説明

ラベル付きガラス容器

【課題】感熱式専用ラベラーやガラス容器の特殊コーティングを要することなく、ラベル付きガラス容器のそのラベルを剥離容易とする。
【解決手段】汎用ガラス容器11と、裏面にアクリル樹脂を主成分とするニス12aが施された紙製ラベル12と、ラベル12をガラス容器11に加圧により貼り付けるためにラベル裏面に部分的に塗布されたビニル系共重合体を主成分とする糊剤13と、からラベル付きガラス容器10を構成する。感熱式専用ラベラーを必要としないこのラベル12は、ガラス容器11から手で容易に剥離可能であり、通常の使用状態においてはガラス容器11から剥がれることなく、かつ一度ガラス容器11から剥がすと再貼付不能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離容易なラベルが貼り付けられたガラス容器に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる健康飲料などを小型のガラス容器に充填し、そのガラス容器に商品名、商標等が付された紙製のラベルを貼り付けて販売することがよくおこなわれている。
内容物を消費した後のラベル付きガラス容器については、紙製のラベルは容易に焼却処分できるため、リサイクルの観点からは、ことさらラベルをガラス容器からはがす必要もない。
【0003】
しかし、プライバシー意識の向上などにともない、近年の消費者は、自身が特定の健康飲料等を愛用していることを知られたくないと考える傾向がつよい。このため、ラベルをガラス容器から簡単に剥がせることが要望されている。
【0004】
ちなみに、ラベルがラベル付きガラス容器の運搬時や陳列時などにガラス容器から剥がれてしまう(浮き上がってしまう)と商品価値が著しく低下するため、通常の使用状態においては剥がれないことが前提条件となる。
また、一度ガラス容器から剥がした場合に、再度貼り直し可能であるならば、偽造(内容物偽装)のおそれがあるため、再貼付不能になっているのが望ましい。
【0005】
そこで特許文献1のように、感熱式ラベルを特殊コーティングがなされたガラス容器に容易に剥離可能に貼り付けたラベル付きガラス容器が開発されている。
くわしくは感熱式ラベルとは、紙製ラベルの裏面に感熱性糊、すなわち加熱すると粘着性が発現する糊、を塗布したものであり、ガラス容器への貼り付けにあたっては、感熱式ラベル専用のラベラー(ラベリング装置)が用いられる。
【0006】
この種の感熱式ラベル専用ラベラーは、ガラス容器に貼り付ける直前のラベルに、電熱などにより加熱し粘着性を発現させる機能を有しており、糊を塗布したラベルに圧力をかけてガラス容器に貼り付けるだけの、通常のラベラーと比べて、一般的に構造が複雑で高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009‐46348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、特許文献1のラベル付きガラス容器は、製造時に感熱式ラベル専用ラベラーが必要であるうえに、ガラス容器も特殊なコーティングがなされたものであるため、製造コストが嵩む問題がある。
【0009】
そこで本発明の解決すべき課題は、感熱式専用ラベラーやガラス容器の特殊コーティングを要することなく、ラベル付きガラス容器のそのラベルを剥離容易とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意研究の結果、汎用されているガラス容器と、裏面にアクリル樹脂を主成分とするニスが施された紙製のラベルと、前記ラベルを前記ガラス容器に加圧により貼り付けるために前記ラベルの裏面に部分的に塗布されたビニル系共重合体を主成分とする糊剤と、からラベル付きガラス容器を構成すると、そのラベルをガラス容器から手で容易に剥離可能であることを見出した。
そして、このようなラベルは通常の使用状態においては、ガラス容器から剥がれないことを見出した。
【0011】
ここで、前記糊剤は、粘度が65000〜85000mPa・s(20℃)であり、pHが5.3〜6.3であり、不揮発分が47.0±2.5重量%であるのが好ましく、商品名トキワノール(登録商標)Z−22Hであるのが一層好ましい。
【発明の効果】
【0012】
感熱性ではない通常の糊剤を使用しているため、汎用されているラベラーによりラベルに圧力をかけるだけでガラス容器に貼り付けることができる。
【0013】
ラベルの裏面にニスを施してその滑性を増し、糊剤を剥がれやすくしているため、ガラス容器に特殊なコーティングを施すことなく、ラベルをガラス容器から容易に剥離可能である。このため、製造コストを抑えることができる。
【0014】
ラベルの裏面にニスを施しただけであるから、糊剤の粘着力はわずかに弱められるにとどまり、運搬時や陳列時などの通常の使用状態で、ラベルがガラス容器から剥がれることはない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ラベル付きガラス容器の(a)は斜視図、(b)は横断面図
【図2】ラベルを裏面より見た平面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1に示すラベル付きガラス容器10は、ガラス容器11と、ラベル12と、ラベル12をガラス容器11に貼り付ける糊剤13と、からなる。
【0017】
ガラス容器11としては、汎用されている略円筒形のものを使用する。
ガラス容器11の寸法は、特に限定されないが、いわゆる健康飲料が収容されるような、高さ80〜140mm×直径25〜70mmの比較的小型のものが例示できる。
ガラス容器11の色調等も特に限定されることなく、無色透明、有色透明、有色不透明のいずれでもよい。
【0018】
ラベル12は、片アート紙(片面塗工紙)などからなる紙製のものであり、その裏面の全面または一部には、ニス12aが施されている。
ラベル12の寸法は特に限定されないが、上述した小型のガラス容器11に貼り付けるのに適した幅が80〜120mm、高さが50〜70mmのものが例示できる。
ラベル12の紙基材は、片アート紙のほかにも、上質紙、アルミ蒸着紙、ミラーコート紙等が例示できる。
【0019】
ラベル裏面のニス12aは、アクリル樹脂(アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体)を主成分とするものであり、本来の使用方法としては、物品の外面に施された印刷部をオーバーコートして保護するものであるのを、本用途に転用したものである。
ニス12aの詳細な成分としては、感光性モノマーを70〜90重量%、光重合開始剤を5〜10重量%、それぞれ含むものが例示できる。
アクリル樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等が例示できる。このようなニスとしては、朝日印刷株式会社製のFV5が例示できる。
【0020】
ラベル12の裏面には、さらに糊剤13が部分的に塗布されている。糊剤13の塗布パターン、塗布面積の割合は特に限定されないが、パターンとしては図2のような縞状のもの、その他、ドット状、格子状が例示でき、またラベル全面に占める塗布面積の割合は65〜85%が、例示できる。
【0021】
この糊剤13は、ビニル系共重合体を主成分とするものである。ビニル系共重合体の種類は特に限定されないが、粘度が20℃において65000〜85000Pa・sであり、pHが5.3〜6.3であり、不揮発成分が47.0±2.5重量%であるのが好ましい。
このような糊材13としては、トキワノール(登録商標)Z−22Hが例示できる。トキワノールZ−22Hは、粘度、pH、不揮発成分が上記範囲内にある、淡黄乳白色、粘稠液状の糊剤である。
ここでビニル系共重合体としては、エチレン‐酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン‐塩化ビニル共重合体、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体等が例示できる。
【0022】
裏面に糊剤13が塗布されたラベル12は、汎用されているラベラーにより、ガラス容器11に押し付けられる(加圧される)ことのみで、貼り付けられている。
糊剤13のラベル12への塗布は、ガラス容器11に貼り付ける直前におこなう、グルー糊方式による。
【0023】
実施形態のラベル付きガラス容器10の構成は以上のようであり、そのラベル12は通常の使用状態においてはガラス容器11から剥がれることはなく、かつ手で剥がそうとする場合には容易に剥がすことができる。
手がはがした場合の剥離は、主にラベル12のニス12aの層と糊剤13の層との間で生じ、糊剤13はガラス容器10の側に残る。これは、ラベル12の裏面がニス12aによって滑性が増しているため、糊剤13が剥がれやすくなっているためである。
【0024】
また糊材として、トキワノール(登録商標)Z−22Hを用いた場合、ラベル12を一度ガラス容器11から剥がした場合には、粘着力が失われるため、再貼付することはできない。
ちなみにトキワノールZ−22Hは、樹脂ボトル等へのラベル貼りに用いられる易剥離糊剤として知られているが、本発明のような特殊加工のなされていないガラス容器11に用いた場合には、接着力が大きすぎてラベル12を容易に剥離することができない(下記比較例も参照のこと)。
本発明では、ラベル12の裏面に滑性の大きなニス12aを施して、糊剤13との接着力を弱めることで、易剥離性を実現している。
【実施例】
【0025】
本発明の実施例および比較例を挙げて、発明の特徴を一層明らかなものとする。
【0026】
まず実施例および比較例のラベル付きガラス容器を準備した。ここでガラス容器は、いずれも日本山村硝子社製(50mL28φ)を用い、ラベルのガラス容器への貼り付けはいずれも加圧(押し付け)によった。
【0027】
(実施例のラベル付きガラス容器)
実施例としてラベルは、材質は片アート紙、坪量が84.9g/m、寸法が幅100mm×高さ65mmで、裏面全面にアクリル樹脂が主成分のニス(朝日印刷株式会社製のFV5)が施されたものを用いた。
糊剤は、常盤化学工業社製のトキワノール(登録商標)Z−22Hを用い、ラベルの裏面に図2のようなパターンで、塗布面積が5148mm、塗布量が約60mgとなるように塗布した。
ここで図2中、両側の2本の帯状の糊塗布部は、幅99mm×高さ6mmであり、中央の2本の帯状の糊塗布部は、幅99mm×高さ20mmである。
【0028】
(比較例1のラベル付きガラス容器)
比較例1としてラベルは、実施例と同じもので、ニスが施されていないものを用いた。
糊剤は、実施例と同じ物を用い、その塗布パターン等も同じとした。
【0029】
(比較例2のラベル付きガラス容器)
比較例2としてラベルは、実施例と同じもので、ニスが施されていないものを用いた。
糊剤は、汎用されている澱粉を主成分とするもの(トキワノール 7514)(粘度は20℃で70000〜10000mPa・s、pHは7.8〜8.6、不揮発分は34.5±2.5重量%、外観は淡黄白色、粘稠液状)を用い、ラベルの裏面全面に適量を塗布した。
【0030】
実施例および比較例のラベル付きガラス容器につき、下記試験1および試験2をおこなった。
試験1:5℃×3時間、40℃×3時間、室温×3時間を1サイクル(1C)または3サイクル(3C)繰り返した後、ラベルの接着性および手による剥離性を調べた。
試験2:40℃×湿度95%の状態に3日間(3D)または1週間(1W)おいた後、ラベルの接着性および手による剥離性を調べた。
接着性試験の結果を表1に示し、剥離性試験の結果を表2に示す。表1および表2からわかるように、実施例のラベル付きガラス容器では、接着性が従来と同様に優れており、かつ剥離性が従来よりも優れている性質を示した。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
今回開示された実施形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。
本発明の範囲は以上の実施形態と実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲内でのすべての修正と変形を含むものであることが意図される。
【符号の説明】
【0034】
10 ラベル付きガラス容器
11 ガラス容器
12 ラベル
12a ニス
13 糊剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス容器11と、
裏面にアクリル樹脂を主成分とするニス12aが施された紙製のラベル12と、
前記ラベル12を前記ガラス容器11に加圧により貼り付けるために、前記ラベル12の裏面に部分的に塗布されたビニル系共重合体を主成分とする糊剤13と、からなるラベル付きガラス容器。
【請求項2】
前記糊剤13は、粘度が65000〜85000mPa・s(20℃)であり、pHが5.3〜6.3であり、不揮発分が47.0±2.5重量%である請求項1に記載のラベル付きガラス容器。
【請求項3】
前記糊剤13は、トキワノール(登録商標)Z−22Hである請求項2に記載のラベル付きガラス容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−43645(P2013−43645A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180097(P2011−180097)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(398003544)大同薬品工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】