説明

ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含有する造影剤

【課題】従来のヨウ素−シクロデキストリン包接化合物に比して、ヨウ素の包接能に優れたヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含有する、X線吸収能が高く、化学的に安定な造影剤を提供する。
【解決手段】本発明の造影剤は、シクロデキストリン1当量に対して、ヨウ素原子を3当量以上包接させたヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含有する造影剤であって、前記シクロデキストリンを構成するグルコースのヒドロキシル基が炭素数1〜6のアルキル基によって置換されており、グルコース1個当たりの平均置換度Xが1<X<3であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含有する造影剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ヨウ素には殺菌、消毒等の効果があることが知られている。しかしながら、ヨウ素は水に溶解しにくいため、上記用途に用いる際の使用方法は制限されていた。かかるヨウ素の欠点を補うべく、ヨウ素の溶解性を向上させる試みが種々、なされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ヨウ素をヨウ素−シクロデキストリン包接化合物の形態で含有させたヨードホールと称されるものが開示されている。これによれば、ヨウ素原子をシクロデキストリンに包接することで、水への溶解性が向上するだけでなく、かかる包接化合物からヨウ素イオンが徐々に遊離されるため、ヨウ素の殺菌効果や消毒作用が長時間にわたって発現しうる。
【0004】
また、ヨウ素は高いX線吸収性を有することから、造影剤にも適用されている。現在、広く使用されているヨウ素を含む造影剤としては、イオヘキソール(商品名:オムニパーク)、イオパミドール(商品名:イオパミロン)、イオメプロール(商品名:イオメロン)等の副作用の頻度が低い非イオン性造影剤がある。
【特許文献1】特開2006−206480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、かかる現行の造影剤は、合成のために数多くの工程を経なければならず、非常に多くの時間と労力を必要とする。特許文献1に開示されているヨウ素―シクロデキストリン包接化合物は容易に形成可能であることから、造影剤として使用できれば好ましいとも考えられる。しかし、かかるヨウ素―シクロデキストリン包接化合物は、上述のとおり、包接物からヨウ素イオンが遊離するため、安全性等を考慮すると造影剤としての利用には適さないといえる。
【0006】
本発明は、従来のヨウ素−シクロデキストリン包接化合物に比して、ヨウ素の包接能に優れたヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含有する、X線吸収能が高く、化学的に安定な造影剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の造影剤は、シクロデキストリン1当量に対して、ヨウ素原子を3当量以上包接させたヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含有する造影剤であって、前記シクロデキストリンを構成するグルコースのヒドロキシル基が炭素数1〜6のアルキル基によって置換されており、グルコース1個当たりの平均置換度Xが1<X<3であることを特徴とする。
【0008】
本発明の造影剤では、ヨウ素原子の包接量は3又は5当量であることが好ましい。
【0009】
本発明の造影剤では、シクロデキストリンはβ−シクロデキストリンであることが好ましい。
【0010】
本発明の造影剤では、アルキル基はメチル基であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、ヨウ素をシクロデキストリンに包接させたので、水に対する溶解性が向上するとともに、化学的に安定な形態となる。
また、造影剤の造影能向上にはヨウ素の含有量を高めることが重要であるが、本発明では、ヨウ素原子をシクロデキストリン1当量に対して3当量以上包接させたので、少ない使用量であっても高いX線吸収量を示し、診断効果の向上が図れると推測される。造影剤の使用量の低減は、患者への負担を軽減し、また副作用の発生の軽減にもつながると推測される。
さらに、本発明の造影剤が含有するヨウ素−シクロデキストリン包接化合物は、シクロデキストリンを構成するグルコースのヒドロキシル基がアルキル基に置換されているので、シクロデキストリンの分子内水素結合が妨げられる。これにより分子間の親水性が強くなり、水に対する溶解度が高まる。また、アルキル基は、水素原子に比べて包接の際の立体効果と疎水効果とに優れているので、ヨウ素に対する包接能が高められ、当該ヨウ素がシクロデキストリンから遊離しないと推測される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の造影剤の各構成について具体的に説明する。
【0013】
本発明の造影剤は、シクロデキストリン1当量に対して、ヨウ素原子を3当量以上包接させたヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含有する造影剤であって、前記シクロデキストリンを構成するグルコースのヒドロキシル基が炭素数1〜6のアルキル基によって置換されており、グルコース1個当たりの平均置換度Xが1<X<3である。
【0014】
本発明の造影剤に用いられるシクロデキストリンとしては、6〜8個のグルコースが環状に結合してなる、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンが挙げられる。なかでも、β―シクロデキストリンが、シクロデキストリン1当量に対して、3当量又は5当量のヨウ素原子の包接に適する大きさであるばかりでなく、入手が容易という点において好ましい。
【0015】
本発明の造影剤に用いられるシクロデキストリンを構成するグルコースのヒドロキシル基が置換されているアルキル基は、炭素数1〜6のものである。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基、ネオペンチル基等が挙げられるが、この中でもメチル基が(1)合成収率がよい、(2)水溶性が高い、という点において好ましい。
【0016】
本発明の造影剤に用いられるシクロデキストリンは、シクロデキストリンを構成するグルコース1個当たりの平均置換度Xが1<X<3である。好ましくは、1.5<X<2.5であり、最も好ましくはX=2である。ここで、平均置換度とは、シクロデキストリンを構成するグルコース1個当たりの、アルキル基で置換されたヒドロキシル基の平均個数をいう。シクロデキストリンを構成するグルコースのヒドロキシル基がアルキル基に置換されると、シクロデキストリンの分子内水素結合が妨げられ、これにより分子間の親水性が強くなり、水に対する溶解度が高まる。また、アルキル基は、水素原子に比べて包接の際の立体効果と疎水効果とに優れているので、ヨウ素に対する包接能が高められ、当該ヨウ素がシクロデキストリンから遊離しないと推測される。
【0017】
シクロデキストリンを構成するα−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。本発明の造影剤に用いられるシクロデキストリンを構成するグルコースは、2位、3位及び6位のいずれがアルキル基に置換されてもよい。また、本発明の造影剤に用いられるシクロデキストリンは、2位、3位及び6位の全てが置換されているグルコースを含んでもよいし、いずれも置換されていないグルコースを含んでもよいが、2位及び6位が置換されているグルコースを含むことが好ましい。
【0018】
本発明の造影剤に用いられるヨウ素原子は、シクロデキストリン1当量に対して、3当量以上包接されている。造影剤の造影能を向上させるためには、造影剤中に含まれるヨウ素の含有量を高めることが必要である。2当量以下では、X線吸収量が低く、実用に耐えうる造影能が得られない。上限は、本発明の造影剤に用いられるシクロデキストリンがヨウ素を遊離させずに包接できる数であれば、特に限定されない。好ましくは、造影剤としての機能を果たす実用的なレベルのX線吸収造影量が得られる、3当量又は5当量である。
【0019】
本発明の造影剤に用いられるヨウ素−シクロデキストリン包接化合物の調製方法は、特に制限されず、従来公知の方法又はこれらの組み合わせを適宜採用できる。例えば、Johnらの方法(John C. Papaioannou, Vasileios G. Charalampopoulos, Pantelis Xynogalas, Kyriakos Viras, J. Physics and Chemistry of Solids 67 1379−1386(2006))、すなわち、ヨウ素とヨウ素溶解助剤(例えば、ヨウ素カリウム)を水に溶解し、得られたヨウ素溶液にシクロデキストリンを加え、80〜90℃で加熱する方法が挙げられる。
【0020】
なお、ヨウ素溶解助剤とは、ヨウ素の溶液への溶解を補助する化合物をいい、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム等のハロゲン化物が挙げられる。この中でも、ヨウ化カリウムがヨウ素の溶解補助性が高いという点において好ましい。上記ヨウ素溶解助剤は、単独で使用されても、あるいは2種類以上の混合物の形態で使用されてもよく、好ましくは単独で使用される。
【0021】
ここで、ヨウ化カリウムの量は、ヨウ素を水に溶解させるのに十分な量であればよい。過剰に存在してもヨウ素の溶解性に変化が少ないと考えられるため、溶解性を考慮して、適宜調整するとよい。ヨウ素(I)1当量に対して1当量以上が、包接が安定するという点において好ましい。
【0022】
本発明の造影剤中のヨウ素−シクロデキストリン包接化合物の含有量は、特に制限されず、所望の造影能を考慮して、適宜調節される。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0024】
本発明の実施例に使用した試薬を以下に示す。
(試薬)
ヨウ素(以下、Iとする):関東化学(株)社製
ヨウ素カリウム(以下、KIとする):関東化学(株)社製
2,6−di−O−methyl−β−cyclodextrin(以下、DMβCyDとする):ナカライテスク(株)製
非イオン性水溶性モノマー型造影剤
イオヘキソール(商品名:オムニパーク):第一三共製薬(株)社製
イオパミドール(商品名:イオパミロン):日本シェーリング(株)社製
イオメプロール(商品名:イオメロン):ブラッコ・エーザイ(株)社製
イオプロミド(商品名:プロスコープ):田辺三菱製薬(株)社製
非イオン性水溶性ダイマー型造影剤
イオキサグル酸(商品名:ヘキサブリックス):ゲルベ・ジャパン(株)社製
【0025】
[化学量論比]
化学量論比は、連続変化法によって測定した。連続変化法とは、ゲスト(本発明では、ヨウ素)、ホスト(本発明では、シクロデキストリン)の総濃度を一定に保ち、その混合比を連続的に変化させて物性変化を測定する方法である。包接化合物の濃度が最大になる際に物性変化が最大になり、プロットに勾配の変化や屈曲点が現れるので、この際のモル分率から化学量論比が決定できる。
【0026】
(実施例1)
DMβCyD水溶液と、ヨウ素溶液(ヨウ素:ヨウ化カリウム=1:4)の総濃度を0.030mol・dm−3と一定に保ち、混合量が同量になるようにそれぞれの濃度を変化させて試料溶液を調製した。混合は、密閉容器中で80〜90℃に1時間加熱して行った。
【0027】
(比較例1)
試料溶液は、混合を室温で行う点以外は、実施例1と同様にして調製した。
【0028】
混合後の試料溶液についてCDスペクトルを測定した。測定条件は、以下のとおりである。
(CDスペクトル測定条件)
装置:Spectropolarimeter JASCO:日本分光株式会社製
測定波長:200〜500nm
データ間隔:0.5nm
走査速度:100nm/min
積算:10回
レスポンス:4sec
バンド幅:1.0nm
セル長:2mm
感度:5mdeg
【0029】
ヨウ素の吸収波長である290nmにおける各試料溶液のヨウ素モル分率に対するCD強度の大きさをプロットしたものを図1に示す。室温で混合した試料溶液では、CD強度が最大値となるのはヨウ素のモル分率が0.5〜0.6のときであった。このことからDMβCyDとヨウ素とは約1:1の化学量論比で包接していることが示唆される。試料溶液を80〜90℃の条件下で1時間加熱したものでは、ヨウ素モル分率0.67付近に最大値を与え、化学量論比について1:2での包接が考えられた。このことから、加熱することでヨウ素がシクロデキストリンにより多く取り込まれることが示唆された。
【0030】
[平衡定数]
DMβCyDの濃度を一定に保ち、ヨウ素溶液(KI:I=4:1)の濃度を変えて混合する。CDスペクトルの強度を測定することで、Benesi−Hildebrand式を適用し、平衡定数を算出する。
【0031】
(実施例2)
DMβCyD水溶液は5mM、ヨウ素水溶液は18、22、25、28、30mMの5種の濃度に調整した。DMβCyD水溶液とヨウ素溶液とを2mlずつ混合した後、約80℃で1時間加熱することで試料溶液を得た。これをCDスペクトル測定に際して、40倍に希釈した。
【0032】
試料溶液についてCDスペクトルを測定した。測定条件は、以下のとおりである。
(CDスペクトル測定条件)
装置:Spectropolarimeter JASCO:日本分光株式会社製
測定波長:250〜350nm
データ間隔:0.5nm
走査速度:100nm/min
積算:10回
レスポンス:4sec
バンド幅:1.0nm
セル長:2mm
感度:2mdeg
【0033】
上記条件にてCDスペクトルを測定し、ヨウ素の吸収波長である290nmに現れるピークの大きさをデータとした。平衡定数は、ヨウ素溶液濃度の逆数に対して[DMβCyD]・L/Aをプロットして求める。その結果を図2に示す。プロットは、図2に示すようにほぼ一直線上に乗り、その傾き、切片から平衡定数Kの値を算出したところ、K=10518と非常に高い値を示した。このことより、本発明のヨウ素−シクロデキストリン包接化合物は、化学的に安定な形態であり、ヨウ素がシクロデキストリンから放出されないと推測される。
【0034】
[DMβCyDとヨウ素との包接化合物の結晶の作成]
シクロデキストリンに包接されるヨウ素種は、混合の際の加熱温度によって異なることが知られている。例えば、70℃以上ではI3−、80℃以上ではI5−、I7−が包接される。このこと及び上記の[平衡定数]の結果より、DMβCyDとヨウ素種の包接時の化学量論は加熱の有無で変化すると考えられる。そこで、加熱温度条件を80〜90℃にして、原料の混合比率を変えて結晶を作成した。そして、得られた結晶の組成を後述する元素分析にて確認した。さらに、従来のヨウ素含有造影剤とのX線造影能の比較を行った。試料の調製方法を以下に示す。
【0035】
(調製例1)KI:I:DMβCyD=1:1:1
100mlナスフラスコにKI 0.0843g(0.5078mmol)と、I 0.1270g(0.5004mmol)とを入れ、超純水約10mlを加えて溶かし、ヨウ素溶液を調製した。その後、DMβCyD 0.6665g(0.5006mmol)を加え、80〜90℃で1時間加熱した。エバポレーション(60℃、75hPa)により水を除去し、減圧乾燥した。その結果、光沢のある黒茶色結晶が収量0.8379gで回収できた。
【0036】
(調製例2)KI:I:DMβCyD=2:2:1
100mlナスフラスコにKI 0.1669g(1.005mmol)と、I 0.2566g(1.011mmol)とを入れ、超純水約10mlを加えて溶かし、ヨウ素溶液を調製した。その後、DMβCyD 0.6658g(0.5001mmol)を加え、80〜90℃で1時間加熱した。エバポレーション(60℃、75hPa)により水を除去し、減圧乾燥した。その結果、光沢のある赤茶色結晶が収量0.9981gで回収できた。
【0037】
(調製例3)KI:I:DMβCyD=1:2:1
100mlナスフラスコにKI 0.0832g(0.5012mmol)と、I 0.2550g(1.005mmol)とを入れ、超純水約10mlを加えて溶かし、ヨウ素溶液を調製した。その後、DMβCyD 0.6669g(0.5009mmol)を加え、80〜90℃で1時間加熱した。エバポレーション(60℃、75hPa)により水を除去し、減圧乾燥した。その結果、光沢のある赤茶色結晶が収量0.8686gで回収できた。なお、調製例3では、Iが不安定であるためか、約70℃で昇華が見られた。
【0038】
[元素分析]
(実施例3)
元素分析により、調製例1で得られた結晶の組成を確認した。得られた結晶は吸湿性が高いため、減圧下で一晩乾燥し、測定の前日に試料である結晶を詰めた。測定は3回行い、平均値を求めた。その結果、KI・DMβCyDとしたときの組成比に近く、DMβCyDに対してKIが含まれていると推測される。
【0039】
(実施例4)
調製例2で得られた結晶の組成を確認した。調製例2の結晶を用いる点以外は、実施例3と同様の方法で測定した。その結果、KI・DMβCyDとしたときの組成比に近く、DMβCyDに対してKIが含まれていると推測される。
【0040】
(実施例5)
調製例3で得られた結晶の組成を確認した。調製例3の結晶を用いる点以外は、実施例3と同様の方法で測定した。その結果、KI・DMβCyDとしたときの組成比に近く、DMβCyDに対してKIが含まれていると推測される。Iに対してKIの量が少ないため、不安定なIが昇華したからであると推測される。
【0041】
[X線造影能の比較]
従来から使用されているヨウ素を含有する造影剤と本発明のヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含有する造影剤とのX線吸収能の比較を行った。
【0042】
(実施例6)
本発明のヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含有する造影剤(I種を包接するKI・DMβCyD)を0.002、0.004、0.008、0.016mol・
dm−3の4濃度の試料溶液に調製し、それぞれCT値を測定した。CT値は、X線Computerized Tomography TCT−300(東芝メディカルシステムズ株式会社製)にて測定した。
【0043】
(実施例7)
造影剤に本発明のヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含有する造影剤(I種を包接するKI・DMβCyD)を用いる点以外は、実施例6と同様の方法にて測定した。
【0044】
(比較例2)
造影剤に従来から使用されている造影剤イオヘキソール(商品名:オムニパーク)を用いる点以外は、実施例6と同様の方法にて測定した。
【0045】
(比較例3)
造影剤に従来から使用されている造影剤イオパミドール(商品名:イオパミロン)を用いる点以外は、実施例6と同様の方法にて測定した。
【0046】
(比較例4)
造影剤に従来から使用されている造影剤イオメプロール(商品名:イオメロン)を用いる点以外は、実施例6と同様の方法にて測定した。
【0047】
(比較例5)
造影剤に従来から使用されている造影剤イオプロミド(商品名:プロスコープ)を用いる点以外は、実施例6と同様の方法にて測定した。
【0048】
(比較例6)
造影剤に従来から使用されている造影剤イオキサグル酸(商品名:ヘキサブリック)を用いる点以外は、実施例6と同様の方法にて測定した。
【0049】
各試料溶液(実施例6、7及び比較例2〜6)の濃度とX線吸収係数の関係を図3に示す。その結果、1分子中にヨウ素6個を含む造影剤イオキサグル酸が大きなCT値を示した。本発明のKI・DMβCyD(実施例6)のCT値は、イオヘキソール等のヨウ素を3個含む造影剤には届かなかったが、ほぼ同等の造影効果を示した。本発明のKI・DMβCyD(実施例7)はヘキサブリックスとオムニパークの中間の造影効果を示した。含まれているヨウ素量を考慮すると妥当な値と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例1及び比較例1のCD強度を示す図である。
【図2】実施例2の平衡定数を示す図である。
【図3】実施例6、7及び比較例2〜6のX線吸収を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロデキストリン1当量に対して、ヨウ素原子を3当量以上包接させたヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含有する造影剤であって、前記シクロデキストリンを構成するグルコースのヒドロキシル基が炭素数1〜6のアルキル基によって置換されており、グルコース1個当たりの平均置換度Xが1<X<3である造影剤。
【請求項2】
前記ヨウ素原子の包接量が、3又は5当量である請求項1記載の造影剤。
【請求項3】
前記シクロデキストリンが、β−シクロデキストリンである請求項1又は2記載の造影剤。
【請求項4】
前記アルキル基が、メチル基である請求項1〜3いずれか記載の造影剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−209097(P2009−209097A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54159(P2008−54159)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】