説明

ラパマイシン誘導体の製造方法

32−ヨード−または32−ヒドロキシラパマイシン(該ヒドロキシ基が、有機溶媒中トリス(トリメチルシリル)−シランおよびα,α’−アゾ−イソブチロニトリルの存在下で、アリールチオノカルボネートまたはアリールチオカルバメート残基により置換される)から32−デオキソラパマイシン、および結晶性溶媒和物の形態の32−デオキソラパマイシンを製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば有機化合物の塩およびそれらの製造方法を含む、有機化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
WO9641807には、とりわけ式
【化1】


[式中、
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ベンジル、アルコキシベンジルまたはクロロベンジルであり、
は、式
【化2】


または式
【化3】


{式中、
は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、ヒドロキシアリールアルキル、ヒドロキシアリール、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、ヒドロキシアルキルアリールアルキル、ジヒドロキシアルキルアリールアルキル、アルコキシアルキル、アルキルカルボニルオキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、アルコキシカルボニルアミノアルキル、アルキルカルボニルアミノアルキル、アリールスルホンアミドアルキル、アリル、ジヒドロキシアルキルアリル、ジオキソラニルアリル、カルバルコキシアルキルおよびアルキルシリルから選択され;
【0003】
は、H、メチルであるか、またはRと一体となってC2−6アルキレンを形成し;
は、
O−CH−(式中、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヒドロキシアルキルカルボニル、アミノアルキルカルボニル、ホルミル、アリールアルキル、ヒドロキシアリールアルキル、ヒドロキシアリール、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、ヒドロキシアルキルアリールアルキル、ジヒドロキシアルキルアリールアルキル、アルコキシアルキル、アルキルカルボニルオキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、アルコキシカルボニルアミノアルキル、アルキルカルボニルアミノアルキル、アリールスルホンアミドアルキル、アリル、ジヒドロキシアルキルアリル、ジオキソラニルアリルおよびカルバルコキシアルキルから選択される。)、
CO−(式中、Rは、H、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノまたはN,N−二置換−アミノから選択され、ここで、該置換基は、アルキル、アリールまたはアリールアルキルから選択される。)、
NCH−(式中、Rは、アルキル、アリール、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヒドロキシ、アルコキシまたはアリールスルホニルアミノである。)、
−O−CH−O−、または置換ジオキシメチレンである。}
であり、
Yは、O、(H,OH)、および(H,OR
{式中、Rは、C1−4アルキル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヒドロキシアルキルカルボニル、アミノアルキルカルボニル、ホルミルまたはアリールから選択される。}
から選択され、そして
XはHまたはOHである。]
で示される化合物が記載されている。
【0004】
WO9641807には、式Iの化合物(残基は、上記に定義の通りである。)を得るための方法がさらに記載されている。式Iの化合物(XはHである。)の製造において重要な工程は、式Iの化合物の32位のカルボニル基(該カルボニル基は、XおよびHの代わりに、32位のC原子に結合する。)の還元である。
【0005】
WO9641807によれば、かかる方法は、いくつかの異なる方法で行うことができ、例えば、式Iの化合物(ここで、XはHである。)を、保護または非保護形態の、式
【化4】


[式中、R、RおよびYは、上記に定義の通りである。]
で示される化合物の32位のカルボニル官能基を還元し、要すれば、存在する保護基を除去し、例えば所望により、得られた式Iの化合物(ここで、Rはアルキルである。)を式Iの化合物(ここで、Rはアルキル以外である。)を得るために変換することにより製造する方法であり、例えば、
【0006】
(a)式Iの32−デオキソ化合物への還元は、都合よくは、下記の反応を順に行うことにより可能である。すなわち、
i)好ましくは保護形態の式IVaの化合物を、ハイドライド、例えばジイソブチルアルミニウムハイドライド、または好ましくはリチウムトリ−tert−ブトキシアルミニウムハイドライドと反応させ、対応する32−ヒドロキシ化合物(環構造の32位のOH基)を製造し、
次いで、
ii)該32−ヒドロキシ化合物を対応する32−ハロ−誘導体、例えば32−ブロモ−または(好ましくは)32−ヨード−誘導体に変換し、その後、例えばハイドライドにより所望の32−デオキソ誘導体に還元し、要すれば、結果化合物を脱保護する。ハライド還元に用いるようなさらなる反応剤を用いることができ、それは例えば低原子価金属(すなわちリチウム、ナトリウム、マグネシウムおよび亜鉛)および金属ハイドライド(アルミニウムハイドライド、ボロハイドライド、シラン、銅ハイドライド)を含む(Comprehensive Organic Transformations, R.C. Larock, VCH Publishers Inc., New York, 1989, pp. 18−20, sections 1.5.1. および 1.5.2.を参照のこと)(あるいは、ハライド還元を、適する金属触媒(すなわちレネー−ニッケル、パラジウム金属またはパラジウム複合体、ロジウムまたはルテニウムの複合体)の存在下で、水素または水素源(すなわちギ酸またはその塩)を用いて達成することができる(Comprehensive Organic Transformations, R.C. Larock, VCH Publishers Inc., New York, 1989, pp. 20−24, section 1.5.3.を参照のこと))。
【0007】
(b)アルコールを対応するデオキシ化合物に変換するために用いる公知の方法もまた、用いることができる。これらの方法には、例えば直接還元または中間体リン系化合物、スルホネート、チオカルボナート、チオカルバメートまたはキサンテートの還元が含まれ、例えばComprehensive Organic Transformations, R.C. Larock, VCH Publishers Inc., New York, 1989, pp. 27−31, sections 1.9.1.−1.9.4に記載される;または
(c)トシルヒドラゾンの形成後、ボラン、例えばカテコールボランで処理するか、またはジチアンの形成後、例えばレネーニッケルまたはハイドライド、例えばトリブチル錫ハイドライドで適する還元を行う。ケトンを対応するアルカンに変換する他の公知の方法も用い得る;かかる方法には、例えば直接還元(Comprehensive Organic Transformations, R.C. Larock, VCH Publishers Inc., New York, 1989, pp. 35−37, section 1.12.l.を参照のこと)、またはヒドラゾンを介する還元(Comprehensive Organic Transformations, R.C. Larock, VCH Publishers Inc., New York, 1989, pp. 37−38, section 1.12.2)、ならびに硫黄およびセレニウム誘導体を介する還元(Comprehensive Organic Transformations, R.C. Larock, VCH Publishers Inc., New York, 1989, pp. 34−35, sections 1. 10. および 1. 1 L)が含まれる。
【0008】
32−デオキソラパマイシンを得るためのWO9641807に記載の例示的方法は、32位のヒドロキシ基をメシレート基に変換し、該メシレート基をヨウ素基に変換し、得られた式Iの保護化合物(ここで、Xはヨウ素である。)をトリブチル錫ハイドライドで処理し、その後ヘキサン中トリエチルボランの溶液で処理し、得られた保護32−デオキソ−化合物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、固体形態の保護32−デオキソ−化合物を得て、得られた保護32−デオキソ−化合物をメタノール中硫酸で処理し、その後NaHCOで処理し、非保護32−デオキソ−化合物(ここで、非保護32−デオキソ−化合物は結晶形態であり得る。)を得る、保護形態の32−ヒドロキシラパマイシン誘導体化合物の製造方法である。
【発明の開示】
【0009】
本発明により、驚くことに、式Iの化合物(ここで、XはHであり、R、RおよびYは、上記に定義の通りである。)の製造のための改良方法、例えば工業的スケールで有用な方法を見出された。
【0010】
1つの局面において、本発明は、下記の工程を含む、式Iの化合物(ここで、XはHであり、R、RおよびYは、上記に定義の通りである。)の製造方法を提供する。
A)a)式
【化5】


[式中、R、RおよびYは、式Iの化合物に定義の通りであり、存在する反応性基は非保護または保護形態、好ましくは保護形態である。]
で示される化合物を、有機溶媒中、トリス(トリメチルシリル)−シラン、(C6−18)アルキルメルカプタン、例えばt−ドデシルメルカプタンおよびα,α’−アゾ−イソブチロニトリルと処理するか、または
b)式
【化6】


[式中、R、RおよびYは、式Iの化合物に定義の通りであり、R’は、アリールチオノカルボネートまたはアリールチオノカルバメート残基(アリールチオノカルボネートまたはアリールチオノカルバメートは、−O−原子を介して環構造の32位のC原子に結合している。)であり、存在する反応性基は、非保護または保護形態、好ましくは保護形態である。]
で示される化合物を、有機溶媒中、トリス(トリメチルシリル)−シランおよびα,α’−アゾ−イソブチロニトリルと処理する工程、
B)保護基が存在するとき、これを除去する工程、
C)式Iの化合物(ここで、R、RおよびYは、上記に定義の通りである。)を単離する工程、および
D)所望により、得られた式Iの化合物を別の式Iの化合物に変換する、例えば式Iの化合物(ここで、Rはアルキルである。)を別の式Iの化合物(ここで、Rは上記に定義の通りであるが、アルキル以外である。)に変換する工程。
【0011】
式VIの化合物において、−O−原子を介して環構造の32位のC原子に結合するアリールチオノカルボネートまたはアリールチオノカルバメートには、式
【化7】


[式中、ARYLは、C6−18アリールオキシ(アリールチオノカルボネート残基)であるか、またはARYLは、N、O、Sから選択される1ないし4個のヘテロ原子を含む、5員または6員のアリールヘテロシクリルである。ただし、ヘテロシクリルは、少なくとも1個のNを含み、該ヘテロシクリルは、ヘテロ環の窒素原子を介して式VIIのC=S基に結合する(アリールチオノカルバメート残基)。]
の基が含まれる。
【0012】
6−18アリールは、フェニル、例えば非置換フェニルまたは置換フェニル、好ましくは非置換フェニルまたは反応条件下で不活性な基により置換されたフェニル、例えばハロゲン、例えばフルオロにより置換されたフェニルを含む。
【0013】
N、O、Sから選択される1ないし4個のヘテロ原子を含む(ただし、少なくとも1個のNを含む。)5員または6員のアリールヘテロシクリルは、所望により他の環(系)と環形成(annealed)し得る。アリールヘテロシクリルは、好ましくは5個の環メンバーを有し、好ましくはイミダゾリルである。
【0014】
式Iの化合物において、“alk”または“アルキル”を含む置換基は、所望によりオキシ結合により中断されたC1−10脂肪族置換基を示す;そして、“ar”または“アリール”は、単環式、所望によりヘテロ環式、所望により置換された、C4−14芳香族性置換基を示す。
上記の“ar”部分または“アリール”および所望により置換されたものの例は、例えばフェニル、ベンジル、トリル、ピリジルなどを含み得る。
【0015】
が、クロロベンジルまたはアルコキシベンジルであるとき、置換基は、好ましくはオルトである。
CO−が、N,N−二置換−カルバノイル(carbarnoyl)であるとき、それは、例えば、N−メチル−N−(2−ピリジン−2−イル−エチル)−カルバモイル、(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−カルボニルまたは(モルホリン−4−イル)−カルボニルであり得る。
Rが、置換ジオキシメチレンであるとき、それは、例えばO,O−(アルキレン)−ジオキシ−メチレン(すなわち、該2個の酸素がアルキレン基により結合する。)であり得る。
【0016】
式Iの化合物において、下記の意味が、個々に、または何らかの組合せもしくはサブ組合せに好ましい。
1.Rは、C1−10アルキル、C3−10alk−2−エニル、C3−10ヒドロキシalk−2−エニル、C3−10alk−2−イニル、C3−10ヒドロキシalk−2−イニルまたはC1−10アルコキシC1−10アルキル、好ましくはC1−6アルキルまたはC3−6alk−2−イニル、より好ましくはC1−4アルキル、最も好ましくはメチルである。
2.Rが、C3−6alk−2−イニルのとき、Rは、2−プロピニルまたはペント−2−イニル、好ましくはペント−2−イニルである。
3.Yは、O、(H,OH)または(H,C1−4アルコキシ)、好ましくはOである。
4.Rは、式IIの基である。
5.式IIの基において、Rは、H、C1−6ヒドロキシアルキル、ヒドロキシ−C1−6アルコキシ−C1−6アルキル、(C1−6アルキル)−カルボニル−アミノ−C1−6アルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルコキシまたはアミノ−C1−6アルキルであり、好ましくはH、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシエトキシエチル、メトキシエチルまたはアセチルアミノエチルであり、とりわけRがアルキニルのとき、Hである。
6.式IIの基において、Rはメチルである。
【0017】
7.Rは、式IIIの基{式中、Rは、
−ROCH−(ここで、Rは、H、C1−6アルキル、C3−6alk−2−エニル、C3−6alk−2−イニル、アリール、C1−6アルキルカルボニル、アリールカルボニル、ヒドロキシC1−6アルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキル、またはアミノC1−6アルキルから選択される。)、
−RCO−(ここで、Rは、H、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、アミノ酸残基、またはN,N−二置換アミノ(ここで、該置換基は、
(a)C1−6アルキルもしくはアリール、または
(b)ヘテロ環式構造
から選択される。)から選択される。)、
−RNCH−(ここで、Rは、アルキル、アリール、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヒドロキシ、アルコキシまたはアリールスルホニルアミノである。);−O−CH−O−;または、置換ジオキシメチレンである。}である。
【0018】
とりわけ好ましい式Iの化合物は、例えば16−O−ペント−2−イニル−32−デオキソ−ラパマイシン;16−O−ペント−2−イニル−32−デオキソ−40−O−(2−ヒドロキシ−エチル)−ラパマイシン、および32−デオキソ−ラパマイシン;例えば、式
【化8】


で示される32−デオキソ−ラパマイシンを含む。
【0019】
式Iの化合物は、異性を示し得るため、さらなる異性体が存在し得る。本発明は、式Iの化合物の何れかの個々の異性体および何れかの異性体混合物、例えば式Iの化合物の個々の異性体、および式
【化9】


[式中、R、R、YおよびXは、上記に定義の通りである。]
で示される個々の異性体、ならびにその異性体混合物を包含すると理解され得る。
個々の異性体は、適当に、例えば常套方法により分離可能である。
【0020】
本明細書で用いる保護形態の化合物は、本明細書で記載の特定の式の化合物、例えば式I、I’、I、IVa、VおよびVIの化合物(ここで、反応性基は保護されている。)を示す。適する保護基は、例えば慣用の適当な保護基を含む。反応性基は、例えばヒドロキシ基、例えば28位のヒドロキシ基を含み、Rが式IIの化合物であり、RがHのとき、該ヒドロキシ基は、40位にて環系に結合している。式Vの化合物の環構造の10位のヒドロキシ基は、反応条件下で反応せず、保護する必要がない。
【0021】
ヒドロキシ保護基ならびに保護および保護基除去の方法は、例えばProtective Groups in Organic Synthesis, second ed., T.W. Greene and P.G.M. Wuts, John Wiley & Sons, New York, 1991, Chapter 2およびその中の参考文献に開示されている。好ましいOH保護基は、例えばトリオルガノシリル基、例えばトリ(C1−6)アルキルシリル(例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル)、トリイソ−プロピルシリル、イソプロピルジメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、トリアリールシリル(例えば、トリフェニルシリル)またはトリアラルキルシリル(例えば、トリベンジルシリル)である。脱保護は、弱酸性条件下で行うのがよい。
【0022】
好ましくは、式I、I’、I、IVa、VおよびVIの化合物の環構造の28位および40位のヒドロキシ基は、トリオルガノシリル基、より好ましくはトリエチルシリルにより保護される。
【0023】
本発明で出発物質として用いる、例えば保護形態の式Vの化合物は、適当に、例えば常套方法により、例えば類似法により入手可能である。例えば保護形態の式Vの化合物およびその製造方法は、例えばWO9641807から公知である。
本発明で出発物質として用いる、例えば保護形態の式VIの化合物は、適当に、例えば常套方法によるか、例えば類似法によるか、または本明細書に記載の通りに入手可能である。
【0024】
他の局面において、本発明は、式VIの化合物(ここで、R’、R、RおよびYは、上記に定義の通りである。)、例えば保護形態の式VIの化合物の製造方法であって、例えば保護形態の式Iの化合物(ここで、Xは、ヒドロキシであり、R、RおよびYは、上記に定義の通りである。)を、有機溶媒中、塩基および所望により縮合剤、例えばスクシンイミド、例えばN−ヒドロキシスクシンイミドの存在下で、アリール−クロロ−チオノホルメートまたは反応形のアリールチオノカルバメート、
例えば式
【化10】


のアリール−クロロ−チオノホルメート(ここで、Halはハロゲン、例えばブロモ、クロロであり、ARYLは上記に定義の通りである。)で、または式
【化11】


のアリールチオノカルバメート化合物(ここで、ARYL’は両方とも、それぞれ独立して、ARYLに定義のアリールヘテロシクリルである。)で処理する工程、および
得られた式VIの化合物を反応混合物から単離する工程を含む方法を提供する。
【0025】
好ましい態様において、本発明は、本明細書で記載の工程A)のa)(本明細書中、A)a)方法とも称する)から工程D)の、本発明の方法を提供する。反応性基が好ましくは保護されている式Vの化合物を、出発物質として用いる。
【0026】
A)a)−本発明の反応を、下記の通りに行い得る:
反応を、有機溶媒中で行う。適当な有機溶媒には、反応条件下で不活性な溶媒、例えば炭化水素、例えば脂肪族、所望によりハロゲン化炭化水素、芳香族性もしくはシクロ脂肪族炭化水素;エーテル、アセテート、または記載の溶媒の個々の混合物が含まれる。好ましくは、溶媒は、水との接触により、有機層および水層からなる2相系を形成し得るものが選択される。
【0027】
好ましい溶媒には、炭化水素、例えば環状炭化水素、例えばシクロヘキサン、およびアセテート、例えば酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、例えば酢酸イソプロピルが含まれる。好ましくは、溶媒の混合物、例えば炭化水素およびアセテートの混合物、例えば酢酸イソプロピルおよびシクロヘキサンの混合物が用いられる。
【0028】
好ましくは保護形態の式Vの化合物の反応を行うために、有機溶媒中、トリス(トリメチルシリル)−シラン、(C6−18)アルキルメルカプタン、例えばt−ドデシルメルカプタンおよびα,α’−アゾ−イソブチロニトリルと接触させ、適当な温度で反応させる。好ましくは、有機溶媒、例えば炭化水素中、トリス(トリメチルシリル)−シランを、有機溶媒、例えば炭化水素中、式Vの化合物で処理し、(C6−18)アルキルメルカプタンを添加し、得られた混合物を適する温度、例えば(約)50℃ないし80℃の範囲の温度、より好ましくは(約)60℃ないし70℃の範囲の温度に加熱する。得られた混合物に、有機溶媒、例えばアセテート中、α,α’−アゾ−イソブチロニトリルを、例えば少しずつ添加し、得られた混合物を、出発物質が予め決定した濃度範囲(HPLCコントロール)になるまで(約1ないし3時間)反応する。所望により、例えば環系の28位のヒドロキシ基、および適用可能なとき、40位のヒドロキシ基がトリオルガノシリルにより保護される、式Vの保護化合物(ここで、XはHであり、R、RおよびYは、上記に定義の通りである。)を得る。
【0029】
保護基の除去を下記の通りに行い得る:
得られた混合物を、−10℃以下の温度、例えば(約)−30℃ないし0℃、例えば(約)−20℃ないし−10℃の温度範囲に冷却し、予め冷却した極性の有機溶媒を添加する。極性の有機溶媒には、例えばアルコール、例えばメタノールが含まれる。得られた混合物を、−10℃ないし−20℃の温度で、出発物質が予め決定した濃度範囲になるまで(例えば(約)0.25から2時間)撹拌する。式Iの化合物(ここで、R、RおよびYは、上記に定義の通りである。)、例えば式Iの化合物を非保護形態で得る。
【0030】
反応混合物の後処理を下記の通りに行い得る:
得られた混合物に塩基を添加し、混合物のpHを約7にする。塩基には、無機塩基、例えばナトリウム塩またはカリウム塩、好ましくは炭酸水素ナトリウムまたはカリウムが含まれる。該塩基を、例えば、温度が−20℃ないし−10℃の温度範囲を超えない態様で、好ましくは溶液中、好ましくは水性溶液中に添加する。得られた混合物に、例えば式Iの保護化合物を得るための反応について上記のような、水との接触により、有機層および水層からなる2相系を形成し得る有機溶媒、および水を添加する。かかる有機溶媒は、好ましくはアセテートである。得られた混合物を撹拌し、得られた相を分離する。要すれば、水相をさらに有機溶媒で抽出し、得られた有機層を合わせる。該有機層から、溶媒を減圧下で蒸発させる。式Iの化合物(ここで、R、RおよびYは、上記に定義の通りである。)、例えば式Iの化合物を、例えば油状形態で得る。
【0031】
他の好ましい態様において、本発明は、本明細書で記載の工程A)のb)(本明細書中、A)b)方法とも称する)から工程D)の、本発明の方法を提供する。反応性基が好ましくは保護されている式VIの化合物を、出発物質として用いる。
【0032】
A)b)−本発明の反応を、下記の通りに行い得る:
反応を有機溶媒中で行う。適当な有機溶媒には、上記の反応A)a)に記載の溶媒、例えば芳香族性炭化水素、例えばトルエンが含まれる。
【0033】
好ましくは保護形態の、式VIの化合物の反応を行うために、有機溶媒中、トリス(トリメチルシリル)−シラン、(C6−18)アルキルメルカプタン、例えばt−ドデシルメルカプタンおよびα,α’−アゾ−イソブチロニトリルと接触させ、適当な温度で反応させる。
【0034】
好ましくは、有機溶媒の混合物中、式VIの化合物を(C6−18)アルキルメルカプタンと共に、例えば(約)80℃ないし110℃、例えば(約)95℃ないし105℃の温度範囲まで加熱し、有機溶媒中、トリス(トリメチルシリル)−シランおよびα,α’−アゾ−イソブチロニトリルを添加し、得られた混合物を、出発物質が予め決定した濃度範囲(HPLCコントロール)になるまで(約1時間まで)反応させる。所望により、例えば環系の28位のヒドロキシ基、および適用可能なとき、40位のヒドロキシ基がトリオルガノシリル、例えばトリエチルシリルにより保護される、式VIの保護化合物(ここで、XはHであり、R、RおよびYは上記に定義の通りである。)を得る。
【0035】
保護基の除去をWO9641807に記載の通りに行い得る。式Iの化合物(ここで、R、RおよびYは、上記に定義の通りである。)を非保護形態で得る。
【0036】
反応混合物の後処理を、好ましい溶媒として、芳香族性炭化水素、例えばトルエンを用いて、A)a)方法に記載の通りに行い得る。
式Iの化合物(ここで、R、RおよびYは、上記に定義の通りである。)を、例えば油性形態で得る。
【0037】
方法A)a)または方法A)b)のいずれかにより得られた式Iの化合物を、適当な方法により、例えばクロマトグラフィー、例えばカラムクロマトグラフィーによりさらに精製し得る。
【0038】
クロマトグラフィーを、移動相として適当な溶媒混合物、例えばアセテートと炭化水素の混合物、例えば酢酸エチルとn−ヘキサンの混合物、例えば酢酸エチル:n−ヘキサンの2:1混合物を用いて、シリカゲル60のカラムクロマトグラフィーにより行い得る。式Iの化合物を、式Iの化合物を含む画分に貧溶媒(anti-solvent)を添加することにより、固体形態で得ることができる。
【0039】
さらに、式Iの化合物はまた、例えば、クロマトグラフィーにより得られた式Iの化合物を含む画分にn−ヘプタンを添加することにより、結晶形態で得られ得ることが見出された。
【0040】
本発明によれば、驚くことに、式Iの化合物はまた、有機溶媒との溶媒和物の形態で、例えばアセトン、プロピレングリコール、または水のそれぞれが、溶媒結晶化混合物(solvent crystallization mixture)中に存在するとき、アセトン溶媒和物もしくはプロピレングリコールとの溶媒和物、または水との溶媒和物、例えば水和物、例えばモノ水和物の形態で得られ得ることがさらに見出された。
【0041】
アセトンが結晶化溶媒混合物中に存在するとき、得られた式Iの化合物の結晶形は、本明細書中、形態A(アセトン溶媒和物)と記載され、水が結晶化溶媒混合物中に存在するとき、得られた式Iの化合物の水和物の結晶形は、形態Bと記載される。さらに、水およびメタノールが結晶化溶媒混合物中に存在するとき、形態2と示される式Iの化合物の他のモノ水和物形態が得られ得ることが見出された。形態2の加熱により、無水形態2’に可逆的に変換する。
【0042】
アルコール、例えばメタノールまたはエタノールが結晶化溶媒混合物中に存在し、水を貧溶媒として用いるとき、形態Bが得られ得ることが見出された。アセトンが結晶化溶媒混合物中に存在し、有機貧溶媒、例えば炭化水素、例えばヘキサンが結晶化溶媒混合物中に存在するとき、形態Aが得られ得ることが見出された。また、形態Aおよび形態Bの両方の修飾形態から、加熱により無水形態1A’が得られ得ることも見出された。
【0043】
他の局面において、本発明は、溶媒和物形態の、
例えば有機溶媒との溶媒和物、例えばアセトン溶媒和物またはプロピレングリコール溶媒和物の形態の、
例えば水との溶媒和物、例えば水和物、例えばモノ水和物の形態の、
結晶形態の式Iの化合物を提供する。
【0044】
本発明の結晶化合物のX線粉末回折図形を、
図1 (アセトン溶媒和物)
図2 (プロピレングリコール溶媒和物)
図3 (水和物、形態1)
図4 (水和物、形態2)
に示す。
図1から4において、x軸は回折角を示し、y軸は測定強度を示す。波長:1.54060。
【0045】
下記の実施例において、全ての温度は℃である。
32−デオキソラパマイシンは、式Iの化合物である。
化合物28,40−O−ビス(トリエチルシリル)−32−ヨード−ラパマイシンは、式
【化12】

で示される化合物である。
化合物28,40−O−ビス(トリエチルシリル)−32−ヒドロキシ−ラパマイシンは、式
【化13】


で示される化合物である。
TESは、トリエチルシリル基である。
【実施例】
【0046】
実施例1
結晶形態の32−デオキソ−ラパマイシン
A)28,40−O−ビス−(トリエチルシリル)−32−デオキソ−ラパマイシン
アルゴン下で、5gのシクロヘキサン中1.74gのトリス(トリメチルシリル)シランの混合物に、70.6gのシクロヘキサン中8.5gの28,40−ビス−O−(トリエチルシリル)−32−ヨード−ラパマイシンおよび14.44gのt−ドデシルメルカプタンの溶液を添加し、得られた混合物を約65℃の温度に加熱する。得られた混合物に、7.4gの酢酸イソプロピル中0.1135gのα,α’−アゾ−イソブチロニトリル(AIBN)を少しずつ添加し、その間、温度を約65℃に維持する。28,40−O−ビス(トリエチルシリル)−32−デオキソ−ラパマイシンを得る。
【0047】
B)32−デオキソ−ラパマイシン
工程Aで得られた混合物を−20℃以下に冷却し、予め−20℃に冷却した90gのメタノールに注ぎ、その間、温度が約−15℃を超えないようにする。得られた混合物を約1時間撹拌し、44.4gの飽和NaHCO水溶液で処理し、その間、温度が約−15℃を超えないようにする。得られた混合物を約15分間撹拌し、68gの酢酸イソプロピルおよび84.5gの水で処理する。得られた混合物を激しく撹拌し、室温まで温める。層を分離し、水層を酢酸イソプロピルで抽出し、合わせた有機層を水で洗浄する。有機層から、酢酸イソプロピルを減圧下で蒸留する。油状物を得て、それを116gのn−ヘプタンで処理する。32−デオキソラパマイシンが沈殿し、湿式形態の4.28gの固形32−デオキソラパマイシンをろ過により取り出し、濾液からさらに湿式形態の0.435gの32−デオキソラパマイシンを得る。全体で、3.080gの32−デオキソラパマイシンを含む湿式形態の4.715gの32−デオキソラパマイシンを得る。
【0048】
C)32−デオキソラパマイシンの精製
118gのシリカゲルで充填したカラムを、酢酸エチル:ヘキサン=2:1の混合物中に溶解した、工程B)に記載の方法により得られた3.98gの32−デオキソラパマイシンで処理する。32−デオキソラパマイシンを含む画分を集め、溶媒を蒸発させ、約10mlの容量にする。
【0049】
D)32−デオキソラパマイシンの結晶化
工程C)で得られた蒸発残渣に、約7mlの酢酸エチルを添加し、得られた混合物に約20mlのn−ヘプタンを滴下する。得られた混合物に予め調製した32−デオキソラパマイシンの結晶を種晶添加し、得られた混合物を約0℃ないし5℃に冷却し、約1時間撹拌する。結晶化した32−デオキソラパマイシンを濾過により単離し、乾燥させる。収量:1.69g(理論上約74%);98%以上の純度。DSC中M.p.:127℃(温セット)。結晶のXRD分析は、得られた32−デオキソラパマイシンが、水和物形態1であることを示す。得られた濾液から、さらに結晶化した32−デオキソラパマイシンが得られる。
【0050】
適当な量の出発物質を用いて、工程A)からD)に記載の方法により、数kgの水和物形態1中32−デオキソラパマイシン結晶を、パイロットプラントで得る。
【0051】
E)アセトン溶媒和物の形態の32−デオキソラパマイシンの結晶化
アセトンの添加下で、ジエチルエーテルおよびヘキサン画分を冷却して沈殿させるか、またはアセトンからの結晶化により得る。
F)プロピレングリコール溶媒和物の形態の32−デオキソラパマイシンの結晶化
プロピレングリコールの添加下で、ジエチルエーテルおよびヘキサン画分を冷却し沈殿させるか、またはプロピレングリコールからの結晶化により得る。
G)モノ水和物の形態の32−デオキソラパマイシンの結晶化
水を含む溶媒、例えばメタノールから得る(形態2)。高湿度条件下でアセトン溶媒和物の貯蔵後にも得られる。形態1は、メタノール以外の水を含む溶媒から得られ得る。
【0052】
実施例2
32−デオキソラパマイシンの製造

【化14】


[式中、REXは、式
【化15】


の基である。]
で示される化合物1gを、10mlのドデシルメルカプタンおよび10mlのトルエンの混合物中に溶解する。得られた混合物を100℃に加熱し、0.407gのトリス(トリメチルシリル)シランを100℃で添加し、次いで、1mlのトルエン中0.0262gのAIBNの溶液を同じ温度で添加する。得られた混合物を100℃で約15分間撹拌し、5−10℃に冷却する。混合物に20mlの予め冷却したメタノールをゆっくり添加し、添加の間、温度を−10ないし−20℃の温度に維持する。得られた混合物に、25mlのトルエンを添加し、得られた混合物を室温まで温める。得られた混合物を、飽和NaHCO水溶液および水を用いて抽出する。得られた水相をトルエンで抽出し、有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を蒸発させる。粗28,40−O−ビス(トリエチルシリル)−32−デオキソラパマイシンを、黄色がかった溶液の形態で得る。得られた溶液を、ヘキサンから始め、その後ヘキサン:t−ブチル−メチルエーテル=3:1を用いてシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーを行う。0.573gの28,40−O−ビス(トリエチルシリル)−32−デオキソラパマイシンを高純度(約98%)の白色泡状形態で得る。故に、得られた28,40−O−ビス(トリエチルシリル)−32−デオキソラパマイシンを、2Nの硫酸メタノール水溶液で処理する(WO9641807に記載の方法に従う。)。32−デオキソラパマイシンを、高純度で得る。
【0053】
出発物質の製造
実施例A
式IEXの化合物(ここで、REXは、式
【化16】


の基である。)の製造
【0054】
40mlのCHCl中、4.0gの28,40−O−ビス(トリエチルシリル)−32−ヒドロキシ−ラパマイシンを、2.75gのピリジンおよび43mgの4−ジメチルアミノ−ピリジンで室温にて処理する。得られた混合物に、1.275gのフェニル−クロロチオノホルメートを添加し、得られた混合物を室温で7時間撹拌する。得られた混合物を、シリカゲルのクロマトグラフィー(メチル−t−ブチルエーテルで抽出)を行う。式IEXの化合物(ここで、REXは、式IIEXの基である。)を、白色泡状形態で得る。MS(エレクトロスプレーネガティブモード):1324.8(M+HCOO)、1278.9(M−H)H−NMRは、推定構造を確認する。
【0055】
実施例B
式IEXの化合物(ここで、REXは、式
【化17】


の基である。)の製造
【0056】
45mlのCHCl中、5.0gの28,40−O−ビス(トリエチルシリル)−32−ヒドロキシ−ラパマイシンを、0.052gのN−ヒドロキシ−スクシンイミドおよび1.04gのピリジンと処理する。得られた混合物に、温度が30℃を超えないように、1.70gの4−フルオロフェニル−クロロチオノホルメートを滴下する。得られた混合物を室温で3.5時間撹拌し、80mlのジクロロメタンに注ぎ、得られた混合物を水で抽出する。得られた有機層を飽和NaHCO水溶液およびHOで洗浄し、乾燥させ、溶媒を蒸発させ、CHCl中濃縮した溶液を得る(約40ml)。得られた溶液に、60mlのt−ブチル−メチルエーテルを添加し、溶媒を蒸発させ、最終容量を約25mlとする。沈殿が起こる。得られた懸濁液を0−5℃に45分間冷却し、沈殿を濾過により取り出す。得られた濾液を蒸発により濃縮し、濃縮残渣をシリカゲルのクロマトグラフィーを行う。式IEXの化合物(ここで、REXは、式IIIEXの基である。)を泡状形態で得る。MS(FAB):1304(M+Li)。IR(KBr):3420 broad、2956、2936、2876、1746、1627、1504、1458、1376、1294、1242、1191、1145、1107、1007、988、742cm−1。NMRスペクトルは、推定構造を確認する。
【0057】
実施例C
式IEXの化合物(ここで、REXは式IVEXの基である。)の製造
500mlのトルエン中、50gの28,40−O−ビス(トリエチルシリル)−32−ヒドロキシ−ラパマイシンを、11.7gの1,1−チオカルボニル−ジイミダゾールおよび533.6mgの4−ジメチルアミノ−ピリジンで処理し、得られた溶液を40℃に温め、この温度で20時間撹拌する。得られた混合物に、さらに0.778gの1,1−チオカルボニル−ジイミダゾールを添加し、得られた混合物を40℃で2時間撹拌する。得られた混合物を0℃に冷却し、飽和NaHCO水溶液で処理する。得られた層を分離し、有機層を飽和NaHCO水溶液で抽出し、そしてHOで抽出する。得られた有機層を、溶離剤として初めにトルエン、次いでt−ブチル−メチルエーテル/ヘキサンの1:1混合物を用いて、シリカゲルのクロマトグラフィーを行う。溶媒を蒸発させ、46.1gの式IEXの化合物(ここで、REXは式IVEXの基である。)を泡状形態で得る。MS(エレクトロスプレーポジティブモード):1254.8(M+H)、1222.8(M−OCH。IR(KBr):3428 broad、3133、2936、2876、2824、1746、1730、1650、1626、1532、1460、1415、1387、1326、1285、1232、1192、1167、1142、1107、1075、1005、988、890、867、824、742、656、642、613および560cm−1。製造物のNMRスペクトルは、推定構造を確認する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の結晶化合物(アセトン溶媒和物)のX線粉末回折図形
【図2】本発明の結晶化合物(プロピレングリコール溶媒和物)のX線粉末回折図形
【図3】本発明の結晶化合物(水和物、形態1)のX線粉末回折図形
【図4】本発明の結晶化合物(水和物、形態2)のX線粉末回折図形

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】


[式中、
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ベンジル、アルコキシベンジルまたはクロロベンジルであり、
は、式
【化2】


または式
【化3】


{式中、
は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、ヒドロキシアリールアルキル、ヒドロキシアリール、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、ヒドロキシアルキルアリールアルキル、ジヒドロキシアルキルアリールアルキル、アルコキシアルキル、アルキルカルボニルオキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、アルコキシカルボニルアミノアルキル、アルキルカルボニルアミノアルキル、アリールスルホンアミドアルキル、アリル、ジヒドロキシアルキルアリル、ジオキソラニルアリル、カルバルコキシアルキルおよびアルキルシリルから選択され;
は、H、メチルであるか、またはRと一体となってC2−6アルキレンを形成し;
は、
O−CH−(式中、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヒドロキシアルキルカルボニル、アミノアルキルカルボニル、ホルミル、アリールアルキル、ヒドロキシアリールアルキル、ヒドロキシアリール、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、ヒドロキシアルキルアリールアルキル、ジヒドロキシアルキルアリールアルキル、アルコキシアルキル、アルキルカルボニルオキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、アルコキシカルボニルアミノアルキル、アルキルカルボニルアミノアルキル、アリールスルホンアミドアルキル、アリル、ジヒドロキシアルキルアリル、ジオキソラニルアリルおよびカルバルコキシアルキルから選択される。)、
CO−(式中、Rは、H、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノまたはN,N−二置換−アミノから選択され、ここで、該置換基は、アルキル、アリールまたはアリールアルキルから選択される。)、
NCH−(式中、Rは、アルキル、アリール、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヒドロキシ、アルコキシまたはアリールスルホニルアミノである。)、
−O−CH−O−、または置換ジオキシメチレンである。}
であり;
Yは、O、(H,OH)、および(H,OR
{式中、Rは、C1−4アルキル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヒドロキシアルキルカルボニル、アミノアルキルカルボニル、ホルミルまたはアリールから選択される。}
から選択され、そして
XはHである。]
で示される化合物の製造方法であって、
A)a)式
【化4】


[式中、R、RおよびYは、上記に定義の通りであり、存在する反応性基は非保護または保護形態、好ましくは保護形態である。]
で示される化合物を、有機溶媒中、トリス(トリメチルシリル)−シラン、(C6−18)アルキルメルカプタン、例えばt−ドデシルメルカプタンおよびα,α’−アゾ−イソブチロニトリルで処理するか、または
b)式
【化5】


[式中、R、RおよびYは、上記に定義の通りであり、R’は、アリールチオノカルボネートまたはアリールチオノカルバメート残基(アリールチオノカルボネートまたはアリールチオノカルバメートは、−O−基を介して環構造の32位のC原子に結合している。)であり、存在する反応性基は非保護または保護形態、好ましくは保護形態である。]
で示される化合物を、有機溶媒中、トリス(トリメチルシリル)−シランおよびα,α’−アゾ−イソブチロニトリルと処理する工程、
B)保護基が存在するとき、これを除去する工程、
C)式Iの化合物(ここで、R、RおよびYは、上記に定義の通りである。)を単離する工程、および
D)所望により、得られた式Iの化合物を別の式Iの化合物に変換する、例えば式Iの化合物(ここで、Rはアルキルである。)を別の式Iの化合物(ここで、Rは、上記に定義の通りであるが、アルキル以外である。)に変換する工程
を含む、方法。
【請求項2】
工程A)a)、所望によりB)、C)および所望によりD)を用いる、請求項1記載の式Iの化合物の製造方法。
【請求項3】
式Vの化合物が保護形態である、請求項1または2のいずれか一項記載の方法。
【請求項4】
工程A)b)、所望によりB)、C)および所望によりD)を用いる、請求項1記載の式Iの化合物の製造方法。
【請求項5】
式VIの化合物が保護形態である、請求項1または3のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
式Iの化合物が、16−O−ペント−2−イニル−32−デオキソ−ラパマイシン;16−O−ペント−2−イニル−32−デオキソ−40−O−(2−ヒドロキシ−エチル)−ラパマイシン、および32−デオキソ−ラパマイシンからなる群から選択される、請求項1ないし4のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
式Iの化合物が32−デオキソ−ラパマイシンである、請求項6記載の方法。
【請求項8】

【化6】


[式中、R、RおよびYは、請求項1ないし7のいずれか一項に定義の通りであり、
R’は、アリールチオノカルボネートまたはアリールチオノカルバメート残基(アリールチオノカルボネートまたはアリールチオノカルバメートは、−O−原子を介して環構造の32位のC原子に結合している。)である。]
で示される化合物、例えば保護形態の式VIの化合物の製造方法であって、
有機溶媒中、塩基の存在下、および所望により、スクシンイミド、例えばN−ヒドロキシスクシンイミド、または4−ジメチルアミノピリジンのような縮合剤の存在下で、
例えば保護形態の式Iの化合物(式中、Xは、ヒドロキシであり、R、RおよびYは、請求項1ないし7のいずれか一項に定義の通りである。)を、アリールチオノカルボネート、または活性形のアリールチオノカルバメート、例えば式
【化7】

{式中、Halは、ハロゲンであり、例えばブロモ、クロロであり、
ARYLは、C6−18アリールオキシであるか、またはARYLは、N、O、Sから選択される1ないし4個のヘテロ原子を含む、5員または6員のアリール(arylic)ヘテロシクリルである。ただし、ヘテロシクリルは、少なくとも1個のNを含み、該ヘテロシクリルは、ヘテロ環式窒素原子を介して式VIIの化合物のC=S基に結合する。}
で示されるアリールチオノカルボネートまたはアリールチオノカルバメート、または

【化8】


{式中、ARYL’は、それぞれ独立して、ARYLで定義されるアリールヘテロシクリルである。}
で示されるアリールチオノカルバメート化合物で処理する工程、および
反応混合物から得られた式VIの化合物を単離する工程を含む、方法。
【請求項9】
溶媒和物形態の結晶形態の32−デオキソラパマイシン。
【請求項10】
有機溶媒との溶媒和物形態である、請求項9記載の32−デオキソラパマイシン。
【請求項11】
アセトン溶媒和物の形態の、請求項9または10のいずれか一項記載の32−デオキソラパマイシン。
【請求項12】
プロピレングリコール溶媒和物の形態の、請求項9または10のいずれか一項記載の32−デオキソラパマイシン。
【請求項13】
水和物の形態の、請求項9記載の32−デオキソラパマイシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−523836(P2009−523836A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551707(P2008−551707)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【国際出願番号】PCT/EP2007/000514
【国際公開番号】WO2007/085400
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】