説明

ユニバーサルジョイント

【課題】 ヨーク部材をコンパクトに維持しつつ、十字型スパイダの軸を大径化して、強度及びベアリング容量を大きくできるユニバーサルジョイントを提供する。
【解決手段】 十字型スパイダ2を用いるユニバーサルジョイント21において、第1ヨーク22及び第2ヨーク27の各二又腕23、24、28、29の内側先端から各軸受孔25、26、30、31にいたる溝32を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等に使用されるユニバーサルジョイントに係り、特にヨーク部材をコンパクトに維持しつつ、十字型スパイダの軸部を大径化して、強度及びベアリング容量を大きくする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の動力伝達部に用いられる十字型スパイダを使用したユニバーサルジョイントは、図1に示されるものが知られている。このユニバーサルジョイント1は、軸受孔8、9が形成された二又腕6、7を有する第1ヨーク5と、同様に軸受孔13、14が形成された二又腕11、12を有する第2ヨーク10と、第1ヨーク5と第2ヨーク10の各軸受孔8、9、13、14に挿入される軸3a、3b、3c、3dを有する十字型スパイダ2(図2に示す。)と、十字型スパイダ2の各軸3a、3b、3c、3dに嵌合し、かつ各軸受孔8、9、13、14内に止め輪19にて固定された有底円筒形状の軸受15、16、17、18とを有し、上記構成により、第1ヨーク5と第2ヨーク10とは十字型スパイダ2を介して一体的にされている。
【0003】
そして、このようなユニバーサルジョイント1の組み立ては以下のように行われる。まず第1ヨークと第2ヨークと十字軸スパイダの仮組み込みは、図3に示すように、十字型スパイダの一方の軸3aを例えば第1ヨーク5の一方の腕7の軸受孔9内に内側から挿入し、次に十字軸スパイダの前記軸3aと180度対向の軸3cを、前記第1ヨークの他方の腕6の軸受孔8に挿入する。同様の作業にて、十字型スパイダの残りの180度対向する軸3b、3dを、第2ヨークの二又腕11、12の軸受孔13、14に挿入する。次に前記各ヨークの各二又腕6、7、11、12の各軸受孔8、9、13、14の外側から有底円筒形状の軸受け15、16、17、18を、軸受孔8、9、13、14内に挿入し、十字型スパイダ2の各軸3a、3b、3c、3dに嵌合させる。最後に、前記軸受け15、16、17、18が外部に抜け出さないように、外周面に形成された円周溝20に止め輪19をはめ込み、軸受孔8、9、13、14内に固定する。なお、有底円筒形状の軸受け15、16、17、18にはニードル、シールが組み付けられるが、本願発明の内容と無関係であるため、詳細は省略する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなユニバーサルジョイント1において、強度及びベアリング容量を大きくするためには、図2に示す十字型スパイダ2の各軸3a、3b、3c、3dの径を大きくする必要があるが、軸径を大きくすると、たとえば図3に示すように軸3cが二又腕6の内側先端部6aに、あるいは図2に示す各軸の根元部4a、4b、4c、4dが、例えば図3に示す軸受孔9の内側縁部9aに干渉して組み込みができない問題が生じることがある。(強度を大きくするためには、根元部4a、4b、4c、4dも、軸3a、3b、3c、3dの大径化に伴い大きくする必要がある。)そのため、各ヨーク部材5、10に関しても寸法を大きくする必要があり、重量の増加や大きな搭載スペースが必要となるなどの問題がある。
【0005】
本発明は、ヨーク部材をコンパクトに維持しつつ、十字型スパイダの軸を大径化して、強度及びベアリング容量を大きくできるユニバーサルジョイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する手段として、十字型スパイダと、このスパイダの各軸が挿入される軸受孔を有する二又腕が形成された第1ヨークと第2ヨークと、前記スパイダの各軸に嵌合され、かつ前記第1ヨークと前記第2ヨークの各軸受孔に固定された有底円筒形状の軸受とを具備するユニバーサルジョイントにおいて、第1ヨーク及び第2ヨークの各二又腕の内側に先端から軸受孔にいたる溝を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のユニバーサルジョイントでは、第1ヨーク及び第2ヨークの各二又腕の内側に先端から軸受孔にいたる溝が形成されているので、図3に示すように十字型スパイダをヨーク部材に組み込むとき、ヨーク部材に十字型スパイダが干渉することなく確実に組み付けることができる。
【0008】
これにより、ヨーク部材をコンパクトに維持しつつ、十字型スパイダの軸を大径化して、強度及びベアリング容量を大きくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態を実施例にもとづき図面を参照して説明する。図4に示されるユニバーサルジョイント21は、軸受孔25、26が形成された二又腕23、24を有する第1ヨーク22と、同様に軸受孔30、31が形成された二又腕28、29を有する第2ヨーク27と、第1ヨーク22と第2ヨーク27の各軸受孔25、26、30、31に挿入される軸3a、3b、3c、3dを有する十字型スパイダ2と、十字型スパイダ2の各軸3a、3b、3c、3dに嵌合し、かつ各軸受孔25、26、30、31内に止め輪19にて固定された有底円筒形状の軸受15、16、17、18とを有し、上記構成により、第1ヨーク22と第2ヨーク27とは十字型スパイダ2を介して一体的にされている。
【0010】
そして、上記ユニバーサルジョイント21の組み立ては、従来と同様に、以下のように行われる。まず第1ヨークと第2ヨークと十字軸スパイダの仮組み込みは、図8に示すように、十字型スパイダの一方の軸3aを例えば第1ヨーク22の一方の腕24の軸受孔26内に内側から挿入し、次に十字軸スパイダの前記軸3aと180度対向の軸3cを、前記第1ヨークの他方の腕23の軸受孔25に挿入する。同様の作業にて、十字型スパイダの残りの180度対向する軸3b、3dを、第2ヨーク27の二又腕28、29の軸受孔30、31に挿入する。次に前記各ヨークの各二又腕23、24、28、29の各軸受孔25、26、30、31の外側から有底円筒形状の軸受け15、16、17、18を、軸受孔25、26、30、31内に挿入し、十字型スパイダ2の各軸3a、3b、3c、3dに嵌合させる。最後に、前記軸受け15、16、17、18が外部に抜け出さないように、外周面に形成された円周溝20に止め輪19をはめ込み、軸受け15、16、17、18を軸受孔25、26、30、31内に固定する。なお、有底円筒形状の軸受け15、16、17、18にはニードル、シールが組み付けられるが、本願発明の内容と無関係であるため、詳細は省略する。
【0011】
ところで、図4に示すユニバーサルジョイント21の各ヨーク22、27の各二又腕23、24、28、29の内側23a、24a、28a、29aには先端から軸受孔25、26、30、31にいたる溝32が形成されている。この溝32の幅W、及び深さDは図8に示すように、十字型スパイダ2の一方の軸3aを例えば第1ヨーク22の一方の腕24の軸受孔26内に内側から挿入するとき、前記軸3aの根元部4aが前記軸受孔26の内側縁部26aに、あるいは180度対向の軸3cが他方の腕23の内側先端部23bに干渉しないように決める必要がある。
【0012】
また、溝深さDを大きくし過ぎるとヨーク部材の強度が低下するため、溝深さDは、図5に示す二又腕の先端部の厚みLに対し、0%〜25%の範囲に設定するのが望ましい。さらに、強度的な応力集中を緩和するため、溝32の凹隅部の形状は、図9に示すように滑らかなR形状にすることが望ましい。
【0013】
また、溝32は各ヨーク部材の二又腕の先端から軸受孔方向、すなわちトルク伝達に対する関与が小さい部分に設けられているが、溝幅Wを大きくし過ぎるとトルク伝達に対する関与が大きい部分に欠肉を生ずる恐れがある。そのため溝幅Wの設定に関しては、図6に示す搭載される車両の常用高負荷領域でのトルク伝達範囲角度θを考慮し、θの範囲に欠肉が生じないように設定することが望ましい。なお、トルク伝達範囲角度θは図10に示すように、伝達トルクTによって決定するため、使用条件を考慮し算出すると良い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来のユニバーサルジョイントの要部断面図である。
【図2】ユニバーサルジョイントに組み込まれる十字型スパイダの斜視図である。
【図3】従来のユニバーサルジョイントのヨーク部材に十字型スパイダを組み込む模式図である。
【図4】本発明の一実施形態であるユニバーサルジョイントの要部断面図である。
【図5】本発明の一実施形態であるユニバーサルジョイントの図4における左側ヨーク部材のA矢視断面図である。
【図6】本発明の一実施形態であるユニバーサルジョイントの図5に示すヨーク部材のB矢視図である。
【図7】本発明の一実施形態であるユニバーサルジョイントの図4における左側ヨーク部材の斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態であるユニバーサルジョイントのヨーク部材に十字型スパイダを組み込む模式図である。
【図9】本発明の他の実施例におけるヨーク部材の斜視図で、図7に対応する図である。
【図10】図6におけるトルク伝達範囲角度θと伝達トルクTの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0015】
2 十字型スパイダ
15 軸受け
16 軸受け
17 軸受け
18 軸受け
19 止め輪
20 円周溝
21 ユニバーサルジョイント
22 第1ヨーク
23 二又腕
24 二又腕
25 軸受け孔
26 軸受け孔
27 第2ヨーク
28 二又腕
29 二又腕
30 軸受け孔
31 軸受け孔
32 溝
W 溝幅
L 溝間距離




























【特許請求の範囲】
【請求項1】
十字型スパイダと、このスパイダの各軸が挿入される軸受孔を有する二又腕が形成された第1ヨークと第2ヨークと、前記スパイダの各軸に嵌合され、かつ前記第1ヨークと前記第2ヨークの各軸受孔に固定された有底円筒形状の軸受とを具備するユニバーサルジョイントにおいて、前記各ヨークの二又腕の内側に先端から軸受孔にいたる溝を設けたことを特徴とするユニバーサルジョイント。






























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−275086(P2006−275086A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91680(P2005−91680)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(593146017)光精工株式会社 (9)