説明

ラベル形非接触式データキャリア装置およびこれらの製造方法

【課題】複数の粘着層を有する場合であっても、側面(端面)がベトつかないラベル非接触式データキャリア装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】このラベル形非接触式データキャリア装置1は、ラベル表面を構成する被印字シート10が、その縁部が、非接触式データキャリアインレット20及び磁性体シート30の各縁部を越えて非接触式データキャリアインレット20及び磁性体シート30を被覆するように大きく形成されている。粘着材N1,N2の端面が露出しないので、側面がベトつかない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に印字でき、物品に貼着され、非接触で情報の交信を行うラベル形非接触式データキャリア装置およびこれらの製造方法に関する。特に、シート状の材料を互いに積層し接着するための粘着材層を複数層有するラベル形非接触式データキャリア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触式データキャリア装置の一形態として、RFID (Radio Frequency Identification) システムにおいてリーダライタと交信可能に構成されたRFタグとしての機能構成と、表面に文字や図柄などを印刷でき裏面を物品等に貼着可能としたラベルとしての機能構成とを兼ね備えた薄型の非接触データキャリア装置が知られている。こうした形態の非接触式データキャリア装置は、ラベル形非接触式データキャリア装置と呼ばれ、ラベル形RFタグ(label type RF tag)、ラベル形タグ (label type tag)、RFタグラベル、RFIDタグラベル、無線ICタグラベル、非接触ICタグラベル、などとも称されている。ここで、「ラベル」とは、表面に文字や図柄などを印刷でき、裏面を物品等に貼着可能とした構成のシート状のものを指しているが、既に表面に文字や図柄などが印刷されているものも含む概念であり、一般に「シール」や「ステッカー」などと呼ばれるものをも含む概念である。
【0003】
ところで、缶詰等、金属などの導電体を含む物品に貼着するラベル形非接触式データキャリア装置の場合には、渦電流の発生による共振周波数のずれに伴う通信不能を防止するため、非接触式データキャリア装置として機能するように構成された本体部分である非接触式データキャリアインレット(単にインレットとも称される)と物品への貼着面との間に磁性体層を積層して一体化することが行われている。
【0004】
図26は、磁性体層を積層したタイプの従来のラベル形非接触式データキャリア装置900を被印字面(ラベル表面)910a側から見た平面図であり、図27は、それを、厚さ方向を強調して模式的に示した断面図である。図26および図27に示すように、従来のラベル形非接触式データキャリア装置900は、文字や図柄などが印刷される被印字シート910と、非接触式データキャリアインレット920と、磁性体シート930とがそれぞれ粘着材層951、952を介して積層一体化され、さらに、粘着材953を介して剥離シート940上に分離可能に貼着(載置)された構成とされている。
【0005】
従来は、この非接触式データキャリア装置900を構成するために必要な各材料シート910、920、930を、複数個の非接触式データキャリア装置900を作製できる程度の大きさの状態で、すべて積層して一体化した後、打ち抜き加工等により所定の外形とし、個々の非接触式データキャリア装置900に切り離して、剥離シート940上に貼着していた。したがって、図26および図27に示すように、非接触式データキャリア装置900を構成する材料各層910、920、930及びこれらを接着する粘着材層951、952、953の外形が同等となり、非接触式データキャリア装置900の縁部(端面)Eには、複数の粘着材層951、952、953の各縁部が露出していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来のラベル形非接触式データキャリア装置では、シート状の材料を互いに接着するために用いられた複数の粘着層が端面に露出するため、常温でも端面がべとついてしまうという問題があった。端面がべとつくことにより、例えば、複数のラベル形非接触式データキャリア装置が配設された長尺のシートをロール状に巻回するときや、ロールの形態で扱ったときなどに、隣接するラベル形非接触式データキャリア装置どうしがくっついてしまう事態が生じ易いという問題があった。また、個別に切り離され、物品等に貼着された後の状態のラベル形非接触式データキャリア装置でも、端面がべとつくことにより、周囲の物品や手指等に粘着してしまう事態が生じ易いという問題があった。
【0007】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、端面のべとつきを解消することができるラベル形非接触式データキャリア装置、ラベル形非接触式データキャリア装置ロール、およびこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るラベル形非接触式データキャリア装置は、被印字シートと、非接触式データキャリアインレットと、磁性体シートとを、粘着材または接着剤を介して順に積層するとともに、被印字シート側を表面側として、裏面側に粘着材または接着剤を積層した非接触式データキャリアにおいて、被印字シートを、その縁部が、非接触式データキャリアインレット及び前記磁性体シートの各縁部を越えて非接触式データキャリアインレット及び磁性体シートを被覆するように大きく形成することを特徴とする。さらに、前記被印字シートの前記非接触式データキャリアインレット及び前記磁性体シートの各縁部を越えた部分の幅は、少なくとも2mm以上であることを特徴とする。
【0009】
このラベル形非接触式データキャリア装置は、被印字シートの非接触式データキャリアインレット及び前記磁性体シートの各縁部を越えた部分の裏面側にも粘着材が積層一体化されている。このラベル形非接触式データキャリア装置は、製造時または提供時には剥離シート上に貼着された状態であるが、物品等に貼着されるときには、剥離シートから分離される。
【0010】
ここで、「非接触式データキャリアインレット」とは、RFIDシステムの構成要素であるRFタグとして機能するように構成されたものであるが、まだラベル形になっていない半製品状態のものを指し、「RFタグインレット」、「タグインレット」、「インレット」とも称する。「非接触式データキャリアインレット」には、アンテナと、このアンテナを介してリーダライタと情報の送受信を行うICチップとが搭載されている。
【0011】
ラベル形非接触式データキャリア装置の構成要素として積層一体化された磁性体シートは、非接触式データキャリアインレットのアンテナを被覆するように前記アンテナの外形と同等もしくは若干大きく形成されていることが好ましい。ここで、「アンテナを被覆するように前記アンテナの外形と同等もしくは若干大きく」とは、インレットの一主面に形成されたアンテナの外形を確実に覆うことができるが無用に大きくない程度に大きくという趣旨である。非接触式データキャリアインレット自体の外形より大きくても小さくてもかまわない。
【0012】
ここで、磁性体シートには、非接触式データキャリアインレットのICチップ搭載領域に対応する領域にICチップの外形より大きな孔をあけることが好ましい。そして、非接触式データキャリアインレットは、前記磁性体シートに形成された孔内にICチップを嵌入させて、粘着材または接着剤層を介して積層されていることが好ましい。すなわち、非接触式データキャリアインレットは、粘着材または接着剤層を介して、ICチップ搭載面を磁性体シート側に対向させて積層され、非接触式データキャリアインレットに搭載されたICチップは、この磁性体シートに形成された孔内に収納されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係るラベル形非接触式データキャリア装置の製造方法は、所定の外形を有する非接触式データキャリアインレットと粘着材とが積層一体化されて剥離紙上に分離可能に貼着されてなるインレットシールを形成するインレットシール形成工程と、非接触式データキャリアインレットの外形より大きい所定の外形を有する被印字シートの裏面に粘着材が積層一体化されて剥離紙上に分離可能に貼着されてなる被印字シートシールを形成する被印字シートシール形成工程と、形成した被印字シートシールを、剥離紙から分離して、その被印字面を上にして、インレットシール上に、インレットシールの縁部が露出しないように積層して一体化し、剥離紙上に分離可能に貼着されてなる被印字シート付きインレットシールを形成する工程と、非接触式データキャリアインレットのアンテナの外形と同等もしくは若干大きい外形を有する磁性体シートと粘着材とが積層一体化されて剥離紙上に貼着されてなる磁性体シートシールを形成する磁性体シートシール形成工程と、剥離シートを備えたラベル支持基体を形成するラベル支持基体形成工程と、形成した磁性体シートシールを、剥離紙から分離させて、前記形成したラベル支持基体の所定位置に積層する磁性体シートシール積層工程と、前記被印字シート付きインレットシールを、剥離紙から分離させて、前記積層された磁性体シートシールの上に、前記磁性体シートシールの縁部が露出しないように積層し一体化する工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、上記したラベル形非接触式データキャリア装置の製造方法で製造されたラベル形非接触式データキャリア装置が一定間隔で複数個配設された状態のシートをロール状に巻回してなる、非接触式データキャリア装置ロールを作製することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の粘着層を有する多層型のラベル形非接触式データキャリア装置であっても、端面(側面)がベトつかないラベル形非接触式データキャリア装置、ラベル形非接触式データキャリア装置ロール、およびこれらの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るラベル形非接触式データキャリア装置を表面(被印字面)側から見た図。
【図2】図1のラベル形非接触式データキャリア装置の構成を模式的に示す断面図。
【図3】剥離シートを剥離させた状態の図1のラベル形非接触式データキャリア装置を裏面(貼着面)側から見た平面図。
【図4】非接触式データキャリアインレットと磁性体シートとを接着する粘着材の具体的構成を説明するための断面図。
【図5】本発明の他の一実施形態に係るラベル形非接触式データキャリア装置の構成を模式的に示す断面図。
【図6】剥離シートを剥がした状態の図5のラベル形非接触式データキャリア装置を裏面側から見た平面図。
【図7】実施形態に係るラベル形非接触式データキャリア装置に用いた非接触式データキャリアインレットの一例を示す平面図。
【図8a】図7の非接触式データキャリアインレットの断面を示す図。
【図8b】静電容量調整用の孔をあけた場合の図7の非接触式データキャリアインレットの断面を示す図。
【図9】図7の非接触式データキャリアインレットの構成を機能的に示すブロック図。
【図10】ラベル形非接触式データキャリア装置の製造方法の概要を示す図。
【図11】ラベル形非接触式データキャリア装置の製造工程S101を説明するための平面図。
【図12】図11に対応する断面図。
【図13】ラベル形非接触式データキャリア装置の製造工程S102を説明するための平面図。
【図14】図13に対応する断面図。
【図15】ラベル形非接触式データキャリア装置の製造工程S103を説明するための平面図。
【図16】図15に対応する断面図。
【図17】ラベル形非接触式データキャリア装置の製造工程S104を説明するための平面図。
【図18】図17に対応する断面図。
【図19】ラベル形非接触式データキャリア装置の製造工程S105を説明するための平面図。
【図20】図19に対応する断面図。
【図21】ラベル形非接触式データキャリア装置の製造工程S106を説明するための平面図。
【図22】図21に対応する断面図。
【図23】ラベル形非接触式データキャリア装置の製造工程S107を説明するための平面図。
【図24】図23に対応する断面図。
【図25】本発明のさらに他の一実施形態に係るラベル形非接触式データキャリア装置の構成を模式的に示す平面図。
【図26】従来のラベル形非接触式データキャリア装置の構成を説明するための平面図。
【図27】図26に対応する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。以下、原則として、同じものには同じ符号を付し、説明を省略する。
【0018】
(ラベル形非接触式データキャリア装置1の構成例)
図1〜図3は、本発明の一実施形態に係るラベル形非接触式データキャリア装置1の構成を示す図である。図1は、ラベル形非接触式データキャリア装置1を表面側(被印字面側)から見た平面図であり、図2は厚さ方向を幅方向の100倍程度に強調して模式的に示した垂直断面図であり、図3は裏面の剥離シート40から分離して(剥がして)粘着材層N2を露出させた状態のラベル形非接触式データキャリア装置1を、裏面側(物品等への貼着面側)から見た平面図である。図1において、破線で記した矩形の領域は、非接触式データキャリアインレット20の外形を示し、二点鎖線で記した矩形の領域は、磁性体シート30の外形を示している。いずれも、被印字シート10に被覆されて、非接触式データキャリア装置1の表面からは見えないことを示している。なお、以下の説明および図面において、非接触式データキャリアインレットのことはインレットと表すこともある。
【0019】
図1〜3に示すように、このラベル形非接触式データキャリア装置1は、被印字シート10と、非接触式データキャリアインレット20と、磁性体シート30とが、粘着材層を介して互いに積層されるとともに、被印字シート10側を表面側として、裏面側に粘着材層を積層して一体化されて、剥離シート40上に分離可能に貼着されている。ラベル形非接触式データキャリア装置1を構成するこれらの部材は、それぞれ、ラベルとして適した厚さのシート状(板状)とされている。
【0020】
図2に示すように、このラベル形非接触式データキャリア装置1の最上層を構成する被印字シート10と、その下層に配置されたインレット20とは、粘着材層50により接着されている。インレット20と磁性体シート30とは、粘着材層N1により接着されている。磁性体シート30の裏面には粘着材層N2が積層され一体化されている。これら積層一体化された積層体としての非接触式データキャリア装置1が、粘着材N2および被印字シート10の裏面側に設けられた粘着材50の露出部分の粘着力により、剥離シート40上に分離可能に貼着されている。
【0021】
図1〜3に示すように、被印字シート10は、その外形(平面形状)が、インレット20および磁性体シート30の外形よりも一段と(例えば幅Wdの値で2〜12mm程度)大きく形成されている。
【0022】
すなわち、被印字シート10は、その縁部E1が、インレット20の縁部E2および磁性体シート30の縁部E3を越えてインレット20および磁性体シート30を被覆している。それとともに、被印字シート10の、インレット20の縁部E2および磁性体シート30の縁部E3を越えた部分は、粘着材50を介して剥離シート40の表面(剥離剤塗布面)40a上に貼着されるように構成されている。
【0023】
したがって、ラベル形非接触式データキャリア装置1の端面に露出する粘着層は、被印字シート10の裏面側に積層された粘着材層50の縁部だけとなり、各材料シート層間の粘着材層N1、N2の縁部が露出しない。よって、非接触式データキャリア装置1の側面のべとつきが抑制される。
【0024】
ここで、被印字シート10の非接触式データキャリアインレット20および磁性体シート30の各縁部を越えた部分の幅Wdは、少なくとも2mm以上であることが好ましく、4mm以上であることがより好ましい。すなわち、被印字シート10の縁部は、非接触式データキャリアインレット20および磁性体シート30の各縁部より少なくとも幅2mm以上好ましくは4mm以上を越えて非接触式データキャリアインレット20および磁性体シート30を被覆するように大きく形成するとよい。このように、縁部の越えた部分の幅Wdを2mm以上好ましくは4mm以上とすることで、被印字シート10の裏面に設けられた粘着材層50の周縁部が剥離シート40に十分に接着するようになる。したがって、通常の保管状態において、ラベル形非接触式データキャリア装置1の縁部(被印字シート10の縁部)を、剥離シート40から浮き上がりにくくすることができる。もちろん、物品等に貼着した後においても、縁部を浮き上がりにくくすることができる。したがって、縁部から粉塵等が侵入することによる粘着力の低下に伴う剥離をも防止することができる。
【0025】
なお、インレット20の外形は、インレット20に形成されたアンテナより一回り(例えば周囲1〜2mmずつ程度)大きい形状とされている。磁性体シート30は、インレット20のアンテナの外形と同等か外形よりも若干(例えば1〜4mm程度)大きく形成されている。磁性体シート30をインレット20のアンテナの外形と同等またはそれより若干大きくしているのは、インレット20のアンテナの外形を確実に被覆することで金属性物品の影響を受けないようにするためである。よって、磁性体シート30は、インレット20の主面自体の外形よりも小さくてもかまわない。
【0026】
これら各構成部材の外形の大きさの一例を示せば、インレット20のアンテナの外形を幅45mm、長さ27mmの略矩形とした場合、インレット20は、幅Wtが47〜49mm程度、長さLtが29〜31mm程度とされ、磁性体シート30は、幅Wmが48mm、長さLmが30mmとされ、被印字シート10は、幅Wpが58mm、長さLpが40mmとされている。アンテナの外形サイズが変われば、それに応じてそれぞれ変えればよい。
【0027】
ラベル形非接触式データキャリア装置1の全体の厚さは、例えば、薄い部分で50μm〜150μm程度、厚い部分でも250μm〜500μm程度とされている。よって、実際には、ラベル形非接触式データキャリア装置1は、ほとんど厚さの差を感じない程度の平板状であり、粘着材50が剥離シート40上に貼着されていないことによって生じる空間は、図2で白抜きの三角形で示された空間ほどには大きくなっていない。よって、この構成を採用することによって、ラベル形非接触式データキャリア装置1の物品への貼着面の粘着力に問題が生じることはない。
【0028】
なお、これら各構成部材の外形の大きさは、この例に限られるものではない。上記したように、被印字シート10が、それ以外のシート状の構成部材およびこれらどうしを接着するための層間粘着層の縁部を露出させないように構成されていればよく、その範囲内で、所望の大きさを選択することができる。また、この例では、各層を構成するシート状の材料の外形は矩形状(ただし四隅には若干の丸みが形成されている)とされているが、矩形状に限られず、円形、楕円形、瓢箪形、キャラクター形状その他の形状であってもよい。また、厚さについても、特に上記で例示した数字に限定されるものではない。
【0029】
なお、このラベル形非接触式データキャリア装置1は、物品に貼着するときには、最下層の剥離シート40を剥がして(分離して)粘着層を露出させた状態で用いられる。よって、剥離シート40と分離された状態のものも、剥離シート40が貼着された状態のものも、いずれの状態のものも、ラベル形非接触式データキャリア装置1として呼ぶ。
【0030】
次に、この実施形態のラベル形非接触式データキャリア装置1を構成する各部材について、順に説明する。
【0031】
被印字シート10は、ラベル形非接触式データキャリア装置1の表面を構成するシート状(板状)の部材である。被印字シート10の表面10aは、文字や図柄などが印字される被印字面である。ラベル形非接触式データキャリア装置1の製造後(例えば出荷後)にラベル印刷機によりまたは手書きによりラベル印字できるように、被印字面10aは非接触式データキャリア装置の最上層に露出した構成とされている。完成品としてのラベル形非接触式データキャリア装置の被印字面10aには、文字列や図柄などが印刷済みであっても良く、未だ印刷されていなくても良い。被印字面10aや被印字シート10の材料としては、ポリプロピレン(PP)などの合成樹脂が混合された合成紙、光沢紙、上質紙など、一般的にラベルの表面(被印字面)用のシートとして用いることができる公知の材料から、適宜選択することができる。
【0032】
非接触式データキャリアインレット20は、機能的にはラベル形非接触式データキャリア装置1の中核をなす部材であり、非接触式データキャリアとしての基本機能を有する構成とされている。本発明において、非接触式データキャリアインレットの構成は、特に限定されるものではなく、アンテナとICチップを備えて非接触式データキャリアとして機能し、かつ、ラベル化して実用的な程度に薄く構成されているものであればよい。本実施形態では、一例として、ICチップが搭載されていない部分で80μm程度、ICチップが搭載されている部分で150μm程度のものを用いた。本実施形態で用いた非接触式データキャリアインレット20の構成の具体例については、後述する。
【0033】
磁性体シート30は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)などの、電気絶縁性かつ可撓性を有する合成樹脂からなる基材フィルムP3を基材として、透磁率の高い磁性体から構成された磁性体層31が予め積層一体化されたシート状(板状)のものである。磁性体シート30の厚さは適宜選択できるが、一例を挙げれば、磁性体層31の厚さが100μm、基材フィルムP3の厚さが25μmで、合わせて125μmである。
【0034】
ここで、磁性体シート30は、比較的高い引張応力や曲げ応力などに耐え得るように、磁性体層31が基材フィルムP3と一体化されて補強された構成となっているので、非接触式データキャリア装置1の製造に際して、ロールの形態(磁性体シート原紙ロールR30)で扱うことが容易となる。これにより、ラベル形非接触式データキャリア装置1の生産性を高めることができる。
【0035】
磁性体シート30を、インレット20と物品への貼着面との間に設けることで、インレット20のアンテナAから導入されたリーダライタの送受信用の磁界は、磁性体層31を通って、この導入された側に導かれるようになるので、金属物品による渦電流の発生を防止することができ、ラベル形非接触式データキャリア装置1が通信不能となる事態を回避することができる。
【0036】
剥離シート40は、物品へ貼着される前において、物品へ貼着されることとなる粘着面を被覆するとともにラベル形非接触式データキャリア装置1を支持するラベル支持基体でもある。剥離シート40の表面40aには、剥離剤(離型剤)が塗布されている。よって、その表面40a(剥離剤塗布面40a)上に貼着されたラベル形非接触式データキャリア装置1は、剥離シート40から剥がして容易に分離することができるようにされている。一方、剥離シート40の裏面40bには、剥離剤は塗布されていない。なお、剥離シート40としては、一般のラベルの剥離シート(剥離紙)と同様のものを用いることができる。
【0037】
なお、図1〜図3に示したラベル形非接触式データキャリア装置1は、多数個まとめてロールの形態で製造され、折りミシン(切り取り線)のミシン目に沿って枚葉に切り離されたものである。よって、剥離シート40の端部には、折りミシンの跡が残っており、剥離シート40の裏面40bには、ラベル製造装置の制御用に目印として利用するためのキャッチマークが印刷されている(ここでは図示していないが、図19、図20参照)。もちろん、必ずしもロールの形態で製造する必要はないので、折りミシンやキャッチマークは設けられていなくても良い。
【0038】
なお、図2および図3に示すように、この実施形態では、磁性体シート30には、ICチップCに対応する位置にICチップCを収納するのに十分な大きさの孔33が設けられている。例えば、直径3〜4mm程度の円形の孔(穴)があけられている。そして、非接触式データキャリアインレット20は、ICチップCを磁性体シート30に設けた孔33に嵌入させて配置されている。非接触式データキャリアインレット20のアンテナコイルAはその下層の粘着材層N1にその一部または全部が埋没した状態になり、粘着材層N1の一部はICチップCに押されて孔33に嵌入した状態となっている。
【0039】
このように、磁性体シート30に孔33を設けて、非接触式データキャリアインレット20のICチップCをその孔33に埋没させるように構成することで、磁性体シート30に孔33を設けずに非接触式データキャリアインレット20を下側に向けて配置した場合や、ICチップCを被印字シート10側に向けて配置した場合に比べて、非接触式データキャリア装置1をより薄形でより平坦にすることができる。また、このように、ICチップCを磁性体シート30に設けた孔33に嵌入させることで、ICチップCを外界からの物理的な衝撃から保護することにも資する。
【0040】
もちろん、磁性体シート30に孔33を設けなくてもよいし、非接触式データキャリアインレット20のICチップCを被印字シート10側に向けて配置した構成としてもよい。
【0041】
図4は、この実施形態において、非接触式データキャリアインレット20と磁性体シート30とを接着している粘着材N1の構成を拡大して示した断面図である。同図に示すように、粘着材N1は、この実施形態では、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる厚さ25μmの基材フィルムP1の両面に、常温感圧で粘着性のある粘着材からなる厚さ20〜25μm程度の粘着層A1、A2がそれぞれ積層されて一体化された3層構造である。その厚さは、3層合わせて例えば65〜75μm程度である。これは、図4に二点鎖線で示すように、基材フィルムP1の上側の粘着層A1の上面には透明な剥離紙F1が積層され、基材フィルムP1の粘着層A2の下面には不透明な剥離紙S2がさらに積層されて5層構造とされた長尺の剥離紙付き粘着剤シートがロール状に巻回された剥離紙付き粘着剤シートロールを用いて、その上下の剥離紙F1、S2を剥がして(除去して)粘着材N1として積層しているためである。磁性体シート30と剥離シート40とを接着している粘着材N2も、同じ理由により、図4に示すN1と同等の構成である。このように、基材フィルムP1の両面に予め粘着剤が塗布され乾燥されて剥離紙と積層一体化された、剥離紙付き粘着材シートを粘着材の原紙として用いることで、比較的簡便に製造できるという効果がある。なお、この構成は一例であり、粘着材N1、N2の構成はこれに限られるものではない。また、物品への貼着面を構成する層が常温での粘着性を有していればよいので、物品への貼着面として露出しない層の場合には、粘着材N1、N2のかわりに、常温での粘着性を有しない接着剤層を設けて接着してもよい。
【0042】
ところで、この実施形態では、粘着材50、N1、N2は無色透明であり、磁性体シート30は、その磁性材料の色を反映した色(例えば灰褐色、黄褐色、茶褐色)である。したがって、剥離シート40を剥がして粘着材層を露出させた状態で非接触式データキャリア装置1を裏面側から見ると、図3に示すように、磁性体シート30およびICチップCが透けて見える状態となっている。
【0043】
そこで、図5および図6に示すように、図1〜3で示した状態のラベル形非接触式データキャリア装置1の、磁性体シート30の裏面の粘着材層N2と剥離シート40の表面40aとの間に、例えばシート状の絶縁層60と粘着材層N3とをさらに積層し一体化して、ラベル形非接触式データキャリア装置100としてもよい。シート状の絶縁層60としては、白色無地の紙や、裏面に文字や柄などが描かれたシートなどの不透明なシートで、図6に示すように、インレット20および磁性体シート30よりも大きく被印字面シート10よりも小さく形成することが好ましい。このような不透明な絶縁層60をさらに積層することで、剥離シート40を剥がしたときに、内部の磁性体シート30およびICチップCを見えにくくすることができ、外観をよくすることができる。粘着材N3としては、上記説明した粘着材N1、N2と同じものを用いることができるが、これに限られない。このラベル形非接触式データキャリア装置100の構成の場合、積層される粘着材層がさらに増えることとなる。この場合でも、図5および図6に示すように、被印字面シート10が、これらの粘着材層N1、N2、N3の各縁部(端面)を露出させないように非接触式データキャリアインレット20および磁性体シート30を被覆するので、ラベル形非接触式データキャリア装置100の端面のべとつきは抑えられる。
【0044】
また、この場合にも、被印字シート10の縁部が非接触式データキャリアインレット20、磁性体シート30、シート状の絶縁層60の各縁部を越えた部分の幅は、被覆する積層体の総厚にもよるが、少なくとも2mm以上にすることが好ましく、4mm以上にすることがより好ましい。そうすることで、被印字シート10の裏面に設けられた粘着層50の周縁部が剥離シート40に十分に接着するようになり、通常の保管状態において、ラベル形非接触式データキャリア装置1の縁部(被印字シート10の縁部)を、剥離シート40から浮き上がりにくくすることができる。もちろん、物品等に貼着した後においても、縁部を浮き上がりにくくすることができる。したがって、縁部から粉塵等が侵入することによる粘着力の低下に伴う剥離を防止することができる。
【0045】
(非接触式データキャリアインレットの構成例)
次に、本実施形態に用いた非接触式データキャリアインレット20の一例について、図7〜図9を用いて、具体的に説明する。
【0046】
図7は、本実施形態に用いた非接触式データキャリアインレット20を一方の面(ICチップ搭載面)側から見た平面図である。また、図8aは、図7のほぼ中央部に示す略円形の孔Hをあけていない状態の非接触式データキャリアインレット20を示す断面図である。図8bは、孔Hをあけた後の非接触式データキャリアインレット20を示す断面図である。図9は、図7で示す孔Hをあけていない状態の非接触式データキャリアインレット20の構成を機能的に示すブロック図である。
【0047】
なお、図7において、導体パターンをハッチングで示しており、手前側(表側)の面に形成された導体パターンと、その裏面に形成された導体パターンとのハッチングの傾斜方向を変えて区別している。ただし、手前側の面に形成された導体パターンのうち、細い導体パターンについては、見易くするため、黒塗りの領域で示している。
【0048】
図7〜図9に示すように、本実施形態に用いた非接触式データキャリアインレット20は、基材フィルムP2と、基材フィルムP2上に形成されたアンテナコイルAと、基材フィルムP2上でアンテナコイルAに並列に接続された一対の接続パターン21a、21bと、基材フィルムP2上に実装されたICチップCと、一対の接続パターン21a、21bにそれぞれ接続され、基材フィルムP2を介して対をなす複数の静電容量調整パターン22a、22b、23a、23b、24a、24bを主に備えている。ここで、上記した非接触データキャリアインレット20の「アンテナの外形」とは、アンテナコイルAとこのアンテナコイルAに接続されて構成される電気回路としてのアンテナ全体の外形を指すが、基材フィルムP2上に形成された導体パターン全体の外形と考えてもよい。この例では、「アンテナの外形」は45mm×27mmの略矩形状である。
【0049】
基材フィルムP2は、電気絶縁性を有し可撓性を有するフィルム状の基材であって、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などで構成されるが、この他にも、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンスルフィド、PBT、ポリアリレート、シリコン樹脂、ジアリルフタレート、ポリイミドなどで構成することもできる。ここでは、基材フィルムP2は、矩形に形成されているが、この形状に限られるものではない。
【0050】
アンテナコイルAは、この基材フィルムP2の一方の面26a上を、所定の外形となるように、渦巻状に複数回周回して形成されている。さらに、一対の接続パターン21a、21bは、基材フィルムP2上のアンテナコイルAにそれぞれ接続されて、基材フィルムP2の一方の面26aおよび他方の面26b上にそれぞれ延設されている。具体的には、アンテナコイルAの一端部27aは、一方の接続パターン21aの基端部分に接続されており、この部位にさらにICチップCの接続バンプ28の一方が接続されている。
【0051】
一方、アンテナコイルAの他端部27bは、カシメ部29aを介して、基材フィルムP2の他方の面26b上に配線されるジャンパ線(端子間接続パターン)Yの一端部Yaに接続され、さらにジャンパ線Yの他端部Ybは、カシメ部29bを介して、基材フィルムP2の一方の面26a上に配線される配線パターン29cの基端部に接続されている。配線パターン29cの先端部には、ICチップCの接続バンプ28の他方が接続されている。さらに、上記したジャンパ線Yの他端部Ybは、基材フィルムP2の他方の面26b上で接続パターン21bの基端部に接続されている。
【0052】
また、静電容量調整パターン22a、22b、23a、23b、24a、24bは、基材フィルムP2を挟んで、一方の面26aおよび他方の面26bに対向して対をなすように、接続パターン21a、21bの各先端部に形成されている。各一対の静電容量調整パターン22a、22b、23a、23b、24a、24bは、それぞれが矩形状に形成されており、コンデンサパターンとして機能し、それぞれの間は、コンデンサ(静電容量部)22、23、24として機能する。なお、ここでは、各一対の静電容量調整パターン22a、22b、23a、23b、24a、24bの形状を矩形状としているが、特にこの形状は限定されるものではなく、略円形状などに形成されていてもよい。
【0053】
また、上記したICチップCには、電源バックアップ不要で、かつ書き換え可能な不揮発性メモリや無線交信のためのRF回路の他、コンデンサ25なども搭載されている(図9参照)。このように基材フィルムP2上でそれぞれ接続されるアンテナコイルA、ICチップC内のコンデンサ25、および静電容量調整パターン22a、22b、23a、23b、24a、24bによって、図9に示すようにアンテナ全体の共振回路が構成される。
【0054】
ここで、各静電容量調整パターン22a、22b、23a、23b、24a、24b、の少なくとも一方のパターンを取り除くことで、各静電容量調整パターン22a、22b、23a、23b、24a、24bのコンデンサとしての機能を除去することができ、静電容量を調整することができる。また、例えば、接続パターン21a、21bの一部を取り除いて断線させることでも、静電容量を調整することができる。この場合には、静電容量調整パターン22a、22b、23a、23b、24a、24b、25a、25bのすべてを取り除いたときと同様の効果が得られる。
【0055】
なお、本実施形態では、図1〜3に示すように磁性体シート30を積層した構成のラベル形非接触式データキャリア装置1を金属製の物品に貼着した場合に共振周波数の目標値の一例である13.56MHzに近似する周波数が得られるように、図7、図8bに符号Hで示した位置に円形の貫通孔(穴)をあけた態様を例示している。この位置に孔Hをあけることで、静電容量調整パターン22a、22b、23a、23bは、ICチップCと接続されなくなり、コンデンサパターン(静電容量部)として機能しなくなっている。
【0056】
もちろん、いずれの組の静電容量調整パターンも取り除かない状態で、共振周波数の目標値の一例である13.56MHzに近似する周波数が得られるように構成されていても良い。また、共振周波数の設定値は、13.56MHzに限られるものではない。
【0057】
また、ここでは、非接触式データキャリアインレットとして、静電容量調整パターン22a、22b、23a、23b、24a、24bを備えた非接触式データキャリアインレット20を一例として説明したが、この構成に限られるものではない。例えば、静電容量調整パターンを有さず、基材フィルム上に、アンテナコイルと、このアンテナコイルを介して情報の送受信を行うICチップとを備える構成でもよい。つまり、本発明において、非接触式データキャリアインレットの構成は、特に限定されるものではなく、少なくとも、アンテナと、このアンテナを介して情報の送受信を行うICチップとを備え、所定の周波数帯で交信可能な構成を有するものであればよい。
【0058】
(ラベル形非接触式データキャリア装置の製造方法)
次に、上記説明したラベル形非接触式データキャリア装置1の製造方法の一例について、図10〜図24を用いて説明する。なお、本発明に係るラベル形非接触式データキャリア装置は、以下に一例として説明する製造方法以外の方法によっても製造できることはもちろんである。
【0059】
図10は、上記説明したラベル形非接触式データキャリア装置1の製造方法の一例について、その製造工程の概要を示す図である。図11、図13、図15、図17、図19、図21、図23は、その各製造工程で製造されるものを模式的に示した平面図であり、図12、図14、図16、図18、図20、図22、図24は、そのそれぞれに対応するものを模式的に示した垂直断面図である。
【0060】
図10において、四隅を丸めた略長方形は、材料や生産物などの「物」を示しており、四隅を丸めていない長方形は、「工程」およびその工程で行う「処理内容」等を示している。矢印は、物や処理等が直接関係している(依存関係がある)ことを示しており、矢印の根元から矢先に向かって物や処理が流れることを示している。
【0061】
なお、これらの図面および本明細書において、「○○シール」という名称は、原則として、「○○の裏面に粘着材層が何らかの方法により積層されて一体化された積層体が、その粘着材層の粘着力により剥離紙に貼着されたもの、または、その積層体」の意味で用いている。その積層体である「○○シール」は、剥離紙から剥離して(分離させて)何か別の物に再貼着できるものである。
【0062】
図10〜図24に示すように、この製造方法は、被印字シートシール71を形成する被印字シートシール形成工程S101と、非接触式データキャリアインレット20を所定の外形にしてシールにしたインレットシール72を形成するインレットシール形成工程S102と、この被印字シートシール71を、その被印字面10aを上にして、インレットシール72上に、このインレットシール72の縁部が露出しないように積層して一体化し、被印字シート付きインレットシール73を形成する工程S103と、磁性体シート30をシールにした磁性体シートシール74を形成する磁性体シートシール形成工程S104と、剥離シート40を備えたラベル支持基体75を形成するラベル支持基体形成工程S105と、このラベル支持基体75に磁性体シートシール74を積層して一体化する工程S106と、これにさらに、被印字シート付きインレットシール73を積層して一体化する工程S107と、を有している。
【0063】
すなわち、この製造方法は、ラベル形非接触式データキャリア装置1を構成する部材を、部材毎に、もしくは、同じ外形を有すべき部材グループ毎に、所定の外形を有したシールにした上で、それらシールを、適切な順序で、ラベル支持基体である剥離紙(剥離シート)を最下層にして、順次、位置合わせして貼り付けていくものである。この製造方法によれば、構成部材のすべてを積層してから外形抜き加工するのと異なり、各構成部材の外形を所望の形状および大きさに異ならせて形成することが容易にできる。したがって、この製造方法によれば、図1〜3で説明したような構成のラベル形非接触式データキャリア装置1を容易に製造することができ、端面がべとつくという問題も解決される。
【0064】
なお、図10に示すように、被印字シートシール形成工程S101、インレットシール形成工程S102、磁性体シートシール形成工程S104、および、ラベル支持基体形成工程S105は、互いに依存関係がないので、どの順番に行っても良く、また、同時並行で行っても良い。また、工程S103、工程S104、および、工程S105の間でも依存関係がないので、これらも、どの順番に行っても良く、また、同時並行で行っても良い。
【0065】
以下、図10に符号S101〜S107で示した各工程について、この番号順に、詳細に説明する。
【0066】
(被印字シートシール(ロール)の作成)
まず、被印字シートシール形成工程S101について説明する。
【0067】
まず、被印字シート10の基材(原紙)として、所定外形の被印字シート10を多数個(たとえば1000個)まとめて作成するのに十分な幅(例えば被印字シート10の幅Wpより両脇に2割ぐらい余裕を持たせた幅)かつ、十分な長さのシートとなる被印字シート原紙ロールR10を用意する。被印字シート原紙ロールR10のロール長は、特に限定されないが、多数個取りでき、ラベル製造装置で扱える程度の長さである必要があることから、例えば、50〜500m程度とされる。
【0068】
この被印字シート原紙ロールR10としては、裏面に予め粘着材50が塗布(積層)され、乾燥されて、さらに、剥離シートS1が積層された長尺のものをロール状に巻回したものを用意することが好ましい。このような被印字シート原紙ロールR10としては、ラベル用表面基材として一般に市販されているものを用いることができる。このような粘着材及び剥離紙付きの被印字シート原紙ロールR10を用いることで、別途粘着材及び剥離シートを積層する手間を省き、また、安価かつ大量に生産することができる。もちろん、被印字シート原紙ロールとしては、これに限らず、粘着材50が予め塗布されていないものを用いてもよい。また、被印字シート原紙として、被印字面に予め文字や図柄などが印刷されている用紙を用いてもよいことはもちろんである。
【0069】
続いて、被印字シート原紙ロールR10を基に、ラベル製造装置を用いて、一定間隔で所定形状の外形(幅Wp、長さLpの矩形状)になるよう型抜き(外形抜き加工)し、不要となった部分(カス)の被印字シート層と粘着材層を剥離紙S1から剥がして(カス上げして)巻き上げる(図10、図11、図12参照)。被印字シート10の外形を抜き加工する際、剥離紙S1をも打ち抜くのではなく、図11および図12に示すように、ハーフカットして、剥離紙S1をそのまま残す。この工程は、一般的なラベル加工で行われているものと同様であり、同様の装置で行うことができる。
【0070】
ここで、「一定間隔」とは、被印字シート10の縁部が互いに重ならず、かつ、ラベル製造装置で扱える程度に一定の間隔があればよく、その間隔の長さは限定されない。被印字シート10の外形の「所定形状」とは、先に説明したとおりである。すなわち、被印字シート10は、その縁部が、非接触式データキャリアインレット20および磁性体シート30の縁部を越えて非接触式データキャリアインレット20および磁性体シート30を被覆し、かつ、粘着材50を介して剥離シート40または貼着対象物品に貼着できる程度に大きい外形であればよい。ここでは、図1および図11に示すように、幅Wp(例えば58mm)、長さLp(例えば40mm)で、四隅が少し丸くなった矩形状とした。
【0071】
このようにして、図11および図12に示すように、外形抜き済みの被印字シート10が、被印字面10aを表面にして、裏面に粘着材50が積層されて、剥離シートS1上に分離可能に貼着されてなる被印字シートシール71を得た。この被印字シートシール71が一定間隔で多数個配設された長尺のシート状のものを、ロール状に巻回して被印字シートシールロール71Rを得た。
【0072】
なお、この被印字シート10を外形抜きする際に、被印字面10aに印字することも可能である。例えば、ブランド名、型番、シリアル番号、UID(ユニークID)などを適宜印字してもよい。通常は、外形抜きの際ではなく、ラベル完成後に印字する。
【0073】
(インレットシール(ロール)の作成)
次に、インレットシール形成工程S102について説明する。
【0074】
まず、所定の外形に切断される前の非接触式データキャリアインレットが所定間隔(所定ピッチPt)で多数個形成された非接触式データキャリアインレットロールR20(裏面に粘着材層が積層されていないもの)と、所定幅かつ十分な長さの剥離紙付き粘着材シートロールRN1を用意する(図示せず)。
【0075】
ここで、所定ピッチPtは、被印字シート10の外形の長さLpよりも長くなるよう設定されている。後の工程S103で、このインレットシールロール72Rの各非接触式データキャリアインレット20の上に、被印字シートシールロール71Rに形成された個々の被印字シートシール73を貼ることとなるためである。
【0076】
ここで用いる剥離紙付き粘着材シートロールRN1は、図4のところで説明したように、3層構造の粘着材N1の両面に剥離紙F1、S2が積層された5層構造とされて、ロール状に巻回されたものである。ここでは、粘着材N1の原紙ロール(基材ロール)としてこのような構造のものを用いたが、これに限定されない。
【0077】
続いて、ラミネート加工と抜き加工と孔あけ加工とを一緒に行えるラベル製造装置に、原紙ロールとして、この2つのロールR20とRN1をセットする。そして、このラベル製造装置を用いて、剥離紙付き粘着材シートの上面側の剥離紙(図示せず)を剥がしながら、粘着材層N1の上に、非接触式データキャリアインレットロールR20を巻き出したものを積層する(すなわちラミネート加工する)とともに、所定の外形になるよう非接触式データキャリアインレット20と粘着材層N1とに外形抜き加工(ハーフカット)を施し、不要部分のシートを巻き上げて(カス上げして)、必要部分の巻き取りを行う(図10、図13、図14参照)。
【0078】
これにより、図13および図14に示すように、非接触式データキャリアインレット20と粘着材N1とが積層一体化されるとともに所定の外形に揃って切断され、剥離紙S2上に貼着された状態のインレットシール72が所定ピッチPtで多数個配設されてロール状に巻回されてなるインレットシールロール72Rを得る。
【0079】
なお、非接触式データキャリアインレット20および粘着材の「所定の外形」とは、ここでは、図1および図13に示すように、幅Wt(例えば47mm)、長さLt(例えば29mm)の矩形状とした。これは、アンテナの外形である45mm×27mmよりも周囲に1mmずつ大きくしたものである。このようにアンテナの外形に対して若干の余裕を持たせたのは、打ち抜き加工の際にアンテナを断線させないようにするためであり、また、非接触式データキャリアインレット20の外形を無用に大きくしないためでもある。この「若干の余裕」は、これに限られるものではなく、加工機の精度やシート材料の特性等に応じて適宜設定すればよい。また、矩形状に限られるものでもない。
【0080】
ここで、非接触式データキャリアインレット20を粘着材N1の上に積層する際、この実施形態では、上記説明したとおり、ICチップ搭載面を下にして配置する。そうすることで、最終的な非接触式データキャリア装置1において、図2で示したようにICチップ搭載面を下に向けた構成となる。もちろん、ICチップ搭載面を上にする構成の場合には、ICチップ搭載面を上にして配置する。
【0081】
また、ここでは、非接触式データキャリアインレット20の外形抜き加工(ハーフカット)と同時に、所定位置に静電容量調整用の貫通孔Hをあける(図7、図8b、図13、図14参照)。この例のように外形抜き加工と孔あけ加工とを同じ製造装置を用いて同じ工程で同時に行うことにより、効率よく精度よく加工することができ、生産性および品質を向上させることができる。
【0082】
このようにして、非接触式データキャリアインレット20と粘着材層N1とがICチップ搭載面を粘着材層N1側にして、積層一体化されて所定の外形にハーフカットされるとともに、所定位置に静電容量調整用の孔Hがあけられてなるインレットシール72が、所定ピッチPtで剥離紙S2上に多数個配設され、ロール状に巻回されたインレットシールロール72Rを得た(図13、図14参照)。
【0083】
なお、この例では、外形抜き加工と同時に孔あけ加工を行って、静電容量調整用の貫通孔Hをあけているが、予め、非接触式データキャリアインレットロールR20の状態で所定位置に静電容量調整用の貫通孔Hをあけておいてもよい。外形抜き加工の後に孔あけ加工を行ってもよいが、少なくとも、被印字シート10を積層する前に孔をあけておく必要がある。非接触式データキャリアインレット20と被印字シート10とを積層一体化した後に孔あけしたのでは、非接触式データキャリア装置の最上層の被印字面10aに孔があいてしまう事になるからである。また、外形抜きと孔あけを別々に行う場合には、位置ずれが生じないように、十分注意する必要がある。もちろん、孔Hをあける必要のない構成の場合には、孔あけ加工を行う必要はない。
【0084】
また、図14に示すように、ここでは、非接触式データキャリアインレット20の厚さ分だけでなく、粘着材層N1および剥離紙S2の分まで貫通するように孔Hをあけているが、これに限られない。インレット20の厚さ分だけ孔あけされていれば、静電容量を調整する機能としては十分である。
【0085】
(被印字シートシールとインレットシールの積層)
次に、被印字シートシール71にインレットシール73を積層して一体化する工程S103について説明する。
【0086】
この工程S103では、先の工程S101で作製した個々の被印字シートシール71を、被印字シートロール71Rから剥がして、先の工程S102で作製したインレットシールロール72R上に配設された各インレットシール72の上に、順次積層して、それぞれ一体化する(図10の工程S103、図15および図16参照)。この作業は、いわゆるラベリング加工(ラベル貼り加工)であり、通常のラベリング装置を用いて行うことができる。
【0087】
これにより、被印字シート付きインレットシール73、および、その被印字シート付きインレットシール73が剥離シートS2上に多数個貼着されて巻回された被印字シート付きインレットシールロール73Rを得る(図15および図16参照)。なお、図15および図16の右端に示したインレットシール72には、まだ被印字シートシール71が積層されていないが、これは、図14で示したインレットシールロール72R上に、図面左側から、順次積層している様子を表している。
【0088】
このラベリング加工の際、図15に示すように、被印字シートシール71がインレットシール72の表面全体を被覆し、被印字シートシール71のインレットシール72の各縁部を越えた部分が均等になるように、すなわち、インレットシール72が被印字シートシール71の中央に配置されるように位置合わせして積層する。少なくとも、インレットシール72の各縁部の粘着層が露出しないように積層する必要がある。インレットシール72の縁部の粘着層が露出することによるべとつきを抑えるためである。
【0089】
このようにして形成された被印字シート付きインレットシール73および被印字シート付きインレットシールロール73Rは、本実施形態に係る非接触式データキャリア装置1としては、最終製品ではない。しかし、磁性体層(磁性体シート)が積層されていないというだけであって、非接触式データキャリア装置としての構成および機能は備わっている。よって、これ自体、磁性体層なしの非接触式データキャリア装置として利用される可能性のある中間製品となる。
【0090】
(磁性体シートシール(ロール)形成)
次に、磁性体シートシール74を形成する磁性体シートシール形成工程S104について説明する。
【0091】
まず、磁性体シート30の原紙となる磁性体シート原紙ロールR30と、粘着材N2の原紙となる剥離紙付き粘着材シートロールRN2を用意する(図10参照)。磁性体シート原紙ロールR30としては、図1および図2のところで説明した構成の磁性体シート30と同じ構成、すなわち、基材フィルムP3と磁性体層31とが積層一体化されてなり、裏面に粘着材が積層されていないものであって、長尺のシートがロール状に巻回されたものを用意すればよい。
【0092】
剥離紙付き粘着材シートロールRN2としては、粘着材N1とN2の構成が同じであるから、インレットシール形成工程S102で用いた剥離紙付き粘着材シートロールRN1と同じものを用いることができる。粘着材の材料を統一することで、材料の無駄が生じにくくなるという効果が得られる。もちろん、粘着材N1とN2を同じ構成にする必要はないので、それぞれの事情に合わせて、別の剥離紙付き粘着材ロールを用いてもよい。
【0093】
磁性体シート原紙ロールR30、剥離紙付き粘着材シートロールRN2のロール長は、特に限定されないが、磁性体シート30を所定間隔で多数個取りできる程度の十分な長さで、かつ、ラベル製造装置で扱える程度の長さである必要があることから、たとえば、例えば50〜500m程度とされる。
【0094】
続いて、インレットシール形成工程S102のところで説明したのと同様に、ラミネートと抜き加工を同時に行える加工機に、この2つの原紙ロールR30とRN2をセットする。そして、この加工機を用いて、ラミネート加工と抜き加工を行う。すなわち、剥離紙付き粘着材シートの上面側の剥離紙(図示せず)を剥がしながら、粘着材層N2の上に、磁性体シート原紙ロールR30を巻き出したものを、磁性体層31側を上にして積層するとともに、所定の外形になるよう磁性体シート30および粘着剤層N2の外形抜き加工(ハーフカット)を行い、不要部分を巻き上げて(カス上げして)、必要部分の巻き取りを行う(図10、図17、図18参照)。
【0095】
これにより、図17および図18に示すように、磁性体シート30と粘着材層N2とが積層一体化されるとともに所定の外形に揃って切断され、剥離紙S3上に貼着された状態の磁性体シートシール74が一定間隔で多数個配設されてロール状に巻回されてなる磁性体シートシールロール74Rを得る。
【0096】
なお、磁性体シート30および粘着材層N2の「所定の外形」とは、ここでは、図1および図17に示すように、幅Wm(例えば48mm)、長さLm(例えば30mm)の矩形状とした。幅Wm、長さLmの長さは、これに限られるものではないが、少なくとも、非接触式データキャリアインレット20のアンテナを被覆するようにアンテナの外形と同等か若干大きい形状とされる。そうすることで、リーダライタからアンテナへ導入される磁界を物品への貼着面側に対して遮蔽することができ、渦電流が発生して交信不能となるのを回避することができる。
【0097】
ここで、磁性体シート30を粘着材層N2の上に、磁性体層31側を上にして(基材フィルムP3と粘着材層N2とを対向させて)積層して、外形抜き加工(ハーフカット)を行うと同時に、非接触式データキャリアインレット20のICチップCが搭載された領域に対応する領域に、ICチップCより十分大きい大きさのチップ避け用の貫通孔33をあける(図2、図3、図17、図18参照)。ここでは、直径4mmの円形の孔をあけた。
【0098】
このようにして、磁性体シート30と粘着材層N2とが積層一体化されて所定の外形にハーフカットされるとともに、所定位置にチップ避け用の孔33があけられてなる磁性体シートシール74が、一定間隔で剥離紙S3上に多数個配設され、ロール状に巻回された磁性体シートシールロール74Rを得た(図17、図18参照)。
【0099】
なお、この例では、ラミネート、外形抜き加工、孔あけ加工を、すべて同じ加工装置(ラベル製造装置)を用いて同じ工程で行っている。これらは、別々の加工装置で別々の時に行ってもよいが、少なくとも、ラベル支持基体75に積層する前までには、これらを済ませておく必要がある。また、外形抜きと孔あけを別々に行う場合には、位置ずれが生じないように、十分注意する必要がある。もちろん、先に説明したように、チップ避け用の貫通孔33をあけない構成とする場合には、孔あけ加工を行う必要はない。この例のように、外形抜き加工と孔あけ加工とを、同じ工程で同じ加工装置を用いて同時に行うことで、効率よく精度よく加工することができ、生産性および品質を向上させることができる。
【0100】
また、図18に示すように、ここでは、磁性体シート30の厚さ分だけでなく、粘着材層N2および剥離紙S3の分まで貫通するように、孔33をあけているが、これに限られない。ICチップの厚みと磁性体シート30の厚みにもよるし、加工装置の機能や性能にもよるが、磁性体シート30の厚さの分だけ孔33をあけるようにしてもよい。
【0101】
(ラベル支持基体(ロール)形成)
次に、ラベル形非接触式データキャリア装置1を支持する基体となるラベル支持基体75およびラベル支持基体ロール75Rを形成するラベル支持基体形成工程S105について、主に図10、図19、図20を用いて説明する。
【0102】
まず、ラベル支持基体原紙ロールR40として、ここでは、剥離シート40とダミーシート43とが粘着材層N4を介して剥離可能に積層された3層構造で所定幅Wsで長尺のシートをロール状に巻回したものを用意した。ラベル支持基体原紙ロールR40としては、特に限定されないが、例えば、市販のいわゆるタック紙(タックラベル用紙)のロール状のものを用いることができる。
【0103】
なお、粘着材層N4とダミーシート43は、この製造工程において剥がされてしまい、この実施形態のラベル形非接触式データキャリア装置1の構成には残らないものである。よって、ラベル支持基体75としては、実質的には剥離シート40だけで十分である。すなわち、ラベル支持基体原紙ロールR40としては、実質的には、所定幅Wsで長尺の剥離シート40をロール状に巻回したものがあればよい。
【0104】
ここで、図19および図20に示すように、剥離シート40の一方の面40aには、剥離剤(離型剤)が塗布されており、剥離シート40の他方の面40bには、剥離剤が塗布されていない。剥離シート40の剥離材塗布面40a側には、粘着材層N4を介してダミーシート43が積層されている。剥離材非塗布面40bは露出されている。この剥離材非塗布面40bが、ラベル形非接触式データキャリア装置1の最下層(ラベル支持基体)となる剥離シート40の裏面となる。
【0105】
続いて、図19および図20に示すように、ラベル支持基体原紙ロールR40を、剥離シート40の裏面側(剥離材非塗布面40b側)を上になるようにしてシート状に展開して、所定間隔Ls毎に、折りミシン目42を形成するとともに、所定位置に所定の大きさのキャッチマーク41を印刷する。
【0106】
このキャッチマークは、ラベル印刷機やラベル加工機などの装置に個々のラベルの位置を認識させ、シートの送り量を制御するために必要となるマークである。ロールの形態でラベルを製造する場合には、通常は、キャッチマークを印刷することが必要とされている。そのキャッチマークの具体的構成は、装置やその制御方法に依存するが、ここでは、5mm四方の略正方形の黒色とした。また、折ミシン目42は、個々の非接触式データキャリア装置1を手で容易に切り離し可能とするためのもので、切り取り線などとも呼ばれている。折ミシン目42は、ミシン加工を行える装置を用いて、ミシン加工を施すことにより形成することができる。
【0107】
ここで、所定幅Wsとは、最終製品となる非接触式データキャリア装置1の剥離シート40の幅Wsと同一であり、所定間隔Lsとは、非接触式データキャリア装置1の剥離シート40の長さLsと同一である(図1参照)。この例では、Wsは70mm、Lsは43mmとしたが、これに限られない。
【0108】
このようにして、剥離シート40の裏面(剥離剤非塗布面)40b側に、個片に切り離し可能とする折ミシン目42が所定間隔Lsで形成され、各折ミシン目42で区切られた矩形の領域の四隅の一角に所定のキャッチマーク41が印刷されてロール状に巻回されたラベル支持基体ロール75Rを得た(図19および図20参照)。この各折ミシン目42で仕切られた部分が個々のラベル支持基体75である。
【0109】
(磁性体シートシールの積層(ラベリング))
次に、磁性体シートシール74を積層する工程S106について説明する。
【0110】
この工程S106では、先の工程S105で作製したラベル支持基体ロール75Rから、ダミーシート43を粘着材N4と共に剥離することにより剥離シート40のみを引き出して、その剥離剤塗布面40a上に、先の工程S104で作製した個々の磁性体シートシール74を、磁性体シートシールロール74Rから剥がして、順次積層して一体化する(図10の工程S106、図21および図22参照)。この作業は、いわゆるラベリング加工であり、通常のラベリング装置を用いて行うことができる。
【0111】
これにより、図21および図22に示すように、ラベル支持基体として裏面40b側にキャッチマーク41およびミシン目42が形成された剥離シート40の表面40a側の所定位置に、所定位置に孔33があけられた磁性体シートシール74を、分離可能に多数個貼着されてロール状に巻回されたロール76Rを得た。
【0112】
ここで、図22では、磁性体シートシール74の構成の詳細を省略している。図18と図22とを総合するとわかるように、符号76で示した積層体は、磁性体シートシール74が剥離シート40上に貼着された積層体であるとともに、磁性体シート30と剥離シート40とが粘着材N2を介して積層されて貼着された積層体でもある。
【0113】
(被印字シート付きインレットシールの積層(ラベリング))
次に、被印字シート付きインレットシール73を積層して一体化する工程S107について説明する。
【0114】
先の工程S106で作製したロール76Rを、磁性体シートシール74の表面を上にして配置されるようにして、連続的に送り出すとともに、その各磁性体シートシール74上に、先の工程S103で作製した個々の被印字シート付きインレットシール73を、剥離紙S2から剥がして、順次積層して一体化する(図10の工程S107、図23および図24参照)。この作業は、いわゆるラベリング加工(ラベル貼り加工)であり、通常のラベリング装置を用いて行うことができる。
【0115】
このラベリング加工の際、図23および図24に示すように、被印字シート付きインレットシール73が磁性体シートシール74の表面全体を被覆し、被印字シートシール71の磁性体シートシール74の各縁部を越えた部分が均等になるように、すなわち、磁性体シートシール74が被印字シート付きインレットシール73(実質は被印字シート10)の中央に配置されるように位置合わせして積層する。少なくとも、磁性体シートシール74の各縁部の粘着層が露出しないように積層する必要がある。磁性体シートシール74の縁部の粘着層が露出することによるべとつきを抑えるためである。
【0116】
なお、上記したように(図2および図16参照)、剥離紙S2から剥がされた印字シート付きインレットシール73は、非接触式データキャリアインレット20のICチップ搭載面が粘着面側に向いている構成となっている。また、磁性体シートシール74にはICチップ搭載領域に対応する位置に、ICチップCを収納できる程度の大きさの孔33があけられている。そこで、ラベリング加工する際、ICチップCと孔33とが対向するように位置合わせして、積層するようにする。
【0117】
そうすることにより、図2に示したように、ICチップCおよび粘着材N1の一部は孔33に陥入した状態になる。したがって、ICチップCは外部の圧力や衝撃等から保護されることとなり、非接触式データキャリア装置1も薄型化されるという効果が得られる。また、ICチップCが突出しないので、図2に示すように、ラベル形非接触式データキャリア装置1の表面(被印字面10a)を比較的平坦に構成することができるという効果が得られる。被印字面10aを比較的平坦に構成されることにより、被印字面10aへの印刷も容易となるという効果が得られる。
【0118】
(ラベル形非接触式データキャリア装置1の完成)
以上のようにして、本実施形態に係るラベル形非接触式データキャリア装置1が、(物品への貼着面となる)粘着面を下にして、ラベル支持基体としての剥離シート40の剥離剤塗布面40a上に、折りミシン目42で仕切られて多数個連続的に配設された非接触式データキャリア装置ロール1Rを得た。非接触式データキャリア装置1の端面がべとつくことはなかった。
【0119】
こうして得られたラベル形非接触式データキャリア装置ロール1Rは、このロール形態のまま、提供される。被印字面10aに文字列や図柄等が印刷された後、ロール形態のまま提供されてもよい。ミシン目42に沿って切り離して枚葉形態で提供されてもよい。あるいは、ミシン目42に沿ってジャバラ状に折りたたんだ形態で提供されてもよい。その場合でも、ラベル形非接触式データキャリア装置1の端面がべとつくことにより隣接するラベル形非接触式データキャリア装置同士がくっつくことはない。もちろん、その他の形態で提供されてもよい。
【0120】
(その他)
なお、図5および図6に示したように、絶縁層60と粘着材N3とを、剥離シート40上にさらに積層した構成とする場合には、図10で示したラベル支持基体形成工程S105の後、磁性体シール74を積層する工程S106の前に、絶縁層60と粘着材N3とを積層(ラミネート加工)するとともに所定の外形(磁性体シートシールと同等の外形)に抜き加工し、絶縁層シールを形成する工程S108(図示せず)と、この絶縁層シールを、ラベル支持基体としての剥離シート40の剥離剤塗布面上の所定位置に貼着する工程S109(図示せず)と、を行えばよい。あるいは、ラベル支持基体形成工程S105において、ラベル支持基体原紙ロールR40を構成するダミーシート43を剥がす前に、所定の外形に抜き加工を施して、カス上げしてもよい。そして、磁性体シール74を積層する工程S106の際に、ダミーシート43の残った部分と粘着材N4の2層を剥がすことなく、そのまま磁性体シール74を貼着すればよい。そうすることで、より容易に、図5および図6に示した構成のラベル形非接触式データキャリア装置100を製造することができる。この場合、絶縁層60やダミーシート43を不透明にすることで、図5および図6のところで説明したように、内部の磁性体層を見えにくくすることができ、外観をよくすることができる。
【0121】
なお、本発明は上記実施形態のみに限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、いろいろに変形することができる。
【0122】
たとえば、磁性体シートシール74(磁性体シート30)とラベル支持基材シート75(剥離シート40)との間に、導電性金属層と粘着材層とを積層一体化する構成としても良い。そうすることで、磁性体層と導電性金属層とを予め積層した状態で非接触式データキャリアインレットの共振周波数を調整しておくことができるので、ラベル形非接触式データキャリア装置の貼着対称物品が、金属等の導電性物品であるか非導電性物品であるかに関わらず、通信可能な非接触式データキャリア装置を提供することができるようになる。そのような構成とする場合にも、上記説明したのと同様に、導電性金属層で構成される長尺のシートと剥離紙付き粘着材シートロールとを原紙ロールとして、積層(ラミネート)して、外形抜き加工、積層(ラベリング)を行うことで、容易に製造することができる。
【0123】
このように、さらに多層化した非接触式データキャリア装置の場合であっても、図1〜図3で説明したのと同様に、ラベル表面を構成する被印字シートを大きめに形成して、これら多層のシート状の材料を互いに接着する層間粘着材層の端面を露出させないようにすればよい。そうすることによって、端面がべとつかないラベル形非接触式データキャリア装置およびラベル形非接触式データキャリア装置ロールを提供することができる。
【0124】
また、上記では、一例として、一列のロールの形態で製造する方法を説明したが、これに限られず、複数列のロールの形態でもよい。また、A4規格用紙など所望の大きさのシートに、所望の間隔で縦横に複数個並べて配設する形態で製造してもよい。
【0125】
さらに、上記では、各層を構成するシート状の材料の外形は矩形状としたが、矩形状に限られず、円形、楕円形、瓢箪形、キャラクター形状など、任意の形状であってもよい。その場合でも同様である。すなわち、最上層となる被印字シートを、その縁部が、下層のシート状の材料(非接触式データキャリアインレット、磁性体シートなど)の各縁部を越えて、これらを被覆するように大きく形成するとともに、越えた部分の被印字シートの裏面にも粘着材層を設けておけばよい。そして、被印字シートの縁部がこれら各縁部を越えた部分の幅は、いずれの箇所も、少なくとも2mm以上、好ましくは4mm以上にするとよい。そうすることで、ラベル形非接触式データキャリア装置の縁部がはがれにくくなる。
【0126】
このような一例として、外形を長円形にした場合のラベル形非接触式データキャリア装置200の例を図25に示す。同図において、剥離シートは省略している。同図に示すように、被印字シート210が長円形で非接触データキャリアインレット220および磁性体シート230が円形の場合であっても、被印字シート210を、その縁部が、非接触式データキャリアインレット220および磁性体シート230の各縁部を越えてインレット220および磁性体シート230を被覆するように大きく形成することで、端部の粘着層がべとつかなくなるという本発明の効果が得られる。さらに、被印字シート210の縁部が非接触式データキャリアインレット220および磁性体シート230の各縁部を越えた部分の幅(図25に示すWd)を少なくとも2mm以上、好ましくは4mm以上にすることにより、ラベル形非接触式データキャリア装置200(被印字シート210)の縁部をはがれにくくすることができる。なお、この例では、被印字シート210の縁部が各縁部220、230を越える幅Wdは一定ではないが、幅Wdの最小の部分が少なくとも所定の幅(例えば2mm)以上であれば良い。また、越えた部分の被印字シート210の裏面に粘着材層が設けられていることはもちろんである。
【符号の説明】
【0127】
1…ラベル形非接触式データキャリア装置、10…被印字シート、20…非接触式データキャリアインレット、30…磁性体シート、31…磁性体層、40…剥離シート、50,N1,N2,N3…粘着材層、60…不透明な絶縁層、21a,21b…接続パターン、22,23,24,25…コンデンサ、22a,22b,23a,23b,24a,24b…静電容量調整パターン、26a…一方の面、26b…他方の面、27a…一端部、28…接続バンプ、29a,29b…カシメ部、A…アンテナコイル、C…ICチップ、P1,P2,P3…基材フィルム(合成樹脂シート)、Y…ジャンパ線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の外形を有する非接触式データキャリアインレットと粘着材とが積層一体化されて剥離紙上に分離可能に貼着されてなるインレットシールを形成するインレットシール形成工程と、
前記非接触式データキャリアインレットの外形より大きい所定の外形を有する被印字シートの裏面に粘着材が積層一体化されて剥離紙上に分離可能に貼着されてなる被印字シートシールを形成する被印字シートシール形成工程と、
前記形成した被印字シートシールを、剥離紙から分離させて、その被印字面を上にして、前記形成したインレットシール上に、前記インレットシールの縁部が露出しないように積層して一体化し、剥離紙上に分離可能に貼着されてなる被印字シート付きインレットシールを形成する工程と、
前記非接触式データキャリアインレットのアンテナの外形と同等もしくは若干大きい外形を有する磁性体シートと粘着材とが積層一体化されて剥離紙上に貼着されてなる磁性体シートシールを形成する磁性体シートシール形成工程と、
剥離シートを備えたラベル支持基体を形成するラベル支持基体形成工程と、
前記形成した磁性体シートシールを、剥離紙から分離させて、前記形成したラベル支持基体の所定位置に積層一体化する磁性体シートシール積層工程と、
前記被印字シート付きインレットシールを、剥離紙から分離させて、前記積層された磁性体シートシールの上に、前記磁性体シートシールの縁部が露出しないように積層し一体化する工程と、
を有することを特徴とするラベル形非接触式データキャリア装置の製造方法。
【請求項2】
前記インレットシール形成工程において、非接触式データキャリアインレットを所定の外形に打ち抜くとともに前記非接触式データキャリアインレットの所定位置に静電容量調整用の孔をあけることを特徴とする請求項1に記載のラベル形非接触式データキャリア装置の製造方法。
【請求項3】
前記磁性体シートシール形成工程において、磁性体シートを所定の外形に打ち抜くとともに、ICチップ搭載位置に対応する所定位置に、ICチップの外形より大きい孔をあけることを特徴とする請求項1又は2に記載のラベル形非接触式データキャリア装置の製造方法。
【請求項4】
前記ラベル支持基体形成工程において、
シート状の絶縁層と粘着層とが積層一体化され、前記磁性体シートシールと同等の外形に打ち抜かれてなる絶縁性シートを、前記ラベル支持基体の剥離シートの剥離剤塗布面上の所定位置に貼着する工程をさらに有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のラベル形非接触式データキャリア装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法で製造されたラベル形非接触式データキャリア装置が複数個配設された状態のシートをロール状に巻回して作製することを特徴とするラベル形非接触式データキャリア装置ロールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−222044(P2011−222044A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162639(P2011−162639)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【分割の表示】特願2005−359423(P2005−359423)の分割
【原出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】