されている。
即ち、該従来の方法では、まず、ロータコア10の収容孔11の貫通方向を略垂直方向となるように配し、この収容孔11の下端部をエンドプレート15で塞ぎ、収容孔11に液状接着剤25を充填する(図4(a))。このとき、液状接着剤25の充填量は、永久磁石20を挿入したときに溢れる量とする。次に、収容孔11に永久磁石20を挿入し、ロータコア10の上面に溢れさせ、この溢れさせた液状接着剤25を拭き取る(図4(b))。最後に、ロータコア10の上端部にエンドプレート15を被せ、かしめて密封し、液状接着剤25を加熱して硬化させる。このように液状接着剤を溢れさせることで、内部に気泡が形成されてもこの溢れる液状接着剤に同伴させて収容孔から排出させることができる。したがって、後段の加熱時に液状接着剤が押し出されて漏出されることを抑制でき、収容孔内壁面と永久磁石外表面と接着面積が減少することを抑制させることができる。
【0009】
しかしながら、上述したモータ及びその製造方法によれば、液状接着剤を浪費し、また、余分な接着剤がロータコアの導通しなければならないところにまで付着してモータの信頼性が低下することを防止すべくロータコアの上面に溢れた余分な液状接着剤を拭き取る作業が必要となり作業性が悪いという問題を有している。
【0010】
また、近年では、特許文献1に示すように接着剤を用いずに、バネなどの弾性部材を永久磁石とともに収容孔に収容させて、弾性部材の復元力で永久磁石を収容孔内壁面に向けて付勢して固定させる方法も検討されたりしている。しかし、このような方法においては、付勢により発生する摩擦力を利用して永久磁石を固定することから、例えば、永久磁石を挿抜する方向にが永久磁石が移動すること(永久磁石がエンドプレートに当たって破損すること)を防止すべく摩擦抵抗の大きな弾性部材や、大きな付勢力を発生させる弾性部材を用いて摩擦力を増大させようとすると永久磁石を収容させる作業性を低下させることとなる。
【0011】
すなわち、従来、IPMタイプのモータのロータコアに永久磁石を固定させる場合など収容孔が形成され該収容孔に磁性部材が収容されてなるモータ用ロータコアの収容孔に磁性部材を固定させる場合には、モータの信頼性低下を抑制させつつ作業性を向上させることが困難であるという問題を有している。
【特許文献1】特開2000−341920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、モータの信頼性低下を抑制させつつモータ用ロータコアの収容孔に磁性部材を接着させる場合の作業性を向上させることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで本発明は、前記課題を解決すべく、磁性部材を間隙を設けて収容させ得るように該磁性部材よりも断面積が大きな収容孔が形成されたモータ用ロータコアと、前記収容孔に収容される磁性部材との接着に用いられ、前記磁性部材と前記収容孔との間隙に介装し得るようにシート状に形成され、しかも、前記介装された状態で加熱されることにより発泡されて厚さが増大され一面側が磁性部材外表面に接着され且つ他面側が前記収容孔内壁面に接着され得るように、加熱されて気体が発生される発泡剤が含有された樹脂組成物が用いられてなることを特徴とするモータ磁性部材接着用加熱発泡シートを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、モータ用ロータコアの収容孔内壁と磁性部材外表面との接着に樹脂組成物が用いられてなるモータ磁性部材接着用加熱発泡シートを用いることから、液状接着剤を用いた場合に比べて加熱により収容孔から樹脂が押し出されて漏出するおそれを抑制させ得る。したがって、接着面積が減少してモータの信頼性が低下してしまうことを抑制させ得る。
また、モータ磁性部材接着用加熱発泡シートを用いることから、このモータ磁性部材接着用加熱発泡シートを発泡させ厚さを増大させて、モータ磁性部材接着用加熱発泡シートの一面側を磁性部材外表面に接着させ且つ他面側を前記収容孔内壁面に接着させることができ、モータ磁性部材接着用加熱発泡シートの全面を接着面積とすることができる。しかも、このモータ磁性部材接着用加熱発泡シートの厚さが増大されるように発泡されることから、このモータ磁性部材接着用加熱発泡シートと磁性部材外表面や収容孔内壁面との密着性を高めることができる。したがって、単なる樹脂シートを用いた場合のように接着面積を減少させたり、磁性部材や収容孔内壁の表面への密着性が低下したりして接着力が低減するおそれを抑制させることができ、モータの信頼性低下を抑制させ得る。
しかも、加熱することにより発泡されて厚さが増大されるモータ磁性部材接着用加熱発泡シートを用いることから、モータ用ロータコアと磁性部材との接着時には、モータ用ロータコアの収容孔と磁性部材との間隙にモータ磁性部材接着用加熱発泡シートを介装させて加熱するだけで一面側を磁性部材外表面に接着させ他面側を前記収容孔内壁面に接着させ得る。したがって、モータ用ロータコアの収容孔に磁性部材を接着させる場合の作業性を向上させ得る。
さらには、モータ磁性部材接着用加熱発泡シートは加熱されて厚さが増大されることから、加熱前のモータ磁性部材接着用加熱発泡シートとしては、磁性部材と収容孔との間に介装容易な厚さのものを用いることができ、バネなどの弾性部材を永久磁石などの磁性部材とともに収容孔に収容させて、弾性部材の復元力で磁性部材を収容孔内壁面に向けて付勢して固定させる場合に比べて作業性を向上させ得る。
すなわち、モータの信頼性低下を抑制させつつモータ用ロータコアの収容孔に磁性部材を接着させる場合の作業性を向上させ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図を参照して説明する。
まず、本実施形態のモータ磁性部材接着用加熱発泡シートを用いて形成された永久磁石埋め込み型モータの構成について説明する。モータは、ステータ及びロータの主に二つの部品から構成されている。さらにこのロータは、ロータコアと、ロータコアの軸心方向に挿入されるシャフトと、シャフトの周囲に挿入される複数の永久磁石と、ロータコアを軸方向両側から挟む一対のエンドプレートとを備えている。
【0016】
図1に、本発明の一実施形態に係るロータの斜視図を示す。
ロータは、複数の収容孔11が設けられたロータコア10と、該収容孔11に挿入された永久磁石20と、永久磁石20からの磁束の漏れを防止するためにロータコア10の両端部に設けられたエンドプレート15が用いられている。
この前記収容孔11は、前記永久磁石20の断面積よりもひとまわり大きな断面積を有しており、前記永久磁石20は、前記収容孔11内壁面にモータ磁性部材接着用加熱発泡シート21が用いられて接着されている。
【0017】
ロータコア10は、円筒形状を有し、鋼板が積層されて構成されており、その中心に軸心方向に向かってシャフト(図示せず)を挿入するシャフト孔12が貫通形成されている。さらに、シャフト孔12の周囲には、永久磁石20を収容させるための複数の収容孔11,…が軸心方向に貫通形成されている。
【0018】
永久磁石20は、略扁平矩形状を有し、ネオジム、鉄、ボロン系の希土類磁石などを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
また、モータ磁性部材接着用加熱発泡シート21は、発泡剤を含有する樹脂組成物により構成されている。
モータ磁性部材接着用加熱発泡シート21を構成する樹脂組成物のベース樹脂としては、永久磁石や、ロータコアに対する優れた接着性や耐熱性の点から、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を用いることが好ましく、このエポキシ樹脂としては、常温で固形のものが好ましい。特に、軟化点60〜100℃のものが永久磁石20を収容孔11内壁に接着させる作業性を向上させ得る点において好ましく、例えば、このような軟化温度のエポキシ樹脂として、エポキシ当量が450〜1000g/eqのビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂を用いることが特に好ましい。なお、前記軟化点とは、JIS K 7234により求められる値を意図しており、前記エポキシ当量とはJIS K 7236により求められる値を意図している。
このような、エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン社から、商品名「エピコート1001」、「エピコート1002」、「エピコート1003」、「エピコート1004」などとして市販のものを用いることができる。
【0020】
また、前記樹脂組成物には、熱硬化後の樹脂組成物に粘りを与えて、モータの回転に伴う振動などにより、樹脂組成物と永久磁石あるいは樹脂組成物と収容孔内壁との間に剥離が生じたりすることを抑制させ得る点において、前述のようなエポキシ樹脂に加えて、ポリアミドがさらに加えられていることが好ましい。このポリアミド樹脂としては、エポキシとの混合や、発泡剤の混合、更にはこれらを混合させた樹脂組成物をシート化させてモータ磁性部材接着用加熱発泡シートを製造する際の作業性を良好なるものとし得る点において6−ナイロン樹脂を原料として、これにホルムアルデヒドとメタノールを反応させて化学的に変性し、アルコールに可溶にしたポリアミド樹脂が好適である。また、このような6−ナイロン樹脂をホルムアルデヒドとメタノールを反応させて化学的に変性したポリアミド樹脂は、アミド基部位をメトキシメチル化されており、柔軟で、しかも耐摩耗性、耐アルカリ性、耐加水分解性に優れることから、このようなモータの永久磁石とロータコアとの接着に用いるモータ磁性部材接着用加熱発泡シートの材料として好適である。
このようなメトキシメチル化ポリアミドとしては、長瀬ケムテックス社から、商品名「トレジン」として市販のものを用いることができる。
【0021】
なお、この樹脂組成物に用いるエポキシ樹脂と、ポリアミド樹脂との割合は、重量比で(エポキシ樹脂:ポリアミド樹脂)=50:50〜80:20であることが好ましく、60:40〜70:30であることがさらに好ましい。
【0022】
また、このような樹脂組成物に配合される発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素アンモニウム、アジド類などの無機系発泡剤や、トリクロロモノフルオロメタンなどのフッ化アルカン、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系化合物、パラトルエンスルホニルヒドラジドなどのヒドラジン系化合物、p−トルエンスルホニルセミカルバジドなどのセミカルバジド系化合物、5−モルホリル−1,2,3,4−チアトリアゾールなどのトリアゾール系化合物、N,N’−ジニトロソテレフタルアミドなどのN−ニトロソ化合物などの有機系発泡剤などの他に炭化水素系溶剤をマイクロカプセル化させたマイクロカプセル化発泡剤などが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、樹脂組成物のベース樹脂の軟化点近傍あるいはそれ以上の温度で気体を発生させるものが好ましい。
なかでも、炭化水素系溶剤をマイクロカプセル化させたマイクロカプセル化発泡剤は、エポキシ樹脂やポリアミド樹脂をはじめとする多くの種類の樹脂に対して与える影響が小さく、例えば、樹脂組成物の硬化を阻害させたり、加熱老化特性を低下させたりするような悪影響を与えることを抑制させることができる点において好適である。
また、樹脂組成物中の発泡剤の含有量は特に限定されるものではなく、通常、無荷重で加熱発泡させたときにモータ磁性部材接着用加熱発泡シートの厚さを2〜3倍程度に発泡させることのできる量配合されていればよい。
【0023】
さらに、樹脂組成物には、イミダゾール系などのエポキシ硬化剤や、反応性希釈剤、硬化促進剤、フィラー、カップリング剤、触媒、加工助剤、各種安定剤、顔料などの添加剤をさらに添加することができる。
このうち、エポキシ硬化剤の添加量は、樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂の量と、エポキシ当量とから計算されるエポキシ基の数に対して、エポキシ硬化剤の活性水素の数が前記エポキシ基の数に対して0.8〜1.2倍となる量とされることが好ましく、0.9〜1.1倍となる量とされることがさらに好ましい。
なお、この樹脂組成物により形成されるモータ磁性部材接着用加熱発泡シートを電気自動車やハイブリッド車のような自動車の駆動のためのモータに用いられる場合には、モータ磁性部材接着用加熱発泡シートを構成する樹脂組成物は、加熱発泡後(熱硬化後)に150℃で1000時間の熱老化試験を実施した後の加熱減量が5%以下であることが好ましい。
なお、この加熱減量とは、十分に加熱発泡させたモータ磁性部材接着用加熱発泡シートの重量を測定し、次いで、このモータ磁性部材接着用加熱発泡シートを150℃で1000時間ギヤオーブン中で加熱老化試験を行ったあとに再び重量を測定し、加熱老化試験前のモータ磁性部材接着用加熱発泡シートと加熱老化試験後のモータ磁性部材接着用加熱発泡シートの重量との差を加熱老化試験前のモータ磁性部材接着用加熱発泡シートの重量で除して求めることができる。
【0024】
このように、本実施形態の永久磁石埋め込み型モータは、ロータコア10の収容孔11に挿入された永久磁石20と収容孔11との間にモータ磁性部材接着用加熱発泡シート21が介装されており、該モータ磁性部材接着用加熱発泡シート21に含まれる発泡剤を発泡させることにより、収容孔11と永久磁石20との隙間を埋めて、収容孔11に永久磁石20を固定するようにしたので、モータ磁性部材接着用加熱発泡シート21の余分な圧が樹脂組成物を押し出すことにより、ロータコア10の導通部分に付着するという問題を生じることがない。
【0025】
なお、本発明の永久磁石埋め込み型モータは、永久磁石20と収容孔11との間にモータ磁性部材接着用加熱発泡シート21を介装するようにしたが、収容孔11とモータ磁性部材接着用加熱発泡シート21との間、あるいは永久磁石20とモータ磁性部材接着用加熱発泡シート21との間に、僅かな隙間を有することが好ましい。例えば、収容孔11に永久磁石20を挿入したときに、周囲に100μmの厚みの空隙を有する場合、発泡剤を含むモータ磁性部材接着用加熱発泡シート21が発泡により3倍膨らむものであれば、50μmの厚みのモータ磁性部材接着用加熱発泡シート21を永久磁石20と収容孔11との間に介装することができる。
【0026】
次に、永久磁石埋め込み型モータの製造方法について図2を参照して説明する。図2は、図1のX−X線断面図である。
【0027】
まず、永久磁石20を収容孔11に挿入する際に底から抜け落ちるのを防止するために、ロータコア10の一方の端部をエンドプレート15で塞ぐ。そして、永久磁石20の周囲に発泡剤を含むモータ磁性部材接着用加熱発泡シート21を巻装して仮着し、当該永久磁石20を収容孔11に挿入する。収容孔11は、挿入されたモータ磁性部材接着用加熱発泡シート21との間に僅かな隙間を有してもよい。次に、ロータコア10の他方の端部をエンドプレート(図示せず)で塞ぎ、かしめて固定し、ロータコア10を所定の温度で加熱する。加熱により、モータ磁性部材接着用加熱発泡シート21に含まれる発泡剤が発泡し、収容孔11と永久磁石20との隙間11aを埋めて、収容孔11に永久磁石20を固定させることができる。
【0028】
モータ磁性部材接着用加熱発泡シート21を、発泡させるための温度は、使用する材料の特性により異なるが、例えば、樹脂シートの材料としてエポキシ当量875〜975g/eqのビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂と、メトキシメチル化ポリアミドとを重量で60:40の割合で配合させたもの100重量部に対し、炭化水素系溶剤をマイクロカプセル化させたマイクロカプセル化発泡剤を2〜3重量部程度配合させた樹脂組成物により形成されたモータ磁性部材接着用加熱発泡シート21を使用する場合には、加熱温度を120〜180℃とし、加熱時間を5〜60分程度とすることができる。
【0029】
このように、永久磁石埋め込み型モータの製造方法においては、発泡剤を含むモータ磁性部材接着用加熱発泡シート21を永久磁石20と収容孔11との間に介装させるようにし、発泡剤を発泡させて、収容孔11に永久磁石20を固定するようにした。従って、モータ磁性部材接着用加熱発泡シート21を加熱すると、発泡剤が気体を発生させてモータ磁性部材接着用加熱発泡シート21が発泡し、発泡した体積の増加によって収容孔11と永久磁石20との隙間を埋めて、収容孔11に永久磁石20を固定することができる。従って、樹脂材料の無駄がなく、ロータコア10内に永久磁石20を固定する作業を容易に行うことができる。
【0030】
また、前記モータ磁性部材接着用加熱発泡シート21は、シート状なので、永久磁石20の形状に合わせた寸法に容易に成形することができ、モータ磁性部材接着用加熱発泡シート21の取り扱いが容易になる。
また、従来の液状接着剤では硬化剤が混合された後は短時間で硬化するため、例えば、作業工程でラインが停止した場合、接着剤がすぐに硬化してしまうため製作中のモータは廃棄せざるを得なかった。しかし、本発明のモータ磁性部材接着用加熱発泡シート21によれば、液状接着剤よりも硬化するまでの時間が長いので、ラインが停止しても、製作中のモータを廃棄することなく作業を続行させることができる。
【0031】
さらに、モータ磁性部材接着用加熱発泡シート21は発泡剤を含んでいることから、少ない樹脂材料で収容孔11に永久磁石20の固定を行うことができ、樹脂材料の軽量化、ひいてはロータの軽量化を図ることができる。また、万一、モータ磁性部材接着用加熱発泡シート21が剥がれても、モータ磁性部材接着用加熱発泡シート21中の気泡体の弾力性により、永久磁石20と収容孔11が接して振動音が発生したり、永久磁石20が破損したりすることを防止することもできる。
【0032】
なお、上述した永久磁石埋め込み型モータの製造方法によれば、モータ磁性部材接着用加熱発泡シート21を永久磁石20の周囲に巻装してから、収容孔11に挿入するようにしたが、そのような製造方法に限るものではない。例えば、モータ磁性部材接着用加熱発泡シート21を収容孔11に挿入して、収容孔11の内周に仮着させた後に、永久磁石20を挿入するようにしてもよい。また、モータ磁性部材接着用加熱発泡シート21は収容孔11の周囲に巻装する以外にも、部分的に接着するようにしてもよい。
また、本実施形態においては、磁性部材として永久磁石を用いたものを例に説明したが、本発明においては、磁性部材を永久磁石のように着磁されたものに限定させるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係るロータの斜視図を示す。
【図2】図1のX−X線断面図を示す。
【図3】従来の永久磁石埋め込み型モータのロータの斜視図を示す。
【図4】従来の永久磁石埋め込み型モータのロータの製造方法を説明するための図を示す。
【符号の説明】
【0034】
1…ロータ
10…ロータコア
11…収容孔
11a…隙間
12…シャフト孔
13…シャフト
15…エンドプレート
20…永久磁石
21…モータ磁性部材接着用加熱発泡シート
25…液状接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性部材を間隙を設けて収容させ得るように該磁性部材よりも断面積が大きな収容孔が形成されたモータ用ロータコアと、前記収容孔に収容される磁性部材との接着に用いられ、前記磁性部材と前記収容孔との間隙に介装し得るようにシート状に形成され、しかも、前記介装された状態で加熱されることにより発泡されて厚さが増大され一面側が磁性部材外表面に接着され且つ他面側が前記収容孔内壁面に接着され得るように、加熱されて気体が発生される発泡剤が含有された樹脂組成物が用いられてなることを特徴とするモータ磁性部材接着用加熱発泡シート。
【請求項2】
熱硬化性樹脂が含有される前記樹脂組成物が用いられてなる請求項1に記載のモータ磁性部材接着用加熱発泡シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のモータ磁性部材接着用加熱発泡シートにより前記収容孔内壁面に前記磁性部材外表面が接着されて前記磁性部材が収容されている前記モータ用ロータコアが用いられてなるモータ用ロータ。
【請求項4】
請求項3に記載のモータ用ロータが備えられてなるモータ。
【請求項5】
磁性部材を間隙を設けて収容させ得るように該磁性部材よりも断面積が大きな収容孔が形成されたモータ用ロータコアと、前記収容孔に収容された磁性部材とを接着させる接着工程を実施するモータ用ロータの製造方法であって、
加熱されて気体が発生される発泡剤が含有された樹脂組成物が用いられて前記磁性部材と前記収容孔との間隙に介装可能な厚さのシート状に形成されてなり且つ加熱されて前記発泡剤により発泡され前記間隙よりも厚さを増大させ得るモータ磁性部材接着用加熱発泡シートを用いて、前記磁性部材と前記収容孔との間に前記モータ磁性部材接着用加熱発泡シートを介装させて加熱することにより、前記介装させたモータ磁性部材接着用加熱発泡シートを発泡させて厚さを増大させて一面側を磁性部材外表面に接着させ且つ他面側を前記収容孔内壁面に接着させて前記接着工程を実施することを特徴とするモータ用ロータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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