説明

ラミネート品の剥ぎ取りシステム及び方法

【課題】通常ラインの稼働率を上げると共に作業性の改善を図れるようにしたラミネート品の剥ぎ取りシステム及び方法を提供する。
【解決手段】計画停電等に起因して発生したラミネート品のカソード板から電気銅を剥ぎ取る剥ぎ取りシステム1は、第一の移載機11、搬出コンベア15、リジェクトコンベア19、ラミネート品用剥取機27、第一,第二の移載ロボット21,24等が通常ラインBに隣接するラミネーション処理区域Aに設置されている。洗浄槽10からのラミネート品20は、第一の移載機11、リジェクトコンベア19、第一の移載ロボット21を経て剥取部16に到達し、この剥取部16によってステンレス板から電気銅が剥がされる。この電気銅は搬出コンベア15へ送られ、ステンレス板は第二の移載ロボット24、母板リジェクトコンベア23、第二の移載機18を経て配列コンベア17へ送られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の電解精製においてラミネート品となった電着金属をカソード板から剥ぎ取るためのラミネート品の剥ぎ取りシステム及び方法に係り、特に、電解精製の際に一時的に通電が停止することに起因して発生するラミネート品をカソード板から剥ぎ取る作業を効率的に行えるようにしたラミネート品の剥ぎ取りシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の電解精製、例えば銅の電解精製における電解プロセスとして、近年、ステンレス板をカソード(陰極)、粗銅をアノード(陽極)として電解を行うパーマネントカソード(Permanent Cathode:PC)法が広く用いられている。このパーマネントカソード法は、種板電解が必要な従来方法に比べて、生産性が高く、品質の向上が図れるという利点がある。図5はパーマネントカソード法の工程を説明する図であり、銅精鉱から乾式製錬によって得られた粗銅(銅含有率97〜99%)をモールド型にて成型してアノード板とする一方、ステンレス製の板からカソード板を作製する。そして、アノード板とカソード板を交互に電解液が貯えられた電解槽内に浸漬し、両電極間に直流電圧を印加することにより電解を行うと、アノード板を構成する銅が電解液中に溶解してカソード板の表面に銅が電着する。このような電解を1〜2週間継続するとカソード板の表面上に所望の厚さの電気銅が形成されるので、その段階で電解槽からカソードを引き上げ、剥離機(剥取機)によってカソード板から電気銅を剥離することにより電気銅が得られる。電気銅が剥離されたカソード板は、繰り返し利用することができる。このようなパーマネントカソード法としては、例えば、特許文献1に示すものがある。
【0003】
ここで、パーマネントカソード法には、大別してISA法とKIDD法とがある。ISA法には、カソードの両側部を塩化ビニール等で絶縁マスキングすると共に下部をワックスでマスキングして両側部及び下部に電着が及ばないようにし、電解処理の終了後、カソードの両面に電着した電気銅を剥離機によって剥ぎ取り、これによって1つのカソード板から2枚の電気銅を得る方法と、特許文献2に示されるように、カソード板の下端面に75〜150°の開口を有するV字形状の溝を設け、下部にワックスを用いない方法が知られている。この下部にワックスを用いないカソード板から電気銅を剥ぎ取る場合、その上端の両側を楔形剥離器で挟み、その状態のまま楔形剥離器を下降させることによって電気銅がカソード板の両側から剥離し始め、電気銅がカソード板の下端部のV字溝に対応する位置のみで接続され、カソード板の両面から分離した段階で、電気銅をカソード板に対して外側に向けて引っ張ると二分割され、2つの電気銅を得ることができる。
【0004】
ところで、電気銅の製造設備においては、電力会社の送電設備点検等に対応して年に1回程度の定期点検が行われる。これは製造設備を停止すると共に、銅電解槽への通電を一斉に停止(8〜12時間程度)する操業であり、計画停電(計画通電ともいう。)が行われている。また、落雷その他の突発事故によって停電に至ることもある。電解精製中に一時的に通電が停止すると通電停止の前後で電気銅が2層となる現象が発生することがある。この現象は「ラミネーション」といわれ、ラミネーションが生じた電着金属は「ラミネート品」といわれる。ここで、通常の電気銅の場合には、左右両面の電着金属がカソード板の底面部分で繋がった状態となっていてもカソード板の底面に形成されたいわゆるV溝の効果によって電気銅を引き剥がした場合、電着金属の底部の真ん中でうまく割れてほぼ左右対称の電気銅を得ることができる。しかしながら、ラミネート品の場合は、カソード板から剥離しようとしても電気銅の弾性のためV溝の効果が発揮されずに電気銅の2層目がカソード板の底の部分でうまく2つに割れないことが多い。この場合、従来はフレキシング作業を何度も行うことにより疲労破壊を生じさせて切断したり、作業者が手作業でカソード板から電気銅を剥ぎ取ることで対処していた。また、停電終了後の復電操作の際に2段階以上の多段階により電流値を増加させて、ラミネーションの発生を抑制し、計画停電後の電気銅の剥ぎ取りを容易にする電解精製方法も提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−240146号公報
【特許文献2】特表2003−502512号公報
【特許文献3】特開2009−256742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したように、従来のラミネート品における電気銅の剥ぎ取り作業は何度もフレキシング作業を行うことから剥ぎ取り機による通常の操業では、1枚あたり6〜7秒で処理されるが、ラミネート品の場合には1枚あたり20〜30秒を要している。そのため、作業効率が大幅に減殺され作業遅延、稼働率低下等の問題が生じていた。また、作業員の手作業によるオフラインでの剥ぎ取り作業は重量物の扱いになるために安全性に不安があるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、ラミネート品に対する処理を通常のライン内で行わずに別処理することで、通常ラインの稼働率を上げると共に、作業性の改善を図れるようにしたラミネート品の剥ぎ取りシステム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、電解精製中に一時的に通電が停止することにより通電停止の前後で電着金属が2層となるラミネーションが発生したラミネート品のカソード板から電着金属を剥ぎ取るラミネート品の剥ぎ取り方法において、電解精製時にラミネーションが発生したラミネート品を第一の移載機によって通常ラインから選別してラミネーション処理区域へ搬送し、該搬送したラミネート品から電着金属を剥ぎ取ることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のラミネート品の剥ぎ取り取り方法において、電着金属が剥ぎ取られた後のカソード板は、母板リジェクトコンベアを介して通常ラインに戻されることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するために請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載のラミネート品の剥ぎ取り方法において、剥ぎ取られた電着金属は、通常ラインに設けられた電着金属の搬送コンベアとは別に設置された搬出コンベアによってラミネーション処理区域から搬出されることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するために請求項4に記載の本発明は、電解精製中に一時的に通電が停止することにより通電停止の前後で電着金属が2層となるラミネーションが発生したラミネート品のカソード板から電着金属を剥ぎ取るラミネート品の剥ぎ取りシステムにおいて、ラミネーションが発生したカソード板を通常ラインからラミネーション処理区域に配置されたリジェクトコンベアへ移送する第一の移載機と、ラミネーション処理区域に設置され、ラミネート品のカソード板から電着金属を剥ぎ取るラミネート品用剥取機と、第一の移載機によって移送されてきたラミネート品をラミネート品用剥離機へ移載する第一の移載ロボットと、ラミネート品用剥離機によって剥ぎ取られた電着金属を搬出する通常ラインに設けられた電着金属の搬送コンベアとは別に設置された搬出コンベアと、ラミネート品用剥離機によって剥ぎ取られた後のカソード板を母板リジェクトコンベアへ移載する第二の移載ロボットと、を備えてなることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するために請求項5に記載の本発明は、請求項4に記載のラミネート品の剥ぎ取りシステムにおいて、母板リジェクトコンベアへ移載されたカソード板を通常ラインに戻す第二の移載機を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る銅電解精製方法及びシステムによれば、通常ラインとは別にラミネーション処理区域を設け、ラミネート品を通常ラインからラミネーション処理区域へ移送し、ラミネーション処理区域においてラミネート品の電気銅を剥ぎ取る処理を行うことにより、通常ラインの稼働率を上げると共に、作業性の改善を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るラミネート品の剥ぎ取りシステムの好ましい一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のリジェクトコンベア及び第一の移載ロボットの詳細を示す側面図である。
【図3】図1の剥取部の詳細を示す側面図である。
【図4】本発明に係るラミネート品の剥ぎ取りシステムの動作を示すフローチャートである。
【図5】パーマネントカソード法の工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るラミネート品の剥ぎ取りシステム(以下、単に、「剥ぎ取りシステム」という)及び方法について、好ましい一実施形態に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る剥ぎ取りシステムの実施形態を示す平面図である。
【0016】
[剥ぎ取りシステムの構成]
図示された剥ぎ取りシステム1は、電解精製中に一時的な停電が発生することなくその両面に正常に金属が電着した正常品(ラミネーションが発生していない電着金属を便宜上「正常品」という。)28及び電解精製中に一時的な停電が発生しラミネーションが発生したラミネート品20から電着金属を効率よく剥ぎ取るための剥ぎ取りシステムである。以下、電着金属が電気銅である場合を例にして説明する。
【0017】
剥ぎ取りシステム1は、電解精製が終了し、カソード板(ステンレス板22のこと。「母板」ともいう。)の両面に電気銅が電着した正常品28及びラミネート品20を洗浄するための洗浄槽10の当該正常品28及びラミネート品20の排出方向の前方に設置された第一の移載機11と、洗浄槽10の排出方向の延長線上に設置され、第一の移載機11によってラミネート品20の全て又はその一部を図示の矢印方向へ搬送するためのリジェクトコンベア19と、洗浄槽10の排出方向に対して直角方向に設置され、第一の移載機11によって移載されたカソード板の両面に正常な電気銅が電着した正常品28をその平面と平行な方向に搬送するトラバースコンベア12と、トラバースコンベア12のほぼ中間に配設され、正常品28の両面から電気銅を剥ぎ取る正常品用剥取機14と、トラバースコンベア12の中間に配設され、正常品用剥取機14によって剥ぎ取られた電気銅を搬送する電気銅排出コンベア13と、トラバースコンベア12の搬送終端部近傍に配置され、電気銅が剥ぎ取られた後の正常品28のカソード板を搬送するトラバースコンベア12に対して直交する方向に設置された配列コンベア17と、トラバースコンベア12の搬送終端部近傍であって配列コンベア17の一端側と連続するようにして設置され、トラバースコンベア12によって搬送されてくる正常品28のステンレス板22を配列コンベア17へ移載する第二の移載機18と、正常品用剥取機14と隣接するようにして配置され、ラミネート品20から電気銅を剥ぎ取る剥取部16と、トラバースコンベア12と直交する方向に配置され、ラミネート品20から剥ぎ取られた電気銅を電気銅排出コンベア13の搬送方向とは反対方向に搬送する搬出コンベア15と、第一の移載機11によってリジェクトコンベア19に移載されたラミネート品20を剥取部16へ移載する第一の移載ロボット21と、ラミネート品20から電気銅が剥ぎ取られた後のカソード板(ステンレス板22)を配列コンベア17へ向かって搬送する母板(ステンレス板)リジェクトコンベア23と、剥取部16によって電気銅が剥ぎ取られた後のカソード板(ステンレス板22)を母板リジェクトコンベア23へ移載する第二の移載ロボット24と、剥ぎ取りシステム1の全体を制御及び管理する制御装置30とを備えている。
【0018】
ここで、搬出コンベア15、剥取部16、リジェクトコンベア19、母板リジェクトコンベア23、及び第一,第二の移載ロボット21,24の設置場所は、ラミネーション処理区域Aを形成している。また、第一の移載機11、第二の移載機18、トラバースコンベア12、電気銅排出コンベア13、正常品用剥取機14及び配列コンベア17によって通常ラインBが形成されている。
【0019】
第一の移載機11は、洗浄槽10からのカソード板がラミネート品20である場合にはその全て又はその一部をリジェクトコンベア19へ移載し、正常品28の場合にはトラバースコンベア12へ移載する装置である。ここで、全てのラミネート品20をラミネーション処理区域Aにおいて処理するように構成することはもちろん可能ではあるが、本実施形態では一部のラミネート品は通常ラインBでも処理できるように構成されている。このような構成としたのは、ラミネート品20の全てをラミネーション処理区域Aで処理する構成とすると、仮に多数のラミネート品20が連続して搬送されてきた場合には通常ラインBで処理すべき正常品28がないことから通常ラインBが空いてしまうことになる。しかし、通常ラインでのラミネート品20からの電着金属の剥ぎ取りには時間がかかるとはいっても通常ラインを全く使用しないよりは使用した方が全体の処理時間の短縮を図ることができるからである。そこで、ラミネーション処理区域Aでの処理と通常ラインBでの処理とを併用することにしたものである。また、第二の移載機18は、正常品28のカソード板から電気銅が剥ぎ取られた後のステンレス板22を配列コンベア17へ移載する装置である。正常品用剥取機14は、トラバースコンベア12によって搬送されてくる正常品28の両面から電気銅を剥ぎ取る装置である。一方、剥取部16は、図示しない剥取機を備えて構成され、ラミネート品20から電気銅を剥ぎ取る装置である。第一,第二の移載ロボット21,24のそれぞれは、例えば、関節部と関節部を回動させる回動機構とを有するマニュピレータからなるいわゆる多関節型ロボットであり、複数のシリンダ及び各種のセンサを備え、マニュピレータの先端でラミネート品20やラミネート品20から電気銅が剥ぎ取られた後のステンレス板22を把持して所定位置への移載を行う。第一,第二の移載ロボット21,24の動作は、予めその位置情報を制御装置30に記憶保存することにより行われる。
【0020】
ここで、第一の移載ロボット21の構成について説明する。第一の移載ロボット21は、地上Gに設置された本体211と、この本体211の上部に回動可能に取り付けられた駆動部212と、この駆動部212に多関節動作を可能にして取り付けられたマニュピレータ213とを備えて構成されている(図1参照)。同様に、第二の移載ロボット24は、地面Gに設置された本体241と、この本体241の上部に回動可能に取り付けられた駆動部242と、この駆動部242に多関節動作を可能にして取り付けられたマニュピレータ243とを備えている(図1参照)。
【0021】
制御装置30は、例えば、CPU、メモリ、ディスプレイ、その他の回路を備えたいわゆるマイクロコンピュータを主体に構成されており、正常品用剥取機14、剥取部16、第一,第二の移載ロボット21,24及び各コンベア等の駆動モータのオン/オフや回転を制御する。また、搬送されてきたラミネート品20をラミネーション処理区域Aで処理するか或いは通常ラインBで処理するかの判断を行い第一の移載機11の動作の制御を行う。この制御装置30は、半導体メモリ等の記憶媒体に格納されたプログラムに基づいて処理を実行する。すなわち、その一例として図4に示すような処理を実行する。
【0022】
図2は、第一の移載ロボット21及びリジェクトコンベア19を含む移載部の詳細を示す側面図である。リジェクトコンベア19は、支柱25a,25bによって所定の高さに水平に設置され、1又は複数枚のラミネート品20が垂直状態で図2における右方向へ搬送されるようになっている。すなわち、複数枚のラミネート品20は、リジェクトコンベア19によって図1では上方向、図2では右方向へ移動し、図2における最右側端のラミネート品20から順次第一の移載ロボット21のマニュピレータ213によって把持され、剥取部16への移載が行われる。
【0023】
図3は、剥取部16の詳細を示す側面図である。地面Gには支柱160a,160bが立設され、その上面にはテーブル26が水平に固定されている。このテーブル26上にはラミネート品用剥取機27が設置されている。ラミネート品用剥取機27は、電気銅40の左右方向から力を加えて波打つ状態とするいわゆる「フレキシング」、及び、電気銅40をチゼリング(フレキシングによって電気銅40とステンレス板22との間に生じた隙間に図示しないチゼルを差し込んで引き剥がす処理)することによって電気銅40の底を割ることなく、断面V字状の状態で搬出コンベア15上へ落下させるようになっている。ラミネート品20の場合には、一時的な停電により停電の前後で2層構造に電着した電気銅となり、上記のフレキシング、チゼリング工程で発生する亀裂は、カソード板の底部のV溝の上部から下方向で伝播されるが、2層構造の界面付近で、伝播が止まり、底部が完全に割れることなく母板であるステンレス板22から脱落する。
【0024】
次に、ラミネート品用剥取機27の構成について説明する。図3に示すように、ラミネート品用剥取機27は、テーブル26に設けられてラミネート品20が動かないように両側から挟んで固定する下部固定シリンダ271a,271bと、スタンド272a,272bを介してテーブル26上に設置され、ラミネート品20を突出方向に押し込んでラミネート品20を湾曲させるフレキシブルシリンダ273a,273bとを備えて構成されている。尚、図3において、ラミネート品20は、その構造を分かり易くするため、ステンレス板22から剥ぎ取る前の電気銅40の厚みは剥ぎ取った後の電気銅41よりも厚くして図示している。
【0025】
[剥ぎ取りシステムの動作]
次に、本発明に係るラミネート品の剥ぎ取り方法について上述した剥ぎ取りシステム1の動作と共に、図1〜図3及び図4のフローチャートを参照して説明する。まず、剥ぎ取りシステム1は、制御装置30から発せられる指令に基づき動作を開始する。すなわち、各コンベア12,13,15,17,18の駆動が開始されると共に、第一,第二の移載ロボット21,24も作動可能状態となる。電解精製(S101)が終了した正常品28及びラミネート品20は洗浄槽10によって洗浄(S102)された後、第一の移載機11へ送られる。第一の移載機11に到達した正常品28又はラミネート品20は、それが正常品28であるかラミネート品20であるかが制御装置30によって判定される(S103)。これは、何れの電解槽は何時から電解精製を開始し、何時に停電があり、何時に通電が開始され、何時に電解精製が終了したのかの情報から何れの電解槽から搬送されてきたカソード板であるかを予め把握することが可能であり、この情報を電子データとして予め制御装置30内の記憶媒体にデータとして記憶させることで、洗浄槽10から送られてくるカソード板が正常品20であるかラミネート品20であるかを区別することができる。洗浄槽10から送られてきたカソード板が正常品28であった場合(S103:No)、第一の移載機11が制御装置30によって駆動制御され、正常品28はトラバースコンベア12上へ移載される(S104)。トラバースコンベア12は、その上面が図1の左方向へ移動するように駆動されているため、カソード板28は図1の矢印で示す左方向へ搬送され、その後、正常品用剥取機14に到達する。
【0026】
正常品用剥取機14に到達した正常品28はその両側面から電気銅が剥ぎ取られる(S105)。ステンレス板22から剥ぎ取られた電気銅は、電気銅排出コンベア13によって所定位置へ搬送されることにより電気銅として回収される(S105a)。一方、正常品用剥取機14によって電気銅が剥ぎ取られたステンレス板22は、トラバースコンベア12によって第二の移載機18まで搬送され(S106)、そして、第二の移載機18によって配列コンベア17へ移載され(S107)、次の電解処理に供するために所定の場所へと回収される(S108)。
【0027】
次に、上記ステップS103によって洗浄槽10からのカソード板がラミネート品20と判定された場合(S103:Yes)には、さらに制御装置30は、ラミネート品20の全て又はその一部をリジェクトコンベア19に移載するかの振り分けを行う(S109)。通常ラインBでは、正常品28は1枚あたり6〜7秒で処理されるのに対してラミネート品20は1枚あたり20〜30秒を要することから、制御装置30は処理すべきラミネート品20の数と、ラミネーション処理区域Aでの処理速度と、通常ラインBでの処理速度と、を勘案してどちらにラミネート品20を振り分けるかを決定し、第一の移載機11を駆動制御して、ラミネート品20の全て又はその一部がリジェクトコンベア19へ移載される(S110)。リジェクトコンベア19に移載されたラミネート品20は、第一の移載ロボット21のマニュピレータ213によって1枚単位で把持され(S111)、剥取部16へ移載される。剥取部16では、ラミネート品20から電気銅40(ラミネート銅板)を図3に示すラミネート品用剥取機27によって剥ぎ取り(S112)、剥ぎ取った電気銅41は搬出コンベア15によって搬送して回収される(S112a)。
【0028】
ラミネート品用剥取機27では、図3に示すように、下部固定シリンダ271a,271bによってラミネート品20が動かないように下部の両側を挟んで固定し、この状態のままフレキシブルシリンダ273a,273bのうちの一方、例えばフレキシブルシリンダ273aを駆動する。するとフレキシブルシリンダ273aがラミネート品20に押し当てられ、これによってラミネート品20が湾曲する。次に、他方のフレキシブルシリンダ、即ちフレキシブルシリンダ273bを駆動し、これによってラミネート品20が反対方向に押し込まれる。この動作によってラミネート品20は反対側に湾曲する。その結果、ステンレス板22と電気銅40との間に隙間が生じ、電気銅40はステンレス板22から剥ぎ取られる。剥ぎ取られた電気銅41は、上述のように、搬出コンベア15で回収される。その一方で、電気銅41が剥がされたステンレス板22は、第二の移載ロボット24(S113)によって母板リジェクトコンベア23へ移載され(S114)、さらに、第二の移載機18によって配列コンベア17へ移載され(S115)、正常品20のステンレス板22と同様に次の電解処理に供するために所定の場所へ回収される(S116)。
【0029】
[実施形態の効果]
本実施形態に係るラミネート品の剥ぎ取りシステムによれば、ラミネーション処理区域Aに搬出コンベア15、剥取部16、リジェクトコンベア19、母板リジェクトコンベア23、及び、第一,第二の移載ロボット21,24を設置し、ラミネート品20を正常品20を処理する通常ラインBから除外し、通常ラインBがラミネート品20の処理のために滞るのを防止したため、通常ラインの稼働率を維持すると共に作業性の改善を図れるという効果がある。
【0030】
また、ラミネート品20をラミネーション処理区域Aへ送り込んで2層となった電気銅40,41の特性を利用して2つ割りではなく断面V字状の状態で剥ぎ取ることとしたのでフレキシングも必要以上に行う必要がなく、電気銅の剥ぎ取り効率が大幅に改善されるという効果がある。
【0031】
さらに、ラミネート品の処理が自動化されるため、作業者は従来の手作業から解放され、安全性が確保されるという効果がある。また、ラミネート品に限らず、通常剥ぎ取り機で剥ぎ取り困難な不良カソード板においても全自動で処理が可能となり、日常の作業においても作業負荷の軽減に寄与できる。
【0032】
以上のように、好ましい実施形態について説明したが、本発明に係るラミネート品の剥ぎ取りシステムは、電気銅以外の金属の電着におけるラミネート品の剥ぎ取りシステム全般に採用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 ラミネート品の剥ぎ取りシステム
10 洗浄槽
11 第一の移載機
12 トラバースコンベア
13 電気銅排出コンベア
14 正常品用剥取機
15 搬出コンベア
16 剥取部
17 配列コンベア
18 第二の移載機
19 リジェクトコンベア
20 ラミネート品
21 第一の移載ロボット
22 ステンレス板
23 母板リジェクトコンベア
24 第二の移載ロボット
25a 支柱
25b 支柱
26 テーブル
27 ラミネート品用剥取機
28 カソード板
30 制御装置
40 剥がす前の電気銅
41 剥がした後の電気銅
160a 支柱
160b 支柱
211 本体
212 駆動部
213 マニュピレータ
241 本体
242 駆動部
243 マニュピレータ
271a 下部固定シリンダ
271b 下部固定シリンダ
272a スタンド
272b スタンド
273a フレキシブルシリンダ
273b フレキシブルシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解精製中に一時的に通電が停止することにより通電停止の前後で電着金属が2層となるラミネーションが発生したラミネート品のカソード板から電着金属を剥ぎ取るラミネート品の剥ぎ取り方法において、
電解精製時にラミネーションが発生したラミネート品の全て又はその一部を第一の移載機によって通常ラインから選別してラミネーション処理区域へ搬送し、該搬送したラミネート品から電着金属を剥ぎ取ることを特徴とするラミネート品の剥ぎ取り方法。
【請求項2】
請求項1に記載のラミネート品の剥ぎ取り方法において、
電着金属が剥ぎ取られた後のカソード板は、母板リジェクトコンベアを介して前記通常ラインに戻されることを特徴とするラミネート品の剥ぎ取り方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のラミネート品の剥ぎ取り方法において、
前記剥ぎ取られた電着金属は、通常ラインに設けられた電着金属の搬送コンベアとは別に設置された搬出コンベアによって前記ラミネーション処理区域から搬出されることを特徴とするラミネート品の剥ぎ取り方法。
【請求項4】
電解精製中に一時的に通電が停止することにより通電停止の前後で電着金属が2層となるラミネーションが発生したラミネート品のカソード板から電着金属を剥ぎ取るラミネート品の剥ぎ取りシステムにおいて、
前記電解精製時にラミネーションが発生したカソード板の全て又はその一部を通常ラインからラミネーション処理区域に配置されたリジェクトコンベアへ移送する第一の移載機と、
前記ラミネーション処理区域に設置され、前記ラミネート品のカソード板から電着金属を剥ぎ取るラミネート品用剥取機と、
前記第一の移載機によって移送されてきた前記ラミネート品を前記ラミネート品用剥離機へ移載する第一の移載ロボットと、
前記ラミネート品用剥離機によって剥ぎ取られた電着金属を搬出する通常ラインに設けられた電着金属の搬送コンベアとは別に設置された搬出コンベアと、
前記ラミネート品用剥離機によって剥ぎ取られた後のカソード板を母板リジェクトコンベアへ移載する第二の移載ロボットと、を備えてなることを特徴とするラミネート品の剥ぎ取りシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のラミネート品の剥ぎ取りシステムにおいて、
前記母板リジェクトコンベアへ移載されたカソード板を通常ラインに戻す第二の移載機を備えていることを特徴とするラミネート品の剥ぎ取りシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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