ラック製造装置及びラック製造方法
【課題】2箇所のラック歯部の形成のために特殊な加工装置を用いることなく、2箇所の歯部を有するダブルピニオンラックバーを製造する。
【解決手段】第1歯部が形成された第1のラックバー12Aを支持するクランプ機構110と、第2歯部が形成された第2のラックバー12Bをその軸心線C2を第1のラックバー12Aの軸心線C1と一致させて支持するチャック機構140と、クランプ機構110に対し、チャック機構140を近接させるテーブル機構120と、クランプ機構110に対し、チャック機構140を軸心線C2廻りに相対的に回動させる回転駆動部130とを備えている。
【解決手段】第1歯部が形成された第1のラックバー12Aを支持するクランプ機構110と、第2歯部が形成された第2のラックバー12Bをその軸心線C2を第1のラックバー12Aの軸心線C1と一致させて支持するチャック機構140と、クランプ機構110に対し、チャック機構140を近接させるテーブル機構120と、クランプ機構110に対し、チャック機構140を軸心線C2廻りに相対的に回動させる回転駆動部130とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリング装置に用いられるラックバーを製造するためのラック製造装置及びラック製造方法に関し、特にステアリング側に連結された操舵ピニオンと噛み合うラック軸の摺動により操舵輪を転蛇させるとともに、ステアリングの操舵トルクに応じて制御される電動機出力を操舵ピニオンと離間してラック軸と噛み合う補助ピニオンに伝達し操舵を補助する電動パワ−ステアリング装置に好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
電動パワーステアリング装置に用いられるラックピニオン機構は、ラック&ピニオンが1箇所に設けられている形式(以下、「シングルピニオンタイプ」と称する)と、ラック&ピニオンが2箇所に設けられ、EPS(電動パワ−ステアリング)用ラックバーを用いる形式(以下、「ダブルピニオンタイプ」と称する)とが知られている(例えば、特許文献1参照)。シングルタイプに用いられるラックバーでは、ラック歯部を形成するために、プレス加工やマンドレルを用いた鍛造加工を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4397083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したダブルピニオンタイプに用いられるラックバーでは、次のような問題があった。すなわち、ラック歯部が軸方向の両端に2箇所あり、しかもラック歯部相互におけるラックバーの軸周りの角度位置(位相)が0〜45°程度ずれているため、特別なプレス加工装置が必要となる。また、マンドレルを用いた鍛造加工機では位相差があると製造できなかった。
【0005】
そこで本発明は、2箇所のラック歯部の形成のために特殊な加工装置を用いることなく、2箇所の歯部を有するラックバーを製造できるラック製造装置及びラック製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明のラック製造装置及びラック製造方法は次のように構成されている。
【0007】
第1歯部が形成された第1のラックバーを支持する第1支持部と、第2歯部が形成された第2のラックバーをその軸心線を前記第1のラックバーの軸心線と一致させて支持する第2支持部と、前記第1支持部に対し、前記第2支持部を近接させるテーブル機構と、前記第1支持部に対し、前記第2支持部を前記軸心線廻りに相対的に回動させる回転駆動部とを備えている。
【0008】
第1歯部が形成された第1のラックバーを支持し、第2歯部が形成された第2のラックバーをその軸心線を前記第1のラックバーの軸心線と一致させて支持し、前記第1のラックバーの端部と前記第2のラックバーの端部とを圧接させ、前記第1のラックバーに対し、前記第2のラックバーを前記軸心線廻りに相対的に回動させる。
【0009】
第1歯部が形成された第1のラックバーを支持し、第2歯部が形成された第2のラックバーをその軸心線を前記第1のラックバーの軸心線と一致させて支持し、前記第1のラックバーに対し、前記第2のラックバーを前記軸心線廻りに相対的に回動させ、前記第1のラックバーの端部と前記第2のラックバーの端部とを圧接させ、前記第2のラックバーの回転を停止し、前記第2のラックバーの支持を解除する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、2箇所のラック歯部の形成のために特殊な加工装置を用いることなく、2箇所の歯部を有するラックバーを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係るダブルピニオンラック製造装置によって製造されたダブルピニオンラックバーが組み込まれたラック&ピニオン装置を示す説明図。
【図2】同ダブルピニオンラックバーを示す平面図。
【図3】同ダブルピニオンラック製造装置の概要を示す説明図。
【図4】同ダブルピニオンラック製造装置によるダブルピニオンラック製造工程を示す説明図。
【図5】同ダブルピニオンラック製造工程を示す説明図。
【図6】同ダブルピニオンラック製造工程を示す説明図。
【図7】同ダブルピニオンラック製造工程を示す説明図。
【図8】同ダブルピニオンラック製造工程を示す説明図。
【図9】同ダブルピニオンラック製造工程を示す説明図。
【図10】同ダブルピニオンラック製造工程を示す説明図。
【図11】同ダブルピニオンラック製造工程を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態に係るダブルピニオンラック製造装置(ラック製造装置)100によって製造されたダブルピニオンラックバー12が組み込まれたラック&ピニオン装置を示す説明図、図2はダブルピニオンラックバー12を示す平面図、図3はダブルピニオンラック製造装置100の概要を示す説明図である。
【0013】
ラック&ピニオン装置10は、車両の左右方向に延設された略円筒状のラックハウジング11を有し、そのラックハウジング11内にダブルピニオンラックバー12が左右軸方向に摺動自在に収容されている。
【0014】
ラックハウジング11の両端開口から突出したダブルピニオンラックバー12の両端部にそれぞれジョイントを介してタイロッド13,13が連結され、ジョイント部を覆うブーツ14,14からタイロッド13,13が側方に突出しており、ダブルピニオンラックバー12の移動によりタイロッド13,13が動かされ、さらに転舵機構を介して車両の転舵輪が転舵される。
【0015】
ラックハウジング11の右端部にステアリングギヤボックス20が設けられている。ステアリングギヤボックス20には、ステアリングホイールが一体的に取り付けられたステアリング軸にジョイントを介して連結される入力軸21が軸受を介して回動自在に軸支されている。入力軸21には操舵ピニオン(不図示)が形成されている。
【0016】
この操舵ピニオンがダブルピニオンラックバー12のラック歯12aと噛合している。したがってステアリングホイールの回動操作により入力軸21に伝達された操舵力は操舵ピニオンを回動して操舵ピニオンのはす歯とラック歯12aの噛合によりダブルピニオンラックバー12を左右軸方向に摺動させる。
【0017】
ラックハウジング11の左端部には、補助ギヤボックス30が形成されている。補助ギヤボックス30は、ラックハウジング11に対して若干傾いて上下方向にピニオン円筒部31が形成されるとともに上下方向に直交するようにラックガイド円筒部32が形成されている。
【0018】
ピニオン円筒部31の内部にダブルピニオンラックバー12のラック歯12bに噛合して補助ピニオン(不図示)が収容されている。補助ギアボックス30には、モータ33が取り付けられ、モータ33の駆動軸が補助ピニオンを一体に回動し、補助ピニオンのはす歯がラック歯12bと噛み合うダブルピニオンラックバー12を左右軸方向に摺動するように作用する。
【0019】
モータ33は、入力軸21により検出したステアリングホイールの操舵トルクに応じて制御され、人力による操舵力が操舵ピニオンを介してダブルピニオンラックバー12に伝達される一方で、その操舵トルクに応じて制御されるモータ33による駆動力が補助ピニオンを介して同じダブルピニオンラックバー12に作用し、人力を補助して転舵が行われる。
【0020】
図2はダブルピニオンラックバー12を示す平面図である。ダブルピニオンラックバー12は、第1歯部12aと第2歯部12bを備えており、それぞれ軸心線廻りの角度位置(位相)が0〜45°程度ずれている
また、ダブルピニオンラックバー12は、第1歯部12aを有する第1のラックバー12Aと第2歯部12bを有する第2のラックバー12Bとを接合して形成されている。なお、図2中12Cは接合部を示している。
【0021】
ダブルピニオンラック製造装置100は、図3に模式的に示すように、床面等に固定され、クランプ機構(第1支持部)110と、テーブル機構120に載置された回転駆動部130と、この回転駆動部130に取り付けられたチャック機構(第2支持部)140とを備えている。なお、クランプ機構110とチャック機構140とは、それぞれ第1のラックバー12Aの軸心線C1と第2のラックバー12Bの軸心線C2とを一致させて支持する。
【0022】
クランプ機構110は、第1歯部12aが形成された第1のラックバー12Aを着脱自在に支持する機能を有している。
【0023】
テーブル機構120は、回転駆動部130を図3中矢印H方向に往復動させる機能を有している。回転駆動部130は、クランプ機構110に対し、チャック機構140を軸心線廻りに相対的に回動させる機能を有している。
【0024】
このように構成されたダブルピニオンラック製造装置100では、次のようにしてダブルピニオンラックバー12を製造する。すなわち、図3に示すように、チャック機構140により、第2のラックバー12Bを支持する。次に、図4に示すように、クランプ機構110により、第1のラックバー12Aを支持する。これにより、第1のラックバー12Aの軸心線C1と第2のラックバー12Bの軸心線C2とが一致する。
【0025】
次に、図5に示すように、回転駆動部130を作動させ、第2のラックバー12Bを軸心線廻りに回転させ、第1のラックバーの軸心線廻りに対し相対的に回動させる。そして図5中矢印H1方向に前進させる。
【0026】
次に、図6に示すように、テーブル機構120を図6中矢印H1方向に第2のラックバー12Bを第1のラックバー12A側にゆっくりと前進させ(遅送り)、図7に示すように突き当てる。これにより、摩擦熱が発生し、金属組織に変化が生じ、さらに圧力が加わることで第1のラックバー12Aと第2のラックバー12Bとが接合される。
【0027】
さらに、図8に示すように、回転駆動部130の駆動を急停止する。このとき、第1のラックバー12Aと第2のラックバー12Bとの軸心線廻りの位相差は所定の位相差とする。なお、位相決めの精度は±0.1°程度であり、実用的には問題は生じない。
【0028】
次に、図9に示すように、チャック機構140による第2のラックバー12Bの支持を解除し、図10に示すように、テーブル機構120を図9中矢印H2方向に後進させる。図11に示すように、定位置に戻った時点でテーブル機構120の動作を停止するとともに、クランプ機構110による第1のラックバー12Aの支持を解除する。
【0029】
このようなダブルピニオンラック製造装置100では、ラック歯部相互におけるラックバーの軸周りの角度位置(位相)が45°以上ずれている場合であっても、特別なプレス加工装置を用いることなく、所定の位相差で接合することができる。また、マンドレルを用いた鍛造加工機で形成したラック歯部を有する場合であっても接合が可能となった。
【0030】
接合部12Cは、摩擦熱と圧力により強固に接合されることで、第1のラックバー12Aや第2のラックバー12Bの母材よりも機械的強度を高めることが可能となり、接合部12Cを起点とした亀裂が発生することはない。
【0031】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した例では、第1のラックバーを固定し、第2のラックバーを回転させたが、両方のラックバーを回転させてもよい。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
10…ラック&ピニオン装置、12…ダブルピニオンラックバー、12a…第1歯部、12b…第2歯部、12A…第1のラックバー、12B…第2のラックバー、12C…接合部、100…ダブルピニオンラック製造装置(ラック製造装置)、110…クランプ機構(第1支持部)、120…テーブル機構、130…回転駆動部、140…チャック機構(第2支持部)、C…接合部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリング装置に用いられるラックバーを製造するためのラック製造装置及びラック製造方法に関し、特にステアリング側に連結された操舵ピニオンと噛み合うラック軸の摺動により操舵輪を転蛇させるとともに、ステアリングの操舵トルクに応じて制御される電動機出力を操舵ピニオンと離間してラック軸と噛み合う補助ピニオンに伝達し操舵を補助する電動パワ−ステアリング装置に好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
電動パワーステアリング装置に用いられるラックピニオン機構は、ラック&ピニオンが1箇所に設けられている形式(以下、「シングルピニオンタイプ」と称する)と、ラック&ピニオンが2箇所に設けられ、EPS(電動パワ−ステアリング)用ラックバーを用いる形式(以下、「ダブルピニオンタイプ」と称する)とが知られている(例えば、特許文献1参照)。シングルタイプに用いられるラックバーでは、ラック歯部を形成するために、プレス加工やマンドレルを用いた鍛造加工を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4397083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したダブルピニオンタイプに用いられるラックバーでは、次のような問題があった。すなわち、ラック歯部が軸方向の両端に2箇所あり、しかもラック歯部相互におけるラックバーの軸周りの角度位置(位相)が0〜45°程度ずれているため、特別なプレス加工装置が必要となる。また、マンドレルを用いた鍛造加工機では位相差があると製造できなかった。
【0005】
そこで本発明は、2箇所のラック歯部の形成のために特殊な加工装置を用いることなく、2箇所の歯部を有するラックバーを製造できるラック製造装置及びラック製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明のラック製造装置及びラック製造方法は次のように構成されている。
【0007】
第1歯部が形成された第1のラックバーを支持する第1支持部と、第2歯部が形成された第2のラックバーをその軸心線を前記第1のラックバーの軸心線と一致させて支持する第2支持部と、前記第1支持部に対し、前記第2支持部を近接させるテーブル機構と、前記第1支持部に対し、前記第2支持部を前記軸心線廻りに相対的に回動させる回転駆動部とを備えている。
【0008】
第1歯部が形成された第1のラックバーを支持し、第2歯部が形成された第2のラックバーをその軸心線を前記第1のラックバーの軸心線と一致させて支持し、前記第1のラックバーの端部と前記第2のラックバーの端部とを圧接させ、前記第1のラックバーに対し、前記第2のラックバーを前記軸心線廻りに相対的に回動させる。
【0009】
第1歯部が形成された第1のラックバーを支持し、第2歯部が形成された第2のラックバーをその軸心線を前記第1のラックバーの軸心線と一致させて支持し、前記第1のラックバーに対し、前記第2のラックバーを前記軸心線廻りに相対的に回動させ、前記第1のラックバーの端部と前記第2のラックバーの端部とを圧接させ、前記第2のラックバーの回転を停止し、前記第2のラックバーの支持を解除する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、2箇所のラック歯部の形成のために特殊な加工装置を用いることなく、2箇所の歯部を有するラックバーを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係るダブルピニオンラック製造装置によって製造されたダブルピニオンラックバーが組み込まれたラック&ピニオン装置を示す説明図。
【図2】同ダブルピニオンラックバーを示す平面図。
【図3】同ダブルピニオンラック製造装置の概要を示す説明図。
【図4】同ダブルピニオンラック製造装置によるダブルピニオンラック製造工程を示す説明図。
【図5】同ダブルピニオンラック製造工程を示す説明図。
【図6】同ダブルピニオンラック製造工程を示す説明図。
【図7】同ダブルピニオンラック製造工程を示す説明図。
【図8】同ダブルピニオンラック製造工程を示す説明図。
【図9】同ダブルピニオンラック製造工程を示す説明図。
【図10】同ダブルピニオンラック製造工程を示す説明図。
【図11】同ダブルピニオンラック製造工程を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態に係るダブルピニオンラック製造装置(ラック製造装置)100によって製造されたダブルピニオンラックバー12が組み込まれたラック&ピニオン装置を示す説明図、図2はダブルピニオンラックバー12を示す平面図、図3はダブルピニオンラック製造装置100の概要を示す説明図である。
【0013】
ラック&ピニオン装置10は、車両の左右方向に延設された略円筒状のラックハウジング11を有し、そのラックハウジング11内にダブルピニオンラックバー12が左右軸方向に摺動自在に収容されている。
【0014】
ラックハウジング11の両端開口から突出したダブルピニオンラックバー12の両端部にそれぞれジョイントを介してタイロッド13,13が連結され、ジョイント部を覆うブーツ14,14からタイロッド13,13が側方に突出しており、ダブルピニオンラックバー12の移動によりタイロッド13,13が動かされ、さらに転舵機構を介して車両の転舵輪が転舵される。
【0015】
ラックハウジング11の右端部にステアリングギヤボックス20が設けられている。ステアリングギヤボックス20には、ステアリングホイールが一体的に取り付けられたステアリング軸にジョイントを介して連結される入力軸21が軸受を介して回動自在に軸支されている。入力軸21には操舵ピニオン(不図示)が形成されている。
【0016】
この操舵ピニオンがダブルピニオンラックバー12のラック歯12aと噛合している。したがってステアリングホイールの回動操作により入力軸21に伝達された操舵力は操舵ピニオンを回動して操舵ピニオンのはす歯とラック歯12aの噛合によりダブルピニオンラックバー12を左右軸方向に摺動させる。
【0017】
ラックハウジング11の左端部には、補助ギヤボックス30が形成されている。補助ギヤボックス30は、ラックハウジング11に対して若干傾いて上下方向にピニオン円筒部31が形成されるとともに上下方向に直交するようにラックガイド円筒部32が形成されている。
【0018】
ピニオン円筒部31の内部にダブルピニオンラックバー12のラック歯12bに噛合して補助ピニオン(不図示)が収容されている。補助ギアボックス30には、モータ33が取り付けられ、モータ33の駆動軸が補助ピニオンを一体に回動し、補助ピニオンのはす歯がラック歯12bと噛み合うダブルピニオンラックバー12を左右軸方向に摺動するように作用する。
【0019】
モータ33は、入力軸21により検出したステアリングホイールの操舵トルクに応じて制御され、人力による操舵力が操舵ピニオンを介してダブルピニオンラックバー12に伝達される一方で、その操舵トルクに応じて制御されるモータ33による駆動力が補助ピニオンを介して同じダブルピニオンラックバー12に作用し、人力を補助して転舵が行われる。
【0020】
図2はダブルピニオンラックバー12を示す平面図である。ダブルピニオンラックバー12は、第1歯部12aと第2歯部12bを備えており、それぞれ軸心線廻りの角度位置(位相)が0〜45°程度ずれている
また、ダブルピニオンラックバー12は、第1歯部12aを有する第1のラックバー12Aと第2歯部12bを有する第2のラックバー12Bとを接合して形成されている。なお、図2中12Cは接合部を示している。
【0021】
ダブルピニオンラック製造装置100は、図3に模式的に示すように、床面等に固定され、クランプ機構(第1支持部)110と、テーブル機構120に載置された回転駆動部130と、この回転駆動部130に取り付けられたチャック機構(第2支持部)140とを備えている。なお、クランプ機構110とチャック機構140とは、それぞれ第1のラックバー12Aの軸心線C1と第2のラックバー12Bの軸心線C2とを一致させて支持する。
【0022】
クランプ機構110は、第1歯部12aが形成された第1のラックバー12Aを着脱自在に支持する機能を有している。
【0023】
テーブル機構120は、回転駆動部130を図3中矢印H方向に往復動させる機能を有している。回転駆動部130は、クランプ機構110に対し、チャック機構140を軸心線廻りに相対的に回動させる機能を有している。
【0024】
このように構成されたダブルピニオンラック製造装置100では、次のようにしてダブルピニオンラックバー12を製造する。すなわち、図3に示すように、チャック機構140により、第2のラックバー12Bを支持する。次に、図4に示すように、クランプ機構110により、第1のラックバー12Aを支持する。これにより、第1のラックバー12Aの軸心線C1と第2のラックバー12Bの軸心線C2とが一致する。
【0025】
次に、図5に示すように、回転駆動部130を作動させ、第2のラックバー12Bを軸心線廻りに回転させ、第1のラックバーの軸心線廻りに対し相対的に回動させる。そして図5中矢印H1方向に前進させる。
【0026】
次に、図6に示すように、テーブル機構120を図6中矢印H1方向に第2のラックバー12Bを第1のラックバー12A側にゆっくりと前進させ(遅送り)、図7に示すように突き当てる。これにより、摩擦熱が発生し、金属組織に変化が生じ、さらに圧力が加わることで第1のラックバー12Aと第2のラックバー12Bとが接合される。
【0027】
さらに、図8に示すように、回転駆動部130の駆動を急停止する。このとき、第1のラックバー12Aと第2のラックバー12Bとの軸心線廻りの位相差は所定の位相差とする。なお、位相決めの精度は±0.1°程度であり、実用的には問題は生じない。
【0028】
次に、図9に示すように、チャック機構140による第2のラックバー12Bの支持を解除し、図10に示すように、テーブル機構120を図9中矢印H2方向に後進させる。図11に示すように、定位置に戻った時点でテーブル機構120の動作を停止するとともに、クランプ機構110による第1のラックバー12Aの支持を解除する。
【0029】
このようなダブルピニオンラック製造装置100では、ラック歯部相互におけるラックバーの軸周りの角度位置(位相)が45°以上ずれている場合であっても、特別なプレス加工装置を用いることなく、所定の位相差で接合することができる。また、マンドレルを用いた鍛造加工機で形成したラック歯部を有する場合であっても接合が可能となった。
【0030】
接合部12Cは、摩擦熱と圧力により強固に接合されることで、第1のラックバー12Aや第2のラックバー12Bの母材よりも機械的強度を高めることが可能となり、接合部12Cを起点とした亀裂が発生することはない。
【0031】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した例では、第1のラックバーを固定し、第2のラックバーを回転させたが、両方のラックバーを回転させてもよい。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
10…ラック&ピニオン装置、12…ダブルピニオンラックバー、12a…第1歯部、12b…第2歯部、12A…第1のラックバー、12B…第2のラックバー、12C…接合部、100…ダブルピニオンラック製造装置(ラック製造装置)、110…クランプ機構(第1支持部)、120…テーブル機構、130…回転駆動部、140…チャック機構(第2支持部)、C…接合部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1歯部が形成された第1のラックバーを支持する第1支持部と、
第2歯部が形成された第2のラックバーをその軸心線を前記第1のラックバーの軸心線と一致させて支持する第2支持部と、
前記第1支持部に対し、前記第2支持部を近接させるテーブル機構と、
前記第1支持部に対し、前記第2支持部を前記軸心線廻りに相対的に回動させる回転駆動部とを備えていることを特徴とするラック製造装置。
【請求項2】
第1歯部が形成された第1のラックバーを支持し、
第2歯部が形成された第2のラックバーをその軸心線を前記第1のラックバーの軸心線と一致させて支持し、
前記第1のラックバーの端部と前記第2のラックバーの端部とを圧接させ、
前記第1のラックバーに対し、前記第2のラックバーを前記軸心線廻りに相対的に回動させることを特徴とするラック製造方法。
【請求項3】
第1歯部が形成された第1のラックバーを支持し、
第2歯部が形成された第2のラックバーをその軸心線を前記第1のラックバーの軸心線と一致させて支持し、
前記第1のラックバーに対し、前記第2のラックバーを前記軸心線廻りに相対的に回動させ、
前記第1のラックバーの端部と前記第2のラックバーの端部とを圧接させ、
前記第2のラックバーの回転を停止し、
前記第2のラックバーの支持を解除することを特徴とするラック製造方法。
【請求項1】
第1歯部が形成された第1のラックバーを支持する第1支持部と、
第2歯部が形成された第2のラックバーをその軸心線を前記第1のラックバーの軸心線と一致させて支持する第2支持部と、
前記第1支持部に対し、前記第2支持部を近接させるテーブル機構と、
前記第1支持部に対し、前記第2支持部を前記軸心線廻りに相対的に回動させる回転駆動部とを備えていることを特徴とするラック製造装置。
【請求項2】
第1歯部が形成された第1のラックバーを支持し、
第2歯部が形成された第2のラックバーをその軸心線を前記第1のラックバーの軸心線と一致させて支持し、
前記第1のラックバーの端部と前記第2のラックバーの端部とを圧接させ、
前記第1のラックバーに対し、前記第2のラックバーを前記軸心線廻りに相対的に回動させることを特徴とするラック製造方法。
【請求項3】
第1歯部が形成された第1のラックバーを支持し、
第2歯部が形成された第2のラックバーをその軸心線を前記第1のラックバーの軸心線と一致させて支持し、
前記第1のラックバーに対し、前記第2のラックバーを前記軸心線廻りに相対的に回動させ、
前記第1のラックバーの端部と前記第2のラックバーの端部とを圧接させ、
前記第2のラックバーの回転を停止し、
前記第2のラックバーの支持を解除することを特徴とするラック製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−13904(P2013−13904A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146324(P2011−146324)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(390029089)高周波熱錬株式会社 (288)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(390029089)高周波熱錬株式会社 (288)
【Fターム(参考)】
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