説明

ユニオンナット等の位置保持具とその保持具を用いた継手構造

【課題】簡単で嵩張ることのない形状に容易に製作でき、しかも、安価に量産に供することができ、使用時にはワンタッチで着脱してユニオンナット等や内部部品を強固に位置保持しながら一体化することができると共に、防塵機能を有効に発揮し、もって、実用的価値の高いユニオンナット等の位置保持具とその保持具を用いた継手構造を提供する。
【解決手段】合成樹脂製等の薄いシート材を裁断してナット10の奥部側に装着したガスケット等のシール材15を被覆する円板状の被覆部2と、この被覆部2の外周に設けられたナットのめねじ部11にくさび状に係止する複数の突起部3と、被覆部2の外周に設けた取外し用の摘み部4とを薄板状で一体に設けたユニオンナット等の位置保持具である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニオンナット等の位置を保持する機能と防塵機能などを発揮する位置保持具と、位置保持具を用いた継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、水道用メータユニット等のユニット製品において、止水栓、減圧弁、逆止弁等の各ユニットは、ユニオンナットを用いて接続される。この場合、メータユニットは、その出荷梱包時に、各ユニットが個々に梱包され、ユニオンナットは締め付け代の分だけ上下に可動するフリーな状態になる。そのため、特に、輸送時等に、締め付け代によってユニオンナットが動いて他の部品に接触して製品が傷付くことがある。
【0003】
これを防ぐために、ユニオンナットの位置を保持する部材を装着することがあるが、この種の保持部材としては、例えば、プラスチックパイプに分割部を設けた円筒状のスペーサがあり、このスペーサをユニオンナットの締め付け代に取外し可能に挟み込むことでユニオンナットを規制することがある。その他のユニオンナットの保持手段として、ユニオンナット自体を養生テープなどで固定したり、汎用のめねじ装着用のポリ栓で固定することがある。このうち、めねじ用ポリ栓は、通常、軟質プラスチックで製作され、片側が閉塞した深さの浅い円筒部にフランジ部が具備された形状になっている。めねじ用ポリ栓は、めねじの端面側に内部の防塵を目的に取り付けられるが、このめねじ用ポリ栓をユニオンナットに取付けることでユニオンナットの上下動を規制することも可能になっている。
更に、ユニオンナットを用いて接続する際には、ガスケットを用いてシールすることが多くなっており、このガスケットは、通常、ビニールタイなどで製品付近に縛り付けられたり、袋に入れられて製品と同梱される。
【0004】
ユニオンナットを用いたその他の製品として、ガイドナット付きユニオンソケットや、鋼管用ユニオンなどがある。これらの製品は、ナット、ソケット、ガスケットを有する構成であり、配管時の締め付けによって一体化し、配管するまでは別々の部品の状態になっている。このため、これらの製品は、輸送時等において各部品が別々に袋詰めされて出荷されることが多い。または、上述しためねじ用ポリ栓を用いて一体化を図ることもある。
【0005】
また、ユニオン継手を用いたその他の製品として、めねじ変換アダプタがある。このめねじ変換アダプタでは、シール部材として平面固定Oリングを使用している場合、配管前の輸送時の振動等により、Oリングが装着溝から脱落することがある。これを防ぐため、このめねじ変換アダプタに対しても、上述したポリ栓が使用される。
【0006】
更に、ユニオンナットの位置を保持するためのものとして、例えば、特許文献1の管継手部品定置用キャップがある。同文献1の定置用キャップは、パイプの内周面あるいは外周面に嵌合する円筒状の本体と、この本体の外周上に、パイプの半径方向外方に向けて平板環状に突設したつば部とを有している。このつば部の直径は、パイプに遊嵌されたナットの雄ねじ部の直径にほぼ一致されるように形成され、かつ、このつば部には切欠部が形成されている。定置用キャップは、パイプの端部に本体を取付け、ナットの雌ねじ部につば部を係合させることにより、ナットとパイプとのガタ付きを防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平2−21412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ユニオンナットを位置保持する場合に、分割部を設けたスペーサを用いると、このスペーサは部品として高価になり、使用後に処分する際に嵩張るという問題もあった。一方、養生テープを使用したユニオンナットを固定する場合には、固定時の貼付け工程や、使用時の剥がし工程などの工数が増え、作業が面倒になっていた。
一方、めねじ用ポリ栓を使用する場合、このポリ栓は円筒部の深さが浅いために部品間のガタを防ぐことができず、結果的に輸送時などの振動発生時に外れて製品に傷が付くことがあった。更に、このポリ栓は、軟質プラスチックによる成型品であるため、コストがかかっていた。
更に、このユニオンナットにガスケットを付属させる場合に、このガスケットをビニールタイで縛り付けると、縛り付けや取外しに要する工数が増え、しかも、ガスケットがゴム製であることによりカールや癖が付くことがある。ガスケットを袋に入れて同梱する場合にも同様に、作業に要する工数が増える問題があり、この場合、使用後の袋をゴミとして処分する必要も生じる。
【0009】
一方、ガイドナット付きユニオンソケットや鋼管用ユニオンなどの製品は、袋詰めする場合にこれらの部品を袋から取り出して順番に組立ててから配管しなければならず、組立てに手間がかかっていた。これらの製品をポリ栓により一体化する場合には、ポリ栓の深さが浅いために部品間のガタを防ぐことが難しくなり、輸送時等に生じる激しい振動によってポリ栓が外れて部品が外れるおそれがあった。しかも、ユニオンナットの種類としては、管用平行ねじ(上水ねじ)、メートルねじなどのJIS規格ねじ、金門ねじなどの舶来ねじや、東京都ねじや横浜市ねじなどの各都市ねじ、管用テーパねじなどがあり、これらのねじは、ねじ径やピッチ、ねじ山角度などが異なっている。このため、各ねじに対応した異なる態様のポリ栓が必要になり、その結果、ポリ栓の種類が増大してコスト高に繋がる。
【0010】
更に、めねじ変換アダプタにおいて、平面固定用Oリング、または、ガスケット等のシール材の脱落防止用としてポリ栓を使用する場合にも、ポリ栓の深さが浅いことによりポリ栓とOリングとの間に空隙が生じ、輸送時等において振動が激しい場合にOリングが外れるおそれがあった。
【0011】
特許文献1の定置用キャップについては、円筒状の本体と平板環状に突設したつば部とを有しているため構造が複雑になり、保管時や廃棄時にも嵩張るという問題があった。また、パイプやナットの大きさや寸法に応じた定置用キャップが個別に必要になるため、ポリ栓の場合と同様にコストの増加に繋がっていた。
【0012】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、簡単で嵩張ることのない形状に容易に製作でき、しかも、安価に量産に供することができ、使用時にはワンタッチで着脱してユニオンナット等や内部部品を強固に位置保持しながら一体化することができると共に、防塵機能を有効に発揮し、もって、実用的価値の高いユニオンナット等の位置保持具とその保持具を用いた継手構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、合成樹脂製等の薄いシート材を裁断してナットの奥部側に装着したガスケット等のシール材を被覆する円板状の被覆部と、この被覆部の外周に設けられたナットのめねじ部にくさび状に係止する複数の突起部と、被覆部の外周に設けた取外し用の摘み部とを薄板状で一体に設けたユニオンナット等の位置保持具である。
【0014】
請求項2に係る発明は、突起部及び摘み部と被覆部との付け根部位に折れ線を施したユニオンナットの位置保持具である。
【0015】
請求項3に係る発明は、突起部をナットの先端開口側に屈曲させて弾性力を付与し、この弾性力を介して突起部の先端をナットのめねじ部の山にくさび状に係止するようにしたユニオンナットの位置保持具である。
【0016】
請求項4に係る発明は、メータユニット等のユニット製品の継手本体のユニオンナット接続側の端面にガスケット等のシール材を設け、かつ、ユニオンナットの接合位置状態で、シール材を被覆部で被覆すると共に、突起部の先端をユニオンナットのめねじ部の山にくさび状に係止し、かつ、摘み部の長さをユニオンナットのめねじ部の丈以上とした位置保持部を用いた継手構造である。
【0017】
請求項5に係る発明は、ナットの奥部側端面に平面固定用Oリング、ガスケット等のシール材を装着した装着端面に被覆部で被覆すると共に、突起部の先端をナットのめねじ部にくさび状に係止し、かつ、摘み部の長さをナットのめねじ部の丈以上とした位置保持具を用いた継手構造である。
【0018】
請求項6に係る発明は、ソケットの端面に装着したガスケット等のシール材とナットで組み合わされた継手構造において、シール材を被覆部で被覆し、突起部の先端をナットのめねじ部にくさび状に係止し、かつ、摘み部の長さをナットのめねじ部の丈以上とした位置保持具を用いた継手構造である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によると、プラスチックシートから打ち抜き成形等によりシート材を裁断することで容易に製作でき、薄い簡単な形状であって、通常時にはフラット形状を維持できるので嵩張ることがなく、しかも、打ち抜き成形により金型を用いることがなく、簡易的な打ち抜き型等の設備によりあらゆるサイズの保持具本体を安価に量産できる。しかも、ポリエチレンテレフタラート等のリサイクル可能な材料で製作すれば、使用後にはリサイクル可能である。使用時には、ワンタッチで着脱でき、ユニオンナット等や内部部品を強固に位置保持しながら一体化できる。この場合、内部の流路を被覆部により閉塞できるため、防塵作用が有効に発揮され、シール材も防塵されることでシール性が向上し、実用的価値の高いユニオンナット等の位置保持具を提供できる。
【0020】
請求項2に係る発明によると、突起部と被覆部との付け根部位に折れ線を設けているので、この折れ線によりくさび作用が高まりつつ突起部がナットのめねじ部に係止する。このとき、めねじ部の形態が異なってもそのねじ内径に追従して突起部の立ち上がり角度が柔軟に変化しつつ強固に装着できるため、異なる種類の保持具本体を設ける必要がなく、呼び径の同じめねじ部であれば、あらゆる種類のねじにも兼用して使用できる。更に、摘み部と被覆部との付け根部位にも折れ線を設けているので、この摘み部と突起部を曲折させながら保持具本体をめねじ部の底まで押し込んで使用することができ、異なるねじ丈でも適切な位置まで装着することができる。
【0021】
請求項3に係る発明によると、係止部を屈曲させることでめねじ部に対してくさび効果を発揮した状態で保持具本体を装着でき、容易に抜け出すことを防いでいる。しかも、ナットの先端開口側に向けて突起部を屈曲させているので、保持具本体の装着が簡単であり、装着するめねじ部に対して挿入するだけで係止部を係止させながら所定の位置まで装着できる。
【0022】
請求項4に係る発明によると、メータユニット等のユニット製品において、継手本体に対してユニオンナットを最上部側まで引き上げて、締め付け代に対してユニオンナットを規制した状態で仮固定することができる。このため、輸送時等に振動が生じても、部品同士が接触することが防がれ、製品が傷付くことを防ぐことができる。更に、ガスケットの脱落も防止することができる。
【0023】
請求項5に係る発明によると、めねじ変換アダプタ等のナットに、保持具本体により平面固定用Oリング、ガスケット等のシール材をめねじ部の底まで押し込みながら仮固定できるため、この平面固定用Oリングを上方側から押さえつけた状態にして輸送時等の振動によりこの平面固定用Oリング、ガスケット等のシール材が脱落することを防止できる。
【0024】
請求項6に係る発明によると、ガイドナット付きユニオンソケットや鋼管用ユニオンのように、ナット、ソケット、ガスケットを有する構成で、配管時に締め付けにより一体化する製品であっても、保持具本体を装着することで予め配管時の順番どおりの組付け状態にでき、保持具本体をめねじ部の底まで押し込むことによって強固に仮固定された状態にセットされる。配管時においては、作業者は、保持具本体を取外すだけでよく、ナット、ソケット、ガスケットを組立てる工数を要することなくそのまま配管することができ、作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のユニオンナット等の位置保持具の一実施形態を示した斜視図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1のユニオンナット等の位置保持具の装着例を示す断面図である。
【図4】ユニオンナット等の位置保持具の一部拡大側面図である。
【図5】ユニオンナット等の位置保持具に働く力の作用を示した断面図である。
【図6】メータユニットを示す断面図である。
【図7】ユニオンナット等の位置保持具の装着工程を示した説明図である。
【図8】めねじ変換アダプタを示す断面図である。
【図9】ガイドナット付きユニオンソケットを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明におけるユニオンナット等の位置保持具の実施形態を図面に基づいて説明する。図1においては、本発明のユニオンナット等の位置保持具の一実施形態を示しており、図1(a)においては、位置保持具の突起部3が立ち上がった状態、図1(b)においては、位置保持具の平面状態を示している。また、図2には、図1(b)の平面図を示している。図において、位置保持具本体(以下、保持具本体)1は、被覆部2と、突起部3と、摘み部4とを有し、薄いシート材を打ち抜き成形等の適宜の加工手段により裁断して薄板状で一体に設けられてナット本体10に装着可能になっている。このナット本体10は、図3に示すように、内部にめねじ部を有するユニオンナットからなり、このナット本体10には内側に流路12を有する継手本体14が装着され、この継手本体14の接続側にはガスケット等のシール材15が装着されている。このシール材15は、ナット本体10の奥部側の継手本体14の上面(端面)14aに装着可能になっている。
保持具本体1の材質は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタラート)やPP(ポリプロピレン)等の合成樹脂等からなり、この保持具本体1の厚さは、0.18〜0.7mm程度であることが好ましく、本実施形態では、PET製により0.18mmの厚さに形成している。
【0027】
保持具本体1のうち、被覆部2は、円板状に形成され、ナット本体10の奥部側に配設されるシール材15を被覆可能に設けられている。図3に示すように、被覆部2の外径Dは、ナット本体10のめねじ部の内径(山径)dよりも小さく、かつ、シール材15の外径dよりも大径になっている。被覆部2は、円板状ではなく、いわゆる、ドーナツ状に穴が開いている形状でも良いが、後述する防塵機能を発揮させるためには、閉塞した円板形状であることが好ましい。
【0028】
突起部3は、被覆部2の外周側に、ナット本体10のめねじ部11の内径よりも大径に設けられる。この突起部3は、被覆部2がナット本体10に挿入されたときに、めねじ部11の山16の斜面にくさび状に係止可能になっている。更には、図2における保持具本体1が平面状態にあるときの突起部3の外径Dは、図4に示すように、この突起部3が被覆部2から角度θ=約45°の状態まで立ち上がったときに、その高さhがめねじ部11の不完全ねじ部17の図示しないねじ丈以上になるように設定され、このときの突起部の長さL(=高さh/sin45°)が決定する。突起部3は、被覆部2に対して曲折可能に形成されてバネ性を有し、更には、この突起部3と被覆部2との付け根部位には折れ線18が設けられており、この折れ線18に沿って突起部3が曲折するようになっている。
【0029】
折れ線18は、突起部3が角度θ=45°に立ち上がったときの先端19の位置がほぼめねじ部の谷の径dの位置になる位置に形成され、図4において、対向する折れ線18同士が成す幅Wは、幅W=突起部が立ち上がったときの外径D−2×Lcos45°であり、すなわち、突起部の長さLの1/√2倍の和を減算した位置になるように設けられている。このように、突起部の長さLと、折れ線18同士による幅Wとを設定しておくことで、突起部3がめねじ部11に係止したときの角度が約45°になるまで立ち上がることができ、後述する突起部3によるくさび作用を得ることが可能になる。突起部3が立ち上がるときの角度θはあくまでも一例であり、必ずしも角度θ=45°でなければ起立しないということではないが、角度θが大きくなり過ぎると起立が大きくなって保持具本体1が抜けやすくなる。
【0030】
突起部3は、被覆部2に対して複数箇所に対向して設けるのがよく、好ましくは、4箇所に等間隔で設けるのがよい。この場合、打ち抜き成形時にこの突起部3の位置をずらすことで歩留まりが良くなり、生産性が向上する。また、突起部3は、めねじ部11における完全ねじ部に限ることなく、後述する図8に示すように、不完全ねじ部に係止してもよい。
【0031】
保持具本体1は、上記の構成によって、突起部3をナット本体10の先端開口側に屈曲させて弾性力、すなわち、拡径方向の復元力を付与し、この弾性力を介して突起部3の先端19をナット本体のめねじ部の山16にくさび状に係止させるようになっている。
【0032】
一方、摘み部4は、被覆部2の外周側に、保持具本体1の取外し用として設けられている。この摘み部4と被覆部2との付け根部位には、突起部3の場合と同様に折れ線20が設けられており、摘み部4は、この折れ線20に沿って曲折可能になっている。更に、摘み部4は、略T字形状に形成され、また、めねじ部の丈Hよりも長く形成されており、作業者等が、この摘み部4を摘みながら引き出すことで容易に保持具本体1をナット本体10から取外すことが可能になっている。なお、プラスチックシートを打ち抜きして保持具本体1を製作する場合、摘み部4を略T字形状に形成するときに打ち抜き方向を互い違いにして歩留まりを小さくすることもできる。
【0033】
更に、被覆部2には、突起部3・摘み部4から延長するように切込み部21が形成されている。この切込み部21を設けることにより、折れ線20を被覆部2のより中央側に設けることができ、折れ線18同士の幅Wを被覆部3の外径Dよりも小さくし、突起部3が立ち上がるときのこの突起部3の長さLをより長く確保している。これにより、被覆部2の外径をシール材15の外径よりも大きく設けて防塵機能を確保しつつ、長い突起部3によって突起部3の起立角度がθ=45°に近いものとなり、めねじ部11に係止する力が高まるため、くさび作用をより向上させることができる。更に、突起部3が長くなることで、異なるねじ径のめねじ部11にも対応でき、めねじ部11のねじ径に誤差が生じている場合にもこの誤差を許容できる。
【0034】
なお、保持具本体1は、打ち抜き成形時に、半透明のシート材を材料として製作することがよい。この理由としては、仮に、保持具本体が透明であると、作業者がこの保持具本体が装着された状態であることに気付かずに配管するおそれがあるからであり、この場合、保持具本体1が装着された状態で配管すると漏水に繋がることになる。一方、仮に、保持具本体1が不透明であると、作業者は保持具本体1の装着状態に気付くことはできるが、ガスケットやOリング等のシール材15を内部に設ける場合、保持具本体1を介してこれらのシール材15の装着状態の有無を確認できなくなる欠点がある。これらの理由により、保持具本体1を半透明とした場合には、作業者が保持具本体1の装着状態に気付くことができ、かつ、シール材15の装着の有無も確認することができる。
【0035】
また、前述したように、ユニオンナットのねじには、例えば、管用平行ねじ、JIS規格ねじ、舶来ねじ、都市ねじ、管用テーパねじなどの多数の種類があるが、保持具本体1をこれらのねじに装着する場合、突起部3が折れ線により屈曲してねじ山の斜面に係止してくさび効果を発揮するため、ねじ径が異なる場合でもそのねじ内径に従って立ち上がり角度が柔軟に変化しながら突起部3が係止する。このため、従来技術のように、めねじの内径(山径)や外径(谷径)に係止するのではなく、ねじ山の斜面を利用して係止しているので、異なる態様の保持具本体1を用意することなく異なる態様のねじに対応できる。更に、保持具本体1は、めねじ部11の底に押し込まれて装着されるため、異なるねじ丈に対しても対応可能である。
【0036】
上述したように、本発明のユニオンナット等の位置保持具は、薄いシート材を裁断してナット本体10の奥部側に装着したシール材15を被覆する円板状の被覆部2と、この被覆部2の外周に設けられたナット本体10のめねじ部11にくさび状に係止する複数の突起部3と、被覆部2の外周に設けた取外し用の摘み部4とを薄板状で一体に設けているので、部品として形状が簡単になり、打ち抜き成形等により裁断することで容易に製作でき、処分時や保管時などにも保持具本体1を平面状態にできることで嵩張ることもない。また、この保持具本体1を使用する際には、ナット部材10のめねじ部11から装入するだけでよいので、その装着作業も容易である。更に、後述するように、保持具本体1を異なる態様のナット本体10に兼用でき、このナット本体10のがたつきなどを防ぎつつ位置保持できると共に、ガスケット等のシール材15を変形させることなく安全に被覆できる。
【0037】
続いて、上述した位置保持具を梱包時などにおいて製品に組み込む場合を、図6、図7に示したユニオンナットをメータユニットに組み込む場合を例に説明する。図において、ユニオンナットは、メータユニット25の一次側に設けられ、このユニオンナットを介して図示しない止水栓、減圧弁、逆止弁等をメータユニット25に接続可能になっている。ユニオンナットは、図3に示したナットと同様の形態になっており、内部にめねじ部11を有するナット本体10と、継手本体14と、ガスケットからなるシール材15とを有し、更に、ナット本体10の奥部側には、止め輪26が装着されている。
【0038】
このうち、継手本体14は、環状に突設形成したフランジ部27を有する管形状であり、このフランジ部27の上面14aがシール材15とのシール面になっている。ナット本体10は、止め輪26がフランジ部27に係止することで継手本体14を接続できるようになっており、このナット本体10は、図示しない締め付け代の距離だけ上下に可動自在になっている。
【0039】
このようなメータユニット25等のユニット製品に保持具本体1を装着する場合、その継手構造は、継手本体14のナット本体接続側の上面14aにシール材15を設け、かつ、ナット本体10が接合位置にある状態でシール材15を被覆部2で被覆すると共に、突起部3の先端19をナット本体10のめねじ部の山16にくさび状に係止し、かつ、図2における摘み部4の長さLがナット本体10のめねじ部の丈H以上になるようにする。
【0040】
図7(a)において、ナット本体10は、通常時には、重力によって継手本体14に載置した状態となる。この状態から、ナット本体10を、止め輪26が継手本体14に設けた止め輪係止部14bに掛かる位置(これを、ユニオンナットの接合位置状態という)まで持ち上げてフランジ部27の上面14aにシール材15を装着する。
【0041】
続いて、この図7(b)の状態から、ナット本体10の端面側に、平面状態の保持具本体1をその中心部位がナット本体10の中心部位とほぼ同心状態になるようにしながら載置する。このとき、保持具本体1が平面状態にあるため、突起部3の外周部位がめねじ部の谷の径dよりも十分に長くなり、図7(c)に示すように、ナット本体10のめねじ部11側に落ちることなく確実に端面側に載置された状態となる。
【0042】
次に、図7(d)に示すように、押し棒28を保持具本体1に上から押し当てる。押し棒28は、保持具本体1を効率よく組み付けるための治具であり、適宜の材質により丸棒状に形成されている。押し棒28は、その外径Dが折れ線18よりも内径側になるように形成され、これによって、折れ線18よりも内径側の被覆部2を押圧可能になっている。
【0043】
図7(e)に示すように、押し棒28で保持具本体1を押し込んでいくと、その押し込みに伴って突起部3がめねじ部の谷の径dに沿って折れ曲がる。このとき、突起部3の付け根部位の折れ線18により、押し棒28の押し込み時に突起部3が容易に折れ曲がり、保持具本体1は、このように突起部3が折れ曲がりながらめねじ部11の内径側に装入される。
【0044】
引き続き保持具本体1を押し棒28で押し込むと、図7(f)に示すように、保持具本体1がシール材15に当接してこれ以上の装入ができない状態になる。作業者は、この当接した感触が得られることにより、押し込みが完了したことを確認できる。
【0045】
最後に、図7(g)に示すように、押し棒28を引抜くことにより、保持具本体1の装着作業が終了する。このとき、保持具本体1の突起部3が折れ曲がった状態にあることで突起部3はバネ性を有している。しかも、めねじ部11を通過させることにより突起部3を折り曲げるようにし、めねじ部11への装着時にはスプリングバック性を強く有しているため、突起部3が図3に示しためねじ部の山の径d以下に折れ曲がった状態で装着されることがない。
このバネ性により、突起部3の先端19がめねじ部の山16に強固に係止してくさび効果が発揮される。この突起部3のくさび効果により、仮に、押し棒28を引抜いた状態でナット本体10に下方向に押し込むような力が加わっても、保持具本体1は、シール材15とナット本体10とを継手本体14に対して所定の位置に保持した状態を維持するになっている。
【0046】
このとき、めねじ部11がらせん状であり、そのリード角によって突起部3がめねじ部の山16に当接する位置(めねじ部11の底からの高さ)が異なることとなる。しかし、本発明の位置保持具は、突起部3を複数設け、且つ、各突起部3が独立して傾倒可能であり、特に、突起部3同士を少なくとも2箇所の対向位置に配置することで、一方の突起部3によるスプリングバックにより他方の突起部3を被覆部2を介して押圧することにより、確実に係止される。このうちの少なくとも2つの突起部3の先端19がめねじ部11のねじ斜面に係止し、確実にナット本体10を位置保持することが可能になっている。
【0047】
また、図5に示すように、摘み部4は、めねじ部の丈Hよりも長く形成されているので、めねじ部11の谷22に入り込むことがなく、しかも、この摘み部4は、折れ線20により被覆部2との付け根部位から折れ曲がったときに生じるスプリングバックにより、被覆部2を対向側へ押圧し、これにより、対向側に配置した突起部3の先端19がめねじ部のねじ山の斜面により深く入り込み、ナット本体10がより強固に位置保持される。
【0048】
以上のように、位置保持具を用いた継手構造は、継手本体14のユニオンナットから成るナット本体10の接続側の端面14aにシール材15を設け、かつ、ナット本体10の接合位置状態でシール材15を被覆し、突起部3の先端19をめねじ部の山16にくさび状に係止し、摘み部の長さLをめねじ部の丈H以上としているので、例えば、輸送時などの振動発生時においても、ナット本体10の位置がずれることがなく、また、ナット部材10を含めた内部部品ががたがたと動くこともなく、ナット部材10とその他の部品同士が接触して製品に傷が付くことを防ぐことができる。
【0049】
更に、被覆部2を円板状に形成しているので、シール材15を覆うことができるとともに、継手本体14内の流路12も閉塞できるため、シール材15と製品内部の防塵機能も得られる。なお、配管時においては、作業者は、摘み部4を持ち上げて突起部3とめねじ部11との係合を外すようにすれば、保持具本体1を容易に取外すことができ、シール材15をあらたに組付ける作業を要することなくそのまま配管することができ、作業効率が向上する。
【0050】
次に、位置保持具を用いた継手構造の他の実施形態を述べる。図8においては、めねじ変換アダプタからなるナット本体30を示しており、図8(a)の状態において、このナット本体30の奥部側端面31には平面固定用Oリング32(以下、Oリング32という)が装着されている。この実施形態における位置保持具を用いた継手構造は、図8(b)に示すように、Oリング32を装着したナット本体30の装着端面31を保持具本体1の被覆部2で被覆すると共に、突起部3の先端19をナット本体30のめねじ部33にくさび状に係止し、かつ、摘み部4の長さLをナット本体30のめねじ部の丈H以上としたものである。
【0051】
このように、シール材としてOリング32を使用したナット本体30に対して保持具本体1を装着し、しかも、めねじ部33の底まで保持具本体1を押し込むことで、輸送時の振動等でシール材32がOリング溝34から脱落することが防がれ、また、被覆部2がシール材32を覆っているため防塵機能も有効に発揮される。
【0052】
図9においては、位置保持具を用いた継手構造の更に他の実施形態を示している。図9(a)におけるガイドナット付きユニオンソケットは、ナット本体40と、ソケット41と、ガスケットからなるシール部材42とからなり、ソケット41の端面43にガスケット42が装着された状態でナット本体40が組み合わされた継手構造になっている。この実施形態における位置保持具を用いた継手構造は、上記の場合と同様に、図9(b)に示すように、シール材42を保持具本体1の被覆部2で被覆し、突起部3の先端19をナット本体40のめねじ部43にくさび状に係止し、かつ、摘み部の長さLをナット本体40のめねじ部の丈H以上としたものである。
【0053】
上記のナット本体40、ソケット41、シール材42が配管されて締め付けられることで一体化され、配管前には分割した状態になるおそれのあるユニオンソケットに保持具本体1を装着することができる。このとき、配管されるとおりの順番に各部品を組み込んでおき、保持具本体1をめねじ部43の底まで押し込むことで、ユニオンソケットとして仮固定された状態となる。
【0054】
配管時においては、作業者が保持具本体1をナット本体40から取外すようにすれば、ナット本体40、ソケット41、ガスケット42を順番どおりに組立てる工数を経ることなくそのまま配管することができ、作業効率が向上する。
【0055】
なお、この実施形態においては、ガイドナット付きユニオンソケットについて説明したが、ユニオンナット、ソケット、ガスケットを有する構成としては、例えば、鋼管用ユニオン等のガイドナット付きユニオンソケット以外の構成の場合にも上記と同様に保持具本体を装着できる。
【0056】
本発明の位置保持具は、上述したメータユニット等の給水・給湯配管の他にも、例えば、自動車用空気調和装置における配管等の各種の構造のユニオン構造の継手に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 保持具本体
2 被覆部
3 突起部
4 摘み部
10、30、40 ナット本体
11、33、43 めねじ部
14 継手本体
15、32、42 シール材
16 めねじ部の山
18 折れ線
19 先端
25 メータユニット
31 装着端面
41 ソケット
43 端面
、H、H めねじ部の丈
摘み部の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製等の薄いシート材を裁断してナットの奥部側に装着したガスケット等のシール材を被覆する円板状の被覆部と、この被覆部の外周に設けられたナットのめねじ部にくさび状に係止する複数の突起部と、前記被覆部の外周に設けた取外し用の摘み部とを薄板状で一体に設けたことを特徴とするユニオンナット等の位置保持具。
【請求項2】
前記突起部及び摘み部と前記被覆部との付け根部位に折れ線を施した請求項1に記載のユニオンナットの位置保持具。
【請求項3】
前記突起部をナットの先端開口側に屈曲させて弾性力を付与し、この弾性力を介して前記突起部の先端をナットのめねじ部の山にくさび状に係止するようにした請求項1又は2に記載のユニオンナットの位置保持具。
【請求項4】
メータユニット等のユニット製品の継手本体のユニオンナット接続側の端面にガスケット等のシール材を設け、かつ、ユニオンナットの接合位置状態で、前記シール材を前記被覆部で被覆すると共に、前記突起部の先端をユニオンナットのめねじ部の山にくさび状に係止し、かつ、前記摘み部の長さをユニオンナットのめねじ部の丈以上とした請求項1乃至3の何れか1項に記載の位置保持部を用いた継手構造。
【請求項5】
ナットの奥部側端面に平面固定用Oリング、ガスケット等のシール材を装着した装着端面に前記被覆部で被覆すると共に、前記突起部の先端をナットのめねじ部にくさび状に係止し、かつ、前記摘み部の長さをナットのめねじ部の丈以上とした請求項1乃至3の何れか1項に記載の位置保持具を用いた継手構造。
【請求項6】
ソケットの端面に装着したガスケット等のシール材とナットで組み合わされた継手構造において、前記シール材を前記被覆部で被覆し、前記突起部の先端をナットのめねじ部にくさび状に係止し、かつ、摘み部の長さをナットのめねじ部の丈以上とした請求項1乃至3の何れか1項に記載の位置保持具を用いた継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−12717(P2011−12717A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155694(P2009−155694)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(390002381)株式会社キッツ (223)
【Fターム(参考)】