説明

ユーザインタフェース装置、及びその制御方法

【課題】装置の負荷を抑えながら、ユーザに関する情報を十分に抽出できるユーザインタフェース装置を提供する。
【解決手段】所定の検出対象範囲の中から、ユーザが存在する範囲を検出する第1の検出手段と、第1の検出手段の検出対象範囲より狭い検出対象範囲の中から、ユーザの存在を検出する第2の検出手段と、を備え、第1の検出手段によりユーザの存在が検出された場合に、第2の検出手段の動作を開始させ、第2の検出手段による検出結果に応じて、検出されたユーザとの間で情報の入出力を行うユーザインタフェース装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザとの間で情報の入出力を行うユーザインタフェース装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば一般家庭の部屋の中などに置かれて、ユーザに対して各種の情報を提示したり、ユーザから各種の情報の入力を受け付けたりするユーザインタフェース装置がある。このようなユーザインタフェース装置は、ユーザが明示的にスイッチを押すなどの動作をしなくとも、例えばユーザが部屋に入っていけばすぐに動作できるように、ユーザを検出するセンサ等の検出手段を備える場合がある。このような技術によれば、ユーザインタフェース装置は、検出手段を常に動作させておくことによって、ユーザが近づいた場合にその存在を検出し、ユーザの明示の指示がなくとも動作を開始することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来例の技術においては、いつでもユーザの存在を検知できるように、検出手段を継続して動作させる必要がある。また、ユーザとの間で情報の入出力を行う際には、例えばユーザが立っている正確な位置など、ユーザに関する情報を予め十分に抽出することが要請される場合がある。しかしながら、ユーザに関する情報を十分に抽出できる検出手段を常時動作させることは、消費電力が大きくなるなどの理由で、装置にとって負荷となるおそれがある。
【0004】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的の一つは、装置の負荷を抑えながら、ユーザに関する情報を十分に抽出できるユーザインタフェース装置、及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るユーザインタフェース装置は、所定の検出対象範囲の中から、ユーザが存在する範囲を検出する第1の検出手段と、前記第1の検出手段の検出対象範囲より狭い検出対象範囲の中から、ユーザの存在を検出する第2の検出手段と、前記第1の検出手段によりユーザの存在が検出された場合に、前記第2の検出手段の動作を開始させる制御手段と、を含み、前記第2の検出手段による検出結果に応じて、前記検出されたユーザとの間で情報の入出力を行うことを特徴とする。
【0006】
また、上記ユーザインタフェース装置において、前記制御手段は、前記第1の検出手段によりユーザの存在が検出された場合に、前記第2の検出手段に対する電力の供給を開始することで、前記第2の検出手段の動作を開始させることとしてもよい。
【0007】
また、上記ユーザインタフェース装置において、前記制御手段は、前記第2の検出手段による検出結果に応じて、前記検出されたユーザに対して情報を出力する情報出力手段、又は前記検出されたユーザからの情報の入力を受け付ける情報入力受付手段の少なくとも一方の動作を開始させることとしてもよい。
【0008】
また、上記ユーザインタフェース装置において、前記制御手段は、前記第2の検出手段による検出結果に応じて、前記第2の検出手段の動作を制御することとしてもよい。
【0009】
また、上記ユーザインタフェース装置において、前記制御手段は、前記第2の検出手段による検出結果に応じて、前記第2の検出手段の動作を停止させることとしてもよい。
【0010】
また、上記ユーザインタフェース装置において、前記第1及び第2の検出手段の検出対象範囲は、前記ユーザインタフェース装置に対する所定の方向の範囲であって、前記第1の検出手段は、前記検出対象範囲の中から、ユーザが存在する方向の範囲を検出し、前記ユーザインタフェース装置は、前記第1の検出手段によりユーザが存在する方向の範囲が検出された場合に、当該検出された方向の範囲に応じて、前記第2の検出手段の検出対象範囲を変化させる検出対象範囲制御手段をさらに含むこととしてもよい。
【0011】
また、上記ユーザインタフェース装置は、前記第1の検出手段によりユーザの存在が検出された場合に、所定の音声を出力する音声出力手段をさらに含み、前記第2の検出手段は、前記情報出力手段が出力する音声に対する前記ユーザの応答を検出することとしてもよい。
【0012】
また、上記ユーザインタフェース装置において、前記制御手段は、前記第2の検出手段による検出結果に応じて、前記第1の検出手段の動作を制御することとしてもよい。
【0013】
また、上記ユーザインタフェース装置において、前記制御手段は、前記第2の検出手段による検出結果に応じて、前記第1の検出手段による検出の感度を変化させることとしてもよい。
【0014】
また、本発明に係るユーザインタフェース装置の制御方法は、所定の検出対象範囲の中から、ユーザが存在する範囲を検出する第1の検出手段と、前記第1の検出手段の検出対象範囲より狭い検出対象範囲の中から、ユーザの存在を検出する第2の検出手段と、を含むユーザインタフェース装置の制御方法であって、前記第1の検出手段によりユーザの存在が検出された場合に、前記第2の検出手段の動作を開始させるステップと、前記第2の検出手段による検出結果に応じて、前記検出されたユーザとの間で情報の入出力を行うステップと、を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るユーザインタフェース装置1の使用例を示す概要図である。同図に示すように、ユーザインタフェース装置1は、例えば部屋の中央付近などに配置され、コンピュータ2と有線又は無線で通信接続されている。そして、コンピュータ2と連携して、部屋にいるユーザに関する情報を収集したり、ユーザに対して各種の情報を提示したりするなどの機能を実現する。コンピュータ2は、例えば家庭用ゲーム機やパーソナルコンピュータ等であって、その内部に記憶されるプログラムに基づいて、各種の情報処理を実行する。
【0017】
ユーザインタフェース装置1は、図2に示すように、遠赤外線センサアレイ10と、カメラ12と、接触型センサ14と、マイクロホンアレイ16と、操作部18と、ディスプレイ20と、スピーカ22と、本体駆動部24と、制御部26と、記憶部28と、通信部30と、電力供給部32と、を含んで構成される。
【0018】
遠赤外線センサアレイ10は、複数の遠赤外線センサを含んで構成されている。複数の遠赤外線センサのそれぞれは、ユーザインタフェース装置1の周囲の互いに異なる方向に向けて配置されており、人体が発する遠赤外線を検出することによって、それぞれが向けられた方向にユーザが存在するか否かを検出する。どの遠赤外線センサがユーザの存在を検出したかによって、遠赤外線センサアレイ10は、所定の検出対象範囲の中から、ユーザが存在する範囲を検出することができる。
【0019】
図3は、このような遠赤外線センサアレイ10の検出対象範囲の一例を示す図であって、ユーザインタフェース装置1を上から見た平面図である。図3の例においては、遠赤外線センサアレイ10は、4つの遠赤外線センサ11a、11b、11c及び11dを含んで構成されている。各遠赤外線センサの検出対象距離は、約5mであるものとする。すなわち、各遠赤外線センサは、ユーザインタフェース装置1から約5mまで離れた人の存在を検出できる。また、これらの遠赤外線センサは、それぞれ角度90°の範囲を検出対象方向としており、90°ずつ向きを変えて配置されている。これにより、遠赤外線センサアレイ10は、ユーザインタフェース装置1を中心として水平方向に360°全方位を検出対象範囲とし、部屋の中央近傍に置かれた場合に、部屋全体を検出対象範囲に含めることができる。4つの遠赤外線センサ11a、11b、11c、11dのうち、いずれかの遠赤外線センサがユーザを検出することによって、遠赤外線センサアレイ10は、検出対象範囲の中からユーザが存在する方向の範囲を90°に絞り込むことができる。具体例として、図3の例において遠赤外線センサ11dがユーザの存在を検出した場合、図中において中心角90°、半径5mの扇形状の領域A4内にユーザがいることがわかる。
【0020】
カメラ12は、ユーザインタフェース装置1の周囲の画像を撮像する。また、カメラ12はパン・チルト機能を備えているものとする。これにより、カメラ12は、制御部26が出力する制御信号に応じて、その撮像方向を変化させることができる。ここで、カメラ12の画角(撮像対象方向の範囲)は、遠赤外線センサアレイ10がユーザを検出する検出対象方向の範囲(360°)より狭い範囲(例えば60°〜90°程度)となっている。しかしながら、カメラ12は、撮像方向を変化させることによって、遠赤外線センサアレイ10の検出対象方向の範囲を全て撮像可能となっている。カメラ12がユーザを含んだ画像を撮像し、制御部26が撮像された画像を解析することによって、ユーザインタフェース装置1はユーザが存在する位置(方向)を特定できる。なお、カメラ12の解像度や制御部26による画像解析の精度などによる制限のため、カメラ12の撮像画像に基づいてユーザの存在を検出可能な距離(カメラ12の検出対象距離)には、限界がある。本実施形態において、このカメラ12の検出対象距離は、遠赤外線センサアレイ10の検出対象距離よりも短い約3mであるものとする。このため、カメラ12の検出対象範囲は、遠赤外線センサアレイ10の検出対象範囲よりも狭い扇形状の領域となる。
【0021】
接触型センサ14は、例えば指紋センサや静脈パターンセンサなどであって、指紋や掌の静脈パターンなどのユーザを識別する情報を検知する。接触型センサ14がユーザを検知するためには、ユーザは、所定の検知部材に触れるか、または指や掌を所定の検知部材に極めて近い距離(例えば10cm程度)まで近づける必要がある。そのため、接触型センサ14によりユーザを検出可能な距離は、接触型センサアレイ10やカメラ12と比較して最も短い。なお、接触型センサ14は、人体そのものではなく、ユーザが所持するRFID(Radio Frequency IDentification)タグなどの信号を読み取るセンサであってもよい。
【0022】
マイクロホンアレイ16は、複数のマイクロホン素子を含んで構成され、ユーザインタフェース装置1の周辺の音声を集音する。ユーザインタフェース装置1は、マイクロホンアレイ16に含まれる各マイクロホン素子が集音した音声に基づいて、音源(例えば声を発したユーザ)の存在する方向を、所定の範囲内で特定できる。本実施形態においては、ユーザインタフェース装置1は、マイクロホンアレイ16を用いることによって、遠赤外線センサアレイ10よりさらに狭い方向の範囲にユーザが存在する方向を絞り込むことができるものとする。
【0023】
操作部18は、例えば操作ボタンやスイッチ、タッチパネル等を含んで構成され、ユーザの操作入力を受け付ける。マイクロホンアレイ16や操作部18によって、ユーザインタフェース装置1は、声やボタン操作などによるユーザからの情報の入力を受け付ける。また、ユーザインタフェース装置1は、マイクロホンアレイ16や操作部18だけでなく、カメラ12もユーザからの情報入力を受け付ける情報入力受付手段として用いてもよい。すなわち、ユーザインタフェース装置1は、ユーザのジェスチャーなどをカメラ12によって撮像し、撮像された画像を解析した結果に応じて各種の処理を実行してもよい。
【0024】
ディスプレイ20は、制御部26が出力する制御信号に応じて、各種の情報を画像として表示する。また、スピーカ22は、制御部26が出力する制御信号に応じて、各種の音声情報を出力する。ディスプレイ20及びスピーカ22は、ユーザに対して各種の情報を出力する情報出力手段として動作する。
【0025】
本体駆動部24は、例えばアクチュエータや駆動輪等によって構成され、ユーザインタフェース装置1本体を駆動する。制御部26から出力される制御信号に応じて本体駆動部24が動作することによって、ユーザインタフェース装置1は、自律的に室内を移動したり、向きを変えたりすることができる。
【0026】
制御部26は、例えばマイクロプロセッサ等であって、記憶部28に格納されたプログラムや、コンピュータ2から送信される制御命令などに基づいて、ユーザインタフェース装置1各部の制御を行う。具体的に、例えば制御部26は、マイクロホンアレイ16が集音した音声情報や、操作部18に対するユーザの操作内容を示す情報を取得し、これらの情報に応じた各種の処理を実行する。また、これら取得した情報や、コンピュータ2から受信したデータに基づいて、ディスプレイ20やスピーカ22に対して各種の情報を出力したり、本体駆動部24を制御してユーザインタフェース装置1本体を移動させたりする。本実施形態において、制御部26が実行する処理の具体例については、後述する。
【0027】
記憶部28は、例えばRAMやROM等のメモリ素子を含んで構成され、制御部26が実行するプログラムを記憶する。また、記憶部28は、カメラ12が撮像した画像のデータや、マイクロホンアレイ16が集音した音声のデータなど、ユーザインタフェース装置1が取得したユーザに関する各種の情報を一時的に記憶する。通信部30は、例えば無線LANや、Bluetooth(登録商標)規格、USB(Universal Serial Bus)規格などの通信インタフェースであって、制御部26とコンピュータ2との間の情報の送受信を中継する。
【0028】
電力供給部32は、バッテリ等を含んで構成され、ユーザインタフェース装置1の各部に対して、その動作に必要な電力を供給する。また、電力供給部32は、例えばスイッチング回路等を含んでいる。これにより、電力供給部32は、制御部26から出力される制御信号に応じて、カメラ12や、接触型センサ14、マイクロホンアレイ16、操作部18、ディスプレイ20、スピーカ22、本体駆動部24、通信部30などの各部に対して、個別に電力の供給を開始又は停止できる。すなわち、制御部26からの指示に応じて、他の各部には電力を供給しつつ、カメラ12だけ電力の供給を停止したり、制御部26から指示があったタイミングで、これまで電力の供給を停止していた各部への電力供給を開始したりすることができる。
【0029】
以下、本実施形態に係るユーザインタフェース装置1がユーザを検出する際に、制御部26が実行する処理の具体例について、図4のフロー図に基づいて説明する。
【0030】
この処理の開始時において、ユーザインタフェース装置1は、待機モードで動作しているものとする。この待機モードにおいては、遠赤外線センサアレイ10に対しては電力が供給され、カメラ12、接触型センサ14、マイクロホンアレイ16、操作部18、ディスプレイ20、スピーカ22及び本体駆動部24に対しては、電力の供給が停止されている。これにより、カメラ12、接触型センサ14、マイクロホンアレイ16、操作部18、ディスプレイ20、スピーカ22及び本体駆動部24の動作は停止している。一般的に、遠赤外線センサアレイ10の動作に必要な電力は、カメラ12やマイクロホンアレイ16などと比較して少ない。そのため、待機モードにおいては、ユーザインタフェース装置1の消費電力は低く抑えられる。一方で、遠赤外線センサアレイ10がユーザを検出していない状態においては、ユーザはユーザインタフェース装置1の近くにいないため、ユーザとの間で情報の入出力を行う各部が動作を停止していても支障はないと考えられる。なお、待機モードにおいては、通信部30に対する電力の供給も停止されてよい。また、制御部26や通信部30は、待機モードにおいては、一部機能を制限したり性能(通信帯域など)を低下させたりして通常の状態よりも低い消費電力で動作することとしてもよい。
【0031】
待機モードにおいて、遠赤外線センサアレイ10は、継続的にユーザインタフェース装置1の周囲にユーザが存在するか否かの検出を行う。そして、制御部26は、遠赤外線センサアレイ10による検出結果を取得し(S1)、いずれかの遠赤外線センサがユーザの存在を検出したか否かを判定する(S2)。いずれの遠赤外線センサもユーザの存在を検出していない間は、所定時間おきにS1及びS2の処理が繰り返される。
【0032】
ここで、例えば部屋の外からユーザが入ってきて、ユーザインタフェース装置1に近づいていくと、遠赤外線センサアレイ10に含まれる遠赤外線センサ11a、11b、11c及び11dのいずれかが、ユーザの存在を検出したことを示す信号を出力する。これに応じて制御部26は、S2の処理においてユーザの存在を検出したと判定する。この場合、制御部26は、カメラ12の動作を開始させる制御を行う。具体的には、電力供給部32に対して制御信号を出力することにより、カメラ12への電力供給を開始する(S3)。
【0033】
さらに制御部26は、カメラ12のパン機能を制御することで、カメラ12の撮像対象方向を変更する(S4)。この場合において、制御部26は、S2でユーザの存在を検出した遠赤外線センサの向き(すなわち、遠赤外線センサアレイ10により検出されたユーザが存在する方向の範囲)に応じて、カメラ12の撮像対象方向を制御する。具体的に、例えば制御部26は、ユーザの存在を検出した遠赤外線センサの検出対象方向(角度90°の範囲)の両端のうち、現時点においてカメラ12が向いている方向と近い側の端を含む方向にカメラ12の撮像対象方向が一致するように、カメラ12の向きを変化させる。
【0034】
S4によりカメラ12の撮像対象方向を変化させた後、制御部26は、カメラ12が撮像した画像を取得する(S5)。そして、S5で取得した撮像画像に対して所定の画像解析処理を実行することにより、撮像画像内にユーザが含まれているか否か判定する(S6)。
【0035】
S6の処理において撮像画像内にユーザが検出できなかった場合、制御部26は、遠赤外線センサアレイ10によりユーザが検出された方向の範囲の全てについて、カメラ12によるユーザの検出を試みたか否かを判定する(S7)。S7の判定の結果、まだカメラ12により撮像されていない範囲がある場合には、S4に戻って、さらにカメラ12の向きを変化させ、ユーザの検出を試みる。
【0036】
図5は、ユーザの存在を検出した遠赤外線センサの検出対象方向と、制御部26によって変更されたカメラ12の撮像対象方向と、の位置関係の一例を示す図であって、ユーザインタフェース装置1を上から見た平面図である。図5の例においては、遠赤外線センサ11bがユーザの存在を検出し、これによってユーザが存在する範囲が図中において破線で示される領域に絞り込まれているものとする。この場合、例えば制御部26は、S4の処理においてカメラ12の撮像対象方向を図中に示す方向に変更することによって、図中の一点鎖線に示す領域にユーザがいるか否かを判定する。そして、判定に失敗した場合には、図中の矢印によって示される向きにカメラ12を回転させて、再びユーザの検出を試みる。なお、この図の例においては、カメラ12の画角は、遠赤外線センサアレイ10に含まれる各遠赤外線センサの検出対象方向の範囲より狭いものとしている。カメラ12の画角が各遠赤外線センサの検出対象方向の範囲以上であれば、前述したS7の処理は不要となる。
【0037】
S7までの処理により、全ての方向の範囲についてカメラ12による撮像を行ったが、ユーザの存在を検出できなかった場合、ユーザがカメラ12の検出対象距離まで近づいていないと推定される。この場合、制御部26は、S3で開始させたカメラ12の動作を停止させる制御を行う。具体的には、電力供給部32に対する制御信号の出力により、カメラ12に対する電力供給を再び停止する(S8)。そして、所定時間の経過を待って(S9)、S1に戻って処理を繰り返す。
【0038】
一方、S6の処理において撮像画像内にユーザが含まれていると判定した場合、制御部26は、カメラ12の撮像画像内におけるユーザの顔を認識し、ユーザが誰であるかを識別するユーザ識別処理を行う(S10)。なお、一般的に顔認識処理を実行するには多くの演算量が必要となり、処理負荷が大きい。そのため、ユーザインタフェース装置1は、自分自身で顔認識処理を行わずに、通信部30を介してカメラ12による撮像画像をコンピュータ2に対して送信し、コンピュータ2に顔認識処理を実行させてもよい。
【0039】
この場合において、顔認識処理を実行するためには、カメラ12がユーザを撮像した時点において、ユーザがユーザインタフェース装置1の方向を向いている必要がある。そこで、ユーザをユーザインタフェース装置1に注目させるため、制御部26は、撮像画像を取得する前に、ユーザに視認可能な合図情報を出力してもよい。具体的に、例えば制御部26は、S3の時点でカメラ12への電力供給を開始するとともに、ディスプレイ20への電力供給を開始し、ディスプレイ20にメッセージなどを表示させたり、画面を点滅させたりしてもよい。また、この合図情報は、ユーザが視覚的に認識可能な情報だけでなく、例えば音声情報など、ユーザが認識可能な他の種類の情報であってもよい。スピーカ22から出力される音声情報を合図情報として利用する場合の例については、後に説明する。
【0040】
続いて制御部26は、これまで電力供給が停止されていた各部への電力供給を開始する(S11)。これにより、これまで動作を停止していた各部が動作を開始し、ユーザインタフェース装置1は待機モードから通常動作モードへと移行する。そして、ユーザインタフェース装置1は、カメラ12によって検出されたユーザとの間で情報の入出力を行う。この場合において、ユーザインタフェース装置1は、S10の識別結果を用いて、識別されたユーザに応じて情報の入出力を実行する。具体例として、ユーザインタフェース装置1は、予め登録されたユーザの名前や、ユーザごとにカスタマイズされた内容のメッセージを出力する。
【0041】
また、ユーザインタフェース装置1は、S5で取得した撮像画像内におけるユーザの位置と、当該撮像画像を撮像した際のカメラ12の撮像対象方向と、に基づいて、ユーザインタフェース装置1から見たユーザの方向を特定し、特定した方向に応じて情報の入出力を実行してもよい。例えばユーザインタフェース装置1は、本体駆動部24によって、特定した方向に自分自身の向きを変更する。これにより、ディスプレイ20の表示面やスピーカ22による音声の出力方向がユーザに向けられ、ユーザはユーザインタフェース装置1の出力する情報を容易に把握できるようになる。
【0042】
なお、以上説明したフローの例においてS8の処理が実行された場合、遠赤外線センサアレイ10の検出結果によりユーザが存在すると判定されたにもかかわらず、カメラ12の撮像画像によりユーザを検出できなかったことになる。このような事象は、遠赤外線センサアレイ10によるユーザの誤検出によっても発生する可能性がある。そこで制御部26は、カメラ12による検出結果に応じて、遠赤外線センサアレイ10の感度を変化させることとしてもよい。例えば制御部26は、一定回数以上繰り返してS8の処理が実行された場合(すなわち、カメラ12によりユーザを検出できない状態が続いた場合)、遠赤外線センサアレイ10の感度を下げる制御を実行する。具体例として、制御部26は、遠赤外線センサアレイ10に内蔵される信号増幅回路の増幅率(ゲイン)を調整することで、遠赤外線センサアレイ10の感度を変更する。あるいは制御部26は、S2の処理において、遠赤外線センサアレイ10から出力される信号に基づいてユーザが存在するか否か判定する際の閾値を変更することで、遠赤外線センサアレイ10によるユーザ検出の感度を変更してもよい。このように、カメラ12の検出結果に応じて遠赤外線センサアレイ10の動作を制御することにより、ユーザインタフェース装置1は、遠赤外線センサアレイ10によるユーザの誤検出を減らすなど、遠赤外線センサアレイ10をより望ましい条件で動作させるよう調整することができる。
【0043】
次に、本実施形態に係るユーザインタフェース装置1がユーザを検出する際に、制御部26が実行する処理の別の例について、図6のフロー図に基づいて説明する。
【0044】
この図6の例においても、図4の例におけるS1,S2の処理と同様に、まず制御部26は遠赤外線センサアレイ10による検出結果を取得し(S21)、ユーザの存在を検出したか否かを判定する(S22)処理を繰り返す。
【0045】
そして、S22の処理において遠赤外線センサアレイ10がユーザの存在を検出したと判定した場合、制御部26は、電力供給部22に対する制御信号を出力することにより、マイクロホンアレイ16及びスピーカ22への電力の供給を開始する(S23)。これにより、マイクロホンアレイ16及びスピーカ22の動作が開始される。続いて制御部26は、スピーカ22から所定の音声を出力する(S24)。この所定の音声は、例えば「こんにちは」などのユーザに対する呼びかけである。そして、S24による音声の出力から所定の時間にわたって、マイクロホンアレイ16に含まれる各マイクロホン素子が集音した音声を示すデータを取得する(S25)。
【0046】
次に制御部26は、S25で得られた音声データに基づいて、S24で出力した音声に対してユーザの応答があったか否かを判定する(S26)。すなわち、S25で得られた音声データの中に、ユーザの声を示すデータが含まれているか否かを判定する。ユーザの応答がないと判定された場合には、制御部26は、マイクロホンアレイ16及びスピーカ22への電力供給を停止し(S27)、所定時間の経過を待って(S28)、S21に戻って処理を繰り返す。なお、マイクロホンアレイ16によりユーザの声を検知できなかった場合、制御部26は、図4のフローの例と同様に、これに応じて遠赤外線センサアレイ10の感度を変更するなどの制御を実行してもよい。
【0047】
一方、S26の判定によりユーザの応答があったと判定された場合、制御部26は、S25で得られた音声データに基づいて、ユーザが存在する方向の範囲を特定する(S29)。
【0048】
なお、S26及びS29の処理において、制御部26は、S22でユーザの存在を検出した遠赤外線センサの向きに応じて、S25で取得した各マイクロホン素子の音声データに対し補正を行うなどの方法により、ユーザの声を認識する認識精度を上げることとしてもよい。具体例として、制御部26は、各マイクロホン素子によって得られた音声データのそれぞれに対して、S22でユーザの存在を検出した遠赤外線センサの向きに応じた所定のデジタルフィルタ処理を実行する。このデジタルフィルタ処理は、ユーザが存在すると推定される方向から到来した音声に対する感度を向上させ、他の方向から到来した音声に対する感度を下げるように、マイクロホンアレイ16の指向特性を変化させる処理である。これにより、ユーザインタフェース装置1は、例えばユーザの声が壁などで反響したり、ユーザの声以外の雑音が存在したりする状況であっても、精度よくユーザが存在する方向を検出できる。
【0049】
続いて制御部26は、S29の処理によりユーザが存在する方向の範囲が特定された時点で、カメラ12に対する電力供給を開始し(S30)、その動作を開始させる。さらに制御部26は、図4の例と同様に、カメラ12による撮像画像を用いたユーザの識別処理を行う(S31)。すなわち、S29で特定された方向に応じて、カメラ12の撮像対象方向を変更し、カメラ12による撮像画像を取得する。そして、取得した画像に対してユーザの顔を認識する顔認識処理を実行する。
【0050】
この場合において、ユーザはS24の処理で実行された呼びかけに対して返事をしているため、ユーザインタフェース装置1のほうを向いていると考えられる。このように、音声情報を出力してユーザへの呼びかけを行うことによって、マイクロホンアレイ16を用いたユーザの存在する方向の絞り込みを可能にするとともに、カメラ12の撮像画像に基づく顔認識処理を成功しやすくすることができる。
【0051】
S31の処理によってユーザを識別すると、制御部26は、これまで電力供給が停止されていた各部への電力供給を開始する(S32)。これにより、ユーザインタフェース装置1は待機モードから通常動作モードへと移行する。
【0052】
なお、これまでの説明においては、ユーザインタフェース装置1は、カメラ12によって撮像された画像に基づいてユーザを識別することとしたが、これに限らず、例えば接触型センサ14が検知した情報に基づいてユーザを識別してもよい。この場合においても、制御部26は、遠赤外線センサアレイ10がユーザの存在を検出してから接触型センサ14に対して電力の供給を開始して、その動作を開始させることとしてもよい。これにより、ユーザが近くにいない間は不要な電力の消費を抑制し、ユーザインタフェース装置1の負荷を軽減することができる。また、ユーザインタフェース装置1は、カメラ12の撮像画像によるユーザ識別処理に失敗した場合に、接触型センサ14に対する電力供給を開始するとともに、ユーザに接触型センサ14の使用を促すメッセージ情報を出力することで、接触型センサ14によるユーザの識別を実行してもよい。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係るユーザインタフェース装置1は、消費電力などの負荷が比較的少ない検出手段(例えば遠赤外線センサアレイ10)によりユーザの存在する範囲を検出した後、比較的負荷の大きな検出手段(例えばカメラ12)の動作を開始させ、より詳細にユーザの検出を行うことで、できるだけ装置全体の負荷を抑えながら、十分な精度でユーザの検出を行うことができる。
【0054】
なお、本発明の実施の形態は、以上説明したものに限られない。例えばユーザインタフェース装置1は、以上説明したものに限らず、ユーザに関する情報を収集する各種の検出手段を備えてもよい。例えばユーザインタフェース装置1は、超音波や近赤外線などによりユーザとの間の距離を計測するセンサなどを備えてもよい。これらの検出手段についても、遠赤外線センサアレイ10などの他の検出手段によってユーザの存在が検出されるまでその動作を停止させることで、ユーザインタフェース装置1の負荷を軽減できる。
【0055】
また、待機モードにおいて動作させる検出手段についても、遠赤外線センサアレイ10に限らず、比較的広い検出対象範囲の中からユーザの存在を検出できる各種のセンサであってよい。また、ユーザインタフェース装置1は、ユーザからの情報の入力を受け付ける情報入力受付手段やユーザに対して情報を出力する情報出力手段として、これまで説明した以外の各種のデバイスを備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態に係るユーザインタフェース装置の使用例を示す概要図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るユーザインタフェース装置の構成例を示す構成ブロック図である。
【図3】遠赤外線センサアレイの検出対象範囲の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るユーザインタフェース装置が実行する処理の流れの一例を示すフロー図である。
【図5】遠赤外線センサの検出対象方向と、カメラの撮像対象方向と、の位置関係の一例を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るユーザインタフェース装置が実行する処理の流れの別の例を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ユーザインタフェース装置、2 コンピュータ、10 遠赤外線センサアレイ、12 カメラ、14 接触型センサ、16 マイクロホンアレイ、18 操作部、20 ディスプレイ、22 スピーカ、24 本体駆動部、26 制御部、28 記憶部、30 通信部、32 電力供給部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の検出対象範囲の中から、ユーザが存在する範囲を検出する第1の検出手段と、
前記第1の検出手段の検出対象範囲より狭い検出対象範囲の中から、ユーザの存在を検出する第2の検出手段と、
前記第1の検出手段によりユーザの存在が検出された場合に、前記第2の検出手段の動作を開始させる制御手段と、
を含み、
前記第2の検出手段による検出結果に応じて、前記検出されたユーザとの間で情報の入出力を行うことを特徴とするユーザインタフェース装置。
【請求項2】
請求項1に記載のユーザインタフェース装置において、
前記制御手段は、前記第1の検出手段によりユーザの存在が検出された場合に、前記第2の検出手段に対する電力の供給を開始することで、前記第2の検出手段の動作を開始させる
ことを特徴とするユーザインタフェース装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のユーザインタフェース装置において、
前記制御手段は、前記第2の検出手段による検出結果に応じて、前記検出されたユーザに対して情報を出力する情報出力手段、又は前記検出されたユーザからの情報の入力を受け付ける情報入力受付手段の少なくとも一方の動作を開始させる
ことを特徴とするユーザインタフェース装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のユーザインタフェース装置において、
前記制御手段は、前記第2の検出手段による検出結果に応じて、前記第2の検出手段の動作を制御する
ことを特徴とするユーザインタフェース装置。
【請求項5】
請求項4に記載のユーザインタフェース装置において、
前記制御手段は、前記第2の検出手段による検出結果に応じて、前記第2の検出手段の動作を停止させる
ことを特徴とするユーザインタフェース装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のユーザインタフェース装置において、
前記第1及び第2の検出手段の検出対象範囲は、前記ユーザインタフェース装置に対する所定の方向の範囲であって、
前記第1の検出手段は、前記検出対象範囲の中から、ユーザが存在する方向の範囲を検出し、
前記ユーザインタフェース装置は、前記第1の検出手段によりユーザが存在する方向の範囲が検出された場合に、当該検出された方向の範囲に応じて、前記第2の検出手段の検出対象範囲を変化させる検出対象範囲制御手段をさらに含む
ことを特徴とするユーザインタフェース装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のユーザインタフェース装置において、
前記第1の検出手段によりユーザの存在が検出された場合に、所定の音声を出力する音声出力手段をさらに含み、
前記第2の検出手段は、前記情報出力手段が出力する音声に対する前記ユーザの応答を検出する
ことを特徴とするユーザインタフェース装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のユーザインタフェース装置において、
前記制御手段は、前記第2の検出手段による検出結果に応じて、前記第1の検出手段の動作を制御する
ことを特徴とするユーザインタフェース装置。
【請求項9】
請求項8に記載のユーザインタフェース装置において、
前記制御手段は、前記第2の検出手段による検出結果に応じて、前記第1の検出手段による検出の感度を変化させる
ことを特徴とするユーザインタフェース装置。
【請求項10】
所定の検出対象範囲の中から、ユーザが存在する範囲を検出する第1の検出手段と、
前記第1の検出手段の検出対象範囲より狭い検出対象範囲の中から、ユーザの存在を検出する第2の検出手段と、
を含むユーザインタフェース装置の制御方法であって、
前記第1の検出手段によりユーザの存在が検出された場合に、前記第2の検出手段の動作を開始させるステップと、
前記第2の検出手段による検出結果に応じて、前記検出されたユーザとの間で情報の入出力を行うステップと、
を含むことを特徴とするユーザインタフェース装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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