説明

ヨウ化メチル製造装置

【課題】 ポンプ手段を用いず、かつ、11CHを有効利用できるヨウ化メチル製造装置を実現する。
【解決手段】 不活性ガス源から不活性ガスが供給される不活性ガス流路1と、不活性ガス流路内に11CHを供給可能なメタン供給器2と、11CHとヨウ素とを反応させて11CHIを生成するヨウ化メチル生成器3と、11CHIを捕集するヨウ化メチル捕集器4と、ガスを収容可能なチャンバ5と、不活性ガス流路1、ヨウ化メチル生成器3、ヨウ化メチル捕集器4、及び、チャンバ5をこの順に直列に接続する第1状態と、不活性ガス流路1、チャンバ5、ヨウ化メチル生成器3、ヨウ化メチル捕集器4をこの順に直列に接続する第2状態と、を選択的に切替える流路切替器80と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨウ化メチル製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、放射性薬剤の標識前駆体であるヨウ化メチル(11CHI)の製造装置として、循環経路内に、11CHの添加器、11CHとヨウ素とを反応させて11CHIを生成する反応器、生成した11CHIを捕集する捕集器とをこの順に設け、キャリアガスとなる不活性ガスをポンプ手段で循環させつつ未反応の11CHを再利用して11CHIを生成する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特表平10−509449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の装置では、可動部材であるポンプ手段によりガスを循環させていたため、ヨウ素等がポンプ手段に析出して故障の原因となっていた。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ポンプ手段を用いず、かつ、11CHを有効利用できるヨウ化メチル製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るヨウ化メチル製造装置は、不活性ガス源から不活性ガスが供給される不活性ガス流路と、不活性ガス流路内に11CHを供給可能なメタン供給器と、11CHとヨウ素とを反応させて11CHIを生成するヨウ化メチル生成器と、11CHIを捕集するヨウ化メチル捕集器と、ガスを収容可能なチャンバと、不活性ガス流路、ヨウ化メチル生成器、ヨウ化メチル捕集器、及び、チャンバをこの順に直列に接続する第1状態と、不活性ガス流路、チャンバ、ヨウ化メチル生成器、ヨウ化メチル捕集器をこの順に直列に接続する第2状態と、を選択的に切替える流路切替器と、を備える。
【0006】
本発明によれば、まず、流路切替器を第1状態に設定し、メタン供給器から不活性ガス流路内に11CHを供給すると、不活性ガスをキャリアガスとして11CHが不活性ガス流路からヨウ化メチル生成器に供給され、ヨウ化メチル生成器において11CHIが生成し、生成した11CHIはヨウ化メチル捕集器に吸着される一方、未反応の11CHはヨウ化メチル捕集器を通過してチャンバ内に収容される。
【0007】
続いて、流路切替器を第2状態に切替えると、不活性ガス流路から供給されるキャリアガスとしての不活性ガスにより、チャンバ内のガス、すなわち、未反応の11CHが再びヨウ化メチル生成器に供給され、ヨウ化メチル生成器において11CHIがさらに生成し、生成した11CHIはヨウ化メチル捕集器に吸着される。
【0008】
したがって、ポンプ手段を用いることなく、ヨウ化メチル生成器から排出される未反応の11CHをチャンバから再びヨウ化メチル生成器に戻して再利用させることができる。
【0009】
ここで、メタン供給器は、11CHを吸着する吸着剤が充填されるメタン吸着カラムとメタン吸着カラムを加熱して吸着剤から11CHを脱離させる加熱器とを有することが好ましい。
【0010】
これによれば、11CHに対する選択性の高い吸着剤を用いることにより、11CHを不活性ガス流路内に高純度に供給することが容易である。
【0011】
また、11COとHとを反応させて11CHを生成させるメタン生成器をさらに備え、メタン生成器はメタン吸着カラムに接続され、メタン生成器に不活性ガス供給源から不活性ガスが供給されることが好ましい。
【0012】
これによれば、11COから11CHをその場で生成し、生成した11CHを不活性ガスにより移送してメタン吸着カラムの吸着剤に吸着させることができる。
【0013】
また、不活性ガス流路は、メタン供給器をバイパスするバイパスラインをさらに有することが好ましい。
【0014】
これによれば、流路切替器が第2状態となっており、メタン供給器からメタンを供給する必要がない場合に、メタン供給器をバイパスして不活性ガス流路から不活性ガスが流れるので、不活性ガスの清浄性が向上して好ましい。
【0015】
さらに、流路切替器としては、いわゆる6方弁を有することが好ましく、これにより低コスト化及び操作の簡単化が図られる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ポンプ手段を用いず、かつ、11CHを有効利用できるヨウ化メチル製造装置が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明によるヨウ化メチル製造装置の好適な実施形態について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係るヨウ化メチル製造装置を示す概略構成図である。なお、以降の図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態のヨウ化メチル製造装置100は、例えば、病院等のPET検査(陽電子断層撮影検査)等に使用される放射性薬剤の標識前駆体である11CHIを製造するヨウ化メチル製造装置である。必要に応じて、生成した11CHIからさらに11CHOTfを生成させることもできる。
【0019】
このヨウ化メチル製造装置100は概略、不活性ガスが供給される不活性ガス流路1と、不活性ガス流路1に11CHを供給するメタン供給器2と、11CHとヨウ素とを反応させて11CHIを生成するヨウ化メチル生成器3と、合成した11CHIを捕集するヨウ化メチル捕集器4と、ガスを収容可能なチャンバ5と、ガスの流路を切替る6方弁80と、を備えている。
【0020】
不活性ガス流路1は、不活性ガスとしてのヘリウム供給源S1(例えば、Heボンベ)に一端が接続されると共に、他端が6方弁80の開口aに接続されたラインL1を有してている。ラインL1には、上流側から順に、圧力計20、マスフローコントローラ10、バルブV7、CO吸着カラム72、メタン供給器2、3方弁V9、及び、3方弁V10がこの順に接続されている。
【0021】
CO吸着カラムとしては、アスカライトII等、苛性ソーダやソーダ石灰等のアルカリを主成分とする充填剤を充填したカラムを使用できる。
【0022】
メタン供給器2は、メタン吸着カラム44及びこのメタン吸着カラム44を加熱及び冷却可能な温度制御器(加熱器)46を有している。温度制御器としては、例えば、電熱ヒータ及び好ましくは空冷ファンを有するものを使用できる。メタン吸着カラム44内の吸着剤としては、11CHを選択的に吸着するものであれば特に限定されないが、例えば、60−80メッシュのCarbosphere(登録商標)等を使用できる。例えば、温度制御器46によってメタン吸着カラム44内の吸着剤を常温にすると11CHがこの吸着剤に選択的に吸着される一方、例えば、吸着剤を120〜130℃程度の高温にすると、吸着剤から11CHが脱離するので、不活性ガス流路1に11CHを高純度に供給できる。
【0023】
3方弁V9の他方の開口には排ガスラインL8が接続されている。
【0024】
ラインL1のマスフローコントローラ10とバルブV7との間からは、メタン供給器2をバイパスするバイパスラインL7が分岐しており、このバイパスラインL7は3方弁V10の他の開口に接続されている。このラインL7にはバルブV8が接続されている。本実施形態では、ラインL1及びバイパスラインL7が不活性ガス流路1を構成する。
【0025】
また、ラインL1における、3方弁V9と3方弁V10との間にはラインL1を流れる物質から放射される放射線強度(radiation intensity)を測定する放射線センサRI3が設置されている。
【0026】
ラインL1におけるバルブV7とCO吸着カラム72との間からはラインL2が分岐しており、このラインL2は、ラインL1における圧力計20よりも上流側の部分に接続されている。ラインL2には、上流側から順に、圧力計16、フローメータ12、バルブV1、バルブV4、メタン生成器6、バルブV5,3方弁V6が接続されている。
【0027】
さらに、ラインL2におけるバルブV1とバルブV4との間からはラインL3及びラインL4が分岐しており、それぞれ水素供給源S2及び11CO供給源S3に接続されている。水素供給源S2は例えば水素ボンベ、供給源S3は、例えばサイクロトロン(不図示)によって11COを製造するターゲット容器に接続されている。
【0028】
ラインL3には、上流側から順に、圧力計18、フローメータ14、及びバルブV2が接続されている。また、ラインL4にはバルブV3が接続されている。
【0029】
メタン生成器6は、還元触媒が充填されたメタン生成カラム40と、メタン生成カラム40を加熱・冷却可能な温度制御器42と、を有している。常温にて還元触媒上に11COを吸着させ、その後、水素の存在下で還元触媒を440−460℃程度に加熱する事により、11COと水素とを反応させることができ11CHが生成する。還元触媒としては、例えば、50−80メッシュのShimalite Ni等を利用できる。
【0030】
メタン生成器6には、メタン生成カラム40内の還元触媒から放射する放射線強度を測定する放射線センサRI1が設けられている。
【0031】
3方弁V6の他端には排ガスラインL5が接続されており、排ガスラインL5にはCO吸着カラム70が接続されている。
【0032】
続いて、6方弁80について説明する。6方弁80は、a〜fの各開口を有するバルブであり、開口bと開口cとを連通し、開口dと開口eとを連通し、開口aと開口fとを連通する第1状態と、開口aと開口bとを連通し、開口cと開口dとを連通し、開口eと開口fとを連通する第2状態と、を選択的に変更できるバルブである。
【0033】
上述したように、ラインL1の他端は6方弁80の開口aに接続されている。6方弁80の開口bにはラインL12の一端が接続され、開口eにはラインL12の他端が接続されている。
【0034】
このラインL12には、チャンバ5が接続されている。チャンバ5は、所定の容量を有してガスを貯留可能な空カラムである。本実施形態では、チャンバ5としてラインL12よりも管径が太い管を採用しているが、所定の容量を有しさえすればよいので、例えば、ラインL12自体を十分長くしてもチャンバ5として機能させることができる。チャンバ5の容量は、好ましくは、6方弁80の切替えの時間を稼ぐための必要体積として、ヨウ素気化カラム50及びヨウ化メチル生成カラム52の合計体積の1〜2倍程度である。なお、チャンバ5内に11CHを吸着する吸着剤を充填してもよい。この場合には、チャンバ5の容量は空カラムとする場合に比べて少なくて済むが、吸着後に吸着剤から11CHを脱離させるためにチャンバ5を加熱する温度制御器82を設ける必要がある。また、ラインL12におけるチャンバ5よりも開口e側の部分から放射される放射線強度を測定する放射線センサRI2が設けられている。
【0035】
また、6方弁80の開口cにラインL10の一端が接続され、開口fにはラインL10の他端が接続されている。ラインL10には、開口fから開口cに向かって順に、ヨウ化メチル生成器3、CO吸着カラム74、及び、ヨウ化メチル捕集器4が接続されている。
【0036】
ヨウ化メチル生成器3は、上流側(開口f側)に設けられたヨウ素気化カラム50と、ヨウ素気化カラム50よりも下流側(開口c側)に設けられたヨウ化メチル生成カラム52と、ヨウ素気化カラム50を加熱・冷却する温度制御器51と、ヨウ化メチル生成カラム52を加熱・冷却する温度制御器54と、を有している。
【0037】
ヨウ素気化カラム50には、固体のヨウ素が予め充填されており、温度制御器51によりヨウ素気化カラム50を70〜95℃程度に加熱する事により、ラインL10内にヨウ素ガスを供給する。
【0038】
ヨウ化メチル生成カラム52はガラス製等の反応管である。温度制御器54により例えば、650〜750℃程度にヨウ化メチル生成カラム52を加熱する事により、ヨウ化メチル生成カラム52内でヨウ素と11CHとを反応させ11CHIを生成する。
【0039】
ヨウ化メチル捕集器4は、ヨウ化メチル吸着カラム56と、ヨウ化メチル吸着カラム56を加熱・冷却する温度制御器58と、を有する。
【0040】
ヨウ化メチル吸着カラム56は、11CHI及び未反応の11CHの混合物から11CHIを選択的に吸着する吸着剤が充填されるカラムである。吸着剤は特に限定されないが、例えば、50−80メッシュのPorapack N等を採用できる。そして、例えば、温度制御器62によりヨウ化メチル吸着カラム56を常温にしておいて混合ガスから11CHIを選択的に吸着剤に吸着させ、その後、温度制御器58によりヨウ化メチル吸着カラム56を例えば、180〜200℃まで加熱する事により、吸着剤から11CHIを脱離させることができる。
【0041】
また、ヨウ化メチル吸着カラム56には、吸着した物質から発する放射線強度を検知する放射線センサRI4が設けられている。
【0042】
6方弁80の開口dにはラインL14が接続されている。ラインL14には、開口d側から順に、3方弁V11、3方弁V12、バルブV14が接続されている。3方弁V11の他端と3方弁V12の他端とには、バイパスラインL16の両端がそれぞれ接続されている。バイパスラインL16にはトリフレート生成器8が接続されている。
【0043】
トリフレート生成器8は、AgOTf(Silver trifluoromethanesulfonate)が充填されたトリフレート生成カラム60と、このトリフレート生成カラム60を加熱及び冷却可能な温度制御器62と、を有している。上流から11CHIが供給された場合に、温度制御器62によりトリフレート生成カラム60を例えば、200−230℃程度に加熱すると、11CHIをメチルトリフレート(11CHOTf)に転化することができる。
【0044】
したがって、11CHIを最終生成物としたい場合にはバイパスラインL16にガスを流さないようにし、一方、11CHIでなく11CHOTfを最終生成物としたい場合には、バイパスラインL16により、ラインL14を流れるガスがトリフレート生成器8に流れるようにすればよい。
【0045】
ラインL14におけるバルブV12とバルブV14との間からは、排ガスラインL18が分岐している。排ガスラインL18は、バルブV13を有している。
【0046】
ここでまとめると、6方弁80は、不活性ガス流路1、ヨウ化メチル生成器3、ヨウ化メチル捕集器4、及び、チャンバ5をこの順に直列に接続する第1流路を形成する第1状態と、不活性ガス流路1、チャンバ5、ヨウ化メチル生成器3、ヨウ化メチル捕集器4をこの順に直列に接続する第2流路を形成する第2状態とを選択的に切替える流路切替器となっている。
【0047】
次に、このように構成されたヨウ化メチル製造装置100を用いて、11CHI又は11CHOTfを合成する方法について図2〜9を参照しながら説明する。なお、バルブにおける黒く塗りつぶした部分は閉状態を、バルブにおける白抜きの部分は開状態を意味するものとする。
【0048】
このヨウ化メチル製造方法は概略、11COから11CHを生成する11CH生成工程と、生成した11CHを吸着により精製する11CH精製工程と、精製された11CHをヨウ化メチル生成器に供給して11CHIを生成し、生成した11CHIをヨウ化メチル吸着器に吸着させ、未反応の11CHをチャンバ5に収容する第1反応工程と、チャンバ5内の未反応の11CHを再びヨウ化メチル生成器に供給して11CHIを生成し、生成した11CHIをヨウ化メチル吸着器に吸着させる第2反応工程と、ヨウ化メチル吸着器から11CHIを脱離させて必要に応じて11CHIを11CHOTfに転化した上で系外に排出する排出工程とを行う。
【0049】
まず、予め全バルブとも閉とし、また、6方弁80を第1状態とする。また、予め、ヨウ素気化カラム50内には固体ヨウ素を、トリフレート生成カラム60には、AgOTfを充填する。また、各カラム内の吸着剤は、エージングされて清浄となっているものとし、また、吸着剤の温度を常温にする。
【0050】
まず始めに、図2に示すように、バルブV3、V4,V5を開放すると共に、バルブV6を操作してラインL2の上流側(ヘリウム供給源S1側)とラインL5とを連通させ、11CO供給源S3からの11COをメタン生成器6に供給し、メタン生成カラム40内の還元触媒に11COを吸着させる。なお、吸着されなかった11COは、CO吸着カラム70にて捕集され、系外には排出されない。
【0051】
そして、放射線センサRI1により、メタン生成カラム40内での11CO吸着量が予め定められた値に達したことを確認した後に、原料ガスの供給を止め、バルブV3を閉じる。
【0052】
次いで、図3に示すように、バルブV2を開放すると共に、フローメータ14を調節し、水素供給源S2から予め定められた量の水素ガスをメタン生成カラム40に供給する。そうすると、メタン生成カラム40内が水素により充填される。
【0053】
これと平行して、バルブV8を開け、3方弁V10によりラインL7とラインL1の内の6方弁80側の部分とを連通させる。また、6方弁は予め第1状態、すなわち、開口aと開口fとが連通し、開口bと開口cとが連通し、開口dと開口eとが連通する状態となっている。さらに、3方弁V11及びV12を操作してラインL14同士をそれぞれ連通させ、バルブV13を開ける。そして、マスフローコントローラ10を操作して、ヘリウム供給源S1からの所定量のヘリウムを、ラインL1、ラインL7、ラインL1、ラインL10、ラインL12、ラインL14、ラインL18の順に供給し、系内を不活性ガス雰囲気の状態にしておく。ここで、温度制御器51,54,58,62はそれぞれ各カラムを一定温度に維持する。
【0054】
その後、図4に示すように、バルブV2,V4,V5を閉め、さらに、温度制御器42によりメタン生成カラム40を加熱し、11COと水素とを反応させ、11CHを生成させる。
【0055】
続いて、図5に示すように、バルブV1,V4,V5を開け、3方弁V6によりラインL2同士を連通させ、3方弁V9によりラインL1におけるメタン吸着カラム44側の部分とラインL8とを連通させる。さらに、フローメータ12から予め定められた量のヘリウムをラインL2、ラインL1、ラインL8の順に供給する。
【0056】
これにより、ヘリウムガスをキャリアガスとしてメタン生成カラム40内で生成した11CH、未反応の水素、及び、未反応の11COが下流側へ流れる。そして、未反応の11COは、CO吸着カラム72により吸着され、11CHはメタン吸着カラム44に吸着され、未反応の水素はラインL8より系外に排出される。
【0057】
続いて、図6に示すように、バルブV1、V4、V5、V6、V8を閉めると共に、バルブV7、を開け、さらに、3方弁V9及びV10を操作してラインL1同士を連通させ、マスフローコントローラ10から予め定められた量のヘリウムガスを、ラインL1、ラインL10、ラインL12、ラインL14、ラインL18の順に流下させる。
【0058】
しばらくした後、メタン供給器2の温度制御器46によりメタン吸着カラム44を加熱し、11CHを吸着剤から脱離させ不活性ガス流路1内に11CHを供給する。
【0059】
そうすると、この11CHは、ヘリウムガスをキャリアガスとして流下し、6方弁80を介してラインL10に流入する。11CHがラインL10に流れたことは放射線センサRI3により確認できる。
【0060】
続いて、ヨウ化メチル生成器3の温度制御器51によりヨウ素気化カラム50を加熱することによりヨウ素気化カラム50内のヨウ素を気化させ、ヨウ素と11CHとを混合させる。さらに、温度制御器54によりヨウ化メチル生成カラム52を加熱すると、この混合ガス中のヨウ素と11CHとが反応し、11CHIが生成する。
【0061】
生成した11CHI及び未反応の11CHはヘリウムをキャリアガスとしてラインL10を流下し、11CHIはヨウ化メチル捕集器4のヨウ化メチル吸着カラム56に吸着される一方、未反応の11CHはさらに流下してチャンバ5内に到達する。なお、反応により生成した一部の酸性成分は、CO吸着カラム74にて吸着される。
【0062】
そして、放射線センサRI2をモニタし、チャンバ5から未反応の11CHが排出され始めるまでこの工程を続ける。なお、ヨウ化メチル吸着カラム56内の11CHIの吸着量は放射線センサRI4によって確認できる。
【0063】
続いて、チャンバ5から未反応の11CHが排出され始めたら、図7に示すように、バルブV7、V9を閉じ、3方弁V10によりラインL7とラインL1の開口a側の部分とを連通させ、ヘリウムガスをラインL7を介して6方弁に供給すると共に、6方弁80を第2状態、すなわち、開口aと開口bとを接続し、開口cと開口dとを接続し、開口eと開口fとを接続する状態に切替える。そうすると、不活性ガス流路1からのヘリウムガスがラインL12に供給され、チャンバ5内のガス、すなわち、未反応の11CHが押し出され、押し出された11CHは、ラインL10を介して再びヨウ化メチル生成器3内に入ってヨウ化メチル生成カラム52内で反応し、生成した11CHIはヨウ化メチル吸着カラム56に吸着される一方、ごく一部の未反応の11CHはキャリアガスとなるヘリウムガスと共にラインL14及びラインL18を介して系外に排出される。
【0064】
その後、図8に示すように、バルブV13を閉じ、バルブV14を開け、また、3方弁V11,V12を操作して、ラインL14を流れるガスがラインL16を流れるようにし、さらに、温度制御器62によりトリフレート生成器8のトリフレート生成カラム60を加熱する。その後、温度制御器58によりヨウ化メチル捕集器4のヨウ化メチル吸着カラム56を加熱して、吸着剤から11CHIを脱離させ、ヘリウムガスをキャリアガスとして11CHIをラインL14及びラインL16に押し流す。そうすると、トリフレート生成カラム60内においてラインL14及びラインL16を流れてきた11CHIとAgOTfとが反応し、11CHOTfが生成する。生成した11CHOTfは、ラインL16及びラインL14を介して外部に取り出される。なお、11CHOTfでなく、11CHIを取り出したい場合には、ラインL16にガスをバイパスせずにラインL14を流せばよい。そして、放射線センサRI4に基づいて、ヨウ化メチル捕集器4から十分に11CHIが排出されたことを確認した後に、ヘリウムの供給を止め、製造工程を終了する。
【0065】
このように、本実施形態によれば、まず、流路切替器としての6方弁80を第1状態に設定し、ヘリウムをキャリアガスとして、メタン供給器2から供給された11CHを、不活性ガス流路1、ヨウ化メチル生成器3、ヨウ化メチル捕集器4、及び、チャンバ5に対してこの順に直列に流れるようにすると、輸送された11CHがヨウ化メチル生成器3で11CHIとなり、この11CHIがヨウ化メチル捕集器4に吸着され、さらに、未反応の11CHはヨウ化メチル捕集器4を通過してチャンバ5に収容される。
【0066】
続いて、6方弁80を第2状態に切替え、ヘリウムが、チャンバ5、ヨウ化メチル生成器3、及びヨウ化メチル捕集器4をこの順に流れるようにすると、チャンバ5内のガス、すなわち、未反応の11CHが、ヘリウムガスをキャリアガスとして押し出され、再びヨウ化メチル生成器3に供給され、ヨウ化メチル生成器3においてさらに11CHIが生成し、生成した11CHIはヨウ化メチル捕集器4に吸着される。
【0067】
したがって、ヨウ化メチル生成器3から排出される未反応の11CHをチャンバ5から再びヨウ化メチル生成器3に戻して再利用させることができ、効率のよい11CHIの製造が可能となると共に、ヘリウム供給源S1からのヘリウムガスを未反応の11CHを流すためのキャリアガスとして利用するので、ポンプ手段を使用しなくても11CHIの製造が可能となっている。
【0068】
そして、ポンプ手段を使用しないので、ヨウ素等の析出等による可動部の故障が発生しにくく、長時間の連続使用が可能となる。
【0069】
また、従来のように循環路内においてポンプにより11CHを何回も循環させると、ヨウ素の利用率はある程度高くできるものの、固体ヨウ素が過剰に気化し消耗してしまうという問題があったが、本実施形態では、流路の切替えにより、11CHをプラグフロー的に移動させることができ、無駄なヨウ素気化量も低減される。したがって、ヨウ素気化カラムへ予め充填する固体ヨウ素の量が同じでも、従来に比して大量に11CHIを製造できるようになる。例えば、従来に比してヨウ素の消費量を1/3〜1/2まで減少させることも可能であり、一回のヨウ素の充填により得られる連続合成回数を、例えば、2〜3倍にすることも可能となる。
【0070】
また、メタン供給器2は、11CHを吸着する吸着剤が充填されるメタン吸着カラム44とメタン吸着カラム44を加熱して吸着剤から11CHを脱離させる加熱器46とを有している。したがって、11CHに対する選択性の高い吸着剤を用いることにより、その場で11CHを生成した場合等に、水素等を除去した高純度な11CHを不活性ガス流路内に供給することができる。
【0071】
また、11COとHとを反応させて11CHを生成させるメタン生成器6をさらに備え、メタン生成器6はメタン吸着カラム44に接続され、メタン生成器6に不活性ガス供給源から不活性ガスが供給されるので、半減期の短い11COから11CHをその場で生成し、生成した11CHを不活性ガスにより移送してメタン吸着カラムの吸着剤に吸着させることができる。
【0072】
さらに、流路切替器としては、いわゆる6方弁80を有しているので、低コスト化及び操作の簡単化が図られている。
【0073】
また、上記実施形態においては、図7,図8において、バイパスラインL7を介して6方弁80にヘリウムガスを供給している。6方弁80を第2状態とし、チャンバ5内の未反応11CHをヨウ化メチル生成器3に戻す場合には、メタン供給器2を使用する必要がなく、この場合に、バイパスラインL7を用いることにより、ヘリウムガスの清浄性が向上して好ましい。
【0074】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0075】
例えば、上記実施形態にあっては、メタン供給器2として吸着剤を有するメタン吸着カラム44及び温度制御器46を採用しているが、例えば、ターゲット容器内で製造・精製された11CHが供給できる場合には、メタン吸着カラム44及び温度制御器46に代えて、不活性ガス流路1とターゲット容器との間に接続されるバルブや配管等がメタン供給器として機能する。
【0076】
また、上記実施形態では、メタン吸着カラム44及び温度制御器46がメタン生成器として機能しているが、メタン吸着カラム44及び温度制御器46が無い態様も可能であり、この場合には、メタン生成器6がメタン供給器として機能し、ラインL1,ラインL7、及びラインL2が不活性ガス流路として機能する。
【0077】
また、上記実施形態では、メタン吸着カラム44の前段に11COとHとから11CHを生成するメタン生成器6を配置しているが、これ以外の反応により11CHを生成する反応器を配置しても良い。
【0078】
また、上記実施形態にあっては、6方弁80を採用し、第1状態と第2状態とを切り替えているが、たとえば、3方弁を6個採用して同様の流路切替手段を構成する等、他の手段により第1状態と第2状態とを切替えても良い。
【0079】
また、上記実施形態においては、メタン供給器2から11CHを供給した後、図7,図8において、バイパスラインL7を介して6方弁80にヘリウムガスを供給しているが、例えば、図9に示すように、バイパスラインL7を介さずに、メタン供給器2を介してヘリウムを6方弁80に供給しても良い。
【0080】
また、本発明では、不活性ガスとしてヘリウムを採用しているが、これ以外でも、窒素、アルゴン等の不活性ガスを採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、本実施形態に係るヨウ化メチル製造装置の概略構成図である。
【図2】図2は、図1のヨウ化メチル製造装置の動作を示すフロー図である。
【図3】図3は、図1のヨウ化メチル製造装置の動作を示す図2に続くフロー図である。
【図4】図4は、図1のヨウ化メチル製造装置の動作を示す図3に続くフロー図である。
【図5】図5は、図1のヨウ化メチル製造装置の動作を示す図4に続くフロー図である。
【図6】図6は、図1のヨウ化メチル製造装置の動作を示す図5に続くフロー図である。
【図7】図7は、図1のヨウ化メチル製造装置の動作を示す図6に続くフロー図である。
【図8】図8は、図1のヨウ化メチル製造装置の動作を示す図7に続くフロー図である。
【図9】図1のヨウ化メチル製造装置の他の動作を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0082】
2…メタン供給器、3…ヨウ化メチル生成器、4…ヨウ化メチル捕集器、5…チャンバ、6…メタン生成器、44…メタン吸着カラム、46…温度制御器(加熱器)、80…6方弁(流路切替器)、100…ヨウ化メチル製造装置、L1…不活性ガス流路、L7…バイパスライン、S1…不活性ガス源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性ガス源から不活性ガスが供給される不活性ガス流路と、
前記不活性ガス流路内に11CHを供給可能なメタン供給器と、
11CHとヨウ素とを反応させて11CHIを生成するヨウ化メチル生成器と、
11CHIを捕集するヨウ化メチル捕集器と、
ガスを収容可能なチャンバと、
前記不活性ガス流路、前記ヨウ化メチル生成器、前記ヨウ化メチル捕集器、及び、前記チャンバをこの順に直列に接続する第1状態と、前記不活性ガス流路、前記チャンバ、前記ヨウ化メチル生成器、前記ヨウ化メチル捕集器をこの順に直列に接続する第2状態と、を選択的に切替える流路切替器と、
を備えるヨウ化メチル製造装置。
【請求項2】
前記メタン供給器は、11CHを吸着する吸着剤が充填されるメタン吸着カラムと前記メタン吸着カラムを加熱して前記吸着剤から11CHを脱離させる加熱器とを有する請求項1に記載のヨウ化メチル製造装置。
【請求項3】
11COとHとを反応させて11CHを生成させるメタン生成器をさらに備え、前記メタン生成器は前記メタン吸着カラムに接続され、前記メタン生成器に不活性ガス供給源から不活性ガスが供給される請求項2に記載のヨウ化メチル製造装置。
【請求項4】
前記不活性ガス流路は、前記メタン供給器をバイパスするバイパスラインをさらに有する請求項1〜3のいずれかに記載のヨウ化メチル製造装置。
【請求項5】
前記流路切替器は、6方弁を有する請求項1〜4のいずれかに記載のヨウ化メチル製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−77045(P2007−77045A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264220(P2005−264220)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】