説明

ラセン杭およびその打設方法、ならびに防草用シートの施工方法

【課題】抜け難く打設作業が容易なラセン杭およびその打設方法、ならびに、ラセン杭を用いた防草用シートの施工方法を提案すること。
【解決手段】ラセン杭1は、φ6mmの線材1aを捩れ角θが45度の螺旋状に巻いて杭本体部2を形成し、その巻き終わり部分に、中心角270度の円弧部5およびその直径方向に延びる直線部6を備える巻座部3を形成している。杭本体部2の先端を傾斜面で切断して杭の中心軸線Aの側を向いた切断面4を形成し、切断面4の縁に打設面に食い込む刃先を形成する。電動インパクトドライバー7にチャック10を介してラセン杭1の巻座部3を装着し、ラセン杭1に垂直荷重および回転方向の打撃力を加えることにより、地面Gに敷設した防草用シート30の上からラセン杭1を打設する。打設完了時には防草用シート30の凹凸形状に巻座部3が係合して、ラセン杭1が抜け方向に回転しにくくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラセン杭およびその打設方法に関する。また、防草シートを地面に敷設してこれをラセン杭で地面に固定する防草シートの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路脇や線路脇の地面が舗装されていない場合には、地面に生える雑草が景観を悪化させ、車両の通行を妨げるという問題点がある。これを解消し、景観の維持と交通安全の確保を図るためには、定期的に除草作業を行わなければならない。そこで、このような除草作業を不要にするため、遮光性および防水性のシート材(防草用シート)を地面に敷設することが提案されている。特許文献1には、この種の防草用シートが開示されている。
【0003】
特許文献1では、除草すべき地面に防草用シート(エンボスシート)を並べた後、アンカーピンを所定間隔で防草用シートの上から地面に打ち込むことにより、防草用シートを地面に固定する。アンカーピンとしては、頭部を折り曲げたストレート形状の杭が用いられている。また、防草用シートが凹凸のあるエンボスシートであるため、シート端部を折り曲げて土中に埋め込むことにより、シート端部のめくれ上がりを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−177122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように杭を打設して防草用シートを固定する場合、防草用シートの浮き上がりやめくれを確実に防止するためには、杭の引抜荷重を大きくして杭を抜けにくくする必要がある。しかしながら、ストレート形状の杭の場合、引抜荷重を大きくするためには杭の長さを長くする必要があり、打設可能な場所が限定されてしまう。また、地面に杭を打設する場合、人力で杭の頭を叩いて打ち込むのが一般的であるが、このような打設作業は作業負荷が大きい。また、ストレート形状の杭を人力で打設する場合、安定して垂直荷重をかけにくく、打設時の作業性が良好とはいえない。更に、打設時に荷重方向がずれることにより、杭が変形したり傾いてしまうなどの問題点もある。
【0006】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、長さが短くても十分な引抜荷重を得ることができ、抜け難く打設作業が容易なラセン杭およびその打設方法、ならびに、防草用シートを浮き上がりやめくれが発生しないように地面に固定する作業を少ない作業負荷で行うことができる防草用シートの施工方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明のラセン杭およびその打設方法、ならびに防草用シートの施工方法は、次の通りに構成されていることを特徴としている。
【0008】
すなわち、本発明のラセン杭は、
線材を捩れ角が45度以上の螺旋状に巻いた杭本体部と、
当該杭本体部の基端部における前記線材の巻き終わり部分に形成された巻座部とを有し、
前記杭本体部の先端は、前記線材を単一の平面で切断した形状となっており、
前記巻座部は、前記線材を前記杭本体部の中心軸線を中心とする中心角270度以上の円弧状に巻いた円弧部、および、当該円弧部の一端から当該円弧部の径方向中心側に屈曲させた前記線材を前記中心軸線を越える位置まで直線状に延ばした直線部を備えることを特徴としている。
【0009】
本発明のラセン杭は、このような構成により、杭本体部に垂直荷重をかけながらその中心軸線を中心として回転させることにより、容易に地面に打ち込むことができる。また、打ち込み後は垂直方向への引抜荷重が大きいため、簡単に地面から引き抜くことはできない。よって、物体を地面に強固に固定することができる。本発明者は、各種の形状のラセン杭を試作し、試験土への打設試験を行った。その結果、杭先端における線材の向きと地面との傾きを45度以上としたときに、線材を変形させることなく、杭を試験土中に打ち込み可能となり、打設時の作業性も良いことを確認している。また、杭本体部の先端部分の線材を単一の平面で切断して杭本体部の先端に刃先を形成したときに、打設面に食い込みやすく、打設時の抵抗が少なくなり、打設面に敷いたシート材を貫通できることを確認している。従って、打設時の荷重による杭本体部の変形を抑制し、容易に打設可能とするために、上記のような構成を採用している。
【0010】
加えて、本発明のラセン杭は、杭本体部の基端部に、杭本体部と同心状の円弧部、および、杭本体部の中心軸線上を通る直線部を備える巻座部を形成しているため、この巻座部を介して、杭の中心軸線上に安定した垂直荷重を加えることができる。また、直線部を介して回転力を加えることにより、杭本体部に中心ずれのない回転力を加えることができる。更に、270度以上の角度範囲に円弧部を設けているため、円弧部をガイドすることによって杭本体部の傾きや荷重位置のずれを抑制できる。従って、打設時の作業性が良好であり、垂直荷重および回転力の中心ずれによる線材の変形や杭の傾きも発生しにくい。更に、巻座部は、電動インパクトドライバーなどの電動工具の出力軸に対して同軸状に杭を装着することが容易な形状であるため、電動工具の利用によって作業負荷を大幅に軽減できる。
【0011】
本発明において、前記杭本体部の先端に形成された前記線材の切断面は、当該先端における前記線材の軸線方向に対して、前記杭本体部における前記中心軸線の側に傾いた面であることが望ましい。このように構成すると、切断面によって杭本体部の先端に形成される刃先が、杭の打設面に対して大きく傾いた形状となる。従って、杭本体部の先端を打設面に容易に食い込ませることができる。
【0012】
また、本発明において、前記線材の断面形状は直径6mm以上の円形断面であり、前記杭本体部および前記巻座部の外径は42mmであり、前記杭本体部の前記中心軸線方向の長さは200mm以上であることが望ましい。本発明者は、線材の直径、杭本体部および巻座部の外径、杭本体部の長さ、等の各寸法が異なる各種のラセン杭を試作して、その打設試験を行い、打設時の作業性、変形、打設後のラセン杭の引抜荷重などの確認を行った。そして、その結果、打設時にラセン杭を変形させることなく、且つ、十分な大きさの引抜荷重を得るためには、上記のような寸法を採用することが望ましいと判断している。
【0013】
次に、本発明は、上記のラセン杭の打設方法であって、
充電式の電動インパクトドライバーの先端に、前記巻座部を着脱可能に装着するためのチャックを設け、
当該チャックは、前記電動インパクトドライバーの回転軸線と前記杭本体部の中心軸線とが一致した状態となるように前記ラセン杭を装着可能であり、
前記電動インパクトドライバーの出力回転を前記チャックを介して前記ラセン杭に伝達することにより、前記ラセン杭を打設することを特徴としている。
【0014】
本発明は、このように、ラセン杭を電動インパクトドライバーに着脱可能に装着し、電動インパクトドライバーの出力回転によってラセン杭を打設することができるため、従来の人力による打設作業と比較して、作業負荷を大幅に軽減できる。特に、充電式の電動インパクトドライバーは電源コードを引き回す必要がないため、極めて作業性が良好である。また、ラセン杭に安定して垂直荷重および回転力を加えることができる巻座部を着脱可能なチャックを設けて、電動インパクトドライバーの回転軸線に対して同軸状にラセン杭を装着可能にしたため、作業性が極めて良好であり、安定した打設作業を行うことができる。また、ラセン杭の変形や傾きなどの不具合も発生しにくい。
【0015】
本発明において、前記チャックは、前記直線部を挟むためのクランプ部材と、前記直線部を挟んだ状態で前記クランプ部材をロックするためのロック機構と、前記クランプ部材に前記直線部が挟まれた状態で前記円弧部をガイドするガイド部とを備え、前記ロック機構によって前記巻座部の前記チャックからの離脱を防止すると共に、前記ガイド部によって前記杭本体部の前記回転軸線に対する傾きを制限した状態で、前記電動インパクトドライバーによる前記ラセン杭の打設を行うように構成することができる。このようにすると、ラセン杭に手を添えなくとも安定した垂直荷重および回転力を加えることができ、両手で垂直荷重を加えることができる。従って、作業性が極めて良好である。また、チャックへの巻座部の着脱も容易である。
【0016】
次に、本発明の防草用シートの施工方法は、
所定の凹凸パターンが形成されたエンボス状の防草用シートを地面に敷設し、
上記のラセン杭を、上記のラセン杭の打設方法により、前記防草用シートの上から所定間隔で地面に打設することにより、前記防草用シートを地面に固定し、
各ラセン杭は、前記防草用シートを貫通すると共に、前記円弧部および前記直線部を形成している各線材が前記凹凸パターンにおける凸部間の隙間に嵌まった状態となるように打設されることを特徴としている。
【0017】
本発明によれば、引抜荷重の大きいラセン杭によって防草用シートを地面に固定するため、防草用シートを浮き上がりやめくれが発生しないように地面に固定することができる。また、このラセン杭は、打設時の作業性が良好であり、杭の変形や傾きなども発生しにくい。そして、打設作業を電動インパクトドライバーを用いて行うことにより、作業負荷が大幅に軽減されると共に、電源コードを引き回す必要がない点で極めて作業性が高い。更に、打設が完了したときには、ラセン杭の巻座部の各部を形成している線材が、それぞれ、凹凸パターンの凸部間の隙間に嵌まった状態が形成されるため、巻座部の回転が困難であり、ラセン杭の抜け方向への回転が困難である。従って、ラセン杭が抜け難いという利点もある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ラセン杭の先端が打設面に食い込みやすく、シート材なども貫通可能であるため、打設時の抵抗が少なく打設作業が容易である。また、巻座部に安定した垂直荷重を加えることができると共に、杭本体部と同心状の回転力を容易に加えることができる。従って、打設時の作業性が良く、変形や傾きなども発生しにくい。そして、打設後のラセン杭は引抜荷重が大きく、簡単に地面から引き抜くことはできない。従って、防草用シートなどの物体を強固に地面に固定できる。更に、電動インパクトドライバーなどの電動工具を用いて打設作業を行うことができるため、従来の人力による打設作業と比較して、作業負荷を大幅に軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係るラセン杭の側面図である。
【図2】図1のラセン杭を巻座部側から見た平面図である。
【図3】電動インパクトドライバーにチャックを介してラセン杭を装着した状態を示す側面図である。
【図4】チャックの側面図および平面図である。
【図5】チャックの縦断面図(図4(b)のX−X断面図、図4(b)のY−Y断面図)である。
【図6】クランプ部材の動作を示す説明図である。
【図7】防草用シートを施工した地面の断面構成を示す説明図である。
【図8】施工後の防草用シートにおけるラセン杭の固定箇所を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したラセン杭およびその打設方法の実施の形態を説明する。
【0021】
(ラセン杭の構成)
図1は本発明の実施の形態に係るラセン杭の側面図であり、図2はラセン杭を巻座部側からみた平面図である。ラセン杭1は、φ6mmの円形断面の線材1aを螺旋状に巻いた杭本体部2と、杭本体部2の基端部に形成された巻座部3とを備えている。線材1aの素材としては、例えば、S45Cなどの鋼材を用いることができる。杭本体部2の螺旋形状は、その外径L1が42mmであり、捩れ角θが45度となるように設定されている。また、杭本体部2の基端部から先端までの長さL2は200mmであり、線材1aが約3周巻かれる長さに設定されている。
【0022】
杭本体部2の先端は、線材1aを平面で斜めに切断した形状となっている。本実施形態では、この切断面4が、杭本体部2の中心軸線Aの側を向いた上向きの面となっており、切断面4の下側の縁部分が線材1aの外周面と鋭角をなすように交差している。このため、杭本体部2の先端には、切断面4の縁に沿った下向きの鋭い刃先が形成されている。このような刃先を形成することにより、ラセン杭1を打設する際に、打設面に杭の先端を容易に食い込ませることができる。従って、杭本体部2に加わる抵抗が少なく、小さな力で打設可能となり、線材1aの変形を抑制できる。なお、切断面4の向きは、図1に図示する向きに限定されるものではないが、杭本体部2の先端における線材1aの軸線方向(接線方向)に対して中心軸線Aの側に傾いている面を切断面4とすることが望ましい。このようにすると、切断面4の縁に形成される刃先の打設面に対する角度を、線材1aの捩れ角である45度よりも大きな角度とすることができる。従って、切断面4を打設面に容易に食い込ませることができる。
【0023】
杭本体部2を形成している線材1aは、杭本体部2の基端部(螺旋形状の巻き終わり部分)において水平方向に屈曲した後、巻座部3を形成している。巻座部3は、この屈曲位置を起点として、中心軸線Aを中心とする中心角270度の円弧状に線材1aを延ばした後、円弧の径方向中心側に線材1aを屈曲させて中心軸線Aを越える位置まで延ばした形状となっている。すなわち、巻座部3は、杭本体部2と同心状の円弧部5と、円弧部5の一端から中心軸線A上を通って円弧部5の対向する部位の手前まで延びる直線部6とを備えている。
【0024】
本発明者は、ラセン杭1の構成を決定するにあたって、線材1aの太さ、杭本体部2の外径L1、杭の長さL2、捩れ角θ、等が異なる各種の試験体を作成し、これらを用いて各種の試験土への打設試験を行った。そして、打設時の作業性、試験体の変形の有無、打設後の引抜荷重などの確認試験を行った。また、比較例として直線状のストレート杭を用いて試験を行った。その結果、ラセン杭1の先端における線材1aの傾きが、打設する地面に対して45度未満となる試験体では、線材1aを地面にねじ込むのが困難であった。また、6mmよりも細い線材1aを用いた試験体では、線材1aの折れ曲がりが発生し、打設が困難であった。更に、杭本体部2の外径が42mmよりも大きい試験体では線材1aの折れ曲がりが発生した。
【0025】
また、引抜荷重については、杭を長くすると引抜荷重が増大するものの、200mmを超えると引抜荷重の向上効果が低下し、その一方、200mmを下回ると、大幅な引抜荷重の低下が発生した。また、ラセン杭は、その長さがストレート杭の半分程度であってもストレート杭よりも大幅に引抜荷重が大きいことを確認した。例えば、礫+シルトおよび粘土質の2種類の試験土では、ラセン杭1の引抜荷重が40kgf以上となることを確認した。また、実際の地面(硬い土、柔らかい土)への打設時の引抜荷重は、硬い土で30kgf、柔らかい土で20kgf程度となった。これに対し、倍の長さ(400mm)のストレート杭の引抜荷重は、硬い土でも7kgf程度であった。本実施形態では、以上の結果をふまえて、ラセン杭1の形状を上記のように決定している。
【0026】
また、本発明者は、ラセン杭1の打設時に安定した状態で垂直荷重および回転力(回転方向の打撃力)を加えることができ、荷重位置のずれや傾きが発生しにくい形状を検討した。また、後述する電動インパクトドライバー7(図3参照)を用いてラセン杭1を打設することを想定して、電動インパクトドライバー7への装着性、および、電動インパクトドライバー7を利用した打設作業による作業性を考慮した。その結果、上記の巻座部3の形状を選択した。すなわち、巻座部3は、杭本体部2と同心状に形成されており、中心軸線A上を直線部6が通っているため、中心軸線A上に安定した垂直荷重を加えることができる。また、直線部6を介して回転力を加えることにより、杭本体部2に中心ずれのない回転力を加えることができる。更に、270度の角度範囲にわたって円弧部5を設けているため、円弧部5をガイドすることによって杭本体部2の傾きや荷重位置のずれを抑制できる。従って、打設時の作業性が良好であり、垂直荷重および回転力の中心ずれによる線材の変形や杭の傾きも発生しにくくなっている。なお、円弧部5の中心角は270度よりも大きくしてもよい。
【0027】
(ラセン杭の打設方法)
図3は電動インパクトドライバー7にチャックを介してラセン杭1を装着した状態を示す側面図である。本実施形態では、ラセン杭1を地面などの打設面に打設する際には、充電式の電動インパクトドライバー7などの電動工具を利用して行う。図3に示すように、電動インパクトドライバー7の出力軸8には、各種の先端工具を取り付けるための工具取付部9が設けられている。この工具取付部9の先端には、先端工具の後端に設けられた軸体(シャンク)を差し込むための差込穴9aが設けられており、差込穴9a内には軸体を締め付けるための図示しない爪部が設けられている。工具取付部9は、適切に操作することにより、軸体を爪部で締め付けて先端工具の抜けを防止した状態、および、爪部を緩めた状態に切り換えて先端工具を着脱することができる。
【0028】
図4はチャックの側面図および平面図であり、図4(a)は側面図、図4(b)は平面図である。また、図5はチャックの縦断面図(図5(a)は図4(b)のX−X断面図、図5(b)は図4(b)のY−Y断面図)である。チャック10は、工具取付部9にチャック10を固定するためのシャンク11が一端に設けられた概略円筒形のチャック本体部12を備えている。シャンク11は、チャック本体部12の一端側の端面から同軸状に突出している。シャンク11の外周面は、円筒形の外周面を部分的に平面状に削った形状となっている。この平面状の部分(平面部)は、工具取付部9における爪部の配置と対応する位置に形成されており、各平面部はシャンク11の軸線方向に延びている。本実施形態では、3箇所の平面部が周方向に120度の角度ピッチで形成されている。このように、シャンク11を概略三角形の断面形状にしたことにより、チャック10を工具取付部9に対して回転不能に装着することができる。
【0029】
チャック本体部12の他端側には、一回り大径の大径部13が形成されており、この大径部13の端面に、ラセン杭1の巻座部3を嵌め込むための杭装着部14が形成されている。杭装着部14は、チャック本体部12の中心軸線Bを中心とする環状のガイド溝15(ガイド部)と、ガイド溝15の直径方向に延びる直線状のガイド溝16を備えている。ガイド溝15、16は、ガイド溝15内に巻座部3の円弧部5を装着し、且つ、ガイド溝16内に直線部6を装着可能な寸法に形成されている。すなわち、ガイド溝15、16の溝幅および溝深さは線材1aの径寸法に対応しており、ガイド溝15の外径は巻座部3の外径に対応している。
【0030】
チャック10には、巻座部3を杭装着部14に装着した際に、巻座部3の外れを防止するための以下に説明するクランプ機構およびそのロック機構が設けられている。すなわち、大径部13の端面には、ガイド溝16と直交する直線状のクランプ設置溝17が設けられている。クランプ設置溝17は、チャック本体部12の中心軸線Bの位置でガイド溝16と交差しており、チャック本体部12の軸線方向に所定深さで切り込まれている。クランプ設置溝17の両端は、大径部13の端面付近ではガイド溝15に接続されており、大径部13の上部からその上方に位置するチャック本体部12の下半分までの部分では、その外周面に開口している。チャック本体部12の外周側には、このクランプ設置溝17の開口部位を覆うように、円筒形のシリンダー18(ロック機構)が装着されている。クランプ設置溝17内には、チャック本体部12の中心軸線Bを挟んで対称となるように、一対のクランプ部材19、20が設置されている。クランプ部材19、20は、クランプ設置溝17の溝方向と直交する方向に延びる支持軸19a、20aによって揺動可能に支持されている。また、クランプ部材19、20の下端には、ガイド溝16内に装着された線材1a(直線部6)を両側から挟み込むための挟み込み面19b、20bが形成されている。
【0031】
図6はクランプ部材の動作を示す説明図である。図6(b)に示すように、シリンダー18をチャック本体部12の上端まで上げると、クランプ設置溝17の両端が開口状態となり、クランプ部材19、20がチャック本体部12の外周面よりも径方向外側に突出可能となる。クランプ部材19、20における支持軸19a、20aよりも上方の位置には、クランプ部材19、20に両端が固定されたコイルばね21が設置されている。クランプ部材19、20は、このコイルばね21によって付勢されているため、シリンダー18が上昇すると、クランプ部材19、20の下端側が径方向外側に向かって揺動する。これにより、挟み込み面19b、20bの隙間が拡がり、クランプ部材19、20による線材1a(直線部6)の挟み込み状態が解除される。つまり、シリンダー18を上げると、クランプ機構のロック解除状態が形成され、線材1aをガイド溝16内に着脱可能となる。
【0032】
一方、図6(a)に示すように、シリンダー18を大径部13に当接する位置まで下げると、クランプ設置溝17の両端がシリンダー18によって閉鎖され、クランプ部材19、20の径方向外側への突出が規制される。従って、クランプ部材19、20の下端側がコイルばね21による付勢力に逆らって径方向内側に揺動し、挟み込み面19b、20bが線材1a(直線部6)を両側から挟み込んだ状態となる。つまり、この状態では、挟み込み面19b、20bの間から線材1a(直線部6)を取り外すことが不能となり、クランプ機構のロック状態が形成されている。このように、シリンダー18は、クランプ機構をロック状態とロック解除状態に切り換えるためのロック機構を構成している。
【0033】
以上のように、本実施形態では、チャック10を用いることにより、ラセン杭1を電動インパクトドライバー7に着脱可能に装着することができる。ここで、上述したように、ガイド溝15はチャック本体部12と同心状であるため、杭装着部14に巻座部3を装着すると、チャック本体部12の中心軸線Bとラセン杭1の中心軸線Aとが一致する。つまり、チャック10を介してラセン杭1を電動インパクトドライバー7に装着すると、電動インパクトドライバー7の出力軸8の回転軸線Cとラセン杭1の中心軸線Aとを一致させた状態にラセン杭1を装着できる。また、このとき、ラセン杭1の中心軸線Aを通る直線部6がガイド溝16内に嵌まっているだけでなく、その外周側の円弧部5までもガイド溝15に嵌まってガイドされているため、チャック10とラセン杭1との一体感が高められている。更に、クランプ部材19、20およびシリンダー18により、ラセン杭1の脱落および装着位置のずれが防止されている。従って、電動インパクトドライバー7側からラセン杭1に対して、中心ずれのない垂直荷重および回転力(回転方向の打撃力)を安定して加えることが可能となる。また、このとき、片手をラセン杭1に添えて支持する必要がなくなり、両手で垂直荷重を加えることができる。従って、打設時の作業性が良好であり、ラセン杭1の変形や傾きなども発生しにくい。
【0034】
このように、充電式の電動インパクトドライバー7を利用した打設作業では、従来の人力による打設作業と比較して、作業負荷を大幅に軽減できる。更に、電源コードを引き回す必要がないため、極めて作業性が良好である。
【0035】
(防草用シートの施工方法)
次に、図7、図8を参照しながら、本発明を適用したラセン杭1を用いた防草用シートの施工方法について説明する。図7は防草用シートを施工した地面の断面構成を示す説明図、図8は施工後の防草用シートにおけるラセン杭1の固定箇所を示す平面図である。防草用シート30は、規則的な凹凸パターンが形成されたエンボスシートであり、屋外に常設して雑草などの繁茂を防止するのに適した、防水性、耐候性、強度、遮光性、軽量性などを備えている。防草用シート30の素材は特に限定されないが、例えば、高密度ポリエチレンなどの合成樹脂を用いることができる。
【0036】
防草用シート30は、概略四角錐の先端を切断して角を丸めた形状の凸部31が千鳥状に並んで形成されると共に、隣接する凸部31間に、凸部31を上下反転させた形状の凹部32が形成されている。このように、凸部31と凹部32が反転形状であって交互に配置されているため、裏表を逆にすると凸部31と凹部32が入れ替わり、裏表の区別なく使用できる構成となっている。また、防草用シート30は、全体として可撓性を有しており、凹凸のある地面Gに沿って敷設可能である一方、地面に敷いた状態でその上を人や重量物が通っても凸部31および凹部32が潰れることなく、形状を保つことができる程度の強度を有している。
【0037】
図7に示すように、本実施形態では、防草用シート30を地面Gに敷設し、その上からラセン杭1を一定間隔で打設することにより、防草用シート30を地面に固定する。打設後の各ラセン杭1は、図8に示すように、巻座部3が防草用シート30の表面の凹凸形状に係合している。すなわち、円弧部5および直線部6を形成している線材1aが凹部32の上を通り、凸部31の間の隙間に嵌まった状態を形成できるように、巻座部3の形状が設定されている。このように、巻座部3がエンボス形状の隙間に嵌まった状態を形成していると、防草用シート30の上を人や物体が移動するときに巻座部3に力が加わりにくい。また、直線部6が凸部31の隙間に嵌まった状態になっていると、巻座部3の回転が困難であり、ラセン杭1の抜け方向への回転が困難である。従って、打設後のラセン杭1が抜け難く、防草用シート30のめくれや浮き上がりを効果的に抑制できる。
【0038】
本発明者は、防草用シート30を敷いた地面Gに対して電動インパクトドライバー7を用いてラセン杭1を打設する試験を行い、打設性の確認試験を行った。その結果、本実施形態のラセン杭1は、上述したように打設面に食い込みやすい構成となっているため、防草用シート30を容易に貫通できること、および、ラセン杭1の変形などの不具合を起こさずに垂直に打設でき、高い引抜荷重が得られ、強固に防草用シート30を固定できることを確認した。また、電動インパクトドライバー7を用いて打設するときは、防草用シート30を貫通するまではチャック10に手を添えて垂直荷重および回転方向の打撃力を加え、ラセン杭1が防草用シート30を貫通した後は、ラセン杭1が回転しながら地面Gに侵入するのに伴う防草用シート30の浮き上がりを防止するため、防草用シート30を地面Gに押さえ付けながら打設を行うことが望ましいとの知見を得ている。
【0039】
ラセン杭1は、上述したように、従来のストレート杭よりも格段に短い長さであっても十分な引抜荷重が得られる。従って、従来のストレート杭を打ち込み可能な深さを確保できない地面に対しても、ラセン杭1を用いることによって防草用シート30を施工することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 ラセン杭
1a 線材
2 杭本体部
3 巻座部
4 切断面
5 円弧部
6 直線部
7 電動インパクトドライバー
8 出力軸
9 工具取付部
9a 差込穴
10 チャック
11 シャンク
12 チャック本体部
13 大径部
14 杭装着部
15 ガイド溝(ガイド部)
16 ガイド溝
17 クランプ設置溝
18 シリンダー(ロック機構)
19、20 クランプ部材
19a、20a 支持軸
19b、20b 挟み込み面
21 コイルばね
30 防草用シート
31 凸部
32 凹部
A 中心軸線
B 中心軸線
C 回転軸線
G 地面
L1 外径
L2 長さ
θ 捩れ角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材を捩れ角が45度以上の螺旋状に巻いた杭本体部と、
当該杭本体部の基端部における前記線材の巻き終わり部分に形成された巻座部とを有し、
前記杭本体部の先端は、前記線材を単一の平面で切断した形状となっており、
前記巻座部は、前記線材を前記杭本体部の中心軸線を中心とする中心角270度以上の円弧状に巻いた円弧部、および、当該円弧部の一端から当該円弧部の径方向中心側に屈曲させた前記線材を前記中心軸線を越える位置まで直線状に延ばした直線部を備えることを特徴とするラセン杭。
【請求項2】
請求項1において、
前記杭本体部の先端に形成された前記線材の切断面は、当該先端における前記線材の軸線方向に対して、前記杭本体部における前記中心軸線の側に傾いた面であることを特徴とするラセン杭。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記線材の断面形状は直径6mm以上の円形断面であり、
前記杭本体部および前記巻座部の外径は42mmであり、
前記杭本体部の前記中心軸線方向における長さは200mm以上であることを特徴とするラセン杭。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかの項に記載のラセン杭の打設方法であって、
充電式の電動インパクトドライバーの先端に、前記巻座部を着脱可能に装着するためのチャックを設け、
当該チャックは、前記電動インパクトドライバーの回転軸線と前記杭本体部の中心軸線とが一致した状態となるように前記ラセン杭を装着可能であり、
前記電動インパクトドライバーの出力回転を前記チャックを介して前記ラセン杭に伝達することにより、前記ラセン杭を打設することを特徴とするラセン杭の打設方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記チャックは、
前記直線部を挟むためのクランプ部材と、
前記直線部を挟んだ状態で前記クランプ部材をロックするためのロック機構と、
前記クランプ部材に前記直線部が挟まれた状態で前記円弧部をガイドするガイド部とを備え、
前記ロック機構によって前記巻座部の前記チャックからの離脱を防止すると共に、前記ガイド部によって前記杭本体部の前記回転軸線に対する傾きを制限した状態で、前記電動インパクトドライバーによる前記ラセン杭の打設を行うことを特徴とするラセン杭の打設方法。
【請求項6】
所定の凹凸パターンが形成されたエンボス状の防草用シートを地面に敷設し、
請求項1ないし3のいずれかの項に記載のラセン杭を、請求項4または5に記載のラセン杭の打設方法により、前記防草用シートの上から所定間隔で地面に打設することにより、前記防草用シートを地面に固定し、
各ラセン杭は、前記防草用シートを貫通すると共に、前記円弧部および前記直線部を形成している各線材が前記凹凸パターンにおける凸部間の隙間に嵌まった状態となるように打設されることを特徴とする防草用シートの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−39054(P2013−39054A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176774(P2011−176774)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000207562)大日本プラスチックス株式会社 (23)
【出願人】(500085873)株式会社中部エンジニアリング (7)
【Fターム(参考)】