説明

ラムおよびピストンの間に衝撃吸収手段を備える無針注射器

【課題】針の無い注射器用カプセルの破損を引き起こす泡崩壊を防がれた無針注射器を提供する。
【解決手段】片端に開口部を有するシリンジ本体、シリンジ本体内において、開口部を通して液体105を推進させるためのシリンジ本体内に収容されたピストン104、およびピストンを駆動させるためのラム111を有し、衝撃吸収構成部品150は、ラムからピストンへの力の初期伝達を低下させるために提供される。液体への圧力増加の初速が低下し、これにより液体中の気泡の崩壊の速度を制御する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
針の無い注射器が、表皮を通した下側組織への薬液注入のための針式皮下注射器の代わりに使用される。このような装置の構造の一般的形状は、皮膚と接触するように配置され、それを通して薬物が患者の皮膚を貫通するのに十分な高速で噴射される、小さい放出オリフィスを有するシリンジである。薬物を加圧するのに必要なエネルギーは、圧縮コイルばね、圧縮気体、爆発性充填材料、またはいくつかのその他の形態の蓄積エネルギーに由来することができる。
【0002】
エネルギーを、蓄積形態から液体中の圧力へ転換することができる多くの様々な方法がある。これらは、結果として気体がキャニスターから噴出し、気体を加圧しているピストンの背後に圧力を発生させるような、シールの破断を含む。あるいは、気体は、ピストンの背面に衝突する前に、ラムがギャップを超えて加速(accelerate)させることができる。
【0003】
流体を加圧に使用するいずれの方法であっても、流体の初期「パルス」が皮膚を貫通するのに十分な高圧を有し得るのに十分な程迅速に流体のピーク圧力が達成されることが重要である。この流体の残余は、装置の構造に応じて、同様の圧力、または実質的に低い圧力で送達することができる。一部の針の無い装置は、使用者により充填されるようにデザインされているが、その他は製薬業者または第三者のいずれかにより、予め充填されている。いずれの場合においても、薬物カプセルの内容物が、特にノズル領域において、大部分は泡を含まないことが重要である。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、薬物内の圧力の非常に迅速な上昇が、薬物内の泡の迅速な崩壊を引き起こし得るという認識を基にしている。この泡崩壊は、十分迅速に発生した場合、カプセル内に衝撃波を生じさせ、これは極めて高い局所的応力を生じ得る。これらの応力は、時としてこの初期圧力ピークの間にカプセルの破損を引き起こし、結果として不完全な注射を生じさせる可能性がある。
【0005】
従って本発明者らは、カプセル内に存在し得る泡(充填工程のために、または温度、圧力などの変化により薬液から発生し得る気体のいずれかのため)の崩壊が、緩徐に制御された方式であることを確実にすることが有益であることを認識している。カプセルの材料および形状寸法に応じて、約0.5〜1μlよりも大きい泡がカプセル破損の可能性を増大させることが分かっている。
【0006】
これらの衝撃波を生じる重要な要因は、圧力上昇の初速であることもわかっている。この流体中のピーク圧力は、およそ200〜400Barであり、更に大気圧からおよそ20Barの圧力上昇の速度を遅くすることにより、例え圧力上昇の残余が以前と同じ速度で生じたとしても、依然衝撃波発生の減少に対する劇的作用を有している。
【0007】
本発明は、針の無い注射器用カプセルの破損を引き起こす泡崩壊を防ぐ方法を提供し、これは、ピーク値または圧力プロファイルの残りの形状を変更することなく、通常の噴射サイクルの直前に、比較的緩徐で制御された方法で泡を崩壊させる工程を含む。本発明は、この目的のための器具も提供する。
【0008】
本発明の第一の局面に従い、以下を含む無針注射器が提供される:
片端に開口部を有するシリンジ本体;
シリンジ本体内において、開口部を通して液体を推進させるための、シリンジ本体内に収容されたピストン;
ピストンを駆動させるためのラム;
ラムへ力を加えるための手段;および
ラムからピストンへの力の初期伝達を減少させる衝撃吸収手段。
【0009】
この器具は、ラムに加えられた初期力の低下をもたらし、その結果液体に対する圧力上昇の初速を低下させ、これにより液体中の気泡の崩壊速度が制御される。
【0010】
衝撃吸収構成部品は、それを超えてラムがピストンと衝突する前に加速されるギャップ内に提供されてもよい。
【0011】
衝撃吸収材は、その中にラム(またはその一部)がスライド式に収納されるシリンダーを含んでもよい。このシリンダーは、片端が閉鎖され、かつその閉鎖端がピストンに隣接して配置される。その際ラムに力が加わる前は、ラムはシリンダーの開放端に隣接して収納されている。この方法において、衝撃吸収はラムのシリンダーへの駆動により達成される。好ましくは、ラムは、液密嵌合したシリンダー内にスライド式にも収容され、そのためラムがシリンダー内へと進行するに従ってシリンダー内に捕獲された気体容積を圧縮し、これによりピストンに漸増する力を提供する。
【0012】
別の配置において、シリンダーは両端が開口している。シリンダーの内部開口部は一定の内径を有するか、さもなければシリンダーの内部開口部は、ラムと協動するためのシリンダー末端の第一の内径、および第二のより小さい内径の、少なくともふたつの内径を有する。
【0013】
これは、泡崩壊を確実にするための低い初期圧力を生じる局部的圧力ピークを提供する、内部プロファイル内への段差を提供する。シリンダーの内部開口部は3種の内径を有することができ、第三の内径はピストンと協動するためにシリンダー末端にあり、第三の内径は第二の内径よりも大きい。第三の内径はラムの直径と等しいかまたはそれより大きいことができ、そのためこの構成部品の区画は、ラムに対する摩擦抵抗は増大させないが、ピストンにラムが衝突する前にその全長にわたって初期圧力が作用し続ける長さを提供する。
【0014】
このシリンダーは、長さ1mm〜5mmであって良く、このラム移動の短い初期吸収は加えられた力を低下させるように作用する。この衝撃吸収材は、様々な圧縮可能な部材を含んでもよい。
【0015】
本発明は更に、シリンジ本体内に収容されたピストンおよびピストンを駆動させるためのラムを含み、これにより液体をシリンジから送り出す、無針注射器シリンジから液体を送達する方法も提供し、これは下記の工程を含む:
力のプロファイルをラムに加える工程;
送達サイクルの第一段階の間に、ラムに加えられた力を少なくとも一部吸収して減少させた力をピストンへ加える工程;および
送達サイクルの第二段階の間に、ラムに加えられた実質的に全ての力を、ピストンへ移す工程。
【0016】
この方法は、第一のプロセスのみ制動する二段階プロセスを提供する。
【0017】
詳細な説明
図1は、片端に開口部106を有するカートリッジ103の形状であるシリンジ本体を含む、公知の無針注射器を示す。ピストン104は、開口部106を通して、カートリッジ内の液体105を推進するために、カートリッジ103内に収容されている。ラム111は、ピストンを駆動させるために提供され、およびラム111に力を加える配置が提供される。
【0018】
ラムに力を加える多くの方法が可能である。示された例において、噴射力は圧縮された気体ばねにより提供される。これは、上端が閉鎖され、かつ典型的には5.5MPa(800psi)〜22MPa(3000psi)の範囲である圧力下で気体、典型的には空気を含むようなシリンダー130の形態である。シリンダーは、ラム111を収容している。ラム111の末端は、切頭された円錐状(frustoconical)部分131およびフランジ132を有し、その間にO-リングシール133が配置されている。使用前は、ラム111は、ラム内の溝に嵌入されているラッチ108により図示された位置に保持され、溝の上面はカム表面109を形作っている。
【0019】
シリンダー130の下端は、外向きのフランジ130aを有し、これはシリンダーを、軸継手140の上端で、外向きフランジ140aの下側にフランジ130aを圧接することにより保持することができる。スリーブ102は、その中にシリンダーが配置されている上側スリーブ部分102a、および下側スリーブ部分102bの形状である。スリーブ部分102bおよび軸継手140の各々が内壁および外壁上に形成された、内側嵌入しているねじ山141により、スリーブ部分102bは軸継手へ連結されている。
【0020】
圧縮された気体シリンダー130およびラム111のラム配置が集成され、第一の構成部品を形成し、これは引き続きカートリッジ集成品に取付けられる。
【0021】
この注射器は、その中に医薬品105と接触するピストン104がスライド式および密閉されて位置する、医薬品カートリッジ103を含む。図1の上端から考えられるように、このピストンは、シリンダー部分、より大きい直径のシリンダー密閉部分、および切頭された円錐部分を含んでも良い。開口部106は、シールキャリヤ135により適当な位置に保持されている弾性シール134により密閉されている。シールキャリヤ135は、脆弱な接合部136により、下側スリーブ部分102bに連結されている。
【0022】
不慮の発射に対する予防として、引き剥がしバンド137が、上側スリーブ部分102aの下側部分として提供されている。引き剥がしバンド137の下端は、軸継手140の外面に結合されたか、または(図示していないが)それと一体化形成されているようなリング142を支えている。このリングの機能は、引き剥がしバンド137が存在する限りは、軸継手140に対しスリーブ部分102aの下側への移動を防ぐことである。従ってリング142は、軸継手の周囲を完全に取り囲むように広がる必要はなく、1個または複数の個別の要素により置換えることができる。
【0023】
環状空隙138が、スリーブ102内壁に形成され、そこでこのスリーブは、シリンダー130に隣接し、およびこの空隙には制動グリースが充填され(黒色バンドの連続により図示されている)、その結果このグリースは、スリーブ102およびシリンダー130の両方と密に接触している。定義された環状空隙はグリースに特定の位置を提供する観点から都合がよいが、これを省き、かつグリースを単純にシリンダー130の外側および/またはスリーブ102の内側の全体または一部に塗沫することもできることも注目されるべきである。
【0024】
図1の態様を操作する場合、使用者は、シールキャリヤ135を脆弱な接合部136で折り、これをシール134と共に取り去り、かつオリフィス106を露出させる。次に使用者は、引き剥がしバンド137を取り外し、かつスリーブ102の上部を握り、注射されるべき皮膚に対してオリフィスを推進させる。これは、上側スリーブ部分102aを、下側スリーブ部分102bに対して下側へ移動させる。これは、上側スリーブ部分102aの壁の中のアパーチャ139をラッチ108と並置させ、その結果、ラム111内に形成されたカム表面109を介してラッチに作用するシリンダー130内の気体の力の影響下で、ラッチをアパーチャへと横向きに移動させることができる。その結果注射器は発射される。ラッチがカム表面109の影響下で移動しない場合の予防措置として、補助的カム表面143がスリーブ部分102aの内側に提供される。発生する反跳は制動グリースにより制動される。
【0025】
前述のように、液体105中の気泡は避けなければならず、その理由は、発射後の液圧の急激な上昇は、噴射性能に対するこのような泡の影響を生じ得るからである。
【0026】
図2に示されるように、本発明はラムに加えられた初期力を低下させるために、ラムとピストンの間に衝撃吸収構成部品150を提供する。この構成部品は、ラムがそれを超えて加速されるギャップを満たしている。
【0027】
図2に示されたような本発明のひとつの態様において、ピストンへと加速するラム111の一部との締り嵌めである衝撃吸収構成部品150として、盲管が使用される。この盲管は、片端が閉鎖されている中空シリンダーを含み、その閉鎖端はピストンに隣接して置かれ、かつラムに力を加える前に、ラムはシリンダーの開放端に隣接して収納される(図2に示されたように)。
【0028】
構成部品150はPTFEで製造することができ、その後望ましい形状に機械加工される。これは、ピストン104と一体型に製造することができる。あるいは、成形することができる高密度ポリウレタン("HDPE")などの、他の高密度および弾性材料を使用することができる。
【0029】
示された例において、シリンダー150は、ピストン104の背後で静止し(または、前述のようにこれと一体化して製造することができる)、かつピストンと接触している。このラム111は加速するのでふたつの現象が生じる。第一に、ラム111とシリンダー150の間の摩擦により、ピストン104へ加えられる力が生じる。この力は、ラム111とピストン104の間の引き続きの衝撃力よりも非常に小さい。第二に、ラム111のこの部分とシリンダー150の間の締り嵌めにより、気密シールが生じる。従って、ラム111がシリンダー150の内側下方に移動する時シリンダー内の圧力は上昇し、シリンダー150によりピストン104に加えられる力の漸増を生じる。この力は増加するので、ピストン104は、わずかに前向きに移動され、これは泡の圧縮を引き起こす。典型的には、本発明のひとつの態様において、ラムは、約200μ秒以内に、3mmのギャップ152を超えて加速する。このことは、この時間にわたって0から約1〜5Mpaへの圧力の実質的に安定した増加を引き起こす。これは、この期間にわたり、その当初のサイズから、サイズの小さい破片(fraction)(例えば1/20)への、泡の段階的崩壊を引き起こす。更に泡がカートリッジ103の開口部の内部またはそれに非常に密接している場合、これはオリフィスから押し出される可能性がある。
【0030】
この効果は、ラム111がシリンダー150の盲(閉鎖)端に衝突し、これが次にピストン104の背面に接触する場合に、カプセル内にかなりのサイズの泡は存在しないであろうということである。このことは、この衝突により引き起こされた極めて迅速な圧力の上昇、および皮膚を貫通する必要性にも関わらず、大きい泡の崩壊により引き起こされる高い局部的応力および衝撃波は存在しないことを意味する。約1〜5MPaへの圧力上昇により引き起こされた泡の段階的崩壊は、先に10μlよりも小さい泡は、ラムがピストンへ衝突する時点で、0.5μlの臨界サイズ(critical size)未満であることを意味する。
【0031】
別の配置において、構成部品150は、ラム111の末端に据え付けることができ、従ってラム配置の一部を形成している。例えばこの構成部品は、集成されたラム配置の端面を超えて突出しているラム111の末端に配置することができる。この 端面は、その後構成部品150のラム111を超えた位置決定を制限するための係止部として作用する。ラムが解放される場合、構成部品150はラムと共に、それがピストン104を打つまで、カートリッジ103の内側を移動する。その時のみ構成部品150の衝撃吸収機能が使用される。
【0032】
このデザインは、構成部品が、現存のラム配置またはカートリッジ集成デザインのいかなる変化も必要としない修飾として導入されることが可能である。
【0033】
衝撃吸収構成部品は、薬物含有カプセル内の圧力上昇の初速を低下させる。薬物が放出されるピーク圧力をわずかに低下させ、初期圧力プロファイルおよび実際の噴射サイクル間の圧力プロファイルの望ましい組合せを実現するために、衝撃吸収構成部品への様々な修飾が可能である。
【0034】
例えば、シリンダー150の内面とラムの間の締まりの程度は、初期圧力の低下を変動させるために変更することができる。例えば、ラム直径4.Ommについて、シリンダー内径は典型的には3.77mmであることができ、またはこれはより大きい摩擦抵抗を導入するために3.6mmに減少させることができる。典型的許容誤差は、0.03mmであることができる。
【0035】
前記衝撃吸収構成部品のデザインは閉鎖端を有し、その結果シールされたチャンバーは、ラム111との組合せた衝撃吸収構成部品により規定される。しかし、摩擦干渉のみで十分であると思われる。図3は、両端が開放されている衝撃吸収構成部品150を示している。その後摩擦抵抗量および長さは、望ましい圧力プロファイルを実現するように、選択することができる。
【0036】
図4は、衝撃吸収構成部品を伴わない(プロット200)、図2の閉鎖されたシリンダーを伴う(プロット202)、および異なる長さの図3の構成部品のふたつの型(プロット204−長さ4.5mmおよび206−長さ5mm)である注射器に関する、圧力プロファイルの比較を示している。示されたように、各々の場合の衝撃吸収構成部品の存在は、段階的泡崩壊を提供する圧力領域210を提供するが、ピストンによるラム衝突時のピーク圧力の急騰はデザインにより変動する。
【0037】
ラムによる衝突からピストン104の背面に著しい変形が存在することはわかっている(発射済みの装置の試験から)。明らかに、このような変形が低下されるならば(これはエネルギーを吸収する)、これはピストンとラムとの衝突時点(一旦衝撃吸収機能は完了する)で増大した圧力ピークを提供することができる。
【0038】
図5は、金属末端キャップ220が衝撃吸収構成部品のピストン側の開口部に置かれている修飾を示している。これは、ラムと末端キャップの間に接触が形成された時点でのピーク圧力を増加させることがわかっている。しかしこのピーク圧力の増加は圧力ピークを狭めることを伴い、このことは望ましくないと思われる。
【0039】
更なる修飾は、シリンダー内腔中の様々な程度の摩擦抵抗を組合わせている。図6は、閉鎖端を有し(図2のように)ならびにふたつの異なる内径d1およびd2が提供された衝撃吸収材を示している。直径d2の内腔を伴う構成部品が最初に提供され、および追加の座ぐり工程は、望ましい深度にd1の増大した内径を提供する。直径4.0mmのラムを考えると、d1は3.77mmと等しく、およびd2は3.6mmと等しくてもよい。座ぐりの深度は、圧力プロファイル特性に当然影響を及ぼすと考えられる。内腔の直径間の段差の高さは、図6において誇張されていることが理解されると思われる。
【0040】
図7は、衝撃吸収構成部品を伴わなわない(プロット200)、深度が異なる座ぐり(プロット220、222、224、226は、座ぐりの増加した深度を示している)、ならびに座ぐりを伴わない(すなわち、完全深度3.6mmの内径、プロット228)注射器についての圧力プロファイル比較を示す。
【0041】
構成部品の開放端への座ぐりの追加は摩擦量を減少させ、かつラムが様々な内腔直径の間で肩に乗るので、液体圧力プロファイルの初期部分における短期の圧力上昇を生じさせる。座ぐりが深くなると、主要ピークまでの圧力上昇がより近くなる。従ってこの測定は、ピーク圧力の増加のために使用することができ、実際プロット226において、この肩の深さで主要圧力ピークが増加する。
【0042】
図8は、両端が開放されおよび3種の異なる内径d1、d2、およびd3が提供されている衝撃吸収材を示している。この構成部品は最初に直径d2の内腔で提供され、追加的座ぐり工程は構成部品のラム側から望ましい深さまでの増大した内径d1を提供し、および追加の座ぐり工程は構成部品のピストン側から望ましい深さまでの増大した内径d3を提供する。図6に示されたように、ラム直径4.0mmについて、d1は3.77mmと等しく、およびd2は3.6mmと等しいことができる。両端からの座ぐりの深度および直径は、圧力プロファイル特性に影響を及ぼすと考えられる。
【0043】
図9は、衝撃吸収構成部品を伴わない(プロット200)注射器、座ぐりを伴わない構成部品(すなわち、完全深度について内径3.6mm、図7のプロット228)、およびピストン側内腔の直径のみが異なる構成部品(プロット230、232、234、236は連続してd3値が増大している)に関する圧力プロファイルの比較を示している。衝撃吸収材を伴わない当初のプロットに一番近いプロットはプロット236であり、かつすなわちピストン側座ぐりがラムの直径よりも大きいデザインに関するものである。従って衝撃吸収材のこの区画はラムのピストンへ向かう移動に対する追加の抵抗を提供しないが、遅れた泡崩壊を可能にするように、適当な期間、薬物中の低圧力が維持されることを確実にしている。プロット236は、d1=3.77mm、d2=3.6mm、d3=4.05mmの構成部品についてのプロットである。
【0044】
図8に示したようなリブを伴うデザインは、圧力プロファイルの最良の組合せを提供することがわかっている。構成部品のラム側の座ぐりは、圧力の段階的増加を提供し(図9に240として示す)、次にこれは低下するが、低い圧力が、段階的泡崩壊の間維持される。ピストン側の座ぐりは、摩擦量を低下させ、これにより衝撃吸収構成部品の存在から生じるピーク圧力の喪失を減少させる。
【0045】
いずれの当業者にも、ピストンにより拘束された流体中の圧力の段階的増加を引き起こす多くの方法があることは明らかである。初期圧力急騰を低下させるあらゆる構成部品を使用することができ、およびこの目的に適しうる多くの圧縮可能な要素が存在する。本発明は、無針注射器のひとつの具体的な公知のデザインに対する改良として示されているが、本発明は多くの異なるデザインに適用することができ、一例を先に挙げたにすぎない。特に、具体例において示された気体ばね以外の、ラムへ力を加えるために蓄積されたエネルギーを放出する多くの様々な方法がある。
【0046】
この衝撃吸収構成部品はピストンもしくはラムの一部を含むことができ、または前記実施例におけるように、これらのふたつの構成部品の相互作用により効果的に定義することができる。この衝撃吸収は、ラムを駆動させるためのエネルギー源の出力に適用することもできる。本発明は本質的に、液体中の泡崩壊の速度を制御する手段を提供する。
【0047】
別の例において、シリンダー状衝撃吸収構成部品の内部開口部の直径は、ラムの直径よりもより大きいことができ、かつラムは衝撃吸収構成部品の内壁に、Kilopoise社製造のグリースなどの、力を伝達することができるグリースを介して連結することができる。
【0048】
前記実施例において、構成部品は機械加工され、かつ座ぐり技術を用いた内径の段差変化が存在する。これは、内径への先細り変化に代えることができ、例えばシリンダー開口部の直径は構成部品の長手方向に沿って増加もしくは減少させてもよく、または代りに中心リブが、境界は定められているが、末端でより大きい開口サイズとなるよう先細であることができる。これは当然、成形された構成部品にとって容易に実行される。
【0049】
衝撃吸収構成部品に沿ってスライドするラムの代わりに、これを押す、例えばゴム製軸継手部材であってもよい。
【0050】
「衝撃吸収手段」という用語は、本発明の構成部品について使用され、これはラムからピストンへの力の主な伝達の前に、液体中に、初期の低圧期間を提供する。これは、ラムからの力(衝撃)の一部を用いて実現される。これは、ラムからピストンへの力の主な伝達の前に、液体中で比較的低圧の初期期間を提供する手段として同等に説明される。「衝撃吸収手段」という用語は、エネルギー源(例えば、圧縮気体給源)への変更による衝撃吸収の実行を含む、これらの可能性全てを対象とすることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
本発明の実施例は、ここでは添付図面を参照して詳細に説明される。
【図1】公知の無針注射器を示す。
【図2】本発明の衝撃吸収構成部品の第一の例を使用する、図1の注射器の改良を示す。
【図3】本発明の衝撃吸収構成部品の第二の例を示す。
【図4】図2および3の構成部品の作用を例証するための圧力プロットを示す。
【図5】本発明の衝撃吸収構成部品の第三の例を示す。
【図6】本発明の衝撃吸収構成部品の第四の例を示す。
【図7】図6の構成部品の作用を例証するための圧力プロットを示す。
【図8】本発明の衝撃吸収構成部品の第五の例を示す。
【図9】図8の構成部品の作用を例証するための圧力プロットを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片端に開口部を有するシリンジ本体;
シリンジ本体内において、開口部を通して液体を推進させるための、シリンジ本体内に収容されたピストン;
ピストンを駆動させるためのラム;
ラムへ力を加えるための手段;および
ラムからピストンへの力の初期伝達を減少させる衝撃吸収手段
を含む、無針注射器。
【請求項2】
衝撃吸収手段が、ラムおよび/またはピストンに関連した構成部品を含む、請求項1記載の注射器。
【請求項3】
衝撃吸収手段が、その中へラムの末端がスライド式に収納されるシリンダーを含む、請求項2記載の注射器。
【請求項4】
シリンダーがピストンの一部を形成している、請求項3記載の注射器。
【請求項5】
シリンダーの片端が閉鎖され、その閉鎖端はピストンに隣接して配置され、ラムが、ラムへ力を加える前にシリンダーの開放端に隣接して収納されている、請求項3または4記載の注射器。
【請求項6】
シリンダーが両端で開口している、請求項3または4記載の注射器。
【請求項7】
シリンダーの内部開口部が一定の内径を有する、請求項6記載の注射器。
【請求項8】
シリンダーの内部開口部が、ラムと協動するためのシリンダー末端の第一の内径、および第二のより小さい内径の、少なくとも2種の内径を有する、請求項6記載の注射器。
【請求項9】
シリンダーの内部開口部が3種の内径を有し、第三の内径がピストンと協動するためにシリンダー末端にあり、第三の内径は第二の内径よりも大きい、請求項8記載の注射器。
【請求項10】
第三の内径がラムの直径と等しいかまたはそれより大きい、請求項9記載の注射器。
【請求項11】
シリンダーが1mm〜5mmの長さを有する、請求項3〜10のいずれか1項記載の注射器。
【請求項12】
ラムが液密嵌合を伴うシリンダー内にスライド式に収納される、請求項3〜11のいずれか1項記載の注射器。
【請求項13】
衝撃吸収手段が圧縮可能な部材を含む、請求項1記載の注射器。
【請求項14】
ラムへ力を加える手段が加圧流体の供給源を含む、請求項1〜13のいずれか1項記載の注射器。
【請求項15】
以下の工程を含む、シリンジ本体内に収容されたピストンおよびピストンを駆動させるためのラムを含みこれにより液体をシリンジから送り出す、無針注射器のシリンジから液体を送達する方法:
力のプロファイルをラムに加える工程;
送達サイクルの第一段階の間に、ラムに加えられた力を少なくとも一部吸収し、減少した力をピストンへ加える工程;ならびに
送達サイクルの第二段階の間に、ラムに加えられた実質的に全ての力を、ピストンへ移す工程。
【請求項16】
第一段階において、ピストンからラムの間に間隔をあけることによりラムへ加えられた力が吸収され、この間隔が第一段階の間に減少する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
間隔が第一段階の間に減少した場合、ラムのピストンへの移動が気体の密閉容積の圧縮を引き起こす、請求項16記載の方法。
【請求項18】
片端に開口部を有するシリンジ本体;
シリンジ本体内において、開口部を通して液体を推進させるための、シリンジ本体内に収容されたピストン;
ピストンを駆動させるためのラム;
ラムへ力を加えるための手段;および
液体中の泡の崩壊速度を制御する手段
を含む、無針注射器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−46509(P2010−46509A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−244166(P2009−244166)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【分割の表示】特願2003−537711(P2003−537711)の分割
【原出願日】平成14年10月18日(2002.10.18)
【出願人】(507363901)ゾゲニクス インコーポレーティッド (6)
【Fターム(参考)】