説明

ラピッドプロトタイプ生成プロセス用の粒子コーティング方法

本発明は接着剤を含むコーティング材料の製造、特に3D結合剤プリントによる適切な粒子の製造のための、プラスチック、金属、及び/又はセラミックの粉末材料の粒子をコーティングする方法に関する。前記コーティングは気相内でコーティング溶液を用いて流動粒子に適用され、少なくとも該粒子及び/又はコーティングされた粒子はイオン化した粒子にさらされている。3D結合剤プリントプロセスにより有機結合液から部材又は焼結体を製造する方法、及びその利用もまた開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラピッドプロトタイプ生成プロセス、特に3D結合剤プリント用の接着剤を用いた粉末材料のコーティング方法、及びラピッドプロトタイプ生成プロセスを用いてコーティングされた粉末材料からの部材の製造、ならびに鋳造技術と精密機械工業におけるその好適な利用に関する。
【背景技術】
【0002】
最新かつ特に興味深い粉末ベースラピッドプロトタイプ(RP)生成プロセスとしては3D結合剤プリントプロセスが挙げられる。
【0003】
3D結合剤プリンティングの最初の改良においては、粒子又は顆粒の層が基面の上へ放出され、生成される対象の層にそれぞれ相当する所定の領域において結合液で湿らされる。粒子はその湿った領域内で結合液により湿らされ接着結合される。その後に続く結合液中の溶剤の蒸発は、粒子が少なくともそれらの縁領域で共に溶けながら互いに直接接着するという効果を有する。特にこのタイプに関連する3D結合剤プリンティング方法は、例えば特許文献1、特許文献2及び特許文献3から公知である。
【0004】
更なるこの方法の改良において、湿った領域が乾いたとき、そのあとに粒子がその後の焼結処理において固体の塊として焼結されることを可能にする焼結補助剤を残す、焼結補助剤を含有する結合液が使用される。硬い小型の焼結体はこのような方法で得られる。
【0005】
特許文献4は、粒子、充てん剤、及び接着剤からなる混合物が用いられる、更なる3D結合剤プリントプロセスの改良を開示している。結合液は実質的に混合物内に含まれる接着剤用の溶剤のみによって形成される。接着剤もまたこの場合、粒子のコーティング形態であってもよい。この点において、粉末コーティングとしての水溶性ポリマー及び水性の結合液が知られている。
【0006】
更なるラピッドプロトタイプ(RP)生成プロセスは、製造される粒子が層の中で光又はレーザ誘起焼結(以下レーザ焼結)を用いて凝固するようにしている。このため、その層は所定の領域において、また適切な場合はマスクを通しての露光、あるいはレーザ放射により、粒子が融合可能か又は互いに焼結可能な範囲まで加熱される。
【0007】
公知の結合剤プリンティングプロセスは、仕上げられた部材が当初結合液で湿潤された領域と比較して顕著な収縮を示すという不利な点を有する。結合剤のプリンティングにおいて粒子は、毛管力及び表面張力の影響でそれらが湿った場合に、とりわけ、存在する可能性のある接着剤が結合液によって溶解されるときには、互いにより接近する。顕著な収縮が既にグリーン・コンパクト(しら地体,未焼結体)の形成中、又は形成するための乾燥の後に発生する。またレーザ誘起焼結の場合にも硬化した領域における収縮が生じる。
【0008】
公知の接着剤又は粘着剤コーティングは親水性で、従って周囲、特に大気中の湿気から水分を吸収するという不都合を有する。これは一般的に粒子の好ましくない凝集をもたらす。3D結合剤プリンティングの場合、プリンティングの間中にもさらに、多量の結合液が吸収される。これは像の明瞭性と保存安定性、及び粉末の取り扱いに対してマイナスの影響を及ぼす。凝集体は部材内にそれらから形成された不均一な粉末層、及び欠陥をもたらす。一定品質の均質な部材の製造のためには、粉末の流動性もまた非常に重要である。
【0009】
【特許文献1】欧州特許第0 644 809号明細書
【特許文献2】欧州特許第0 686 067号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1 099 534号明細書
【特許文献4】欧州特許第0 925 169号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って本発明の目的は、一次粒子の凝集を防ぎ、そして改善された保存安定性、取り扱い性、及び像の明瞭性をもたらす、RP生成方法、特に3D結合剤プリンティングに適した粉末材料のコーティング方法を提供し、また収縮の少ない部材又は焼結体の製造のための3D結合剤プリンティング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的は、本発明の請求項1〜9による粉末粒子のコーティング方法、及び本発明の請求項10〜13によるコーティングされた粒子の利用によって達成される。
【0012】
本発明の好適な改良形態は従属請求項に記載された主題である。
【0013】
本発明の好適な実施形態は図に基づいてより詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の第一の態様は粉末材料のコーティングを施すための方法に関する。粉末材料という用語は、プラスチック、金属、又はセラミックの個々の粒子あるいは一次粒子と、特に結合相を含有する可能性のある凝集体又は顆粒の両方を含んでいるものとする。
【0015】
コーティングはこの場合実質的に接着剤により形成され、また適切な場合には、更なる活性物質により形成される。
【0016】
本発明による適切な接着剤としては、有機溶剤に溶けるポリマーが含まれる。
【0017】
特に適切なポリマーとしては、ポリ(メチル)アクリレート、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ワックス又はフェノール樹脂がある。特に好適な接着剤としては、ポリビニルピロリドン又はポリビニルブチラールがある。
【0018】
粉末材料として適切な金属は、特にAl、Ti、Nb、Cr、Fe、Co、Ni、W、Mo、Zn、Cu、Ag、Au、Sn、Pt、及び/又はIrの群の元素からの金属、合金及び金属間相を含む。
【0019】
粉末材料として適切なセラミックは、特にB、Al、Si、Al、Ti、Zr、Mg、及び/又はCaの群の少なくとも1つの元素からの酸化物、炭化物、及び/又は窒化物を含む。
【0020】
本発明によれば、粉末材料のコーティングは、気相から、特に気相から溶剤中に液体の形で溶解又は懸濁されたコーティング材料を塗布することにより行われる。コーティング材料が流動の形態で塗布された場合は、好ましくは溶剤の蒸発がまだ該プロセスの同じ段階にある間に起きるとよい。コーティング材料又はコーティング溶液は、それに相応して接着剤を溶解された又はコロイド状の形態で含有する。
【0021】
気相から液体のコーティング材料を塗布するために適した方法は、特に流動床反応器又はスプレー乾燥機におけるコーティングを含む。
【0022】
流動床反応器の場合(図1)、粉末材料(7)は反応器(6)の中へ下方又は上方から送り込まれ、下方から来る空気の流れ(5)により懸濁液内、又は気相内に保持される。コーティングの際の脱出は多孔性の膜(4)により妨げられる。コーティング溶液は反応器の中へ噴霧ノズル(1)を用いて導入され、溶滴(8)から霧へと噴霧化される。接着剤の供給は、溶液又はコロイド状の溶液をコーティング溶液の成分として、吹き付け又は注入により行われることが好ましい。更なる、特に固体のコーティングの活性物質の供給もまた、適切な懸濁液又はコロイド状の溶液の吹き付け、或いは注入により行われることが好ましい。しかしながら、同様に固体の活性物質もまた粉末材料と同じ方法で計量して加えられてもよい。
【0023】
流動粉末材料(7)の粒子、及びまた適切な場合には、追加された固体の活性物質は、溶滴により個々に湿潤される。例えば余熱された空気の流れ、反応器(6)の壁内部の加熱装置、又は放射暖房器により適切な量の熱を供給することによって、コーティング溶液の溶剤は蒸発させられ、コーティングは粒子上へ凝固させられる。
【0024】
コーティングされた粒子の分離は公知の方法で行われる。これはコーティング中に連続的に、或いはバッチ形式で不連続に行われてもよい。流動床方法は一次粒子から顆粒を形成するために優先的に用いられる。
【0025】
スプレー乾燥機(図2)の場合、粉末材料は通常溶解された接着剤とともに懸濁液としてスプレー乾燥機内へ注入されるか、又は噴霧ノズル(10)を用いて噴霧化される。ガスは上方から供給ライン(15)を通って供給され、そして乾燥後、排出ライン(13)を通ってスプレー乾燥機から退出する。スプレー乾燥機(11)の壁は粉末材料(7)又はコーティングされた粒子を乾燥させるために加熱される。固体活性物質がコーティング溶液の成分として、又は別の供給媒体を通じて追加して供給されてもよい。コーティングされた粉末は分離装置(14)の中で分離される。この分離装置は好ましくはサイクロン・セパレータとして構成され、その結果ガスは主にセパレータ(14)内に排出され、もはや排出ライン(13)内には排出しない。
【0026】
粉末粒子同士又はコーティングされた粒子同士の摩擦によって、必然的に帯電が生じる。これは金属粒子についても同様に、それらが非導電性の接着剤でコーティングされると同時に生じることになる。この帯電は材料同士の摩擦により不可避的に生じ、一次粒子及び/又はコーティングされた粒子の好ましくない凝集をもたらす。
【0027】
従って本発明において、イオン化した粒子によって粉末材料及び/又はコーティングされた粉末材料(以下、まとめて粒子とも呼ばれる)の帯電を減少させることが企図される。このために、粒子、又は粒子が流動体の形でその中に存在する気体空間はイオン化した粒子の流れにさらされる。
【0028】
これは例えばイオン化した空気の定量供給により行われてもよい。図1において概略的に表わされているのは、空気供給管(3)の空気をイオン化するイオン化装置(2)である。空気供給管(2)の端部のイオン化ノズルは、この場合数mmから数cmの範囲の送風断面を有することが好ましい。空気はわずかな正圧で吹き込まれる。
【0029】
本発明の更なる改良形態において、周囲の空気中にイオンを発生する放電極は、コーティング装置内に備えられてもよい。このイオン化装置の好適な実施形態は、乾燥機の2つの対向する壁に取り付けられた電極、又は環状電極であり、それによって広い面領域と均一のイオン化を生じることが可能である。
【0030】
スプレー乾燥機の可能な配置として、図2にその構成が示されている。放電極はスプレー乾燥機(11)の中へ全周にわたり突き出ている環状電極(12)として形成され、該電極はAC電圧で動作する。
【0031】
本発明の更なる改良形態において、電界を発生するコンデンサ板が壁の部分として構成される。電界は一定に保たれる必要はなく、むしろ交流電界として形成されてもよい。
【0032】
放電極又はコンデンサ板の電位は10kV〜−10kVの範囲にあることが好ましい。
【0033】
本発明の更なる好適な改良形態においては、乾燥した空気がコーティング装置内へもっぱら供給される。該空気の相対湿度はコーティング装置のプロセス温度に基づき、7%未満となる。その結果、コーティングされた粒子の、水によって生じる凝集体の塊は大幅に減少する。親水性の低い有機又は有機金属の高分子化合物が接着剤として好まれるが、これらもまた一般に水分中での残存の溶解度を有する。空気の過剰な湿度はコーティングプロセス中に水分吸収が生じる影響を有し、特にコーティングの溶剤がまだ完全に蒸発していない場合に、粘着性のある表面をもたらすこととなる。
【0034】
乾燥した空気の使用は、コーティングから水分が蒸発した後でもまだ空気の湿度が低いため、更にコーティング溶液及び/又は固体の活性物質の懸濁液のために水性の溶剤を使用することを可能にする。
【0035】
更なる好適な実施形態においては、空気でなく例えば窒素又はアルゴンなどの不活性ガスがプロセス・ガスとして用いられる。これは工業的に利用できる不活性ガスがすでに非常に低い含水量を有し、そしてコーティング装置において可燃性又は爆発性のガス混合物は生じ得ないという利点をもつ。これは特にイオン化装置に関連して配慮されるべきことである。
【0036】
コーティング装置内の粉末材料の滞留時間によって、粉末粒子は個々にコーティングされることができ、又は結合相としてのコーティング材料を用いて顆粒へと形成されることができる。適用されるコーティング材料の層の厚さは、例えばスプレーされる溶液中の濃度、コーティング装置内の滞留時間及び温度により設定することが可能である。
【0037】
この方法はコーティングされた一次粒子及びコーティングされた顆粒の双方の製造を可能にする。特に、粉末材料及び固体の活性物質の粒子からのコーティング材料で接合された顆粒を得ることもまた可能である。
【0038】
本発明の更なる態様はコーティング材料自体に関する。本発明の第一の改良形態においては、粉末材料の隣接する粒子が互いに粘着的に接合されることができるように、コーティング材料は接着剤として、少なくとも部分的に可溶化されうる接着剤を含むか、又は適切な結合液により膨潤させられる。これらの粒子は3D結合剤プリンティングにおいて優先的に使用される。本発明に従った適切な接着剤は、特に親水性の低い有機又は有機金属の高分子化合物を含む。それらは例えばアルコール、ケトン、またはポリエーテルなどの、有機溶剤に溶け、水に溶けにくい極性基を含んだポリマーであることが好ましい。特に所望の溶解度の設定に関して、ポリマーの混合物の使用は有利な可能性がある。本発明に従った適切なポリマーは、とりわけポリ(メチル)アクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、又はポリビニルピロリドンを含む。本発明の特に好適な実施形態では、ポリビニルブチラール又はその混合物が接着剤として用いられる。
【0039】
本発明による適切な接着剤の溶剤は、実質的に有機溶剤又はそれらの混合物から形成される。これらはその混合物が望ましくは10重量%未満の含水量を有する極性溶液であることが好ましい。含水量は溶剤の2%以下であることが特に望ましい。結合液の化学成分はコーティングの高分子生成物がその中で容易に溶けるように選定される。好適な溶剤はC2〜C7アルコール、特にエチルアルコール、(イソ)プロパノール又はn−ブタノール、例えばアセトン又はエチルメチルケトン等のC3〜C8ケトン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル、又はメトキシエタノール、ジメトキシジエチレングリコールかジメトキシトリエチレングリコール等のポリエーテルを含む。
【0040】
ワックスのような接着剤を使用する場合、低分子量の脂肪族炭化水素、特に環状又は直鎖のC6〜C8脂肪族化合物が好ましい。
【0041】
有機金属ポリマーの中では、ポリカルボシラン、又はポリシラザンは特に重要である。
【0042】
更なる実施形態において、接着剤は溶融及び/又は焼結温度が好ましくは温度範囲が50〜180℃以内にある、溶融可能又は焼結可能なポリマーにより形成される。プラスチックが粉末材料として使用される場合、接着剤の溶融又は焼結温度は粉末材料の対応するそれら温度未満であることが確保されなければならない。温度の差異は少なくとも20℃なければならない。接着剤としてここで特に優先して使用されるのはPMMA又はPEなどの熱可塑性物質である。
【0043】
接着剤を含有するコーティングの厚さは、この場合粉末材料の平均直径の0.1〜10%の範囲内にあることが好ましい。典型的には、接着剤の層の厚さは50nm〜5μmである。接着剤の好適な量は、それぞれにコーティングされた粉末材料の重量の0.3〜8重量%の範囲内である。
【0044】
本発明の好適な改良形態において、粉末材料は、その結合相が主に接着剤から成る顆粒により形成される。
【0045】
本発明の更なる改良形態において、接着剤は実質的に無極性のポリマー、例えばワックスから形成される。これらの接着剤は特に金属粉末材料に適する。これらの接着剤は結合液及びレーザ焼結の両方により、活性化されることが可能である。
【0046】
本発明による好適な接着剤により、粉末材料の表面にもはや周囲、特に大気中の湿気から水分を吸収する傾向のない、不水溶性ないし疎水性の層が形成される。これはコーティングされた粒子が保存に対して極めて安定で、取り扱いに関して優れているという利点をもつ。更なる利点は結合剤プリンティングの像の明瞭性の改良にある。個々のコーティングされた粒子はもはや大気中の湿気の影響で凝集する傾向にないため、二次的な凝集体は形成されない。
【0047】
3D結合剤プリンティングプロセスにおいて放出されうる材料の層の最小厚さは、従って粉末材料の粒子の直径であり、それらから形成される可能性のある二次的な凝集体の直径ではない。
【0048】
本発明の更なる好適な改良形態においては、固体の活性物質がコーティング内に含有される。固体の活性物質は焼結可能及び/又はガラスを形成するミクロ粒子の、細粒材料により形成されることが好ましい。ここで個々の粉末の粒子または、凝集により形成されるその他の凝集体、特に非粉体結合相が散在している可能性のある顆粒を含む粉体材料と、細粒材料との間で区別がなされなければならない。細粒材料は明確に粉体材料の寸法より小さい個々の粒子を備える。細粒材料の平均粒度は、典型的には粉末材料の粒度の30%未満であり、また0.3〜5%の範囲内が好ましい。細粒材料が1ミクロン未満のサブミクロン粒子、又はナノ粒子を備えることが特に好ましい。細粒材料はこの場合、接着剤で形成されたコーティング内に部分的に存在する。コーティングから突出している粒子もまた接着剤でカバーされることが好ましい。
【0049】
本発明の更なる改良形態において、金属又はセラミックの粉末材料のコーティングは、3D結合剤プリンティング方法により形成される部材(又はグリーン・コンパクト)の、その後の熱処理における固体焼結又はガラス相の形成に適した、焼結可能及び/又はガラスを形成する細粒材料を含む。個々の粉末粒子の表面での、本発明による細粒材料の配置は、グリーン・コンパクトの熱処理における隣接した粉末粒子の間に形成されている焼結された、又はガラスのブリッジをもたらす。その結果、グリーン・コンパクトの固化が生じ、又は固形化した焼結体が形成される。ここで生じる収縮は、小さく微細な粒子に限られているため最小である。この熱処理が粉末材料のガラス形成又は焼結温度未満で実行される場合、事実上部材全体又はグリーン・コンパクトの焼結による収縮は発生しない。
【0050】
従って、粉末材料及び細粒材料は、微細な粒子が粉末材料よりも低い焼結又はガラス形成温度を有するように選ばれることが好ましい。この温度差は30℃より大きいことが好ましく、特に100℃より大きいことが好ましい。
【0051】
原則的に、同じタイプの材料についてはその大きな表面エネルギーのために、より小さい粒子はより大きい粒子よりも低い焼結温度又はガラス形成温度を有する。この影響は特にサブミクロン又はナノ範囲の、好ましい微細な粒子の場合に非常に明確になる。それゆえ、本発明に従った好ましい材料の組み合わせは、異なった、及び同一の化合物を両方含む。
【0052】
粉末材料の場合と同様に、細粒材料は、セラミック、金属、又はセラミックであってもよく、化学的に相性のよい(特に化学的に密接に関連する)材料が好ましい。通常、微細な粒子の材料はそれぞれの粉末材料に対して通例の焼結補助剤を含む。特に好ましいのは、殊に酸化セラミックの粉末材料と組み合わせたSiO、ケイ酸塩、ホウケイ酸塩又はアルミノケイ酸塩(Alumosilikate)である。本発明の特に好適な改良形態において、粉末材料は実質的にZrSiO、ZrO、及び/又はAlにより形成され、細粒材料は実質的にSiO、特にSiOのナノ粉末により形成される。
【0053】
更に好適な改良形態において、粉末材料及び細粒材料は実質的にSiCにより形成される。この場合、有機シリコンポリマー系接着剤が好ましい。
【0054】
金属粉末材料の場合、細粒材料は元素Cu、Sn、Zn、Al、Bi、Fe、及び/又はPbの金属又は合金から形成されることが好ましい。金属粉末材料に対しては、相当する金属を形成するため熱的に分解されうる金属塩も同様にまた細粒材料として適している。
【0055】
本発明の更なる態様は、発明に従ってコーティングされた粉末材料から部材を製造する方法に関する。ここで、粉末材料は初めに粉末の薄い層として放出される。結合剤プリンティング技術の通常の方法はここで使用可能である。本発明に従ってコーティングされた粉末の水分吸収性の低さは、粉末の層の均一性に関するこの方法ステップ及び粉末の取り扱いにおいて顕著な利点が生じるという効果を有する。
【0056】
本発明によるコーティングはまた、空気湿度の侵入下で開始時の粉末により、単一粒子の単層のみからなる塗布を可能にする。それどころか、わずかな層の粒子を伴う粉末の層の塗布を可能にし、従って本発明によりコーティングされた粉末材料を用いて、40μm未満の最小層厚さは開始時の粒子がたとえ15μm以下であっても可能である。
【0057】
次に続く方法ステップにおいて、粉末の層は接着剤の活性化により所定の領域内で硬化される。
【0058】
3D結合剤プリンティング方法の場合、結合液は実質的に有機溶剤又はそれらの混合物により形成される。この場合、コーティング材料のための溶剤として適切な物質が優先的に用いられる。本発明によれば、含水量は45重量%未満であり、5重量%未満であることは特に好ましい。結合液の化学成分はコーティングの高分子生成物がその中で溶解可能か、又は少なくとも膨潤可能であるように選択される。特に好適なものはエチルアルコール、(イソ)プロパノール又はn−ブタノール、アセトン又はエチルメチルケトン、又はテトラヒドロフランなどの低アルコールである。適切な場合、揮発度及び湿潤に影響する添加剤が加えられてもよい。これらは、とりわけ界面活性剤、エチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール、又は低分子量の炭酸を含む。ワックスベースの接着剤を使用する場合、環状又は直鎖のC6〜C8脂肪族化合物が特に好ましい。
【0059】
結合液は実質的に固体または不溶性の成分がないことが望ましい。その含有量は通常は5重量%を超えない。結合液中での固形物質の成分が低いか、又は全く無いことは、結合剤ノズルの信頼性及び耐久性にとって顕著な利点を与える。本発明による結合液ではプリントヘッドの摩耗及び詰まりは、もはや基本的に発生しない。
【0060】
本発明によれば、結合液の量はコーティングの中に結合された全ての接着剤を溶解するのに不十分となるように選択される。特に、使用される可能性のある顆粒の結合相も同様に溶解されない。むしろ、結合液の量は隣接した粒子の接触点又は接触範囲において溶解又は可溶化されるのにだけ十分なように計量される。これらの接触域での結合液の濃縮は毛管作用の効果により助長される。
【0061】
粉末を湿潤させるために用いられる結合液の量はコーティングされるべき粉末の体積の5〜70%の体積の範囲にあることが好ましい。結合液の量はコーティングの中にある接着剤の体積の5〜25倍であることが特に好ましい。
【0062】
次に続く蒸発は接着剤を効果的に機能させることができる。この場合、有機溶剤の使用は既知の水性結合液に比べて更に有利であることが判明している。有機溶剤のより高い蒸気圧によって、湿った場所は従来システムの場合よりも更に早く乾燥する。これは像の明瞭性とプロセスの速さにプラスの効果を有することとなる。
【0063】
粉末材料を適用し、湿潤させるこのプロセスステップは3D部材を構築するために既知の方法で繰り返される。最小の膨潤及び収縮プロセスにより、比較的大きい部材でも実質的に応力なしで製造可能となる。本発明によるコーティングされた粉末材料及び、本発明によるプロセスは線形の材料収縮を、該当するスプレーされた表面積の2%未満に減らすことを可能にする。
【0064】
本発明の更なる態様はセラミックを含有する、又は金属を含有する粉末混合物からの焼結体の製造に関する。この場合、上記の3D結合剤プリンティング方法により、及び本発明によるコーティングされた粉末粒子を用いて得られるグリーン・コンパクトがベースとされる。グリーン・コンパクトは多孔性又は高密度のセラミック、或いは金属を形成するために既知の方法で焼結されてもよい。初期において多孔質のグリーン・コンパクト又は焼結体に対する、一回又は複数回の再緻密化はここでは有利である。
【0065】
コーティングが細粒材料を含有する場合、グリーン・コンパクトは粉末材料の焼結温度又はガラス転移温度未満、及びコーティング内に含有される細粒材料の前記温度を越えた温度で焼成されることが好ましい。ここで焼結温度とは、連続的な細孔スペースの形成が生じ、個々の粒子はもはや識別不可能で、また焼結収縮が始まる、中間の焼結段階の温度を意味することを理解されたい。グリーン・コンパクトの焼成温度は粉末材料の焼結又はガラス形成温度より少なくとも30℃低いことが好ましい。その結果、焼結及び/又はガラス形成により生じる収縮は実質的に細粒材料にのみ限られる。結果として生じる体積効果は、グリーン・コンパクト又は焼結体の全体の体積に比較して最小である。従って、3D結合剤プリンティング方法における所定の寸法に対して、多くても2%の線形収縮を有する固体の焼結体を製造することが可能である。
【0066】
セラミック粉末材料を用いて得られるグリーン・コンパクト又は焼結体のための本発明は、鋳造技術及び鋳型製作に好適に適用することができる。例えば、SiOの細粒材料により結合されたAlセラミック又はZrSiOセラミックは、金属の精密鋳造における鋳型又はインサートとして適している。
【0067】
プラスチックの粉末材料を用いて得られる部材の好適な適用としては、鋳型製作のための中子の製作である。砂の適用又は凝固により、プラスチックの部材から例えば鋳造用の中空鋳型の製作が可能である。
【0068】
多孔性の金属体は例えば熱交換器又は触媒コンバータへの適用が好ましい。再焼結又は適切な再緻密化により、超小型の構成部品及び微小構成部品が幅広い種類の精密機械工業への適用のために製造されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】流動床反応器の概略断面図を示す。
【図2】スプレー乾燥機の概略図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック、金属、及び/又はセラミックの粉末材料をコーティングする方法であって、前記コーティングが結合液又はレーザ光により活性化可能な接着剤を含有する方法において、前記接着剤が溶液から粉末材料の粒子へと堆積され、コーティングされる粒子が気相中に流動する形態で存在し、少なくとも前記粒子及び/又はコーティングされた粒子がイオン化された粒子にさらされていることを特徴とする方法。
【請求項2】
少なくとも前記コーティングされた粒子と接触する前記気相が実質的に水分を含まないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接着剤に加え、更なる活性物質が前記粉末材料の表面に堆積されることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の方法。
【請求項4】
前記活性物質が平均粒径5μm未満の高分子、金属、又はセラミックのナノ粒子及び/又はミクロ粒子を含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記接着剤を結合相として含む顆粒が前記コーティングの間に形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記接着剤を含有する前記コーティングの層の厚さが40nm〜5μmの範囲内にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記コーティングの量が前記粉末材料の0.3〜8重量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記接着剤が水溶性の低い有機及び/又は有機金属ポリマーの接着剤からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記接着剤の溶液の含水量が5%未満であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
コーティングされた粒子の粉末層を、基面上へ放出するステップと、
前記粉末層の所定領域を、結合液により湿潤させるステップと
の反復連続ステップを含む、部材製造のためのコーティングされた粒子の利用であって、
前記粉末層の1つが250μm未満の厚さを有し、
前記結合液が実質的に有機溶剤で形成されて45%未満の含水量を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のコーティングされた粒子の利用。
【請求項11】
前記結合液中の不溶性成分の割合が5重量%未満であることを特徴とする請求項10に記載のコーティングされた粒子の利用。
【請求項12】
前記粉末を湿潤させるために用いられる結合液の量が、コーティングされる粉末の5〜70体積%の範囲内にあることを特徴とする請求項10に記載のコーティングされた粒子の利用。
【請求項13】
コーティングされた粒子の粉末層を、基面上へ放出するステップと、
少なくとも放出された前記粉末層の接着剤を、レーザ照射により溶融又は焼結するステップと
の反復連続ステップを含む、部材製造のためのコーティングされた粒子の利用であって、
前記レーザ光のエネルギーが実質的に前記粉末層の粉末粒子を溶融又は焼結するには不十分であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のコーティングされた粒子の利用。
【請求項14】
焼結体製造のための請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法で製造される部材の利用。
【請求項15】
鋳造技術、鋳型製作、又は工具製作における、請求項14に記載の焼結体の利用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック、金属、及び/又はセラミックの粉末材料をコーティングする方法であって、前記コーティングが結合液又はレーザ光により活性化可能な接着剤を含有する方法において、前記接着剤が溶液から粉末材料の粒子へと堆積され、コーティングされる粒子が気相中に流動形態で存在し、少なくとも前記粒子及び/又はコーティングされた粒子がイオン化された粒子にさらされていることを特徴とする方法。
【請求項2】
少なくとも前記コーティングされた粒子と接触する前記気相が実質的に水分を含まないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接着剤に加え、更なる活性物質が前記粉末材料の表面に堆積されることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の方法。
【請求項4】
前記活性物質が平均粒径5μm未満の高分子、金属、又はセラミックのナノ粒子及び/又はミクロ粒子を含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記接着剤を結合相として含む顆粒が前記コーティングの間に形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記接着剤を含有する前記コーティングの層の厚さが40nm〜5μmの範囲内にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記コーティングの量が前記粉末材料の0.3〜8重量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記接着剤が水溶性の低い有機及び/又は有機金属ポリマーの接着剤からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記接着剤の溶液の含水量が5%未満であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
コーティングされた粒子の粉末層を、基面上へ放出するステップと、
前記粉末層の所定領域を、結合液により湿潤させるステップと
の反復連続ステップを含む、部材製造のためコーティングされた粒子利用される方法であって、
前記粉末層の1つが250μm未満の厚さを有し、
前記結合液が実質的に有機溶剤で形成されて45%未満の含水量を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法
【請求項11】
前記結合液中の不溶性成分の割合が5重量%未満であることを特徴とする請求項10に記載の方法
【請求項12】
前記粉末を湿潤させるために用いられる結合液の量が、コーティングされる粉末の5〜70体積%の範囲内にあることを特徴とする請求項10に記載の方法
【請求項13】
コーティングされた粒子の粉末層を、基面上へ放出するステップと、
少なくとも放出された前記粉末層の接着剤を、レーザ照射により溶融又は焼結するステップと
の反復連続ステップを含む、部材製造のためコーティングされた粒子利用される方法であって、
前記レーザ光のエネルギーが実質的に前記粉末層の粉末粒子を溶融又は焼結するには不十分であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法
【請求項14】
製造された前記部材が焼結体製造のために利用される請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法
【請求項15】
製造された前記焼結体が前記鋳造技術、鋳型製作、又は工具製作に利用される請求項14に記載の方法

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−517856(P2006−517856A)
【公表日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501499(P2006−501499)
【出願日】平成16年2月13日(2004.2.13)
【国際出願番号】PCT/DE2004/000258
【国際公開番号】WO2004/073889
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(598051819)ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【Fターム(参考)】