ランプ駆動装置
【課題】車両用のランプに突入電流が流れる期間において、半導体素子のスイッチング損失を低減できるランプ駆動装置を提供する。
【解決手段】PWM信号出力部4は、OFF時間監視タイマ6の計時時間がOFF監視時間を超えた後にランプ2の点灯が開始された場合は、その開始時点から一定期間において、当該ランプ2に通電が行われる期間の比率が通常の制御期間よりも高くなるように、出力ロジック部8のANDゲート9側を機能させてPWM信号のデューティを100%とするように設定する。
【解決手段】PWM信号出力部4は、OFF時間監視タイマ6の計時時間がOFF監視時間を超えた後にランプ2の点灯が開始された場合は、その開始時点から一定期間において、当該ランプ2に通電が行われる期間の比率が通常の制御期間よりも高くなるように、出力ロジック部8のANDゲート9側を機能させてPWM信号のデューティを100%とするように設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のランプをPWM(Pulse Width Modulation)制御により点灯させるランプ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両のヘッドランプなどを点灯させる場合に、フィラメントの温度が低下しており抵抗値が低い状態で通電を行うと、瞬間的に過大な突入電流(ラッシュカレント)が流れる。図14には、ランプに流れる突入電流を実測した波形を示す。このような突入電流を、フィラメントを保護するために低減する技術が特許文献1に開示されている。すなわち、特許文献1では、ランプの照度を一定に維持するためにPWM制御する場合、突入電流が流れる期間のPWMデューティを低下させることで、突入電流量を低減するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−165012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一方で、電流が多く流れる期間にスイッチングを行う回数を増やすと、半導体素子におけるスイッチング損失が増加して、半導体素子の寿命が低下するという問題がある。また、特許文献1のように通電期間を減少させると、フィラメントの温度が上昇しにくくなるため、突入電流のレベルが低下して安定するまでの時間も長引くようになる。その結果、スイッチング損失をより増加させることになる。例えば図15に示すように、(a)デューティ15%の場合と(b)デューティ80%の場合とでは(初期ピークは何れも75A程度)、デューティ15%の場合の方がより長い期間に亘って、電流のレベルが高い状態が継続していることが判る。
【0005】
加えて、車両の場合、最近は照度センサを備え、昼間においても例えばトンネル等を通過する際に周囲の照度が低下すると、自動的にヘッドランプを点灯させるように制御するものがある。すると、走行中にランプが点灯,消灯を断続的に繰り返す場合もあり、実際に通電が行われた状況に応じて、フィラメントの温度が様々に異なる。したがって、前回にランプを消灯した時点からそれほど時間が経過しないうちに再点灯させる場合は、フィラメントの温度がある程度上昇しているため、過大なレベルの電流は流れず、突入電流に対応した制御は実質的に不要となる場合もある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両用のランプに突入電流が流れる期間において、半導体素子のスイッチング損失を低減できるランプ駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のランプ駆動装置によれば、ランプの点灯が開始された時点から一定期間において、当該ランプに通電が行われる期間の比率が通常制御期間よりも高くなるように設定する通電期間比率調整手段を備える。ここで、「一定期間」は、ランプに突入電流が流れる期間よりも長くなるように設定する。そして、制御切替え手段は、消灯期間計時手段により計時されたランプ消灯期間の長さが所定の閾値を超えた場合は、通電期間比率調整手段を動作させるように制御形態を一時的に切り替える。
【0008】
すなわち、ランプが消灯されている期間が長くなりフィラメントの温度が低下している状態から点灯を開始させる場合は、通電期間比率調整手段を動作させて一定期間は当該ランプに通電が行われる期間の比率が通常制御期間よりも高くなるように設定する。これにより、PWM制御を行う場合でも点灯開始後の一定期間はランプに通電が行われる期間の比率が高くなるので、突入電流のレベルをより早く低下させることができる。したがって、半導体スイッチング素子の発熱を抑制して寿命を長期化させることができる。
【0009】
請求項2記載のランプ駆動装置によれば、ランプの点灯が開始された時点から一定期間に、PWM信号のデューティを、通常制御期間よりも長く且つ通電期間比率調整手段により設定される通電期間よりも短くなるように設定するデューティ調整手段を備える。そして、制御切替え手段は、消灯期間計時手段により計時された期間の長さが第1閾値未満であり、且つ、第1閾値よりも低い値に設定される第2閾値を超えていた場合は、デューティ調整手段を動作させるように切り替える。
【0010】
すなわち、ランプの点灯を開始させる場合でも、それ以前にランプが消灯していた期間が短い場合はフィラメントの温度が低下しておらず、突入電流が大きなレベルで流れないことが想定される。したがって、消灯期間計時手段により計時された消灯期間の長さが第1閾値未満で第2閾値を超えている場合は、デューティ調整手段によってPWM信号のデューティを通電期間比率調整手段で設定される通電期間よりも短くして通電比率を低下させることで、ランプの輝度を通常制御の状態に近づけることができる。
【0011】
請求項3記載のランプ駆動装置によれば、制御切替え手段は、温度検出手段により検出されたランプ又は半導体スイッチング素子の温度が所定の閾値を下回った場合は、通電期間比率調整手段を有効化する。すなわち、ランプ又は半導体スイッチング素子の温度が低い場合は突入電流が大きなレベルで流れることを示すので、そのような場合に応じて通電期間比率調整手段を有効化して一定期間は当該ランプに通電が行われる期間の比率が通常制御期間よりも高くなるように設定する。これにより請求項1と同様の効果が得られる。
【0012】
請求項4ないし6記載のランプ駆動装置によれば、通電期間比率調整手段を、PWM信号のデューティを100%に設定する(請求項4)、また、デューティを100%未満で且つ実質的に非通電期間が発生しない値(疑似100%デューティ)に設定する(請求項5)、或いは、デューティを100%と疑似100%デューティとに切り替えて出力する(請求項6)構成とする。したがって、何れの場合も、点灯開始後の一定期間にランプに通電が行われる期間の比率を高くすることができる。
【0013】
請求項7記載のランプ駆動装置によれば、通電期間比率調整手段は、PWM信号の搬送波周波数を、通常制御時よりも低く設定する構成とする。すなわち、搬送波周波数を低下させることで、デューティが同一であっても通常制御期間よりもランプの通電比率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施例であり、ランプ駆動装置の構成を示す機能ブロック図
【図2】PWM信号出力部の動作を示すタイミングチャート
【図3】OFF監視時間の設定を説明する図
【図4】第2実施例を示す図1相当図
【図5】図2(a)相当図
【図6】第3実施例を示す図1相当図
【図7】図5相当図
【図8】第4実施例を示す図1相当図
【図9】図5相当図
【図10】第5実施例を示す図1相当図
【図11】図2相当図
【図12】図3相当図
【図13】第6実施例を示す図1相当図
【図14】従来技術を説明するものでランプに流れる突入電流を実測した波形を示す図
【図15】(a)デューティ15%の場合と(b)デューティ80%の場合とで、突入電流が流れる状態の測定結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施例)
以下、第1実施例について図1ないし図3を参照して説明する。図1は、ランプ駆動装置の構成を示す機能ブロック図である。電源+Bとグランドとの間には、NチャネルMOSFET(半導体スイッチング素子)1とランプ2との直列回路が接続されている。尚、ランプ2については抵抗負荷のシンボルで示している。NチャネルMOSFET1は、MOS駆動回路3を介してPWM信号がゲート信号として与えられ、ランプ2をハイサイド駆動する。MOS駆動回路3には、その後段に配置されているPWM信号出力部(駆動装置)4により生成出力されるPWM信号が与えられる。
【0016】
PWM信号出力部4は、PWM信号生成部5,OFF時間監視タイマ(消灯期間計時手段)6,ON時間監視タイマ(制御切替え手段)7,出力ロジック部8で構成されている。PWM信号生成部5は、ランプ2を通常制御時に点灯させるため、例えば搬送波周波数55Hzでデューティ50%のPWM信号(信号C)を生成して出力する。OFF時間監視タイマ6には、ランプ2の点灯制御信号であるON信号がカウント制御信号として与えられており、そのON信号がインアクティブとなるローレベルを示すOFF期間を計時するタイマである。
【0017】
OFF時間監視タイマ6は、内部にOFF監視時間を保持しており、ON信号がハイレベルの場合はリセットされている。そして、図示しないクロック信号(PWM搬送波の周波数よりも十分に高い周波数とする)に基づいてON信号がローレベルを示す期間に計時を行い、その計時時間が上記OFF監視時間を超えると信号Aをハイレベルからローレベルに変化させる。信号Aは、ON時間監視タイマ7にカウント制御信号として与えられており、ON時間監視タイマ7は、信号Aがローレベルになるとリセットされて出力信号である信号Bをローレベルにし、信号Aのレベルがローからハイに変化すると計時を開始する。ON時間監視タイマ7は、内部にON監視時間のデータを保持しており、その計時時間がON監視時間に一致すると信号Bのレベルをローからハイに変化させる。
【0018】
出力ロジック部8は、3つのANDゲート9〜11とORゲート12とで構成されており、信号BはANDゲート9,10の一方の入力端子(ANDゲート9側は負論理)に与えられている。そして、ANDゲート9(通電期間比率調整手段)の他方の入力端子は電源VCCに接続されており、ANDゲート10の他方の入力端子には信号Cが与えられている。ANDゲート9,10の出力端子はORゲート12の入力端子に夫々接続され、ORゲート12の出力端子はANDゲート11の一方の入力端子に接続されている。ANDゲート11の他方の入力端子にはON信号が与えられ、ANDゲート11の出力端子はMOS駆動回路3の入力端子に接続されており、MOS駆動回路3に信号Eが与えられる。
尚、以上の構成において、PWM信号生成部5,ANDゲート10,ORゲート12及びANDゲート11は、通電制御手段13を構成している。
【0019】
次に、本実施例の作用について図2及び図3も参照して説明する。図2は、PWM信号出力部4の動作を示すタイミングチャートであり、(a)はOFF時間監視タイマ6が計時するOFF期間がOFF監視時間を超えた場合、(b)はOFF監視時間を超えない場合を示す。ON信号がローレベルになるOFF期間(ランプ2の消灯期間)では、ANDゲート11を介して出力される信号Eはローレベルとなっており、OFF時間監視タイマ6が時点(1)から計時動作を行っている。
【0020】
そして、時点(2)でOFF期間がOFF監視時間に達すると、信号Aはローレベルになり、ON時間監視タイマ7はリセットされて信号Bもローレベルになる。車両の乗員がランプスイッチを操作するか、若しくは車両外部の照度を検出する照度センサが照度の低下を検出することでON信号がハイレベルになると(時点(3))、ON時間監視タイマ7は計時動作を開始する。この時、ANDゲート9がハイレベルになるので、ORゲート12及びANDゲート11を介して信号Eはハイレベルになり、PWM信号デューティは100%になる。すなわち、NチャネルMOSFET1はスイッチング動作せず、ランプ2は連続的に通電される。
【0021】
この状態から、ON時間監視タイマ7の計時時間がON監視時間に達すると(時点(4))信号Bがハイレベルとなり、ANDゲート11を介してPWM信号生成部5が出力する通常制御のPWM信号(信号C)が、信号EとしてMOS駆動回路3に出力される。一方、図2(b)の場合は、OFF期間がOFF監視時間に達する以前にON信号がハイレベルとなり、OFF時間監視タイマ6はリセットされる。したがって、信号Bはローレベルに変化せず、信号Cが信号EとしてMOS駆動回路3に出力され続ける。尚、図2において「×」で示しているのは、過去の信号の状態に応じてレベルがハイ,ローの何れかに定まるものである。
【0022】
ここで、OFF監視時間の設定について図3を参照して説明する。図3は、ランプを1秒(菱形),10秒(三角),60秒(四角)だけ点灯させた後に、OFF時間を変化させて再度点灯させた場合の突入電流のピーク(ピーク電流)を測定したものである。点灯時間が短い方がランプのフィラメント温度が上昇しないので、ピーク電流が高くなる。この図では、例えばピーク電流を40A未満に抑制するように、OFF監視時間を約6.8秒に設定している。また、ON監視時間の設定については、突入電流が流れた後に電流値が安定するまでの時間とすれば良いので、例えば100m秒程度に設定する(但し、図2(a)の時点(3)−(4)が示す時間幅とは一致していない)。
【0023】
以上のように本実施例によれば、PWM信号出力部4は、OFF時間監視タイマ6の計時時間がOFF監視時間を超えた後にランプ2の点灯が開始された場合は、その開始時点から一定期間において、当該ランプ2に通電が行われる期間の比率が通常の制御期間よりも高くなるように、出力ロジック部8のANDゲート9側を機能させてPWM信号のデューティを100%とするように設定する。したがって、ランプ2のフィラメントの温度が上昇しておらず抵抗値が低い状態にある場合に、突入電流をより早く減少させることができる。したがって、NチャネルMOSFET1の発熱を抑制して寿命を長期化させることができる。
【0024】
(第2実施例)
図4及び図5は第2実施例を示すものであり、第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分について説明する。第2実施例のPWM信号出力部4Aは、第1実施例とほぼ同様の構成であり、ANDゲート9の正論理入力端子には、初期PWM信号生成部14より搬送波周波数が24Hzでデューティが99%のPWM信号が与えられている点だけが相違している。
【0025】
ここで、デューティ99%のPWM信号はローレベルパルス幅が極めて狭く、実際にNチャネルMOSFET1をスイッチング制御する場合でも、各回路素子の応答遅れ等によりランプ2への印加電圧が完全にローレベルに到達することはない。したがって、疑似的な100%デューティであるとみなすことができる。その結果、図2(a)相当図である図5に示すように、ランプ2の点灯開始時に出力される信号Dは、一瞬だけローレベルに低下しようとする波形となっている。
以上のように第2実施例によれば、初期PWM信号生成部14は、PWM信号のデューティを、100%未満で且つ実質的に非通電期間が発生しない99%に設定するので、第1実施例と同様の効果が得られる。
【0026】
(第3実施例)
図6及び図7は第3実施例を示すものであり、第2実施例と異なる部分について説明する。第3実施例のPWM信号出力部4Bは、第2実施例の初期PWM信号生成部14に替わる初期PWM信号生成部15を備えており、初期PWM信号生成部15は、搬送波周波数が13.75Hz(55/4Hz)でデューティが50%のPWM信号を出力する。その結果、図7に示すように、ランプ2の点灯開始時に出力される信号Dは、ローレベルを示す期間があるが、時点(3)−(4)間におけるランプ2の通電比率は通常制御時のPWM信号に比較してより増加している。
以上のように第3実施例によれば、初期PWM信号生成部15は、ランプ2の点灯開始時に出力するPWM信号の搬送波周波数を、通常制御時のPWM信号よりも低く設定するので、第1実施例とほぼ同様の効果が得られる。
【0027】
(第4実施例)
図8及び図9は第4実施例を示すものであり、第2実施例等と異なる部分について説明する。第4実施例のPWM信号出力部4Cは、初期PWM信号生成部16備えており、この初期PWM信号生成部16は、搬送波周波数が55Hzでデューティが100%と99%とに交互に切り替わるPWM信号を出力する。例えば、デューティ99%のPWM信号とデューティ100%に相当する電源VCCレベルとを、搬送波に同期して交互に切り替えて出力する。その結果、図9に示すように、ランプ2の点灯開始時に出力される信号Dは、第2実施例と同様に、一瞬だけローレベルに低下しようとする波形となっている。
以上のように第4実施例によれば、初期PWM信号生成部16は、ランプ2の点灯開始時に出力するPWM信号のデューティを100%と99%とに交互に切り替えて出力するので、第2実施例と同様の効果が得られる。
【0028】
(第5実施例)
図10ないし図12は第5実施例を示すものである。第5実施例のPWM信号出力部21は、第1実施例のPWM信号出力部4に、初期PWM信号生成部22と、もう1つの出力ロジック部(通電期間比率調整手段)23とを備えて構成されている。初期PWM信号生成部22は、演算回路(デューティ調整手段)24を内蔵しており、演算回路24は、OFF時間監視タイマ6に替わるOFF時間監視タイマ25が出力するカウント値に応じて初期PWM信号のデューティを一次関数で演算する。そして、初期PWM信号生成部22は、演算回路24により決定されたデューティのPWM信号を出力する(搬送波周波数は、通常制御時のPWM信号と同じ)。
【0029】
出力ロジック部23は、2つのANDゲート26及び27とORゲート28とで構成されており、ANDゲート26,27の一方の入力端子(ANDゲート26側は負論理)には、OFF時間監視タイマ25が出力する信号Fが与えられている。そして、ANDゲート26の他方の入力端子は電源VCCに接続されており、ANDゲート27の他方の入力端子には、初期PWM信号生成部22が出力するPWM信号が与えられている。ANDゲート26,27の出力端子はORゲート28の入力端子に夫々接続され、ORゲート28の出力端子はANDゲート9の入力端子に、第1実施例の電源VCCに替えて接続されている。
【0030】
第5実施例では、OFF期間について閾値を2つ設定しており、1つは第1実施例のOFF監視時間よりも長く(例えば12.5秒)設定される閾値t1であり、もう1つは閾値t1よりも短く設定される閾値t2(例えば、2.6秒)である。閾値t2は、例えばピーク電流が25A以下となるOFF期間で設定している。
【0031】
OFF時間監視タイマ25は、OFF期間が閾値t2を超えると信号Aをローレベルにし、OFF期間が閾値t1を超えると信号Fをローレベルにする(図11(a)参照)。また、OFF期間が閾値t2を超えたが閾値t1に達しなかった場合は信号Fをハイレベルにする(図11(b)参照)。更に、OFF時間監視タイマ25には、ON時間監視タイマ7が出力する信号Bが与えられており、信号Bがハイレベルとなった場合も信号Fをハイレベルにする(図11(a)参照)。そして、t2<(OFF期間)<t1となった場合は、初期PWM信号生成部22が出力するPWM信号が、初期PWM信号としてMOS駆動回路3に与えられる。
【0032】
次に、第5実施例の作用について図11を参照して説明する。図11(a)は、t1<(OFF期間)となった場合であり、閾値t2を超えた時点で信号A,Bはローレベルとなり、閾値t1を超えた時点で信号Fはローレベルとなる。したがって、ON信号がハイレベルとなる時点(4)では、ANDゲート26及び9を介して信号Eは100%デューティとなる。すなわち、第1実施例の図2(a)と同様である。
【0033】
一方、図11(b)はt2<(OFF期間)<t1となった場合であり、ON信号がハイレベルとなる時点(3)で信号Aはハイレベルとなり、信号Fのハイレベルも確定する。そして、初期PWM信号生成部22は、時点(1)−(3)のOFF期間におけるOFF時間監視タイマ25のカウント値に応じて初期PWM信号のデューティを決定する。このデューティは、通常制御時のPWM信号のデューティより大きく、且つ100%未満となる範囲で設定する。これにより、時点(3)−(4)間に信号Eとして出力される一部のPWM信号のデューティは、50%よりも大きい値となる。
尚、図11(b)の場合、図11(a)と同様であれば信号Fは時点(3)までは不定となるはずだが、初期PWM信号のデューティ変化を信号Dとして示す便宜上、時点(3)以前もハイレベルに確定させて示している。
【0034】
以上のように第5実施例によれば、PWM信号出力部21は、ランプ2の点灯が開始された時点から一定期間に、PWM信号のデューティを、OFF期間の長さに応じて通常制御期間よりも長く、且つ100%未満に設定する演算回路24を内蔵した初期PWM信号生成部22を備える。そして、制御切替え手段は、消灯期間計時手段により計時された期間の長さが第1閾値t1未満であり、且つ第1閾値t1よりも低い値に設定される第2閾値t2を超えていた場合は、初期PWM信号生成部22を有効化するように切り替える。
すなわち、ランプ2の点灯を開始させる場合でも、それ以前にランプ2が消灯していた期間が短い場合はフィラメントの温度が低下しておらず、突入電流が大きなレベルで流れないことが想定されるので、初期PWM信号生成部22によりPWM信号のデューティを100%未満として通電比率を低下させることで、ランプ2の輝度を通常制御の状態に近づけることができる。
【0035】
(第6実施例)
図13は第6実施例を示すものであり、第1実施例と異なる部分について説明する。第6実施例のPWM信号出力部31は、第1実施例のPWM信号出力部4よりOFF時間監視タイマ6,ON時間監視タイマ7を削除し、それらに替えてコンパレータ32が配置されている。また、ランプ2の付近には、複数のダイオードの直列回路で構成される温度線センサ(温度検出手段)33が配置されている。
【0036】
温度センサ33を構成する最下段のダイオードのカソードはグランドに接続され、最上段のダイオードのアノードは、抵抗素子を介して電源VCCに接続されていると共に、コンパレータ32の反転入力端子に接続されている。また、コンパレータ32の非反転入力端子には、温度センサ33よりDi電圧の変化として検出される温度の閾値を設定する基準電圧が与えられている。尚、温度センサ33は、ランプ2に替えてNチャネルMOSFET1の温度を検出するようにしても良い。
【0037】
次に、第6実施例の作用について説明する。ランプ2が継続して点灯されている状態ではフィラメントの温度が高くなっているので、温度センサ33より出力されるDi電圧は低下して基準電圧を下回っている。したがって、コンパレータ32の出力信号はハイレベルとなっており、ANDゲート10及び11を介してPWM信号生成部5からのPWM信号がMOS駆動回路3に出力される。
そして、ランプ2の消灯時間が長くなるとフィラメントの温度が低下するので、Di電圧が上昇して基準電圧を上回ると、コンパレータ32の出力信号はローレベルとなる。すすると、ANDゲート9がハイレベルになるので、ORゲート12及びANDゲート11を介して信号Eはハイレベルになり、PWM信号デューティは100%、すなわちNチャネルMOSFET1はスイッチング動作せず、ランプ2は連続的に通電される。
【0038】
以上のように第6実施例によれば、PWM信号出力部31は、温度センサ33により検出されたランプ2の温度が所定の閾値を下回った場合は、PWM信号のデューティを100%にしてランプ2を連続的に通電させるので、ランプ2の温度が低い場合に突入電流が大きなレベルで流れることを防止でき、第1実施例と同様の効果が得られる。
【0039】
本発明は、上記し又は図面に記載された実施例に限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
ランプをローサイド駆動しても良く、半導体スイッチング素子はPチャネルMOSFETやバイポーラトランジスタ,IGBTであっても良い。
OFF期間は、PWM信号出力部5を停止させても良い。
搬送波周波数やデューティの設定は一例であり、個別の設計に応じて適宜変更して実施すれば良い。
【0040】
例えば、通常制御時のPWM搬送波周波数は55Hzに限ることなくより低い値やより高い値に設定しても良い。初期PWM信号の搬送波周波数も24Hzや13.75Hzに限ることなく、通常制御時よりも低い周波数に設定すれば良い。
また、疑似100デューティとしては99%に限ることなく、半導体スイッチング素子を介して出力される電圧が完全にローレベルとならない範囲でより小さい値に設定しても良い。
OFF監視時間や、100%デューティ信号や初期PWM信号等を出力する時間についても、使用するランプの特性等に応じて適宜変更すれば良い。
【符号の説明】
【0041】
図面中、1はNチャネルMOSFET(半導体スイッチング素子)、2はランプ、4はPWM信号出力部(駆動装置)、6はOFF時間監視タイマ(消灯期間計時手段)、7はON時間監視タイマ(制御切替え手段)、9はANDゲート(通電期間比率調整手段)、13は通電制御手段、14〜16は初期PWM信号出力部(通電期間比率調整手段)、21はPWM信号出力部(駆動装置)、23はロジック部(通電期間比率調整手段)、24は演算回路(デューティ調整手段)、31はPWM信号出力部(駆動装置)、33は温度センサ(温度検出手段)を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のランプをPWM(Pulse Width Modulation)制御により点灯させるランプ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両のヘッドランプなどを点灯させる場合に、フィラメントの温度が低下しており抵抗値が低い状態で通電を行うと、瞬間的に過大な突入電流(ラッシュカレント)が流れる。図14には、ランプに流れる突入電流を実測した波形を示す。このような突入電流を、フィラメントを保護するために低減する技術が特許文献1に開示されている。すなわち、特許文献1では、ランプの照度を一定に維持するためにPWM制御する場合、突入電流が流れる期間のPWMデューティを低下させることで、突入電流量を低減するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−165012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一方で、電流が多く流れる期間にスイッチングを行う回数を増やすと、半導体素子におけるスイッチング損失が増加して、半導体素子の寿命が低下するという問題がある。また、特許文献1のように通電期間を減少させると、フィラメントの温度が上昇しにくくなるため、突入電流のレベルが低下して安定するまでの時間も長引くようになる。その結果、スイッチング損失をより増加させることになる。例えば図15に示すように、(a)デューティ15%の場合と(b)デューティ80%の場合とでは(初期ピークは何れも75A程度)、デューティ15%の場合の方がより長い期間に亘って、電流のレベルが高い状態が継続していることが判る。
【0005】
加えて、車両の場合、最近は照度センサを備え、昼間においても例えばトンネル等を通過する際に周囲の照度が低下すると、自動的にヘッドランプを点灯させるように制御するものがある。すると、走行中にランプが点灯,消灯を断続的に繰り返す場合もあり、実際に通電が行われた状況に応じて、フィラメントの温度が様々に異なる。したがって、前回にランプを消灯した時点からそれほど時間が経過しないうちに再点灯させる場合は、フィラメントの温度がある程度上昇しているため、過大なレベルの電流は流れず、突入電流に対応した制御は実質的に不要となる場合もある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両用のランプに突入電流が流れる期間において、半導体素子のスイッチング損失を低減できるランプ駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のランプ駆動装置によれば、ランプの点灯が開始された時点から一定期間において、当該ランプに通電が行われる期間の比率が通常制御期間よりも高くなるように設定する通電期間比率調整手段を備える。ここで、「一定期間」は、ランプに突入電流が流れる期間よりも長くなるように設定する。そして、制御切替え手段は、消灯期間計時手段により計時されたランプ消灯期間の長さが所定の閾値を超えた場合は、通電期間比率調整手段を動作させるように制御形態を一時的に切り替える。
【0008】
すなわち、ランプが消灯されている期間が長くなりフィラメントの温度が低下している状態から点灯を開始させる場合は、通電期間比率調整手段を動作させて一定期間は当該ランプに通電が行われる期間の比率が通常制御期間よりも高くなるように設定する。これにより、PWM制御を行う場合でも点灯開始後の一定期間はランプに通電が行われる期間の比率が高くなるので、突入電流のレベルをより早く低下させることができる。したがって、半導体スイッチング素子の発熱を抑制して寿命を長期化させることができる。
【0009】
請求項2記載のランプ駆動装置によれば、ランプの点灯が開始された時点から一定期間に、PWM信号のデューティを、通常制御期間よりも長く且つ通電期間比率調整手段により設定される通電期間よりも短くなるように設定するデューティ調整手段を備える。そして、制御切替え手段は、消灯期間計時手段により計時された期間の長さが第1閾値未満であり、且つ、第1閾値よりも低い値に設定される第2閾値を超えていた場合は、デューティ調整手段を動作させるように切り替える。
【0010】
すなわち、ランプの点灯を開始させる場合でも、それ以前にランプが消灯していた期間が短い場合はフィラメントの温度が低下しておらず、突入電流が大きなレベルで流れないことが想定される。したがって、消灯期間計時手段により計時された消灯期間の長さが第1閾値未満で第2閾値を超えている場合は、デューティ調整手段によってPWM信号のデューティを通電期間比率調整手段で設定される通電期間よりも短くして通電比率を低下させることで、ランプの輝度を通常制御の状態に近づけることができる。
【0011】
請求項3記載のランプ駆動装置によれば、制御切替え手段は、温度検出手段により検出されたランプ又は半導体スイッチング素子の温度が所定の閾値を下回った場合は、通電期間比率調整手段を有効化する。すなわち、ランプ又は半導体スイッチング素子の温度が低い場合は突入電流が大きなレベルで流れることを示すので、そのような場合に応じて通電期間比率調整手段を有効化して一定期間は当該ランプに通電が行われる期間の比率が通常制御期間よりも高くなるように設定する。これにより請求項1と同様の効果が得られる。
【0012】
請求項4ないし6記載のランプ駆動装置によれば、通電期間比率調整手段を、PWM信号のデューティを100%に設定する(請求項4)、また、デューティを100%未満で且つ実質的に非通電期間が発生しない値(疑似100%デューティ)に設定する(請求項5)、或いは、デューティを100%と疑似100%デューティとに切り替えて出力する(請求項6)構成とする。したがって、何れの場合も、点灯開始後の一定期間にランプに通電が行われる期間の比率を高くすることができる。
【0013】
請求項7記載のランプ駆動装置によれば、通電期間比率調整手段は、PWM信号の搬送波周波数を、通常制御時よりも低く設定する構成とする。すなわち、搬送波周波数を低下させることで、デューティが同一であっても通常制御期間よりもランプの通電比率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施例であり、ランプ駆動装置の構成を示す機能ブロック図
【図2】PWM信号出力部の動作を示すタイミングチャート
【図3】OFF監視時間の設定を説明する図
【図4】第2実施例を示す図1相当図
【図5】図2(a)相当図
【図6】第3実施例を示す図1相当図
【図7】図5相当図
【図8】第4実施例を示す図1相当図
【図9】図5相当図
【図10】第5実施例を示す図1相当図
【図11】図2相当図
【図12】図3相当図
【図13】第6実施例を示す図1相当図
【図14】従来技術を説明するものでランプに流れる突入電流を実測した波形を示す図
【図15】(a)デューティ15%の場合と(b)デューティ80%の場合とで、突入電流が流れる状態の測定結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施例)
以下、第1実施例について図1ないし図3を参照して説明する。図1は、ランプ駆動装置の構成を示す機能ブロック図である。電源+Bとグランドとの間には、NチャネルMOSFET(半導体スイッチング素子)1とランプ2との直列回路が接続されている。尚、ランプ2については抵抗負荷のシンボルで示している。NチャネルMOSFET1は、MOS駆動回路3を介してPWM信号がゲート信号として与えられ、ランプ2をハイサイド駆動する。MOS駆動回路3には、その後段に配置されているPWM信号出力部(駆動装置)4により生成出力されるPWM信号が与えられる。
【0016】
PWM信号出力部4は、PWM信号生成部5,OFF時間監視タイマ(消灯期間計時手段)6,ON時間監視タイマ(制御切替え手段)7,出力ロジック部8で構成されている。PWM信号生成部5は、ランプ2を通常制御時に点灯させるため、例えば搬送波周波数55Hzでデューティ50%のPWM信号(信号C)を生成して出力する。OFF時間監視タイマ6には、ランプ2の点灯制御信号であるON信号がカウント制御信号として与えられており、そのON信号がインアクティブとなるローレベルを示すOFF期間を計時するタイマである。
【0017】
OFF時間監視タイマ6は、内部にOFF監視時間を保持しており、ON信号がハイレベルの場合はリセットされている。そして、図示しないクロック信号(PWM搬送波の周波数よりも十分に高い周波数とする)に基づいてON信号がローレベルを示す期間に計時を行い、その計時時間が上記OFF監視時間を超えると信号Aをハイレベルからローレベルに変化させる。信号Aは、ON時間監視タイマ7にカウント制御信号として与えられており、ON時間監視タイマ7は、信号Aがローレベルになるとリセットされて出力信号である信号Bをローレベルにし、信号Aのレベルがローからハイに変化すると計時を開始する。ON時間監視タイマ7は、内部にON監視時間のデータを保持しており、その計時時間がON監視時間に一致すると信号Bのレベルをローからハイに変化させる。
【0018】
出力ロジック部8は、3つのANDゲート9〜11とORゲート12とで構成されており、信号BはANDゲート9,10の一方の入力端子(ANDゲート9側は負論理)に与えられている。そして、ANDゲート9(通電期間比率調整手段)の他方の入力端子は電源VCCに接続されており、ANDゲート10の他方の入力端子には信号Cが与えられている。ANDゲート9,10の出力端子はORゲート12の入力端子に夫々接続され、ORゲート12の出力端子はANDゲート11の一方の入力端子に接続されている。ANDゲート11の他方の入力端子にはON信号が与えられ、ANDゲート11の出力端子はMOS駆動回路3の入力端子に接続されており、MOS駆動回路3に信号Eが与えられる。
尚、以上の構成において、PWM信号生成部5,ANDゲート10,ORゲート12及びANDゲート11は、通電制御手段13を構成している。
【0019】
次に、本実施例の作用について図2及び図3も参照して説明する。図2は、PWM信号出力部4の動作を示すタイミングチャートであり、(a)はOFF時間監視タイマ6が計時するOFF期間がOFF監視時間を超えた場合、(b)はOFF監視時間を超えない場合を示す。ON信号がローレベルになるOFF期間(ランプ2の消灯期間)では、ANDゲート11を介して出力される信号Eはローレベルとなっており、OFF時間監視タイマ6が時点(1)から計時動作を行っている。
【0020】
そして、時点(2)でOFF期間がOFF監視時間に達すると、信号Aはローレベルになり、ON時間監視タイマ7はリセットされて信号Bもローレベルになる。車両の乗員がランプスイッチを操作するか、若しくは車両外部の照度を検出する照度センサが照度の低下を検出することでON信号がハイレベルになると(時点(3))、ON時間監視タイマ7は計時動作を開始する。この時、ANDゲート9がハイレベルになるので、ORゲート12及びANDゲート11を介して信号Eはハイレベルになり、PWM信号デューティは100%になる。すなわち、NチャネルMOSFET1はスイッチング動作せず、ランプ2は連続的に通電される。
【0021】
この状態から、ON時間監視タイマ7の計時時間がON監視時間に達すると(時点(4))信号Bがハイレベルとなり、ANDゲート11を介してPWM信号生成部5が出力する通常制御のPWM信号(信号C)が、信号EとしてMOS駆動回路3に出力される。一方、図2(b)の場合は、OFF期間がOFF監視時間に達する以前にON信号がハイレベルとなり、OFF時間監視タイマ6はリセットされる。したがって、信号Bはローレベルに変化せず、信号Cが信号EとしてMOS駆動回路3に出力され続ける。尚、図2において「×」で示しているのは、過去の信号の状態に応じてレベルがハイ,ローの何れかに定まるものである。
【0022】
ここで、OFF監視時間の設定について図3を参照して説明する。図3は、ランプを1秒(菱形),10秒(三角),60秒(四角)だけ点灯させた後に、OFF時間を変化させて再度点灯させた場合の突入電流のピーク(ピーク電流)を測定したものである。点灯時間が短い方がランプのフィラメント温度が上昇しないので、ピーク電流が高くなる。この図では、例えばピーク電流を40A未満に抑制するように、OFF監視時間を約6.8秒に設定している。また、ON監視時間の設定については、突入電流が流れた後に電流値が安定するまでの時間とすれば良いので、例えば100m秒程度に設定する(但し、図2(a)の時点(3)−(4)が示す時間幅とは一致していない)。
【0023】
以上のように本実施例によれば、PWM信号出力部4は、OFF時間監視タイマ6の計時時間がOFF監視時間を超えた後にランプ2の点灯が開始された場合は、その開始時点から一定期間において、当該ランプ2に通電が行われる期間の比率が通常の制御期間よりも高くなるように、出力ロジック部8のANDゲート9側を機能させてPWM信号のデューティを100%とするように設定する。したがって、ランプ2のフィラメントの温度が上昇しておらず抵抗値が低い状態にある場合に、突入電流をより早く減少させることができる。したがって、NチャネルMOSFET1の発熱を抑制して寿命を長期化させることができる。
【0024】
(第2実施例)
図4及び図5は第2実施例を示すものであり、第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分について説明する。第2実施例のPWM信号出力部4Aは、第1実施例とほぼ同様の構成であり、ANDゲート9の正論理入力端子には、初期PWM信号生成部14より搬送波周波数が24Hzでデューティが99%のPWM信号が与えられている点だけが相違している。
【0025】
ここで、デューティ99%のPWM信号はローレベルパルス幅が極めて狭く、実際にNチャネルMOSFET1をスイッチング制御する場合でも、各回路素子の応答遅れ等によりランプ2への印加電圧が完全にローレベルに到達することはない。したがって、疑似的な100%デューティであるとみなすことができる。その結果、図2(a)相当図である図5に示すように、ランプ2の点灯開始時に出力される信号Dは、一瞬だけローレベルに低下しようとする波形となっている。
以上のように第2実施例によれば、初期PWM信号生成部14は、PWM信号のデューティを、100%未満で且つ実質的に非通電期間が発生しない99%に設定するので、第1実施例と同様の効果が得られる。
【0026】
(第3実施例)
図6及び図7は第3実施例を示すものであり、第2実施例と異なる部分について説明する。第3実施例のPWM信号出力部4Bは、第2実施例の初期PWM信号生成部14に替わる初期PWM信号生成部15を備えており、初期PWM信号生成部15は、搬送波周波数が13.75Hz(55/4Hz)でデューティが50%のPWM信号を出力する。その結果、図7に示すように、ランプ2の点灯開始時に出力される信号Dは、ローレベルを示す期間があるが、時点(3)−(4)間におけるランプ2の通電比率は通常制御時のPWM信号に比較してより増加している。
以上のように第3実施例によれば、初期PWM信号生成部15は、ランプ2の点灯開始時に出力するPWM信号の搬送波周波数を、通常制御時のPWM信号よりも低く設定するので、第1実施例とほぼ同様の効果が得られる。
【0027】
(第4実施例)
図8及び図9は第4実施例を示すものであり、第2実施例等と異なる部分について説明する。第4実施例のPWM信号出力部4Cは、初期PWM信号生成部16備えており、この初期PWM信号生成部16は、搬送波周波数が55Hzでデューティが100%と99%とに交互に切り替わるPWM信号を出力する。例えば、デューティ99%のPWM信号とデューティ100%に相当する電源VCCレベルとを、搬送波に同期して交互に切り替えて出力する。その結果、図9に示すように、ランプ2の点灯開始時に出力される信号Dは、第2実施例と同様に、一瞬だけローレベルに低下しようとする波形となっている。
以上のように第4実施例によれば、初期PWM信号生成部16は、ランプ2の点灯開始時に出力するPWM信号のデューティを100%と99%とに交互に切り替えて出力するので、第2実施例と同様の効果が得られる。
【0028】
(第5実施例)
図10ないし図12は第5実施例を示すものである。第5実施例のPWM信号出力部21は、第1実施例のPWM信号出力部4に、初期PWM信号生成部22と、もう1つの出力ロジック部(通電期間比率調整手段)23とを備えて構成されている。初期PWM信号生成部22は、演算回路(デューティ調整手段)24を内蔵しており、演算回路24は、OFF時間監視タイマ6に替わるOFF時間監視タイマ25が出力するカウント値に応じて初期PWM信号のデューティを一次関数で演算する。そして、初期PWM信号生成部22は、演算回路24により決定されたデューティのPWM信号を出力する(搬送波周波数は、通常制御時のPWM信号と同じ)。
【0029】
出力ロジック部23は、2つのANDゲート26及び27とORゲート28とで構成されており、ANDゲート26,27の一方の入力端子(ANDゲート26側は負論理)には、OFF時間監視タイマ25が出力する信号Fが与えられている。そして、ANDゲート26の他方の入力端子は電源VCCに接続されており、ANDゲート27の他方の入力端子には、初期PWM信号生成部22が出力するPWM信号が与えられている。ANDゲート26,27の出力端子はORゲート28の入力端子に夫々接続され、ORゲート28の出力端子はANDゲート9の入力端子に、第1実施例の電源VCCに替えて接続されている。
【0030】
第5実施例では、OFF期間について閾値を2つ設定しており、1つは第1実施例のOFF監視時間よりも長く(例えば12.5秒)設定される閾値t1であり、もう1つは閾値t1よりも短く設定される閾値t2(例えば、2.6秒)である。閾値t2は、例えばピーク電流が25A以下となるOFF期間で設定している。
【0031】
OFF時間監視タイマ25は、OFF期間が閾値t2を超えると信号Aをローレベルにし、OFF期間が閾値t1を超えると信号Fをローレベルにする(図11(a)参照)。また、OFF期間が閾値t2を超えたが閾値t1に達しなかった場合は信号Fをハイレベルにする(図11(b)参照)。更に、OFF時間監視タイマ25には、ON時間監視タイマ7が出力する信号Bが与えられており、信号Bがハイレベルとなった場合も信号Fをハイレベルにする(図11(a)参照)。そして、t2<(OFF期間)<t1となった場合は、初期PWM信号生成部22が出力するPWM信号が、初期PWM信号としてMOS駆動回路3に与えられる。
【0032】
次に、第5実施例の作用について図11を参照して説明する。図11(a)は、t1<(OFF期間)となった場合であり、閾値t2を超えた時点で信号A,Bはローレベルとなり、閾値t1を超えた時点で信号Fはローレベルとなる。したがって、ON信号がハイレベルとなる時点(4)では、ANDゲート26及び9を介して信号Eは100%デューティとなる。すなわち、第1実施例の図2(a)と同様である。
【0033】
一方、図11(b)はt2<(OFF期間)<t1となった場合であり、ON信号がハイレベルとなる時点(3)で信号Aはハイレベルとなり、信号Fのハイレベルも確定する。そして、初期PWM信号生成部22は、時点(1)−(3)のOFF期間におけるOFF時間監視タイマ25のカウント値に応じて初期PWM信号のデューティを決定する。このデューティは、通常制御時のPWM信号のデューティより大きく、且つ100%未満となる範囲で設定する。これにより、時点(3)−(4)間に信号Eとして出力される一部のPWM信号のデューティは、50%よりも大きい値となる。
尚、図11(b)の場合、図11(a)と同様であれば信号Fは時点(3)までは不定となるはずだが、初期PWM信号のデューティ変化を信号Dとして示す便宜上、時点(3)以前もハイレベルに確定させて示している。
【0034】
以上のように第5実施例によれば、PWM信号出力部21は、ランプ2の点灯が開始された時点から一定期間に、PWM信号のデューティを、OFF期間の長さに応じて通常制御期間よりも長く、且つ100%未満に設定する演算回路24を内蔵した初期PWM信号生成部22を備える。そして、制御切替え手段は、消灯期間計時手段により計時された期間の長さが第1閾値t1未満であり、且つ第1閾値t1よりも低い値に設定される第2閾値t2を超えていた場合は、初期PWM信号生成部22を有効化するように切り替える。
すなわち、ランプ2の点灯を開始させる場合でも、それ以前にランプ2が消灯していた期間が短い場合はフィラメントの温度が低下しておらず、突入電流が大きなレベルで流れないことが想定されるので、初期PWM信号生成部22によりPWM信号のデューティを100%未満として通電比率を低下させることで、ランプ2の輝度を通常制御の状態に近づけることができる。
【0035】
(第6実施例)
図13は第6実施例を示すものであり、第1実施例と異なる部分について説明する。第6実施例のPWM信号出力部31は、第1実施例のPWM信号出力部4よりOFF時間監視タイマ6,ON時間監視タイマ7を削除し、それらに替えてコンパレータ32が配置されている。また、ランプ2の付近には、複数のダイオードの直列回路で構成される温度線センサ(温度検出手段)33が配置されている。
【0036】
温度センサ33を構成する最下段のダイオードのカソードはグランドに接続され、最上段のダイオードのアノードは、抵抗素子を介して電源VCCに接続されていると共に、コンパレータ32の反転入力端子に接続されている。また、コンパレータ32の非反転入力端子には、温度センサ33よりDi電圧の変化として検出される温度の閾値を設定する基準電圧が与えられている。尚、温度センサ33は、ランプ2に替えてNチャネルMOSFET1の温度を検出するようにしても良い。
【0037】
次に、第6実施例の作用について説明する。ランプ2が継続して点灯されている状態ではフィラメントの温度が高くなっているので、温度センサ33より出力されるDi電圧は低下して基準電圧を下回っている。したがって、コンパレータ32の出力信号はハイレベルとなっており、ANDゲート10及び11を介してPWM信号生成部5からのPWM信号がMOS駆動回路3に出力される。
そして、ランプ2の消灯時間が長くなるとフィラメントの温度が低下するので、Di電圧が上昇して基準電圧を上回ると、コンパレータ32の出力信号はローレベルとなる。すすると、ANDゲート9がハイレベルになるので、ORゲート12及びANDゲート11を介して信号Eはハイレベルになり、PWM信号デューティは100%、すなわちNチャネルMOSFET1はスイッチング動作せず、ランプ2は連続的に通電される。
【0038】
以上のように第6実施例によれば、PWM信号出力部31は、温度センサ33により検出されたランプ2の温度が所定の閾値を下回った場合は、PWM信号のデューティを100%にしてランプ2を連続的に通電させるので、ランプ2の温度が低い場合に突入電流が大きなレベルで流れることを防止でき、第1実施例と同様の効果が得られる。
【0039】
本発明は、上記し又は図面に記載された実施例に限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
ランプをローサイド駆動しても良く、半導体スイッチング素子はPチャネルMOSFETやバイポーラトランジスタ,IGBTであっても良い。
OFF期間は、PWM信号出力部5を停止させても良い。
搬送波周波数やデューティの設定は一例であり、個別の設計に応じて適宜変更して実施すれば良い。
【0040】
例えば、通常制御時のPWM搬送波周波数は55Hzに限ることなくより低い値やより高い値に設定しても良い。初期PWM信号の搬送波周波数も24Hzや13.75Hzに限ることなく、通常制御時よりも低い周波数に設定すれば良い。
また、疑似100デューティとしては99%に限ることなく、半導体スイッチング素子を介して出力される電圧が完全にローレベルとならない範囲でより小さい値に設定しても良い。
OFF監視時間や、100%デューティ信号や初期PWM信号等を出力する時間についても、使用するランプの特性等に応じて適宜変更すれば良い。
【符号の説明】
【0041】
図面中、1はNチャネルMOSFET(半導体スイッチング素子)、2はランプ、4はPWM信号出力部(駆動装置)、6はOFF時間監視タイマ(消灯期間計時手段)、7はON時間監視タイマ(制御切替え手段)、9はANDゲート(通電期間比率調整手段)、13は通電制御手段、14〜16は初期PWM信号出力部(通電期間比率調整手段)、21はPWM信号出力部(駆動装置)、23はロジック部(通電期間比率調整手段)、24は演算回路(デューティ調整手段)、31はPWM信号出力部(駆動装置)、33は温度センサ(温度検出手段)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプの輝度を制御するため、PWM(Pulse Width Modulation)信号に基づき半導体スイッチング素子を介して前記ランプに通電を行う通電制御手段と、
前記ランプの点灯が開始された時点から一定期間において、前記通電制御手段を介して前記ランプに通電が行われる期間の比率が、通常制御期間よりも高くなるように設定する通電期間比率調整手段と、
前記ランプの点灯を開始する以前に、前記ランプが消灯されていた期間を計時する消灯期間計時手段と、
この消灯期間計時手段により計時された期間の長さが予め定められた所定の閾値を超えた後に前記ランプの点灯が開始される場合に、前記通電期間比率調整手段を動作させる制御切替え手段とを備えることを特徴とするランプ駆動装置。
【請求項2】
前記ランプの点灯が開始された時点から一定期間において、前記PWM信号のデューティを、通常制御期間よりも長く且つ前記通電期間比率調整手段により設定される通電期間よりも短くなるように設定するデューティ調整手段を備え、
前記所定の閾値を第1閾値として、
前記制御切替え手段は、前記消灯期間計時手段により計時された期間の長さが前記第1閾値未満であり、且つ、前記第1閾値よりも低い値に設定される第2閾値を超えていた場合は、前記デューティ調整手段を動作させるように切り替えることを特徴とする請求項1記載のランプ駆動装置。
【請求項3】
ランプの輝度を制御するため、PWM(Pulse Width Modulation)信号に基づき半導体スイッチング素子を介して前記ランプに通電を行う通電制御手段と、
前記ランプの点灯が開始された時点から一定期間において、前記通電制御手段を介して前記ランプに通電が行われる期間の比率が、通常制御期間よりも高くなるように設定する通電期間比率調整手段と、
前記ランプ又は前記半導体スイッチング素子の温度を検出する温度検出手段を備え、この温度検出手段により検出された温度が予め定められた所定の閾値を下回っている場合は、前記通電期間比率調整手段を有効化するように切り替える制御切替え手段とを備えることを特徴とするランプ駆動装置。
【請求項4】
前記通電期間比率調整手段は、前記PWM信号のデューティを100%に設定することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のランプ駆動装置。
【請求項5】
前記通電期間比率調整手段は、前記PWM信号のデューティを、100%未満で且つ実質的に非通電期間が発生しない値に設定することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のランプ駆動装置。
【請求項6】
前記通電期間比率調整手段は、前記PWM信号のデューティを100%と、100%未満で且つ実質的に非通電期間が発生しない値とに切り替えて設定することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のランプ駆動装置。
【請求項7】
前記通電期間比率調整手段は、前記PWM信号の搬送波周波数を、通常制御時よりも低く設定することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のランプ駆動装置。
【請求項1】
ランプの輝度を制御するため、PWM(Pulse Width Modulation)信号に基づき半導体スイッチング素子を介して前記ランプに通電を行う通電制御手段と、
前記ランプの点灯が開始された時点から一定期間において、前記通電制御手段を介して前記ランプに通電が行われる期間の比率が、通常制御期間よりも高くなるように設定する通電期間比率調整手段と、
前記ランプの点灯を開始する以前に、前記ランプが消灯されていた期間を計時する消灯期間計時手段と、
この消灯期間計時手段により計時された期間の長さが予め定められた所定の閾値を超えた後に前記ランプの点灯が開始される場合に、前記通電期間比率調整手段を動作させる制御切替え手段とを備えることを特徴とするランプ駆動装置。
【請求項2】
前記ランプの点灯が開始された時点から一定期間において、前記PWM信号のデューティを、通常制御期間よりも長く且つ前記通電期間比率調整手段により設定される通電期間よりも短くなるように設定するデューティ調整手段を備え、
前記所定の閾値を第1閾値として、
前記制御切替え手段は、前記消灯期間計時手段により計時された期間の長さが前記第1閾値未満であり、且つ、前記第1閾値よりも低い値に設定される第2閾値を超えていた場合は、前記デューティ調整手段を動作させるように切り替えることを特徴とする請求項1記載のランプ駆動装置。
【請求項3】
ランプの輝度を制御するため、PWM(Pulse Width Modulation)信号に基づき半導体スイッチング素子を介して前記ランプに通電を行う通電制御手段と、
前記ランプの点灯が開始された時点から一定期間において、前記通電制御手段を介して前記ランプに通電が行われる期間の比率が、通常制御期間よりも高くなるように設定する通電期間比率調整手段と、
前記ランプ又は前記半導体スイッチング素子の温度を検出する温度検出手段を備え、この温度検出手段により検出された温度が予め定められた所定の閾値を下回っている場合は、前記通電期間比率調整手段を有効化するように切り替える制御切替え手段とを備えることを特徴とするランプ駆動装置。
【請求項4】
前記通電期間比率調整手段は、前記PWM信号のデューティを100%に設定することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のランプ駆動装置。
【請求項5】
前記通電期間比率調整手段は、前記PWM信号のデューティを、100%未満で且つ実質的に非通電期間が発生しない値に設定することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のランプ駆動装置。
【請求項6】
前記通電期間比率調整手段は、前記PWM信号のデューティを100%と、100%未満で且つ実質的に非通電期間が発生しない値とに切り替えて設定することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のランプ駆動装置。
【請求項7】
前記通電期間比率調整手段は、前記PWM信号の搬送波周波数を、通常制御時よりも低く設定することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のランプ駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−15048(P2012−15048A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152882(P2010−152882)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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