説明

ランプリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物及びその成形物、並びにランプリフレクター

【課題】成形性に優れると共に、表面平滑性、寸法精度、耐熱性及び機械的強度に加えて、プライマー組成物の塗装性及びプライマー層との密着性に優れた成形物を与えるランプリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(a)多価アルコールと不飽和多塩基酸とを重縮合させてなる不飽和ポリエステルと、(b)ジアリルフタレートのモノマー又はプレポリマー、及び(c)ジアリルフタレートモノマー以外のラジカル重合性不飽和単量体からなる架橋剤と、(d)ポリスチレン、(e)アクリルポリマー、並びに(f)スチレン−ジエンブロック共重合体及び/又はその水添物若しくは変性物からなる低収縮剤とを含むランプリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、前記低収縮剤の含有量が、前記不飽和ポリエステル及び架橋剤の合計100質量部に対して15〜50質量部であり、(d)と(e)との質量比率が25:75〜75:25であり、(d)及び(e)と(f)との質量比率が10:90〜50:50であることを特徴とするランプリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物及びその成形物、並びにランプリフレクターに関し、特に自動車用ヘッドランプに代表されるランプリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物及びその成形物、並びにランプリフレクターに関する。
【背景技術】
【0002】
不飽和ポリエステル樹脂成形材料(バルクモールディングコンパウンド:BMC)は、成形性だけでなく、得られる成形物の表面平滑性、寸法精度、耐熱性及び機械的強度等にも優れていることから、OA機器、事務機器のシャーシ、自動車用ヘッドランプに代表されるランプリフレクター等で広く使用されている。
このような不飽和ポリエステル樹脂成形材料としては、例えば、不飽和ポリエステルと、架橋剤と、ポリスチレンとスチレン−ジエンブロック共重合体及び/又はその水添物若しくは変性物とを含むもの(例えば、引用文献1参照)や、不飽和ポリエステルと、スチレン−酢酸ビニルブロック共重合体と、スチレン−ジエンブロック共重合体及び/又はその水添物若しくは変性物とを含むもの(例えば、引用文献2参照)等が知られている。
【0003】
ところで、ランプリフレクターの製造では、不飽和ポリエステル樹脂成形材料を成形して得られた成形物(基材)上にプライマー組成物(アンダーコート)を塗布及び硬化してプライマー層を形成した後、その上にアルミニウムや亜鉛等の金属コーティングを施して金属反射層を形成する。そのため、ランプリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂成形材料には、上記特性に加えて、プライマー組成物の塗装性及びプライマー層との密着性に優れた成形物を与えることも要求される。
しかしながら、従来のランプリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂成形材料から得られる成形物は、プライマー組成物の塗装性が十分ではなく、プライマー組成物の「ハジキ」が生じ、その結果、金属コーティングを均一に施すことができないという問題があった。また、プライマー組成物の塗装性が良好であったとしても、プライマー層との密着性が十分でなく、ランプリフレクターの使用経過につれて光反射性等の性能が低下したり、場合によっては成形物からプライマー層が剥離するという問題があった。
【0004】
ここで、成形物に対するプライマー組成物の塗装性や、成形物とプライマー層との密着性は、成形物を与える不飽和ポリエステル樹脂成形材料の組成だけでなく、プライマー組成物の組成とも密接に関連している。そのため、成形物に対するプライマー組成物の塗装性や、成形物とプライマー層との密着性を改善するためには、不飽和ポリエステル樹脂成形材料及びプライマー組成物の両方の組成を考慮しなければならない。
【0005】
【特許文献1】特公平6−53844号公報
【特許文献2】特公平6−89240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、成形性に優れると共に、表面平滑性、寸法精度、耐熱性及び機械的強度に加えて、プライマー組成物の塗装性及びプライマー層との密着性に優れた成形物を与えるランプリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、表面平滑性、寸法精度、耐熱性及び機械的強度に優れた成形物及びランプリフレクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のプライマー組成物を使用する場合において、特定の不飽和ポリエステル、架橋剤及び低収縮剤を所定の割合で含むランプリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物が、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(a)多価アルコールと不飽和多塩基酸とを重縮合させてなる不飽和ポリエステルと;(b)ジアリルフタレートのモノマー又はプレポリマー、及び(c)ジアリルフタレートモノマー以外のラジカル重合性不飽和単量体からなる架橋剤と;(d)ポリスチレン、(e)アクリルポリマー、並びに(f)スチレン−ジエンブロック共重合体及び/又はその水添物若しくは変性物からなる低収縮剤とを含むランプリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、前記低収縮剤の含有量が、前記不飽和ポリエステル及び架橋剤の合計100質量部に対して15〜50質量部であり、(d)と(e)との質量比率が25:75〜75:25であり、(d)及び(e)と(f)との質量比率が10:90〜50:50であることを特徴とするランプリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物である。
【0009】
また、本発明は、上記ランプリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物を成形して得られたことを特徴とする成形物である。
さらに、本発明は、ランプリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物を成形して得られた基材と、12〜55質量%のアクリル樹脂を含むプライマー組成物を前記基材上に塗布及び硬化して形成されたプライマー層と、前記プライマー層上に形成された金属反射層とを含むことを特徴とするランプリフレクターである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、成形性に優れると共に、表面平滑性、寸法精度、耐熱性及び機械的強度に加えて、プライマー組成物の塗装性及びプライマー層との密着性に優れた成形物を与えるランプリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、表面平滑性、寸法精度、耐熱性及び機械的強度に優れた成形物及びランプリフレクターを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のランプリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物(以下、単に「不飽和ポリエステル樹脂組成物」という)は、所定の不飽和ポリエステル、架橋剤及び低収縮剤を含む。
【0012】
本発明で使用される不飽和ポリエステルは、(a)多価アルコールと不飽和多塩基酸とを重縮合させてなる不飽和ポリエステルである。このような不飽和ポリエステルは、成形材料に一般に使用されており、所望の特性に応じて適宜選択して使用することができる。
多価アルコールとしては、特に限定されることはなく、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンタンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールA、グリセリン等を使用することができる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度及び成形性等の観点から、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びビスフェノールA又は水素化ビスフェノールAが好ましい。
不飽和多塩基酸としては、特に限定されることはなく、例えば、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等を使用することができる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度及び成形性等の観点から、無水マレイン酸及びフマル酸が好ましい。
【0013】
本発明で使用される架橋剤は、(b)ジアリルフタレートのモノマー又はプレポリマー、及び(c)ジアリルフタレートモノマー以外のラジカル重合性不飽和単量体から構成される。
(c)ジアリルフタレートモノマー以外のラジカル重合性不飽和単量体としては、特に限定されることはなく、例えば、スチレンモノマー、メタクリル酸メチル、トリアリルイソシアヌレート等を使用することができる。
(b)及び(c)から構成される架橋剤の含有量は、作業性、重合性、成形物の収縮性及び量調整の自由度に加えて、成形物に対するプライマー組成物の塗装性を向上させる観点から、上記不飽和ポリエステル及び架橋剤の合計100質量部に対して、好ましくは30〜70質量部、より好ましくは35〜65質量部、最も好ましくは40〜60質量部である。架橋剤の含有量が30質量部未満であると、不飽和ポリエステル樹脂組成物が硬くなって混練が困難となったり、成形物の収縮率が大きくなることがある。また、架橋剤の含有量が70質量部を超えると、不飽和ポリエステル樹脂組成物が柔らかくなって成形性が低下したり、成形物の耐熱性が低下することがある。
また、(b)と(c)との質量比率は、好ましくは5:95〜25:75であり、より好ましくは10:90〜20:80である。(b)の(c)に対する質量比率が低すぎると、成形物に対するプライマー組成物の塗装性が低下することがある。また、(b)の(c)に対する質量比率が高すぎると、不飽和ポリエステル樹脂組成物の成形性が低下することがある。
【0014】
本発明で使用される低収縮剤は、(d)ポリスチレン、(e)アクリルポリマー、及び(f)スチレン−ジエンブロック共重合体及び/又はその水添物若しくは変性物から構成される。
(d)ポリスチレンは、スチレンの単独重合体を意味し、熱可塑性樹脂として用いられる公知のポリスチレンの中から適宜選択することができる。その中でも、2,000〜400,000の重量平均分子量を有するポリスチレンが好ましい。このようなポリスチレンとしては、例えば、三洋化成工業社製の商品名ハイカーST−95、三菱化学社製の商品名ダイヤレックスHF−55、昭和電工社製の商品名エスブライトT−2ビーズ等が挙げられる。
(e)アクリルポリマーは、アクリルモノマーの単独重合体を意味し、熱可塑性樹脂として用いられる公知のアクリルポリマーの中から適宜選択することができる。その中でも、25,000〜550,000の重量平均分子量を有するアクリルポリマーが好ましい。このようなアクリルポリマーとしては、例えば、積水化学工業社製の商品名テクノポリマーMB、日本ゼオン社製の商品名F320等が挙げられる。
【0015】
(f)スチレン−ジエンブロック共重合体及び/又はその水添物若しくは変性物は、ハードセグメントとしてポリスチレンを用い、ソフトセグメントとしてポリブタジエン又はポリイソプレンを用いたSBS系又はSIS系熱可塑性エラストマー、あるいは上記SBS系又はSIS系を水素添加した水添物である。SEBS系熱可塑性エラストマー又は変性物として、これらに無水マレイン酸等で反応性を付与した反応性飽和型熱可塑性エラストマーのいずれも使用できる。また、これらの混合物を使用することも可能である。
スチレン−ジエンブロック共重合体の結合様式は、ポリスチレン部分とジエンポリマー部分とがリニア結合様式をとるタイプと、ジエンポリマー部分同士をカップリングしたラジアルタイプに大別されるが、本発明ではそのいずれも使用できる。スチレン部とジエン部との割合はスチレンが全体の10%以上50%以下のものが好ましい。スチレン部の割合が全体の10%未満及び50%を超えると、所望の収縮率が得られ難くなるため好ましくない。また、スチレン−ジエンブロック共重合体は、100,000〜400,000の重量平均分子量を有するものが好ましい。
【0016】
(d)、(e)及び(f)から構成される低収縮剤の含有量は、上記不飽和ポリエステル及び架橋剤の合計100質量部に対して、15〜50質量部、好ましくは20〜45質量部である。低収縮剤の含有量が15質量部未満であると、硬化の際に不飽和ポリエステル樹脂組成物の収縮が大きくなる。また、低収縮剤の含有量が50質量部を超えると、着色性が損なわれる。
(d)と(e)との質量比率は、25:75〜75:25、好ましくは30:70〜70:30である。(d)の(e)に対する質量比率が低すぎると、着色性が損なわれる。また、(d)の(e)に対する質量比率が高すぎると、着色性は良好であるものの、プライマー組成物の塗装性や、プライマー層との密着性が低下する。
(d)及び(e)と(f)との質量比率は、10:90〜50:50、好ましくは15:85〜45:55である。(d)及び(e)の(f)に対する質量比率が低すぎると、硬化の際に、不飽和ポリエステル樹脂組成物の収縮が大きくなると共に、着色性も良好とはいえないことがある。また、(d)及び(e)の(f)に対する質量比率が高すぎると、着色性は良好であるものの、硬化の際の不飽和ポリエステル樹脂組成物の収縮が大きくなる。
【0017】
(d)、(e)及び(f)から構成される低収縮剤は、スチレン等の上記架橋剤に予め溶解又は膨潤させて使用するのが一般に取り扱いが便利であるが、スチレン等の架橋剤に溶解又は膨潤させなくても使用可能である。
【0018】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、上記成分に加えて、硬化剤、充填剤、離型剤、増粘剤、繊維強化材及び顔料等を必要に応じて使用することができる。これらの成分を使用する場合、各成分は、それぞれの目的に応じて通常用いられる配合量で本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物に配合される。
硬化剤としては、過酸化物から適宜選択して使用することができ、例えば、t−ブチルパーオキシオクトエート、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド及びジ−t−ブチルパーオキサイド等を使用することができる。
【0019】
充填剤としては、当該技術分野において使用可能なものであれば特に限定されることはなく、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、石こう、硫酸バリウム、クレー及びタルク等の無機粉末を使用することができる。
離型剤としては、当該技術分野において使用可能なものであれば特に限定されることはなく、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、カルナバワックス、シリコンオイル及び合成ワックス等を使用することができる。
【0020】
増粘剤としては、当該技術分野において使用可能なものであれば特に限定されることはなく、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム等の金属化合物およびイソシアネート化合物を使用することができる。
繊維強化材としては、当該技術分野において使用可能なものであれば特に限定されることはなく、例えば、繊維長1.5〜25mm程度に切断したチョップドストランドガラスを使用することができる。また、パルプ繊維、テトロン(登録商標)繊維、ビニロン繊維、カーボン繊維、アラミド繊維及びワラストナイト等の有機無機繊維も使用することができる。
【0021】
以上のような成分によって構成される本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、通常行われる方法、例えば、上記成分を配合した後、ニーダー等を用いて混練することによって製造することができる。
このようにして製造された本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、成形性に優れており、また、表面平滑性、寸法精度、耐熱性及び機械的強度に優れた成形物を与えることができる。ここで、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物の成形方法としては、特に限定されることはなく、例えば、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形等を使用することができる。
また、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる成形物は、後述する特定のプライマー組成物との相性(すなわち、プライマー組成物の塗装性及びプライマー層との密着性)にも優れている。そのため、この成形物は、ランプリフレクターの基材として使用することができる。
【0022】
本発明のランプリフレクターは、不飽和ポリエステル樹脂組成物を成形して得られた基材と、特定のプライマー組成物を前記基材上に塗布及び乾燥して形成されたプライマー層と、プライマー層上に形成された金属反射層とを含む。
ここで、プライマー組成物はアクリル樹脂を含む。このアクリル樹脂は、数平均分子量が100〜2,000の範囲であれば特に限定されることはなく、当該技術分野において公知のものを使用することができる。アクリル樹脂の数平均分子量が100未満であると、プライマー層の強度が低くなり、基材に対するプライマー層の密着性が低下する。一方、アクリル樹脂の数平均分子量が2,000を超えると、プライマー組成物の粘度が高くなり、プライマー組成物の塗装性が低下する。
プライマー組成物に使用可能なアクリル樹脂としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の多官能性モノマーの単独重合又は共重合によって得られる樹脂が挙げられる。
プライマー組成物におけるアクリル樹脂の含有量は、12〜55質量%である。アクリル樹脂の含有量が12質量%未満であると、基材に対するプライマー層の密着性が低下する。一方、アクリル樹脂の含有量が55質量%を超えると、プライマー組成物の粘度が高くなり、塗装性が低下する。
【0023】
また、プライマー組成物は、ポリエステル樹脂をさらに含んでもよい。この場合、プライマー組成物におけるポリエステル樹脂の含有量は33質量%以下である。ポリエステル樹脂の含有量が33質量%を超えると、基材に対するプライマー層の密着性が低下することがある。
プライマー組成物に使用可能なポリエステル樹脂としては、当該技術分野において公知のものであれば特に限定されることはなく、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニル変性ポリエステル樹脂、フェノール変性ポリエステル樹脂、油脂変性ポリエステル樹脂、シリコーン変性ポリエステル樹脂等が挙げられる。
また、プライマー組成物におけるアクリル樹脂とポリエステル樹脂との質量割合は、100:0〜40:60であることが好ましい。アクリル樹脂に対するポリエステル樹脂の質量割合が高すぎると、基材に対するプライマー層の密着性が低下することがある。
プライマー組成物は、硬化剤や溶剤等の成分を含むことができる。これらの成分の種類や含有量は、特に限定されることはなく、使用するアクリル樹脂やポリエステル樹脂にあわせて適宜調整すればよい。
【0024】
プライマー組成物を基材上に塗布する方法としては、特に限定されることはなく、例えば、エアースプレー方式やエアレススプレー方式等の公知の方法を使用することができる。また、乾燥方法も、プライマー組成物の組成や塗布方法にあわせて温度等を適宜調整すればよい。
プライマー層の厚さは、要求されるランプリフレクターの大きさ等にあわせて適宜設定すればよいが、一般に10〜30μmである。
【0025】
金属反射層の材料としては、ランプリフレクターに使用されるものであれば特に限定されることはなく、例えば、銀や亜鉛、銀や亜鉛を主体とした合金等を用いることができる。
金属反射層をプライマー層上に形成する方法としては、特に限定されることはなく、例えば、真空蒸着法等の公知の方法を使用することができる。
金属反射層の厚さは、要求されるランプリフレクターの大きさ等にあわせて適宜設定すればよいが、一般に800〜2,000Åである。
このような構成を有する本発明のランプリフレクターは、基材とプライマー組成物との相性が良好であると共に、表面平滑性、寸法精度、耐熱性及び機械的強度に優れたものとなる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例及び比較例によって本発明を詳細に説明する。勿論、この発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
表1に示す組成でそれぞれの成分を30℃で双碗型ニーダーを用いて混練し、実施例1〜3及び比較例1〜7の不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。
【0027】
【表1】

【0028】
表1において、「レジン」は、多価アルコールと不飽和多塩基酸とを重縮合させてなる不飽和ポリエステルを73質量%、及び架橋剤としてのスチレンモノマーを27質量%含むものである。また、「アクリル樹脂」は、アクリルポリマーを60質量%、及び架橋剤としてのスチレンモノマーを40質量%含むものである。
これらの不飽和ポリエステル樹脂組成物について以下の評価を行った。
【0029】
(1)成形収縮率
JIS K6911 5.7に規定される収縮円盤を作製し、成形温度150℃、成形圧力10MPa、成形時間3分の条件下にて圧縮成形を行い、JIS K6911 5.7に基づいて成形収縮率を算出した。
(2)成形物評価
成形温度140℃、射出圧力180kg/cm、成形時間1分の条件下にてトランスファー成形を行い、トランスファー成形物(円盤状、直径117mm、厚さ3mm(均一))を作製した。この成形物について、外観レベリング及び充填性を目視で評価した。これらの評価において、非常に良好であったものを◎、良好であったものを○、やや劣るものを△、不良のものを×として表した。
また、成形物表面上でのぬれ張力比較試験をJIS K6768に準拠して行った。
【0030】
(3)成形物に対するプライマー組成物の塗装性
プライマー組成物として、数平均分子量が500のアクリル樹脂を31.5質量%、ポリエステル樹脂を13.5質量%含むものを使用した。
このプライマー組成物を上記(2)の成形物に塗装して厚さが約3μmのプライマー層を形成し、塗装部全体に占める塗布が良好な部分(ハジキのない部分)を目視で確認し、その面積の割合を求めた。
また、上記プライマー組成物を上記(2)の成形物に塗装して厚さが約20μmのプライマー層を形成し、プライマー層の外観レベリングを目視で評価した。この評価において、非常に良好であったものを◎、良好であったものを○、やや劣っていたものを△、不良であったものを×として表した。
さらに、塗装性の総合評価として、ハジキのない部分の面積割合が90%以上で外観レベリングが良好であったものを◎、ハジキのない部分の面積割合が70%以上〜90%未満で外観レベリングが良好(又は非常に良好)であったものを○、ハジキのない部分の面積割合が50%以上〜70%未満で外観レベリングが劣っていた(又は不良)ものを△、ハジキのない部分の面積割合が50%未満で外観レベリングが劣っていた(又は不良)ものを×と判定した。
【0031】
(4)成形物とプライマー層との密着性
上記(3)と同様にして成形物に厚さが約20μmのプライマー層を形成し、JIS K5400 8.5項の、付着性に規定される碁盤目試験(切り傷間隔:2mm)を行い、JIS K5400 8.5項の、付着性(表18)に規定される評価点数で評価した。この評価点数が、9以上のものを◎、7〜8のものを○、5〜6のものを△、4以下のものを×と判定した。
上記の評価結果を表2に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
表2の結果からわかるように、実施例1〜3の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、成形収縮率が小さく、成形物評価、並びに塗装性及び密着性の評価の全てが良好であったのに対し、比較例1〜7の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、上記のいずれかの評価結果が十分なものではなかった。
この結果から、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、成形性に優れると共に、表面平滑性、寸法精度に加えて、プライマー組成物の塗装性及びプライマー層との密着性に優れた成形物を与えることがわかる。
【0034】
次に、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物による成形物に塗布するプライマー組成物の組成を変えて以下の実験を行った。
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物として、上記の実施例3の不飽和ポリエステル樹脂組成物を使用し、また、プライマー組成物として、表3に示す組成を有するものを使用した。そして、このプライマー組成物を用いて、上記の(3)成形物に対するプライマー組成物の塗装性及び(4)成形物とプライマー層との密着性の評価を行った。その結果を表3に示す。
【0035】
【表3】

【0036】
表3の結果からわかるように、実験1及び2のプライマー組成物を用いた場合には、成形物に対するプライマー組成物の塗装性、及び成形物とプライマー層との密着性の両方が良好であったものの、実験3〜5のプライマー組成物を用いた場合には、上記のいずれかの評価が十分なものではなかった。
この結果から、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物による成形物に対するプライマー組成物の塗装性、及びその成形物とプライマー層との密着性は、不飽和ポリエステル樹脂組成物の組成だけでなく、プライマー組成物の組成にも密接に関連しており、アクリル樹脂の含有量、及びアクリル樹脂の数平均分子量を所定の範囲内にする必要があることがわかる。
【0037】
以上の結果からわかるように、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、成形性に優れると共に、表面平滑性、寸法精度、耐熱性及び機械的強度に加えて、プライマー組成物の塗装性及びプライマー層との密着性に優れた成形物を与えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)多価アルコールと不飽和多塩基酸とを重縮合させてなる不飽和ポリエステルと、
(b)ジアリルフタレートのモノマー又はプレポリマー、及び(c)ジアリルフタレートモノマー以外のラジカル重合性不飽和単量体からなる架橋剤と、
(d)ポリスチレン、(e)アクリルポリマー、並びに(f)スチレン−ジエンブロック共重合体及び/又はその水添物若しくは変性物からなる低収縮剤と
を含むランプリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、
前記低収縮剤の含有量が、前記不飽和ポリエステル及び架橋剤の合計100質量部に対して15〜50質量部であり、(d)と(e)との質量比率が25:75〜75:25であり、(d)及び(e)と(f)との質量比率が10:90〜50:50であることを特徴とするランプリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記架橋剤の含有量が、前記不飽和ポリエステル及び架橋剤の合計100質量部に対して30〜70質量部であり、且つ(b)と(c)との質量比率が5:95〜25:75であることを特徴とする請求項1に記載のランプリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のランプリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物を成形して得られたことを特徴とする成形物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のランプリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物を成形して得られた基材と、数平均分子量が100〜2,000のアクリル樹脂を12〜55質量%含むプライマー組成物を前記基材上に塗布及び乾燥して形成されたプライマー層と、前記プライマー層上に形成された金属反射層とを含むことを特徴とするランプリフレクター。
【請求項5】
前記プライマー組成物が、33質量%以下のポリエステル樹脂をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載のランプリフレクター。

【公開番号】特開2010−49918(P2010−49918A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212732(P2008−212732)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】