説明

ラインプリンタ

【課題】 単位ヘッドの位置決め精度がそれ程高くなくても、搬送方向に沿って筋が現れる等といった形成画像の乱れを良好に抑制することができるラインプリンタの提供。
【解決手段】 各単位ヘッド3におけるノズル31のピッチPよりも小さいピッチP1 で近接した一対のノズル31aを包含する領域に、幅方向に配列された一連のドット40を形成する場合、一対のノズル31aの内いずれか一方のみを1行毎に交互に駆動する。このため、各単位ヘッド3が形成するドット40の繋ぎ目部分41では、一方の単位ヘッド3のノズル31aが形成したドット40ともう一方の単位ヘッド3のノズル31aが形成したドット40とが交互に配設される。これによって、ドット40の密度が粗になる部分をぼかして目立ち難くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ラインプリンタに関し、詳しくは、単位ヘッドを幅方向に複数配列することによって記録ヘッドを構成したラインプリンタに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、インクジェットタイプ,ワイヤドットタイプ等のラインプリンタでは、ロール紙等の被記録媒体にドットを形成するドット形成部が被記録媒体の搬送方向に直交する方向(以下、幅方向という)に所定ピッチで配列された記録ヘッドを設け、被記録媒体を搬送しながら所定のタイミングで上記ドット形成部を駆動することにより、被記録媒体に画像を形成している。また、被記録媒体の幅全体に渡るドット形成部を一つの記録ヘッドに設けるのが困難な場合は、記録ヘッドを複数の単位ヘッドに分割し、その単位ヘッドを幅方向に配列することがなされている。すなわち、被記録媒体の幅が広い場合は、記録ヘッドが長尺で大型となるため精度よく製造することが困難である。そこで、このような場合には、比較的精度よく製造可能な小単位の単位ヘッドを幅方向に複数配列して記録ヘッドを構成するのである。
【0003】このように、記録ヘッドを複数の単位ヘッドで構成する場合、各単位ヘッドの位置決めを正確に行う必要がある。すなわち、隣接する一対の単位ヘッドの最も近接し合ったドット形成部の間隔が、各単位ヘッドでドット形成部が配列されているピッチと一致するようにしなければならず、この条件が満たされない場合は次のような課題が生じる。
【0004】図7は上記課題を表す説明図である。なお、図7ではインクジェットプリンタを例にとって説明するが、ワイヤドットプリンタでも同様の課題が生じる。図7(A)は、前述のように位置決めされた理想的な単位ヘッド3の配列及びそれによって形成されるドット40を表している。図7(A)に示すように、各単位ヘッド3にはドット形成部としてのノズル31が幅方向に所定ピッチPで配列されている。また、隣接する一対の単位ヘッド3の最も近接し合ったノズル31aの間のピッチP1 (すなわち、図7(A)における左側の単位ヘッド3の右端のノズル31aと右側の単位ヘッド3の左端のノズル31aとの幅方向の間隔)も、前述のピッチPと一致している。このため、被記録媒体にはドット40を均一に形成することができる。なお、図7では、ドット40がピッチPの約半分のピッチで形成されているが、これは被記録媒体を固定したまま各単位ヘッド3をP/2だけ幅方向に移動させることにより、前回形成したドット40の間に新たなドット40を形成するいわゆるシャットル駆動を行ったためである。また、各単位ヘッド3が形成するドット41は同一色とする(後述の実施の形態も同様)。
【0005】ところが、単位ヘッド3の位置決めが不適切で、例えば図7(B)に示すようにP1 >Pであった場合、各単位ヘッド3が形成するドット40の繋ぎ目部分41でドット40の密度が粗になって白っぽい筋が現れる。逆に、P1 <Pであった場合、上記繋ぎ目部分でドット40の密度が密になって色の濃い筋が現れる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近年、プリンタには極めて高い解像度が要求されており、単位ヘッドの位置決めを充分に正確に行うことが困難となっている。例えば、300dpi(dot per inch)の解像度を実現するためには、ドット形成部(例えば、インクジェットプリンタの場合であればノズル)のピッチを85μmとしなければならない。各単位ヘッドにおけるドット形成部は比較的正確なピッチで配列できるものの、各単位ヘッド同士を10μm未満の精度で位置決めすることは不可能に近い。そこで、本発明は、単位ヘッドの位置決め精度がそれ程高くなくても、前述のように筋が現れる等といった形成画像の乱れを良好に抑制することができるラインプリンタを提供することを目的としてなされた。
【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】上記目的を達するためになされた請求項1記載の発明は、被記録媒体を所定方向に搬送する搬送手段と、上記被記録媒体にドットを形成するドット形成部が上記所定方向と直交する幅方向に所定ピッチで配列された単位ヘッドを、上記幅方向に複数配列してなる記録ヘッドと、上記被記録媒体の搬送に応じて上記ドット形成部を駆動する記録制御手段と、を備えたラインプリンタであって、上記各単位ヘッドが上記所定方向に前後して互い違いに配置されることにより、互いに隣接する上記単位ヘッドの少なくとも1対のドット形成部の上記幅方向の間隔が上記所定ピッチ以下で近接すると共に、上記記録制御手段が、上記対をなすドット形成部を包含する領域に上記幅方向に配列された一連のドットを形成する場合に、上記対をなすドット形成部のいずれか一方のみを駆動することを特徴とする。
【0008】本発明では、各単位ヘッドが上記所定方向に前後して(例えば、幅方向に一部重なり合って)互い違いに配置され、これによって互いに隣接する上記単位ヘッドの少なくとも1対のドット形成部の幅方向の間隔が、上記所定ピッチ以下で近接している。このため、上記対をなすドット形成部を包含する領域に幅方向に配列された一連のドットを形成する場合、上記対をなすドット形成部を共に駆動すれば、各単位ヘッドが形成するドットの繋ぎ目部分でドットの密度が密となることはあっても粗となることはない。そこで、上記一連のドットを形成する場合、記録制御手段は、上記対をなすドット形成部のいずれか一方のみを駆動する。
【0009】すると、ドットの密度が他の部分よりも密になったり、1ドット分以上の隙間が空いてしまったりするのを良好に防止することができる。従って、本発明では、単位ヘッドの位置決め精度がそれ程高くなくても、前述のように筋が現れる等といった形成画像の乱れを良好に抑制することができる。
【0010】請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成に加え、上記記録制御手段が、上記一連のドットを複数回形成する場合に、少なくとも1回は上記対をなすドット形成部の内一方のみを、少なくとも他の1回は上記対をなすドット形成部の内他方のみを、それぞれ駆動することを特徴とする。
【0011】本発明では、上記一連のドットを複数回形成する場合に、少なくとも1回は上記対をなすドット形成部の内一方のみを、少なくとも他の1回は上記対をなすドット形成部の内他方のみを、それぞれ駆動している。このため、上記各単位ヘッドが形成するドットの繋ぎ目部分でドットの密度が他の部分と異なったとしても、その密度の異なる部分が上記所定方向の直線状に配設されることはない。このため、上記密度の異なる部分がぼかされて目立ち難くなる。従って、本発明では、請求項1記載の発明の効果に加えて、上記繋ぎ目部分でドットの密度が他の部分と異なったとしても、その密度の異なる部分を目立ち難くして形成画像の乱れを一層良好に抑制することができるといった効果が生じる。
【0012】請求項3記載の発明は、請求項2記載の構成に加え、上記記録制御手段が、上記一連のドットを複数回形成する場合に、上記対をなすドット形成部を交互に駆動することを特徴とする。本発明では、上記一連のドットを複数回形成する場合に、上記対をなすドット形成部を交互に駆動している。このため、上記繋ぎ目部分でドットの密度が他の部分と異なったとしても、その密度の異なる部分を一層良好にぼかして目立ち難くすることができる。従って、本発明では、請求項2記載の発明の効果に加えて、形成画像の乱れを一層良好に抑制することができるといった効果が生じる。
【0013】請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、上記各単位ヘッドの上記対をなすドット形成部が、上記所定方向に沿って配設されたことを特徴とする。本発明では、上記対をなすドット形成部が上記所定方向に沿って配設されているので、上記対をなすドット形成部は被記録媒体上のほぼ同一箇所にドットを形成可能となる。このため、上記対をなすドット形成部のいずれか一方のみを駆動した場合には、図7R>7(A)の理想的な単位ヘッド3の配列に対応したドット40とほぼ同様に配列されたドットを形成することができる。従って、本発明では、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、ドットの配列を理想的な状態に一層近づけることによって形成画像の乱れを一層良好に抑制することができるといった効果が生じる。
【0014】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。図1は、本発明が適用されたラインプリンタ1の構成を概略的に表す説明図である。なお、以下の実施の形態ではインクジェットプリンタを例にとって説明するが、本発明は、ワイヤドットプリンタにも全く同様に適用することができる。
【0015】図1に示すように、本実施の形態のラインプリンタ1は、例えばロール紙(フィルム等であってもよい)からなる被記録媒体99の幅方向(矢印A方向)に複数の単位ヘッド3を配列してなる記録ヘッド5を備えており、各単位ヘッド3はインクを吐出するドット形成部としてのノズル31を被記録媒体99に対向させている。各ノズル31は、上記幅方向に所定ピッチPで配列され、各単位ヘッド3は、被記録媒体99の搬送方向(矢印B方向)に前後して互い違いに(いわゆる千鳥状に)配設されている。そして、単位ヘッド3のこのような配置によって、隣接する一対の単位ヘッド3の最も近接し合ったノズル31aは上記搬送方向に沿ってほぼ一直線上に配設されている。
【0016】次に、このように構成された記録ヘッド5は、図2に示すように記録制御手段としての電子制御回路50に接続されて各ノズル31からのインクの吐出状態を制御される。電子制御回路50は、CPU51,ROM53,及びRAM55を備えたマイクロコンピュータとして構成され、画像データ等が外部から入力されるインタフェース61、被記録媒体99を上記搬送方向(所定方向に相当)に搬送する搬送手段としての搬送モータ63、及び、記録ヘッド5をP/2だけ幅方向に移動させて前回形成したドット40(図3参照)の間に新たなドット40を形成するいわゆるシャットル駆動用のヘッド移動モータ65にも接続されている。そして、搬送モータ63により被記録媒体99を搬送しながら、インタフェース61に入力された画像データ等に対応した所定のタイミングで対応するノズル31を駆動する。
【0017】また、電子制御回路50は、前述の一対のノズル31aを包含する領域に幅方向に配列された一連のドット40を形成する場合、一対のノズル31aの内いずれか一方のみを、図3に示すように1行毎に交互に駆動する。このため、各単位ヘッド3が形成するドット40の繋ぎ目部分41では、一方の単位ヘッド3のノズル31aが形成したドット40ともう一方の単位ヘッド3のノズル31aが形成したドット40とが交互に配設される。
【0018】前述のように、各ノズル31aは被記録媒体99の搬送方向に沿ってほぼ一直線上に配設されているので、本来ならば一対のノズル31a間のピッチP1 は0となって図7(A)の理想的な単位ヘッド3の配列に対応したドット40とほぼ同様に配列されたドット40を形成することができるはずである。しかしながら、単位ヘッド3の組み付け誤差等により上記ピッチP1 は必ずしも0とはならず、そのピッチP1 に応じた隙間が繋ぎ目部分41におけるドット40の間に生じる。これに対して、本実施の形態では、各ノズル31aが形成したドット40を交互に配設することにより、その隙間が一直線上に配設されるのを防止して、ドット40の密度が粗になる部分をぼかして目立ち難くすることができる。従って、単位ヘッド3の位置決め精度がそれ程高くなくても、上記繋ぎ目部分41に筋が現れる等といった形成画像の乱れを良好に抑制することができる。
【0019】なお、上記実施の形態では、一対のノズル31aを1行毎に交互に駆動しているが、図4に示すように2行毎に交互に駆動してもよく、3以上の複数行毎に交互に駆動してもよい。但し、駆動する側のノズル31aを頻繁に切り替えるほど繋ぎ目部分41を良好にぼかすことができ、前述の実施の形態のように1行毎に切り替えた方が形成画像の乱れを一層良好に抑制することができる。
【0020】また、図5に示すように、一部の行では両方のノズル31aを駆動してもよい。この場合、繋ぎ目部分41には、各ノズル31aが形成したドット40が重なり合った色の濃い部分も形成される。P1 ≠0の場合は繋ぎ目部分41の近傍におけるドット40の間に隙間が生じるのでその部分の色が薄くなる傾向があるが、このようにドット40を重なり合わせた部分を適切に織り交ぜると、繋ぎ目部分41を一層良好にぼかして形成画像の乱れを一層良好に抑制することができる場合がある。更に、上記各実施の形態に比べてかなり効果は低下するが、本発明の実施の形態としては、一対のノズル31aの内の一方のみを駆動する行を少なくとも1行有すればよく、このようなものも含まれる。
【0021】以上、本発明を具体的な実施の形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、本発明における単位ヘッドの配置形態には、前述のような千鳥状の配置に限らず、図6(A)に示すように単位ヘッド3を3段以上に配置した形態も含まれる。この場合も、隣接する一対の単位ヘッド3に着目すれば、上記各実施の形態と全く同様の処理によって形成画像の乱れを抑制することができる。
【0022】また、単位ヘッド3は必ずしも幅方向において重なり合っている必要はなく、図6(B)に示すように、隣接する一対の単位ヘッド3の最も近接し合ったノズル31aの間のピッチP1 が上記ピッチPよりも小さくなっていれば、幾分なりとも効果が得られる。更に、隣接する一対の単位ヘッド3のノズル31の内、上記ピッチPよりも小さいピッチP1 で近接するものが図6R>6(C)に示すように複数個あってもよい。この場合も、近接する各一対のノズル31を交互に駆動する等すれば、上記各実施の形態と同様の効果が生じる。
【0023】なお、図6(C)の例では上記ピッチP1 で近接するノズル31が3対存在するが、その内のノズル31bとノズル31c,ノズル31dとノズル31eは上記ピッチP1 よりも更に小さいピッチ(P−P1 )で近接している。そこで、このような場合には、ノズル31bまたはノズル31c,及び,ノズル31dまたはノズル31eのいずれか一方を交互または複数行毎に駆動してもよい。この場合、ドット40が密に配設される部分が生じるが、その密に配設される部分が一直線上に配設されるのを防止してぼかすことにより、形成画像の乱れを抑制することができる。本発明の実施の形態としては、このような形態も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されたラインプリンタの構成を概略的に表す説明図である。
【図2】そのラインプリンタの制御系の構成を表すブロック図である。
【図3】そのラインプリンタの駆動状態を表す説明図である。
【図4】その駆動状態の変形例を表す説明図である。
【図5】その駆動状態の他の変形例を表す説明図である。
【図6】上記ラインプリンタの単位ヘッド配置形態の変形例を表す説明図である。
【図7】従来のラインプリンタの課題を表す説明図である。
【符号の説明】
1…ラインプリンタ 3…単位ヘッド 5…記録ヘッド
31…ノズル 40…ドット 41…繋ぎ目部分
50…電子制御回路 63…搬送モータ 99…被記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】 被記録媒体を所定方向に搬送する搬送手段と、上記被記録媒体にドットを形成するドット形成部が上記所定方向と直交する幅方向に所定ピッチで配列された単位ヘッドを、上記幅方向に複数配列してなる記録ヘッドと、上記被記録媒体の搬送に応じて上記ドット形成部を駆動する記録制御手段と、を備えたラインプリンタであって、上記各単位ヘッドが上記所定方向に前後して互い違いに配置されることにより、互いに隣接する上記単位ヘッドの少なくとも1対のドット形成部の上記幅方向の間隔が上記所定ピッチ以下で近接すると共に、上記記録制御手段が、上記対をなすドット形成部を包含する領域に上記幅方向に配列された一連のドットを形成する場合に、上記対をなすドット形成部のいずれか一方のみを駆動することを特徴とするラインプリンタ。
【請求項2】 上記記録制御手段が、上記一連のドットを複数回形成する場合に、少なくとも1回は上記対をなすドット形成部の内一方のみを、少なくとも他の1回は上記対をなすドット形成部の内他方のみを、それぞれ駆動することを特徴とする請求項1記載のラインプリンタ。
【請求項3】 上記記録制御手段が、上記一連のドットを複数回形成する場合に、上記対をなすドット形成部を交互に駆動することを特徴とする請求項2記載のラインプリンタ。
【請求項4】 上記各単位ヘッドの上記対をなすドット形成部が、上記所定方向に沿って配設されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のラインプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2001−270155(P2001−270155A)
【公開日】平成13年10月2日(2001.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−86790(P2000−86790)
【出願日】平成12年3月27日(2000.3.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】