説明

ユニット起動時の石炭・水ペーストの製造方法

【課題】石炭・水ペーストの粘度を早期に適正粘度とすることが可能なユニット起動時の石炭・水ペーストの製造方法を提供する。
【解決手段】微粉炭スラリー、粗粉炭、石灰石及び粘度調整用の水を混練機に供給、混練し、粘度が管理値内に制御された石炭・水ペーストを製造する方法において、ユニット起動時に、ユニット定常時に比較して粘度の高い前記微粉炭スラリーを使用し、さらに予め定める注水カーブに従って粘度調整用の水を前記混練機に注水し、前記注水カーブは、前記粗粉炭の含水量に対応した注水カーブを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧流動床ボイラの燃料である石炭・水ペーストを製造する方法に関し、特にユニット起動時の石炭・水ペーストの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧流動床ボイラを用いた発電システムでは、石炭を燃焼させた燃焼熱により蒸気を発生させ、蒸気タービンを駆動するとともに、燃焼ガスでガスタービンを駆動させ発電する複合発電システムを採用する。加圧流動床ボイラは、流動媒体をボイラ内で流動化させ、供給される石炭を流動化させながら燃焼させるため、燃焼温度が約870℃と低い。その結果、窒素酸化物の発生が抑制され、さらに流動媒体に石灰石を使用することで、炉内脱硫も同時に行われるなどの長所を有している。
【0003】
加圧流動床ボイラの燃料は、石炭、石灰石、水の混合物からなる石炭・水ペースト(CWP:Coal Water Paste、以下CWPと記す場合もある)が用いられる。CWPは、微粉炭と水との混合物からなる微粉炭スラリーと、粒子径2mm以下の大きさの粗粉炭と、石灰石と、粘度調整用の水とを混練機で混練し製造される。CWPの性状は炭種により異なるが、標準的なCWPの粘度は4〜10Pa・s、水分量は約23〜25重量%である。微粉炭スラリーの石炭濃度は50〜60重量%程度であり、粒径2mm以下の大きさの粗粉炭に水を加えながら微粉砕機で粉砕することで製造される。CWPは、粘度が低いと石炭と水とが分離しやすくなり、逆に粘度が高すぎると配管内で閉塞しやすくなるので、混練機出口のCWPの粘度及び粗粉炭の水分量をオンラインで測定し、これら測定値を用いて混練機への注水量を調整し、CWPの粘度が設定の範囲内になるように制御されている。製造されたCWPは、CWPポンプを通じて火炉へ供給される。
【0004】
加圧流動床ボイラを安定的に運転するためには、CWPの粘度が一定し、変動が少ないことが好ましい。所定の粘度に制御されたCWPを安定的に製造する方法は、これまでに多く提案されており、本件出願人も、所定の粘度を有するCWPを安定的に製造する方法及び装置、これに関連する技術を開発し、特許出願を行っている(例えば特許文献1、2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−157546号公報
【特許文献2】特開2011−149623号公報
【特許文献3】特開2011−185460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
CWPの製造は、ユニット(発電設備)起動時からユニット停止までの間、連続して行われる。ユニット起動時には、微粉砕機、混練機、配管は洗浄状態にあり、さらに微粉砕機、混練機など個々の機器は、空の状態から起動されるため、定常状態時とは製造条件が異なる。また非定常状態であるため定常状態時のCWP製造方法に比較してCWPの粘度調整が難しい。しかし、これまでは、ユニット起動回数が3〜4回/年と少ないこともあり、ユニット起動時と定常状態時とで区別することなく、同じ製造方法でCWPが製造されていた。このためユニット起動時、製造されたCWPの粘度が管理値を満足せず、CWPの作り直しが生じることもあった。CWPの製造方法において、ユニット起動時と定常状態時とで異なった取扱いが必要なこと、またユニット起動時の製造方法については、これまで先行技術文献において何ら言及されていない。
【0007】
本発明の目的は、石炭・水ペーストの粘度を早期に適正粘度とすることが可能なユニット起動時の石炭・水ペーストの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、微粉炭スラリー、粗粉炭、石灰石及び粘度調整用の水を混練機に供給、混練し、粘度が管理値内に制御された石炭・水ペーストを製造する方法において、ユニット起動時に、ユニット定常時に比較して粘度の高い前記微粉炭スラリーを使用し、さらに予め定める注水カーブに従って粘度調整用の水を前記混練機に注水し、前記注水カーブは、前記粗粉炭の含水量に対応した注水カーブを使用することを特徴とするユニット起動時の石炭・水ペーストの製造方法である。
【0009】
本発明のユニット起動時の石炭・水ペーストの製造方法は、第1に微粉炭スラリーの粘度をユニット定常時に比較して高くすることに特徴がある。ユニット起動時は、ユニット定常時と異なり、混練機内に洗浄水が残留しているので、微粉炭スラリーの粘度をユニット定常時と同一とすると、粘度調整用の注水を停止したとしても石炭・水ペーストの粘度が管理値を下回ることがある。石炭・水ペーストに含まれる水の約70重量%は、微粉炭スラリーから持ち込まれるため、微粉炭スラリーの粘度が石炭・水ペーストの粘度に与える影響は大きく、本発明では、混練機内に残留する洗浄水を考慮し、微粉炭スラリーの粘度を高くしている。第2に、粘度調整用の注水を予め定める注水カーブに従って行う点に特徴がある。ユニット起動時は、ユニット定常時と異なり、混練機内に洗浄水が残留し、石炭・水ペーストの粘度が直ちに安定しないので、ユニット定常時のように、混練機出口の石炭・水ペーストの粘度を測定し、粘度調整用の水を注水する方法では、石炭・水ペーストの粘度調整をうまく行うことができない。予め実験を通じて石炭・水ペーストの粘度と注水要領との関係を取得し、これを基に注水カーブを作成しておくことで、石炭・水ペーストの粘度を早期に適正粘度に制御することができる。
【0010】
また本発明は、前記ユニット起動時の石炭・水ペーストの製造方法において、前記微粉炭スラリーの粘度が、150〜200mPa・sであり、ユニット定常時の微粉炭スラリーの粘度と比較して、50〜80mPa・s高いことを特徴とする。
【0011】
微粉炭スラリーの粘度は、150〜200mPa・sが好ましい。微粉炭スラリーの粘度がこの範囲内であれば、粘度調整用の注水の制御が容易となり、結果、石炭・水ペーストの粘度を早期に安定させることができる。微粉炭スラリーの粘度が150mPa・s未満であると、微粉炭スラリーから持ち込まれる水分量が多くなり過ぎ、石炭・水ペーストの粘度調整が難しくなる。一方、微粉炭スラリーの粘度が高くなるに従い、微粉炭スラリーを製造する微粉砕機の動力が高くなるので、不必要に微粉炭スラリーの粘度を高くするのは不経済である。
【0012】
また本発明は、前記ユニット起動時の石炭・水ペーストの製造方法において、前記注水カーブは、注水初期、注水中期、注水後期の3段階に大別され、注水初期は、前記混練機に残留する洗浄水を考慮し少量の注水量Aとし、注水後期は、粘度150〜200mPa・sの微粉炭スラリーを使用して石炭・水ペーストを製造する際の最適な注水量Bとし、注水中期は、注水量Aから注水量Bに向かって漸次、注水量を増加させることを特徴とする。
【0013】
粘度調整用の注水は、注水初期の段階では、混練機に残留する洗浄水を考慮し少量の注水量Aとし、注水中期の段階では、注水量を漸次増加させ、注水後期の段階では、粘度150〜200mPa・sの微粉炭スラリーを使用して石炭・水ペーストを製造する際の最適な注水量Bとすることで、石炭・水ペーストの粘度を早期に適正粘度とすることができる。
【0014】
また本発明は、前記ユニット起動時の石炭・水ペーストの製造方法において、前記注水カーブに従ってされる注水量のうち、注水量Aは前記粗粉炭の含水量によらず一定であり、注水量Bは、前記粗粉炭の含水量が多いほど少ないことを特徴とする。
【0015】
注水初期の段階では、混練機に残留する洗浄水の影響が大きいため、粗粉炭の含水量の影響を受け難い。一方、注水中期から後期の段階では、混練機に残留していた洗浄水の影響が小さくなるので、粗粉炭の含水量に対応した注水量とする。これにより石炭・水ペーストの粘度を早期に適正粘度とすることができる。
【0016】
また本発明は、前記ユニット起動時の石炭・水ペーストの製造方法において、前記注水量Aは、前記注水量Bの1/5〜1/3であることを特徴とする。
【0017】
注水初期の段階では、混練機に残留する洗浄水が粘度調整用の水として機能するので、注水初期の注水量Aは、注水後期の注水量Bの1/5〜1/3とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のユニット起動時の石炭・水ペーストの製造方法を使用することで、ユニット起動時に石炭・水ペーストの粘度を早期に管理値内とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のユニット起動時の石炭・水ペーストの製造方法を適用する石炭・水ペースト製造装置1の概略的構成を示す図である。
【図2】図1の混練機3への注水量の制御系統図である。
【図3】本発明のユニット起動時の石炭・水ペーストの製造方法で使用するユニット起動時の混練機3への注水量を示す注水カーブである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明のユニット起動時の石炭・水ペーストの製造方法を適用する石炭・水ペースト製造装置1の概略的構成を示す図である。石炭・水ペースト製造装置1は、本発明のユニット起動時の石炭・水ペーストの製造方法のみを実施するための装置ではなく、ユニット起動時からユニット停止迄の間、石炭・水ペーストを製造する装置である。ユニット定常状態時の石炭・水ペーストの製造方法を用いて、石炭・水ペースト製造装置1の構成を説明した後、本発明のユニット起動時の石炭・水ペーストの製造方法を説明する。
【0021】
石炭・水ペースト製造装置1は、微粉炭スラリー、原炭を粉砕機で所定の粒径に粉砕した粗粉炭、所定の粒径の石灰石及び水からなる石炭・水ペースト(CWP)を製造する装置であり、微粉炭スラリー、粗粉炭、石灰石及び水を混練する混練機3、混練機3で混練したCWPの粘度を測定する粘度計5、微粉炭スラリーを製造する微粉炭スラリー製造装置7、粗粉炭を混練機3に供給する給炭機9、混練機3に粘度調整用の水を供給する混練機注水装置11、微粉砕機37及び混練機3への注水量を制御する制御装置13を含む。
【0022】
混練機3は、横型の混練機であり、微粉炭スラリー製造装置7で製造された微粉炭スラリー、給炭機9から供給される粗粉炭及び石灰石、さらに必要に応じて供給される粘度調整用の水を連続的に受入れ、これらを混練しCWPを製造する。CWPは、粘度が4〜10Pa・sの範囲内で設定された粘度値に制御される。このときのCWPの水分量は約23〜25重量%、石炭濃度は約68〜70重量%である。製造されたCWPは、分配コンベヤ15を通じてCWPタンク17に送られた後、CWPポンプ(図示省略)を介して火炉(図示省略)に供給される。
【0023】
混練機3の出口には粘度計5が装着され、粘度計5は混練機3から排出されるCWPの粘度をオンラインで測定する。測定した粘度測定値は、制御装置13に送られ、混練機3の注水量の調整に使用される。粘度計5は、混練機出口に設けられ、CWP導入用案内板(図示省略)、粘度計測容器(図示省略)、回転ロータ(図示省略)、トルク計(図示省略)、CWP排出ゲート及び洗浄ノズル(図示省略)を備える。混練機出口から排出されるCWPの一部を、CWP導入用案内板を介して粘度計測容器に導き、ピン型ロータを回転させ、このときの攪拌トルクをトルク計で計測する。攪拌トルクとCWP粘度との間には相関関係があるので、予め攪拌トルクとCWP粘度との関係を取得しておくことで簡単にCWP粘度を求めることができる。粘度測定が終了すると、CWP排出ゲートが開きCWPが排出され、粘度計測容器等に水が噴射され洗浄が行われる。これら操作は制御装置13を介して所定の間隔で自動的に行われる。
【0024】
粗粉炭は、原炭が粉砕機で粉砕された平均粒径2mm以下の石炭であり、粗粉炭中継ホッパ19に貯蔵された粗粉炭は、給炭機9を介して混練機3に供給される。このとき石灰石も石灰石バンカ21から給炭機9に送られ、粗粉炭と一緒に混練機3に供給される。CWPに含まれる石炭の約75重量%は、粗粉炭として供給される。原炭は通常10重量%程度の水分を含有しているが、含水率は石炭置場の環境、天候などにより異なる。このため給炭機9には非接触式の水分計23が装着され、これにより粗粉炭の水分量がオンラインで測定される。粗粉炭の水分量は、制御装置13に送られCWPの粘度調整に使用される。
【0025】
微粉炭スラリー製造装置7は、湿式ミルである微粉砕機37を備え、微粉砕機37には、粗粉炭中継ホッパ38に貯蔵された粗粉炭が微粉砕機用の給炭機39を介して、また微粉砕機注水装置41から粘度調整用の水が供給される。微粉砕機37へ供給する粗粉炭は、混練機3に供給する粗粉炭と同じである。微粉砕機用の給炭機39にも混練機用の給炭機9と同様に、オンラインで水分を計測可能な非接触式の水分計43が装着されている。粗粉炭の水分量測定値は、制御装置13に送られ微粉炭スラリーの粘度調整に使用される。微粉砕機注水装置41は、注水ポンプ45の吐出側に設けられた注水管の途中に注水流量調整弁47を備え、制御装置13が注水流量調整弁47の弁開度を調整して微粉砕機37への注水量を調整する。微粉砕機37の出口部にも、混練機3と同様、オンラインで粘度を測定可能な粘度計を装着し、粘度調整に利用してもよく、粘度計に代え、微粉砕機37の所要動力を測定しこれを粘度調整に利用してもよい。
【0026】
微粉炭スラリーは、微粉炭スラリー製造装置7で製造された後、中継タンク25、スラリー移送ポンプ27、スラリーサービスタンク29、スラリー供給ポンプ31を通じて所定量の微粉炭スラリーが混練機3に供給される。供給される微粉炭スラリーは、粘度が100〜120mPa・sである。微粉炭スラリーの水分量は、約48〜50重量%であり、CWPに含まれる水分の約70重量%は、微粉炭スラリーから持ち込まれる水分である。
【0027】
混練機3への注水は、混練機注水装置11が行う。混練機注水装置11は、粘度調整用の水を供給する装置であり、注水ポンプ33の吐出側に設けられた注水管の途中に注水流量調整弁35を備え、制御装置13が注水流量調整弁35の弁開度を調整して混練機3への注水量を調整する。
【0028】
制御装置13は、混練機出口のCWP粘度が設定値となるように、混練機出口のCWP粘度測定値、粗粉炭の水分量測定値を用いて混練機3への注水量を調整する。また、微粉砕機出口の微粉炭スラリー粘度が設定値となるように、微粉砕機37への注水量を調整する。
【0029】
図2は、混練機3への注水量の制御系統図である。この制御系統図を用いて、ユニット定常状態時の混練機3への注水量の制御要領を説明する。混練機出口のCWP粘度設定値51と、粘度計5で測定した混練機出口のCWP粘度測定値52との偏差値53を減算器54で求める。加算器56でCWP粘度の偏差値53と水分計23で測定した粗粉炭の水分値55とを加算し、注水すべき注水流量57を算出する。算出した注水流量57と実際の注水流量58との偏差値59を減算器60で算出し、これに基づき制御装置13は、注水流量調整弁35を制御する。
【0030】
以上、ユニット定常状態時の石炭・水ペーストの製造方法を用いて石炭・水ペースト製造装置1の概要を説明したが、ユニット起動時とユニット定常時とでは、石炭・水ペースト製造装置1の状況が異なるので、ユニット起動時にユニット定常時と同様のCWP製造方法を用いてもCWPを迅速かつ適正に製造することはできない。
【0031】
ユニットが停止された際には、混練機3、微粉砕機37などが水で洗浄されるので、ユニット起動時には、混練機3の底部には排出しきれなかった洗浄水が残留する。この洗浄水もCWPの製造に使用されるため、ユニット起動時にユニット定常時と同様のCWP製造方法を用いるとCWPの粘度が管理値を下回り易くなる。極端な場合は、混練機3への注水を停止してもCWPの粘度が管理値を下回ってしまう。また、ユニット起動時には、混練機3は空であるから、CWPの製造を開始しても混練機3の滞留量が定常に達するまではCWPは排出されず、CWPの粘度を測定することはできない。上記のように、ユニット起動時とユニット定常時とでは、石炭・水ペースト製造装置1の状況が異なるので、本実施形態ではユニット起動時のCWPの製造を以下の要領で行う。
【0032】
第1に微粉炭スラリーの粘度をユニット定常時に比較して高くする。具体的には、微粉炭スラリーの粘度を150〜200mPa・sとする。より好ましい微粉炭スラリーの粘度は、170〜180mPa・sである。微粉炭スラリーの粘度は、微粉炭スラリーの水分量を低下させることで高くする。微粉炭スラリーの粘度が150〜200mPa・sであれば、混練機3への粘度調整用の注水制御が容易となり、結果、CWPの粘度を早期に安定させることができる。微粉炭スラリーの粘度が150mPa・s未満であると、水分量が多くなり過ぎ、CWPの粘度調整が難しくなる。一方、微粉炭スラリーの粘度が高くなるに従い、微粉砕機37の動力が高くなるので、微粉炭スラリーの粘度を200mPa・sを超える粘度とするのは不経済である。
【0033】
CWPに含まれる水の約70重量%は、微粉炭スラリーから持ち込まれるため、微粉炭スラリーの粘度がCWPの粘度に与える影響は大きい。また微粉炭スラリーの水分量の変動と粗粉炭の水分量の変動とを比較すると、微粉炭スラリーの水分量の変動の方が混練機3への注水量調整に大きな影響を及ぼす。よって微粉炭スラリーの水分量を少なくしておくことで、混練機3に洗浄水が残留していても粘度調整用の水を注水することが可能となり、混練機出口において、適正な粘度に管理されたCWPを得ることができる。
【0034】
第2に、粘度調整用の注水をユニット定常時のようにCWP粘度に基づいて行うのではなく、予め定める注水カーブに従って行う。注水カーブを図3に示した。図3に示す注水カーブは、実設備を用いて取得したものである。但し、石炭・水ペースト製造装置1の規模が異なれば、図3に示す注水カーブに示す数値が、異なることは当然であり、本発明は、図3に示す注水カーブに示す数値に限定されるものではない。
【0035】
図3に示すように注水カーブは、注水初期(0〜2分)、注水中期(2〜4分)、注水後期(4〜6分)の3段階に大別することができる。また注水カーブは、粗粉炭の水分量により異なり、注水中期、注水後期では、粗粉炭の水分量が多いほど、注水量が少なくなっている。
【0036】
注水初期は、混練機3に残留する洗浄水の影響が大きいので、粗粉炭の水分量によらず同じ量の注水量(注水量A)とし、0〜2分の間一定の注水を行う。このときの注水量は注水後期の注水量(注水量B)の1/5〜1/3程度である。注水中期は、注水後期の注水量に向けて漸次注水量を増加させる。注水後期は、混練機3に残留する洗浄水の影響が小さくなるので粘度150〜200mPa・sの微粉炭スラリーを使用してCWPを製造する際の最適注水量とすることができる。最適注水量は、管理値内に制御されたCWPを製造するに適した注水量であり、その量は、粗粉炭の水分量により異なる。注水後期の注水量は、粗粉炭の水分量が多い場合は少なく、粗粉炭の水分量が少ない場合は、逆に多くする。本実施形態に示す注水カーブでは、注水後期の注水量は、水分量10重量%の粗粉炭を基準とすると、水分量5重量%の粗粉炭の場合の注水量は、約125%、水分量15重量%の粗粉炭の場合の注水量は、約75%である。粗粉炭の水分量が多いほど、注水後期の注水量が少なくなるため、注水中期の注水カーブも粗粉炭の水分量が多いほど緩やかである。粗粉炭の水分量が15重量%の場合、図3に示す注水中期の注水カーブにおいて、2〜3分の間が0〜2分と同一の水分量であり、3〜4分で注水量が直線的に増加しているが、2〜4分の間を直線的に増加させてもよい。また図3に示す注水後期の注水カーブにおいて、4〜5分の間で注水量が僅かに増加しているが、この間の注水量を5〜6分の注水量と同一としてもよい。
【0037】
図3に示す注水カーブは、実設備を用い、注水カーブを種々変更した実験から得られた注水カーブであり、この注水カーブを使用することで、ユニット起動時に早期にCWPの粘度を管理値内とすることができる。ユニット起動時からユニット定常時に移行する際は、微粉炭スラリーの粘度及び注水量を徐々に減少させる。
【0038】
ユニット起動時、制御装置13を使用して注水量を制御する場合には、以下の要領で行うことができる。図2の混練機3への注水量の制御系統図において、アナログスイッチ61及び関数発生器62を設け、図示を省略したユニット起動装置からユニット起動信号を受けると、アナログスイッチ61に起動時CWP粘度制御「入」信号63を送る。アナログスイッチ61は、起動時CWP粘度制御「入」信号63を受信すると、関数発生器62から前記注水カーブをプログラミングした粘度制御プログラムを読み出す。このプログラムに基づく注水流量64と実際の注水流量58との偏差値59を減算器60で算出し、これに基づき制御装置13は、注水流量調整弁35を制御する。なお、起動時CWP粘度制御「入」信号63が入力されていないときは、アナログスイッチ61は、注水流量64の代わりに注水流量57を減算器60に送るように制御する。このように制御装置13を構成することで、ユニット起動時からユニット定常時への切換を簡単に行うことができる。
【0039】
上記実施形態に示すように、本発明のユニット起動時の石炭・水ペーストの製造方法は、石炭・水ペースト製造装置1の状況がユニット定常時とは異なることを勘案し、ユニット定常時とは異なる製造方法を採用する。このとき石炭・水ペースト製造装置1の状況に適応するようにユニット定常時に比較して粘度の高い微粉炭スラリーを製造し、混練機3に注水する粘度調整用の水量を予め定める注水カーブに従って行うので、石炭・水ペーストの粘度を早期に管理値内とすることができる。なお、本発明のユニット起動時の石炭・水ペーストの製造方法は上記実施形態に限定されるものでなく、要旨を変更しない範囲で変更することができる。制御装置13の混練機3への注水量制御要領も、上記実施形態に限定されるものでない。
【符号の説明】
【0040】
1 石炭・水ペースト製造装置
3 混練機
5 粘度計
7 微粉炭スラリー製造装置
9 給炭機
11 混練機注水装置
13 制御装置
23 水分計
35 注水流量調整弁
37 微粉砕機
39 給炭機
41 微粉砕機注水装置
43 水分計
47 注水流量調整弁
51 混練機出口のCWP粘度設定値
52 混練機出口のCWP粘度測定値
53 偏差値
54 減算器
55 粗粉炭の水分値
56 加算器
57 注水すべき注水流量
58 実際の注水流量
59 偏差値
60 減算器
61 アナログスイッチ
62 関数発生器
63 起動時CWP粘度制御「入」信号
64 プログラムに基づく注水流量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉炭スラリー、粗粉炭、石灰石及び粘度調整用の水を混練機に供給、混練し、粘度が管理値内に制御された石炭・水ペーストを製造する方法において、
ユニット起動時に、ユニット定常時に比較して粘度の高い前記微粉炭スラリーを使用し、さらに予め定める注水カーブに従って粘度調整用の水を前記混練機に注水し、前記注水カーブは、前記粗粉炭の含水量に対応した注水カーブを使用することを特徴とするユニット起動時の石炭・水ペーストの製造方法。
【請求項2】
前記微粉炭スラリーの粘度が、150〜200mPa・sであり、ユニット定常時の微粉炭スラリーの粘度と比較して、50〜80mPa・s高いことを特徴とする請求項1に記載のユニット起動時の石炭・水ペーストの製造方法。
【請求項3】
前記注水カーブは、注水初期、注水中期、注水後期の3段階に大別され、注水初期は、前記混練機に残留する洗浄水を考慮し少量の注水量Aとし、注水後期は、粘度150〜200mPa・sの微粉炭スラリーを使用して石炭・水ペーストを製造する際の最適な注水量Bとし、注水中期は、注水量Aから注水量Bに向かって漸次、注水量を増加させることを特徴とする請求項2に記載のユニット起動時の石炭・水ペーストの製造方法。
【請求項4】
前記注水カーブに従ってされる注水量のうち、注水量Aは前記粗粉炭の含水量によらず一定であり、注水量Bは、前記粗粉炭の含水量が多いほど少ないことを特徴とする請求項3に記載のユニット起動時の石炭・水ペーストの製造方法。
【請求項5】
前記注水量Aは、前記注水量Bの1/5〜1/3であることを特徴とする請求項4に記載のユニット起動時の石炭・水ペーストの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−88093(P2013−88093A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231612(P2011−231612)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】