モールドに付着した異物の除去方法
【課題】モールドに付着した異物の除去において、より低コストかつ効率的に異物を除去することを可能とする。
【解決手段】モールド1上の位置であって異物Fの存在を表す異物付着位置P1を検出して、この異物付着位置P1に関する付着位置情報を取得し、基板2上の位置であって凹凸パターン13と基板2の組成物配置面とが対向した状態で所定の位置合わせが行われたとき異物付着位置P1に対応する位置である異物対応位置Q1に関する対応位置情報を、付着位置情報に基づいて作成し、硬化性組成物からなる少なくとも1つの液滴Daを異物対応位置Q1に配置し、上記所定の位置合わせを行いながら、凹凸パターン13を組成物配置面に押し付け、硬化性組成物を硬化せしめ、モールド1を硬化性組成物から剥離する。
【解決手段】モールド1上の位置であって異物Fの存在を表す異物付着位置P1を検出して、この異物付着位置P1に関する付着位置情報を取得し、基板2上の位置であって凹凸パターン13と基板2の組成物配置面とが対向した状態で所定の位置合わせが行われたとき異物付着位置P1に対応する位置である異物対応位置Q1に関する対応位置情報を、付着位置情報に基づいて作成し、硬化性組成物からなる少なくとも1つの液滴Daを異物対応位置Q1に配置し、上記所定の位置合わせを行いながら、凹凸パターン13を組成物配置面に押し付け、硬化性組成物を硬化せしめ、モールド1を硬化性組成物から剥離する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な凹凸パターンを表面に有するモールドのその表面に付着した異物の除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディスクリートトラックメディア(DTM)やビットパターンドメディア(BPM)等の磁気記録媒体、及び半導体デバイスの製造において、加工対象である基板上に塗布されたレジストへのナノインプリント法を用いたパターン転写技術の利用が期待されている。
【0003】
ナノインプリントは、光ディスク製作では良く知られているエンボス技術を発展させたパターン形成技術である。具体的には、ナノインプリントは、凹凸パターンを形成した型(一般的にモールド、スタンパ、テンプレートとも呼ばれる)を加工対象である基板上に塗布されたレジストに押し付け、レジストを力学的に変形または流動させて微細なパターンを精密に転写する技術である。モールドを一度作製すれば、ナノレベルの微細構造を簡単に繰り返して成型できるため経済的であるとともに、有害な廃棄物および排出物が少ない転写技術であるため、近年、さまざまな分野へも応用が期待されている。
【0004】
従来、このようなナノインプリント用のモールドの洗浄は、硫酸過水および硫酸等による化学洗浄、超音波による物理洗浄、並びにこれらの組合せによる洗浄等、半導体分野において使用される洗浄方法により実施される。しかしながら、硫酸過水および硫酸等による化学洗浄では、高濃度酸を高温で使用する等の理由により作業性が悪くかつ洗浄能力が不十分である。また、洗浄液で凹凸パターンが腐食する可能性もある。さらに、超音波による物理洗浄では、微細な凹凸パターンが欠損してしまうという問題がある。そして、凹凸パターンの欠損は、凹凸パターンが微細になるほど顕著になるという問題もある。
【0005】
ナノインプリント用のモールドでは、正確なパターンを転写できかつ数万回以上の使用に耐える必要があること等から、凹凸パターンの微細構造が腐食しないようにおよび欠損しないように洗浄することが求められる。
【0006】
そこで、特許文献1には、モールドの凹凸パターンに付着した樹脂を除去するため、除去用の樹脂を当該凹凸パターンに塗布し、付着した樹脂と除去用の樹脂を一体化させてから除去用の樹脂を剥離する洗浄方法が開示されている。また、非特許文献1には、インクジェット法を用いたナノインプリントにおいて、モールドに付着した異物が複数回のインプリント後にたまたま除去されていたことの記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−353926号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】K. Selenidis, J. Maltabes, I. McMackin, et al., “Defect Reduction Progress in Step and Flash Imprint Lithography”, Proceedings of SPIE - The International Society for Optical Engineering, Vol. 6730, 67300F (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の方法では、凹凸パターンに付着した樹脂と除去用の樹脂を一体化させることを前提としており、樹脂以外の異物を除去することは困難である。また、除去用の樹脂はモールド上の全体に塗布されており、樹脂の使用量が多くなるという問題もある。一方、非特許文献1の方法では、当該方法がもともと異物の除去を目的とした方法ではないため、異物の除去率が低い。また、非特許文献1の方法では、モールド上の異物が基板表面に直接押し付けられて基板上に付着することにより異物が除去されるため、仮にモールドの洗浄に転用されたとしても、モールド上の異物付着部に押し付け力が集中し、凹凸パターンの微細構造が欠損する可能性があるという問題がある。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、モールドに付着した異物の除去において、より低コストかつ効率的に異物を除去することを可能とする異物の除去方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係るモールドに付着した異物の除去方法は、
微細な凹凸パターンを表面に有するモールドのこの凹凸パターンに付着した異物を、基板上に塗布された硬化性組成物に付着させて除去する異物の除去方法において、
モールド上の位置であって異物の存在を表す異物付着位置を検出して、この異物付着位置に関する付着位置情報を取得し、
基板上の位置であって凹凸パターンと基板の組成物配置面とが対向した状態で所定の位置合わせが行われたとき異物付着位置に対応する位置である異物対応位置に関する対応位置情報を、付着位置情報に基づいて作成し、
対応位置情報に基づいて、硬化性組成物からなる少なくとも1つの液滴を異物対応位置に配置し、
凹凸パターンと組成物配置面とが対向した状態で上記所定の位置合わせを行いながら、モールドを硬化性組成物に押し付け、
硬化性組成物を硬化せしめ、
モールドを硬化性組成物から剥離することを特徴とするものである。
【0012】
本明細書において、「少なくとも1つの液滴を異物対応位置に配置し」とは、異物対応位置を覆うように1つの液滴を配置すること、異物対応位置の近傍領域に異物対応位置を覆わないように1以上の液滴を配置すること、および、異物対応位置を覆うように1つの液滴を配置しかつ異物対応位置の近傍領域に異物対応位置を覆わないように1以上の液滴を配置することを含む意味である。
【0013】
そして、本発明に係る異物の除去方法において、異物の形状を測定してこの形状に関する形状情報を取得し、
この形状情報に基づいて上記少なくとも1つの液滴の全液滴量を増減することが好ましい。この場合、1滴当たりの液滴量を増減することにより上記全液滴量を増減することが好ましい。或いは、上記少なくとも1つの液滴の液滴配置密度を増減することにより上記全液滴量を増減することが好ましい。
【0014】
そして、本発明に係る異物の除去方法において、異物は有機材料からなるものであり、硬化性組成物は分子量1000以下の重合性化合物を含有することが好ましい。
【0015】
或いは、本発明に係る異物の除去方法において、異物は無機材料からなるものであり、硬化性組成物は異物の表面と反応性のある官能基を持つ重合性化合物を含有することが好ましい。この場合において、硬化性組成物は、上記官能基を2以上持つ多官能重合性化合物を10wt%以上含有することが好ましい。
【0016】
そして、本発明に係る異物の除去方法において、モールドを硬化性組成物に押し付けた後、硬化性組成物を硬化せしめる前に、モールドおよび/または基板を介して異物に超音波を照射することが好ましい。
【0017】
そして、本発明に係る異物の除去方法において、硬化性組成物は光硬化性組成物であり、モールドを硬化性組成物に押し付けた後、光硬化性組成物を硬化せしめる前に、モールドおよび/または基板を加熱することが好ましい。
【0018】
そして、本発明に係る異物の除去方法において、モールドおよび基板の間の空間を減圧することが好ましい。
【0019】
そして、本発明に係る異物の除去方法において、モールドを硬化性組成物に押し付けた際、基板上のパターン対応領域の全体に、気泡に起因する未充填欠陥なく硬化性組成物膜が形成されるように、パターン対応領域に硬化性組成物からなる複数の液滴を配置することが好ましい。パターン対応領域とは、基板上の領域であって凹凸パターンと組成物配置面とが対向した状態で上記所定の位置合わせが行われたとき凹凸パターンに対応する領域を意味する。
【0020】
そして、本発明に係る異物の除去方法において、凹凸パターンは、ライン状の凸部および凹部から構成されるライン状凹凸パターンであり、
ライン状凹凸パターンのライン方向に略平行な方向であるA方向に沿った液滴間隔が、このA方向に略垂直な方向であるB方向に沿った液滴間隔より長くなるように、上記複数の液滴を配置することが好ましい。
【0021】
本明細書において、「ライン状凹凸パターン」とは、パターンを液滴に押し付けた際にそのパターン形状に起因して、液滴の拡張方向に異方性が生じて液滴の形状を楕円に近似することができるような凹凸パターンを意味する。
【0022】
ライン状凹凸パターンの「ライン方向」とは、モールドの凹凸パターン形成面に沿った方向のうち液滴が拡張しやすい方向を意味するものとする。
【0023】
「ライン方向に略平行な方向」とは、ライン状凹凸パターンのライン方向の他、本発明の作用効果が得られる範囲でこのライン方向と実質的に同一の方向を含む意味である。
【0024】
「A方向に略垂直な方向」とは、A方向に垂直な方向の他、本発明の作用効果が得られる範囲でこのA方向に垂直な方向と実質的に同一の方向を含む意味である。
【0025】
A方向またはB方向に沿った「液滴間隔」とは、ある液滴とこの液滴からA方向またはB方向にある他の液滴とのA方向またはB方向に沿った距離を意味し、当該他の液滴が複数存在する場合には、それらのうち直近の液滴との距離を意味する。
【0026】
そして、本発明に係る異物の除去方法において、A方向の平均の液滴間隔WaとB方向の平均の液滴間隔Wbとの比Wa/Wbが下記式(1)を満たすことが好ましい。
1.8≦Wa/Wb≦0.52V1/3/d・・・(1)
【0027】
式(1)中、Vは配置された上記複数の液滴の1箇所当たりの平均体積、dは硬化性組成物膜の平均厚みを表す。)
【0028】
本明細書において、A方向またはB方向の「平均の液滴間隔」とは、基板上に配置された上記複数の液滴の中心座標の間隔を、A方向またはB方向に対してパターン対応領域上の少なくとも2箇所以上測定することによって求めた値を意味する。また、ライン状凹凸パターンが不連続的に変化するような場合には、ライン状凹凸パターンが連続的である領域ごとに上記パターン対応領域をさらに分割して、分割された領域ごとに液滴間隔の平均をとってもよい。インクジェット法は、インクジェットヘッドの吐出性能、液物性と基板表面物性との相性、インクジェット装置を使用する環境(温湿度など)、及びインクジェット描画のXY走査系の精度等によって、液滴間隔のシステム上の設計値と実際の値との間に誤差が生じる。よって、インクジェット法により基板上に液滴を配置する際に、インクジェットプリンターのシステム上で設定するA方向とB方向の液滴間隔に誤差が生じる可能性があるため、上記複数の液滴の中心座標の間隔を実際に測定し調整する必要がある。
【0029】
そして、本発明に係る異物の除去方法において、上記少なくとも1つの液滴および/または上記複数の液滴を配置する方法はインクジェット法であることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る異物の除去方法は、特に、モールド上の位置であって異物の存在を表す異物付着位置を検出して、この異物付着位置に関する付着位置情報を取得し、基板上の位置であって凹凸パターンと基板の組成物配置面とが対向した状態で所定の位置合わせが行われたとき異物付着位置に対応する位置である異物対応位置に関する対応位置情報を、付着位置情報に基づいて作成し、対応位置情報に基づいて、硬化性組成物からなる少なくとも1つの液滴を異物対応位置に配置し、凹凸パターンと組成物配置面とが対向した状態で上記所定の位置合わせを行いながら、モールドを硬化性組成物に押し付け、硬化性組成物を硬化せしめ、モールドを硬化性組成物から剥離することを特徴とする。これにより、凹凸パターンと基板の組成物配置面とが対向した状態で上記所定の位置合わせが行われたとき異物付着位置に対応する位置である異物対応位置に、正確に必要な分だけの硬化性組成物を供給することができる。したがって、無駄に硬化性組成物が消費されず、かつ除去対象の異物を硬化性組成物膜に取り込むことができる可能性が飛躍的に向上する。この結果、モールドに付着した異物の除去において、より低コストかつ効率的に異物を除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1A】実施形態の異物の除去方法に係るモールドを示す概略断面図である。
【図1B】図1Aにおけるモールドの凹凸パターン領域の一部の断面を示す概略拡大図である。
【図2A】モールド上の異物付着位置を示す概略上面図である。
【図2B】基板上の異物対応位置を示す概略上面図である。
【図3】モールドの底面から見た異物付着位置を示す概略底面図である。
【図4】異物対応位置に少なくとも1つの液滴を配置する方法の例を示す概略図である。
【図5】ライン状凹凸パターンおよびライン状凹凸パターンではないパターンの例を示す概略図である。
【図6】透明な基板上に上記複数の液滴を配置し、平坦な板によって押し付けた場合に、その複数の液滴の拡張する様子を示す概略図である。
【図7】透明な基板上に上記複数の液滴を配置し、モールドによって押し付けた場合に、その複数の液滴の拡張する様子を示す概略図である。
【図8】ライン方向を考慮して透明な基板上に上記複数の液滴を配置し、モールドによって押し付けた場合に、その複数の液滴の拡張する様子を示す概略図である。
【図9】ライン方向を考慮して真円を最密充填配列した様子を示す概略図である。
【図10】A方向の平均の液滴間隔WaとB方向の平均の液滴間隔Wbとの比、および、液滴が拡張した時の楕円形状の長軸半径と短軸半径の比が一致するときの上記複数の液滴の拡張の様子を示す概略図である。
【図11】凹凸パターンと組成物配置面とが対向した状態で所定の位置合わせが行われたときの異物と上記少なくとも1つの液滴との位置関係を示す概略切断部端面図である。
【図12】凹凸パターンと組成物配置面とが対向した状態で所定の位置合わせを行いながら、モールドを硬化性組成物に押し付け、硬化性組成物膜を形成した様子を示す概略切断部端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明するが、本発明はこれに限られるものではない。なお、視認しやすくするため、図面中の各構成要素の縮尺等は実際のものとは適宜異ならせてある。
【0033】
本発明のモールドに付着した異物の除去方法の実施形態について説明する。図1Aは、実施形態の異物の除去方法に係るモールドを示す概略断面図である。図1Bは、図1Aにおけるモールドの凹凸パターン領域の一部の断面を示す概略拡大図である。図2Aは、モールド上の異物付着位置を示す概略上面図である。図2Bは、基板上の異物対応位置を示す概略上面図である。図3は、モールドの底面から見た異物付着位置を示す概略底面図である。
【0034】
本実施形態の異物の除去方法は、モールド1上の位置であって異物Fの存在を表す異物付着位置P1を検出して、この異物付着位置P1に関する付着位置情報を取得し、基板2上の位置であって凹凸パターン13と基板2の組成物配置面とが対向した状態で所定の位置合わせが行われたとき異物付着位置P1に対応する位置である異物対応位置Q1に関する対応位置情報を、付着位置情報に基づいて作成し、対応位置情報に基づいて、光硬化性組成物からなる少なくとも1つの液滴Daを異物対応位置Q1に配置し、凹凸パターン13と組成物配置面とが対向した状態で上記所定の位置合わせを行いながら、モールド1を光硬化性組成物に押し付け、光硬化性組成物を硬化せしめ、モールド1を光硬化性組成物から剥離し、基板2上に塗布された光硬化性組成物に異物Fを付着させて当該異物Fを除去するものである。
【0035】
(モールド)
モールド1は、例えば図1Aおよび図1Bに示すように、支持部12と、支持部12の表面上に形成された微細な凹凸パターン13とから構成される。
【0036】
支持部12の材料は、例えばシリコン、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、タンタルおよびタングステン等の金属材料、並びにそれらの酸化物、窒化物および炭化物とすることができる。具体的には、支持部12の材料としては、酸化シリコン、酸化アルミニウム、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラスおよびソーダガラス等を挙げることができる。
【0037】
凹凸パターン13の形状は、特に限定されず、ナノインプリントの用途に応じて適宜選択される。例えば典型的なパターンとして図1Aおよび図1Bに示すようなライン&スペースパターンである。そして、ライン&スペースパターンの凸部の長さ、凸部の幅W1、凸部同士の間隔W2および凹部底面からの凸部の高さ(凹部の深さ)Hは適宜設定される。例えば、凸部の幅W1は10〜100nm、より好ましくは20〜70nmであり、凸部同士の間隔W2は10〜500nm、より好ましくは20〜100nmであり、凸部の高さHは10〜500nm、より好ましくは30〜100nmである。また、凹凸パターン13を構成する凸部の形状は、その他、矩形、円および楕円等の断面を有するドットが配列したような形状でもよい。
【0038】
モールド1は、例えば以下の手順により製造することができる。まず、モールド基材上に、スピンコートなどでノボラック系樹脂、PMMA(ポリメチルメタクリレート)等のアクリル樹脂などを主成分とするフォトレジスト液を塗布し、フォトレジスト層を形成する。その後、モールド基材にレーザー光(又は電子ビーム)を所望の凹凸パターンに対応して変調しながら照射し、フォトレジスト層表面にパターンを露光する。その後、フォトレジスト層を現像処理し、露光部分を除去して、除去後のフォトレジスト層の凹凸パターンをマスクにしてRIEなどにより選択エッチングを行い、所定の凹凸パターンを有するモールドを得る。
【0039】
モールド1は、硬化性組成物とモールド表面との剥離性を向上させるため、その表面に離型処理を行ったものを用いてもよい。このような離型処理は、シリコーン系やフッ素系などのシランカップリング剤を用いて行うことが好ましい。例えば、ダイキン工業株式会社製のオプツールDSXや、住友スリーエム株式会社製のNovec EGC-1720等、市販の離型剤も好適に用いることができる。
【0040】
(除去対象とする異物)
本発明において除去対象とする異物Fは、ナノインプリントを実施する空間の清浄度、使用する基板2および硬化性組成物の清浄度、並びに、モールド1および基板2のハンドリング方法等によって様々である。例えばナノインプリントにおける典型的な異物Fとしては、NaClおよびKCl等の無機化合物(人の汗に含まれる成分)、SiおよびSiO2等のSi系無機物(モールド1や基板2の欠片)、有機物、並びに上記以外の環境由来の様々な塵埃が挙げられる。有機物としては具体的には、モールド1や基板2のキャリーケース、ハンドリング器具部材、および保持部材等の有機材料からなる器具の欠片、並びに人の皮膚および毛髪等のタンパク質が挙げられる。異物Fの大きさは様々であるが、本発明で特に対象とする大きさの範囲は、100um以下、好ましくは10um以下、更に好ましくは5um以下の異物とする。大きさが100umを超える異物Fを除去する際は、凹凸パターン13の微細構造が欠損することを避けるため、薬液洗浄等を選択した方が好ましいためである。異物Fの大きさとは、例えば異物Fに外接する最小の球の直径である。
【0041】
(モールドに付着した異物に関する情報の取得方法)
モールド1に付着した異物Fの付着位置情報および形状情報の取得方法は特に制限されるものではないが、表面欠陥検査装置、走査電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)、光学顕微鏡、レーザー顕微鏡などの測定機器が用いられる。上記方法で異物Fの付着位置情報、形状情報を取得し、上記少なくとも1つの液滴の配置位置および上記少なくとも1つの液滴の全液滴量に反映させる。付着位置情報は、例えばモールドの外縁部からの相対座標で求めることができる。このような場合、モールドが四角形の場合は四隅からの相対座標、ウエハ型の場合はオリフラ端部(ノッチ)からの相対座標を用いる。また、付着位置情報は、モールド1上に上記測定機器で判別可能なマーク(例えばアライメントマーク)をあらかじめ形成し、そのマークからの相対座標を求めても良い。形状情報は、モールド1を直上(図1Aにおける上方)から見たときの異物Fのモールド1上における占有面積、外縁形状、およびモールド1の表面からの高さ等である。
【0042】
(異物付着位置)
モールド1上の異物Fの存在を表す「異物付着位置」とは、例えば異物Fの形状を上面からモールド1に投影した時の投影領域から抽出した代表点とすることができる。異物付着位置P1に関する付着位置情報とは、例えば図2Aに示されるように、異物Fがある基準点P0からどの位置にあるのかを特定するための情報である。例えば図2Aでは、あるアライメントマーク14aを基準点P0としてモールド1上にxy平面を規定し、異物Fが存在する位置P1を当該xy平面上における座標として表現している。
【0043】
(基板)
例えばSiモールドのような光透過性のないモールドに対しては、光硬化性組成物への露光を可能とするために石英基板が好ましい。石英基板は、光透過性を有し、厚みが0.3mm以上であれば、特に制限されることなく、目的に応じて適宜選択される。例えば、石英基板表面はシランカップリング剤で被覆されることが好ましい。
【0044】
また、上記「光透過性を有する」とは、具体的には、組成物配置面から出射するように基板の他方の面から光を入射した場合に、光硬化性組成物膜が十分に硬化することを意味する。上記他方の面から上記組成物配置面へ進行する波長200nm以上の光の透過率が5%以上であることが好ましい。
【0045】
石英基板の厚みは、通常0.3mm以上が好ましい。0.3mm以下では、ハンドリングやインプリント中の押圧で破損しやすい。
【0046】
一方、例えば石英モールドのような光透過性のあるモールドに対する基板は、その形状、構造、大きさ、材質等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。形状としては、例えば、情報記録媒体である場合には、円板状である。構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。材質としては、基板材料として公知のものの中から、適宜選択することができ、例えば、シリコン、ニッケル、アルミニウム、ガラス、樹脂、などが挙げられる。これらの基板材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。基板は、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。基板の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましい。基板の厚みが0.05mm未満であると、被パターン形成体とモールドとの密着時に基板側に撓みが発生し、均一な密着状態を確保できない可能性がある。
【0047】
基板2の表面のうち後述する硬化性組成物からなる少なくとも1つの液滴Daが配置される面が組成物配置面となる。基板2には、図2Bに示されるように、凹凸パターン13と組成物配置面とが対向した状態で所定の位置合わせが行えるようアライメントマーク24a〜dを有している。
【0048】
(異物対応位置)
基板2上の異物対応位置Q1は、凹凸パターン13と基板2の組成物配置面とが対向した状態で所定の位置合わせが行われたとき異物付着位置P1に対応する位置である。異物対応位置Q1に関する対応位置情報とは、例えば図2Bに示されるように、異物対応位置Q1がある基準点Q0からどの位置にあるのかを特定するための情報である。例えば図2Bでは、あるアライメントマーク24aを基準点Q0として基板2上にxy平面を規定し、異物対応位置Q1を当該xy平面上における座標として表現している。所定の位置合わせとは、モールド1を硬化性組成物に押し付ける際に実際に行う位置合わせ方法と同じ方法であることを意味する。例えば本実施形態では、図3に示されるように、モールド1をあるy軸を回転軸として180°回転させて、モールド1上のアライメントマーク14a、14b、14cおよび14dがそれぞれ基板2上のアライメントマーク24a、24b、24cおよび24dに合わせられる。したがって、異物付着位置P1の座標が(a,b)である場合、異物対応位置Q1の座標は、(−a,b)となる。なお上記では、モールド1上の基準点および基板2上の基準点が、凹凸パターンと基板の組成物配置面とが対向した状態で所定の位置合わせが行われたときに対応関係にある場合について説明したが、それぞれの基準点は、互いの位置関係が既知となるようにすれば必ずしも対応する必要はない。
【0049】
(硬化性組成物)
硬化性組成物としては、光硬化性組成物、熱硬化性組成物等の硬化型の組成物を用いることができ、特に光硬化性組成物が好ましい。
【0050】
光硬化性組成物は、特に制限されるものではないが、本実施形態では例えば重合性化合物に、光重合開始剤(2質量%程度)、フッ素モノマー(0.1〜1質量%)を加えて調製された光硬化性組成物を用いることができる。また、必要に応じて酸化防止剤(1質量%程度)を添加することもできる。上記の手順により作成した光硬化性組成物は波長360nmの紫外光により硬化する。溶解性の悪いものについては少量のアセトンまたは酢酸エチルを加えて溶解させた後、溶媒を留去することが好ましい。
【0051】
異物が有機材料からなるものである場合には、硬化性組成物は分子量1000以下の重合性化合物を含有することが好ましい。硬化性組成物が分子量1000以下の成分からなる重合性化合物を含むことにより、異物の除去効率を向上させることができる。これは、低分子量の重合性化合物が有機物からなる異物の内部に浸透しやすくなること、および異物とモールド間の密着部に浸透しやすくなることにより異物をモールドから引き剥がす効果が高まることによる。また、硬化性組成物がO、N、S等のヘテロ元素を含有する重合性化合物を含むと、異物表面と重合性化合物との親和性が高まる。親和性が高まると異物と硬化性組成物間の付着力が向上し、異物をモールドから引き剥がす効果をより高めることができる。更に、硬化性組成物が異物表面と反応性のある官能基を有する成分を含むことにより、異物と硬化性組成物間との付着力が向上し、異物をモールドから引き剥がす効果をより高めることができる。
【0052】
一方、異物が無機材料からなるものである場合には、硬化性組成物は異物の表面と反応性のある官能基を持つ重合性化合物を含有することが好ましい。これにより、無機材料を含む異物の除去効率を向上させることができる。例えば硬化性組成物は、異物表面の無機材料と反応性のある官能基と、硬化性組成物中の重合性化合物と反応性のあるラジカル重合性またはカチオン重合性の反応性基、または硬化性組成物中の水酸基、チオール基およびアミノ基等との縮合反応性を有するイソシアネート基およびカーボネート基等の反応性基とを有するカップリング剤を0.1〜20質量%含むことが好ましい。カップリング剤としては、具体的には、例えばKBM503、KBM5103、KBM403、KBM9103、KBM9007(いずれも信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0053】
また、重合性化合物は、官能基数が2以上の多官能重合性化合物を10wt%以上含有することが好ましい。多官能重合性化合物を含むことで、硬化後の硬化性組成物膜の剛性が増し、異物Fを捕獲した際のモールドからの剥離をより確実なものとすることができる。
【0054】
重合性化合物としては、ベンジルアクリレート(ビスコート#160:大阪有機化学株式会社製)、エチルカルビトールアクリレート(ビスコート#190:大阪有機化学株式会社製)、ポリプロピレングリコールジアクリレート(アロニックスM−220:東亞合成株式会社製)、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート(アロニックスM−310:東亞合成株式会社製)等の他、下記構造式(1)で表される化合物等を挙げることができる。
【0055】
構造式(1):
【化1】
【0056】
また、重合開始剤としては、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(IRGACURE 379:豊通ケミプラス株式会社製)等のアルキルフェノン系光重合開始剤を挙げることができる。
【0057】
また、フッ素モノマーとしては、下記構造式(2)で表される化合物等を挙げることができる。
【0058】
構造式(2):
【化2】
【0059】
硬化性組成物の粘度は8〜20cPであることが好ましく、硬化性組成物の表面エネルギーは25〜35mN/mであることが好ましい。ここで、硬化性組成物の粘度は、RE−80L型回転粘度計(東機産業株式会社製)を用い、25±0.2℃で測定した値である。測定時の回転速度は、0.5cP以上5cP未満の場合は100rpmとし、5cP以上10cP未満の場合は50rpmとし、10cP以上30cP未満の場合は20rpmとし、30cP以上60cP未満の場合は10rpmとした。また、硬化性組成物の表面エネルギーは、“UV nanoimprint materials: Surface energies, residual layers, and imprint quality”, H. Schmitt, L. Frey, H. Ryssel, M. Rommel, C. Lehrer, J. Vac. Sci. Technol. B, Volume 25, Issue 3, 2007, Pages 785-790.に記載の方法を用いた。具体的には、UVオゾン処理をしたSi基板と、オプツールDSX(ダイキン株式会社製)により表面処理をしたSi基板の表面エネルギーをそれぞれ求め、両基板に対する硬化性組成物の接触角から硬化性組成物の表面エネルギーを算出した。
【0060】
(液滴の配置方法)
液滴の配置は、インクジェット法やディスペンス法等を使用して、所定の液滴量(配置された液滴1つ当たりの量)の液滴を基板の所定の位置に塗布することにより実施される。
【0061】
基板2上に硬化性組成物の液滴を配置する際は、所望の液滴量に応じてインクジェットプリンターまたはディスペンサーを使い分けても良い。例えば、液滴量が100nl未満の場合はインクジェットプリンターを用い、100nl以上の場合はディスペンサーを用いる等の選択が可能である。
【0062】
硬化性組成物をノズルから吐出するインクジェットヘッドには、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式などが挙げられる。これらの中でも、液適量(配置された液滴1つ当たりの量)や吐出速度の調整が可能なピエゾ方式が好ましい。基板2上に硬化性組成物の液滴を配置する前には、あらかじめ液滴量や吐出速度を設定及び調整する。例えば、液適量は、異物Fの形状情報に基づいて、異物Fの空間体積が大きいと判断される場合には多くしたり、異物の空間体積が小さいと判断される場合、および異物がない領域に塗布する場合は少なくしたりして調整することが好ましい。このような調整は、液滴吐出量(吐出された液滴1つ当たりの量)に応じて適宜制御される。具体的には、液滴量を5plと設定する場合には、液滴吐出量が1plであるインクジェットヘッドを用いて同じ場所に5回吐出するように、液滴量を制御する。本発明において、液滴量は1〜10plである。液滴量は、例えば事前に同条件で基板上に配置した液滴の3次元形状を共焦点顕微鏡等により測定し、その形状から体積を計算することで求められる。
【0063】
本発明では、上記少なくとも1つの液滴Daが異物対応位置Q1に配置される。「少なくとも1つの液滴」とは、異物を取り込むことを目的として異物対応位置および/またはその近傍に配置される1つの液滴または2以上の液滴群を意味する。取得した異物Fの付着位置情報および形状情報に基づいて、基板2上における少なくとも1つの液滴Daの配置位置および液滴量を調整する。更に、その形状情報に基づいて硬化性組成物膜内に異物Fを完全に取り込むことができるように基板2上の異物対応位置周辺における液滴配置密度を調整することが好ましい。図4は、異物対応位置Q1に上記少なくとも1つの液滴Daを配置する方法の例を示す概略図である。具体的には上記少なくとも1つの液滴Daを異物対応位置Q1に配置する方法としては、例えば図4に示されるように、液滴の中心が異物対応位置Q1と一致するように1つの液滴Daを配置する方法(図4a)、または液滴の外縁が異物対応位置Q1を含むがその中心は異物対応位置Q1と一致しないように1つの液滴Daを配置する方法(図4b)が挙げられる。また、異物Fの形状や大きさに合わせて異物対応位置Q1周辺における液滴配置密度を調整するため、異物対応位置周辺のみに上記少なくとも1つの液滴を配置するようにしてもよいし(図4c)、液滴の外縁が異物対応位置Q1を含むように1つの液滴を配置し、かつ異物対応位置Q1周辺にも1以上の液滴を配置するように上記少なくとも1つの液滴Daを配置してもよい(図4d)。
【0064】
また、本発明において、モールド1を硬化性組成物に押し付けた際、基板2上のパターン対応領域の全体に、気泡に起因する未充填欠陥なく硬化性組成物膜が形成されるように、パターン対応領域に硬化性組成物からなる複数の液滴を配置することが好ましい。「複数の液滴」とは、硬化性組成物膜を形成することを目的として基板2上のパターン対応領域に配置される2以上の液滴群を意味する。なお、上記「少なくとも1つの液滴」と当該「複数の液滴」とは明確な区別はなく、上記「少なくとも1つの液滴」および当該「複数の液滴」の両方に該当する液滴もある。パターン対応領域とは、基板上の領域であって凹凸パターンと組成物配置面とが対向した状態で上記所定の位置合わせが行われたとき凹凸パターンに対応する領域である。気泡に起因する未充填欠陥が硬化性組成物膜に形成されると、この未充填欠陥周辺の硬化性組成物が凹凸パターン13の凹部に付着して、モールドを硬化性組成物から剥離した後に残渣となる可能性がある。上記のような方法により、パターン対応領域全体にわたって、気泡に起因する未充填欠陥が硬化性組成物膜に形成されることを抑制することができる。
【0065】
上記のようにして液滴量を調整した後、所定の液滴配置パターンに従って、基板上に液滴を配置する。液滴配置パターンは、基板上の液滴配置に対応する格子点群からなる2次元座標情報により構成される。
【0066】
(ライン状凹凸パターンの場合の液滴配置)
そして、基板上のパターン対応領域に上記複数の液滴を配置する場合において、凹凸パターンがライン状の凸部および凹部から構成されるライン状凹凸パターンである場合には、ライン状凹凸パターンのライン方向に略平行な方向であるA方向に沿った液滴間隔が、このA方向に略垂直な方向であるB方向に沿った液滴間隔より長くなるように、上記複数の液滴を配置することが好ましい。ここで、ライン状凹凸パターンの「ライン方向に略平行な方向」とは、ライン状凹凸パターンのライン方向の他、本発明の作用効果が得られる範囲でこのライン方向と実質的に同一の方向も含む意味であり、好ましくはライン方向から±30°の角度範囲にある方向を意味し、さらに好ましくはライン方向から±15°の角度範囲にある方向を意味する。一方、「A方向に略垂直な方向」とは、A方向に垂直な方向の他、本発明の作用効果が得られる範囲でこのA方向に垂直な方向と実質的に同一の方向も含む意味であり、好ましくはA方向に垂直な方向から±30°の角度範囲にある方向を意味し、さらに好ましくはA方向に垂直な方向から±15°の角度範囲にある方向を意味する。
【0067】
「ライン状凹凸パターン」とは、パターンを液滴に押し付けた際にそのパターン形状に起因して、液滴の拡張方向に異方性が生じて液滴の形状を楕円に近似することができるような凹凸パターンを意味し、特に複数の液滴の楕円形状の長軸方向が一定の方向を向くような凹凸パターンを「直線状凹凸パターン」という。
【0068】
ライン状凹凸パターンの「ライン方向」とは、前述したように、モールドの凹凸パターン形成面に沿った方向のうち液滴が拡張しやすい方向であり、言い換えれば、モールドの凹凸パターン形成面に沿った方向であって、ライン状凹凸パターンを液滴に押し付けた際に形成される液滴の形状を楕円に近似した場合の楕円の長軸に沿った方向に対応する方向ということもできる。また、直線状凹凸パターンの「直線方向」とは、上記ライン方向であって、特に複数の楕円の長軸方向に沿った一定の方向を意味するものとする。
【0069】
例えば、図5a〜dは、ライン状凹凸パターンの例である。図5a、図5bおよび図5cは、細長い凸部13aが平行に配列したライン&スペース型の凹凸パターンを示す概略図である。図5dは、ドット状の凸部13aが一方向に密に配置された列が平行に配列されたパターンを示す概略図である。これらのようなパターンでは、塗布された液滴が凸部13aと他の凸部13aとの間を伝って拡張する方が拡張しやすくなるため、その拡張に異方性が生じ、拡張した液滴の形状が楕円のようになる。したがって、ライン方向とは細長い凸部の長さ方向に沿った方向、またはドット状の凸部が密に配置された列の長さ方向に沿った方向ということもできる。図5a〜dでは、凸部13aが直線状に形成および/または配列された場合の例について示しているが、このような直線状のパターンに限らず、これらは曲線状におよび/または蛇行するように形成および/または配列されてもよい。なお、図5eは、ドット状の凸部13aが縦横に均等に配置されたパターンを示す概略図であるが、液滴の拡張方向について異方性が明確に現れないため、当該パターンは本明細書におけるライン状凹凸パターンには含まれない。
【0070】
上記のような液滴配置とするのは、ライン状凹凸パターンのライン方向に沿って液滴の拡張の異方性が生じることを考慮したものである。例えば、図6は、石英基板等の透明な基板上に液滴Dを配置し、それを凹凸パターンのない平坦な板9によって押し付けた場合に、当該透明な基板側から観察したその液滴Dの拡張する様子を示す概略図である。図7は、直線状凹凸パターン13を有するモールド1によって押し付けた場合に、同様に観察したその液滴Dの拡張する様子を示す概略図である。図6のような場合には、液滴Dは等方的に拡張するため、基本的に液滴Dの配置は縦横等の方向を考慮する必要なく均等に配置していれば特に問題は生じず、硬化性組成物膜4が形成される。しかしながら、図7のような場合には、液滴Dの拡張に異方性が生じるため、同じ液滴量としたときその直線方向を考慮しなければ、つまりA方向の液滴間隔WaおよびB方向の液滴間隔Wbが等しいままでは、液滴Dが拡張しやすいA方向では液滴Dの量が過剰となり硬化性組成物膜4の厚みムラが生じ、拡張しにくいB方向では液滴Dの量が不足し残留気体による膜の欠陥が生じる可能性がある。そこで、本発明は、図8に示すように、直線状凹凸パターン13を有するモールド1を用いる場合には、この凹凸パターンの直線方向、つまり液滴Dの拡張の容易性および困難性を考慮し、A方向の液滴間隔Waを広めにB方向の液滴間隔Wbを狭めに液滴Dの配置を設定することにより、直線方向を考慮しない場合に比して、硬化性組成物膜4の厚みムラおよび残留気体による欠陥を抑制するものである。
【0071】
また、A方向の平均の液滴間隔WaとB方向の平均の液滴間隔Wbとの比Wa/Wbが下記式(1)を満たすことが好ましい。
【0072】
1.8≦Wa/Wb≦0.52V1/3/d・・・(1)
式(1)中、Vは塗布される液滴の1箇所当たりの平均体積、dは液滴拡張後の硬化性組成物膜の目標とする平均厚み(残膜も含む)を表す。
【0073】
Wa/Wbの下限を1.8とした理由は、仮に真円で図9のように最密充填配置した場合にA方向の液滴間隔Waは、B方向の液滴間隔Wbの約1.73倍となるため、液滴が楕円形状で拡張する場合にはこの値よりも大きい方が液滴をより効率的に使用することができるためである。
【0074】
一方、Wa/Wbの上限を0.52V1/3/dとした理由は、塗布される液滴の1箇所当たりの平均体積Vおよび所望の硬化性組成物膜の平均厚みdによって、実際の液滴のA方向の拡張が制限されるためである。この値は具体的には下記のように導出される。
【0075】
図10に示されるように、液滴配置を決定する際には、拡張した液滴の重なり合う部分を最小にするため、拡張した液滴の形状を楕円形状に近似したとき、この楕円がA方向(長軸方向)およびB方向(短軸方向)の隣接する他の楕円と同時に接するような状態を経て拡張することが好ましい。このことは、Wa/Wbの値が、楕円の長軸半径raと短軸半径rbとの比ra/rbと一致することが好ましく、Wa/Wbの値の範囲は、ra/rbの値の取りうる範囲に従って決定されることを意味している。
【0076】
そこで、以下において、塗布された液滴の1箇所当たりの体積がVであり、所望の硬化性組成物膜の平均厚みがdである場合に、上記ra/rbの値がどのような範囲をとりうるかについて説明する。
【0077】
まず、上記設定よりV=π・ra・rb・dであるため、下記式(2)が成立する。
【0078】
【数1】
【0079】
ここで通常、短軸半径rbと、拡張前の液滴接触面半径r(拡張前の液滴と基板との接触面を真円に近似したときのその真円の半径)とがrb≧rの関係を有するため(rb=rは、液滴がB方向に拡張しない場合を意味する。)、ra/rbの取りうる範囲は下記式(3)となる。
【0080】
【数2】
【0081】
一方、拡張前の液滴接触面半径rは、液滴の体積Vおよび接触角θを用いて下記式(4)のように表すことができる。
【0082】
【数3】
【0083】
これより、式(4)を式(3)に代入すると、下記式(5)が得られ、ここで下記式(6)を適用すると下記式(7)が得られる。
【0084】
【数4】
【0085】
ここで、式(6)のF(θ)は接触角θにのみ依存する関数である。通常接触角θは、液滴と基板との密着性を考慮すると小さい方が好ましく、液滴および基板の表面エネルギーを調整することにより、少なくとも0°<θ≦90°、好ましくは0°<θ≦30°、さらに好ましくは0°<θ≦10°となるように設定される。そこで、0°<θ≦90°の場合には、F(θ)は単調増加関数でありかつ0<F(θ)≦0.52であることを考慮して、下記式(8)が得られる。
【0086】
【数5】
【0087】
以上の理由により、Wa/Wbの上限を0.52V1/3/dとした。
【0088】
(モールドと硬化性組成物の接触工程)
モールドと硬化性組成物を接触する前に、モールド1と基板2間の雰囲気を減圧または真空雰囲気にすることで異物Fの除去効率を向上させ、かつ残留気体を低減する。ただし、高真空雰囲気下では硬化前の硬化性組成物が揮発し、均一な膜厚を維持することが困難となる可能性がある。そこで、好ましくはモールド1と基板2間の雰囲気を、He雰囲気または減圧He雰囲気にすることで残留気体を低減する。Heは石英基板を透過するため、取り込まれた残留気体(He)は徐々に減少する。Heの透過には時間を要すため減圧He雰囲気とすることがより好ましい。減圧雰囲気は、1〜90kPaであることが好ましく、1〜10kPaが特に好ましい。
【0089】
モールドと、硬化性組成物を塗布した基板は所定の相対位置関係となるように両者を位置合わせした後に接触させる(図11)。位置合わせにはアライメントマークを用いることが好ましい。アライメントマークは光学顕微鏡やモアレ干渉法等で検出可能な凹凸パターンで形成される。位置合わせ精度は好ましくは10μm以下、更に好ましくは1μm以下である。位置合わせ精度が低いと、液滴と異物の位置がずれてしまい、硬化性組成物膜内に異物を完全に取り込むことができなくなってしまう。
【0090】
また、透明なモールド又は基板を介してモールドに付着した異物を観察しながら、光硬化性組成物を厚く塗布した領域と異物を接触させても良い。
【0091】
さらに、本発明において、モールドを硬化性組成物に押し付けた後、硬化性組成物を硬化せしめる前に、モールドおよび/または基板を介して異物に超音波を照射することが好ましい。また本発明において、硬化性組成物が光硬化性組成物である場合には、モールドを硬化性組成物に押し付けた後、光硬化性組成物を硬化せしめる前に、モールドおよび/または基板を加熱することが好ましい。これにより、異物内部、及び異物とモールドの付着部に硬化性組成物を効率的に浸透させ、異物の除去効率を向上させることができる。
【0092】
(モールドの押付け工程)
モールド1が硬化性組成物に押し付けられることにより、上記少なくとも1つの液滴Daおよび上記複数の液滴Dbが拡張して硬化性組成物膜4が形成される(図12)。モールドの押し付け圧は、100kPa以上、10MPa以下の範囲で行う。圧力が大きい方が、硬化性組成物の流動が促進され、また残留気体の圧縮、残留気体の硬化性組成物への溶解、石英基板中のHeの透過も促進し、除去効率が向上する。しかし、加圧力が強すぎるとモールド接触時に異物を噛みこんだ際にモールド及び基板を破損する可能性がある。よって、モールドの押し付け圧は、100kPa以上、10MPa以下が好ましく、より好ましくは100kPa以上、5MPa、更に好ましくは100kPa以上、1MPa以下となる。100kPa以上としたのは、大気中でインプリントを行う際、モールドと基板間が液体で満たされている場合、モールドと基板間が大気圧(約101kPa)で加圧されているためである。
【0093】
(モールドの剥離工程)
モールド1を押し付けて硬化性組成物膜4を形成した後、モールド1を硬化性組成物膜から剥離する。剥離させる方法としては、例えばモールドまたは基板のどちらかの外縁部を保持し、他方の基板またはモールドの裏面を吸引保持した状態で、外縁の保持部もしくは裏面の保持部を押圧と反対方向に相対移動させることで剥離させる方法が挙げられる。
【0094】
以下本発明の実施例について説明する。
【0095】
<実施例>
(モールドの作製)
Si基材上に、スピンコートによりPMMA(polymenthyl methacrylate)などを主成分とするフォトレジスト液を塗布し、フォトレジスト層を形成した。その後、Si基材をXYステージ上で走査しながら、線幅100nm、ピッチ200nmのラインパターンに対応して変調した電子ビームを照射し、10mm角の範囲のフォトレジスト層全面に直線状凹凸パターンを露光した。また、10mm角領域の4隅に対応する位置の外側に線幅10um、長さ50umの線が交差した十字パターンを露光した。
【0096】
その後、フォトレジスト層を現像処理し、露光部分を除去して、除去後のフォトレジスト層のパターンをマスクにしてRIEにより溝深さが80nmになるように選択エッチングを行い、直線状凹凸パターンと十字型のアライメントマークを有するSiモールドを得た。
【0097】
上記モールドを用いて多数回インプリントした結果、モールド上に複数の異物が付着した。
【0098】
(光硬化性組成物)
上記構造式(1)で表される化合物を48wt%、アロニックスM220を48wt%、IRGACURE 379を3wt%、上記構造式(2)で表される化合物を1wt%含有する光硬化性組成物Aを調整した。また、上記構造式(1)で表される化合物を96wt%、IRGACURE 379を2wt%、上記構造式(2)で表される化合物を1wt%、KBM−5103(信越化学工業株式会社製)を1wt%含有する光硬化性組成物Bを調整した。光硬化性組成物Bは、無機材料からなる異物表面と反応性のある官能基としてアルコキシシラン基を持つKBM−5103をモノマー化合物として含有している。
【0099】
(基板)
基板には厚さ0.525mmの石英基板を使用した。石英基板にはモールドのアライメントマークに対応する位置に、同じ寸法の十字型アライメントマークをあらかじめ形成した。光硬化性組成物AおよびBとの密着性に優れるシランカップリング剤であるKBM−5103により、石英基板の表面に表面処理をした。KBM−5103をPGMEAで1wt%に希釈し、スピンコート法により基板表面に塗布した。続いて、塗布基板をホットプレート上で120℃、20分の条件でアニールし、シランカップリング剤を基板表面に結合させた。
【0100】
(異物の検出)
モールド上の異物の検出には測長可能なXYステージを持つ市販のレーザー顕微鏡を使用した。異物の位置座標はアライメントマークの一つを原点とし、その原点に対する相対座標(an,bn)としてそれぞれ求めた。nは複数の異物に対する通し番号である。また、三次元計測により異物の形状情報を占有面積S及び高さhとしてそれぞれ求めた。
【0101】
(光硬化性組成物の塗布工程)
ピエゾ方式のインクジェットプリンターであるFUJIFILM Dimatix社製DMP−2831を使用した。インクジェットヘッドには専用の10plヘッドであるDMC−11610を使用した。液滴量が所定の値となるように、あらかじめ吐出条件を設定及び調整した。所定の領域内におけるパターンの凹部体積から残膜厚が約10nmになるように液滴配置密度を計算し、格子間隔450umの正方格子からなる液滴配置パターンを作成した。次に、異物の検出時に原点としたアライメントマークに対応する基板側のアライメントマークを原点とし、基板上で異物対応位置の相対座標となる(−an,bn)の位置に少なくとも1つの液滴を配置するように液滴配置パターンを修正した。更に、異物を中心とした半径rの領域に配置された少なくとも1つの液滴の全液滴量に相当する体積がVとなり、かつ少なくとも1つの液滴の基板上の占有面積がSを超えるように液滴配置パターンを更に修正した。この時、基板上で合一した一つの液滴の体積がVとなっても良いし、2以上の液滴の合計体積がVとなってもよい。
【0102】
なお、Vは以下の式を満たす。
V=πr2h
100S≧πr2≧S
【0103】
(モールド押付け工程)
モールドと石英基板をギャップが0.1mm以下になる位置まで近接させ、石英基板の背面から基板上のアライメントマークとモールド上のアライメントマークが一致するように位置合わせをした。
【0104】
モールドと石英基板間の空間を99体積%以上のHeガスで置換し、He置換後に20kPa以下まで減圧した。減圧He条件下でモールド上の異物を光硬化性組成物からなる液滴に接触させた。接触後に40度に加熱した状態で100kHz以上の超音波を照射することにより、異物内部、及び異物とモールドの付着部に光硬化性組成物を効率的に浸透させ、異物の除去効率を向上させた。
【0105】
接触後、1MPaの押付け圧で1分間加圧し、360nmの波長を含む紫外光により、照射量が300mJ/cm2となるように露光し、光硬化性組成物を硬化させた。
【0106】
(モールド剥離工程)
基板およびモールドの外縁部を機械的に保持、もしくは裏面を吸引保持した状態で、基板またはモールドを押圧と反対方向に相対移動させることでモールドを剥離した。
【0107】
<比較例>
異物付着位置を考慮せず格子間隔450umの正方格子のみで液滴を配置し、He置換後減圧せずにモールドと光硬化性組成物を接触させた。上記以外は、実施例と同様の方法でインプリントした。
【0108】
<結果>
実施例及び比較例によりクリーニングしたモールドをそれぞれ検査した。各モールドに対して、異物のあった複数の座標をレーザー顕微鏡により検査したところ、本発明の方法の方がモールド上の異物を効率よく除去できることを確認した。
【符号の説明】
【0109】
1 モールド
2 基板
4 硬化性組成物膜
13 凹凸パターン
14a〜d モールド上のアライメントマーク
24a〜d 基板上のアライメントマーク
Da 異物対応位置に配置される少なくとも1つの液滴
Db パターン対応領域に配置される複数の液滴
F 異物
P0 モールド上の基準点
P1 異物付着位置
Q0 基板上の基準点
Q1 異物対応位置
Wa A方向の液滴間隔
Wb B方向の液滴間隔
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な凹凸パターンを表面に有するモールドのその表面に付着した異物の除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディスクリートトラックメディア(DTM)やビットパターンドメディア(BPM)等の磁気記録媒体、及び半導体デバイスの製造において、加工対象である基板上に塗布されたレジストへのナノインプリント法を用いたパターン転写技術の利用が期待されている。
【0003】
ナノインプリントは、光ディスク製作では良く知られているエンボス技術を発展させたパターン形成技術である。具体的には、ナノインプリントは、凹凸パターンを形成した型(一般的にモールド、スタンパ、テンプレートとも呼ばれる)を加工対象である基板上に塗布されたレジストに押し付け、レジストを力学的に変形または流動させて微細なパターンを精密に転写する技術である。モールドを一度作製すれば、ナノレベルの微細構造を簡単に繰り返して成型できるため経済的であるとともに、有害な廃棄物および排出物が少ない転写技術であるため、近年、さまざまな分野へも応用が期待されている。
【0004】
従来、このようなナノインプリント用のモールドの洗浄は、硫酸過水および硫酸等による化学洗浄、超音波による物理洗浄、並びにこれらの組合せによる洗浄等、半導体分野において使用される洗浄方法により実施される。しかしながら、硫酸過水および硫酸等による化学洗浄では、高濃度酸を高温で使用する等の理由により作業性が悪くかつ洗浄能力が不十分である。また、洗浄液で凹凸パターンが腐食する可能性もある。さらに、超音波による物理洗浄では、微細な凹凸パターンが欠損してしまうという問題がある。そして、凹凸パターンの欠損は、凹凸パターンが微細になるほど顕著になるという問題もある。
【0005】
ナノインプリント用のモールドでは、正確なパターンを転写できかつ数万回以上の使用に耐える必要があること等から、凹凸パターンの微細構造が腐食しないようにおよび欠損しないように洗浄することが求められる。
【0006】
そこで、特許文献1には、モールドの凹凸パターンに付着した樹脂を除去するため、除去用の樹脂を当該凹凸パターンに塗布し、付着した樹脂と除去用の樹脂を一体化させてから除去用の樹脂を剥離する洗浄方法が開示されている。また、非特許文献1には、インクジェット法を用いたナノインプリントにおいて、モールドに付着した異物が複数回のインプリント後にたまたま除去されていたことの記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−353926号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】K. Selenidis, J. Maltabes, I. McMackin, et al., “Defect Reduction Progress in Step and Flash Imprint Lithography”, Proceedings of SPIE - The International Society for Optical Engineering, Vol. 6730, 67300F (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の方法では、凹凸パターンに付着した樹脂と除去用の樹脂を一体化させることを前提としており、樹脂以外の異物を除去することは困難である。また、除去用の樹脂はモールド上の全体に塗布されており、樹脂の使用量が多くなるという問題もある。一方、非特許文献1の方法では、当該方法がもともと異物の除去を目的とした方法ではないため、異物の除去率が低い。また、非特許文献1の方法では、モールド上の異物が基板表面に直接押し付けられて基板上に付着することにより異物が除去されるため、仮にモールドの洗浄に転用されたとしても、モールド上の異物付着部に押し付け力が集中し、凹凸パターンの微細構造が欠損する可能性があるという問題がある。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、モールドに付着した異物の除去において、より低コストかつ効率的に異物を除去することを可能とする異物の除去方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係るモールドに付着した異物の除去方法は、
微細な凹凸パターンを表面に有するモールドのこの凹凸パターンに付着した異物を、基板上に塗布された硬化性組成物に付着させて除去する異物の除去方法において、
モールド上の位置であって異物の存在を表す異物付着位置を検出して、この異物付着位置に関する付着位置情報を取得し、
基板上の位置であって凹凸パターンと基板の組成物配置面とが対向した状態で所定の位置合わせが行われたとき異物付着位置に対応する位置である異物対応位置に関する対応位置情報を、付着位置情報に基づいて作成し、
対応位置情報に基づいて、硬化性組成物からなる少なくとも1つの液滴を異物対応位置に配置し、
凹凸パターンと組成物配置面とが対向した状態で上記所定の位置合わせを行いながら、モールドを硬化性組成物に押し付け、
硬化性組成物を硬化せしめ、
モールドを硬化性組成物から剥離することを特徴とするものである。
【0012】
本明細書において、「少なくとも1つの液滴を異物対応位置に配置し」とは、異物対応位置を覆うように1つの液滴を配置すること、異物対応位置の近傍領域に異物対応位置を覆わないように1以上の液滴を配置すること、および、異物対応位置を覆うように1つの液滴を配置しかつ異物対応位置の近傍領域に異物対応位置を覆わないように1以上の液滴を配置することを含む意味である。
【0013】
そして、本発明に係る異物の除去方法において、異物の形状を測定してこの形状に関する形状情報を取得し、
この形状情報に基づいて上記少なくとも1つの液滴の全液滴量を増減することが好ましい。この場合、1滴当たりの液滴量を増減することにより上記全液滴量を増減することが好ましい。或いは、上記少なくとも1つの液滴の液滴配置密度を増減することにより上記全液滴量を増減することが好ましい。
【0014】
そして、本発明に係る異物の除去方法において、異物は有機材料からなるものであり、硬化性組成物は分子量1000以下の重合性化合物を含有することが好ましい。
【0015】
或いは、本発明に係る異物の除去方法において、異物は無機材料からなるものであり、硬化性組成物は異物の表面と反応性のある官能基を持つ重合性化合物を含有することが好ましい。この場合において、硬化性組成物は、上記官能基を2以上持つ多官能重合性化合物を10wt%以上含有することが好ましい。
【0016】
そして、本発明に係る異物の除去方法において、モールドを硬化性組成物に押し付けた後、硬化性組成物を硬化せしめる前に、モールドおよび/または基板を介して異物に超音波を照射することが好ましい。
【0017】
そして、本発明に係る異物の除去方法において、硬化性組成物は光硬化性組成物であり、モールドを硬化性組成物に押し付けた後、光硬化性組成物を硬化せしめる前に、モールドおよび/または基板を加熱することが好ましい。
【0018】
そして、本発明に係る異物の除去方法において、モールドおよび基板の間の空間を減圧することが好ましい。
【0019】
そして、本発明に係る異物の除去方法において、モールドを硬化性組成物に押し付けた際、基板上のパターン対応領域の全体に、気泡に起因する未充填欠陥なく硬化性組成物膜が形成されるように、パターン対応領域に硬化性組成物からなる複数の液滴を配置することが好ましい。パターン対応領域とは、基板上の領域であって凹凸パターンと組成物配置面とが対向した状態で上記所定の位置合わせが行われたとき凹凸パターンに対応する領域を意味する。
【0020】
そして、本発明に係る異物の除去方法において、凹凸パターンは、ライン状の凸部および凹部から構成されるライン状凹凸パターンであり、
ライン状凹凸パターンのライン方向に略平行な方向であるA方向に沿った液滴間隔が、このA方向に略垂直な方向であるB方向に沿った液滴間隔より長くなるように、上記複数の液滴を配置することが好ましい。
【0021】
本明細書において、「ライン状凹凸パターン」とは、パターンを液滴に押し付けた際にそのパターン形状に起因して、液滴の拡張方向に異方性が生じて液滴の形状を楕円に近似することができるような凹凸パターンを意味する。
【0022】
ライン状凹凸パターンの「ライン方向」とは、モールドの凹凸パターン形成面に沿った方向のうち液滴が拡張しやすい方向を意味するものとする。
【0023】
「ライン方向に略平行な方向」とは、ライン状凹凸パターンのライン方向の他、本発明の作用効果が得られる範囲でこのライン方向と実質的に同一の方向を含む意味である。
【0024】
「A方向に略垂直な方向」とは、A方向に垂直な方向の他、本発明の作用効果が得られる範囲でこのA方向に垂直な方向と実質的に同一の方向を含む意味である。
【0025】
A方向またはB方向に沿った「液滴間隔」とは、ある液滴とこの液滴からA方向またはB方向にある他の液滴とのA方向またはB方向に沿った距離を意味し、当該他の液滴が複数存在する場合には、それらのうち直近の液滴との距離を意味する。
【0026】
そして、本発明に係る異物の除去方法において、A方向の平均の液滴間隔WaとB方向の平均の液滴間隔Wbとの比Wa/Wbが下記式(1)を満たすことが好ましい。
1.8≦Wa/Wb≦0.52V1/3/d・・・(1)
【0027】
式(1)中、Vは配置された上記複数の液滴の1箇所当たりの平均体積、dは硬化性組成物膜の平均厚みを表す。)
【0028】
本明細書において、A方向またはB方向の「平均の液滴間隔」とは、基板上に配置された上記複数の液滴の中心座標の間隔を、A方向またはB方向に対してパターン対応領域上の少なくとも2箇所以上測定することによって求めた値を意味する。また、ライン状凹凸パターンが不連続的に変化するような場合には、ライン状凹凸パターンが連続的である領域ごとに上記パターン対応領域をさらに分割して、分割された領域ごとに液滴間隔の平均をとってもよい。インクジェット法は、インクジェットヘッドの吐出性能、液物性と基板表面物性との相性、インクジェット装置を使用する環境(温湿度など)、及びインクジェット描画のXY走査系の精度等によって、液滴間隔のシステム上の設計値と実際の値との間に誤差が生じる。よって、インクジェット法により基板上に液滴を配置する際に、インクジェットプリンターのシステム上で設定するA方向とB方向の液滴間隔に誤差が生じる可能性があるため、上記複数の液滴の中心座標の間隔を実際に測定し調整する必要がある。
【0029】
そして、本発明に係る異物の除去方法において、上記少なくとも1つの液滴および/または上記複数の液滴を配置する方法はインクジェット法であることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る異物の除去方法は、特に、モールド上の位置であって異物の存在を表す異物付着位置を検出して、この異物付着位置に関する付着位置情報を取得し、基板上の位置であって凹凸パターンと基板の組成物配置面とが対向した状態で所定の位置合わせが行われたとき異物付着位置に対応する位置である異物対応位置に関する対応位置情報を、付着位置情報に基づいて作成し、対応位置情報に基づいて、硬化性組成物からなる少なくとも1つの液滴を異物対応位置に配置し、凹凸パターンと組成物配置面とが対向した状態で上記所定の位置合わせを行いながら、モールドを硬化性組成物に押し付け、硬化性組成物を硬化せしめ、モールドを硬化性組成物から剥離することを特徴とする。これにより、凹凸パターンと基板の組成物配置面とが対向した状態で上記所定の位置合わせが行われたとき異物付着位置に対応する位置である異物対応位置に、正確に必要な分だけの硬化性組成物を供給することができる。したがって、無駄に硬化性組成物が消費されず、かつ除去対象の異物を硬化性組成物膜に取り込むことができる可能性が飛躍的に向上する。この結果、モールドに付着した異物の除去において、より低コストかつ効率的に異物を除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1A】実施形態の異物の除去方法に係るモールドを示す概略断面図である。
【図1B】図1Aにおけるモールドの凹凸パターン領域の一部の断面を示す概略拡大図である。
【図2A】モールド上の異物付着位置を示す概略上面図である。
【図2B】基板上の異物対応位置を示す概略上面図である。
【図3】モールドの底面から見た異物付着位置を示す概略底面図である。
【図4】異物対応位置に少なくとも1つの液滴を配置する方法の例を示す概略図である。
【図5】ライン状凹凸パターンおよびライン状凹凸パターンではないパターンの例を示す概略図である。
【図6】透明な基板上に上記複数の液滴を配置し、平坦な板によって押し付けた場合に、その複数の液滴の拡張する様子を示す概略図である。
【図7】透明な基板上に上記複数の液滴を配置し、モールドによって押し付けた場合に、その複数の液滴の拡張する様子を示す概略図である。
【図8】ライン方向を考慮して透明な基板上に上記複数の液滴を配置し、モールドによって押し付けた場合に、その複数の液滴の拡張する様子を示す概略図である。
【図9】ライン方向を考慮して真円を最密充填配列した様子を示す概略図である。
【図10】A方向の平均の液滴間隔WaとB方向の平均の液滴間隔Wbとの比、および、液滴が拡張した時の楕円形状の長軸半径と短軸半径の比が一致するときの上記複数の液滴の拡張の様子を示す概略図である。
【図11】凹凸パターンと組成物配置面とが対向した状態で所定の位置合わせが行われたときの異物と上記少なくとも1つの液滴との位置関係を示す概略切断部端面図である。
【図12】凹凸パターンと組成物配置面とが対向した状態で所定の位置合わせを行いながら、モールドを硬化性組成物に押し付け、硬化性組成物膜を形成した様子を示す概略切断部端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明するが、本発明はこれに限られるものではない。なお、視認しやすくするため、図面中の各構成要素の縮尺等は実際のものとは適宜異ならせてある。
【0033】
本発明のモールドに付着した異物の除去方法の実施形態について説明する。図1Aは、実施形態の異物の除去方法に係るモールドを示す概略断面図である。図1Bは、図1Aにおけるモールドの凹凸パターン領域の一部の断面を示す概略拡大図である。図2Aは、モールド上の異物付着位置を示す概略上面図である。図2Bは、基板上の異物対応位置を示す概略上面図である。図3は、モールドの底面から見た異物付着位置を示す概略底面図である。
【0034】
本実施形態の異物の除去方法は、モールド1上の位置であって異物Fの存在を表す異物付着位置P1を検出して、この異物付着位置P1に関する付着位置情報を取得し、基板2上の位置であって凹凸パターン13と基板2の組成物配置面とが対向した状態で所定の位置合わせが行われたとき異物付着位置P1に対応する位置である異物対応位置Q1に関する対応位置情報を、付着位置情報に基づいて作成し、対応位置情報に基づいて、光硬化性組成物からなる少なくとも1つの液滴Daを異物対応位置Q1に配置し、凹凸パターン13と組成物配置面とが対向した状態で上記所定の位置合わせを行いながら、モールド1を光硬化性組成物に押し付け、光硬化性組成物を硬化せしめ、モールド1を光硬化性組成物から剥離し、基板2上に塗布された光硬化性組成物に異物Fを付着させて当該異物Fを除去するものである。
【0035】
(モールド)
モールド1は、例えば図1Aおよび図1Bに示すように、支持部12と、支持部12の表面上に形成された微細な凹凸パターン13とから構成される。
【0036】
支持部12の材料は、例えばシリコン、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、タンタルおよびタングステン等の金属材料、並びにそれらの酸化物、窒化物および炭化物とすることができる。具体的には、支持部12の材料としては、酸化シリコン、酸化アルミニウム、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラスおよびソーダガラス等を挙げることができる。
【0037】
凹凸パターン13の形状は、特に限定されず、ナノインプリントの用途に応じて適宜選択される。例えば典型的なパターンとして図1Aおよび図1Bに示すようなライン&スペースパターンである。そして、ライン&スペースパターンの凸部の長さ、凸部の幅W1、凸部同士の間隔W2および凹部底面からの凸部の高さ(凹部の深さ)Hは適宜設定される。例えば、凸部の幅W1は10〜100nm、より好ましくは20〜70nmであり、凸部同士の間隔W2は10〜500nm、より好ましくは20〜100nmであり、凸部の高さHは10〜500nm、より好ましくは30〜100nmである。また、凹凸パターン13を構成する凸部の形状は、その他、矩形、円および楕円等の断面を有するドットが配列したような形状でもよい。
【0038】
モールド1は、例えば以下の手順により製造することができる。まず、モールド基材上に、スピンコートなどでノボラック系樹脂、PMMA(ポリメチルメタクリレート)等のアクリル樹脂などを主成分とするフォトレジスト液を塗布し、フォトレジスト層を形成する。その後、モールド基材にレーザー光(又は電子ビーム)を所望の凹凸パターンに対応して変調しながら照射し、フォトレジスト層表面にパターンを露光する。その後、フォトレジスト層を現像処理し、露光部分を除去して、除去後のフォトレジスト層の凹凸パターンをマスクにしてRIEなどにより選択エッチングを行い、所定の凹凸パターンを有するモールドを得る。
【0039】
モールド1は、硬化性組成物とモールド表面との剥離性を向上させるため、その表面に離型処理を行ったものを用いてもよい。このような離型処理は、シリコーン系やフッ素系などのシランカップリング剤を用いて行うことが好ましい。例えば、ダイキン工業株式会社製のオプツールDSXや、住友スリーエム株式会社製のNovec EGC-1720等、市販の離型剤も好適に用いることができる。
【0040】
(除去対象とする異物)
本発明において除去対象とする異物Fは、ナノインプリントを実施する空間の清浄度、使用する基板2および硬化性組成物の清浄度、並びに、モールド1および基板2のハンドリング方法等によって様々である。例えばナノインプリントにおける典型的な異物Fとしては、NaClおよびKCl等の無機化合物(人の汗に含まれる成分)、SiおよびSiO2等のSi系無機物(モールド1や基板2の欠片)、有機物、並びに上記以外の環境由来の様々な塵埃が挙げられる。有機物としては具体的には、モールド1や基板2のキャリーケース、ハンドリング器具部材、および保持部材等の有機材料からなる器具の欠片、並びに人の皮膚および毛髪等のタンパク質が挙げられる。異物Fの大きさは様々であるが、本発明で特に対象とする大きさの範囲は、100um以下、好ましくは10um以下、更に好ましくは5um以下の異物とする。大きさが100umを超える異物Fを除去する際は、凹凸パターン13の微細構造が欠損することを避けるため、薬液洗浄等を選択した方が好ましいためである。異物Fの大きさとは、例えば異物Fに外接する最小の球の直径である。
【0041】
(モールドに付着した異物に関する情報の取得方法)
モールド1に付着した異物Fの付着位置情報および形状情報の取得方法は特に制限されるものではないが、表面欠陥検査装置、走査電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)、光学顕微鏡、レーザー顕微鏡などの測定機器が用いられる。上記方法で異物Fの付着位置情報、形状情報を取得し、上記少なくとも1つの液滴の配置位置および上記少なくとも1つの液滴の全液滴量に反映させる。付着位置情報は、例えばモールドの外縁部からの相対座標で求めることができる。このような場合、モールドが四角形の場合は四隅からの相対座標、ウエハ型の場合はオリフラ端部(ノッチ)からの相対座標を用いる。また、付着位置情報は、モールド1上に上記測定機器で判別可能なマーク(例えばアライメントマーク)をあらかじめ形成し、そのマークからの相対座標を求めても良い。形状情報は、モールド1を直上(図1Aにおける上方)から見たときの異物Fのモールド1上における占有面積、外縁形状、およびモールド1の表面からの高さ等である。
【0042】
(異物付着位置)
モールド1上の異物Fの存在を表す「異物付着位置」とは、例えば異物Fの形状を上面からモールド1に投影した時の投影領域から抽出した代表点とすることができる。異物付着位置P1に関する付着位置情報とは、例えば図2Aに示されるように、異物Fがある基準点P0からどの位置にあるのかを特定するための情報である。例えば図2Aでは、あるアライメントマーク14aを基準点P0としてモールド1上にxy平面を規定し、異物Fが存在する位置P1を当該xy平面上における座標として表現している。
【0043】
(基板)
例えばSiモールドのような光透過性のないモールドに対しては、光硬化性組成物への露光を可能とするために石英基板が好ましい。石英基板は、光透過性を有し、厚みが0.3mm以上であれば、特に制限されることなく、目的に応じて適宜選択される。例えば、石英基板表面はシランカップリング剤で被覆されることが好ましい。
【0044】
また、上記「光透過性を有する」とは、具体的には、組成物配置面から出射するように基板の他方の面から光を入射した場合に、光硬化性組成物膜が十分に硬化することを意味する。上記他方の面から上記組成物配置面へ進行する波長200nm以上の光の透過率が5%以上であることが好ましい。
【0045】
石英基板の厚みは、通常0.3mm以上が好ましい。0.3mm以下では、ハンドリングやインプリント中の押圧で破損しやすい。
【0046】
一方、例えば石英モールドのような光透過性のあるモールドに対する基板は、その形状、構造、大きさ、材質等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。形状としては、例えば、情報記録媒体である場合には、円板状である。構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。材質としては、基板材料として公知のものの中から、適宜選択することができ、例えば、シリコン、ニッケル、アルミニウム、ガラス、樹脂、などが挙げられる。これらの基板材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。基板は、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。基板の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましい。基板の厚みが0.05mm未満であると、被パターン形成体とモールドとの密着時に基板側に撓みが発生し、均一な密着状態を確保できない可能性がある。
【0047】
基板2の表面のうち後述する硬化性組成物からなる少なくとも1つの液滴Daが配置される面が組成物配置面となる。基板2には、図2Bに示されるように、凹凸パターン13と組成物配置面とが対向した状態で所定の位置合わせが行えるようアライメントマーク24a〜dを有している。
【0048】
(異物対応位置)
基板2上の異物対応位置Q1は、凹凸パターン13と基板2の組成物配置面とが対向した状態で所定の位置合わせが行われたとき異物付着位置P1に対応する位置である。異物対応位置Q1に関する対応位置情報とは、例えば図2Bに示されるように、異物対応位置Q1がある基準点Q0からどの位置にあるのかを特定するための情報である。例えば図2Bでは、あるアライメントマーク24aを基準点Q0として基板2上にxy平面を規定し、異物対応位置Q1を当該xy平面上における座標として表現している。所定の位置合わせとは、モールド1を硬化性組成物に押し付ける際に実際に行う位置合わせ方法と同じ方法であることを意味する。例えば本実施形態では、図3に示されるように、モールド1をあるy軸を回転軸として180°回転させて、モールド1上のアライメントマーク14a、14b、14cおよび14dがそれぞれ基板2上のアライメントマーク24a、24b、24cおよび24dに合わせられる。したがって、異物付着位置P1の座標が(a,b)である場合、異物対応位置Q1の座標は、(−a,b)となる。なお上記では、モールド1上の基準点および基板2上の基準点が、凹凸パターンと基板の組成物配置面とが対向した状態で所定の位置合わせが行われたときに対応関係にある場合について説明したが、それぞれの基準点は、互いの位置関係が既知となるようにすれば必ずしも対応する必要はない。
【0049】
(硬化性組成物)
硬化性組成物としては、光硬化性組成物、熱硬化性組成物等の硬化型の組成物を用いることができ、特に光硬化性組成物が好ましい。
【0050】
光硬化性組成物は、特に制限されるものではないが、本実施形態では例えば重合性化合物に、光重合開始剤(2質量%程度)、フッ素モノマー(0.1〜1質量%)を加えて調製された光硬化性組成物を用いることができる。また、必要に応じて酸化防止剤(1質量%程度)を添加することもできる。上記の手順により作成した光硬化性組成物は波長360nmの紫外光により硬化する。溶解性の悪いものについては少量のアセトンまたは酢酸エチルを加えて溶解させた後、溶媒を留去することが好ましい。
【0051】
異物が有機材料からなるものである場合には、硬化性組成物は分子量1000以下の重合性化合物を含有することが好ましい。硬化性組成物が分子量1000以下の成分からなる重合性化合物を含むことにより、異物の除去効率を向上させることができる。これは、低分子量の重合性化合物が有機物からなる異物の内部に浸透しやすくなること、および異物とモールド間の密着部に浸透しやすくなることにより異物をモールドから引き剥がす効果が高まることによる。また、硬化性組成物がO、N、S等のヘテロ元素を含有する重合性化合物を含むと、異物表面と重合性化合物との親和性が高まる。親和性が高まると異物と硬化性組成物間の付着力が向上し、異物をモールドから引き剥がす効果をより高めることができる。更に、硬化性組成物が異物表面と反応性のある官能基を有する成分を含むことにより、異物と硬化性組成物間との付着力が向上し、異物をモールドから引き剥がす効果をより高めることができる。
【0052】
一方、異物が無機材料からなるものである場合には、硬化性組成物は異物の表面と反応性のある官能基を持つ重合性化合物を含有することが好ましい。これにより、無機材料を含む異物の除去効率を向上させることができる。例えば硬化性組成物は、異物表面の無機材料と反応性のある官能基と、硬化性組成物中の重合性化合物と反応性のあるラジカル重合性またはカチオン重合性の反応性基、または硬化性組成物中の水酸基、チオール基およびアミノ基等との縮合反応性を有するイソシアネート基およびカーボネート基等の反応性基とを有するカップリング剤を0.1〜20質量%含むことが好ましい。カップリング剤としては、具体的には、例えばKBM503、KBM5103、KBM403、KBM9103、KBM9007(いずれも信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0053】
また、重合性化合物は、官能基数が2以上の多官能重合性化合物を10wt%以上含有することが好ましい。多官能重合性化合物を含むことで、硬化後の硬化性組成物膜の剛性が増し、異物Fを捕獲した際のモールドからの剥離をより確実なものとすることができる。
【0054】
重合性化合物としては、ベンジルアクリレート(ビスコート#160:大阪有機化学株式会社製)、エチルカルビトールアクリレート(ビスコート#190:大阪有機化学株式会社製)、ポリプロピレングリコールジアクリレート(アロニックスM−220:東亞合成株式会社製)、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート(アロニックスM−310:東亞合成株式会社製)等の他、下記構造式(1)で表される化合物等を挙げることができる。
【0055】
構造式(1):
【化1】
【0056】
また、重合開始剤としては、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(IRGACURE 379:豊通ケミプラス株式会社製)等のアルキルフェノン系光重合開始剤を挙げることができる。
【0057】
また、フッ素モノマーとしては、下記構造式(2)で表される化合物等を挙げることができる。
【0058】
構造式(2):
【化2】
【0059】
硬化性組成物の粘度は8〜20cPであることが好ましく、硬化性組成物の表面エネルギーは25〜35mN/mであることが好ましい。ここで、硬化性組成物の粘度は、RE−80L型回転粘度計(東機産業株式会社製)を用い、25±0.2℃で測定した値である。測定時の回転速度は、0.5cP以上5cP未満の場合は100rpmとし、5cP以上10cP未満の場合は50rpmとし、10cP以上30cP未満の場合は20rpmとし、30cP以上60cP未満の場合は10rpmとした。また、硬化性組成物の表面エネルギーは、“UV nanoimprint materials: Surface energies, residual layers, and imprint quality”, H. Schmitt, L. Frey, H. Ryssel, M. Rommel, C. Lehrer, J. Vac. Sci. Technol. B, Volume 25, Issue 3, 2007, Pages 785-790.に記載の方法を用いた。具体的には、UVオゾン処理をしたSi基板と、オプツールDSX(ダイキン株式会社製)により表面処理をしたSi基板の表面エネルギーをそれぞれ求め、両基板に対する硬化性組成物の接触角から硬化性組成物の表面エネルギーを算出した。
【0060】
(液滴の配置方法)
液滴の配置は、インクジェット法やディスペンス法等を使用して、所定の液滴量(配置された液滴1つ当たりの量)の液滴を基板の所定の位置に塗布することにより実施される。
【0061】
基板2上に硬化性組成物の液滴を配置する際は、所望の液滴量に応じてインクジェットプリンターまたはディスペンサーを使い分けても良い。例えば、液滴量が100nl未満の場合はインクジェットプリンターを用い、100nl以上の場合はディスペンサーを用いる等の選択が可能である。
【0062】
硬化性組成物をノズルから吐出するインクジェットヘッドには、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式などが挙げられる。これらの中でも、液適量(配置された液滴1つ当たりの量)や吐出速度の調整が可能なピエゾ方式が好ましい。基板2上に硬化性組成物の液滴を配置する前には、あらかじめ液滴量や吐出速度を設定及び調整する。例えば、液適量は、異物Fの形状情報に基づいて、異物Fの空間体積が大きいと判断される場合には多くしたり、異物の空間体積が小さいと判断される場合、および異物がない領域に塗布する場合は少なくしたりして調整することが好ましい。このような調整は、液滴吐出量(吐出された液滴1つ当たりの量)に応じて適宜制御される。具体的には、液滴量を5plと設定する場合には、液滴吐出量が1plであるインクジェットヘッドを用いて同じ場所に5回吐出するように、液滴量を制御する。本発明において、液滴量は1〜10plである。液滴量は、例えば事前に同条件で基板上に配置した液滴の3次元形状を共焦点顕微鏡等により測定し、その形状から体積を計算することで求められる。
【0063】
本発明では、上記少なくとも1つの液滴Daが異物対応位置Q1に配置される。「少なくとも1つの液滴」とは、異物を取り込むことを目的として異物対応位置および/またはその近傍に配置される1つの液滴または2以上の液滴群を意味する。取得した異物Fの付着位置情報および形状情報に基づいて、基板2上における少なくとも1つの液滴Daの配置位置および液滴量を調整する。更に、その形状情報に基づいて硬化性組成物膜内に異物Fを完全に取り込むことができるように基板2上の異物対応位置周辺における液滴配置密度を調整することが好ましい。図4は、異物対応位置Q1に上記少なくとも1つの液滴Daを配置する方法の例を示す概略図である。具体的には上記少なくとも1つの液滴Daを異物対応位置Q1に配置する方法としては、例えば図4に示されるように、液滴の中心が異物対応位置Q1と一致するように1つの液滴Daを配置する方法(図4a)、または液滴の外縁が異物対応位置Q1を含むがその中心は異物対応位置Q1と一致しないように1つの液滴Daを配置する方法(図4b)が挙げられる。また、異物Fの形状や大きさに合わせて異物対応位置Q1周辺における液滴配置密度を調整するため、異物対応位置周辺のみに上記少なくとも1つの液滴を配置するようにしてもよいし(図4c)、液滴の外縁が異物対応位置Q1を含むように1つの液滴を配置し、かつ異物対応位置Q1周辺にも1以上の液滴を配置するように上記少なくとも1つの液滴Daを配置してもよい(図4d)。
【0064】
また、本発明において、モールド1を硬化性組成物に押し付けた際、基板2上のパターン対応領域の全体に、気泡に起因する未充填欠陥なく硬化性組成物膜が形成されるように、パターン対応領域に硬化性組成物からなる複数の液滴を配置することが好ましい。「複数の液滴」とは、硬化性組成物膜を形成することを目的として基板2上のパターン対応領域に配置される2以上の液滴群を意味する。なお、上記「少なくとも1つの液滴」と当該「複数の液滴」とは明確な区別はなく、上記「少なくとも1つの液滴」および当該「複数の液滴」の両方に該当する液滴もある。パターン対応領域とは、基板上の領域であって凹凸パターンと組成物配置面とが対向した状態で上記所定の位置合わせが行われたとき凹凸パターンに対応する領域である。気泡に起因する未充填欠陥が硬化性組成物膜に形成されると、この未充填欠陥周辺の硬化性組成物が凹凸パターン13の凹部に付着して、モールドを硬化性組成物から剥離した後に残渣となる可能性がある。上記のような方法により、パターン対応領域全体にわたって、気泡に起因する未充填欠陥が硬化性組成物膜に形成されることを抑制することができる。
【0065】
上記のようにして液滴量を調整した後、所定の液滴配置パターンに従って、基板上に液滴を配置する。液滴配置パターンは、基板上の液滴配置に対応する格子点群からなる2次元座標情報により構成される。
【0066】
(ライン状凹凸パターンの場合の液滴配置)
そして、基板上のパターン対応領域に上記複数の液滴を配置する場合において、凹凸パターンがライン状の凸部および凹部から構成されるライン状凹凸パターンである場合には、ライン状凹凸パターンのライン方向に略平行な方向であるA方向に沿った液滴間隔が、このA方向に略垂直な方向であるB方向に沿った液滴間隔より長くなるように、上記複数の液滴を配置することが好ましい。ここで、ライン状凹凸パターンの「ライン方向に略平行な方向」とは、ライン状凹凸パターンのライン方向の他、本発明の作用効果が得られる範囲でこのライン方向と実質的に同一の方向も含む意味であり、好ましくはライン方向から±30°の角度範囲にある方向を意味し、さらに好ましくはライン方向から±15°の角度範囲にある方向を意味する。一方、「A方向に略垂直な方向」とは、A方向に垂直な方向の他、本発明の作用効果が得られる範囲でこのA方向に垂直な方向と実質的に同一の方向も含む意味であり、好ましくはA方向に垂直な方向から±30°の角度範囲にある方向を意味し、さらに好ましくはA方向に垂直な方向から±15°の角度範囲にある方向を意味する。
【0067】
「ライン状凹凸パターン」とは、パターンを液滴に押し付けた際にそのパターン形状に起因して、液滴の拡張方向に異方性が生じて液滴の形状を楕円に近似することができるような凹凸パターンを意味し、特に複数の液滴の楕円形状の長軸方向が一定の方向を向くような凹凸パターンを「直線状凹凸パターン」という。
【0068】
ライン状凹凸パターンの「ライン方向」とは、前述したように、モールドの凹凸パターン形成面に沿った方向のうち液滴が拡張しやすい方向であり、言い換えれば、モールドの凹凸パターン形成面に沿った方向であって、ライン状凹凸パターンを液滴に押し付けた際に形成される液滴の形状を楕円に近似した場合の楕円の長軸に沿った方向に対応する方向ということもできる。また、直線状凹凸パターンの「直線方向」とは、上記ライン方向であって、特に複数の楕円の長軸方向に沿った一定の方向を意味するものとする。
【0069】
例えば、図5a〜dは、ライン状凹凸パターンの例である。図5a、図5bおよび図5cは、細長い凸部13aが平行に配列したライン&スペース型の凹凸パターンを示す概略図である。図5dは、ドット状の凸部13aが一方向に密に配置された列が平行に配列されたパターンを示す概略図である。これらのようなパターンでは、塗布された液滴が凸部13aと他の凸部13aとの間を伝って拡張する方が拡張しやすくなるため、その拡張に異方性が生じ、拡張した液滴の形状が楕円のようになる。したがって、ライン方向とは細長い凸部の長さ方向に沿った方向、またはドット状の凸部が密に配置された列の長さ方向に沿った方向ということもできる。図5a〜dでは、凸部13aが直線状に形成および/または配列された場合の例について示しているが、このような直線状のパターンに限らず、これらは曲線状におよび/または蛇行するように形成および/または配列されてもよい。なお、図5eは、ドット状の凸部13aが縦横に均等に配置されたパターンを示す概略図であるが、液滴の拡張方向について異方性が明確に現れないため、当該パターンは本明細書におけるライン状凹凸パターンには含まれない。
【0070】
上記のような液滴配置とするのは、ライン状凹凸パターンのライン方向に沿って液滴の拡張の異方性が生じることを考慮したものである。例えば、図6は、石英基板等の透明な基板上に液滴Dを配置し、それを凹凸パターンのない平坦な板9によって押し付けた場合に、当該透明な基板側から観察したその液滴Dの拡張する様子を示す概略図である。図7は、直線状凹凸パターン13を有するモールド1によって押し付けた場合に、同様に観察したその液滴Dの拡張する様子を示す概略図である。図6のような場合には、液滴Dは等方的に拡張するため、基本的に液滴Dの配置は縦横等の方向を考慮する必要なく均等に配置していれば特に問題は生じず、硬化性組成物膜4が形成される。しかしながら、図7のような場合には、液滴Dの拡張に異方性が生じるため、同じ液滴量としたときその直線方向を考慮しなければ、つまりA方向の液滴間隔WaおよびB方向の液滴間隔Wbが等しいままでは、液滴Dが拡張しやすいA方向では液滴Dの量が過剰となり硬化性組成物膜4の厚みムラが生じ、拡張しにくいB方向では液滴Dの量が不足し残留気体による膜の欠陥が生じる可能性がある。そこで、本発明は、図8に示すように、直線状凹凸パターン13を有するモールド1を用いる場合には、この凹凸パターンの直線方向、つまり液滴Dの拡張の容易性および困難性を考慮し、A方向の液滴間隔Waを広めにB方向の液滴間隔Wbを狭めに液滴Dの配置を設定することにより、直線方向を考慮しない場合に比して、硬化性組成物膜4の厚みムラおよび残留気体による欠陥を抑制するものである。
【0071】
また、A方向の平均の液滴間隔WaとB方向の平均の液滴間隔Wbとの比Wa/Wbが下記式(1)を満たすことが好ましい。
【0072】
1.8≦Wa/Wb≦0.52V1/3/d・・・(1)
式(1)中、Vは塗布される液滴の1箇所当たりの平均体積、dは液滴拡張後の硬化性組成物膜の目標とする平均厚み(残膜も含む)を表す。
【0073】
Wa/Wbの下限を1.8とした理由は、仮に真円で図9のように最密充填配置した場合にA方向の液滴間隔Waは、B方向の液滴間隔Wbの約1.73倍となるため、液滴が楕円形状で拡張する場合にはこの値よりも大きい方が液滴をより効率的に使用することができるためである。
【0074】
一方、Wa/Wbの上限を0.52V1/3/dとした理由は、塗布される液滴の1箇所当たりの平均体積Vおよび所望の硬化性組成物膜の平均厚みdによって、実際の液滴のA方向の拡張が制限されるためである。この値は具体的には下記のように導出される。
【0075】
図10に示されるように、液滴配置を決定する際には、拡張した液滴の重なり合う部分を最小にするため、拡張した液滴の形状を楕円形状に近似したとき、この楕円がA方向(長軸方向)およびB方向(短軸方向)の隣接する他の楕円と同時に接するような状態を経て拡張することが好ましい。このことは、Wa/Wbの値が、楕円の長軸半径raと短軸半径rbとの比ra/rbと一致することが好ましく、Wa/Wbの値の範囲は、ra/rbの値の取りうる範囲に従って決定されることを意味している。
【0076】
そこで、以下において、塗布された液滴の1箇所当たりの体積がVであり、所望の硬化性組成物膜の平均厚みがdである場合に、上記ra/rbの値がどのような範囲をとりうるかについて説明する。
【0077】
まず、上記設定よりV=π・ra・rb・dであるため、下記式(2)が成立する。
【0078】
【数1】
【0079】
ここで通常、短軸半径rbと、拡張前の液滴接触面半径r(拡張前の液滴と基板との接触面を真円に近似したときのその真円の半径)とがrb≧rの関係を有するため(rb=rは、液滴がB方向に拡張しない場合を意味する。)、ra/rbの取りうる範囲は下記式(3)となる。
【0080】
【数2】
【0081】
一方、拡張前の液滴接触面半径rは、液滴の体積Vおよび接触角θを用いて下記式(4)のように表すことができる。
【0082】
【数3】
【0083】
これより、式(4)を式(3)に代入すると、下記式(5)が得られ、ここで下記式(6)を適用すると下記式(7)が得られる。
【0084】
【数4】
【0085】
ここで、式(6)のF(θ)は接触角θにのみ依存する関数である。通常接触角θは、液滴と基板との密着性を考慮すると小さい方が好ましく、液滴および基板の表面エネルギーを調整することにより、少なくとも0°<θ≦90°、好ましくは0°<θ≦30°、さらに好ましくは0°<θ≦10°となるように設定される。そこで、0°<θ≦90°の場合には、F(θ)は単調増加関数でありかつ0<F(θ)≦0.52であることを考慮して、下記式(8)が得られる。
【0086】
【数5】
【0087】
以上の理由により、Wa/Wbの上限を0.52V1/3/dとした。
【0088】
(モールドと硬化性組成物の接触工程)
モールドと硬化性組成物を接触する前に、モールド1と基板2間の雰囲気を減圧または真空雰囲気にすることで異物Fの除去効率を向上させ、かつ残留気体を低減する。ただし、高真空雰囲気下では硬化前の硬化性組成物が揮発し、均一な膜厚を維持することが困難となる可能性がある。そこで、好ましくはモールド1と基板2間の雰囲気を、He雰囲気または減圧He雰囲気にすることで残留気体を低減する。Heは石英基板を透過するため、取り込まれた残留気体(He)は徐々に減少する。Heの透過には時間を要すため減圧He雰囲気とすることがより好ましい。減圧雰囲気は、1〜90kPaであることが好ましく、1〜10kPaが特に好ましい。
【0089】
モールドと、硬化性組成物を塗布した基板は所定の相対位置関係となるように両者を位置合わせした後に接触させる(図11)。位置合わせにはアライメントマークを用いることが好ましい。アライメントマークは光学顕微鏡やモアレ干渉法等で検出可能な凹凸パターンで形成される。位置合わせ精度は好ましくは10μm以下、更に好ましくは1μm以下である。位置合わせ精度が低いと、液滴と異物の位置がずれてしまい、硬化性組成物膜内に異物を完全に取り込むことができなくなってしまう。
【0090】
また、透明なモールド又は基板を介してモールドに付着した異物を観察しながら、光硬化性組成物を厚く塗布した領域と異物を接触させても良い。
【0091】
さらに、本発明において、モールドを硬化性組成物に押し付けた後、硬化性組成物を硬化せしめる前に、モールドおよび/または基板を介して異物に超音波を照射することが好ましい。また本発明において、硬化性組成物が光硬化性組成物である場合には、モールドを硬化性組成物に押し付けた後、光硬化性組成物を硬化せしめる前に、モールドおよび/または基板を加熱することが好ましい。これにより、異物内部、及び異物とモールドの付着部に硬化性組成物を効率的に浸透させ、異物の除去効率を向上させることができる。
【0092】
(モールドの押付け工程)
モールド1が硬化性組成物に押し付けられることにより、上記少なくとも1つの液滴Daおよび上記複数の液滴Dbが拡張して硬化性組成物膜4が形成される(図12)。モールドの押し付け圧は、100kPa以上、10MPa以下の範囲で行う。圧力が大きい方が、硬化性組成物の流動が促進され、また残留気体の圧縮、残留気体の硬化性組成物への溶解、石英基板中のHeの透過も促進し、除去効率が向上する。しかし、加圧力が強すぎるとモールド接触時に異物を噛みこんだ際にモールド及び基板を破損する可能性がある。よって、モールドの押し付け圧は、100kPa以上、10MPa以下が好ましく、より好ましくは100kPa以上、5MPa、更に好ましくは100kPa以上、1MPa以下となる。100kPa以上としたのは、大気中でインプリントを行う際、モールドと基板間が液体で満たされている場合、モールドと基板間が大気圧(約101kPa)で加圧されているためである。
【0093】
(モールドの剥離工程)
モールド1を押し付けて硬化性組成物膜4を形成した後、モールド1を硬化性組成物膜から剥離する。剥離させる方法としては、例えばモールドまたは基板のどちらかの外縁部を保持し、他方の基板またはモールドの裏面を吸引保持した状態で、外縁の保持部もしくは裏面の保持部を押圧と反対方向に相対移動させることで剥離させる方法が挙げられる。
【0094】
以下本発明の実施例について説明する。
【0095】
<実施例>
(モールドの作製)
Si基材上に、スピンコートによりPMMA(polymenthyl methacrylate)などを主成分とするフォトレジスト液を塗布し、フォトレジスト層を形成した。その後、Si基材をXYステージ上で走査しながら、線幅100nm、ピッチ200nmのラインパターンに対応して変調した電子ビームを照射し、10mm角の範囲のフォトレジスト層全面に直線状凹凸パターンを露光した。また、10mm角領域の4隅に対応する位置の外側に線幅10um、長さ50umの線が交差した十字パターンを露光した。
【0096】
その後、フォトレジスト層を現像処理し、露光部分を除去して、除去後のフォトレジスト層のパターンをマスクにしてRIEにより溝深さが80nmになるように選択エッチングを行い、直線状凹凸パターンと十字型のアライメントマークを有するSiモールドを得た。
【0097】
上記モールドを用いて多数回インプリントした結果、モールド上に複数の異物が付着した。
【0098】
(光硬化性組成物)
上記構造式(1)で表される化合物を48wt%、アロニックスM220を48wt%、IRGACURE 379を3wt%、上記構造式(2)で表される化合物を1wt%含有する光硬化性組成物Aを調整した。また、上記構造式(1)で表される化合物を96wt%、IRGACURE 379を2wt%、上記構造式(2)で表される化合物を1wt%、KBM−5103(信越化学工業株式会社製)を1wt%含有する光硬化性組成物Bを調整した。光硬化性組成物Bは、無機材料からなる異物表面と反応性のある官能基としてアルコキシシラン基を持つKBM−5103をモノマー化合物として含有している。
【0099】
(基板)
基板には厚さ0.525mmの石英基板を使用した。石英基板にはモールドのアライメントマークに対応する位置に、同じ寸法の十字型アライメントマークをあらかじめ形成した。光硬化性組成物AおよびBとの密着性に優れるシランカップリング剤であるKBM−5103により、石英基板の表面に表面処理をした。KBM−5103をPGMEAで1wt%に希釈し、スピンコート法により基板表面に塗布した。続いて、塗布基板をホットプレート上で120℃、20分の条件でアニールし、シランカップリング剤を基板表面に結合させた。
【0100】
(異物の検出)
モールド上の異物の検出には測長可能なXYステージを持つ市販のレーザー顕微鏡を使用した。異物の位置座標はアライメントマークの一つを原点とし、その原点に対する相対座標(an,bn)としてそれぞれ求めた。nは複数の異物に対する通し番号である。また、三次元計測により異物の形状情報を占有面積S及び高さhとしてそれぞれ求めた。
【0101】
(光硬化性組成物の塗布工程)
ピエゾ方式のインクジェットプリンターであるFUJIFILM Dimatix社製DMP−2831を使用した。インクジェットヘッドには専用の10plヘッドであるDMC−11610を使用した。液滴量が所定の値となるように、あらかじめ吐出条件を設定及び調整した。所定の領域内におけるパターンの凹部体積から残膜厚が約10nmになるように液滴配置密度を計算し、格子間隔450umの正方格子からなる液滴配置パターンを作成した。次に、異物の検出時に原点としたアライメントマークに対応する基板側のアライメントマークを原点とし、基板上で異物対応位置の相対座標となる(−an,bn)の位置に少なくとも1つの液滴を配置するように液滴配置パターンを修正した。更に、異物を中心とした半径rの領域に配置された少なくとも1つの液滴の全液滴量に相当する体積がVとなり、かつ少なくとも1つの液滴の基板上の占有面積がSを超えるように液滴配置パターンを更に修正した。この時、基板上で合一した一つの液滴の体積がVとなっても良いし、2以上の液滴の合計体積がVとなってもよい。
【0102】
なお、Vは以下の式を満たす。
V=πr2h
100S≧πr2≧S
【0103】
(モールド押付け工程)
モールドと石英基板をギャップが0.1mm以下になる位置まで近接させ、石英基板の背面から基板上のアライメントマークとモールド上のアライメントマークが一致するように位置合わせをした。
【0104】
モールドと石英基板間の空間を99体積%以上のHeガスで置換し、He置換後に20kPa以下まで減圧した。減圧He条件下でモールド上の異物を光硬化性組成物からなる液滴に接触させた。接触後に40度に加熱した状態で100kHz以上の超音波を照射することにより、異物内部、及び異物とモールドの付着部に光硬化性組成物を効率的に浸透させ、異物の除去効率を向上させた。
【0105】
接触後、1MPaの押付け圧で1分間加圧し、360nmの波長を含む紫外光により、照射量が300mJ/cm2となるように露光し、光硬化性組成物を硬化させた。
【0106】
(モールド剥離工程)
基板およびモールドの外縁部を機械的に保持、もしくは裏面を吸引保持した状態で、基板またはモールドを押圧と反対方向に相対移動させることでモールドを剥離した。
【0107】
<比較例>
異物付着位置を考慮せず格子間隔450umの正方格子のみで液滴を配置し、He置換後減圧せずにモールドと光硬化性組成物を接触させた。上記以外は、実施例と同様の方法でインプリントした。
【0108】
<結果>
実施例及び比較例によりクリーニングしたモールドをそれぞれ検査した。各モールドに対して、異物のあった複数の座標をレーザー顕微鏡により検査したところ、本発明の方法の方がモールド上の異物を効率よく除去できることを確認した。
【符号の説明】
【0109】
1 モールド
2 基板
4 硬化性組成物膜
13 凹凸パターン
14a〜d モールド上のアライメントマーク
24a〜d 基板上のアライメントマーク
Da 異物対応位置に配置される少なくとも1つの液滴
Db パターン対応領域に配置される複数の液滴
F 異物
P0 モールド上の基準点
P1 異物付着位置
Q0 基板上の基準点
Q1 異物対応位置
Wa A方向の液滴間隔
Wb B方向の液滴間隔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細な凹凸パターンを表面に有するモールドの前記凹凸パターンに付着した異物を、基板上に塗布された硬化性組成物に付着させて除去する異物の除去方法において、
前記モールド上の位置であって前記異物の存在を表す異物付着位置を検出して、該異物付着位置に関する付着位置情報を取得し、
前記基板上の位置であって前記凹凸パターンと前記基板の組成物配置面とが対向した状態で所定の位置合わせが行われたとき前記異物付着位置に対応する位置である異物対応位置に関する対応位置情報を、前記付着位置情報に基づいて作成し、
前記対応位置情報に基づいて、前記硬化性組成物からなる少なくとも1つの液滴を前記異物対応位置に配置し、
前記凹凸パターンと前記組成物配置面とが対向した状態で前記所定の位置合わせを行いながら、前記モールドを前記硬化性組成物に押し付け、
前記硬化性組成物を硬化せしめ、
前記モールドを前記硬化性組成物から剥離することを特徴とする異物の除去方法。
【請求項2】
前記異物の形状を測定して該形状に関する形状情報を取得し、
該形状情報に基づいて前記少なくとも1つの液滴の全液滴量を増減することを特徴とする請求項1に記載の異物の除去方法。
【請求項3】
1滴当たりの液滴量を増減することにより前記全液滴量を増減することを特徴とする請求項2に記載の異物の除去方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの液滴の液滴配置密度を増減することにより前記全液滴量を増減することを特徴とする請求項2に記載の異物の除去方法。
【請求項5】
前記異物が有機材料からなるものであり、
前記硬化性組成物が分子量1000以下の重合性化合物を含有することを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の異物の除去方法。
【請求項6】
前記異物が無機材料からなるものであり、
前記硬化性組成物が前記異物の表面と反応性のある官能基を持つ重合性化合物を含有することを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の異物の除去方法。
【請求項7】
前記硬化性組成物が、前記官能基を2以上持つ多官能重合性化合物を10wt%以上含有することを特徴とする請求項6に記載の異物の除去方法。
【請求項8】
前記凹凸パターンを前記組成物配置面に押し付けた後、前記硬化性組成物を硬化せしめる前に、前記モールドおよび/または前記基板を介して前記異物に超音波を照射することを特徴とする請求項1から7いずれかに記載の異物の除去方法。
【請求項9】
前記硬化性組成物が光硬化性組成物であり、
前記凹凸パターンを前記組成物配置面に押し付けた後、前記光硬化性組成物を硬化せしめる前に、前記モールドおよび/または前記基板を加熱することを特徴とする請求項1から8いずれかに記載の異物の除去方法。
【請求項10】
前記モールドおよび前記基板の間の空間を減圧することを特徴とする請求項1から9いずれかに記載の異物の除去方法。
【請求項11】
前記凹凸パターンを前記組成物配置面に押し付けた際、前記基板上のパターン対応領域の全体に、気泡に起因する未充填欠陥なく硬化性組成物膜が形成されるように、前記パターン対応領域に前記硬化性組成物からなる複数の液滴を配置し、
前記パターン対応領域が、前記基板上の領域であって前記凹凸パターンと前記組成物配置面とが対向した状態で前記所定の位置合わせが行われたとき前記凹凸パターンに対応する領域であることを特徴とする請求項1から10いずれかに記載の異物の除去方法。
【請求項12】
前記凹凸パターンが、ライン状の凸部および凹部から構成されるライン状凹凸パターンであり、
前記ライン状凹凸パターンのライン方向に略平行な方向であるA方向に沿った液滴間隔が、該A方向に略垂直な方向であるB方向に沿った液滴間隔より長くなるように、前記複数の液滴を配置することを特徴とする請求項11に記載の異物の除去方法。
【請求項13】
前記A方向の平均の液滴間隔Waと前記B方向の平均の液滴間隔Wbとの比Wa/Wbが下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項12に記載の異物の除去方法。
1.8≦Wa/Wb≦0.52V1/3/d・・・(1)
(式(1)中、Vは配置された前記複数の液滴の1箇所当たりの平均体積、dは前記硬化性組成物膜の平均厚みを表す。)
【請求項14】
前記少なくとも1つの液滴および/または前記複数の液滴を配置する方法がインクジェット法であることを特徴とする請求項1から13いずれかに記載の異物の除去方法。
【請求項1】
微細な凹凸パターンを表面に有するモールドの前記凹凸パターンに付着した異物を、基板上に塗布された硬化性組成物に付着させて除去する異物の除去方法において、
前記モールド上の位置であって前記異物の存在を表す異物付着位置を検出して、該異物付着位置に関する付着位置情報を取得し、
前記基板上の位置であって前記凹凸パターンと前記基板の組成物配置面とが対向した状態で所定の位置合わせが行われたとき前記異物付着位置に対応する位置である異物対応位置に関する対応位置情報を、前記付着位置情報に基づいて作成し、
前記対応位置情報に基づいて、前記硬化性組成物からなる少なくとも1つの液滴を前記異物対応位置に配置し、
前記凹凸パターンと前記組成物配置面とが対向した状態で前記所定の位置合わせを行いながら、前記モールドを前記硬化性組成物に押し付け、
前記硬化性組成物を硬化せしめ、
前記モールドを前記硬化性組成物から剥離することを特徴とする異物の除去方法。
【請求項2】
前記異物の形状を測定して該形状に関する形状情報を取得し、
該形状情報に基づいて前記少なくとも1つの液滴の全液滴量を増減することを特徴とする請求項1に記載の異物の除去方法。
【請求項3】
1滴当たりの液滴量を増減することにより前記全液滴量を増減することを特徴とする請求項2に記載の異物の除去方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの液滴の液滴配置密度を増減することにより前記全液滴量を増減することを特徴とする請求項2に記載の異物の除去方法。
【請求項5】
前記異物が有機材料からなるものであり、
前記硬化性組成物が分子量1000以下の重合性化合物を含有することを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の異物の除去方法。
【請求項6】
前記異物が無機材料からなるものであり、
前記硬化性組成物が前記異物の表面と反応性のある官能基を持つ重合性化合物を含有することを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の異物の除去方法。
【請求項7】
前記硬化性組成物が、前記官能基を2以上持つ多官能重合性化合物を10wt%以上含有することを特徴とする請求項6に記載の異物の除去方法。
【請求項8】
前記凹凸パターンを前記組成物配置面に押し付けた後、前記硬化性組成物を硬化せしめる前に、前記モールドおよび/または前記基板を介して前記異物に超音波を照射することを特徴とする請求項1から7いずれかに記載の異物の除去方法。
【請求項9】
前記硬化性組成物が光硬化性組成物であり、
前記凹凸パターンを前記組成物配置面に押し付けた後、前記光硬化性組成物を硬化せしめる前に、前記モールドおよび/または前記基板を加熱することを特徴とする請求項1から8いずれかに記載の異物の除去方法。
【請求項10】
前記モールドおよび前記基板の間の空間を減圧することを特徴とする請求項1から9いずれかに記載の異物の除去方法。
【請求項11】
前記凹凸パターンを前記組成物配置面に押し付けた際、前記基板上のパターン対応領域の全体に、気泡に起因する未充填欠陥なく硬化性組成物膜が形成されるように、前記パターン対応領域に前記硬化性組成物からなる複数の液滴を配置し、
前記パターン対応領域が、前記基板上の領域であって前記凹凸パターンと前記組成物配置面とが対向した状態で前記所定の位置合わせが行われたとき前記凹凸パターンに対応する領域であることを特徴とする請求項1から10いずれかに記載の異物の除去方法。
【請求項12】
前記凹凸パターンが、ライン状の凸部および凹部から構成されるライン状凹凸パターンであり、
前記ライン状凹凸パターンのライン方向に略平行な方向であるA方向に沿った液滴間隔が、該A方向に略垂直な方向であるB方向に沿った液滴間隔より長くなるように、前記複数の液滴を配置することを特徴とする請求項11に記載の異物の除去方法。
【請求項13】
前記A方向の平均の液滴間隔Waと前記B方向の平均の液滴間隔Wbとの比Wa/Wbが下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項12に記載の異物の除去方法。
1.8≦Wa/Wb≦0.52V1/3/d・・・(1)
(式(1)中、Vは配置された前記複数の液滴の1箇所当たりの平均体積、dは前記硬化性組成物膜の平均厚みを表す。)
【請求項14】
前記少なくとも1つの液滴および/または前記複数の液滴を配置する方法がインクジェット法であることを特徴とする請求項1から13いずれかに記載の異物の除去方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−200988(P2012−200988A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67553(P2011−67553)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]