説明

ラック設備

【課題】ラック設備の棚板の高さを簡単容易に変更できるようにする。
【解決手段】棚板支持枠8a,8bに対し高さ変更自在に支持される棚板7b〜7nを備えたラック設備であって、当該棚板7b〜7nには、前記棚板支持枠8a,8b側に高さ方向適当間隔おきに設けられた被係止部(被係止孔18)に対して係脱自在な係止部材16a〜17bが左右両側辺に設けられると共に、この係止部材16a〜17bを係脱運動させるための操作手段22が設けられた構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棚板の高さを変更できるラック設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
棚板の荷支持面を棚板前後方向のローラーレールで構成し、当該棚板の前端側が低くなるように棚板支持枠に棚板を架設し、棚板の後端(傾斜上端)側に移載した荷が棚板の前端(傾斜下端)側へローラーレール上を流動して、棚板の傾斜下端側から傾斜上端側へ荷が順次連なって支持されるようにし、棚板の前端側から荷を順番に取り出せるようにしたラック設備、一般に流動棚と称されるラック設備が知られている。例えばこのような流動棚と称されるラック設備においては、傾斜棚板は取り扱う荷の高さに応じて上下複数段に架設され、各段の傾斜棚板上に荷を支持させることになるが、取り扱う荷の高さ条件が変わった場合、傾斜棚板間の荷収納空間の高さを変えるために傾斜棚板の架設高さを変えなければならない場合がある。而して、従来のこの種のラック設備では、棚板支持枠の支柱部材に傾斜棚板を取り付けるための被係止孔が当該支柱部材の高さ方向(長さ方向)に適当間隔おきに設けられ、傾斜棚板は、その側辺を前記支柱部材の被係止孔に直接又は受け部材(特許文献1のブラケット)を介してボルトナットで取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−191115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなボルトナットで傾斜棚板の側辺を支柱部材に取り付ける構造では、傾斜棚板の高さを変える場合、その傾斜棚板を前後から二人で支えた状態で別の作業者がボルトナットを外して一旦傾斜棚板と支柱部材との結合を解き、この後、傾斜棚板を目的の高さに変えた状態で当該傾斜棚板の側辺を棚板支持枠の支柱部材に直接又は受け部材を介してボルトナットで改めて取り付ける必要があり、その作業には多大の手間(人手)と時間を要していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消するために成されたものであって、請求項1に記載の本発明では、実施形態の参照符号を括弧付きで付して示すと、棚板支持枠(8a,8b)に対し高さ変更自在に支持される棚板(7b〜7n)を備えたラック設備であって、当該棚板(7b〜7n)には、前記棚板支持枠(8a,8b)側に高さ方向適当間隔おきに設けられた被係止部(被係止孔(18))に対して係脱自在な係止部材(16a〜17b)が左右両側辺に設けられると共に、この係止部材(16a〜17b)を係脱運動させるための操作手段(22)が設けられた構成となっている。
【0006】
尚、上記本発明を実施する場合、具体的には請求項2に記載のように、前記係止部材(16a〜17b)は、棚板(7b〜7n)の左右両側辺の前後2箇所にそれぞれ左右水平方向に出退移動自在に設けると共に突出方向にスプリング(20)により付勢し、棚板支持枠(8a,8b)側の前記被係止部は、前記係止部材(16a〜17b)が突出状態において嵌合する被係止孔(18)で構成し、前記操作手段(22)には、棚板(7b〜7n)の前後両側辺近傍位置にそれぞれ取り付けられた操作レバー(23a,23b,38)を設け、各操作レバー(23a,23b,38)は、棚板(7b〜7n)の前後両側辺それぞれを支持する両手で操作し得る位置に配置すると共に、前後同一側にある左右一対の前記係止部材(16a〜17b)と連動連結し、各操作レバー(23a,23b,38)の操作により前後同一側にある左右一対の前記係止部材(16a〜17b)がスプリング(20)の付勢力に抗して後退移動して棚板支持枠(8a,8b)側の前記被係止孔(18)から退出するように構成することができる。
【0007】
この場合、請求項3に記載のように、前記操作手段(22)の操作レバー(23a,23b,38)は、棚板の前後両側辺それぞれを両手で支持するときに当該手で同時に操作し得る長さのそれぞれ一つの操作レバーとし、これら前後一対の操作レバー(23a,23b,38)を棚板(7b〜7n)の裏面側で当該棚板(7b〜7n)の前後両側辺の枠材(10a,10b)の内側に前後移動自在に支持すると共に、スプリング(29,40)により当該棚板(7b〜7n)の前後両側辺の枠材(10a,10b)から内側へ離れる方向に付勢し、これら前後一対の操作レバー(23a,23b,38)と前後同一側にある左右一対の前記係止部材(16a〜17b)とを、索状体(30a,30b,34a,34b)又はリンク(41a〜42b)により連動連結することができる。
【0008】
又、請求項4に記載のように、前記各係止部材(16a〜17b)には、先端に下向きに延出する係止部(48)を設け、棚板支持枠(8a,8b)側の前記被係止孔(18)は上下方向に長い長孔として、棚板(7b〜7n)を持ち上げたときのみ各係止部材(16a〜17b)を退出させることができるように構成することができる。
【0009】
尚、前記棚板(7b〜7n)が、周囲枠(12)を構成する前後両側辺の枠材(10a,10b)間に架設されたローラーレール(13)で荷を支持するもので、棚板支持枠(8a,8b)に、前端側が低くなるように傾斜する状態で架設されるラック設備である場合は、請求項5に記載のように、前記係止部材(16a〜17b)及び操作手段(22)は、前記ローラーレール(13)より下側で且つ周囲枠(12)の底面より上側の領域内に配設するのが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の本発明のラック設備によれば、棚板は、係止部材が棚板支持枠側の被係止部と係合することにより、所定高さに支持されるものであって、この棚板の高さを変えるときは、当該棚板の例えば前後2箇所を作業者の手などで支えた状態で操作手段を操作して前記係止部材を前記被係止部から離脱させることにより当該棚板を上下移動可能な状態にし、この状態で棚板を上下移動させて目的の高さに移動させたならば、前記操作手段を操作し、前記係止部材を新たに対応する前記被係止部に係合させる。これで棚板の高さ変更が完了するのであるから、棚板の高さ変更作業は非常に簡単容易且つ迅速に行なえる。
【0011】
尚、前記係止部材は棚板の少なくとも左右両側辺の前後2箇所に配設し、操作手段は、各係止部材を各別に係脱操作する4つの操作具で構成することもできるし、各係止部材に連動連結された1つの操作具で構成することもできるが、請求項2に記載の構成によれば、棚板の前後両側辺近傍位置にそれぞれ取り付けられた操作レバーは、当該棚板の前後両側辺それぞれを支持する両手で操作することができるので、片手で棚板を支持し、遊んでいる側の片手で操作レバーを操作しなければならない場合と比較して安全に係止部材の出退操作が行なえる。しかも、操作レバーにより係止部材を付勢力に抗して退入させた後、当該操作レバーを弛めるだけで係止部材を付勢力で突出移動させて支柱部材側の被係止孔に嵌合させることができ、この点でも操作性が改善される。
【0012】
上記請求項2に記載の構成を実施する場合、棚板の前側辺側に配設される操作レバーと棚板の後側辺側に配設される操作レバーのそれぞれを左右2つに分割して、これら4つの操作レバーと、これら4つの操作レバーそれぞれの近い位置にある各係止部材とを連動連結しても良いが、請求項3に記載の構成によれば、左右横方向に長い前後2つの操作レバーと、これら両操作レバーと各係止部材とを連動連結する索状体又はリンクだけで操作手段を構成できるので、操作性が良いものでありながら全体の構造が簡単になり、安価に実施することができる。しかも、前後2つの操作レバーは、棚板の裏面側で当該棚板の前後両側辺の枠材の内側に前後移動自在に支持されているので、棚板の前後両側辺を支える両手の指先で手前に引き寄せるようにして操作することができ、棚板を支えた状態での操作レバーの操作が非常に行い易い。
【0013】
又、請求項4に記載の構成によれば、棚板を持ち上げない限り、操作手段で各係止部材を支柱部材側の被係止孔から退出させることができないので、誤って操作手段を操作したために、或いは他物が何らかの原因で操作手段に衝突したために、若しくは棚板を支えていない状態で操作手段を操作したために、全部の係止部材が退入して棚板が外れて落下したり、一部の係止部材が退入して棚板が傾いたりするような危険な事態を招く恐れがなくなり、安全性が高められる。
【0014】
更に、本発明を流動棚と称されるラック設備に適用する場合、請求項5に記載の構成によれば、棚板の底面側に係止部材や操作手段が突出しないので、直下の棚板上を流動する荷が棚板の底面側に突出する係止部材や操作手段などと干渉する恐れがなく、直下の棚板との間の荷収納空間を必要最小限に狭めて、ラック設備全体としての収納効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1はラック設備全体の概略側面図である。
【図2】図2は同上ラック設備の入庫用クレーンと片側のラックとを示す正面図である。
【図3】図3Aはラックの1つの棚板を示す一部切欠き横断平面図、図3Bは支柱部材と棚板との係止部の1つを示す要部横断平面図である。
【図4】図4はラックの手前の支柱部材を省いた状態での1つの棚板を示す側面図である。
【図5】図5Aは操作手段の要部を示す縦断側面図、図5Bは、同操作手段の操作レバーの支持部を示す縦断側面図である。
【図6】図6は操作手段の変形例を示す要部の縦断側面図である。
【図7】図7Aは操作手段の他の実施形態を示す一部切欠き平面図、図7Bはその一部分の拡大一部横断平面図である。
【図8】図8は係止部材の他の実施形態を示す要部の一部縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び図2に基づいて、流動棚と称されるラック設備の全体を説明すると、1は入庫用クレーンであって、この入庫用クレーン1の走行通路2を挟むように2列にラック3が配設されている。入庫用クレーン1は、床側レール4と天井側レール5とに案内されて走行通路2内を自走できるもので、ラック3に対して荷を入庫するための駆動コンベヤ(ローラーコンベヤなど)6aが搭載された昇降キャレッジ6を備えている。各ラック3は、一般に流動棚と称されるもので、上下複数段(図示例は4段)の棚板7a〜7nと、これら棚板7a〜7nを支持する左右一対の棚板支持枠8a,8bとから構成され、各棚板7a〜7nは、入庫用クレーン1の走行通路2に隣接する後側辺が高く、反対側の前側辺が低くなるように傾斜する状態で棚板支持枠8a,8bに取り付けられている。棚板支持枠8a,8bは、垂直に起立する前後2本の支柱部材9a,9bを斜め連結部材9cにより連結一体化したものである。
【0017】
棚板7a〜7nの内、少なくとも最下段の棚板7aを除く全ての棚板7b〜7nは、その左右両側辺が棚板支持枠8a,8bの前後2本の支柱部材9a,9bに、以下に説明する取り付け構造により高さ変更自在に取り付けられている。尚、最下段の棚板7aは、高さ変更が実質的に不要であるから、ラック3全体の強度を確保するため、その左右両側辺を棚板支持枠8a,8bの前後2本の支柱部材9a,9bにボルトナットなどにより強固に固着することができる。
【0018】
図3及び図4に示すように、棚板7a〜7nは、前後両側枠材10a,10bと左右両側枠材11a,11bとで矩形枠状に組んだ周囲枠12と、前後両側枠材10a,10b間に架設したローラーレール13とから構成されている。棚板7a〜7nは、その左右幅方向が複数列の荷流動支持部14a〜14dに分割されており、ローラーレール13は、各列の荷流動支持部14a〜14dに2本ずつ並列架設されている。図3では、4列の荷流動支持部14a〜14dを備えた棚板を例示しているが、図1及び図2に示すように、支持する荷のサイズに応じて、荷流動支持部の列数は変えられる。又、各棚板7a〜7nの前側枠材10a上には、荷が滑り落ちるのを防止する荷受け止め部材15が全幅にわたって付設されている。尚、図示省略しているが、各列の荷流動支持部14a〜14d間には、ローラーレール13上を傾斜下方に流動する荷の位置が左右横方向にずれるのを防止する仕切りガイド部材を配設することができる。
【0019】
高さ変更自在に架設する棚板7b〜7nには、その左右両側枠材11a,11bの、棚板支持枠8a,8bの前後2本の支柱部材9a,9bに隣接する前後2箇所に、左右水平方向に出退移動自在な軸状の係止部材16a〜17bが取り付けられ、支柱部材9a,9bには、各係止部材16a〜17bが抜き差し自在に嵌合する被係止孔18が、これら支柱部材9a,9bの高さ方向(長さ方向)に等間隔おきに設けられている。各係止部材16a〜17bは、図3Bに示すように、左右両側枠材11a,11bの内側に取り付けられたスプリングボックス19内の圧縮コイルスプリング20によって、左右両側枠材11a,11bの外側に所定長さ突出する突出状態に付勢保持されている。21は、各係止部材16a〜17bに取り付けられたスプリング受け座である。
【0020】
又、高さ変更自在に架設する棚板7b〜7nには、図3Aに示すように、各係止部材16a〜17bを操作する操作手段22が設けられている。この操作手段22は、棚板7b〜7nの前後両側枠材10a,10bの内側に配設された操作レバー23a,23bと、前側の操作レバー23aと前側左右一対の係止部材16a,17aとを連動連結する連動手段24と、後側の操作レバー23bと後側左右一対の係止部材16b,17bとを連動連結する連動手段25とから構成されている。
【0021】
各操作レバー23a,23bは、図3Aに示すように、棚板7b〜7nの前後両側辺(前後両側枠材10a,10b)を両手で持ち上げるように支えたときの各手の位置に対応する左右2箇所の操作部26を両端近傍に有する、左右水平方向に長い長尺のもので、当該操作部26を避けて両端と中間2箇所とがそれぞれ支持手段27により棚板7b〜7nの前後両側枠材10a,10bの内側に取り付けられている。各支持手段27は、図5Bに示すように、前後両側枠材10a,10bに一端が固着され且つ他端に頭部28aを備えた前後水平方向の支軸28と、当該支軸28に遊嵌された圧縮コイルスプリング29とから構成されたもので、操作レバー23a,23bは、各支持手段27の支軸28に、当該支軸28の範囲内で前後水平方向に移動自在に支持されると共に、前記圧縮コイルスプリング29により支軸頭部28aに当接する後退限位置に付勢保持されている。尚、中間2箇所の支持手段27は、1箇所でも良いし、場合によっては省くこともできる。
【0022】
連動手段24は、前側左右一対の係止部材16a,17aと前側枠材10aとの間の前後方向の間隔が狭い状況に適合するように構成されたもので、前側左右一対の係止部材16a,17aの内端に一端が連結され且つ他端が前側の操作レバー23aの中央付近に連結された2本の索状体(ワイヤーロープやチエンなど)30a,30bと、前側枠材10aの中央部に固着されて周囲枠12の底面に沿って後方に延出する支持板31と、この支持板31上に垂直支軸で回転自在に軸支された4つの索状体案内輪体32a,32b及び33a,33bから構成され、索状体30a,30bは、各係止部材16a,17aと索状体案内輪体32a,33aとの間で前側枠材10aと平行に掛張され、この索状体案内輪体32a,33aと操作レバー23a側の端部との間の部分が後方(後側枠材10bのある側)に迂回するように索状体案内輪体32b,33bに掛張されている。他方の連動手段25は、後側左右一対の係止部材16b,17bと後側枠材10bとの間の前後方向の間隔が広い状況に適合するように構成されたもので、後側左右一対の係止部材16b,17bの内端に一端が連結され且つ他端が後ろ側の操作レバー23bの中央付近に連結された2本の索状体(ワイヤーロープやチエンなど)34a,34bと、後側枠材10bの中央部に固着されて周囲枠12の底面に沿って前方に延出する支持板35と、この支持板35上に垂直支軸で回転自在に軸支された2つの索状体案内輪体36a,36bから構成され、各係止部材16b,17bから後側枠材10bと平行に掛張された索状体34a,34bが索状体案内輪体36a,36aによって直角に転向されて後側の操作レバー23bの中央付近に連結されている。
【0023】
尚、図5A及び図5Bに示すように、各棚板7a〜7nは、その周囲枠12の高さ(各前後両側枠材10a,10b及び左右両側枠材11a,11bの高さ)がローラーレール13の高さより十分高く、ローラーレール13は、そのローラーが周囲枠12の上面付近に位置するように架設されているので、周囲枠12の底面とローラーレール13の底面との間には空間が存在している。この空間内に、係止部材16a〜17b、操作手段22の各操作レバー23a,23b、及び連動手段24,25が収納されるように構成され、棚板7a〜7nの底面(周囲枠12の底面)から下方に突出するものはない。
【0024】
以上のように構成されたラック設備において、ラック3に収納される荷は、入庫用クレーン1の昇降キャレッジ6上の駆動コンベヤ6a上に載置される。そして、当該入庫用クレーン1の走行と昇降キャレッジ6の昇降運動とにより、ラック3の棚板7a〜7nの内、入庫対象レベルの棚板で且つ複数列の荷流動支持部14a〜14dの内の入庫対象の荷流動支持部の傾斜上端部に駆動コンベヤ6aが接続される。係る状態で、入庫対象のラック3のある側へ荷を搬送する向きに駆動コンベヤ6aが駆動され、荷が入庫対象高さの棚板7a〜7n上で入庫対象の荷流動支持部14a〜14dの傾斜上端部上に送り出される。而して当該荷は、荷流動支持部14a〜14dを構成する2列のローラーレール13上を重力で傾斜下方に流動し、傾斜下端の荷受け止め部材15又は既に当該荷流動支持部14a〜14d上に支持されている荷の後側に当接して停止するので、各棚板7a〜7nの荷流動支持部14a〜14d上には、傾斜下端から上方に荷が連なって支持されることになる。
【0025】
荷の取り出しは、ラック3の正面側、即ち、入庫用クレーン1の走行通路2のある側とは反対側で、各段の棚板7a〜7nの荷流動支持部14a〜14d上から、傾斜下端に位置する荷から順番にピックアップすることにより行なわれる。
【0026】
上記のように使用されるラック設備において、棚板7b〜7nの高さを変えて、上下の棚板間の間隔、即ち、荷収納空間の高さを変える必要が生じたとき、例えば図1の左側のラック3で示すように、中段の2つの棚板7b,7c間の荷収納空間を無くして、棚板7c上の荷収納空間の高さを広くしたいような場合、以下のように棚板7b,7cの高さを変えることができる。この場合、一旦棚板7bを下げ、この棚板7bのあった高さ付近まで棚板7cを下げ、この下げられた棚板7cの直下まで棚板7bを上げることにより、棚板7c上の荷収納空間の高さが広げられる。
【0027】
例えば上記のように棚板7b/7cの高さを変えたい場合、この棚板7b/7cの前後両側に立った作業者が当該棚板7b/7cの前後両側辺(前後両側枠材10a,10b)をそれぞれ両手で支えた状態で、各作業者の両手の指先で操作レバー23a,23bの操作部26を手前に引き寄せるように操作し、両操作レバー23a,23bを支持手段27の圧縮コイルスプリング29の付勢力に抗して前後両側枠材10a,10bに接近移動させる。この結果、連動手段24の索状体30a,30b及び連動手段25の索状体34a,34bが引っ張られ、全ての係止部材16a〜17bがそれぞれ圧縮コイルスプリング20の付勢力に抗して、棚板支持枠8a,8bの各支柱部材9a,9bの被係止孔18から引き抜かれる。このようにして棚板支持枠8a,8bから棚板7b/7cを切り離したならば、当該棚板7b/7cの前後両側辺を両手で支持している作業者により、両操作レバー23a,23bを前後両側枠材10a,10b側に引き寄せた状態のままで当該棚板7b/7cを目的のレベルまで垂直に昇降移動させる。
【0028】
棚板7b/7cを目的のレベルまで昇降移動させたならば、その左右両側辺の前後2箇所の係止部材16a〜17bが支柱部材9a,9b側の被係止孔18に対向する状態で、両操作レバー23a,23bから指先を離して開放させると、当該操作レバー23a,23b及び各係止部材16a〜17bがそれぞれ圧縮コイルスプリング20,29の付勢力により復帰移動し、棚板7b/7cの左右両側枠材11a,11bから突出移動する各係止部材16a〜17bが支柱部材9a,9b側の被係止孔18に嵌合するので、棚板7b/7cの前後両側辺から手を離して、棚板7b/7cの高さ変更作業が完了する。
【0029】
尚、操作手段22として、前後水平方向に直線的に移動する操作レバー23a,23bを利用したが、図6に示すように、上側辺を左右水平支軸37の周りで前後揺動自在に軸支した操作レバー38を操作レバー23a,23bに代えて利用することもできる。この場合、操作レバー38の支軸37で支承される部分38aのみを、操作部26を含む左右水平方向に長い帯状のレバー本体部分38bから上方に突出させ、この上方突出部分38aを、ローラーレール13間の周囲枠12の上面近傍位置で支軸37により軸支するように構成すれば、周囲枠12の高さを抑えながら操作レバー38の揺動半径を大きくすることができる。尚、39は操作レバー38を支軸37で軸支する軸受部材であり、40は操作レバー38を前後両側枠材10a,10bから離れる方向に付勢するスプリングである。
【0030】
図7は、操作レバー23a,23bと係止部材16a〜17bとを連動連結する連動手段24,25の別実施形態を示している。この連動手段24,25では、操作レバー23a,23bの両端部と当該操作レバー23a,23bの両端部に近い位置にある係止部材16a〜17bとが、それぞれL形リンク41a,41b及び42a,42bによって連動連結されている。この図示例での各L形リンク41a〜42bは、その折曲部が垂直支軸43によって棚板周囲枠12の前後両側枠材10a,10bの内側に軸支され、操作レバー23a,23b側のリンク端部44は、操作レバー23a,23bの端部の内側に嵌合して当該操作レバー23a,23bの内面に当接し、係止部材16a〜17b側のリンク端部45は、このリンク端部45側の長孔46と係止部材16a〜17b側の垂直ピン47とを介して連動連結されている。尚、両操作レバー23a,23bの操作ストロークは同一であり、各係止部材16a〜17bの出退ストロークも同一であるから、各操作レバー23a,23bと前後同一側にある係止部材16a〜17bとの間の前後方向の距離に応じてL形リンク41a,41b及び42a,42bのリンク長を変え、各操作レバー23a,23bを前後両側枠材10a,10b側に引き寄せたとき、各係止部材16a〜17bが棚板周囲枠12の左右両側枠材11a,11b側に所要距離だけ退入するように構成している。尚、各係止部材16a〜17bと各L形リンク41a〜42bとを直接連動連結しているが、必要に応じて両者間に別のリンクを介在させることもできる。
【0031】
各係止部材16a〜17bの先端部、即ち、棚板支持枠8a,8bの支柱部材9a,9bに設けられる被係止孔18に嵌合する部分は、丸軸状であっても良いが、図8に示すように、先端から下向きに突出する係止部48が連設された側面視倒立L形とし、中空構造の支柱部材9a,9bに設けられる被係止孔18は、前記係止部48を含む係止部材16a〜17bの先端部が左右水平方向に出退移動できるように上下方向に長い長孔とすることができる。この場合は、係止部材16a〜17bの先端係止部48が長孔状の被係止孔18の下側で中空構造の支柱部材9a,9bの内側に入り込んでいるので、そのままでは操作手段22を操作しても各係止部材16a〜17bを被係止孔18から退出させることができない。従って、棚板7b〜7nの高さを変えるときは、係止部材16a〜17bの先端部が長孔状の被係止孔18の上端に当接する高さまで棚板7b〜7nを持ち上げた状態で、操作手段22を操作することになる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の構成は、実施形態で示した入庫用クレーン1を備えた流動棚設備の他、入庫作業も手作業で行う(入庫用クレーン1を備えない)流動棚設備や、水平に棚板が架設される一般的なラック設備にも適用できるものである。
【符号の説明】
【0033】
1 入庫用クレーン
3 ラック
6 昇降キャレッジ
6a 駆動コンベヤ
7a〜7n 棚板
8a,8b 棚板支持枠
9a,9b 支柱部材
10a,10b 前後両側枠材
11a,11b 左右両側枠材
12 周囲枠
13 ローラーレール
14a〜14d 荷流動支持部
16a〜17b 係止部材
18 被係止孔
20,29,40 スプリング
22 操作手段
23a,23b,38 操作レバー
24,25 連動手段
26 操作部
28,37,43 支軸
30a,30b,34a,34b 索状体
32a〜33b,36a,36b 索状体案内輪体
41a〜42b L形リンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棚板支持枠に対し高さ変更自在に支持される棚板を備えたラック設備であって、当該棚板には、前記棚板支持枠側に高さ方向適当間隔おきに設けられた被係止部に対して係脱自在な係止部材が左右両側辺に設けられると共に、この係止部材を係脱運動させるための操作手段が設けられている、ラック設備。
【請求項2】
前記係止部材は、棚板の左右両側辺の前後2箇所にそれぞれ左右水平方向に出退移動自在に設けられると共に突出方向にスプリングにより付勢され、棚板支持枠側の前記被係止部は、前記係止部材が突出状態において嵌合する被係止孔で構成され、前記操作手段は、棚板の前後両側辺近傍位置にそれぞれ取り付けられた操作レバーを備え、各操作レバーは、棚板の前後両側辺それぞれを支持する両手で操作し得る位置に配置されると共に、前後同一側にある左右一対の前記係止部材と連動連結され、各操作レバーの操作により前後同一側にある左右一対の前記係止部材がスプリングの付勢力に抗して後退移動して棚板支持枠側の前記被係止孔から退出するように構成された、請求項1に記載のラック設備。
【請求項3】
前記操作手段の前後一対の操作レバーは、棚板の前後両側辺それぞれを両手で支持するときに当該手で同時に操作し得る長さのそれぞれ一つの操作レバーであって、棚板の裏面側で当該棚板の前後両側辺の枠材の内側に前後移動自在に支持されると共に、スプリングにより当該棚板の前後両側辺の枠材から内側へ離れる方向に付勢され、これら前後一対の操作レバーと前後同一側にある左右一対の前記係止部材とが、索状体又はリンクにより連動連結されている、請求項2に記載のラック設備。
【請求項4】
前記各係止部材は先端に下向きに延出する係止部を備え、棚板支持枠側の前記被係止孔は上下方向に長い長孔であって、棚板を持ち上げたときのみ各係止部材を退出させることができるように構成されている、請求項2又は3に記載のラック設備。
【請求項5】
前記棚板は、周囲枠を構成する前後両側辺の枠材間に架設されたローラーレールで荷を支持するもので、棚板支持枠に、前端側が低くなるように傾斜する状態で架設されるラック設備であって、前記係止部材及び操作手段は、前記ローラーレールより下側で且つ周囲枠の底面より上側の領域内に配設されている、請求項1〜4の何れか1項に記載のラック設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−173781(P2010−173781A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17814(P2009−17814)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】