説明

ライトガイド及びこれを使用した光照射装置

【課題】気密容器に用いる多数の光ファイバ素線を束ねた大きな外径寸法を有する光ファイババンドルを用いたライトガイドにおいて、光ファイババンドルを貫通保持するライトガイド固定部材に高い気密性を備えたライトガイド及びこれを使用した光照射装置を提供する。
【解決手段】光ファイババンドル12を分岐バンドル12a〜12mに分割し、それぞれの分岐バンドル12a〜12mをライトガイド固定部材13における比較的小さい内径を有する貫通孔13a〜13mに挿通することで、光ファイバ素線間の空隙に均一に接着剤を充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密性を要する容器に設置される、光ファイバを用いたライトガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係わる背景技術として、真空装置などの気密性を要する装置において、外部に配置した光源より放射される光を、光ファイバを用いて装置内部に導入するライトガイドが知られている。
【0003】
このようなライトガイドにおいては、ライトガイドを真空装置に固定するためのライトガイド固定部材に貫通孔を設けて、この貫通孔を通して光ファイバを装置内に導入するが、この貫通孔を設けた領域には気密性を備える必要があり、このようなライトガイド固定部材に気密性を備えたライトガイドとしては、特許文献1に示すライトガイドがある。
【0004】
特許文献1に示したライトガイド31は、図5に示すように、被覆部材32で覆われた光ファイバ束33がライトガイド固定部材である円筒部材34の軸方向に設けられている貫通孔34aに嵌挿され、円筒部材34を密閉容器の密閉容器壁35に設けられたライトガイド連通孔35aに挿入し固定されている。
【0005】
円筒部材34には、貫通孔34aの中央部の内周面に凹所34bが形成されており、さらに、側面に凹所34bに連通して該凹所34bに適度な流動性および粘性を有する充填剤(例えばエポキシ系の樹脂)36を注入するための導入ロ34cが設けられている。
【0006】
この円筒部材34の貫通孔34aには、光ファイバ束33が貫通孔34a内の凹所34bに位置する部分の被覆部材32を剥離して嵌挿されている。
【0007】
そして、円筒部材34の導入ロ34cから充填剤36を注入して凹所34bに充填する。
【0008】
この充填剤36は上述のように適度な流動性および粘性を有しているので、貫通孔34a内の凹所34bにおいて光ファイバ束33の光フアイバ間の空隙に行渡ることになり、該光ファイバ束33および貫通孔34aの内壁で形成すると考えられる空間を塞ぐことかできる。
【0009】
このように、特許文献1に示したライトガイド31は、光ファイバ束33が嵌挿された貫通孔34a内の凹所34bに、凹所34bに連通した導入ロ34cより充填剤36を注入することにより、光フアイバ間の空隙を塞いでおり、密閉容器内外の気密性を確保している。
【0010】
特許文献2に示したライトガイド41は、図6に示すように、複数の光ファイバ素線を束ねたその長手方向に直交する断面が概略円形である光ファイババンドル42と、この光ファイババンドル42を挿通させた筒状の挿通部43aを有する気密保持部材43と、前記挿通部43aの内部における前記光ファイババンドル42が占めていない空隙部44に接着剤を充填して形成された気密シール部45とを具えたライトガイドである。
【0011】
このライトガイド41に用いられている光ファイババンドル42は、外径230μmの光ファイバ素線を180本束ねたものであり、その外径寸法は3.45mmである。
【0012】
【特許文献1】特開平4−86705号公報
【特許文献2】特開2005−62703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記した構造のライトガイドは、光ファイバ素線の本数が少なく光ファイババンドルの外径寸法が比較的小さい場合には、気密性の高い気密シール部を形成することができるが、多数の光ファイバ素線を束ねた大きな外径を有する光ファイババンドルの場合には、導入ロより貫通孔内へ注入された充填剤は、光ファイババンドルの軸方向の空隙を埋めるように移動するため、光ファイババンドルの中心付近や、導入口とは反対側の領域に対しては十分に充填されず、この結果これらの領域における光ファイバ素線間に気泡が残留し、気密シール部の気密性が低下するという問題があった。
【0014】
本発明は、上記した問題を鑑みてなされたものであり、気密容器に用いる多数の光ファイバ素線を束ねた大きな外径寸法を有する光ファイババンドルを用いたライトガイドにおいて、光ファイババンドルを貫通保持するライトガイド固定部材に高い気密性を備えたライトガイドを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明は、
(1)気密容器の内外へ連通して取り付けられる気密性を備えたライトガイドであって、複数の光ファイバ素線を束ねた光ファイババンドルと、前記光ファイババンドルを分割して挿通する複数の貫通孔を有するライトガイド固定部材と、光ファイババンドルが挿通された前記貫通孔の空所に接着剤を充填して形成される複数の気密シール部とを備えることを特徴とするライトガイド、
(2)気密容器の内外へ連通して取り付けられる気密性を備えたライトガイドであって、
複数の光ファイバ素線を束ねた光ファイババンドルと、前記光ファイババンドルを挿通する貫通孔を有するライトガイド固定部材と、前記貫通孔の内部に前記貫通孔と略同軸に収容される柱状の気密シャフトと、前記貫通孔と前記気密シャフトにより形成されるリング状の間隙部と、光ファイババンドルが挿通された前記間隙部の空所に接着剤を充填して形成される気密シール部とを備えることを特徴とするライトガイド、
(3)光を放射するランプと、該ランプより放射した光を集光する手段と、前記集光した光を気密容器内に導光するためのライトガイドを備えた光照射装置であって、前記ライトガイドが(1)または(2)に記載のライトガイドを使用したことを特徴とする光照射装置、
により構成される。
【0016】
以上の構成によれば、気密容器に用いる光ファイババンドルを用いたライトガイドにおいて、多数の光ファイバ素線を束ねた外径寸法を有する光ファイババンドルを採用した場合であっても、光ファイババンドルを貫通保持するライトガイド固定部材に高い気密性を備えたライトガイドを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明に係る気密性を備えたライトガイドの実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一の要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、本明細書において数値を挙げて説明したものと必ずしも一致していない。
【0018】
図1(a)は、本発明のライトガイドの、第1の実施態様における気密シール部の構造を示す断面図であり、ライトガイド11を気密容器9に取り付けた状態を示している。
【0019】
図1(b)は、図1(a)におけるライトガイド固定部材13のX−X線箇所の断面図である。
【0020】
図1(a)において、ライトガイド11は、複数の光ファイバ素線10からなる光ファイババンドル12、ライトガイド固定部材13および気密シール部14a〜14m(図1(a)では気密シール部14e〜14iのみ表示)により構成されている。
【0021】
ライトガイド固定部材13は、ステンレス製であって、外周部にフランジ部131を有する外径65mm、厚さ20mm円盤状の形状であり、図1(b)に示すように、光ファイババンドル12を挿通するための複数の貫通孔13a〜13mを設けている。なお、各貫通孔13a〜13mの内径は、3.7mmである。
【0022】
一方、光ファイババンドル12は、高純度石英からなる外径190μmのコアと、フッ素ドープを施した石英からなる外径200μmのクラッド層と、紫外線硬化樹脂からなる外径230μmの被覆層とにより構成される光ファイバ素線10を2340本集束したものであり、上記した貫通孔13a〜13mに挿通するため、所定の位置で分岐バンドル12a〜12m(図1(a)では分岐バンドル12e〜12iのみ表示)に13分割されている。
【0023】
ここで、集束された光ファイババンドル12の外径寸法は約13.5mmであり、13分割されたそれぞれの分岐バンドル12a〜12mの外径寸法は、概ね3.45mmである。
【0024】
また、気密シール部14a〜14mは、ライトガイド固定部材13の各貫通孔13a〜13mへ分岐バンドル12a〜12mを挿通した領域に、エポキシ系真空用接着剤(本例:アネルバ:(株)スーパーバックシール)を充填することにより形成されている。
【0025】
以下に、分岐バンドル12a〜12mを貫通孔13a〜13mへ挿通し、気密シール部を形成する手順を、図2を用いて説明する。
【0026】
分岐バンドル12iは、光ファイババンドル12を13分割した分岐バンドルの中の一本であり、図2に示すように、予め貫通孔13iへ挿通される領域Bに接着剤8が均一に塗布されている。
【0027】
接着剤8を塗布した分岐バンドル12iの端部121iを、貫通孔13iの一方の開口へ挿入した後、接着剤8の塗布された領域Bが貫通孔13iの所定の位置となるよう貫通孔13iの他方の開口よりY方向へ引き出す。
【0028】
分岐バンドル12iに塗布された接着剤8は、分岐バンドル12iとともに貫通孔13iへ引き込まれることにより貫通孔13iへ充填されるが、このとき接着剤8は、貫通孔13iの内周面より分岐バンドル12iの中心軸方向への力を受け、分岐バンドル12i全体に浸透し、内部の気泡が排除された状態となる。
【0029】
その他の分岐バンドルに対しても同様に接着剤8を均一に塗布し、上記の手順により対応する貫通孔に挿通することにより、貫通孔内部の光ファイバ素線間に接着剤が均一に充填される。
【0030】
ライトガイド固定部材13は、全ての貫通孔に分岐バンドルを挿通後、充填された接着剤が常温で硬化され、図1(a)に示す気密シール部14a〜14mが形成される。
【0031】
なお、光ファイババンドル12の図示しない両端の端部は、それぞれが集束され、接着剤により固化された後、切断研磨され、光入射端面および光出射端面を形成している。
【0032】
上述のライトガイド11の気密シール部14a〜14mに対して、図示しないヘリウムリーク測定器(東京スペクトロン(株)製スペクトロン3000E)によりヘリウムリーク量を測定したところ、ヘリウムリーク量は、このヘリウムリーク測定器の測定限界である1×10−11Pa・m/s以下であり、ライトガイド11の気密シール部14a〜14mは、高い気密性を有することを確認した。
【0033】
以上説明したように、本実施態様のライトガイド11における光ファイババンドル12の集束部の外径寸法は13.5mmであり、特許文献2に示すライトガイド41の光ファイババンドル42の外径寸法3.45mmに対して約4倍となるが、光ファイババンドル12を分岐バンドル12a〜12mに分割しその外径寸法を3.45mmとし、それぞれの分岐バンドル12a〜12mを貫通孔13a〜13mに挿通することで、光ファイバ素線間の空隙に均一に接着剤を充填することができるため、各分岐バンドル12a〜12m内部の気泡が排除され、高い気密性を有する気密シール部を備えたライトガイドを得ることが出来る。
【0034】
次に、本発明に係るライトガイドの第2の実施形態を説明する。
【0035】
図3(a)は、本発明のライトガイドの、第2の実施態様における気密シール部の構造を示す断面図である。
【0036】
ライトガイド21は、多数の光ファイバ素線10からなる光ファイババンドル22、ライトガイド固定部材23、気密シール部24、および気密シャフト26により構成されている。
なお、図3(b)は、図3(a)におけるライトガイド固定部材23と気密シャフト26のZ−Z線箇所の断面図である。
【0037】
ここで、光ファイババンドル22は、第1の実施態様におけるライトガイド11と同様の高純度石英からなる光ファイバ素線10を、1900本集束して構成されており、集束した部分の外径寸法は10mmである。
【0038】
一方、ライトガイド固定部材23は、ステンレス製であって、外周部にフランジ部231と、光ファイババンドル22を挿通する内径20mmの貫通孔23aとを有している。
【0039】
また、気密シャフト26は、ステンレス製であって、外径16mm、長さ30mmの円柱形状であり、ライトガイド固定部材23の貫通孔23aの内部に、貫通孔23aと同軸に配置されている。
【0040】
気密シール部24は、光ファイババンドル22を、上記の貫通孔23と気密シャフト26により形成されるリング状の間隙27に挿通した後、光ファイババンドル22の光ファイバ素線10が占めていない空隙部に、接着剤8としてエポキシ系真空用接着剤(本例:アネルバ:(株)スーパーバックシール)を充填することにより形成されている。
【0041】
なお、上記接着剤8の充填方法は、第1の実施態様におけるライトガイド1と同様に、予め光ファイババンドル22が貫通孔23aに挿通される領域に対して接着剤8を均一に塗布した後、光ファイババンドル22とともに貫通孔23aに引き込む方法が用いられる。
【0042】
このような充填方法を採ることにより、光ファイババンドル22に塗布された接着剤8は、貫通孔23aの内周面と気密シャフト26の外周面26aによる2mmのリング状の間隙27を通過する際に、それぞれの面より力を受けることにより、バンドル全体に浸透し、内部の気泡が排除された状態となる。
【0043】
接着剤8は、上記の手順により光ファイババンドル22とともに貫通孔23aに充填された後、常温での硬化され、気密性の高い気密シール部24を形成する。
【0044】
なお、光ファイババンドル22の図示しない両端の端部は、それぞれが集束され、接着剤により固化された後、切断研磨され、光入射端面および光出射端面を形成している。
【0045】
上述のライトガイド21の気密シール部24に対して、第1の実施態様におけるライトガイド11と同様に、図示しないヘリウムリーク測定器(東京スペクトロン(株)製スペクトロン3000E)によりヘリウムリーク量を測定したところ、ヘリウムリーク量は、このヘリウムリーク測定器の測定限界である1×10−11Pa・m/s以下であり、ライトガイド21の気密シール部24は、高い気密性を有することを確認した。
【0046】
以上説明したように、本実施態様のライトガイド21における光ファイババンドル22の集束部の外径寸法は約10mmであり、特許文献2に示すライトガイド41の光ファイババンドル42の外径3.45mmに対して約3倍となるが、光ファイババンドル22をライトガイド固定部材23内部でリング状に配列することにより、光ファイバ素線10の積層されている領域を薄くすることができる。
【0047】
この結果、光ファイバ素線間の空隙に均一に接着剤を充填することが可能となるため、気密シール部分の接着剤内に残留する気泡が排除され、高い気密性を有するライトガイドを得ることが出来る。
【0048】
図4には、以上に述べた構造のライトガイドを使用した光照射装置を、気密容器へ用いた際の構成例を示している。
【0049】
図4において、光照射装置50は、光源ユニット52に収容された放電ランプ53から放射された光を、回転楕円ミラー54によりライトガイド51の光入射側端面に集光して入射する。
【0050】
ライトガイド51は、その光入射端部と光出射端部の間にライトガイド固定部材51aを有しており、ライトガイド固定部材51aは気密容器59に設けられた開口59aに気密に固定されている。
【0051】
本構成の光照射装置50によれば、ライトガイド51を大口径のライトガイドとすることができるため、気密容器59の内部を十分な明るさで照明することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したように、本発明のライトガイドは、多数の光ファイバ素線を束ねた大きな外径寸法を有する光ファイババンドルを用いた場合であっても、気密シール部における気密性を高めることが可能となるため、該ライトガイドを含む真空装置に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明のライトガイドの、第1の実施態様における気密シール部の構造を示す図である。図1(a)は断面を示し、図1(b)は、図1(a)におけるライトガイド固定部材のX−X線箇所の断面を示す。
【図2】第1の実施態様における気密シール部の形成手順を示す図である。
【図3】本発明のライトガイドの、第2の実施態様における気密シール部の構造を示す図である。図2(a)は断面を示し、図2(b)は、図2(a)におけるライトガイド固定部材のZ−Z線箇所の断面を示す。
【図4】本発明にかかるライトガイドを使用した光照射装置の構成例を示す図である。
【図5】従来のライトガイドの一例を示す断面図である。
【図6】従来のライトガイドの一例を示す図である。図6(a)は断面を示し、図6(b)は、図6(a)におけるライトガイドのA−A線箇所の断面を示す。
【符号の説明】
【0054】
8 接着剤
9、59 気密容器
10 光ファイバ素線
11、21、31、41、51 ライトガイド
12、22、32、42 光ファイババンドル
12a〜12m 分岐バンドル
13、23、51a ライトガイド固定部材
13a〜13m、23a 貫通孔
14a〜14m、24 気密シール部
26 気密シャフト
27 間隙
50 光照射装置
52 光源ユニット
53 放電ランプ
54 回転楕円ミラー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密容器の内外へ連通して取り付けられる気密性を備えたライトガイドであって、
複数の光ファイバ素線を束ねた光ファイババンドルと、
前記光ファイババンドルを分割して挿通する複数の貫通孔を有するライトガイド固定部材と、
光ファイババンドルが挿通された前記複数の貫通孔の空所にそれぞれ接着剤が充填され形成される複数の気密シール部と
を備えることを特徴とするライトガイド。
【請求項2】
気密容器の内外へ連通して取り付けられる気密性を備えたライトガイドであって、
複数の光ファイバ素線を束ねた光ファイババンドルと、
前記光ファイババンドルを挿通する貫通孔を有するライトガイド固定部材と、
前記貫通孔の内部に前記貫通孔と同軸に収容される柱状の気密シャフトと、
前記貫通孔と前記気密シャフトにより形成されるリング状の間隙部と、
光ファイババンドルが挿通された前記間隙部の空所に接着剤が充填され形成される気密シール部と
を備えることを特徴とするライトガイド。
【請求項3】
光を放射するランプと、該ランプより放射した光を集光する手段と、前記集光した光を気密容器内に導光するためのライトガイドを備えた光照射装置であって、前記ライトガイドが請求項1または請求項2に記載のライトガイドを使用したことを特徴とする光照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−272147(P2007−272147A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100969(P2006−100969)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(592032430)HOYA CANDEO OPTRONICS株式会社 (44)
【Fターム(参考)】