説明

リアクトル、およびその製造方法

【課題】コイルの絶縁被覆における欠陥が抑制されたリアクトルを提供する。
【解決手段】コイル10の内側に内側コア部20iを、コイル10の外側に外側コア部20oを形成して、コイル10の励磁により両コア部20i,20oを通る閉磁路が形成されるように両コア部20i,20oがつなげられたリアクトル1である。リアクトル1のコイル10は、螺旋状に巻回された導電性を有する線状の導体10cと、導体10cの巻回形状に沿って螺旋状に導体10cの表面を覆う絶縁被覆10rと、を備え、この絶縁被覆10rは、電着塗装により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧の昇圧動作や降圧動作を行う電力変換装置の構成部品などとして利用されるリアクトルと、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電圧の昇圧動作や降圧動作を行う電力変換装置の構成部品としてリアクトルが使用されている。例えば、特許文献1には、磁性コア中にコイルを配置することで構成されるリアクトルが開示されている。このリアクトルの場合、コイルの励磁により、磁性コアにおけるコイルの内部に配される部分(以下、内側コア部)と、コイルの外側を覆う部分(以下、外側コア部)とを通る閉磁路が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−33051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のリアクトルでは、リアクトルの作製に使用するコイルが導体の表面に絶縁被覆を形成した巻線を巻回して形成されたものであるため、巻回時に絶縁被覆が損傷している恐れがある。特に、屈曲部の曲げ半径の内方側と外方側で、絶縁被覆に割れや剥離などの欠陥が生じる恐れがある。このように絶縁被覆に損傷があると、コイルの導体と、内側コア部や外側コア部との間に導通が生じ、リアクトルの磁気特性が低下してしまう。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、コイルの絶縁被覆における欠陥が抑制されたリアクトルと、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明リアクトルは、コイルの内側に内側コア部を、コイルの外側に外側コア部を形成して、コイルの励磁により両コア部を通る閉磁路が形成されるように両コア部がつなげられたリアクトルである。本発明リアクトルのコイルは、螺旋状に巻回された導電性を有する線状の導体と、導体の巻回形状に沿って螺旋状に導体の表面を覆う絶縁被覆と、を備え、この絶縁被覆は、導体を螺旋状に巻回した後電着塗装により形成されたものであることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、コイルの外周に形成される絶縁被覆に割れや剥離などの欠陥が殆ど生じていないリアクトルであるといえる。従来の構成では、外周に予め絶縁被覆を施した線状の導体を巻回するため、絶縁被覆に過大な曲げ応力が作用し、その曲げ応力が絶縁被覆の欠陥の原因となっていた。これに対して、本発明の構成では、導体の外周に設けられる絶縁被覆が、導体を巻回した後に形成されたものであるため、絶縁被覆にはそもそも曲げ応力が作用しない。これが、本発明におけるコイルの絶縁被覆に欠陥が殆どない理由である。
【0008】
本発明リアクトルの一形態として、絶縁被覆は、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、またはポリアミドイミド樹脂を含むことが好ましい。
【0009】
これらエポキシ樹脂や、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂は、電着塗装に好適な水溶性で、かつ絶縁性に優れる。
【0010】
本発明リアクトルの一形態として、外側コア部は、非磁性のマトリックス中に軟磁性粉末が分散されてなる構成としても良い。
【0011】
後述する実施形態に示すように、内側コア部と外側コア部とは異なる磁気特性を有するように構成することができる。特に、外側コア部を、内側コア部よりも低い比透磁率とすることが好ましい。その場合、外側コア部を、マトリックス中に軟磁性粉末を分散させる構成とすると、内側コア部の磁気特性に最適化した外側コア部とすることができる。これは、マトリックス中に軟磁性粉末を分散させる構成は、両者の比率を調節することで、コア部の比透磁率を容易に変化させることができる構成であるからである。
【0012】
本発明リアクトルの製造方法は、コイルの内側に内側コア部を、コイルの外側に外側コア部を形成して、コイルの励磁により両コア部を通る閉磁路が形成されるように両コア部がつなげられたリアクトルを製造するためのリアクトルの製造方法である。この本発明リアクトルの製造方法は、螺旋状に巻回された導体と、導体の巻回形状に沿って螺旋状に導体の外周を覆う絶縁被覆とを備えるコイルを用意するコイル準備工程と、コイルの内部に内側コア部を配置すると共に、この内側コア部に繋がるようにコイルの外側に外側コア部を配置する組立工程とを備える。コイル準備工程は更に、導電性を有する線状の導体を螺旋状に巻回するコイル成形工程と、螺旋状に巻回された導体の表面に、電着塗装により絶縁被覆を形成する被覆形成工程と、を有する。
【0013】
本発明リアクトルの製造方法によれば、リアクトルに備わるコイルを準備するにあたり、導体をまず巻回してから、その巻回した導体の外周面を覆うように絶縁被膜を形成するため、絶縁被膜に殆ど欠陥のないコイルを備える本発明リアクトルを作製することができる。
【0014】
本発明リアクトルの製造方法の一形態として、コイル成形工程において、螺旋状に巻回される導体のターン間に5〜300μmの隙間が形成されるように導体を巻回することが好ましい。
【0015】
巻回された導体のターン間に隙間を設けることで、被覆形成工程において、導体の外周面のうち、隣接するターン間の対向する部分にも余すところなく絶縁被覆を形成できる。また、所定の隙間によって、隣接するターン間を繋ぐように絶縁被覆が形成されることを確実に抑制でき、それによって導体の隣接するターン同士が絶縁被覆で一体にモールドされたようになることを防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明リアクトルは、リアクトルに備わるコイルの絶縁被覆に殆ど欠陥が生じていないリアクトルである。そのため、本発明リアクトルは優れた磁気特性を有し、例えばハイブリット自動車における電圧変換装置の構成部品として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(A)は実施形態に係るリアクトルの概略図、(B)は(A)の縦断面図、(C)はコイルのあるターンにおける断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。実施形態のリアクトルは、ハイブリッド自動車などにおいて電圧の昇圧・降圧動作を行う電力変換装置の一部として利用されるリアクトルを想定している。
【0019】
<実施形態1>
[全体構成]
図1に示すリアクトル1は、巻線を巻回してなるコイル10と、磁性コア20とを備える。磁性コア20は、主にコイル10内部に配される内側コア部20iと、コイル10の外周を覆う外側コア部20oとに分けることができる。このリアクトル1のコイル10に電流を流せば、図1(B)中の矢印に示すように、内側コア部20iと外側コア部20oを通る閉磁路が形成される。以下、このリアクトル1の各構成を詳細に説明し、次に、リアクトル1の製造方法を説明する。
【0020】
(コイル)
コイル10は、図1(C)の断面図に示すように、螺旋状に巻回された導電材料からなる線状の導体10cと、その導体10cの外周に形成される絶縁被覆10rとを有する。絶縁被覆10rは、後述するように、導体10cを螺旋状に巻回した後に、電着塗装で導体10cの外周に被覆される。このコイル10の両端部11,12は、図1(A)に示すように導通端子として磁性コア20から引き出されている。
【0021】
コイル10に備わる導体10cは、リアクトル1の使用態様に応じた導電性を有する線状体であれば良く、その材質や断面形状は特に限定されない。導体10cの材質には、例えば、銅や銅合金、アルミニウムやアルミニウム合金などを利用することができる。また、導体10cの断面形状は、矩形を含む多角形であっても、円形を含む楕円形であっても良い。
【0022】
また、導体10cは、その外周面に絶縁被覆10rを形成する前に、螺旋状に巻回される。その際の導体10cの巻回形状も特に限定されない。具体的には、巻回された導体10cを螺旋軸方向から見たときの端面形状が、略円形や、略楕円形、略矩形、レーストラック形となるように導体10cを巻回すると良い。ここで、図1(A)に例示される導体(コイル10)は、端面が略円形となるように巻回された導体(コイル10)である。その他、断面矩形の平角線(導体10c)をエッジワイズ巻すれば、端面が略矩形となるように巻回された導体となる。
【0023】
上記巻回された導体10cの外周面全体(コイル10の端子となる両端部11,12の近傍以外)は、導体10cを巻回した後に形成される絶縁被覆10rに覆われている。絶縁被覆10rは、導体10cに巻回形状に沿って螺旋状に導体10cの表面を覆っており、コイル10における隣接するターン間で対向する絶縁被覆10rは、一体化していない。
【0024】
上記絶縁被覆10rは、電着塗装で形成されたものである。そのことは、赤外線分光分析により、絶縁被覆10rにおける吸収または反射スペクトルを調べることにより確認することができる。また、絶縁被覆10rが、導体10cを螺旋状に巻回した後に形成されたことは、絶縁被覆10rに歪が入っていないこと、例えば、導体を螺旋状の直径方向に切断した断面の絶縁被膜の厚さが螺旋の外側が内側より薄くなく、均一であることにより確認することができる。通常、絶縁被覆を有する導体を巻回すれば、特に屈曲部の内周側で絶縁被覆に皺ができ易く、その皺を目視できることが多い。
【0025】
上記絶縁被覆10rの主材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は、電着塗装に好適で、しかも優れた絶縁性を有する点で好ましい。また、絶縁被覆10rの平均厚さは、コイル10のターン間の絶縁を確保するために、部分放電開始電圧に応じた厚さにすることが好ましい。
【0026】
(磁性コア)
リアクトル1の磁性コア20は、既述のように内側コア部20iと、外側コア部20oとに分けられる。これら内側コア部20iと外側コア部20oは、同一の磁気特性を有するように構成しても良いし、異なる磁気特性を有するように構成しても良い。後者の場合、外側コア部20oの比透磁率が、内側コア部20iの比透磁率よりも小さくなるように両コア部20i,20oを構成することが好ましい。ここで、一般に、比透磁率が高くなると、飽和磁束密度も高くなり、比透磁率が低くなると、飽和磁束密度も低くなる。つまり、『外側コア部20oの比透磁率』<『内側コア部20iの比透磁率』とすると、『外側コア部20oの飽和磁束密度』<『内側コア部20iの飽和磁束密度』となる。このような構成とすることで、両コア部20i,20oの磁気特性を同一とした場合に比べて、同じ性能でありながらコンパクトなリアクトル1となる。
【0027】
磁性コア20の両コア部20i,20oの具体的な構成には、大きく分けて次の4つがある。まず、第一の構成は、絶縁被膜を有する複数の電磁鋼板を積層した積層鋼板を使用した構成である。
【0028】
第二の構成は、軟磁性金属粒子の表面に絶縁性の膜を形成した軟磁性粉末を含む粉体を加圧成形し、その成形体を焼成することで得られる圧粉磁心を使用した構成である。軟磁性金属粒子としてはFeやFe合金を使用でき、絶縁性の膜としてはリン酸塩やシリコーン樹脂を使用することができる。また、圧粉磁心の作製に使用する粉体は、更に酸化アルミニウムや窒化硼素、窒化アルミニウムなどの非磁性粉末のフィラーを含んでいても良く、この非磁性粉末の量によってコア部の磁気特性を変更することができる。
【0029】
第三の構成は、軟磁性粉末を含む粉体を、粉体のままコア部として使用する構成である。例えば、粉体を加圧成形するが焼成はしないことで、第三の構成を備えるコア部となる。その他、コア部の外周形状を保持するケースを用意し、そのケースに粉体を充填することでも第三の構成を備えるコア部となる。なお、この第三の構成においても、粉体はフィラーを含んでいてかまわない。
【0030】
第四の構成は、バインダとなる非磁性の樹脂中に、上記第二、第三の構成と同様の軟磁性粉末を含む粉体を混合した混合流体を作製し、その混合流体を射出成形や注型成形などで成形体とした後、樹脂を硬化させることで得られる成形硬化体とする構成である。この場合、成形硬化体は、非磁性の樹脂からなるマトリックス中に、軟磁性粉末が分散した構成を備える。非磁性のマトリックスの材質には、エポキシ樹脂やフェノール樹脂、シリコーン樹脂などを利用することができる。また、この非磁性のマトリックスは、酸化アルミニウムやシリカといったセラミックからなる非磁性粉末のフィラーを含んでいても良い。
【0031】
ところで、上記第四の構成を採用した内側コア部20i(外側コア部20o)であれば、この内側コア部20i(外側コア部20o)自身にコイル10を保持する機能を持たせることができる。これは、内側コア部20i(外側コア部20o)の作製の際、混合流体がコイル10の外周面に回り込むため、混合流体を硬化させたときに内側コア部20i(外側コア部20o)とコイル10とが密着するからである。ここで、本発明においては、コイル10の絶縁被覆10rに欠陥が少ないため、内側コア部20i(外側コア部20o)とコイル10とが密着する構成であっても何ら問題にならない。
【0032】
上記4つの構成は必要に応じて選択することができる。例えば、第二の構成である圧粉磁心で内側コア部20iを作製し、第四の構成である成形硬化体で外側コア部20oを作製することが挙げられる。また、第一の構成である積層鋼板は一般に、高比透磁率で低飽和磁束密度であるので、この積層鋼板で内側コア部20iを形成し、第二、第三、第四の構成で外側コア部20oを形成しても良い。あるいは、第二、第三、第四の構成のいずれかで、両コア部20i,20oを一体に形成してもかまわない。
【0033】
以上の構成を備えるリアクトル1は、ハイブリッド自動車の電力変換回路に使用される。自動車用リアクトルへの通電条件は、最大電流(直流):100〜1000A、平均電圧:100〜1000V、使用周波数:5〜100kHzとなっており、非常に過酷な条件である。このような過酷な条件であっても、上記リアクトル1は、欠陥が殆どない絶縁被覆を有するコイル10を備えるため、自動車用リアクトルとして十分な特性を発揮すると期待される。
【0034】
[リアクトルの製造方法]
上記リアクトル1は、大きく分けて、(1)螺旋状に巻回された導体と、導体の巻回形状に沿って螺旋状に導体の外周を覆う絶縁被覆10rとを備えるコイルを用意するコイル準備工程と、(2)用意したコイルの内部に内側コア部を配置すると共に、この内側コア部に繋がるようにコイルの外側に外側コア部を配置する組立工程と、を備える。本発明においては、これらの工程のうち、工程(1)に特徴がある。従って、以降の説明では工程(1)について詳細に説明し、工程(2)については簡単に述べる。
【0035】
(コイル準備工程)
コイル準備工程はさらに、導電性を有する線状の導体を螺旋状に巻回するコイル成形工程と、螺旋状に巻回された導体の表面に電着塗装で絶縁被覆10rを形成する被覆形成工程と、を備える。
【0036】
コイル成形工程では、既に述べた材質・断面形状の導体10cを巻回機により螺旋状に巻回する。但し、導体10cを巻回する際は、巻回された導体10cの各ターン間に隙間ができるようにする。これは、後述する被覆形成工程で、巻回された導体10cの外周面に電着塗装で絶縁被覆10rを形成する際、当該隙間に塗料を回り込ませ、導体10cの外周面のうち、隣接するターン間の対向する部分にも絶縁被覆10rを形成するためである。ターン間に形成する隙間の大きさは、5〜300μmとすることが好ましい。この大きさの隙間であれば、当該隙間に塗料を回り込ませられるだけでなく、隣接するターン間を繋ぐように絶縁被覆10rが形成されることを防止できる。これに対して、隣接するターン間を繋ぐように絶縁被覆10rが形成されると、巻回された導体10c全体が絶縁被覆10rでモールドされたようになってしまう。そうなった場合には、例えば、熱により導体10cがその螺旋軸方向に伸びる、即ちターン間の隙間が大きくなる方向に伸びたときに、絶縁被覆10rが損傷する恐れがある。
【0037】
次に、被覆形成工程では、電着塗装により螺旋状に巻回された導体10cの表面に絶縁被覆10rを形成する。電着塗装は、塗料と被塗装物にそれぞれ異なる極性の静電気を帯びさせた上で、水性塗料中に被塗装物を入れて塗装する方法である。電着塗装の特徴は、溶剤塗装などに比べて均一な厚さの塗膜を形成でき、しかもその塗膜の厚さの均一性が被塗装物の形状に左右され難い点にある。従って、螺旋状に巻回された立体的な形状の導体10cであっても、導体10cの表面に均一な塗膜を形成できる。塗膜は、乾燥・焼付工程を経て絶縁被覆10rとなる。
【0038】
一回の電着塗装で形成される絶縁被膜10rの厚さは、塗料の材質により変化する。そのため、一回の電着塗装で所望の厚さの絶縁被覆10rが形成できないのであれば、所望の厚さの絶縁被膜10rとなるように複数回の電着塗装を行えば良い。複数回の電着塗装を行う場合、巻回された導体10cのターン間を繋ぐように絶縁被覆10rが形成されないようにする。但し、電着塗装で形成される絶縁被覆10rは非常に薄いため、導体10cの巻回時にターン間の隙間を5〜300μmとしておけば、実質的にターン間を繋ぐような絶縁被覆10rは形成されない。なお、次の組立工程で、巻回した導体10cに絶縁被覆10rを形成することで作製したコイル10を磁性コア20と組み合わせてリアクトル1とする際は、当該コイル10を軸方向に圧縮するなどして、コイル10の各ターン間に隙間ができないように各ターンを密着させることが好ましい。コイル10を軸方向に圧縮することで、コイル10の軸長を短くでき、その結果リアクトル1の小型化を図ることができる。また、コイル10の軸方向への熱伝導を円滑にし、リアクトル1の放熱性を高めることもできる。
【0039】
上述したコイル成形工程と被覆形成工程を備えるコイル準備工程によれば、導体10cの外周に形成される絶縁被覆10rに殆ど損傷を生じさせることがない。それは、導体10cを巻回した後に、導体10cの外周面に絶縁被覆10rを形成するからで、導体10cを巻回する際の曲げ応力がそもそも絶縁被覆10rに作用しないからである。
【0040】
(組立工程)
組立工程は、内側コア部20iと外側コア部20oを同一の部材で構成するか、それとも別個の部材で構成するか、あるいは各コア部をどのような部材で構成するかなどによって種々のバリエーションが考えられる。代表的な手順として、両コア部20i,20oの少なくとも一方を成形硬化体とする場合を以下に説明する。
【0041】
まず、両コア部20i,20oを同一の部材とする場合を説明する。その場合には、両コア部20i,20oを成形硬化体で一体に形成すると良い。例えば、金型内にコイル10を配置し、軟磁性粉末を含む粉体を非磁性の樹脂中に混合した混合流体を、金型とコイル10の隙間に充填する。そして、樹脂を硬化させることで、成形硬化体中にコイル10が保持されたリアクトル1を作製できる。また、金型としてリアクトル1の一部になるケースを用意して、そのケース中にコイル10を配置し、ケースとコイル10の隙間に混合流体を充填しても良い。なお、コイル10をその軸方向に圧縮して、コイル10のターン間に隙間ができないようにしておいても良い。
【0042】
次に、両コア部20i,20oを異なる部材とする場合を説明する。その場合には、予め圧粉磁心や積層鋼板で内側コア部20iを作製し、この内側コア部20iをコイル10の内部に収納した組付体を作製する。そして、別途用意した金型に組付体を配置し、金型内に上記混合流体を充填し、樹脂を硬化させる。その他、圧粉磁心で有底筒状の外側コア部20oを作製し、その外側コア部20oの内部にコイル10を配置した後、コイル10の内部に混合流体を充填して内側コア部20iを作製しても良い。
【0043】
以上説明したリアクトルの製造方法によれば、図1に示すリアクトル1を作製することができる。
【0044】
なお、本発明の実施形態は、上述した実施形態に限定されるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することができる。例えば、図1を参照するリアクトル1に備わるコイル10は一つであるが、複数としても良い。その場合、磁性コア部のうち、各コイルの内側に配される部分が内側コア部、両コイルの外側に配される部分が外側コア部となる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明リアクトルは、直流電流の昇圧回路や降圧回路の構成部品として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 リアクトル
10 コイル 11,12 コイル端部
10c 導体 10r 絶縁被覆
20 磁性コア
20i 内側コア部
20o 外側コア部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルの内側に内側コア部を、コイルの外側に外側コア部を形成して、コイルの励磁により両コア部を通る閉磁路が形成されるように両コア部がつなげられたリアクトルであって、
前記コイルは、螺旋状に巻回された導電性を有する線状の導体と、導体の巻回形状に沿って螺旋状に導体の表面を覆う絶縁被覆と、を備え、
前記絶縁被覆は、導体を螺旋状に巻回した後で電着塗装により形成されたものであることを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
前記絶縁被覆は、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、またはポリアミドイミド樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記外側コア部は、非磁性のマトリックス中に軟磁性粉末が分散されてなることを特徴とする請求項1または2に記載のリアクトル。
【請求項4】
コイルの内側に内側コア部を、コイルの外側に外側コア部を形成して、コイルの励磁により両コア部を通る閉磁路が形成されるように両コア部がつなげられたリアクトルを製造するためのリアクトルの製造方法であって、
螺旋状に巻回された導体と、導体の巻回形状に沿って螺旋状に導体の外周を覆う絶縁被覆とを備えるコイルを用意するコイル準備工程と、
コイルの内部に内側コア部を配置すると共に、この内側コア部に繋がるようにコイルの外側に外側コア部を配置する組立工程と、を有し、
前記コイル準備工程はさらに、
導電性を有する線状の導体を螺旋状に巻回するコイル成形工程と、
螺旋状に巻回された導体の表面に、電着塗装により絶縁被覆を形成する被覆形成工程と、
を有することを特徴とするリアクトルの製造方法。
【請求項5】
コイル成形工程において、螺旋状に巻回される導体のターン間に5〜300μmの隙間が形成されるように導体を巻回することを特徴とする請求項4に記載のリアクトルの製造方法。

【図1】
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