説明

ラダーストック

【課題】水上の乗物用の舵用のラダーストックの特性を改善し、特に重量を軽減したラダーストックを提供する。
【解決手段】水上乗物用の舵100のラダーストック40において、舵100内に挿入されて該舵に装着されるべきラダーストック40の少なくとも下端部42は、非金属材料、特にファイバ複合材料を含んで構成される。また、ラダーストック40は主にファイバ複合材料製のチューブ46からなり、適用可能であればラダーストック40の上端部は船の金属材料製の操舵装置11と結合されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上の乗物用の舵のラダーストックに関する。
【背景技術】
【0002】
水上の乗物、特に船に備えられた操舵装置の制御動作は、一般的にはラダーストックを経て舵に伝達される。水上の乗物用の舵のラダーストックは圧倒的に金属製であり、特に鍛鋼製である。特にコンテナ船や、タンカーや、客船のような商船の場合、ラダーストックは長大で、部分的には10m以上の長さ、が求められる。前述のこのようなタイプのラダーストックにおいては、世界的に対応する能力がある鍛冶屋は比較的少数しかおらず調達は困難な結果となる。加えて、このようなラダーストックはまたしばしば直径が大きく従って重量が重く、極端な場合100トンの制限を超える。これは、段階的に特別な熟練を要求し、そしてラダーストックを船体に設置吊り下げまた舵板をラダーストックに取り付けて支持するのに強固な構造を要求する。
【0003】
ラダーストックは一般的には円形の断面を有しており、そして曲げとねじりの点から両方の応力を受け、通常ねじり荷重よりも何倍も多く発生する曲げ荷重が吸収させられている。このような訳で、曲げ堅さや強度に関してそれ相当に構成されなければならず、そして高品質な鍛鋼が商船では圧倒的に使用されている。ラダーストックはこれによって他の技術分野で用いられる軸、例えば自動車の構造のものと異なり、たびたびもっぱら曲げ応力を受けまた少なくとも初めにはねじりの点からも応力を受ける。さらに、ラダーストックは他の軸と寸法が異なっている。したがって、本発明の水上の乗物用の舵のラダーストックが特に適するのは、通常では少なくとも長さ3mで少なくとも重量が3.5トンである。
【0004】
さらに、極度に大きい力が舵に作用すると、特に高速船で強力プロペラの場合、その力は少なくとも一部はラダーストックへ伝達される。したがって、十分な強度と曲げ堅さを有する必要がある。使用されている舵のタイプにより、これらの要求はさらに増える。よって、例えばスペード型舵のように、ラダーホーンや追加のピボットジャーナル軸受けをソールピースに有さないものの場合、ラダーストックへの力が増加されることに関して大きな要求がある。
【0005】
重量を軽減するためであって、特に大きな舵のための大きなラダーストックで、そしてそれでも十分な曲げ強さやねじり剛性を保持しているものとして、特許文献1に開示された出願人が構成したラダーストックがあり、これはラダーストックの上端部と下端部は金属製、特に鍛鋼であり、そして両端部を結ぶ中間部は非金属材料製、特にファイバ複合材である。中間部分を非金属材料で製造するように構成することで、ラダーストックの重量軽減が効果的に達成される。さらに、ラダーストックは下端部と上端部のみが鍛鋼により製造される必要がある。端部の製品としては、通常長いラダーストック全体を鍛鋼で製造する場合の製品よりもっと大きい鍛造能力のものが得られる。
【0006】
ラダーストックの上端部は一般的には乗物の水上部分の内側に設置され、そして操舵装置の制御動作が舵に伝達されるように操舵装置と機械的に接続される。反対に、ラダーストックの下端部は舵の中に設置されるよう挿入されている。ラダーホーンを有するセミスペード型舵の場合、設置はラダーホーンの外で行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ドイツ実用新案登録第202005013583号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は水上の乗物用の舵のラダーストックに関するものであり、従来技術として知られているラダーストックの特性を改善し、特に重量を軽減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の基本的な目的は、水上の乗物用の舵のラダーストックについて請求項1の特徴により解決される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の複数の好ましい実施例は複数の図面に示される。図面は模式的に示したものであり:
【図1】船体後部に備えられている舵でありラダートランク内に設けられたラダーストックを含む図であり、
【図2】ラダーストックの図であり、
【図3】ラダーストックの下端部と支持体の断面図であり、そして
【図4】第一支持体部材と巻線用心棒の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の場合、ラダーストックの下端部は非金属材料製、特にファイバ複合材料製であり、または下端部は別々にそれらで作られている。ラダーストックの下端部はラダーストックの端部を含み、それは舵板内に備えられた状態で設置されるように舵内部に挿入される。(ラダーホーンを有するセミスペード型舵の場合は、ラダーストックはまたラダーホーン自体内に設置可能である。このような関係では、ラダーホーンは舵の一部と考えられ、それでラダーホーン内に設置する場合一般的には舵内部に設置したものと考えられる。)これによってラダーストックの下端部に非金属材料を使用することによりラダーストック全体として重量を軽減でき効果的である。さらに、これによってまたラダーストック下方の端部が鍛鋼で作られているものに対してラダーストックの直径を小さくできる。
【0012】
ファイバ複合材料、特にカーボンファイバ複合材料が、非金属材料として用いられる。ファイバ複合プラスチックまたはその他のファイバ複合材料がまた使用可能である。黒鉛ファイバが特にカーボンファイバとして使用可能である。非金属材料、そして特にファイバ複合材料を用いることの効果は、下方の重量そしてこの場合ファイバ複合材料が非常に堅く高強度であることに存する。また、ラダーストックの下端部の非金属材料の使用は、ラダーストックは舵の内部またはラダーホーン内に別々に設置され、そしてラダーストック部分は大きな荷重、特に曲げ荷重で衝撃を受けるので、特に高速船が強力プロペラである場合に適する。
【0013】
本発明の好ましい実施例としては、ラダーストックの下端部と上端部の間で両端部を連結しているラダーストックの下端部と中央部の両方を非金属材料とし、特にファイバ複合材料とする。ラダーストックの上端部もまた非金属材料にでき、それでラダーストック全体を非金属材料としまたは別々に非金属材料で作られてもよい。ラダーストックの他の材料の間を殆どファイバ複合材料で構成することの大きな効果は、従来の全体が金属製のラダーストック、特に鍛鋼製より重量をかなり軽減出来ることである。こうして、本発明によりラダーストックをファイバ複合材料で製造するとラダーストックを鍛鋼製としたものと比べ重量を半分から四分の一にできる。
【0014】
これに関係して、ラダーストックは主にファイバ複合材料製のチューブが特に好ましい。しかし、もしもできるなら、ラダーストック上端部の乗物の水上部分にある操舵装置と接続される箇所は、また金属材料で作ることが出来る。鍛鋼製の上端部はファイバ複合チューブと永久に結合される。ラダーストックの上端部を金属材料で構成することは、ラダーストックの船内の操舵装置との結合部での適合を確実にするために効果的である。ラダーストック上端部と操舵装置の結合は例えばボルト締めやその他の適切な従来技術として知られている結合手段による。
【0015】
本発明に関連して、用語「チューブ」はいかなる長さの中空体も意味する。技術的な製造上の理由により、本発明のファイバ複合チューブは全長にわたって一定の直径で円筒状に構成されていることが好ましい。さらに、一またはそれ以上の構成体、例えば巻線用心棒やまたはそのようなものがラダーストックの中に残り、一般的にはファイバ複合体の中空体の内部に配置される。そのようなラダーストックを製造するために、特に従来技術として知られている巻線方法がファイバ複合材料のために使用可能であり、ファイバが円筒状の巻線用心棒や又はそのようなものの周囲に巻かれる。しかし、一般的には、ラダーストックの上端部に生じる力はより弱く、したがってより小さい直径で十分なので、チューブは上端部に向かって徐々に細くなる円筒形やそれぞれに円錐形として構成することが可能である。もしもラダーストックの上端部が金属で作られている場合は、ファイバ複合材や別々のカーボンファイバ強化チューブと金属製上端部の結合は、特に上端部のファイバ複合チューブに面する側にファイバ複合チューブのファイバが巻き付けられるようにピン状の突起を備えていれば達成される。或いは又は加えて、樹脂などの適切な接着剤により接着を行うことが出来る。例えば、金属材料で作られた上端部とファイバ複合チューブとの間の結合は、特許文献1に開示されているストック上端とラダーストック中央部の結合と同様に構成可能である。特許文献1に開示されている事項を、本発明の対象として個々に明確に引用する。
【0016】
本実施例において、下端部がファイバ複合材料であるラダーストックも、比較的簡単な方法で製造できる。さらに、ラダーストックの中央部もまたファイバ複合材料で作られると、その結果ラダーストックがラダーストックの下端部と中央部の間で変わり目がなく効果的である。これは従来技術として知られている、中央部はファイバ複合材料で作られておりそして二つの端部は金属で作られていて、それによってラダーストックの潜在的に弱い部位は下端部と中央部の間を結合している箇所となるラダーストックとは対照的である。さらに、この結合部は一般的に特に大きな曲げ荷重が作用し、そのためラダーストックに潜在的に損傷が起こりうる。ラダーストックの上端部と中央部の間の結合部においては、曲げ荷重は対照的に比較的より弱く、そのためここでは損傷はないと思われる。さらに、ラダーストックを連続的に構成して、ラダーストックの下端部と中央部を下端部への接続が変わり目がないようにすると、より小さい断面のラダーストックを選択でき、舵全体の重量軽減と寸法にとって効果的である。
【0017】
技術的な製造理由のために、ラダーストックはファイバ複合チューブとして構成され、そして中空スペースを有している。しかし、がっちりした構成の非金属材料製のラダーストックもまた一般的に考えられる。
【0018】
常に十分な強度を確保するため、特に曲げ強度を、またラダーストックが非常に大きな直径で従って非常に大きな荷重がかかる舵の場合、支持体がラダーストックの下端部に設けられていることがさらに本発明の好ましい実施例として提案される。この支持体は外力による作用、特に曲げ荷重に対しラダーストックを支持するように構成されている。支持体は好ましくは金属、例えば鋼鉄又はステンレス鋼で作られている。鋼鉄製の支持体はその材料の特性や強度に基いた利点があり得る。そのような支持体は例えば分割して製造でき、旋盤その他の手段により、そしてしたがって下端部の上に設けるかまたは別々にそれに挿入する。しかし、一般的にはまた支持体を非金属材料として構成を簡単にすることも可能であり、例えばファイバ複合材料などである。ラダーストックを中空状態か又はラダーストックの下端部を別けて中空状態に構成する場合、支持体をラダーストックの内部に設けることは特に有利である。これに関して、本実施例はラダーストックがファイバ複合チューブで構成されると有利に提供され得る。下端部に支持体を設けると一般的にはラダーストックでそこに最も大きな荷重がかかるので有利である。
【0019】
支持体は一般的にはラダーストックの下端部に作用する外力に対して長期にわたり支持効果が発揮されれば、どのような適当な形状や寸法に別けても設計できる。もしも支持体がラダーストックの中空内にあるようにラダーストック内部に設けられると、ラダーストックとそしてしたがってラダーストックから支持体に少なくとも一部伝達される衝撃を、完全に又は少なくとも部分的に止めるのに有利な構成である。支持体とチューブを永久的に結合することはこれにおいて特に有利である。一方では、ラダーストックと支持体の間の接続とし従って支持効果はこれによって改善され、他方、支持体が常に支持効果を最大に発揮できる位置に存することが確実となる。支持体の材料の選択や、寸法や配置によって、支持体とラダーストックの間の結合は適切な方法により異なって行われ得る。例えば、焼バメ、係合組立構成や接着がここに挙げられる。
【0020】
さらに、特に支持体がラダーストックの下端部の内部に設けられる場合、もしもラダーストック上に力伝達/装着要素があると舵板を据え付けるのに際し据え付けの力をカーボンファイバ強化ボディ内に伝えるために有利である。この力伝達/装着要素は好ましくはラダーストックからラダーストックの長さ方向に突き出している。力伝達/装着要素は特にラダーストックと舵板の締め付けを確実にするために設けられる。特に好ましい実施例としては、力伝達/装着要素は舵板へ取り付けるためのナット、特に油圧ナット等のためのネジ山を有している。
【0021】
本発明の他の好ましい実施例としては、支持体は少なくとも一部がラダーストックの下端部に支えられ、少なくとも支持部の一部の表面はそのような構造及び/又はプロフィールに構成されていることが有利である。特に本実施例は支持体が内部に設けられ、周囲がカーボンファイバで強化され又は別々にファイバ複合チューブで形成したラダーストックに巻かれているのが有利である。支持体とチューブの間の相互連結は、嵌め込み結合方式又は凹凸嵌合方式をそれぞれ採用することで改善される。
【0022】
支持体は弾性、特に曲げ弾性特性を有するように構成されていることが有利である。本明細書中の用語「弾性」は、支持体が力の影響を受けて退くように設計されている、言い替えれば、力の影響を受けた場合たとえ僅かであっても初期の形状が変化し、そして作用している力が去ったとき原形に復帰し得るように設計されているというように解するものとする。この点において、支持体を曲げ弾性を有するように構成するのはラダーストックの下方部は主に曲げ応力を受ける点から有利である。これによって、極端に大きな曲げ応力で支持体を締め付ける場合、できればこの大きな応力を支持体等に直接導いて破損させないようにすることが可能となる。この点で、支持体は確かな弾力特性を有していることが有利である。もしも適用できるなら、形状が若干変わっても上記目的のためには十分である。
【0023】
本実施例では、支持体は中空体として設計するのが好ましい。ラダーストックの下端部内に具合よく挿入されてラダーストック上に据えられた支持体は、中空体として設計されているため、大きな曲げ荷重が掛かった場合でも、中空スペースに向かって内側へ変形可能である。がっしりと設計された支持体がラダーストック内にクリアランスなしに設置された場合は、このタイプの弾性変形は、特に支持体が金属製の場合は難しいだろう。
【0024】
さらに、支持体は二つの部品で設計されていると有利であり、支持体部品の好ましくは少なくとも一方、特に好ましくは両方は、支持体部品から突き出た円周状のウェッブ特に円環状に形成されたウェッブを有し、そのウェッブは他方の支持体部品と中空スペースを形成することにより、特に圧入嵌合によって結合され得る。
【0025】
本実施例において、二つに分けられた支持体部品は簡単に設計でき、一緒に組み合わされて支持体となり中空部を形成する。これは製造とラダーストック内への設置をかなり簡素化できる。突き出したウェッブは、ラダーストックの内側表面上に止まってラダーストックを支持するように、好ましくは外側に設けられている。もしも大きな曲げ荷重が加わると、支持体のウェッブ部は中空部の内部方向に移動可能で、したがって支持体に損傷を与えず締め付けられる。また一般的に支持体は二つ以上の部品で組み立てることも可能である。
【0026】
ラダーストックを対応するネックベアリング内に設置するのと同様にラダーストックを舵板に接続することもラダーストックの下端部領域で行われる。ここでは何れに場合も、力は外側からラダーストックのケースに作用する。ラダーストックをこれらの力作用から保護し、総合的な強固さや強度を別々に増すために、保護ライナーを設けることが有利であり、その保護ライナーは下端部の少なくとも一部を包んでいる。したがって、保護ライナーは円筒状に設計されるのが有効である。さらに、保護ライナーはラダーストックのケースの外周面に対して保護ライナーの内面全体が止まり、そして適切な締め付け方法により永久的に結合されていることが有利であり、例えば焼バメ手段によって結合される。保護ライナーは金属製、特にステンレス鋼が有利である。
【0027】
上記したように、ラダーストックの最も大きな荷重が作用するのは、下端部に位置する舵板との結合部及び/又はラダーストックのネックベアリング内への設置部であり、支持体は、一又は二つの部分または特に好ましくは前記した両方の部分(ネックベアリング及び舵板結合部)に設けられることが有利である。同様に、保護ライナーは二つのうちの一方又は両方の上記部分に設けられることが有利である。
【0028】
さらに、本発明の目的は、外力の作用に対してラダーストックの下端部を支持する支持体を含み、周囲に非金属材料特にファイバ複合材料が配置されたラダーストックの下端部を介して解決される。したがって、支持体は少なくとも部分的に非金属材料で包まれるか又は囲われている。非金属材料を用いる場合、ファイバは直接支持体の上に巻かれか、又は少なくとも支持体は、支持体とラダーストックの下端部の支持部の間の接続がベストとなることを可能としている部材の上に巻かれるのが有利である。
【0029】
さらに、本発明の目的は、ラダーストックの下端部を支持するために特に金属製の支持体が外力の影響に対抗するため設けられ且つ支持体の周囲にファイバ材料が巻かれている水上の乗物特に大きい応力が作用するプロペラを有する高速船用の舵の中へ挿入されて且つ舵に装着されるべきラダーストックの下端部の製造方法により解決される。
【0030】
さらに、本発明の目的は、水上の乗物用舵、特に大きい応力が作用するプロペラを有する高速船のラダーストックの製造方法により解決される。その製造方法は次のステップを含む。
a.)特に金属製の支持体の準備、
b.)巻線用心棒の準備、
c.)巻線用心棒を支持体の隣に配置、
d.)支持体の周囲と巻線用心棒の周囲にファイバを巻きファイバ複合チューブを創出、
e.)もしも適用できるなら、巻線用心棒の取り外し、そして
f.)もしも適用できるなら、特に金属材料で作られていて且つ支持体から離間して対面しているファイバ複合チューブの端部で操舵装置と結合されるべき上端部の締着。
【0031】
本発明の製造方法の場合、支持体又は別々の少なくとも一つの支持体部分と巻線用心棒が備えられ、そして両者は相互に隣り合わせに、特に互いに隣接して配置される。巻線用心棒は通常は円筒体であって、しばしばファイバ複合材料の製造に用いられるものであり、その周囲にファイバ材料が巻かれる。線巻きを行って支持体への線巻き完了後又は別々に製造した後、巻線用心棒はしばしば支持体から取り外される。このような巻線用心棒は、また、しばしば、「心棒」と称される。しかし、巻線用心棒は、また、一般的に線巻き完了後のファイバ複合体または別々のファイバ複合チューブのファイバ複合チューブ内に残される。これは特に巻線用心棒が非円筒形状の場合、例えば巻線用心棒が円錐形状の場合である。
【0032】
巻線用心棒と支持体の設置が完了したら、ファイバ材料が支持体と巻線用心棒の周囲にラダーストックを形成するために巻かれる。線巻きが行なわれ、そしてラダーストック又は別々にラダーストックのファイバ複合材料で製造される部分が完成した後、巻線用心棒は、もしも適用される場合は、取り外される。さらに、適用される場合は、特に金属製でそして水上の乗物の操舵装置に結合される上端部は、ファイバ複合チューブで形成したラダーストックに取り付けられる。したがって、支持体はファイバ複合チューブの下端部に設けられ、上端部はファイバ複合チューブの支持体と反対側に設けられるのが有利である。
【0033】
支持体は好ましくは二つの部品で構成され、そして第一支持体部品のみ上記したステップa)、c)、及びd)の実施に用いられる。線巻きが完了し巻線用心棒を取り外した後、第二支持体部品がそれからファイバ複合チューブの端面から支持体のファイバ複合チューブに挿入され、そして第二支持体部品は第一支持体部品の方へ移動される。それから、第二支持体部品は第一支持体部品及び/又はファイバ複合チューブと永久的に結合されるのが有利である。
【0034】
図1は本発明のラダーストック40、舵板30及びラダートランク20を含む舵100を示す。ラダートランク20は船体10にその上端部20bが取り外せないように接続された片持ち梁として設計されている。ラダートランクの下端20aは舵板30内に深く挿入されている。ラダートランク20は中空ラダートランクチューブとして設計されている。その内部には、本発明のラダーストック40が設けられ、上端部は船体10内に備えられた操舵装置11と接続されている。ラダーストック40は、ラダートランク20全体に挿通されて舵板30の内部に挿入されるとともに、ラダートランクの端部20bの上方に突き出している。ラダートランク40の下端部42は完全に舵板30内に配置されている。
【0035】
舵100は、フィンステアリング32により舵とり可能なフィン31を含むスペード型の舵として構成されており、船体10の進行方向において推進器12の後ろ側に備えられている。しかしながら、ラダーホーンを有するセミスペード型の舵として構成された舵、又はピボットジャーナル軸受によりソールピースに据付けられた舵に、本発明のラダーストックを用いることは一般的に容易に可能である。
【0036】
図2はラダーストックを示す図である。ラダーストック40は三つの領域、すなわちラダーストックの上端部41、ラダーストックの中央部45及びラダーストックの下端部42に細分される。ラダーストックの上端部41及び下端部42はそれぞれラダーストックの中央部45に直接的に隣接している。船体10の操舵装置11に接続され得る上端部41は鍛鋼製である。「鍛鋼」とは、炭素含有量が0.8%よりも少ない鉄を意味する。対照的に、ラダーストックの中央部45と同じくラダーストックの下端部42はファイバ複合材料で作られ、特にカーボンファイバ製である。特に、ラダーストックの中央部45と下端部42は主にファイバ複合材料で連続したトランクチューブで作られている。ラダーストックの中央部45と下端部42のファイバ複合材料の巻線は参照番号60で示される。ラダーストック40に関し、より小さな直径のピン形状の力伝達/装着要素43がラダーストック40の下端部42から軸方向に突出している。鍛鋼製の上端部41はラダーストック40の軸方向に参照番号51で示されるようにラダーストックの中央部45方向に突き出したピンを有しており、上端部41に面するラダーストックの中央部45の部分の周りには巻線が施され得る。膠付け等の他の接続手段も又一般的には可能である。
【0037】
図3はラダーストックの下端部の軸方向の断面図を示す。下端部42はファイバ複合材料製のファイバ複合チューブからなる。ファイバ複合チューブ46は(主に)ラダーストックを形成し、支持体70が下端部42のファイバ複合チューブ46の中に設けられる。支持体70は、二つの部品で構成され第一支持体部品71と第二支持体部品72からなる。第一支持体部品71はファイバ複合チューブ46の自由端461に設けられている。第一支持体部品71は、ファイバ複合チューブ46の自由端461に配置されたベースボディ711と、ファイバ複合チューブ46に支えられベースボディ711の円周外部にファイバ複合チューブ46の中に突出させたウェッブ712とからなる。第一支持体部品71全体は完全にファイバ複合チューブ46の中に静止する。突出したウェッブは端部へ向けてテーパー状になっており、ウェッブ間の中空スペースはベースボディ711から円錐状に広がっている。第一支持体部品71の外部即ち外周面は、波状又はそのような形状に構成されている。主に円筒状の力伝達/装着要素43は、ラダーストック40より横断面が小さく、ラダーストック40から離れる方向にベースボディ711から突き出している。力伝達/装着要素43の表面にはネジ山431が備えられている。水圧ナット33が力伝達/装着装要素42のネジ山431に螺着されている。一方、水圧ナット33はラダーストック40を舵板の中に固定するよう設計されている。他方、水圧ナット33はラダーストックと舵板30の間の舵板内の結合部301の係合組立を創出する。この舵板の結合部301で、舵板30はラダーストック40、又は別々に係合組立手段でステンレス鋼製の保護ライナー47により包まれたラダーストック40の下端部42が隣接される。保護ライナー47はファイバ複合チューブ46の外側に位置し、そしてファイバ複合チューブ46の自由端461から舵板結合部301の全体を越え、ラダートランク20の下端部20aまで伸びている。軸受け(ネックベアリング)21はラダートランク20とラダートランク20内のラダーストック40に設けた保護ライナー47の間に備えられている。舵板結合部301内では、ラダーストック40は自由端461に向かって円錐状に設計されてテーパがつけられている。
【0038】
第一支持体部品71と同様に、第二支持体部品72もまたファイバ複合チューブ46の内側に対し外周面全体が支えられ、そして主に強固なベースボディ721を有する。円周状のウェッブ722は、ベースボディ721の外側にベースボディ721からファイバ複合チューブ46の自由端461方向に突出して構成されている。ウェッブ712,722の端部で、第一と第二支持体部品71,72は隣接した係合組立により、ウェッブ712,721の楔形状の端部で結合されている。支持体70は、中空部73を有し、ウェッブ712,722とベースボディ711,721で縁取られウェッブ領域の二つの支持体部品71,72の結合を通じて形成される。両方のベースボディ711,721と力伝達/装着装素43はネジ棒などを通すためにほぼ中央に透孔7111,7121を有している。中空部により、支持体70のネックベアリング21と舵板結合部301の間の最も大きな荷重箇所は、中空部73に向かって弾性的に変形され、そのためスプリング効果が生じる。
【0039】
図4は図3の第一支持体部品71を示す。巻線用心棒80の端部は、ウェッブ712の内側に係合してウェッブ712の内周面全体によって支えられている。巻線用心棒80は円筒状ローラ81と、その上に設けられるラダーストック40又は別々の第一支持体部品71に巻かれるように寸法を調整された心棒アダプター82よりなる。第一支持体部品71の力伝達/装着要素43は、保持具83のフランジ831により保持されている。さらに、保持具83はネールカラー832を有し、その周囲にはファイバ材料(図示せず)が巻かれたローラ又は糸巻きが取り付けられ得る。巻線材料は、ネールカラー832で保持されて第一支持体部品71の外周部にコイル状に巻かれ、そしてそれからさらにファイバ複合チューブ46を形成するために巻線用心棒80の周囲にコイル状に巻かれる。ファイバ複合チューブ46が完成した後、巻線用心棒80と、もしも適用できるなら保持具83が第一支持体部品71の保持部から取り外される。さらに、第二支持体部品72が、取り外して設けられた第一支持体部品71のファイバ複合チューブ46の端部から挿入され第一支持体品71の方へ移動せしめられる。二つの支持体部品71,72を結合するやいなや、係合組立が両者の間に形成され、それによって支持体70が形成される。係合組立は例えば第二支持体部品72をファイバ複合チューブ46の挿入前に冷やしておくか、あるいはチューブ46を加熱しておく。
【符号の説明】
【0040】
100 舵
10 船体
11 操舵装置
12 推進器
20 ラダートランク
20a ラダートランクの下端
20b ラダートランクの上端
21 ネックベアリング
30 舵板
31 フィン
32 フィンステアリング
33 油圧ナット
301 舵板連結箇所
40 ラダーストック
41 上端部
42 下端部
43 力伝達/マウンティングエレメント
45 ラダーストック中央部
46 ファイバ複合チューブ
47 保護ライナー
431 ネジ山
461 自由端
51 ピン
60 ファイバ複合材料の巻線
70 支持体
71 第一支持体部品
72 第二支持体部品
73 中空スペース
711 基体
712 ウェッブ
721 基体
722 ウェッブ
7111 透孔
7121 透孔
80 巻線用心棒
81 ローラ
82 心棒アダプター
83 保持具
831 フランジ
832 ネールカラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上乗物用の舵100のラダーストック40であって、舵100内に挿入されて該舵に装着されるべきラダーストック40の少なくとも下端部42は、非金属材料、特にファイバ複合材料を含んで構成されていることを特徴とするラダーストック。
【請求項2】
ラダーストック40は主にファイバ複合材料製のチューブ46からなり、適用可能であればラダーストック40の上端部41は船の金属材料製の操舵装置11と結合されるようになっていることを特徴とする請求項1に記載のラダーストック。
【請求項3】
ラダーストック40の下端部42には、金属製の支持体70がラダーストック40の外力に対抗するために備えられ、該支持体70は好ましくはラダーストック40の内側に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のラダーストック。
【請求項4】
ラダーストック40は、少なくとも下端部は非金属材料製のチューブ、特にファイバ複合材料からなり、支持体70がチューブの中に設けられチューブに永久的に結合されていることを特徴とする請求項3に記載のラダーストック。
【請求項5】
支持体70は、特にラダーストック40を舵板30に固定するため、ラダーストック40の下端部42から突出している力伝達/装着要素を含んでいることを特徴とする請求項3又は4に記載のラダーストック。
【請求項6】
支持体70の表面の少なくとも一部は、嵌め込み結合及び/又は凹凸嵌合に適するように設計されていることを特徴とする請求項3乃至5の何れかに記載のラダーストック。
【請求項7】
支持体70は弾性的、特に曲折可能に設計されていることを特徴とする請求項3乃至6の何れかに記載のラダーストック。
【請求項8】
支持体70は中空体として設計されていることを特徴とする請求項3乃至7の何れかに記載のラダーストック。
【請求項9】
支持体70は二部品で構成されるように設計されていて、好ましくは該支持体部品71,72の少なくとも一方、特に好ましくは両方は、特に組立により、中空スペース73を形成することにより他方の支持体部品と連結可能の、支持体部品71,72から突き出した円周特にリング-形状のウエブ712,722を有していることを特徴とする請求項8に記載のラダーストック。
【請求項10】
ラダーストック40は、少なくとも下端部42に、ラダーストック40を包んでいる特に金属製の保護ライナー47を含んでいることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載のラダーストック。
【請求項11】
舵板30とラダーストック40からなり、ラダーストック40はその一部が舵板30に挿入され、そしてラダーストック40の下端部42の少なくとも一部が、舵板30内に設けられたベアリング21により装架されている水上の乗物用舵において、少なくともラダーストック40の少なくとも下端部42は、非金属材料、特にファイバ複合材料を含んで構成されていることを特徴とする舵。
【請求項12】
ラダーストック40の下端部42内には、外力の影響に対してラダーストック40を支持するため特に金属製の支持体70が設けられており、該支持体70は舵板30内のラダーストック40の設置箇所内及び/又はラダーストック40への舵板連結部301内に設けられていることを特徴とする請求項11に記載の舵。
【請求項13】
前記下端部42にはラダーストック40を包む特に金属製の保護ライナー47が設けられており、該保護ライナー47は舵板30内のラダーストック40の設置領域内及び/又はラダーストック40への舵板連結部301内に設けられていることを特徴とする請求項11又は12に記載の舵。
【請求項14】
舵100が請求項11乃至10の何れかに記載のラダーストック40を含んでいることを特徴とする請求項11乃至13の何れかに記載の舵。
【請求項15】
水上乗物用の舵100内に挿入されて該舵100に装着されるべきラダーストックの下端部において、ラダーストック40が外力に抗して下端部42を支持するために、特に金属製であり、周囲には非金属材料、特にファイバ複合材料が配設されていることを特徴とする、ラダーストックの下端部。
【請求項16】
支持体70が請求項5乃至9の何れかに記載したように構成されていることを特徴とする請求項15に記載のラダーストックの下端部。
【請求項17】
水上乗物用の舵100内に挿入されて該舵に装着されるべきラダーストック40の下端部42を製造する方法において、特に金属製の支持体70がラダーストック40の外力に対抗するために備えられ、そして支持体70の周囲の少なくとも一部にファイバ材料が巻かれていることを特徴とするラダーストックの下端部の製造方法。
【請求項18】
請求項15又は16に記載の下端部42は、方法によって製造されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
次のステップを含む、水上乗物用の舵100のラダーストック40の製造方法:
a.)特に金属製の支持体70を準備するステップ、
b.)巻線用心棒80を準備するステップ、
c.)支持体70の隣に巻線用心棒80を配置するステップ、
d.)支持体70の周囲と巻線用心棒80の周囲にファイバ材料を巻きつけることによってファイバ複合チューブ46を創出するステップ、
e.)もし適用可能であれば、巻線用心棒80を取り外すステップ、そして
f.)もし適用可能であれば、上端領域41の締め付け、特に金属材料で作られている場合、及び操舵装置11へのファイバ複合チューブ46の端部の結合は、支持体70から面が離れるようにするステップ。
【請求項20】
支持体70は二つの部品として設計されて第一の支持体部品71はステップa.),c.)及びd.)が用いられ、第二の支持体部品72はステップe.)実行後にファイバ複合チューブ46の中にファイバ複合チューブ46の第一の支持体部品71から遠い面から挿入され、ファイバ複合チューブ46内を第一の支持体部品71まで移動され、そして第一支持体部品71及び/又はファイバ複合チューブ46と結合されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1乃至10の何れかに記載のラダーストックを製造することを特徴とする請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
水上の乗物用の舵用のラダーストックであり、次のようにして得られる。
a.)特に金属製の支持体70の準備、
b.)巻線用心棒80の準備、
c.)支持体70の隣に巻線用心棒80を配置、
d.)支持体70の周囲と巻線用心棒80の周囲にファイバを巻くことによるファイバ
複合チューブ46の創出、
e.)適用可能ならば、巻線用心棒80の除去、そして
f.)適用可能ならば、特に金属材料製で且つ支持体70から離れて対向しているファイバ複合チューブ46の端部で操舵装置11に結合されるべき上端領域41の締め付け、
によって得られ得る、水上の乗物用の舵用ラダーストック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−241420(P2010−241420A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−78926(P2010−78926)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(510087885)ベッケル、マリネ、システムズ、ゲーエムベーハー、ウント、コムパニ、カーゲー (5)