説明

ラミネート用水性印刷組成物

【課題】水性印刷インキでありながら幅広い種類のプラスチックフィルムに良好な接着性、ラミネート強度を示し、さらにPPダイレクトラミネート加工適性、サーマルラミネート加工適性の優れたラミネート用水性インキ組成物、およびそれを用いた積層物の提供。
【解決手段】本発明は、酸化チタン顔料、酸変性ポリプロピレン樹脂水分散体およびその他水性樹脂を含むラミネート用水性インキ組成物に、基材密着性向上剤として働き得る有機ケイ素酸化合物を加えることで、ラミネート強度を大幅に向上させたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート用水性インキ組成物およびそれを用いた積層物に関し、より詳しくは、各種プラスチックフィルムに適用可能で、特にポリオレフィン系フィルムに対する接着性、溶融ポリプロピレンのダイレクトラミネート適性、サーマルラミネート適性に優れたラミネート用水性インキ組成物およびそれを用いた積層物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被包装物の多様化、包装技術の高度化に伴ない、包装材料として各種のプラスチックフィルムが開発され、被包装物に適したものが適宜選択して使用されるようになってきている。またプラスチックフィルムを包装材料に使用するにあたってはプラスチックフィルムの装飾または表面保護のために印刷が施されるが、かかる印刷のための印刷インキには、これら種々のプラスチックフィルムに対する高度な性能、品質が要求されるようになってきている。とりわけ印刷インキに関しては包装容器の美粧化、高級化のために各種複合フィルムに対する幅広い接着性、さらにはラミネート加工適性、ボイル適性、レトルト適性等の各種後加工適性が必要になってきている。
【0003】
また、包装材料の高性能化のため、印刷後にドライラミネート加工、エクストルージョンラミネート加工を施すことがある。この場合ドライラミネート加工にはウレタン系等の接着剤を使用し、エクストルージョンラミネート加工の場合はアンカーコート剤を使用する。さらに中間にアルミニウム箔を介在させることもあり、ボイル、レトルト加工が可能な包装材料とすることもある。またレトルト加工までの強度は要求されないが透明基材をベースとした包装材料分野においてはコロナ放電処理延伸ポリプロピレン(OPP)を基材フィルムとし、アンカーコート剤は用いずに、直接、溶融ポリプロピレンで被覆するラミネート加工方法(PPダイレクトラミネート)、溶融ポリマーを用いず、熱圧着により基材フィルムとシーラントフィルムとを直接ラミネートする加工方法(PPサーマルラミネート)も行われている。
【0004】
かかる印刷後に加工を行うためには、その前段階で用いる印刷インキに対して、種々の基材フィルムに対する接着性、印刷適性はもとより、それぞれの後加工に対する適性を具備していることが要求される。PPダイレクトラミネート、PPサーマルラミネートが施されるポリオレフィンに対しては、塩素化ポリプロピレン等の高塩素化度の塩素化ポリオレフィンをバインダーとした溶剤型印刷インキがもっぱら使用されている。しかしながら、これら溶剤型インキではインキ中および希釈溶剤中に多量の有機溶剤を含有しているため、印刷作業環境中に溶剤蒸気が存在するようになり、作業者に対して健康上好ましくない影響を与えているばかりでなく、火災の危険性もあり好ましくない。また溶剤型インキを使用した場合、人体に有害な有機溶剤がラミネート物中に残留するため、食品包装に用いた場合には食品に残留溶剤が移行し易く、食品衛生上好ましくない。
【0005】
特開平4−366180号公報には、1,000〜10,000の分子量を有し、かつ酸価が20〜100、軟化点が100〜200℃の酸化ポリプロピレンを、インキ固型分に対し1.0重量%〜10.0重量%含む水性インキを使用することで、コロナ放電処理延伸ポリプロピレンを基材フィルムとした印刷面にアンカーコート剤なしでポリプロピレンを溶融押出しラミネート加工する方法が開示されている。
また、特開平08−269381号公報には印刷インキのバインダー樹脂成分として、水溶性および/または水分散性樹脂および/またはその中間的なハイドロゾル型樹脂を用い、かつインキ中の樹脂固型分に対する塩素化ポリプロピレンの含有量が2.0〜100.0重量%であることを特徴とするポリプロピレン用水性印刷インキが開示されている。
【0006】
さらに、特開平09−31386号公報には水性アクリル樹脂またはエチレンアクリル酸系樹脂が固形分で50〜95重量%、分子量2,000〜200、000のマレイン酸変性ポリプロピレンが5〜50重量%、その他の樹脂が0〜30重量%であることを特徴とする水性印刷インキ組成物が開示されている。
【0007】
しかしながら何れの発明も、基材密着性を塩素化ポリプロピレンやマレイン酸変性ポリプロピレンにのみ頼っているため、十分なラミネート強度を得ることが出来なかった。
この様な理由から、水性であって、かつ、幅広い種類のプラスチックフィルムに対する接着性、PPダイレクトラミネート適性、サーマルラミネート適性、印刷適性の良好な水性インキ組成物は未だ得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−366180号公報
【特許文献2】特開平08−269381号公報
【特許文献3】特開平09−31386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は上記問題を解決することであり、水性印刷インキでありながら幅広い種類のプラスチックフィルムに良好な接着性、ラミネート強度を示し、さらにPPダイレクトラミネート加工適性、サーマルラミネート加工適性の優れたラミネート用水性インキ組成物、およびそれを用いた積層物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、鋭意検討を行った結果、酸化チタン顔料、酸変性ポリプロピレン樹脂およびその他水性樹脂を含むラミネート用水性インキ組成物に、基材密着性向上剤として働き得る有機ケイ素酸化合物を加えることで、ラミネート強度を大幅に向上させことが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、酸変性ポリプロピレン樹脂水分散体(A)、有機ケイ素化合物(B)、酸化チタン(C)および水性樹脂(D)を含有するラミネート用水性インキ組成物であって、
酸変性ポリプロピレン樹脂水分散体(A)が、数平均分子量10000〜200,000のポリプロピレンを、マレイン酸および/または無水マレイン酸で、変性したものであることを特徴とするラミネート用水性インキ組成物に関するものである。
【0012】
さらに、本発明は、
有機ケイ素化合物(B)が、
加水分解性の官能基
ならびに
イソシアネート基、アミノ基、エポキシ基、アリール基およびメルカプト基から選 ばれる少なくとも1種の有機官能基
を有することを特徴とする上記のラミネート用水性インキ組成物に関するものである。
【0013】
また、本発明は、ラミネート用水性インキ組成物が、有機ケイ素化合物(B)を、ラミネート用水性インキ組成物全量に対して、0.02〜1重量%含有することを特徴とする上記のラミネート用水性インキ組成物に関するものである。
【0014】
さらに、本発明は、水性樹脂(D)が、アクリル変性ウレタン樹脂であることを特徴とする上記のラミネート用水性インキ組成物に関するものである。
【0015】
また、本発明は、上記のラミネート用水性インキ組成物を、プラスチックフィルム基材上に、印刷してなることを特徴とする印刷物に関するものである。
【0016】
さらに、本発明は、上記の印刷物に、シーラントフィルムまたはプラスチックシートを積層することを特徴とする積層物に関するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、水性印刷インキでありながら幅広い種類のプラスチックフィルムに良好な接着性、ラミネート強度を示し、さらにPPダイレクトラミネート加工適性、サーマルラミネート加工適性の優れたラミネート用水性インキ組成物、およびそれを用いた積層物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の水性バインダーに用いられる酸変性ポリプロピレン樹脂水分散体(A)について説明する。酸変性ポリプロピレン樹脂水分散体(A)とは、マレイン酸等の共役二重結合を有する二塩基酸で変性した変性ポリプロピレン系樹脂を、水中に分散せしめて得られるエマルジョンである。ポリプロピレンの数平均分子量としては、水性インキ組成物のプラスチックフィルムに対する接着性やダイレクトラミネート適性、耐ブロッキング性の低下を防ぐ観点から重量平均分子量は10000以上であることが必要であり、さらに好ましくは20000以上であることが望ましい。さらに、インキ組成物の経時安定性の観点からは200000以下であることが必要であり、さらに、好ましくは、100000以下であることが望ましい。
【0019】
共役二重結合を有する二塩基酸としては、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水ケイヒ酸等が挙げられる。さらにこれらの二塩基酸のアルキルエステル等も使用することができる。具体的には、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸イソブチル等のマレイン酸ハーフエステル類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸ジエステル等が挙げられる。本発明においては、ポリプロピレン変性時の安定性の点でマレイン酸および/または無水マレイン酸で変性することが好ましい。さらにコストの点では無水マレイン酸で変性することが好ましい。
【0020】
変性方法については、従来公知の方法を用いることができる。例えば、高分子量のポリプロピレンを熱分解して得られる、二重結合を有するポリプロピレンに無水マレイン酸系モノマーをラジカル重合する方法、特開昭54−15098号公報に開示される、触媒を用いてポリプロピレンのα−オレフィン鎖を異性化させて無水マレイン酸を付加反応する方法等が挙げられる。
【0021】
さらに、変性したポリプロピレンを、塩基性化合物、例えばアンモニア、モノエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、等の有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ類等で中和し、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の乳化剤の存在下、水中に分散せしめて、酸変性ポリプロピレン樹脂水分散体(A)を得ることができる。
【0022】
本発明の水性インキ組成物において、水性インキ組成物全固形分における酸変性ポリプロピレン樹脂水分散体(A)の固形分の量は、ポリオレフィンフィルムとインキ組成物との接着性を良好にする観点から5重量%以上、印刷時の流動性や再溶解性の低下を抑制し、印刷効果を良好にする観点から25重量%以下の範囲であることが好ましい。
【0023】
本発明における有機ケイ素化合物(B)とは、一般にシランカップリング剤として知られる化合物であり、YSi Xの化学式で示される。ここでXはアルコキシ基を示し、加水分解性を有する部位である。またYは、アルキル基、アルケン基、アレン基、アリール基、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基、クロル基、メルカプト基等から選択される1種の官能基を有する部位である。
【0024】
Yとしては基材密着性の観点から極性が高い官能基がより好適である。したがってさらに好ましくは、アリール基、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基およびメルカプト基から選択される1種の官能基を有することが望ましい。
【0025】
有機ケイ素化合物(B)はPPダイレクトラミネート強度に好適に作用するが、基材となるフィルムへの密着性を良好にする観点から、より好ましくは0.02重量%以上、インキ組成物の安定性の観点から1重量%以下であることが望ましい。
【0026】
顔料としては、酸化チタン(C)が含まれることが必須である。なお必要に応じて通常印刷インキまたは塗料に用いられる、有機顔料および無機顔料を併用することができる。
【0027】
併用される有機顔料としては、天然有機顔料および合成有機顔料があり、天然有機顔料の具体的な例としては、コチニール・レーキ、マダー・レーキなどが挙げられる。また、合成有機顔料としては、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、顔料色素型アゾ顔料、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラキノン顔料、ジアンスラキノニル顔料、アンスラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ピランスロン顔料、ジケトピロロピロール顔料などのほか、エオシンなどのキサンタン・レーキ顔料、塩基性染料から作るレーキ顔料(ファナル・カラーなど)、塩基型の酸性染料から作るレーキ顔料(アシッド・グリーン・レーキなど)、バット染料からの顔料(インジゴ、アルゴン・イエローなど)などが挙げられる。
【0028】
無機顔料としては、亜鉛華、リトポン、鉛白などの白色顔料、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウムなどの透明性白色顔料、カーボンブラック、動物性黒、黒鉛などの黒色顔料、ベンガラ、鉛丹などの色顔料、アンバー、酸化鉄粉、バンダイク茶などの茶色顔料、黄鉛、ジンククロメート、黄酸化鉄などの黄色顔料、クロム緑、酸化クロム、ビリジアンなどの緑色顔料、群青、紺青などの青色顔料、マルス紫、淡口コバルト紫などの紫色顔料、アルミニウム粉、銅粉、ブロンズ粉などの金属粉顔料等が挙げられる。本発明では、これらの顔料を単独または2種類以上を酸化チタン顔料と併用して使用できる。
【0029】
水性樹脂(D)としては、一般的にインキ、塗料などに使用される種々の水性樹脂を用いることができるが、インキ化適性に優れるポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、アクリル変性ウレタン樹脂またはアクリル樹脂を用いることが好ましい。これらの樹脂は、単独で用いても良いし、2種以上の樹脂を混合して用いても良い。なおより好ましくは、基材密着性にも優れるアクリル変性ウレタン樹脂が用いられていることが好ましい。アクリル変性ウレタン樹脂は単独で用いられても良いし、他の樹脂と混合して用いられても良い。
【0030】
次に、これら各種材料を使用して、ラミネート用水性インキ組成物を製造する方法としては、酸変性ポリプロピレン樹脂水分散体(A)、酸化チタン(C)および水性樹脂(D)を混合してアイガーミル、ペイントシェーカー、ペイントコンディショナー、スキャンデックス、サンドミル、ボールミル、コロイドミルなどの公知の分散機や、ジスパー、ホモミキサーなどの攪拌機などを用いて分散し、さらに所定の材料の残りを添加、混合する方法が一般的である。
【0031】
水性インキ組成物に有機ケイ素化合物(B)を含有させる方法としては、添加剤を水性印刷インキに含有させる一般的な方法でよく、特に限定されるものではない。例えば、(1)予め顔料に乾式または湿式法にて有機ケイ素化合物(B)を処理する、(2)インキ化時に顔料等と有機ケイ素化合物(B)一緒に練肉する、(3) インキを練肉後に有機ケイ素化合物(B)を添加する、等の方法がある。なお、より好ましくは錬肉前に有機ケイ素化合物(B)を顔料と作用し得る(1)または(2)を用いることが望ましい。
【0032】
次いで、水性インキ組成物は、グラビアまたはフレキソ印刷方式等でプラスチックフィルムに印刷され、本発明の印刷物が得られる。
さらに、印刷面に直接溶融ポリプロピレンを圧着して積層するダイレクトラミネート法、溶融ポリマーを用いず、基材フィルムとプラスチックフィルムを熱圧着により直接ラミネートするPPサーマルラミネート法により本発明の積層物が得られる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例により説明する。本発明において、特に断らない限り、「部」は、「重量部」であり、「%」は、「重量%」である。
【0034】
〔合成例1〕
(酸変性ポリプロピレン樹脂水分散体(A))
還流管、温度計、乳化機を備えた容器に、高分子量のポリプロピレンを熱分解して得られた重量平均分子量(以下Mw)10000のポリプロピレンを無水マレイン酸のトルエン溶液を仕込み、窒素置換下110℃に昇温後、ベンゾイルパーオキサイドを添加して4時間反応させた後、未反応の無水マレイン酸を除去して、無水マレイン酸変性ポリプロピレンのトルエン溶液を得た。さらに、固形分に換算して100部となる無水マレイン酸変性ポリプロピレンのトルエン溶液に対して、中和量の1.2当量のアンモニアを含むアンモニア水250部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル20部を加え、均一に乳化し、減圧蒸留、pH調整および水の添加を繰り返してトルエンを留去し、固形分40%、原料のポリプロピレンのMwが10000である無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂水分散体A1を得た。
【0035】
〔合成例2〜6〕
重量平均分子量がそれぞれ7000、20000、50000、100000、200000および300000であるポリプロピレンを用いて、合成例1と同様の方法で、原料のポリプロピレンのMwが7000、20000、50000、100000、200000および300000である無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂水分散体A2〜A7を得た。
【0036】
〔合成例7〕
(ウレタン樹脂)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、温度計を備えた4ツ口のフラスコに重量平均分子量約2,000(水酸基価55.8)のポリテトラメチレングリコール111.0部、重量平均分子量約2,000(水酸基価56.3)のポリエチレングルコール10.7部、1,4シクロヘキサンジメタノール4.3部、ジメチロールブタン酸23.4部、ジブチル錫ジラウレート0.1部、メチルエチルケトン200部を仕込み、乾燥窒素で置換し80℃まで昇温した。攪拌下、イソホロンジイソシアネート80.4部を20分で滴下し3時間反応させた。反応物を40℃に冷却し、N,N-ビス(アミノプロピル)メチルアミン12.6部、イソホロンジアミン7.7部、メチルエチルケトン100部からなる混合物を30分で滴下し、さらに同じ温度で1時間反応させ鎖延長を行った。次に水880部、アンモニア水9.6部を添加し、温度を上げ溶剤430部を脱溶剤し、固形分が25%になるよう調整し、水溶性のウレタン樹脂が得られた(重量平均分子量38,700)。
【0037】
アクリル樹脂については、BASF社製、JONCRYL57J、60J等が好適に使用することが出来る。なお本発明においてはJONCRYL60J(固形分34%)を使用した。
【0038】
アクリル変性ウレタン樹脂については、大成ファインケミカル株式会社製、WEM200U(固形分38%)を使用した。
【0039】
有機ケイ素化合物については、信越化学株式会社製、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM-803)、メチルトリメトキシシラン(KB-13)、メチルトリエトキシシラン(KBE-13)、デシルトリメトキシラン(KBM-3013)、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-903)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-403) 、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(KBE-9007)、フェニルトリエトキシシラン(KBE-103)、p-スチリルトリメトキシシラン(KBM-1403) 、3-クロロプロピルトリメトキシシランを使用した。
【0040】
〔実施例1〕
酸化チタン顔料(テイカ株式会社社製、チタニックスJR800)を20部、WEM200Uを10部、JONCRYL60Jを5部、Mw100,000の無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂分散体を25部、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM-803)2部、イソプロパノール10部および水28部の混合物をペイントコンディショナーで混練し、実施例1の水性印刷インキ組成物を得た。
【0041】
表1、2に示した組成で、実施例1に示す方法により実施例2〜20および比較例21〜25を得た。
【0042】
<試験方法および評価>
実施例1〜20び比較例21〜25の水性印刷インキ組成物の安定性、接着性、PPダイレクトラミネート強度を以下の試験方法で行い、その評価結果を表1、2に記載した。
【0043】
それぞれの水性印刷インキをザーンカップNo4(25℃)にて粘度を測定し仕上り粘度とした。
【0044】
<安定性試験方法>
得られた水性印刷インキを40℃にて3ヶ月恒温保管した後に、水性印刷インキをザーンカップNo4(25℃)にて経時粘度を測定し、仕上り(初期)粘度との差を評価した。
(評価基準)
A:仕上り粘度と経時粘度の差が2秒未満のもの
B:仕上り粘度と経時粘度の差が2秒以上4秒未満のもの
C:仕上り粘度と経時粘度の差が4秒以上6秒未満のもの
D:仕上り粘度と経時粘度の差が6秒以上8秒未満のもの
E:仕上り粘度と経時粘度の差が8秒以上のもの
実用レベルはC以上であり、好ましくはB以上であることが望ましい。
【0045】
<接着性試験方法>
各水性印刷インキをグラビア印刷機で、コロナ放電処理延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製CP−SC 30μ)に印刷後、印刷面にセロハンテープを貼り付け、これを急速に剥したときの、印刷皮膜がフィルムから剥離する度合いから接着性を評価した。
(評価基準)
A:印刷皮膜がフィルムから全く剥離しないもの
B:印刷皮膜の面積比率として、10%未満がフィルムから剥離するもの
C:印刷皮膜の面積比率として10%以上20%未満がフィルムから剥離するもの
D:印刷皮膜の面積比率として20%以上50%未満がフィルムから剥離するもの
E:印刷皮膜の面積比率として50%以上がフィルムから剥離するもの
実用レベルはB以上であり、好ましくはAであることが望ましい。
【0046】
<PPダイレクトラミネート強度試験方法>
各水性印刷インキをグラビア印刷機でコロナ放電処理延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績株式会社製、パイレンP−2161 20μ)に印刷後、ポリプロピレン「三菱ポリプロFL−25R」(三菱油化株式会社製)にてアンカーコート剤なしでエクストルージョンラミネート加工を行い、得られたラミネート物を15mm幅に切断し、インテスコ株式会社製剥離試験機を用いて、T型剥離強度(N/25mm)を測定した。実用レベルは0.5(N/25mm)以上であり、0.5(N/25mm)未満だと、デラミネーションのトラブルが発生しやすくなる。さらに好ましくは、0.8(N/25mm)以上であることが望ましい。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
実施例と比較例23より、有機ケイ素化合物(B)を含むことにより、PPダイレクトラミネート強度が向上することが明らかである。特に有機ケイ素化合物(B)の加水分解性の官能基がイソシアネート基、アミノ基、エポキシ基、アリール基およびメルカプト基の場合には際立って向上している。
【0050】
一方、比較例より、酸変性ポリプロピレン樹脂水分散体(A)を含まない場合には接着性やPPラミネート強度が際立って低い。さらに酸変性ポリプロピレン樹脂水分散体(A)を含む場合であっても、ポリプロピレンのMwが10000以下の場合には、PPダイレクトラミネート強度が低く、Mwが200,000を超える場合にはインキの状態が悪化する傾向が確認される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸変性ポリプロピレン樹脂水分散体(A)、有機ケイ素化合物(B)、酸化チタン(C)および水性樹脂(D)を含有するラミネート用水性インキ組成物であって、
酸変性ポリプロピレン樹脂水分散体(A)が、重量平均分子量10000〜200,000のポリプロピレンを、マレイン酸および/または無水マレイン酸で、変性したものであることを特徴とするラミネート用水性インキ組成物。
【請求項2】
有機ケイ素化合物(B)が、
加水分解性の官能基
ならびに
イソシアネート基、アミノ基、エポキシ基、アリール基およびメルカプト基から選 ばれる少なくとも1種の有機官能基
を有することを特徴とする請求項1記載のラミネート用水性インキ組成物。
【請求項3】
ラミネート用水性インキ組成物が、有機ケイ素化合物(B)を、ラミネート用水性インキ組成物全量に対して、0.02〜1重量%含有することを特徴とする請求項1または請求項2記載のラミネート用水性インキ組成物。
【請求項4】
水性樹脂(D)が、アクリル変性ウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のラミネート用水性インキ組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のラミネート用水性インキ組成物を、プラスチックフィルム基材上に、印刷してなることを特徴とする印刷物。
【請求項6】
請求項5記載の印刷物に、シーラントフィルムまたはプラスチックシートを積層することを特徴とする積層物。

【公開番号】特開2012−201762(P2012−201762A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66707(P2011−66707)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】