説明

ラバーブッシュの特性試験用治具

【課題】ラバーブッシュの特性試験装置用治具において、ラバーブッシュの外周に軸直方向の静荷重を付与したときにその静荷重で内筒が軸直方向にずれるのを防止し、ラバーブッシュの軸直方向の静ばね定数を正確に測定する。
【解決手段】治具2は、ナット部材30とナット部材30に締結固定される雄ねじ部31aが形成されたボルト部材31とを有する内筒挿入部材3を備える。ナット部材30は、内周面に雌ねじ部32aが、外周面に雄ねじ部32bが形成され、雌ねじ部32aにボルト部材31が螺合される第1ナット部32と、内周面における軸方向の内筒10側の端部にボルト部材31がナット部材30に締結されたときにおいて内筒10の軸方向他方側の端部が当接するテーパ面33aが形成され、内周面におけるテーパ面33aが形成された部分以外の部分に雌ねじ部33bが形成され、雌ねじ部33bに第1ナット部32が螺合される第2ナット部33とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラバーブッシュの静特性等を試験するためのラバーブッシュの特性試験用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラバーブッシュは、一般には、内筒と外筒との間にゴムなどの弾性部材が接着固定された筒形状をしており、自動車のサスペンションやシフトレバー等に使用される。ラバーブッシュには多様な負荷がかかるため、静特性や動特性、耐久性などの様々な特性試験を行うことによってその性能把握が行われている。例えば、ラバーブッシュの静ばね定数等の静特性を測定する特性試験としては、その軸方向に直交する軸直方向の試験等がある。
【0003】
特許文献1には、ラバーブッシュの筒軸方向に対して斜め方向のばね定数を測定する試験装置が開示されている。そこでは、内筒を支持する内筒支持部材と外筒を支持する外筒支持部材とでラバーブッシュを支持し、各支持部材を試験装置にボルト及びナットで締結固定して試験が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−312702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ラバーブッシュの軸直方向の静ばね定数等を測定する特性試験用の治具として、例えば、図6に示すようなものが考えられる。この治具は、ナット部材130と、このナット部材130に締結固定される雄ねじ部131aが形成されたボルト部材131とを有し、このボルト部材131の雄ねじ部131aが内筒110の軸方向一方側の端部から挿入され、軸方向他方側の端部に突出した雄ねじ部131aがナット部材130に螺合されることにより、筒軸方向両端部が突出した状態で内筒110に挿入固定される内筒挿入部材103を備えている。ボルト部材131における内筒110に挿入された部分は、内筒110との間に隙間が空いた状態で内筒110内に配置されている。そして、治具(内筒挿入部材103)を固定した後に、ラバーブッシュ101の外周に軸直方向の静荷重を付与することにより、ラバーブッシュ101の軸直方向の静ばね定数を測定する。
【0006】
しかしながら、図6のものでは、ラバーブッシュ101の外周に軸直方向の静荷重を付与すると、その静荷重で内筒110がボルト部材131に対して軸直方向にずれてしまい、ラバーブッシュ101の軸直方向の静ばね定数を正確に測定できない虞がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、ラバーブッシュの特性試験用治具において、ラバーブッシュの外周に軸直方向の静荷重を付与したときにその静荷重で内筒が軸直方向にずれるのを防止し、ラバーブッシュの軸直方向の静ばね定数を正確に測定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、ラバーブッシュの特性試験用の治具であって、ナット部材と、該ナット部材に締結固定される雄ねじ部が形成されたボルト部材とを有し、該ボルト部材の雄ねじ部が上記ラバーブッシュの内筒における軸方向一方側の端部から挿入され、軸方向他方側の端部に突出した雄ねじ部が上記ナット部材に螺合されることにより、筒軸方向両端部が突出した状態で上記内筒に挿入固定される内筒挿入部材を備えており、上記ナット部材は、内周面に雌ねじ部が、外周面に雄ねじ部が形成され、該雌ねじ部に上記ボルト部材の雄ねじ部が螺合される第1ナット部と、内周面における軸方向の内筒側の端部に軸方向内側から外側に行くに従って拡径し且つ上記ボルト部材が上記ナット部材に締結されたときにおいて上記内筒の軸方向他方側の端部が当接するテーパ面が形成され、内周面における該テーパ面が形成された部分以外の部分に雌ねじ部が形成され、該雌ねじ部に上記第1ナット部の雄ねじ部が螺合される第2ナット部とを有していることを特徴とするものである。
【0009】
これによれば、治具を固定した後に、ラバーブッシュの外周に軸直方向の静荷重を付与すると、ナット部材の第2ナット部のテーパ面に内筒の軸方向他方側の端部を当接させているので、その静荷重で内筒がボルト部材に対して軸直方向にずれるのを防止することができ、ラバーブッシュの軸直方向の静ばね定数を正確に測定することができる。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記ラバーブッシュの外周を支持する外周支持部材と、上記内筒挿入部材の筒軸方向両端部を支持する両端支持部材とをさらに備えていることを特徴とするものである。
【0011】
これによれば、本発明の最良の実施形態を実現することができる。
【0012】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記第1ナット部の外周面における軸方向の内筒とは反対側の端部には、鍔部が形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
これによれば、第1ナット部の外周面における軸方向の内筒とは反対側の端部に鍔部を形成しているので、ボルト部材を第1ナット部に締結するときにおいて、その作業者は第1ナット部をその鍔部で持つことができ、その締結作業が行いやすくなる。
【0014】
第4の発明は、上記第1〜第3のいずれか1つの発明において、上記第2ナット部は、その軸方向に複数に分割されていることを特徴とするものである。
【0015】
これによれば、第2ナット部をその軸方向に複数に分割しているので、ラバーブッシュの動ばね定数を測定する場合であって、ラバーブッシュに動荷重を付与したときにおいて、単一物で構成された第2ナット部と比較して、その動荷重で第2ナット部が緩むのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、治具を固定した後に、ラバーブッシュの外周に軸直方向の静荷重を付与すると、ナット部材の第2ナット部のテーパ面に内筒の軸方向他方側の端部を当接させているので、その静荷重で内筒がボルト部材に対して軸直方向にずれるのを防止することができ、ラバーブッシュの軸直方向の静ばね定数を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るラバーブッシュの特性試験用治具を示す断面図である。
【図2】ラバーブッシュが取り付けられた内筒挿入部材及び外周支持部材を示す正面図である。
【図3】内筒挿入部材の変形例を示す断面図である。
【図4】内筒挿入部材の別の変形例を示す断面図である。
【図5】第2ナット部の変形例を示す断面図である。
【図6】ラバーブッシュの特性試験用治具を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1、図2は、本発明の実施形態に係るラバーブッシュの特性試験用の治具を示している。ラバーブッシュ1は、円筒状の内筒10と円筒状の外筒11との間にゴムからなる弾性部材12が接着固定された筒形状をしており、内筒10の軸方向両端部が外筒11から突出していて、自動車のサスペンションやシフトレバー等に使用されるようになっている。尚、ここでは図1、図2に示すような外筒11と内筒10とを備えた一般的なラバーブッシュ1を例示したが、外筒は必ずしも必須ではなく、例えば内筒だけのラバーブッシュでもよい。
【0020】
上記治具2は、ラバーブッシュ1の静ばね定数等の静特性を測定する特性試験に利用することができる。ラバーブッシュ1の静特性を測定する試験としては、その軸方向や軸に直交する軸直方向の試験などがある。もちろん、治具2は、静特性の測定に限らず、ラバーブッシュ1の動ばね定数等の動特性などの測定にも利用することができる。治具2は、ラバーブッシュ1の内筒10に挿入される内筒挿入部材3と、ラバーブッシュ1の外周を支持する外周支持部材4と、内筒挿入部材3の筒軸方向両端部を支持する両端支持部材5とを備えている。これらの内筒挿入部材3、外周支持部材4及び両端支持部材5は、鋼材の加工品である。
【0021】
内筒挿入部材3は、円筒形をしたナット部材30と、このナット部材30に締結固定される雄ねじ部31aが形成された丸棒形をしたボルト部材31とを有していて、このボルト部材31の雄ねじ部31aが内筒10の軸方向一方側の端部(図1では内筒10の左端部)から挿入され、軸方向他方側の端部(図1では右端部)に突き出た雄ねじ部31aがナット部材30に螺合されることにより、筒軸方向両端部が突出した状態で内筒10に挿入固定されるようになっている。
【0022】
ナット部材30は、円筒状の第1ナット部32と、この第1ナット部32の周囲に配設された円筒状の第2ナット部33とを有している。第1ナット部32は、内筒10よりも外径が小さくなるように形成されており、内周面の軸方向全域に雌ねじ部32aが、外周面における軸方向の内筒10とは反対側の端部(図1では右端部)以外の部分に雄ねじ部32bが形成されていて、雌ねじ部32aにボルト部材31の雄ねじ部31aが螺合されるようになっている。
【0023】
第1ナット部32における軸方向の内筒10側の端面は、ボルト部材31がナット部材30に締結されたときにおいて内筒10の軸方向他方側の端面(図1では内筒10の右端面)に当接している。第1ナット部32における軸方向の内筒10側の端部は、ボルト部材31がナット部材30に締結されたときにおいて第2ナット部33から突き出ていない。第1ナット部32の外周面における軸方向の内筒10とは反対側の端部には、径方向に相対向して配設された一対の凹部32c,32cが凹み形成されている。そして、ボルト部材31を第1ナット部32に締結するときにおいて、その作業者は第1ナット部32をその両凹部32c,32cで挟持することができ、その締結作業が行いやすくなる。第1ナット部32における軸方向の内筒10とは反対側の端部は、ボルト部材31がナット部材30に締結されたときにおいて第2ナット部33から突出している。
【0024】
上記第2ナット部33は、内筒10よりも外径が大きく且つ外径が外筒11の内径よりも小さくなるように形成されている。第2ナット部33の内周面における軸方向の内筒10側の端部(図1では左端部)には、軸方向内側(内筒10とは反対側)から外側(内筒10側)に行くに従って内径が直線状に拡径する筒軸方向から見て環状のテーパ面33aが形成されている。このテーパ面33aには、ボルト部材31がナット部材30に締結されたときにおいて内筒10の軸方向他方側の端部(図1では内筒10の右端部)における外周側の角部が当接している。
【0025】
第2ナット部33の内周面におけるテーパ面33aが形成された部分以外の部分には、軸方向全域に雌ねじ部33bが形成されており、この雌ねじ部33bに第1ナット部32の雄ねじ部32bが螺合されるようになっている。第2ナット部33の外周面における軸方向の内筒10とは反対側の端部には、径方向に相対向して配設された一対の凹部33c,33cが凹み形成されている。そして、第1ナット部32を第2ナット部33に締結するときにおいて、その作業者は第2ナット部33をその両凹部33c,33cで挟持することができ、その締結作業が行いやすくなる。
【0026】
上記ボルト部材31の基端部には、円筒状のナット部31bと、このナット部31bにおける軸方向の内筒10とは反対側の端部(図1では左端部)の、径方向に相対向する部分から張り出して、それぞれに貫通するボルト孔(不図示)が形成された一対の固定片31c,31cとが形成されている。ナット部31bにおける軸方向の内筒10側の端面(図1では右端面)は、ボルト部材31がナット部材30に締結されたときにおいて内筒10の軸方向一方側の端面(図1では内筒10の左端面)に当接している。このように、ボルト部材31の基端部を内筒10に当接させるとともに、上述の如く、ナット部材30を内筒10に当接させることにより、ボルト部材31及びナット部材30で内筒10が挟持される。固定片31c,31cは、ラバーブッシュ1の軸方向の静ばね定数等を測定するときにおいてラバーブッシュ1が取り付けられた治具2を特性試験装置に固定するのに使用される。ボルト部材31の先端部の外周面には、上記雄ねじ部31aが形成されている。ボルト部材31における内筒10に挿入された部分は、内筒10との間に僅かに隙間が空いた状態で内筒10内に中心軸が一致するように芯出し配置されている。
【0027】
上記外周支持部材4は、相対向させて結合される矩形の一対の把持部40,40を有している。この各把持部40の対向面には、ラバーブッシュ1の外周を把持する断面円弧状の凹部40aが凹み形成されている。この両凹部40a,40aにラバーブッシュ1の外周を接触させた状態で両把持部40,40を相対向させ、この把持部40,40に亘るボルト孔(不図示)にボルト(不図示)を挿入して締結することにより、ラバーブッシュ1の外筒11が把持固定される。上方の把持部40の、対向面と反対側の上面中央には、後述する締結具62aがねじ込まれるボス部41が一体に設けられている。
【0028】
上記両端支持部材5は、矩形の基盤部50と、この基盤部50の上面に配設され、ナット部材30を支持するナット支持部51と、基盤部50の上面にその長手方向にナット支持部51と相対向して配設され、ボルト部材31のナット部31bを支持するボルト支持部52とを有している。ナット支持部51は、相対向させて結合される矩形の一対の把持部51a,51aを有している。この各把持部51aの対向面には、ナット部材30の外周を把持する断面円弧状の凹部51bが凹み形成されている。この両凹部51b,51bにナット部材30の外周を接触させた状態で両把持部51a,51aを相対向させ、この把持部51a,51aに亘るボルト孔(不図示)にボルト(不図示)を挿入して締結することにより、ナット部材30が把持固定される。上記ボルト支持部52は、相対向させて結合される矩形の一対の把持部52a,52aを有している。この各把持部52aの対向面には、ボルト部材31のナット部31bの外周を把持する断面円弧状の凹部52bが凹み形成されている。この両凹部52b,52bにボルト部材31のナット部31bの外周を接触させた状態で両把持部52a,52aを相対向させ、この把持部52a,52aに亘るボルト孔(不図示)にボルト(不図示)を挿入して締結することにより、ボルト部材31のナット部31bが把持固定される。
【0029】
次に、かかる構成の治具2を使用してラバーブッシュ1の軸直方向の静ばね定数を測定する特性試験を実施する手順について説明する。
【0030】
まず、測定するラバーブッシュ1を内筒挿入部材3及び外周支持部材4に装着する。具体的には、内筒挿入部材3をラバーブッシュ1の内筒10に挿入して締結固定する。このように、内筒挿入部材3を内筒10に締結固定すると、内筒10が内筒挿入部材3のボルト部材31及びナット部材30で挟持されるとともに、内筒10の軸方向他方側の端部がボルト部材31のテーパ面33aに当接する。そして、外周支持部材4の両凹部40a,40aでラバーブッシュ1の外周を把持してボルトとナットで締結固定する。
【0031】
次に、ラバーブッシュ1が取り付けられた内筒挿入部材3を両端支持部材5に取り付ける。具体的には、両端支持部材5のナット支持部51の両凹部51b,51bでナット部材30の外周を把持してボルトとナットで締結固定する。そして、両端支持部材5のボルト支持部52の両凹部52b,52bでボルト部材31のナット部31bの外周を把持してボルトとナットで締結固定する。
【0032】
続いて、ラバーブッシュ1が取り付けられた治具2を特性試験装置6に固定する。具体的には、治具2を特性試験装置6の、安定した状態に設置された基台60の上面に載置し、特性試験装置6の、筒軸方向に相対向して配設された一対の挟持部材61,61で両端支持部材5をそのナット支持部51及びボルト支持部52の下端部にて挟持固定する。そして、特性試験装置6の、治具2の上方に相対向して配設された荷重付与部材62の締結具62aを外周支持部材4のボス部41に締結する。
【0033】
次に、ラバーブッシュ1の軸直方向の静ばね定数を測定する。具体的には、荷重付与部材62で外周支持部材4の上方の把持部40に軸直方向(図1では上下方向)の静荷重(図1の矢印を参照)を付与することにより、ラバーブッシュ1の外周に軸直方向の静荷重を付与し、ラバーブッシュ1の軸直方向の静ばね定数を測定する。このとき、ナット部材30の第2ナット部33のテーパ面33aに内筒10の軸方向他方側の端部における外周側の角部が当接しているため、その静荷重で内筒10がボルト部材31に対して軸直方向にずれてボルト部材31に当接するのを防止することができる。
【0034】
尚、治具2を使用してラバーブッシュ1の軸直方向の動ばね定数を測定する特性試験を実施する手順は、治具2を使用してラバーブッシュ1の軸直方向の静ばね定数を測定する特性試験を実施する場合と同様にラバーブッシュ1が取り付けられた治具2を特性試験装置に固定した後に、荷重付与部材62で外周支持部材4の上方の把持部40に軸直方向の動荷重を付与する。また、治具2を使用してラバーブッシュ1の軸方向の静ばね定数や動ばね定数等を測定する特性試験を実施する手順については、その説明は省略する。
【0035】
−効果−
以上より、本実施形態によれば、治具2を特性試験装置6に固定した後に、ラバーブッシュ1の外周に軸直方向の静荷重を付与すると、ナット部材30の第2ナット部33のテーパ面33aに内筒10の軸方向他方側の端部を当接させているので、その静荷重で内筒10がボルト部材31に対して軸直方向にずれるのを防止することができ、ラバーブッシュ1の軸直方向の静ばね定数を正確に測定することができる。
【0036】
このように、ナット部材30の第2ナット部33のテーパ面33aに内筒10の軸方向他方側の端部を当接させることにより、ラバーブッシュ1の外周に付与された軸直方向の静荷重で内筒10がボルト部材31に対して軸直方向にずれるのを防止しているので、その静荷重で内筒10が軸直方向にずれるのを防止するため、ナット部材30の第1ナット部32を強く締結して内筒10に対して強く当接させる必要がなくなり、ボルト部材31の寿命を延ばすことができる。
【0037】
(その他の実施形態)
上記実施形態において、図3に示すように、第1ナット部32の外周面における軸方向の内筒10とは反対側の端部(図3では右端部)に鍔部34を一体に形成してもよい(請求項3)。この鍔部34には、径方向に相対向して配設された、上記凹部32cと同じ用途の一対の凹部34a,34aが凹み形成されている。これによれば、第1ナット部32の外周面における軸方向の内筒10とは反対側の端部に鍔部34を形成しているので、ボルト部材31を第1ナット部32に締結するときにおいて、その作業者は第1ナット部32をその鍔部34で持つことができ(具体的には、第1ナット部32をその両凹部34aで挟持することができ)、その締結作業が行いやすくなる。但し、このように鍔部34を形成すると、ボルト部材31を第1ナット部32に締結する前に、第1ナット部32を第2ナット部33に締結する必要がある。
【0038】
また、上記実施形態では、第2ナット部33を単一物で構成しているが、これに限らず、例えば、図4に示すように、第2ナット部33をその軸方向に複数(図4では2つ)に分割してもよい(請求項4)。この各分割部35には、径方向に相対向して配設された、上記凹部33cと同じ用途の一対の凹部35a,35aが凹み形成されている。これによれば、第2ナット部33をその軸方向に複数に分割しているので、ラバーブッシュ1の動ばね定数を測定する場合であって、ラバーブッシュ1に動荷重を付与したときにおいて、単一物で構成された第2ナット部33と比較して、その動荷重で第2ナット部33が緩むのを抑制することができる。
【0039】
さらに、上記実施形態では、テーパ面33aを軸方向内側から外側に行くに従って直線状に拡径させているが、これに限らず、例えば、図5に示すように、曲線状に拡径させてもよい。
【0040】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0041】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上説明したように、本発明に係るラバーブッシュの特性試験用治具は、ラバーブッシュの軸直方向の静ばね定数を正確に測定することが必要な用途等に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 ラバーブッシュ
10 内筒
2 治具
3 内筒挿入部材
30 ナット部材
31 ボルト部材
32 第1ナット部
32a 雌ねじ部
32b 雄ねじ部
33 第2ナット部
33a テーパ面
33b 雌ねじ部
35 鍔部
4 外周支持部材
5 両端支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラバーブッシュの特性試験用の治具であって、
ナット部材と、該ナット部材に締結固定される雄ねじ部が形成されたボルト部材とを有し、該ボルト部材の雄ねじ部が上記ラバーブッシュの内筒における軸方向一方側の端部から挿入され、軸方向他方側の端部に突出した雄ねじ部が上記ナット部材に螺合されることにより、筒軸方向両端部が突出した状態で上記内筒に挿入固定される内筒挿入部材を備えており、
上記ナット部材は、
内周面に雌ねじ部が、外周面に雄ねじ部が形成され、該雌ねじ部に上記ボルト部材の雄ねじ部が螺合される第1ナット部と、
内周面における軸方向の内筒側の端部に軸方向内側から外側に行くに従って拡径し且つ上記ボルト部材が上記ナット部材に締結されたときにおいて上記内筒の軸方向他方側の端部が当接するテーパ面が形成され、内周面における該テーパ面が形成された部分以外の部分に雌ねじ部が形成され、該雌ねじ部に上記第1ナット部の雄ねじ部が螺合される第2ナット部とを有していることを特徴とするラバーブッシュの特性試験用治具。
【請求項2】
請求項1記載のラバーブッシュの特性試験用治具において、
上記ラバーブッシュの外周を支持する外周支持部材と、
上記内筒挿入部材の筒軸方向両端部を支持する両端支持部材とをさらに備えていることを特徴とするラバーブッシュの特性試験用治具。
【請求項3】
請求項1又は2記載のラバーブッシュの特性試験用治具において、
上記第1ナット部の外周面における軸方向の内筒とは反対側の端部には、鍔部が形成されていることを特徴とするラバーブッシュの特性試験用治具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のラバーブッシュの特性試験用治具において、
上記第2ナット部は、その軸方向に複数に分割されていることを特徴とするラバーブッシュの特性試験用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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