説明

ラドン含有水製造方法及びラドン含有水製造装置

【課題】得られるラドン含有水におけるラドンの溶解度をより高めることのできるラドン含有水製造方法を提供する。
【解決手段】ラドンを含有するラドン含有ガスGを原料水Wに接触させ、前記ラドンを原料水W中へ溶解させることにより、原料水Wをラドン含有水Wとするラドン含有水製造方法において、原料水Wを冷却してその温度を凝固点付近に保つとともに、ラドン含有ガスGからなる気泡Gを原料水W中に発生させるようにした。気泡Gを微細化して、ラドン含有ガスGと原料水Wの接触面積を増大させるとより好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラドンを含有するラドン含有水を製造するためのラドン含有水製造方法と、このラドン含有水製造方法でラドン含有水を製造する際に好適に用いることができるラドン含有水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性物質であるラドンを微量(人体に悪影響を及ぼさない程度)に含有する温泉には、各種疾病の治癒を促進する効能があると考えられている。放射性物質を含有する温泉は、放射能泉と呼ばれており、我が国では、三朝温泉(鳥取県)や玉川温泉(秋田県)などが、海外では、ガシュタインヒーリング坑道(オーストリア・ザルツブルグ州)などが知られている。近年には、ラドンを人為的に原料水中に溶解させることにより、天然の放射能泉と同様の効能を奏するラドン含有水を人工的に製造する試みがなされるようになり、種々のラドン含有水製造方法やラドン含有水製造装置が提案されるようになってきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、抽出槽内に貯えられた温水中に、放射性物質を含有する鉱石を顆粒状にして浸漬することにより、放射性壊変生成物が溶解した温水を人工的に製造する方法が記載されている(第1図などを参照)。特許文献1には、抽出槽の上部に存在するガスを抽出槽の下部に圧送することにより、温水中に気泡を発生させることについても記載されている(請求項1などを参照)。この気泡により、顆粒状の放射性物質を微振動させることができるので、該放射性物質から温水中へ放射性壊変生成物が溶解しやすくなる。また、この気泡から温水中へ放射性壊変生成物を溶解させることも可能になる。
【0004】
しかし、特許文献1に記載された方法では、放射性物質を含有する鉱石をより寸法の小さな顆粒状として、放射性物質と温水の接触面積を増大させ、得られる温水における放射性壊変生成物の溶解度を高めようとすると、顆粒状の鉱石を支持させるフィルターの網目も小さくしなければならず、該網目を気泡が通過しにくくなるため、所望の溶解度の温水を得ることができなくなるおそれがあった。また、特許文献1に記載された方法は、放射性物質を含有する鉱石が温水に直接的に接触するようになっていたため、それにより得られた温水を飲用水などとして使用するには難があった。さらに、特許文献1に記載された方法は、ヒーターで温水を50〜100℃に加熱するものであり(明細書第3頁左欄上から22〜23行目を参照)、必ずしも、得られる温水における放射性壊変生成物の溶解度を高くできるものとはなっていなかった。
【0005】
ところで、特許文献2には、ラドンを含有するラドン含有ガスを溶媒に通し、該ラドン含有ガス中のラドンを溶媒中に溶解させて捕集するラドン捕集方法であって、前記溶媒を冷却するものが記載されている(段落0004を参照)。特許文献2には、前記溶媒を冷却することで溶媒へのラドンの溶解度が高まることについても記載されている(段落0005を参照)。しかし、特許文献2に記載されたラドン捕集方法は、前記溶媒として、シリコーンオイルを用いるものとなっており(段落0009などを参照)、飲用水や浴用水として使用することのできるラドン含有水を製造できるものとはなっていない。前記溶媒の冷却も、−77℃と非常に低い範囲で行うようになっている(段落0026などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平02−032300号公報(請求項1、明細書第3頁左欄上から22〜23行目、第1図)
【特許文献2】特開2002−265206号公報(段落0004、段落0005、段落0009、段落0026)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、得られるラドン含有水におけるラドンの溶解度をより高めることのできるラドン含有水製造方法と、このラドン含有水製造方法でラドン含有水を製造する際に好適に用いることのできるラドン含有水製造装置を提供するものである。また、飲用水や浴用水として好適に使用することのできるラドン含有水を得ることも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ラドンを含有するラドン含有ガスを原料水に接触させ、前記ラドンを原料水中へ溶解させることにより、原料水をラドン含有水とするラドン含有水製造方法であって、原料水を冷却してその温度を凝固点付近に保つとともに、ラドン含有ガスからなる気泡を原料水中に発生させることにより、得られるラドン含有水におけるラドンの溶解度を高めることができるようにしたことを特徴とするラドン含有水製造方法を提供することによって解決される。
【0009】
ところで、ラドン(Rn)は、狭義には、ラドン222のみを指し、その同位体であるラドン220やラドン219は、「トロン(Tn)」や「アクチノン(An)」など、別名で称される場合もある。しかし、本明細書における「ラドン」の概念には、特に断りのない限り、ラドン222だけでなく、ラドン220やラドン219などの同位体も含まれるものとする。ただし、それぞれの半減期は、ラドン222で約3.8日、ラドン220で約1分、ラドン219で約4秒と、ラドン222が他の同位体に比べて圧倒的に長い。このため、ラドン含有水によって奏される所望の効果を長時間維持するということを重視するならば、本発明のラドン含有水製造方法やラドン含有水製造装置において、原料水に溶解させるラドンとしては、ラドン222が最適ということになる。
【0010】
また、本発明のラドン含有水製造方法やラドン含有水製造装置において、「ラドン含有ガス」という語の概念には、乾燥状態のガスだけでなく、液体の微粒子が分散した湿潤状態(ミスト状)のガスをも含まれるものとする。さらに、「原料水を冷却してその温度を凝固点付近に保つ」とは、具体的に、原料水の凝固点をT[℃](原料水が純水である場合には1気圧でT=0[℃])とすると、ラドン含有ガスを接触させているときの原料水の温度をT[℃]以上かつT+10[℃]以下となる範囲に保つことをいう。
【0011】
気相にあるラドンは、既に述べた通り、原料水(溶媒)の温度が低ければ低いほど、原料水に対する溶解度が高まる。したがって、上記のように、原料水の温度を、それが凝固しない範囲でできるだけ低く保つことにより、得られるラドン含有水に含まれる放射能の量[Bq]を増大させることができるのである。ラドン含有ガスを接触させているときの原料水の温度は、T+5[℃]以下に保つと好ましく、T+3[℃]以下に保つとより好ましい。
【0012】
本発明のラドン含有水製造方法では、原料水を冷却するという上記の工夫以外にも、ラドン含有ガスを気泡状態で原料水と接触させるという工夫を施しているため、得られるラドン含有水におけるラドンの溶解度をさらに高めることも容易なものとなっている。例えば、原料水中に発生したラドン含有ガスからなる気泡を微細化することにより、ラドン含有ガスと原料水の接触面積を増大させ、ラドンの溶解度を高めることができる。
【0013】
この際、ラドン含有ガスからなる気泡をどの程度まで微細化するかは、得られるラドン含有水に要求されるラドンの溶解度などによっても異なり、特に限定されない。しかし、気泡が小さくなればなるほど、ラドン含有ガスと原料水との接触面積が大きくなり、ラドン含有ガスに含まれるラドンが原料水中に溶解しやすくなることを考慮すると、気泡は、その直径が5mm以下となるまで微細化すると好ましい。気泡の直径は、1mm以下であるとより好ましく、0.5mm以下であるとさらに好ましい。
【0014】
さらに気泡を微細化して、直径が数十μm以下の「マイクロバブル」と呼ばれる領域まで小さくすると、原料水中を漂う気泡の上昇速度(浮揚速度)が著しく低下して原料水中に気泡が長く滞留するようになり、ラドン含有水から放射される放射線の量がより長時間維持されるという効果が奏されるようになる。加えて、気泡の大きさに反比例してそれに加えられる圧力が高まっていき(この現象は、「微細気泡の自己加圧効果」として知られている。)、その圧力上昇に伴って気泡内のラドンが原料水中に溶解しやすくなるという効果も奏されるようになる。したがって、これらの効果を考慮するならば、気泡は、その直径が0.1mm(100μm)以下となるまで微細化すると好ましい。気泡の直径は、50μm以下であるとより好ましく、20μm以下であるとさらに好ましい。気泡の直径の下限は、特に限定されないが、通常、1μm以上とされる。
【0015】
気泡を微細化する方法は、特に限定されない。例えば、ラドン含有ガスからなる気泡に超音波を照射することにより、前記気泡を微細化する方法が挙げられる。このとき照射する超音波の周波数は、得られるラドン含有水の用途などによっても異なり、特に限定されない。しかし、気泡をより微細化してラドン含有水におけるラドンの溶解度をより高めるためには、超音波の周波数は高く設定した方が有利である。超音波の周波数は、通常、20kHz以上である。超音波の周波数は、500kHz以上であると好ましく、1MHz以上であるとより好ましく、2MHz以上であるとさらに好ましい。超音波は、連続的に照射してもよいが、同じ周波数であれば断続的に照射した方が、ラドンの溶解度が高くなることが確認できた。
【0016】
このほか、気泡を微細化する方法としては、ラドン含有ガスを原料水中に放出して気泡を発生させるためのラドン含有ガス放出ノズルを、微細気泡を発生させるのに適したもの(いわゆる「マイクロバブル発生ノズル」)とすることも好ましい。マイクロバブル発生ノズルとしては、その内部に原料水の渦流を発生させて該渦流にラドン含有ガスを巻き込ませることにより、微細化された気泡を得るせん断方式のものや、その内部で原料水の圧力を高めてラドン含有ガスを原料水中に一旦溶解させた後、原料水の圧力を再度低くすることにより、微細化された気泡を得る加圧溶解方式(加圧減圧方式)のものなどが例示される。
【0017】
ここまでは、本発明のラドン含有水製造方法について説明してきたが、上記課題は、本発明のラドン含有水製造装置を提供することによっても解決される。すなわち、ラドンを含有するラドン含有ガスを原料水に接触させ、前記ラドンを原料水中へ溶解させることにより、原料水をラドン含有水とするラドン含有水製造装置であって、(a)ラドン含有ガスを生成するためのラドン含有ガス生成源と、(b)原料水を貯留するための原料水貯留槽と、(c)ラドン含有ガス生成源で生成されたラドン含有ガスを原料水貯留槽へ移送するためのラドン含有ガス移送ポンプと、(d)原料水貯留槽へ移送されてきたラドン含有ガスを原料水中に放出して気泡を発生させるラドン含有ガス放出ノズルと、(e)原料水を冷却してその温度を凝固点付近に保つ原料水冷却手段と、を備えたことを特徴とするラドン含有水製造装置である。このラドン含有水製造装置は、上述した本発明のラドン含有水製造方法を実施するのに好適に用いることができるものとなっている。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によって、得られるラドン含有水におけるラドンの溶解度をより高めることのできるラドン含有水製造方法と、このラドン含有水製造方法でラドン含有水を製造する際に好適に用いることのできるラドン含有水製造装置を提供することが可能になる。また、飲用水や浴用水として好適に使用することのできるラドン含有水を得ることも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のラドン含有水製造方法でラドン含有水を製造する際に好適に使用することのできる本発明のラドン含有水製造装置の好適な実施態様を示した図である。
【図2】実験条件1〜3のそれぞれにおいて、実験開始からの経過時間と、各時点のラドン濃度との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のラドン含有水製造方法及びラドン含有水製造装置について、図面を用いてより具体的に説明する。図1は、本発明のラドン含有水製造方法でラドン含有水を製造する際に好適に使用することのできる本発明のラドン含有水製造装置10の好適な実施態様を示した図である。
【0021】
1.ラドン含有水製造装置の概要
本実施態様のラドン含有水製造装置10は、図1に示すように、ラドン含有ガスGを生成するためのラドン含有ガス生成源11と、原料水Wを貯留するための原料水貯留槽12と、ラドン含有ガス生成源11で生成されたラドン含有ガスGを原料水貯留槽12へ移送するためのラドン含有ガス移送ポンプ13と、原料水貯留槽12へ移送されてきたラドン含有ガスGを原料水W中に放出して気泡Gを発生させるラドン含有ガス放出ノズル14と、原料水Wをラドン含有ガス放出ノズル14に導入するための原料水導入ポンプ15と、原料水Wを冷却してその温度を凝固点付近に保つ原料水冷却手段16と、気泡Gに超音波を照射することにより気泡Gを微細化する超音波発生手段17と、を備えたものとなっている。このラドン含有水製造装置10は、ラドン含有ガス生成源11で生成されたラドン含有ガスGを原料水Wに接触させ、ラドン含有ガスGに含有されるラドンを原料水W中へ溶解させることにより、原料水Wをラドン含有水Wとするものとなっている。
【0022】
2.ラドン含有ガス生成源
ラドン含有ガス生成源11は、ラドン含有ガスGを生成できるのであれば特に限定されず、従来から用いられている各種のものを用いることができる。しかし、本実施態様のラドン含有水製造装置10においては、ラドン含有ガスGにおけるラドンの溶解度を安定して持続的に高めることができるように、以下の構成のものを採用している。ラドン含有ガスGにおけるラドンの溶解度を安定して持続的に高めることができるようになれば、ラドン含有水Wにおけるラドンの溶解度も安定して持続的に高めることが容易になるためである。
【0023】
本実施態様のラドン含有水製造装置10において、ラドン含有ガス生成源11は、図1に示すように、ラドン線源11aと、ラドン線源11aを収容するための密閉容器11bとを備えたものとなっている。密閉容器11bには、ラドン含有ガスGの原料ガスGとなる湿潤ガスをその内部へ導入するための原料ガス導入口INと、ラドン線源11aから放出されたラドンを含む原料ガスGからなるラドン含有ガスGをその外部へ導出するためのラドン含有ガス導出口OUTとが設けられている。
【0024】
ラドン含有ガス生成源11におけるラドン線源11aには、アルミナなどを主成分とする担体に放射性ラジウムを定着させたものを使用してもよいが、コーディライトを主成分とする多孔質セラミックスで形成された担体に放射性ラジウムを定着させたものを使用すると好ましい。コーディライトは、安価で加工性に優れ、耐熱部品に汎用されているが、本発明者の研究によって、コーディライトは、ラジウム(Ra)との親和性に優れており、それを担体として使用した場合に高濃度のラドンを放出することができることが分かったからである。
【0025】
ラドン線源11aの担体に用いる多孔質セラミックスとしては、空孔率が80%以上の軽量セラミックス多孔体が好適に用いられる。このような条件を満たす多孔質セラミックスは、各種の方法によって得ることができる。例えば、濾紙などの多孔質有機物基体に対してセラミックス前躯体である無機高分子を含浸させてこれを焼成する方法や、セラミックス粉末と粉末バインダとを適当な割合で均一に混合したものを型枠内で所定形状に加圧成形して乾燥後に焼成する方法や、溶剤で溶解した有機バインダにセラミックス粉末を均一に混合・分散させてセラミックススラリーとして押出成形などによって所定形状に成形して乾燥後に焼成する方法などが例示される。
【0026】
ラドン線源11aは、その担体に放射性ラジウムを定着させる前に、担体表面を塩酸や硫酸などの酸でエッチングしておくと好ましい。これにより、担体表面に付着している微粉末や被膜などを除去するとともに、その表面に多数の微細孔を露出又は形成することが可能になり、ラジウムの定着性を向上させることが可能になる。担体への放射性ラジウムの定着方法も、特に限定されないが、放射性ラジウム溶液に担体を浸漬又は塗布し、その後、担体を乾燥させて焼結すると好ましい。放射性ラジウム溶液としては、シリカ微粉末や低融点ガラス微粉末などをポリビニルアルコールに分散させたものに天然ラジウム鉱石の粉末を混合してスラリー状としたもののほか、市販されているラジウム標準液などを好適に使用することができる。
【0027】
3.ラドン貯留槽
ラドン貯留槽12は、ラドン含有水Wを貯留できるのであれば、その形態や素材は、特に限定されない。本実施態様のラドン含有水製造装置10においては、原料水貯留槽12として、図1に示すように、上面が開放された箱状の樹脂製容器を使用している。ラドン含有水貯留槽12の容量も、ラドン含有水Wの必要量などによっても異なり、特に限定されない。原料水貯留槽12の容量は、ラドン含有水Wの必要量及びラドン含有水Wに要求されるラドンの溶解度と、ラドン含有水生成源11及び他の構成の処理能力とを考慮して適宜決定される。大量のラドン含有水Wが要求されるような場合には、複数の原料水貯留槽12を併用してもよい。
【0028】
4.ラドン含有ガス移送ポンプ
ラドン含有ガス移送ポンプ13は、ラドン含有ガス生成源11と原料水貯留槽12とを接続するガス流路に設けてもよいが、本実施態様のラドン含有水製造装置10においては、図1に示すように、ラドン含有ガス生成源11の一次側(上流側)に接続しており、ラドン含有ガス生成源11へ原料ガスGを導入する原料ガス導入ポンプとしての機能をも有するものとなっている。このラドン含有ガス移送ポンプ13により、ラドン含有ガス生成源11における密閉容器11b内の圧力が高まり、ラドン含有ガス生成源11で生成されたラドン含有ガスGが原料水貯留槽12へと圧送される。
【0029】
5.ラドン含有ガス放出ノズル
ラドン含有ガス放出ノズル14は、ラドン含有ガスGを放出するだけのものであってもよいが、マイクロバブル発生ノズルであると好ましい。本実施態様のラドン含有水製造装置10において、ラドン含有ガス放出ノズル14は、後述する原料水導入ポンプ15からラドン含有ガス放出ノズル14へ圧送されてきた原料水Wの渦流をその内部で発生させ、ラドン含有ガス生成源11から同じくラドン含有ガス放出ノズル14へ圧送されてきたラドン含有ガスGを前記渦流に巻き込ませることにより、微細化された気泡Gを得ることのできる、マイクロバブル発生ノズルを使用している。
【0030】
ラドン含有ガス放出ノズル14から放出するラドン含有ガスGの流量は、ラドン含有ガス生成源11の能力やラドン含有水Wにおける要求されるラドンの溶解度などによっても異なり、特に限定されない。本実施態様のラドン含有水製造装置10において、ラドン含有ガス放出ノズル14から放出するラドン含有ガスGの流量は、0.5L/分となっている。この流量は、ラドン含有ガス生成源11におけるラドン含有ガス導出口OUTよりも下流側に接続したバルブ(図示省略)の弁開度を調節することにより、変化させることができるようになっている。
【0031】
6.原料水導入ポンプ
原料水導入ポンプ15は、図1に示すように、減量水貯留槽12に貯留された原料水Wに浸漬され、その周囲にある減量水Wを取り込んでラドン含有ガス放出ノズル14に移送する。原料水導入ポンプ15の能力(吐出圧力)は、特に限定されないが、ラドン含有ガス放出ノズル14から放出される気泡Gを微細気泡とするためには、その吐出圧力がある程度高いものを選択すると好ましい。原料水導入ポンプ15の吐出圧力は、0.1MPa以上であると好ましく、0.2MPa以上であると好ましい。本実施態様のラドン含有水製造装置10において、原料水導入ポンプ15は、その吐出圧力が約0.3MPaのものを使用している。
【0032】
7.原料水冷却手段
原料水冷却手段16は、原料水Wを凝固点付近まで冷却でき、その後、その温度を維持できるものであれば特に限定されないが、通常、ヒートポンプを利用したものが使用される。本実施態様においても、原料水冷却手段16は、図1に示すように、原料水貯留槽12の内面にその冷却部(蒸発器)を配した電気式ヒートポンプを用いている。
【0033】
8.超音波発生手段
超音波発生手段17は、所望の周波数の超音波を発生できるものであれば特に限定されない。本実施態様のラドン含有水製造装置10においては、超音波発生手段17として、本多電子工業株式会社製の超音波発生装置(型式:HM−303N)を使用している。この超音波発生装置は、図1に示すように、超音波を発生するための超音波ホーン17aと、超音波ホーン17aから発せられる超音波の周波数や時間間隔などを制御するための超音波制御手段17bとで構成されている。超音波ホーン17aは、原料水貯留槽12の容量などに応じて複数個設置してもよい。本実施態様のラドン含有水製造装置10においては、3個の超音波ホーン17aを設置しており、それぞれの超音波ホーン17aから2.5MHzの超音波が2秒間隔で1秒間発生されるようになっている。
【0034】
9.実験
実際に、図1に示したラドン含有水製造装置10を用いて3つの実験条件(実験条件1〜3)でラドン含有水Wを製造し、それぞれのラドン含有水W単位体積から放射される放射線量(ラドン濃度[Bq/m])を測定する実験を行った。ラドン濃度は、実験条件1〜3において、実験開始(超音波発生手段17で超音波を発生している状態でラドン含有ガス放出ノズル14からのラドン含有ガスGの放出を開始して)から10分後、20分後、30分後の計3回にわたって測定した。ラドン濃度の測定は、GENITRON社製の「AlphaGUARD PQ2000 PRO」を使用した。
【0035】
また、実験条件1〜3において、ラドン含有ガス生成源11のラドン線源11aは、コーディライトを主成分とする多孔質セラミックス(株式会社成田製陶所製セラミックスフォーム(品番:M−12、セル数:13ケ/25mm、空孔率:80%(連通孔含む))を担体とするものを用いた。ラドン線源11aから発せられるラドン濃度は約100kBq/mであった。密閉容器11bは、容量が10Lでその内部圧力は約10MPaに維持した。超音波発生手段17は、3個の超音波ホーン17aを併置し、それぞれの超音波ホーン17aからは、約2.4MHzの超音波を2秒間隔で1秒間発生(1秒間発生して2秒間停止を周期的に繰り返して発生)させた。
【0036】
ただし、実験条件1においては、原料水Wとして0.3度(実験開始時の水温が1.5℃で10分経過後に0.3℃となり、その後も0.3度で安定。)に冷却した水道水(硬度33.9mg/L、pH7.3)を用いた。また、実験条件2においては、原料水Wとして0.3度(実験開始時の水温が1.5℃で10分経過後に0.3℃となり、その後も0.3度で安定。)に冷却したミネラルウォーター(硬度160mg/L、pH6.7)を用いた。さらに、実験条件3においては、原料水Wとして16.4〜17.2℃(実験開始時の水温が16.4℃でその後徐々に上昇していき、30分経過後に17.2℃となった。)に冷却したミネラルウォーター(硬度40、pH8.1)を用いた。
【0037】
図2は、実験条件1〜3のそれぞれにおいて、実験開始からの経過時間と、各時点のラドン濃度との関係を示したグラフである。図1に示すように、原料水Wの温度が16.4〜17.2℃と高かった実験条件3におけるラドン濃度は、10分経過後で1210Bq/m、20分経過後で1624Bq/m、30分経過後で2160Bq/mであったのに対し、原料水Wの温度が0.3℃と低かった実験条件1,2におけるラドン濃度は、10分経過後でそれぞれ1920Bq/m、1500Bq/m、20分経過後で3040Bq/m、2510Bq/m、30分経過後で3500Bq/m、2840Bq/mと、いずれも実験条件3によるものを上回っていた。以上のことから、原料水Wを凝固点付近にまで冷却する本発明の構成が、原料水Wに対するラドンの溶解度の向上について、非常に優れたものであることが分かった。
【0038】
また、実験条件1,2はいずれも原料水Wの温度が0.3℃で同一であったが、原料水Wとして水道水を用いた実験条件1の方が、原料水Wとしてミネラルウォーターを用いた実験条件2よりも、全ての時点において優れた結果を示した。
【0039】
10.用途
本発明のラドン含有水製造方法及びラドン含有水製造装置で得られたラドン含有水は、ラドンの溶解度(ラドン濃度)が高く、そのラドン濃度が長時間持続されるものであるため、各種の用途に好適に使用することができる。例えば、浴用水(ミストを含む)や飲料水としての用途が考えられる。ラドンを適量に含むラドン含有水には、人体に対して良い効果(ホルミシス効果)を及ぼすと考えられており、既に実用化されている。また、一般家庭などで使用されている加湿器などに注入する加湿用水としての用途も考えられる。これにより、高価な装置を新たに導入しなくても、一般家庭において放射能泉のホルミシス効果を手軽に得ることが可能になる。
【符号の説明】
【0040】
10 ラドン含有水製造装置
11 ラドン含有ガス生成源
11a ラドン線源
11b 密閉容器
12 原料水貯留槽
13 ラドン含有ガス移送ポンプ(原料ガス導入ポンプ)
14 ラドン含有ガス放出ノズル
15 原料水導入ポンプ
16 原料水冷却手段
17 超音波発生手段(超音波発生装置)
17a 超音波ホーン
17b 超音波制御手段
原料ガス(湿潤ガス)
ラドン含有ガス
気泡(ラドン含有ガス)
原料水
ラドン含有水
IN 原料ガス導入口
OUT ラドン含有ガス導出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラドンを含有するラドン含有ガスを原料水に接触させ、前記ラドンを原料水中へ溶解させることにより、原料水をラドン含有水とするラドン含有水製造方法であって、
原料水を冷却してその温度を凝固点付近に保つとともに、ラドン含有ガスからなる気泡を原料水中に発生させることにより、得られるラドン含有水におけるラドンの溶解度を高めることができるようにしたことを特徴とするラドン含有水製造方法。
【請求項2】
原料水中に発生した前記気泡を微細化して、ラドン含有ガスと原料水の接触面積を増大させる請求項1記載のラドン含有水製造方法。
【請求項3】
前記気泡の微細化は、前記気泡に超音波を照射することにより行われる請求項2記載のラドン含有水製造方法。
【請求項4】
前記気泡の微細化は、前記気泡に超音波を断続的に照射することにより行われる請求項3記載のラドン含有水製造方法。
【請求項5】
ラドンを含有するラドン含有ガスを原料水に接触させ、前記ラドンを原料水中へ溶解させることにより、原料水をラドン含有水とするラドン含有水製造装置であって、
(a)ラドン含有ガスを生成するためのラドン含有ガス生成源と、
(b)原料水を貯留するための原料水貯留槽と、
(c)ラドン含有ガス生成源で生成されたラドン含有ガスを原料水貯留槽へ移送するためのラドン含有ガス移送ポンプと、
(d)原料水貯留槽へ移送されてきたラドン含有ガスを原料水中に放出して気泡を発生させるラドン含有ガス放出ノズルと、
(e)原料水を冷却してその温度を凝固点付近に保つ原料水冷却手段と、
を備えたことを特徴とするラドン含有水製造装置。
【請求項6】
ラドン含有ガス放出ノズルが、直径0.1mm以下の微細気泡を発生できるものである請求項5記載のラドン含有水製造装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−143343(P2011−143343A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5694(P2010−5694)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(508001453)株式会社ラドン医療研究開発機構 (3)
【出願人】(510013910)
【Fターム(参考)】